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抵当権に基づく物上代位に対する賃借人の相殺権の優先性について(三・完) : 最二判平成21・7・3 民集63 巻6 号1047 頁を契機として 利用統計を見る

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抵当権に基づく物上代位に対する賃借人の相殺権の

優先性について(三・完) : 最二判平成21・7・3 民

集63 巻6 号1047 頁を契機として

著者名(日)

深川 裕佳

雑誌名

東洋法学

55

2

ページ

1-48

発行年

2011-12

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000831/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止

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目次 はじめに Ⅰ   物上代位と債権譲渡:最二判平成一〇・一・三〇民集五二巻一号一頁   ( 1 ) 事実の概要   ( 2 ) 判旨   ( 3 ) 検討(以上、本誌五四巻二号) Ⅱ   相殺権と抵当権の競合に関する判例の検討   ( 1 ) 物上代位と保証金の相殺:最三判平成一三・三・一三民集五五巻二号三六三頁(以上、本誌五五巻一号)   ( 2 )物上代位と敷金の相殺「充当」 :最一判平成一四・三・二八民集五六巻三号六八九頁(以下、本号)   ( 3 )担保不動産収益執行と相殺:最二判平成二一・七・三民集六三巻六号一〇四七頁 おわりに 《 論    説 》

て(

――最二判平成二一・七・三民集六三巻六号一〇四七頁を契機として――

 

  

 

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Ⅱ   相殺権と抵当権の競合に関する判例の検討 ( 1 )物上代位と保証金の相殺:最三判平成一三・三・一三民集五五巻二号三六三頁(本誌五五巻一号) ( 2 )物上代位と敷金の相殺「充当」 :最一判平成一四・三・二八民集五六巻三号六八九頁 (A)事実の概要   Xは、昭和五九年二月一五日に、Aとの間の銀行取引等に基づく債権を担保するため、A所有の本件建物に根抵 当権を設定した。   他方、Yは、平成五年八月一一日、Aから本件建物を賃借しているBとの間で、次の事項を含む約定により転貸 借 契 約 (以 下、 「本 件 賃 貸 借 契 約」 と い う) を 締 結 し た。 ① 賃 料 は 一 ヶ 月 一 〇 〇 万 円 余 り、 ② 期 間 は 平 成 五 年 九 月 一 七 日 か ら 平 成 七 年 八 月 三 一 日 ま で、 ③ 保 証 金 は 一、 〇 〇 〇 万 円 と し、 そ の 二 〇 パ ー セ ン ト に 相 当 す る 金 額 を「契 約終了金」とするなどである。本件賃貸借契約は、順次合意により更新され、現在の賃料は一ヶ月九〇万円余りと なっている。Yは、平成一〇年三月三〇日、Bとの間で、同年九月三〇日をもって本件賃貸借契約を解約し、本件 建物を明け渡すことを約束した。   Xは、転貸人BのYに対する転貸料債権につき物上代位による差押命令を得て、この差押命令は、同年六月二九 日にYに送達された。   Yは、同年九月三〇日に、本件建物を明け渡した。   本 件 は、 X が Y に 対 し て、 右 差 押 命 令 に 基 づ い て、 同 年 七 月 分 か ら 同 年 九 月 分 ま で の 賃 料 (二 七 〇 万 円 余) の 支 〔深川 裕佳〕

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払いを求めた事案である。 Xの請求に対して、 Yは、 同年一〇月八日に、 Bに対して保証金返還請求権 (以下、 「本 件 保 証 金 返 還 請 求 権」 と い う) を 自 働 債 権 と し、 同 年 四 月 分 か ら 九 月 分 ま で の 賃 料 債 権 を 受 働 債 権 と し て 相 殺 す る 旨 の意思表示をしたために、賃料の支払い義務は存在しないと主張した。 【第一審】 「敷金返還請求権は、賃貸借契約終了前においても条件付きの権利として存在するとの証明がされるとし ても、右条件が成就するまでの間は、民法五一一条の定める相殺の禁止との関係においては、賃借人は未だ敷金返 還請求権を『取得シタ』ものとはいい難く、条件成就〔明渡し〕が支払いの差止めに遅れた場合には、敷金返還請 求権を自働債権とする相殺をもって差押債権者に対抗することはできない」として、本件では、差押後に保証金返 還 請 求 権 を 取 得 し て い る た め、 こ れ を 自 働 債 権 と す る 相 殺 を 対 抗 す る こ と が で き な い と し て、 X の 請 求 を 認 容 し た。これに対して、Yが控訴した。 【原審】本件の保証金が敷金の性質を有するものであることは、当事者間に争いがないとした上で、 「差押債権者が 取立てないし転付命令に基づく弁済を受ける前に賃貸借が終了し、明渡がされたときは、その賃料は当然に敷金か ら控除される結果、差押えに係る債権は消滅すると解さざるを得ないものというべきである」として、第一審判決 を取消し、Xの請求を棄却した。Xが上告受理を申し立てた。 (B)判旨   上 告 棄 却。 「敷 金 が 授 受 さ れ た 賃 貸 借 契 約 に 係 る 賃 料 債 権 に つ き 抵 当 権 者 が 物 上 代 位 権 を 行 使 し て こ れ を 差 し 押 えた場合においても、当該賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたときは、賃料債権は、敷金の充当によりそ の限度で消滅するというべきであり、これと同旨の見解に基づき、Xの請求を棄却した原審の判断は、正当として 是認することができ、原判決に所論の違法はない」 。

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  最高裁は、この理由を次のように述べている。   賃 貸 借 契 約 に お け る 敷 金 契 約 は、 授 受 さ れ た 敷 金 を も っ て、 賃 料 債 権、 賃 貸 借 終 了 後 の 目 的 物 の 明 渡 し ま で に 生 ず る 賃 料 相 当 の 損 害 金 債 権、 そ の 他 賃 貸 借 契 約 に よ り 賃 貸 人 が 賃 借 人 に 対 し て 取 得 す る こ と と な る べ き 一 切 の 債 権 を 担 保 す る こ と を 目 的 と す る 賃 貸 借 契 約 に 付 随 す る 契 約 で あ り、 敷 金 を 交 付 し た 者 の 有 す る 敷 金 返 還 請 求 権 は、 目 的 物 の 返 還 時 に お い て、 上 記 の 被 担 保 債 権 を 控 除 し、 な お 残 額 が あ る こ と を 条 件 と し て、 残 額 に つ き 発 生 す る こ と に な る(最 高 裁 昭 和 四 六 年(オ) 第 三 五 七 号 同 四 八 年 二 月 二 日 第 二 小 法 廷 判 決・ 民 集 二 七 巻 一 号 八 〇 頁 参 照) 。 こ れ を 賃 料 債 権 等 の 面 か ら み れ ば、 目 的 物 の 返 還 時 に 残 存 す る 賃 料 債 権 等 は 敷 金 が 存 在 す る 限 度 に お い て 敷 金 の 充 当 に よ り 当 然 に 消 滅 す る こ と に な る。 こ の よ う な 敷 金 の 充 当 に よ る 未 払 賃 料 等 の 消 滅 は、 敷 金 契 約 か ら 発 生 す る 効 果 で あ っ て、 相 殺 の よ う に 当 事 者 の 意 思 表 示 を 必 要 と す る も の で は な い か ら、 民 法 五 一 一 条 に よ っ て 上 記 当 然 消 滅 の 効 果 が 妨 げ ら れ な い こ と は 明 ら か で ある。   ま た、 抵 当 権 者 は、 物 上 代 位 権 を 行 使 し て 賃 料 債 権 を 差 し 押 さ え る 前 は、 原 則 と し て 抵 当 不 動 産 の 用 益 関 係 に 介 入 で き な い の で あ る か ら、 抵 当 不 動 産 の 所 有 者 等 は、 賃 貸 借 契 約 に 付 随 す る 契 約 と し て 敷 金 契 約 を 締 結 す る か 否 か を 自 由 に 決 定 す る こ と が で き る。 し た が っ て、 敷 金 契 約 が 締 結 さ れ た 場 合 は、 賃 料 債 権 は 敷 金 の 充 当 を 予 定 し た 債 権 に な り、 こ のことを抵当権者に主張することができるというべきである。 (C)検討 ①   敷金返還請求権の要保護性   最三判平成一三・三・一三 (以下、 「平成一三年判決」という。本誌五五巻一号、Ⅱ( 1 )を参照) が出された後も、 学説では、敷金返還請求権の場合には、抵当権との関係においても保護されるべきであるとの利益衡量が有力に主 〔深川 裕佳〕

