難病患者・家族がより質の高い療養生活を送るための影響因子の解明
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(2) もくじ . 1. はじめに ......................................................................................................... 2 2. 研究の背景 .................................................................................................... 3 3. 研究の目的 .................................................................................................... 3 4. 倫理的配慮 .................................................................................................... 3 5. 研究の方法 .................................................................................................... 4 6. 統計分析 ........................................................................................................ 6 7. 結果 ............................................................................................................... 7 8. 考察 ............................................................................................................. 18 9. 今後の展望 .................................................................................................. 20 10. 謝辞 ............................................................................................................. 21 11. 引用文献 ...................................................................................................... 22 12. 研修会の開催について ................................................................................ 23 13. 参考資料①(調査票) ................................................................................ 24 14. 参考資料②(研修会の感想) ..................................................................... 28 15. 感想 ............................................................................................................. 29. 1.
(3) 1. はじめに 日本は、急速な高齢化を背景として、高齢者の増加だけでなく、要介護者の増加が懸 念されている。家族に介護が必要になった際に、介護の意思があるないに関わらず、非 選択的あるいは受動的に介護者になる(ならざるえない)1)。このような中で、本報告は島根 県に在住している特定医療費受給者(以下、指定難病患者)とその介護者を対象に、介護につい てのアンケート調査を行った研究結果をまとめたものである。この研究では、脳血管疾患や認知 症等で明らかにされている介護における負担感のリスク要因が、指定難病患者も同じ要因かどう かを検討するために行った。結果より、指定難病患者を介護する上で、以下の要因が介護負担増 悪への影響因子であることが明らかとなった。. 介護者の 1 日の介護時間 介護時間が長いと、介護負担感を強く感じてしまいやすい 介護者の QOL 介護者の QOL が低いと介護負担感を強く感じてしまいやすい さらに、介護者の QOL は介護者の年齢であったり、定期的に受診が必要な病気があると 低下しやすい. また、介護者が抱えている不安については以下のことが明らかとなった。 介護者の不安 難病は長期にわたる療養が必要となることが多く、どの年代においても経済的な不安が強い. 上記結果は、いずれも普段から難病支援を取り組んでいる支援者であれば、当たり前のことと 捉えてしまいやすい。しかし、進行性かつ慢性の経過をたどることが多い難病という病において は、他の病気における介護と比べて、より意識して支援者は関わることが重要と考えられる。こ れらの対処方法は、本報告書を見ておられる皆様であれば、様々な方法が想像できるのではな いだろうか。 指定難病患者はもちろんのこと、これまで以上に介護者への支援も意識することで、より質 の高い療養生活を送ることが可能であると私は考えている。本報告書を通して、指定難病患者と そのご家族への支援に幾分かの貢献ができることを心から願う。 島根大学医学部附属病院 リハビリテーション部 森脇 繁登 2.
(4) 2. 研究の背景 指定難病患者の多くは、慢性の経過をたどり、患者・家族は深刻な症状、障がい、治 療などに悩むことがしばしば認められる。患者が住み慣れた自宅で療養生活を続ける には、医療機関だけでなく、訪問看護等の地域の社会資源を有効に活用していくことは 言うまでもないが、ご家族等による在宅での日常生活上の介護が極めて重要である 2)。 療養生活の長期化は、症状や障がいの進行・重度化により、医療費や生活費などの経 済的問題だけでなく、家族・介護者の精神的、身体的な介護の負担を深刻化させる。こ のような介護負担のリスクとして、脳血管疾患や認知症の患者を対象とした研究では、 女性、低学歴、同居、介護時間が長い、うつ、社会的孤立、経済的ストレス、介護者に なるという選択の余地がないことが明らかにされている 3)。 一方、指定難病患者における介護は人工呼吸器等の高度医療機器の装着や医療的 ケアなどにより、介護者にも一定の専門性が求められる。さらに、慢性の経過をたどる ことから、経過に応じた介護方法を介護者は創意工夫する柔軟性と多様性も求められ る 4)。つまり、一般的な在宅介護とは異なり、介護負担因子も先行研究で明らかにされ ているものとは異なる可能性がある。しかし、未だ難病患者における大規模研究は行わ れておらず、重度の介護負担となるリスク要因については明らかにされていない。. 3. 研究の目的 島根県における指定難病患者 5287 名の介護者を対象に、介護負担におけるリスク要因を検討 し、指定難病患者および、その介護者がより質の高い療養生活をおくるための要因を統計学的手 法を用いて明らかにすることである。さらに、療養を行うなかで不安に感じていることや困ってい ることを計量テキストマイニング手法を用いて明らかにすることである。. 4. 倫理的配慮 本研究に携わるすべての研究者は「ヘルシンキ宣言」および「人を対象とする医学系 研究に関する倫理指針」に従って本研究を実施した。なお、本研究は島根大学医の倫 理委員会の承認を得て行った。(承認番号 3315). 3.
