- 5 - 「予防教育トップ・セルフ 自己信頼心(自信)の育成」小学3年生プログラムにおける教育効果 の持続性について ーブースター・セッションの実施と効果一 人間教育専攻 人間形成コース 糸林麻都香 はじめに いじめや不登校等,子どもたちの心身の健康に 関わる問題は,大きな社会問題となっている。教 育現場は,それらの問題に取り組んできたが,解 決には至っていない。その理由のーっとして,子 どもたちに問題が起こってから対応するという, 治療的アプローチの取り組みがなされてきたこと が挙げられる。問題が起こってから対応するので は遅く,すべての子どもたちに対して心身の健康 を守る予防的アプローチという新しい視点からの 取り組みを考えるべきである。 さらに,学校教育では,教師の信念や根拠のな い理論に基づいて教育が行われてきた傾向にあり, 教育効果についても,教師の主観で終わってしま うことが多々ある。エピデンスのない教育には, 子どもたちを間違った方向に導いてしまう危険性 があり,より効果的な教育を目指すためには,科 学的な知見を取り入れ,科学的な教育効果評価を 積み重ねる必要がある。 以上をふまえて,本研究では,科学的な知見を 取り入れた学校予防教育の中の一つ, トップ・セ ルフの教育プログラム「自己信頼心(自信)の育 成Jを小学3年生に行い,教育前後の教育効果を 確認した。さらにその教育効果の持続性を確認す るため 4ヶ月後にフォロー・アップを行った。 また,教育効果の低下が起こる可能性を考え,教 育効果の長期的維持に効果的だとされるブースタ ー・セッションを最低限の1回行い,その有効性 指導教員 山 崎 勝 之 も検討した。 方法 調 査 対 象 者 児童は公立小学校2校の3年生189名に協力を 得た。ブースター・セッションを行う群 (BS群) として95名(男子46名,女子49名),ウェイテ イング・リスト群 (WL群)として 94名(男子 46名,女子 48名)とした。そのうち,欠損値を 含むデータを除いた 170名(男子 79名,女子91 名), BS群86名(男子41名,女子45名), W L 群 84名(男子 38名,女子 46名)を分析対象と した。 調査材料・手続き 教育評価効果は,自己信頼心(自信)のプログ ラム実施前後,さらに4ヶ月後のフォロー・アッ プにおいて,自記式質問紙を用いた。この目標達 成度評価質問紙は, トップ・セルフで開発されて おり,プログラムの中位目標に沿ってつくられて いる。また,間接的な教育効果を確認するため, プログラムの実施前後に Q-Uを用いた。フォロ ー・アップについては, BS群は,ブースター・セ ッション後に質問紙を実施し, W L群は,質問紙 を実施した後,ブースター・セッションを行った。 結 果 お よ び 考 察 今回使用した目標達成度評価質問紙の α係数は, α=.37~.89 であった。一部で低い値が見られたが, その他はおおむね許容範囲の値だとし,信頼性を 確認した。
- 6 - まず,プログラムの実施前後の教育効果につい ては, BS群, W L群それぞれにおいて有意に下が る尺度はなく,多くの尺度において得点が有意に 向上していることから,教育効果があったことを 確認した。 次に,教育前とフォロー・アップ期の教育効果 を確認すると,ブースター・セッションを用いた 場合においては,ほとんどの尺度が有意に向上し ているのに対し,ブースター・セッションを用い ない場合は,維持されるものもあるが,低下する 尺度もあった。以上のことから,ブースター・セ ッションの有効性が確認された。 次に,教育後から4ヶ月後のフォロー・アップ 期の教育効果を確認した。ブースター・セッショ ンを行った場合,ほとんどの尺度が有意に向上し ているのに対し,ブースター・セッションを用い ない場合は,ほとんどの尺度で有意に下がってい ることが確認された。以上のことから,自己信頼 心(自信)の育成プログラムにおける教育効果は, 4ヶ月後にはなくなる傾向にあるが,ブースタ ー・セッションを行うと,プログラムの教育効果 は持続できることが明らかとなり,さらに教育効 果を向上させることもわかった。 最後に,授業に関しての印象評価のアンケート を行ったが 9害