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張 さ れ て き た[小 林   二 〇 〇 一、 七] [鳥 谷 部   二 〇 〇 一、 八] [松 岡   二 〇 〇 一、 九] [三 上   二 〇 〇 一 (上) 、 一 〇] [山野目   二〇〇一、一〇] [安永   二〇〇三、四〇] [生熊   二〇〇四、五五〇― 五五一] [久須本   二〇〇四、二八〇― 二 八 一] 。 そ こ に お い て、 敷 金 返 還 請 求 権 が 特 別 に 扱 わ れ る べ き で あ る と 主 張 さ れ て き た 理 由 を 整 理 す る と、 主 に、以下の三点にまとめることができる。 (ⅰ)債権の取得がリスクを計算した上での自由な決定に基づいてなされたものか否か。   抵当権者は、一般的に、金銭を貸し付けるかどうかの自由を有しており、あらかじめ、リスク計算をすることが できる。これに対して、賃貸人と賃借人との力関係からすると、賃借人はやむなく敷金を預託せざるを得ない地位 に立たされている。 (ⅱ)債権を保全する他の適切な措置を有しているか否か。   抵当権者は、物上代位に際しても、抵当不動産自体の価値を把握する抵当権を有している。これに対して、賃借 人には、賃貸人の資力が悪化しても敷金返還請求権を保全する措置がない。 (ⅲ)賃料債権が競合する債権者の引当として期待されていることを知っているか否か。   敷金の預託が慣習的に行われていることから、賃貸借契約と敷金契約の間には密接な関連性が存在するため、抵 当権者はこのことを知っているものといえる。これに対して、抵当権設定登記がなされていても賃借人が建物登記 を閲覧することは、現実には、ほとんどなく、また、債権譲渡や質権設定のように賃料債権の譲渡や質権設定につ いて賃借人に通知があったり、異議を申し出たりする機会が与えられるわけではない。   これらの利益衡量からすると、敷金返還請求権の回収が優先されるべきとの意見が有力であるといえる。   こ れ に 対 し て、 本 件 の 判 例 評 釈 に お い て は、 「敷 金 返 還 請 求 を 他 の 一 般 債 権 者 と 区 別 し て 特 別 に 扱 う 理 論 的 説 明

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は困難であると思われる」 [中村   二〇〇二、三七〇]とも指摘されている。実際に、学説においても、敷金は、賃 借 人 で は な く、 賃 貸 人 の た め の 担 保 で あ る こ と な ど を 理 由 に、 反 対 の 見 解 も 主 張 さ れ て き た と こ ろ で あ る[古 積   一九九九、三七] [岡内   二〇〇一、七〇― 七一 (注九) ][山野目   二〇〇一、七一] 。   し か し、 学 説 に お い て も、 ド イ ツ 民 法 の 規 定 を 引 用 し た 上 で、 「敷 金 を 賃 借 人 の 財 産 と 区 分 す る 形 で 保 管 し な け れ ば な ら な い」 と の 提 言 が な さ れ て お り[鳥 谷 部   一 九 九 六、 五 五 ―五 六] 、 敷 金 返 還 請 求 権 の 保 護 は 重 要 な 課 題 で ある。立法的解決がなされていない間は、解釈論として、妥当な結論を導くための努力がなされる必要がある。 ②   本判決(平成一四年判決)の理論的問題点   本 件 の 判 旨 に お い て 述 べ ら れ る よ う に、 「当 然 充 当」 と い う 表 現 に よ っ て、 最 高 裁 が 平 成 一 三 年 判 決 と 抵 触 す る こ と な く 妥 当 な 結 論 を 導 い た こ と に 対 し て、 学 説 に お い て は、 「き ち ん と し た 法 律 構 成 に よ り 妥 当 な 判 断 を 下 し た ものとして高く評価したい」とされるなど[生熊   二〇〇四、一六二] 、この「当然充当」という考え方に賛成する 見解も示されている[安永   二〇〇三、三九― 四〇] [吉岡   二〇〇三、四九] 。   筆者も、敷金返還請求権を保護する必要性、および、本件では転貸賃料への物上代位が問題となっているという こ と か ら す る と (最 二 判 平 一 二・ 四・ 一 四 民 集 五 四 巻 四 号 一 五 五 二 頁 は、 転 貸 賃 料 へ の 物 上 代 位 を 原 則 と し て 否 定 し て い る。 こ れ と 同 様 に、 本 件 も、 第 三 債 務 者 の 受 け 取 る べ き 金 銭 へ の 物 上 代 位 が 問 題 と な っ て い る た め、 平 成 一 二 年 判 決 か ら す れ ば、 物 上 代 位 が 否 定 さ れ る よ う に も 思 わ れ る。 し か し、 本 件 に お い て は、 平 成 一 二 年 判 決 に 言 及 さ れ て お ら ず、 ま た、 A と B と を 同 視 し う る 事 情 が 存 す る か ど う か に つ い て も 明 ら か で は な い) 、 本 判 決 の 結 論 に 賛 成 で あ る。 し か し、 理 論 的 観点からすると、本判決は問題を抱えていると思われる。敷金返還請求権および民法五一一条、四六八条二項に関 するこれまでの判例法理を前提にすると、本件では、賃借人の敷金返還請求権はいずれの条文によっても保護する 〔深川 裕佳〕

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こ と が 困 難 で あ る と 考 え ら れ て き た か ら で あ る。 そ こ で、 本 判 決 は、 「敷 金 返 還 請 求 権 の 特 殊 性」 か ら、 抵 当 権 者 と の 争 い に お い て、 従 来 の い ず れ に 関 す る 判 例 法 理 と も 異 な る (抵 触 し な い) 理 論 を 打 ち 立 て た と い う こ と が で き る。しかし、そこで示された理論は、当然充当が弁済充当なのか相殺充当なのかの判断を避けて、結論の妥当性を 確保するための弥縫策のようにみえる。 (ⅰ) 「当然充当」と「相殺」との区別   本 判 決 の 第 一 の 理 論 的 な 問 題 は、 「当 然 充 当」 と「相 殺」 と の 区 別 に あ る。 こ れ は、 本 判 決 (平 成 一 四 年 判 決) と 民法五一一条をめぐる判例法理の関係に関する問題である。   本 判 決 か ら は、 「敷 金 契 約 か ら 発 生 す る 効 果 で あ っ て、 相 殺 の よ う に 当 事 者 の 意 思 表 示 を 必 要 と す る も の で は な い」ということが「当然充当」が「相殺」でないという根拠として示されている[中村   二〇〇五、三六八] 。   し か し、 従 来、 学 説 に お い て は、 「一 定 の 事 由 発 生 に よ っ て、 当 然、 相 殺 (差 し 引 き 計 算) を 生 じ る と い う 予 約 (停 止 条 件 付 相 殺 予 約) … の 効 力 は、 当 事 者 間 で は 九 〇 条 違 反 で な い 限 り 有 効 で あ ろ う」 [大 隅 ほ か   一 九 六 六、 六 (林) ] と 指 摘 さ れ て き た。 そ こ で 念 頭 に 置 か れ て い た の は、 銀 行 に お け る 相 殺 契 約 で あ る が、 相 殺 の 意 思 表 示 を 必 要 と し な い か ら と い っ て、 そ の よ う な 銀 行 に お け る 契 約 が 相 殺 で な い と い う こ と は で き な い だ ろ う (も ち ろ ん、 そ の 効 力 を ど こ ま で 認 め る か は 別 途 に 検 討 の 余 地 が あ る) 。 ま た、 後 に 述 べ る よ う に、 フ ラ ン ス 民 法 典 で も、 旧 民 法 で も、意思表示を必要としない「当然相殺」であったことが想起される。意思表示を必要としないからといって、相 殺 で は な い と い う こ と に は な ら な い。 こ の こ と を 考 慮 す る と、 「敷 金 契 約」 が 相 殺 に 関 す る も の で な い と す る の は 困難であるように思われる。   本 判 決 (平 成 一 四 年 判 決) の 評 釈 に お い て も、 そ こ に お い て 言 及 さ れ た「当 然 充 当」 は「相 殺 と 同 じ に 見 え る の

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で あ っ て、 所 詮 表 現 を 言 い 換 え た も の に 過 ぎ な い の で は な い か」 と も 批 判 さ れ て お り[久 須 本   二 〇 〇 四、 二 七 五] 、 そ の 理 論 的 な 問 題 が 指 摘 さ れ て い る[高 橋(眞)   二 〇 〇 二、 一 二] [清 水   二 〇 〇 三 (上) 、 四 七] 。 そ し て、たとえ相殺であると考えても、敷金返還請求権が預託時点において発生しているとすれば、賃借人は、この債 権を自働債権として未払い賃料債権を受働債権として相殺することができ[鳥谷部   一九九六、五四] 、このような 相殺は、抵当権者による賃料債権の差押前になされる限りにおいて優先する、という相殺の担保的機能に関する無 制 限 説 と 整 合 性 の あ る 考 え 方 が 主 張 さ れ て い る[山 野 目   二 〇 〇 一 (上) 、 一 〇] [荒 木   二 〇 〇 二、 八 三] [清 水   二〇〇三 (上) 、五五] [清水   二〇〇三 (下) 、二〇] [久須本   二〇〇四、二八三、二八六― 二八七] 。 (ⅱ)平成一三年判決との觝触   第 二 の 問 題 は、 本 判 決 (平 成 一 四 年 判 決) に お い て、 抵 当 権 設 定 登 記 後 の 敷 金 契 約 に 基 づ い て、 差 押 後 に な さ れ る「当然充当」を抵当権者に対抗できることの根拠が「抵当不動産の所有者等の用益の自由」に基づくとされたこ とと、平成一三年判決との関係である。すなわち、平成一三年判決において「差押えがされた後においては、抵当 権の効力が物上代位の目的となった賃料債権にも及ぶ」のであり、このことは「抵当権設定登記により公示されて いるとみることができる」とされていること、および、そこから「抵当不動産の賃借人が賃貸人に対して有する債 権と賃料債権とを対当額で相殺する旨を上記両名があらかじめ合意していた場合においても、…物上代位権の行使 としての差押えがされた後に発生する賃料債権については、物上代位をした抵当権者に対して相殺合意の効力を対 抗 す る こ と が で き な い と 解 す る の が 相 当」 と さ れ て い る こ と と、 本 判 決 (平 成 一 四 年 判 決) に お い て、 「抵 当 権 者 は、物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえる前は、原則として抵当不動産の用益関係に介入できないのであ るから、抵当不動産の所有者等は、賃貸借契約に付随する契約として敷金契約を締結するか否かを自由に決定する 〔深川 裕佳〕