(5) 5. 研究の方法 -対象者島根県在住の特定医療費(指定難病)受給者証を所有している患者の主な介護者 5287 名である。. -調査方法特定医療費(指定難病)受給者証は1年以内に受給者証の更新が義務付けられてお り、発行後1年以内に必ず更新手続きを行う。この作業は、島根県健康福祉部健康推 進課の職員により行われ、2018 年度の受給者証は 9 月中旬頃から発送作業が行われ る。そこで、本研究はこの発送する際に利用する封筒の中にアンケートおよび返信用封 筒を研究代表者らによって、事前に挿入した。そして、その封筒を島根県健康福祉部健 康推進課へ渡し、通常の受給者証発送業務を行い対象者へ届けた。. -調査期間調査は 2018 年 9 月 1 日から 11 月 30 日に行った。. -調査項目(13. 参考資料①参照)【介護者について】 性別、年齢、指定難病患者との続柄、世帯年収、年収、短縮版 Zarit 介護負担尺度日 本語版、介護期間、介護を助けてくれる人の有無、1 日の介護時間、1 人で外出する時 間の有無とその頻度、就労の有無、治療中の疾患の有無、介護者の最終学歴、介護サ ービスを利用している数、ショートステイ利用の有無、包括的 QOL 尺度、生活や介護で 困っていること、不安に思うことについての自由記載. 【患者様について】 年齢、性別、特定医療費(指定難病)受給者証に記載してある病名、年収、自己負担 上限額、2018 年 5 月の医療費の合計額、人工呼吸器等装着の有無、日常生活の自立 度(老研式活動能力指標)、かかりつけ病院までの時間(車). 4.
(6) -尺度の概要短縮版 Zarit 介護負担尺度日本語版(以下、J-ZBI_8)5)6) 身体的負担、心理的負担、経済困難などを総括し、介護負担として測定することが可 能な尺度である。本尺度は、介護そのものによって生ずる負担(PS: Personal Strain)と 介護者が介護をはじめたためにこれまでの生活ができなくなることにより生ずる負担 (RS: Role Strain)の 2 因子がある。合計 8 問から成り、それぞれの質問に対して「思わ ない」(0 点)から「いつも思う」(4 点)の 5 段階評価で採点する。点数が多いほど介護負 担感が高いことを示す。本研究では、先行研究をもとに 13 点をカットオフポイントとし、 13 点未満は軽度負担群、13 点以上を重度負担群とした。 包括的 QOL 尺度(以下、EQ-5D)7)8) 欧州で開発された簡易に測定できる健康関連 QOL の尺度として幅広く用いられてい る調査表で、患者や一般の人々に自分自身の健康状態を回答してもらうものである。 本調査では、日本語版 EQ-5D を用いて行った。これは、5 項目(移動の程度、身の回り の管理、ふだんの生活、痛み・不快感、不安・ふさぎ込み)からなる 3 段階選択式回答法 である。回答の組み合わせにより、換算表を用いてスコア化(効用値)され、1 が最上の 健康状態、0 が死の状態を表す。 老研式活動能力指標 9)10) より高次の生活機能の評価を行うことを目的として開発された。手段的日常生活(手 段的 ADL)、知的能動性(知的 ADL)、社会的役割(社会的 ADL)の 3 つの下位尺度に ついて評価するものである。解答は「はい」「いいえ」の二択で回答可能で、「はい」1 点 「いいえ」0 点とし、13 点満点で生活自立度を評価する。. 5.
(7) 6. 統計分析 統計学的分析は、SPSS Ver23 for windows を用いて行った。危険率は 5%未満とした。 また、自由記載の分析は KH coder Ver3.0 を用いて行った。. ① 介護負担感別の検討について 介護負担感を軽度負担群と重度負担群の 2 群間で分析した。平均値の比較は、 対応のない t 検定にて行い、性別、住まい、呼吸器の有無はχ二乗検定を行った。 さらに、その結果をもとに従属変数を介護負担感、独立変数を有意差を認めた項目 を選択し、重回帰分析により介護負担増悪の影響因子について検討した。. ② 介護者の QOL について 介護者の記述統計を性別ごとに行い、従属変数を EQ-5D とし、独立変数を老研 式活動能力指標、介護者年齢、介護者世帯年収、介護者病気の有無、J-ZBI_8 総 得点として、重回帰分析により介護者の QOL への影響因子について検討した。. ③ 生活や介護で困っていること、不安に思うことについて 自由記載の分析は、客観的かつ計量的に把握するため、計量テキスト分析を行 った。分析は、特徴語の抽出後、共起ネットワーク分析および年代別の対応分析を 行った。共起ネットワークによる語句の関連性分析は、出現パターンの似通った語 を線で結んだネットワークを描いたものである。共起ネットワークの共起の程度と線 の太さは,Jaccard 係数で測定した共起の程度に合わせ、強い共起関係ほど太く描 画される. 11). 。また、バブルプロットの円の面積は語の出現回数と比例する。 対応分. 析は、年代別に基づくコーディングを行い分析した。. 6.