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ことができる」ことから、抵当権設定登記後に締結された賃貸人と賃借人の間の「敷金契約から発生する効果」と して、物上代位権の行使としての差押えがされた後に発生する「賃料債権は敷金の充当を予定した債権になり、こ のことを抵当権者に主張することができる」とされていることは矛盾するのではないかということである。   学説においても、以下のような問題点が指摘されている。   同 じ 紛 争 に お い て、 相 殺 の 主 張 で あ れ ば 認 め ら れ な い が、 差 引 計 算 と い う 構 成 な ら 認 め ら れ る、 と い う 点 は 釈 然 と し な い も の が 残 る。 賃 貸 人 と 賃 借 人 が 合 意 に よ っ て 敷 金 契 約 だ け を 解 除 し 賃 貸 借 契 約 自 体 は 維 持 す る 場 合 は ど う だ ろ う。 と り わ け、 そ う し た 合 意 が 差 押 え 前 に な さ れ た 場 合 に は、 賃 料 債 権 の 差 押 え 前 に は 敷 金 契 約 を 締 結 す る か 否 か は 賃 貸 借 契 約 当 事 者 の 自 由 で あ る、 と す る … 判 決 の 論 理 か ら す る と 差 引 計 算 を 否 定 す る こ と は 難 し い よ う に 思 わ れ る。 し か し、 そ う だ と す れ ば 目 的 物 の 明 渡 し は 不 可 欠 の 要 件 で は な い と い う こ と に な り、 差 押 え 前 の 相 殺 予 約 や 合 意 相 殺 の 対 抗 を 否 定 し た 平 成 一 三 年 判 決 の 射 程 は 敷 金 返 還 請 求 権 が 反 対 債 権 に な っ て い る 場 合 に は 及 ば な い、 と い う に 等 し い。 [松 岡   二〇〇二(下) 、一三― 一四] 同 様 に、 「抵 当 権 者 は、 充 当 の 方 法 で あ れ、 敷 金 返 還 請 求 権 と 賃 料 債 権 と の 相 殺 予 約 や 相 殺 合 意 で あ れ、 そ れ ら に よる賃料債権の消滅を賃借人から主張され、賃料債権への物上代位による取立権を行使しえなくなったとしてもそ れ は や む を 得 な い こ と が ら で あ る と い え る の で は な か ろ う か」 と 指 摘 す る 学 説 も 存 在 す る[生 熊 二 〇 〇 四、 五五二] 。   こ の 問 題 に つ い て、 判 例 解 説 は、 「最 三 小 判 平 一 三・ 三・ 一 三 が 物 上 代 位 権 の 行 使 と 敷 金 の 賃 料 へ の 充 当 と の 優 劣 関 係 に は 射 程 が 及 ば」 [中 村   二 〇 〇 五、 三 七 〇] な い と し て お り、 ま た、 本 判 決〔平 成 一 四 年 判 決〕 は、 「賃 貸 借 契 約 が 終 了 し て 目 的 物 が 明 け 渡 さ れ る こ と が な く (賃 貸 借 契 約 を 存 続 さ せ て) 、 敷 金 返 還 請 求 権 と 賃 料 債 権 と の 相

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殺 予 約 や 相 殺 合 意 が さ れ た 場 合 に は そ の 射 程 が 及 ば な い と 思 わ れ る」 と も 指 摘 し て い る[中 村   二 〇 〇 五、 三 六 八] 。 平 成 一 三 年 判 決 は、 目 的 物 が 明 け 渡 さ れ る こ と な く、 旧 賃 貸 借 契 約 か ら 発 生 し た 保 証 金 返 還 請 求 権 と 新 賃貸借契約から発生する賃料債権とを相殺する旨の合意がなされているため、判例解説の見解に従えば、平成一三 年判決と平成一四年判決とは、その射程を異にするために矛盾は生じないということになりそうである。   しかし、平成一三年判決と平成一四年判決の射程をどこまでと理解するのか、その射程を明確に区別することが できるのかということは、大きな問題である。このために、もしも敷金契約から発生する「当然充当」が「相殺」 と異なるということに着目するならば、判例が「当然充当」という民法典にはない新たな概念を「相殺」とは別に 創造したものと評価することになるだろう。しかし、学理上、両者の区別は判然としない。また、もしも平成一三 年判決と平成一四年判決との違いを敷金返還請求権が問題となっているのか、または、保証金返還請求権が問題と なっているのかという点に求めるのであれば、いずれもが賃貸借契約に附随して慣習に従って締結される契約から 生じるものであり、実際には、両者の区別は困難であるということも考慮すると、その区別の根拠を明確にできる かどうかということが問題となる。さらに、もしも平成一三年判決と平成一四年判決との違いを明渡しの有無に求 めるならば、従来、強く主張されてきた敷金の保護が問題となる。なぜならば、明渡しがなされていなかったとし ても、賃借人の敷金返還請求権を保全する必要性は、明渡しがなされている場合と同様に高いからである。明渡し までしなければ敷金返還請求権を確保できないということになれば、敷金を確保したいと望む賃借人に対して、賃 貸借契約を終了し、建物の明け渡しを促すのに等しいことになり、このことは抵当権者にとっても望ましいものと はいえないだろう。そこで、明渡しの有無だけによって結論が左右されるような理論は好ましくないということに なる。 〔深川 裕佳〕

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  このように、平成一三年判決と平成一四年判決とがその射程を異にするということは、平成一四年判決の根拠を 明確にすることなしには、困難であろうと思われる。学説においても、敷金契約を第三者である抵当権者に対抗す ることができる根拠が問題とされており[高橋(眞)   二〇〇二、一二] [久須本   二〇〇四、二六六― 二六七] 、この 問題は、敷金契約から発生する「当然充当」と相殺契約から生じる「相殺」の対抗問題との違いがどこにあるのか ということに関わってくる。   そ こ で、 以 下 で は、 こ れ ら 二 つ の 問 題、 (ⅰ) 「当 然 充 当 の 意 義」 お よ び(ⅱ) 「敷 金 契 約 の 対 抗 問 題」 を 検 討 す る た め に、 大 審 院 判 決 (③) お よ び 最 高 裁 判 決 (④) を 通 じ て、 敷 金 に よ る 未 払 い 賃 料 等 の「当 然 充 当」 の 意 義 を 検討した上で、敷金契約の対抗問題 (⑤) について検討することにする。 ③   大審院判決における「当然充当」=「当然相殺」の法理の確立   まず、判例において「当然充当」法理がどのように形成されてきたかについて、本件の判例解説において言及さ れている二つの大審院判決を検討していくことにする[中村   二〇〇五、三七一 (注一三) ]。 (ⅰ)大判大正一五・七・一二民集五巻六一六頁   大審院は、賃貸人が賃借人に対して賃料の支払いを求めた事案において、未払い賃料債権が敷金返還請求権の範 囲において、 「当然充当」されることを次のように述べている。 大判大正一五・七・一二民集五巻六一六頁 【事 実 の 概 要】 X は Yに1 対 し て 賃 料 一 五 〇 円、 敷 金 四 五 〇 円(賃 料 三 ヶ 月 分) に て 本 件 工 場 を 賃 貸 し て お り、 Yが2 Yの1 連 帯 保 証 人 と な っ て い た と こ ろ、 大 正 一 一 年 五 月 一 日 以 降 の 賃 料 が 未 払 い と な っ て い た。 そ こ で、 X が、 大 正 一 一 年 五 月 一 日 か ら 同 年 七 月 末 日 ま で の 未 払 い 賃 料 債 権 を 請 求 し た と こ ろ、 Y ら は、 敷 金 返 還 請 求 権 に よ っ て、 未 払 い 賃 料 を 相

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殺 す る 旨 の 主 張 を な し た。 第 一 審 は、 未 払 い 賃 料 債 権 は 請 求 さ れ て い る も の の ほ か に、 大 正 一 一 年 八 月 か ら 大 正 一 一 年 九 月 三 日 の 明 け 渡 し ま で の も の も 存 在 す る こ と か ら、 敷 金 を ど の 未 払 い 賃 料 債 権 に 充 当 す る か は 賃 貸 人 の 任 意 で あ る こ と を 理 由 と し て、 ま た、 原 審 は、 「賃 貸 借 契 約 終 了 後 該 契 約 に 基 き 負 担 せ る 総 て の 債 務 を 履 行 し た る 後 に あ ら ざ れ ば 敷 金 の 返 還 を 請 求 し 得 べ き 時 期 到 来 せ ざ る も の な る こ と 敷 金 の 性 質 上 明 な る」 こ と を 理 由 と し て、 い ず れ も、 こ の よ う な 相殺の主張を認めなかった。Yらが上告した。 【判 旨】 破 棄 差 戻。 敷 金 な る も の は 賃 借 人 が 其 の 債 務 を 担 保 す る 目 的 を 以 て 金 銭 の 所 有 権 を 賃 貸 人 に 移 転 し 賃 貸 借 終 了 の 際 に 於 て 賃 借 人 の 債 務 不 履 行 な き と き は 賃 貸 人 は 其 の 金 額 を 返 還 す べ く 若 不 履 行 あ る と き は 其 の 金 額 中 よ り 当 然 弁 済 に 充 当 せ ら る べ き こ と を 約 し て 授 受 す る 金 銭 な り と 解 す る を 相 当 と す。 故 に 民 法 第 三 百 六 十 三 条 以 下 に 規 定 し た る 債 権 質 と 等 く 担 保 な り と 雖 其 の 性 質 を 異 に し 賃 借 人 に 於 て 先 づ 延 滞 賃 金 の 支 払 を 為 し た る 上 敷 金 の 返 還 を 請 求 す べ き も の に 非 ず し て 賃 貸 借 終 了 の 場 合 に 賃 金 の 延 滞 あ る と き は 其 の 賃 金 は 弁 済 期 の 至 り た る 順 序 に 従 ひ 当 然 敷 金 中 よ り 弁 済 に 充 当 せ ら れ 賃 借 人 は 不 履 行 な き こ と を 条 件 と し て 敷 金 の 返 還 請 求 権 を 有 す る も の と す。 故 に 賃 借 人 の 延 滞 賃 金 支 払 の 債 務 は 弁 済 期 の 順 序 に 依 り 敷 金 額 の 範 囲 内 に 於 て 当 然 消 滅 す る も の に し て 賃 借 人 は 賃 貸 人 よ り 延 滞 賃 金 の 請 求 を 受 く る も 敷 金 返 還 の 請 求 権 を 以 て 相 殺 を 対 抗 す る を 要 せ ず、 又 之 を 為 す こ と を 得 ざ る も の と す。 〔傍 線 筆 者〕 … 原 裁 判 所〔は〕 … 相 殺 の 抗 弁 を 排 斥 し た る 点 に 於 て 結 局 相 当 に 帰 す れ ど も X の 請 求 を 認 容 し た る 点 に 於 て 敷 金 の 性 質 を 誤 解 し た る も の と 謂 はざるを得ず。   本件は、賃貸人と賃借人の間において、賃借人による充当指定が問題とされたものである。敷金が賃貸人の債権 の担保のために差し入れられていることからすると、これをいずれの未払い債権に充てようが賃貸人の自由である と い う こ と に な り そ う で あ る。 し か し、 そ の よ う に 考 え る こ と は 賃 貸 人 に 一 方 的 に 有 利 で あ る た め、 本 件 は、 「当 〔深川 裕佳〕

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然 充 当」 の 法 理 に よ っ て、 こ の よ う な 敷 金 契 約 の 片 面 的 な 性 質 を 修 正 し た も の と み る こ と が で き る。 た だ し、 「当 然 充 当」 で あ る か ら と い っ て、 い ず れ の 債 務 に 充 当 さ れ る の か に つ い て ま で 必 然 的 に 定 ま る も の で は な い。 そ こ で、 判 決 は そ の 根 拠 を 明 ら か に し て い な い も の の、 法 定 充 当 に よ っ て (民 法 四 八 九 条 二 号 ま た は 三 号) 、 債 務 者 で あ る賃借人にとって利益の大きい弁済期の到来順に充当されると考えたものであろう。   この大審院判決は、敷金の法的性質として、学説において主張されてきた信託的所有権譲渡説を採用したものと されている[乾   一九二七、一三四] 。信託的所有権譲渡説とは、 [鳩山   一九二四]によると、敷金契約を「一種の 信託的所有権譲渡の契約なりと解す。即ち一定の制限を附帯する金銭所有権譲渡の契約にして金銭の譲渡契約と一 定 の 事 実 が 発 生 す れ ば (債 務 不 履 行 な く 又 は 債 務 不 履 行 あ る も 其 債 務 額 が 敷 金 の 額 に 達 せ ざ る と き は) そ の 全 部 又 は 一 部を返還すべき債権契約とを包含する一の無名契約なり」とする立場である[鳩山   一九二四、四九九] 。この立場 は 、 敷 金 の 法 的 性 質 と し て 、 今 日 の 判 例 ( 最 二 判 昭 和 四 八 ・ 二 ・ 二 民 集 二 七 巻 一 号 八 〇 頁 ) ・ 通 説 [ 我 妻   一 九 五 七 、 四七二]の採用する「停止条件付返還債務を伴う金銭所有権の移転」に等しい。   こ の よ う な 信 託 的 所 有 権 譲 渡 説 に 対 し て、 こ の 大 審 院 判 決 の 評 釈[乾   一 九 二 七] に は、 以 下 の よ う な 疑 問 点 が 指摘されている。   まず、信託的所有権譲渡説によるならば、賃貸借契約終了時に不履行となっている債務に当然に充当されること になるが、敷金が賃貸人の所有にあるとすれば、これを自己の有する債権の弁済に充当するというのはおかしいこ と、また、敷金として引渡された金銭は既に消費されてしまっているのだから、存在しない金銭によって充当する というのもおかしいこと、さらには、敷金返還請求権の存在を想定せずに弁済に充当するということもありえない ということである[乾   一九二七、一三六― 一三七] 。

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  この問題の指摘は、金銭所有権の特殊性を考慮すると、理論的に正当であると思われる。この指摘の第三点目に ついては、たとえ敷金返還請求権の存在を想定したとしても、賃貸人が自己の負う敷金返還債務によって、自己の 有する未払い賃料等債権に「弁済」充当するというのはおかしいことになるだろう。もちろん、このような金銭所 有権の特殊性から来る困難な問題は、敷金が担保であることに注目するならば、 「信託的所有権譲渡」 、すなわち、 「停 止 条 件 付 返 還 債 務 を 伴 う 金 銭 所 有 権 の 移 転」 と は ど の よ う な 意 味 を 有 す る の か、 と い う こ と を 担 保 法 に お け る 理 論 的 発 展 を 踏 ま え つ つ 再 考 す る 余 地 が 残 さ れ て い る。 た と え ば、 [星 野   一 九 六 九、 二 五 九] は、 「有 体 物 の 所 有 権 留 保 な い し 移 転 の 方 法 に よ る 担 保 (所 有 権 留 保、 譲 渡 担 保 な ど) と 所 有 権 を 移 転 す る 点 で 共 通 す る が、 金 銭 で あ る た め、 ほ か の 債 権 者 か ら 差 し 押 さ え ら れ ず に す む と い う さ ら に 大 き な 利 点 が あ る」 と 指 摘 す る。 ま た、 [安 永   二 〇 〇 三、 三 九] は、 敷 金 を「言 わ ば 譲 渡 担 保 と し て 信 託 的 に 預 託 さ れ た も の」 と 表 現 し て い る。 こ の よ う に、もしも敷金を譲渡担保と構成することができるとして、譲渡担保の法的性質論においていわゆる担保的構成を 採 用 す る 場 合 に は、 必 ず し も 前 述[乾   一 九 二 七] が 指 摘 す る 問 題 点 が 生 じ る と は 限 ら な い。 し か し、 こ の た め に は、前述したような賃貸人の財産と敷金との別管理がその前提として必要になるだろう。   次 に、 同 評 釈[乾   一 九 二 七、 一 三 六] は、 賃 貸 人 は 預 託 時 に 敷 金 の 所 有 権 を 取 得 す る 一 方 で、 賃 貸 借 終 了 時 ま たは明渡時に、賃借人は、敷金返還請求権を取得し、これによって、賃料請求権等の賃貸借契約から生じた債権を 相殺することができるとする理論構成を主張している。このように、相殺によったのであるとすれば、先に述べた 法 定 充 当 の 規 定 を 参 考 に す る こ と は、 民 法 五 一 二 条 (相 殺 の 充 当) が 四 八 九 条 を 準 用 し て い る こ と に よ っ て 説 明 で き る よ う に な る。 し か し、 本 件 で は、 「当 然 充 当」 の 法 的 性 質 が 相 殺 で あ る と は 明 言 さ れ て い な い。 大 審 院 判 決 と して、 「当然充当」が相殺に該当するとしたのは次のものである。 〔深川 裕佳〕