(8) 7. 結果 アンケートの返信は 1065 名であった(回収率 20.1%)。分析における除外対象者とし て、介護をしていない、および欠損値のあるものを除外し、最終的な分析対象者は 303 名であった。 回答者の疾患の内訳は以下の通りであり、今回は神経系疾患において多くの回答が 得られた(図1)。. 図1. 解答者の疾患分布 神経系疾患(177名) 免疫系疾患(22名) 0%. 骨関節系疾患(20名) . 1% 0%. 1% 2% 2%. 1%. 消化器系疾患(13名) 8%. 呼吸器系疾患(11名) . 2%. 皮膚結合組織系疾患(7名) . 2% 循環器系疾患(6名) . 4%. 血液系疾患(6名) . 4% 59%. 7%. 視覚系疾患(6名) 内分泌系疾患(4名) . 7%. 腎泌尿器系疾患(3名) 代謝系疾患(3名) 耳鼻科系疾患(1名) 染色体または遺伝子に 変化を伴う疾患(1名) 回答なし(23名) . 7.
(9) ① 介護負担感別の指定難病患者および介護者の属性について -指定難病患者の属性(表1)年齢は、軽度負担群72.79歳、重度負担群74.76歳と重度負担群がやや高齢であった。性別は、 軽度負担群が男性 89 名、女性が 117 名、重度負担群は男性が 52 名、女性が 45 名であった。ま た、患者の住まいとして、軽度負担群は自宅 181 名、施設 13 名、病院 12 名、重度負担群は自宅 87 名、施設8 名、病院2 名であった。 経済的状況として、患者の年収は軽度負担群がおよそ140万円に対し、重度負担群はおよそ93 万円であり、軽度負担群が高い傾向を示した。また、医療費上限額は、軽度負担群がおよそ 6691 円、重度負担群がおよそ 6048 円であり、重度負担群が低い金額であった。 介護保険サービスの利用数は、軽度負担群が 1.87 サービスを利用し、重度負担群は 2.50 サー ビスと、重度負担群でより多くのサービスを利用していた。また、老研式活動評価指標では、軽度 負担群が 5.5 点に対し、重度負担群は 4.08 点と低い点数であった。. 表1 指定難病患者の介護負担感別の基本属性. 8.
(10) -介護者の属性(表2)年齢は軽度負担群、重度負担群ともに 68 歳であった。性別は、軽度負担群が男性 88 名、女性 が 118 名、重度負担群は男性が 28 名、女性が 69 名であった。また、仕事の有無については、軽 度負担群で有り 77 名、無し 129 名、重度負担群では有りが 28 名、無しが 69 名であった。また、 介護者の病気の有無については、軽度負担群で有りが 145 名、無しが 61 名、重度負担群では有 りが 67 名、無しが 30 名であった。また、1 週間のうちの外出する日数は、軽度負担群 3.7 日、重 度負担群2.8 日と軽度負担群がより多く外出していた。 経済的状況として、世帯年収は軽度負担群 401 万円、重度負担群 324 万円であり、軽度負担群 が高い傾向を示した。年収も軽度負担群214万円、重度負担群159万円と、こちらも軽度負担群が 高い傾向を示した。 介護状況については、副介護者は、軽度負担群で有りが 128 名、無しが 78 名、重度負担群では 有りが 53 名、無しが 44 名であった。介護年数は軽度負担群6.4 年、重度負担群5.9 年と大きな違 いはなかった。また、1 日の介護時間でみると、軽度負担群 4.7 時間、重度負担群 7.9 時間と重度 負担群が長い時間介護をしていた。 介護者のQOLは、換算表で算出した数値の平均値が、軽度負担群0.8点に対して、重度負担群 0.71 点と、軽度負担群が高い数値を示し、QOL が高い傾向であった。. 表2 介護者の介護負担感別の基本属性. 9.