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(ⅱ)大判昭和一〇・二・一二民集一四巻二〇四頁   賃料債権の譲受人が賃借人に賃料の支払いを求めた事案において、原審が「敷金は賃貸借契約終了の際賃借人に 義務履行なき場合に返還すべきもの」であるから譲渡された賃料へ充当されることはないとしたのに対して、次の よ う に、 大 審 院 は、 賃 料 債 権 と 敷 金 (以 下 に 述 べ る よ う に 高 額 で あ る た め、 そ の 法 的 性 質 が 問 題 と な る も の の、 裁 判 所 は 敷 金 と し て い る) の 間 で は い わ ゆ る「差 引 勘 定」 が 行 わ れ、 こ れ は、 法 的 に み れ ば、 意 思 表 示 を 必 要 と し な い 当 然の相殺が生じたものであるとした。 大判昭和一〇・二・一二民集一四巻二〇四頁 【事 実 の 概 要】 A か ら 本 件 家 屋 を 賃 料 七 七 円 に て 賃 借 し て い る Y は、 昭 和 七 年 一 一 月 に 賃 貸 借 契 約 を 合 意 解 除 し た。 そ し て、 差 し 入 れ ら れ て い た 敷 金 五 〇 〇 円(賃 料 三 一 ヶ 月 余 り に 相 当 す る) の う ち 三 〇 〇 円 の み 返 還 を 受 け た。 同 年 七 月 に A は、 同 年 五 月 以 降、 翌 八 年 二 月 末 ま で の 賃 料 債 権 を X に 譲 渡 し、 Y へ の 通 知 が な さ れ た。 本 件 は、 X が Y に 対 し て、 昭 和 七 年 九 月 お よ び 一 〇 月 分 の 賃 料 債 権 を 請 求 し た の に 対 し て、 Y が A の 手 元 に あ る 敷 金 残 額 二 〇 〇 円 を も っ て 充 当することを主張したものである。第一審、原審ともに、Xが勝訴。Yが上告した。 【判 旨】 破 棄 自 判。 賃 貸 借 終 了 の 際 賃 料 の 延 滞 あ る と き は 敷 金 は 右 の 終 了 と 共 に 当 然 其 の 弁 済 に 充 当 せ ら る と 云 ふ も の 之 を 当 院 の 判 例 と 為 す。 茲 に 弁 済 の 充 当 と あ る は 民 法 第 四 百 八 十 八 条 以 下 に 規 定 し あ る そ れ に は 非 ず、 俗 に 所 謂 差 引 勘 定 の 意 味 に し て 法 律 的 に 云 は ば 賃 料 債 権 と 敷 金 返 還 請 求 権 と が 賃 貸 借 終 了 の 時 を 以 て 当 然 対 当 額 に 於 て 相 殺 せ ら る る の 義 に 外 な ら ず。 〔傍 線 筆 者〕 … 敷 金 は 広 義 に 於 て 一 の 担 保 に 外 な ら ず … 此 一 種 の 担 保 は … 当 然 必 然、 且、 直 接 に 其 の 実 効 を 奏 す る 次 第 な る が 故 に … 延 滞 賃 料 … 債 権 者 は 先 づ 此 敷 金 保 有 者 に 就 き て 其 の 弁 済 を 求 む べ く 否 是 に 就 く に 非 ざ れ ば 以 て 其 の 弁 済 を 求 む る に 由 な し と 解 す 可 き は 之 を 敷 金 に 依 り 担 保 せ ら る る 賃 料 債 権 の 本 質 に 省 み て 殆 ん ど 自 明 の 数 な ら

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ず む ば あ ら ず。 若 し 夫 れ 此 場 合 賃 貸 人 の 無 資 力 に 依 る 弁 済 不 能 の 危 険 は 果 し て 何 人 が 之 を 負 ふ べ き や 他 無 し 譲 受 人 是 の み 何 者 将 来 の 賃 料 債 権 の 譲 渡 に 付 き て は 何 等 相 関 せ ざ り し 否 相 関 す る を 得 ざ り し 賃 借 人 と、 敷 金 は 之 を 賃 貸 人 の 手 に 委 ね た る 儘 敢 て 此 債 権 を 譲 受 け た る 者 と 孰 が 果 し て 万 一 の 損 失 を 忍 ば ざ る べ か ら ざ る や は 又 絮 説 を 要 せ ざ る も の あ れ ば な り。   こ の よ う に 本 判 決 は、 賃 借 人 と 賃 料 債 権 の 譲 受 人 と の 利 益 を 衡 量 し た 上 で、 敷 金 の 担 保 と し て の 特 殊 性 に 言 及 し、 敷 金 に よ る 賃 料 債 務 へ の「弁 済 の 充 当」 と は、 「当 然 … 相 殺」 を 意 味 す る と い う こ と を 明 ら か に す る こ と に よって、これを債権譲受人にも対抗しうることを明確にしたものである。債権譲渡について、本判決は賃料債権と 敷金債権との間の相殺の対抗力を認めるものであることが注目される。このことは、本稿の立場からは、賃料債権 と敷金債権とは、賃貸借契約と敷金契約という異なる契約から生じたものであるが、両契約の密接性から、二つの 債権の間の牽連性を示すものといえる。   本判決の理論構成については、学説において、意思表示を必要とせずに「当然」に相殺されるということに対す る 批 判[舟 橋   一 九 三 六、 八 六] が あ る。 本 判 決 に 言 及 さ れ た「当 然 相 殺」 は、 か つ て 旧 民 法 に お い て も 規 定 さ れ て い た 意 思 表 示 な く し て 効 力 が 生 じ る「法 律 上 の 相 殺」 (旧 民 法 五 二 〇 条) に 関 す る 議 論 を 想 起 さ せ る[深 川   二〇〇八、一一七] 。ボワソナードは、意思表示なくして法律上当然に効力が生じる「法律上の相殺」といって も、裁判において当事者によって証明されなければならないことを述べていた。また、フランス民法典一二九〇条 も同様の規定を備えているが、今日においては、現実には当事者の援用が必要であることが認識されるに至ってい る[ Mendegris 1989, n os 51 et s. ][深川   二〇〇八、九六以下] 。このように、請求された債権が相殺されるもので あ る こ と の 証 明 が あ れ ば、 当 事 者 の 意 思 に も、 裁 判 官 の 意 思 に も か か わ ら ず、 差 引 計 算 (差 引 勘 定) が 行 わ れ る と 〔深川 裕佳〕

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い う の が 当 然 相 殺 の 意 味 で あ る (も ち ろ ん、 債 務 者 は、 当 該 債 権 が 相 殺 さ れ る も の で あ る こ と を 証 明 し た の で あ る か ら、 「相 殺 の 意 思」 は 存 在 し た と い え る が、 差 引 計 算 は 法 定 の 効 果 で あ っ て、 意 思 表 示 の 直 接 の 効 果 で は な い と い う こ と で あ る) 。 こ の よ う に、 「相 殺」 と い う 法 的 性 質 を 与 え る こ と に つ い て、 相 殺 の 意 思 表 示 が 存 在 し な い こ と は 障 害 に な ら な い と い う こ と が で き る。 実 際 に も、 起 草 者[梅   一 八 九 六、 三 一 八 ―三 一 九] も、 「当 事 者 の 意 に 曰 く 賃 貸 人 は 若 し賃借人が借賃の支払を怠りたることなくんば敷金の全額を返還すべく若し敷金の弁済を怠らば其弁済を怠りたる 金額に付ては敷金を賃借人に返還すべき義務と之を相殺し其残余のみを返還すれば可なるものとしたるなり」と述 べている (この見解は、 [深川   二〇〇八、一四二― 一四三]において検討した) 。   また、学説には、相殺という構成自体に対する批判[有泉   一九三五、一六六― 一六七]が存在する。そして、こ の説[有泉   一九三五、一六八]は、 「敷金が賃料に対する関係に於いて…一種の前払である」という考えに基づい て、 「延滞賃料は賃貸借終了の際当然敷金を以て充当せらるべき」ものとしている。   こ の よ う に、 「一 種 の 前 払」 と す る 考 え 方 は、 前 述 に お い て 紹 介 し た 信 託 的 所 有 権 譲 渡 説 と 異 な る 考 え 方 で あ る。もしも敷金契約による賃料債権の前払い弁済による充当であると理解することができれば、一見すると、将来 賃 料 債 権 の 譲 受 人 が 請 求 を な す 時 点 に お い て は、 す で に そ の 債 権 が 消 滅 し て い る こ と を 説 明 で き る よ う に も み え る。そこで、このような考え方によれば、特に、先に紹介した大判大正一五年七月一二日の評釈において指摘され ている理論的な問題点、すなわち、敷金が賃貸人の所有に帰したのであれば、それを、自己の有する債権に充当す るというのはおかしいという、信託的所有権譲渡説に対する根本的な批判を免れることができそうである。今日で も、敷金契約を「前払いに類似する」ものと考える立場も存在する[古積   二〇〇三、一一] 。   しかし、そうであるとしても、この「前払い」という考え方には、以下のような問題点が存在する。まず、前払

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い さ れ て い れ ば、 「未 払 い」 賃 料 債 権 は、 観 念 的 に も 存 在 し え な い の で は な い か と い う 疑 問 が 生 じ る。 次 に、 仮 に 未払い賃料債権が存在するとしても、敷金が賃料の「前払い」であるとした場合には、未払い債務は、どの時点に おいて充当され、消滅するかという疑問が生じる。賃料は、前月に前払いされることが多いが、この前払いすべき 賃料債権のさらなる前払いということになるのだろうか。このことは、個別的な賃料債権は、いつ発生し、弁済す ることができる状態となるのかという問題にかかわる。さらに、もしも敷金が賃貸借契約終了時に存在する未払い 債務に充当される前払いに相当するものであるとすれば、このように、未だ具体的に発生しておらず、また、未履 行 も な い 債 権 に つ い て「前 払 い」 を 強 い る 敷 金 契 約 自 体 が、 今 日 で は、 「信 義 則」 (消 費 者 契 約 法 一 〇 条) に 反 す る 無効な契約であるとの評価を免れることはできないのではないかという疑問が生じる。このように種々の疑問から して、今日では、 「前払い」という理論構成を維持することは困難であると考えられる。   こ こ で、 こ れ ま で に 検 討 し た(ⅰ) (ⅱ) の 大 審 院 判 決 に お け る 特 徴 を ま と め て お く こ と に す る。 そ の 共 通 点 は、いずれも、賃借人を保護するために「当然充当」の法理が認められたものであった。すなわち、金銭の預託に よる敷金という担保手段が賃貸人に一方的に有利なものであるから、 「当然充当」という法理は、 (ⅰ)敷金の未払 い 賃 料 へ の 充 当 に 際 し て、 ま た は、 (ⅱ) 賃 料 債 権 の 譲 渡 に 際 し て、 そ の よ う な 一 方 的 性 質 を 修 正 す る も の と し て 役立っているということが確認された。そして(ⅱ)大審院判決において、この当然充当が「当然相殺」であるこ と が 明 言 さ れ た の で あ る。 本 件 (平 成 一 四 年 判 決) の 判 例 解 説 は、 こ の 二 つ の 大 審 院 判 決 を あ げ て、 「停 止 条 件 付 返 還債務を伴う金銭所有権の移転説が大審院…以来の通説判例となった」 と述べている [中村   二〇〇五、三七一 (注 一三) ]。 ④   最高裁における「当然充当」の法理 〔深川 裕佳〕

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  本 判 決 (平 成 一 四 年 判 決) に お い て 引 用 さ れ て い る 最 二 判 昭 和 四 八・ 二・ 二 民 集 二 七 巻 一 号 八 〇 頁 は、 後 述 の よ うに、明渡時において、敷金から未払い債権額を控除した残額が確定するまでは、敷金返還請求権が「発生および 金額の不確定な権利」であることを述べている。これは、先に検討した(ⅰ)大審院判決において「賃借人は不履 行 な き こ と を 条 件 と し て 敷 金 の 返 還 請 求 権 を 有 す る」 と 同 様 の 内 容 で あ る が (な お、 大 審 院 判 決 で は 返 還 請 求 権 が 発 生 す る 時 期 に つ い て は 言 及 し て い な い) 、 そ れ を 詳 し く し て(ⅱ) 大 審 院 判 決 が「当 然 対 当 額 に 於 て 相 殺」 し た も の と判示したことには言及していないので、大審院判決との関係は明らかではない。   な お、 本 件 で は、 A Y 間 の 賃 貸 借 契 約 終 了 後 に、 「右 賃 貸 借 終 了 の 日 の 翌 日 か ら 右 売 渡 の 日 ま で の A に 対 す る 明 渡義務不履行による…損害賠償債権の担保としての敷金」および賃料債権がBに譲渡されたことも問題とされてい るが、ここでは、本稿の問題にかかわる範囲において、以下に、最二判昭和四八・二・二を紹介することにする。 最二判昭和四八・二・二民集二七巻一号八〇頁 【事 実 の 概 要】 B は、 抵 当 権 が 設 定 さ れ た 本 件 建 物 を 賃 料 一 ヶ 月 八、 〇 〇 〇 円、 期 間 三 ヵ 年 の 約 定 で そ の 所 有 者 A か ら 賃 借 し、 こ の 際、 B か ら A に 対 し て 二 五 万 円 の 敷 金(敷 金 三 〇 ヶ 月 余 り に 相 当 す る) が 差 し 入 れ ら れ た。 そ の 後、 抵 当 権 が 実 行 さ れ、 本 件 建 物 は Y が 競 落 し、 三 年 間 の 賃 貸 期 間 を 満 了 し た。 と こ ろ が、 B は 建 物 を 明 け 渡 さ ず 利 用 し て い た と こ ろ、 当 該 賃 貸 建 物 は、 昭 和 三 七 年 一 二 月 二 六 日 に、 Y か ら C に 売 り 渡 さ れ、 こ れ と 同 時 に、 敷 金 も B の 債 務 を 担 保 す る も の と し て 譲 渡 さ れ、 こ の こ と は、 B に 通 知 さ れ た。 そ し て、 C か ら B に 対 し て 提 起 さ れ た 訴 訟 を 経 て、 昭 和 四 〇 年 三 月 三 日 ご ろ、 両 者 の 間 で は、 昭 和 四 〇 年 三 月 三 一 日 ま で に B が C に 本 件 建 物 を 明 け 渡 し、 賃 料 相 当 損 害 金 債 権 の う ち から本件敷金などを控除するなどの和解が成立した。   一 方、 B の 債 権 者 X は、 B が、 賃 貸 人 Y に 対 し て 有 す る 敷 金 返 還 請 求 権 を 差 し 押 さ え て、 転 付 命 令 を 得 て(同 命 令

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は、 昭 和 四 〇 年 一 月 二 九 日 に 送 達 さ れ た) 、 賃 貸 人 で あ る Y に 支 払 い を 請 求 し た。 Y 銀 行 は、 当 該 賃 貸 建 物 を 競 落 し て 賃 貸 人 の 地 位 を 引 き 継 い だ も の で あ り、 昭 和 三 七 年 一 一 月 三 一 日 に 賃 貸 借 が 終 了 し た 後 も B が 本 件 家 屋 を 無 権 限 に て 占 有しているため、 敷金はこの損害金の発生の都度、 順次敷金額に達するまで弁済に充当されて消滅したなどと主張した。   第 一 審 は、 損 害 金 は「当 然、 本 件 敷 金 返 還 債 務 に 充 当 さ れ て 消 滅」 す る が、 敷 金 に 関 す る 権 利 関 係 が 当 然 に C に 移 転 す る わ け で は な い か ら、 売 却 時 ま で の 損 害 金 を 控 除 し た 敷 金 返 還 請 求 を 認 め た。 こ れ に 対 し て、 原 審 は、 「賃 貸 借 終 了 後 に 賃 貸 家 屋 の 所 有 権 が 譲 渡 さ れ た 場 合 に お い て も、 少 な く と も 旧 所 有 者 と 新 所 有 者 と の 間 の 合 意 が あ れ ば、 賃 借 人 の 承 諾 の 有 無 を 問 わ ず、 新 所 有 者 に お い て 敷 金 を 承 継 す る こ と が で き る」 と し て、 C の も と で、 賃 料 は、 賃 料 相 当 の 損 害 金 に 当 然 に 充 当 さ れ て、 全 部 消 滅 し た た め に、 X は、 そ の 後 に 得 た 差 押 転 付 命 令 に よ っ て 敷 金 返 還 請 求 権 を 取 得 す る こ とができないなどとした。Xが上告した。 【判 旨】 上 告 棄 却。 〔賃 貸 借 契 約 が 引 き 継 が れ て い な い 場 合 に は、 敷 金 に 関 す る 契 約 上 の 地 位 も 賃 借 人 の 承 諾 な く し て 移 転 す る こ と は な い と 解 さ れ る か ら、 「原 判 決 の 前 記 判 断 は 違 法」 で あ る が〕 敷 金 は、 賃 貸 借 終 了 後 家 屋 明 渡 ま で の 損 害 金 等 の 債 権 を も 担 保 し、 そ の 返 還 請 求 権 は、 明 渡 の 時 に、 右 債 権 を も 含 め た 賃 貸 人 と し て の 一 切 の 債 権 を 控 除 し、 な お 残 額 が あ る こ と を 条 件 と し て、 そ の 残 額 に つ き 発 生 す る も の と 解 さ れ る の で あ る か ら、 賃 貸 借 終 了 後 で あ つ て も 明 渡 前 に お い て は、 敷 金 返 還 請 求 権 は、 そ の 発 生 お よ び 金 額 の 不 確 定 な 権 利 で あ つ て、 券 面 額 の あ る 債 権 に あ た ら ず、 転 付 命 令 の 対 象 と な る 適 格 の な い も の と 解 す る の が 相 当 で あ る。 そ し て、 本 件 の よ う に、 明 渡 前 に 賃 貸 人 が 目 的 家 屋 の 所 有 権 を 他 へ 譲 渡 し た 場 合 で も、 賃 借 人 は、 賃 貸 借 終 了 に よ り 賃 貸 人 に 家 屋 を 返 還 す べ き 契 約 上 の 債 務 を 負 い、 占 有 を 継 続 す る か ぎ り 右 債 務 に つ き 遅 滞 の 責 を 免 れ な い の で あ り、 賃 貸 人 に お い て、 賃 借 人 の 右 債 務 の 不 履 行 に よ り 受 く べ き 損 害 の 賠 償 請 求 権 を も 敷 金 に よ つ て 担 保 し う べ き も の で あ る か ら、 こ の よ う な 場 合 に お い て も、 家 屋 明 渡 前 に は、 敷 金 返 還 請 〔深川 裕佳〕

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求権は未確定な債権というべきである。   この最二判昭和四八・二・二は、①敷金返還請求権によって担保される債権の範囲、②賃貸借契約終了後の敷金 の 承 継、 ③ 明 渡 前 の 敷 金 返 還 請 求 権 へ の 転 付 命 令 の 可 否 の 三 点 に つ い て 判 断 し て い る。 こ の う ち、 本 判 決 (平 成 一 四 年 判 決) に 直 接 に か か わ る の は、 ③ に 関 し て、 「敷 金 返 還 請 求 権 は、 そ の 発 生 お よ び 金 額 の 不 確 定 な 権 利」 で あ り、 「明 渡 の 時 に、 右 債 権 を も 含 め た 賃 貸 人 と し て の 一 切 の 債 権 を 控 除 し、 な お 残 額 が あ る こ と を 条 件 と し て、 その残額につき発生するもの」との判示である。   最 二 判 昭 和 四 八 ・ 二 ・ 二 が 「 も っ ぱ ら 依 拠 し た 」[ 石 田   一 九 七 四 、 六 二 ] ( ま た は 「 一 致 す る 」[ 石 外   一 九 七 三 、 一 四 五] ) と さ れ る 我 妻 説 (改 説 後) に よ る と、 「敷 金 の 交 付 は、 一 種 の 停 止 条 件 附 返 還 債 務 を 伴 う 金 銭 所 有 権 の 移 転である。…敷金の主要な目的は、これによって、賃借人の賃貸借上の債務の履行が担保されることである。…右 の理論構成によると、賃貸借が終了して賃借人が目的物を返還するまでは、敷金の返還債務がなく、目的物を返還 したときには、債務不履行による損害賠償額は敷金返還額から当然控除される」 [我妻   一九五七、四七二]と説明 されている (同様に、金銭所有権の移転とする判例研究として、 [佐賀   一九七六、一〇〇] ) 。そして、同学説において、 このように明渡時に敷金返還請求権が生じるとされていることは、最二判昭和四八・二・二のように「賃貸借終了 直後に賃借人の債権者が敷金返還請求権を差押えた場合に、賃貸人はその後の損害賠償請求権で相殺することはで きない」という不都合を回避して、 「賃貸人の保護」を図るためであった[我妻   一九五七、四七四] 。   このように、最二判昭和四八・二・二は、敷金からの回収について、他の差押債権者よりも賃貸人を優先し、明 渡しまでに賃貸人が賃借人に対して取得する賃料債権以外の債権をも敷金により担保させることを目的として「当 然 控 除」 の 理 論 が 用 い ら れ た (裁 判 所 で は「敷 金」 と 認 定 さ れ て い る た め、 本 稿 で も「敷 金」 と 述 べ る が、 こ れ は、 賃 料

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三 〇 ヶ 月 あ ま り に 相 当 す る 高 額 な も の で あ る た め、 そ の 法 的 性 質 に 関 し て 問 題 も 指 摘 も な さ れ て い る。 [石 外   一 九 七 三、 一 五 三] を 参 照) 。 し か し、 こ の よ う な 考 え 方 に つ い て は、 最 二 判 昭 和 四 八・ 二・ 二 に 関 す る い く つ か の 評 釈 に お い て批判されており、そこでは、相殺法理へと持ち込む理論構成も示されている[賀集   一九七三、一九] [水本、浦 川   一九七三、九二― 九三] [石田   一九七四、六二] 。 ⑤   敷金契約の対抗問題 (ⅰ) 「当然充当」の根拠に関する疑問   前 掲・ 最 二 判 昭 和 四 八・ 二・ 二 に お い て、 「敷 金 … 返 還 請 求 権 は、 明 渡 の 時 に … 発 生 す る」 と さ れ た こ と を 前 提 にすると、平成一四年判決では、賃借人からの賃料債権と敷金債権との相殺が問題となれば、差押後に取得した自 働 債 権 と い う こ と に な っ て し ま い、 困 難 な 問 題 が 生 じ る。 そ こ で、 平 成 一 四 年 判 決 は、 「当 然 充 当」 が「敷 金 契 約 から発生する効果であって、相殺のように当事者の意思表示を必要とするものではない」という理由によって、民 法五一一条の制限を回避しようとしたのである。このように、本判決のポイントの一つは、 「当然充当」は、 「民法 五一一条によって…効果が妨げられないことは明らか」とされている点にあるといえる。   し か し、 「民 法 五 一 一 条 に よ っ て 上 記 当 然 消 滅 の 効 果 が 妨 げ ら れ な い こ と は 明 ら か」 で あ る と い う こ と は、 敷 金 返 還 請 求 権 が 停 止 条 件 付 債 権 で あ る と い う こ と か ら (あ る い は、 こ れ を 賃 料 債 権 の 側 か ら 見 て 賃 料 債 権 が「当 然 充 当」 さ れ る と い う こ と か ら) 理 論 的 に 導 か れ る わ け で は な い。 そ こ で、 平 成 一 四 年 判 決 は、 こ の 理 由 を 物 上 代 位 権 に 基 づく差押前の用益の自由から「敷金契約が締結された場合は、賃料債権は敷金の充当を予定した債権になり、この ことを抵当権者に主張することができる」ことに求めている。しかし、このことは、平成一三年判決との関係で疑 問 を 生 じ さ せ て い る。 平 成 一 三 年 判 決 の 判 例 解 説[杉 原   二 〇 〇 一、 二 三 五] は、 物 上 代 位 権 を「自 ら 差 押 え を す 〔深川 裕佳〕

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ることにより、抵当権設定登記時に設定され、かつ、対抗要件を備えた質権となるような権利」と捉えていた。そ うすると、抵当権設定登記以後にした契約は、少なくとも、抵当権者による差押後には対抗できないということに なりそうである。実際に、たとえ賃貸借契約であっても、抵当権設定後に締結されたものについては対抗すること が で き な い と 考 え ら れ て き た し (民 執 五 九 条 二 項) 、 ま た、 賃 貸 借 契 約 に 伴 っ て 締 結 さ れ る 保 証 金 契 約、 お よ び、 そ の 清 算 方 法 に 関 す る 契 約 に つ い て も、 平 成 一 三 年 判 決 は そ の よ う な 立 場 を 取 っ て い た。 と こ ろ が、 「敷 金 契 約」 と いうことになれば、そこから発生する「当然充当」の効力をなぜ抵当権者に対抗できるのだろうか。 (ⅱ)用益の自由と「当然充当」   筆 者 は、 こ の 点 に つ い て、 平 成 一 四 年 判 決 が「抵 当 権 者 は、 物 上 代 位 権 を 行 使 し て 賃 料 債 権 を 差 し 押 さ え る 前 は、原則として抵当不動産の用益関係に介入できない」ということにその根拠を求めたことを、評価すべきである と考える。   このことは、理論的な観点からすれば、平成一三年判決と觝触するものと言わざるを得ない。なぜならば、平成 一三年判決では、賃貸借契約に附随する保証金契約が締結され、物上代位に基づく差押えがなされる前に、この保 証金の返還方法に関する合意がなされていたにも関わらず、この合意の効力を認めなかったからである。学説にお いては、本判決が従前の判例法理と矛盾しないという理由を「明渡し時点での未払賃料を敷金で充当するとの合意 は、…〔物上代位の前提となっている〕賃料額等の合意と同様、物上代位権行使の前提たる事情と位置づける」と い う 点 か ら 説 明 す る も の が あ る[安 永   二 〇 〇 三、 三 九] 。 こ の 理 由 付 け か ら す れ ば、 平 成 一 三 年 判 決 に お い て 保 証 金の返還方法に関する合意が締結されていたことも、抵当権者に対抗することができるということが可能になるよ うに思われる。

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  このような判例法理の觝触は、平成一三年判決の行き過ぎから生じたものである。すなわち、抵当権の法的性質 からすれば、平成一三年判決が「抵当権…設定登記…後に、…賃貸借契約が締結されかつ賃借人から賃貸人に保証 金が授受され、この保証金返還請求権と賃料債権との相殺の合意がなされたような場合においては…、…賃借人と し て は、 右 保 証 金 支 払 の 時 点 に お い て 右 抵 当 権 (根 抵 当 権) の 存 在 を 認 識 し 得 た も の で あ り、 か つ こ れ に 基 づ き 賃 料に対して物上代位権が行使されることも十分に予想し得た」ことから、賃借人による相殺の主張を許さないとし た こ と が 行 き 過 ぎ な の で あ る。 そ こ で、 本 判 決 は「物 上 代 位 に ブ レ ー キ を か け る も の」 [松 岡   二 〇 〇 二 (下) 、 一四]との学説の評価が正当であると考えられる。 (ⅲ)債務の牽連性と「当然充当」   では、本判決が「抵当権者は…用益関係に介入できない」と述べることは、敷金契約について、どのような意味 を 有 す る の で あ ろ う か。 一 方 で、 「抵 当 権 者 は … 用 益 関 係 に 介 入 で き な い」 と い う の は、 抵 当 権 に 基 づ く 物 上 代 位 の限界を示すものである。他方で、第三債務者である賃借人の側に立てば、これが敷金契約の対抗力の根拠となっ ていることは明らかである。そこで、この問題は、物上代位の範囲を画すると同時に、賃借人と賃貸人の事情を抵 当権者に対抗できる範囲をも明らかにするものである。   この問題の解決は、ここまで検討したように、判例法理において認められてきた賃料債権と敷金債権との間の牽 連 性 か ら 導 く こ と が で き る と 思 わ れ る。 学 説 で も、 た と え ば、 [道 垣 内   二 〇 〇 三、 六 六] に お い て は、 本 件 は、 「対 立 債 権 の 密 接 性 ゆ え の 差 引 計 算」 で あ る と 指 摘 さ れ て い る。 本 判 決 は、 た と え 賃 貸 借 契 約 と 敷 金 契 約 と は 異 な る 契 約 で あ る と し て も、 「賃 貸 借 契 約 に お け る 敷 金 契 約 は、 … 賃 貸 借 契 約 に 付 随 す る 契 約」 で あ る と し て 両 者 の 密 接な関連性を認めている。そして、本判決が出される以前から、判例では、これらの密接に関連する契約から別々 〔深川 裕佳〕

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に発生する賃料債権と敷金債権との牽連性が認められてきた。すなわち、本稿で検討した範囲においても、判例に お い て、 賃 借 人 に よ る 明 渡 前 に 賃 料 債 権 の 譲 渡 が な さ れ た に せ よ (前 掲 ③(ⅱ) ・ 大 判 昭 和 一 〇・ 二・ 一 二) 、 賃 借 人 に よ る 明 渡 前 に 賃 借 人 の 債 権 者 に よ っ て 敷 金 返 還 請 求 権 の 差 押 え が な さ れ た に せ よ (前 掲 ④・ 最 二 判 昭 和 四 八・ 二・ 二) 、 二 つ の 債 権 は こ れ ら の 事 情 の 介 入 に 関 わ り な く、 対 当 額 に お い て 消 滅 す る こ と が 認 め ら れ て き た こ と を 確 認 することができた。本件も、賃借人による明渡し前に抵当権者の差押えが介入したとしても、二つの債権は、差押 えの介入に関わりなく、対当額において消滅することを認めたものである。このように、賃貸借契約と、これを前 提として締結される敷金契約とから、たとえ別々に発生した債権であっても、賃料債権と敷金債権という二つの債 権は牽連性を有しているものといえる。そして、この牽連性は、二つの債権を同時に消滅させることが公平である と い う こ と に 支 え ら れ て、 第 三 者 (賃 料 債 権 の 譲 受 人 や 抵 当 権 者) に 対 し て も 対 抗 す る こ と が で き る。 そ こ で、 本 件 において、賃料債権と敷金債権との牽連性に基づいて、賃借人は「賃料債権は敷金の充当を予定した債権」である ことを抵当権者に対して対抗できると考えるべきなのである。 (ⅳ)相殺の担保的機能と「当然充当」   では、このような牽連する債権が対当額で消滅することを対抗できる根拠は何か。筆者は、これを「相殺の担保 的機能」であると考える。このように考える場合には、一つの問題が生じる。すなわち、物上代位に基づく差押後 に明け渡した賃借人が相殺を主張することは、民法五一一条の制限にかかるのではないかということである。もし も敷金返還請求権は預託時に発生するという有力説に立てばこの問題は生じない。これに対して、敷金返還請求権 が明渡時に発生するという立場に立てば、これは一見、困難な問題として現れる。   しかし、たとえ敷金返還請求権が明渡時に発生するという考えに立ったとしても、民法五一一条を次のように解

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釈すれば、この問題を解決することができる。すなわち、民法五一一条は、差押債権者との関係において、差押後 に わ ざ わ ざ 差 押 債 権 者 を 害 す る た め に 自 働 債 権 を 取 得 し て な さ れ る 相 殺 の 効 力 を 制 限 し た も の で あ る と 考 え れ ば [深 川   二 〇 〇 八、 三 二 八 以 下] 、 こ の よ う な 不 都 合 が 生 じ る こ と は な い。 平 成 一 四 年 判 決 の 事 案 の よ う に、 自 働 債 権が賃貸借契約から発生したものであり、受働債権が賃貸借契約を前提とする敷金契約から締結されたものである 場合には、たとえ反対債権が差押後に発生するとしても、差押後にわざわざ自働債権を取得するような詐害性を有 していない以上、民法五一一条の制限には当たらない。また、慣習に従った敷金の預託は、詐害的な賃料の前払い でもない。   このようにして、筆者は、平成一四年判決においては、未払賃料債務と敷金返還債務との相殺が問題となったも の と 考 え、 対 立 す る 債 務 に 存 在 す る 牽 連 性 に 基 づ い て 相 殺 の 担 保 的 機 能 が 成 立 し (第 三 者 に 対 抗 す る こ と が で き る よ う に な り) 、 相 殺 を 妨 げ る 事 由 (相 殺 権 の 濫 用 に 当 た る 事 由) は 存 在 し な い こ と か ら、 Y は X に 対 し て 相 殺 を 対 抗 す ることができるものと考えられる。   平 成 一 四 年 判 決 は、 異 な る 契 約 か ら 発 生 し た 債 権 で あ っ て も、 そ の 牽 連 性 か ら、 相 殺 (差 引 計 算) の 対 抗 が 認 め ら れ た も の で あ っ て、 牽 連 す る 債 務 の 間 の 特 別 の 相 殺 (相 殺 の 担 保 的 機 能) の 一 場 面 と し て、 重 要 な 判 例 で あ る と いうことができる。加えて、この場合には、単に相殺を対抗できるというだけでなく、自働債権の取得が差押えに 遅 れ る 場 合 に も、 相 殺 (差 引 計 算) の 対 抗 を 認 め る こ と が 公 平 に 資 す る 場 面 が 存 在 す る こ と を 明 ら か に す る と い う 点でも、重要である。 〔深川 裕佳〕

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( 3 )担保不動産収益執行と相殺:最二判平成二一・七・三民集六三巻六号一〇四七頁 (A)事実の概要   Aがその過半数の共有持分を有する本件建物について、平成一〇年二月二七日、Aの債権者B銀行のために抵当 権が設定され、かつ登記が経由された。その後、平成一八年五月一九日、本件物件につき担保不動産収益執行を開 始する旨の決定がされ (差押登記は同月二三日) 、Xがその管理人に選任された。   他方で、Yは、抵当権設定登記に先立つ平成九年一一月二〇日に、Aから、本件建物の一区画を二〇年間、賃料 月 額 七 〇 〇 万 円 に て、 毎 月 末 日 ま で に 翌 月 分 の 賃 料 を 前 払 い す る こ と な ど の 約 定 の 下 に 賃 借 し、 こ の た め に、 Y は、 A に 対 し て、 敷 金 (一 億 三 五 〇 〇 万 円〔約 一 九 か 月 分〕 ) 、 保 証 金 (三 億 一 五 〇 〇 万 円〔四 五 か 月 分〕 ) を 預 託 し た。 なお、保証金については、賃貸開始日から一〇年が経過した後である一一年目から一〇年間にわたり均等に分割し て返還することとされた。平成一一年六月二二日、AとYとの間で、Aが他の債権者から滞納処分等を受けたとき には、Aの保証金・敷金の返還債務は当然に期限の利益を失うことなどの合意がされていたところ、甲府市が、平 成一八年二月一四日、固定資産税の滞納を原因として、本件建物のAの持分を差し押さえ、同月一六日にその旨の 差押登記を了したことから、AのYに対する前記保証金の返還債務は、期限の利益を喪失した。そこで、Yは、A に 対 し、 〔一〕 同 年 四 月 一 二 日 到 達 の 内 容 証 明 郵 便 を も っ て、 本 件 保 証 金 返 還 請 求 権 (三 億 〇 七 六 五 万 円) と 同 年 五 月 分 以 降 の 賃 料 請 求 権 と を 対 当 額 で 相 殺 す る 旨 の 意 思 表 示 を し (以 下、 こ れ を「本 件 相 殺( 1 )」 と い う) 、 さ ら に、 Yは、平成一八年七月から平成一九年二月までの間、毎月末日までに、各翌月分である平成一八年八月分から平成 一 九 年 三 月 分 ま で の 八 か 月 分 の 賃 料 の 一 部 弁 済 と し て 各 三 六 七 万 五 〇 〇 〇 円 の 合 計 二 九 四 〇 万 円 (消 費 税 相 当 額 一 四 〇 万 円 を 含 む 額) を X に 支 払 っ た 上 で、 〔二〕 Y は、 A に 対 し、 平 成 一 八 年 七 月 五 日 に、 本 件 保 証 金 返 還 残 債 権

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