(11) -介護負担感別の結果のまとめ指定難病患者における軽度負担群と重度負担群の比較で、介護保険サービスの利用数が軽 度負担群が有意に少なかった(P=0.009)。老研式活動能力指標は、合計が軽度負担群で有意に 良好であり(P=0.004)、さらに下位尺度においても手段的ADL および社会的ADL のいずれも、軽 度負担群で有意に良好であった(P=0.002)(P=0.005)。 介護者では、1 週間に外出する日数が軽度負担群が有意に多く外出しており(P=0.02)、経済状 況も世帯年収および介護者の年収のいずれも、軽度負担群が有意に多かった(P=0.02)(P=0.047)。 また、1 日の介護時間が軽度負担群で有意に短く(P<0.001)、介護者の QOL は軽度負担群で有 意に高いことがわかった(P<0.001)。. 以上の結果より、介護負担に関連する因子を明らかにするために、従属変数を介護負担感とし、 独立変数はそれぞれ有意差を認めた変数で重回帰分析を行った(表3)。 その結果、影響を及ぼしている因子として、患者の「社会的 ADL」と、介護者の「介護時間」およ び「EQ-5D」であった。. 表 3 従属変数を介護負担感とした重回帰分析(ステップワイズ法). 指定難病患者の社会的 ADL は、負の関連を示しており、これは指定難病患者の社 会的 ADL 活動が低いほど、介護者は負担を強く感じやすいことを示している(P=0.019)。 さらに、介護者の QOL も負の関連を示しており、介護者の QOL が低いと負担を感じや すい(ことを示している P<0.001)。また、介護時間については、正の関連を示しており、 介護時間が長いほど、介護負担を感じやすい(P=0.003)。. 10.
(12) 前述の通り、指定難病患者の介護負担感増悪因子に介護者の QOL の影響を認めた。 では、介護者の QOL への影響因子は何か。 この点について分析を行ったため、以下より報告する。. ② 介護者の QOL について 本検討における分析対象者は介護をしている介護者 303 名のうち、欠損値を除外し た 217 名(男性 91 名 女性 126 名)である。 介護者および患者の基本属性を、性別ごとの人数分布を以下の表にまとめた。. -指定難病患者の属性(表 4)年齢は、男性 74 歳、女性 75 歳であった。住まいは、自宅が男性 77 名女性 115 名と 最も多かった。年収は男性 90 万、女性 171 万で女性に多い傾向であった。自己負担累 計額は、男性 5000 円、女性 4780 円と男性に多い傾向であった。介護保険サービスの 利用数は、男女ともに 2 つのサービス利用であった。老研式活動能力指標も男女ともに 4 点であった。. 表 4 性別における指定難病患者の基本属性. 11.
(13) -性別における介護者の基本属性(表5)年齢は男性71 歳、女性66 歳であった。世帯年収は男女ともに 300 万円であった。介護の助け がいるのは、男性 50 名、女 74 名と女性に多かった。また、介護時間は男女ともに 3 時間であっ た。現在治療中の病気においては、男性 56 名、女性 93 名と女性に多かった。さらに、EQ-5D は 男性0.768に対し、女性0.705と男性が高かった。介護負担感については、J-ZBI_8 合計得点で男 性8.0 点、女性10.5 点と女性がやや負担が強い傾向であった。. 表 5 性別における介護者の基本属性. 12.
(14) 以上の結果から、次いで QOL への影響因子を求めるため、EQ-5D を従属変数とし、 目的変数を老研式活動能力指標、介護者年齢、介護者世帯年収、介護者病気の有無、 J-ZBI_8 合計点として重回帰分析を行った。 その結果、男性および女性ともに介護者の年齢、介護者の病気の有無、さらに J-ZBI_8 合計点が有意に関連していることがわかった(表 6)(表 7)。. 表 6 男性介助者の EQ-5D を従属変数とした重回帰分析. 表 7 女性介助者の EQ-5D を従属変数とした重回帰分析. 男女ともに、介護者の年齢は負の関連を示しており、これは年齢が若くなるほど、 QOL が低下しやすい(P=0.001)。さらに、介護者の病気があると QOL は低下しやすい (P=0.013)ことが明らかとなった。. 13.
(15) ③ 生活や介護で困っていること、不安に思うことについて 分析対象者は、返信のあった 1065 名のうち、自由記載に回答のあった 563 名である。 分析対象者の平均年齢は 66.12 歳であった。性別は、男性 229 名、女性 334 名であっ た。年代別の人数は 10 歳代 8 名、20 歳代 11 名、30 歳代 25 名、40 歳代 48 名、50 歳 代 98 名、60 歳代 172 名、70 歳代 149 名、80 歳代 48 名、90 歳代 4 名であった。. -全体の共起ネットワークによる関連語(図2)生活や介護における不安と強い関連を示した語は、「病気」「将来」であり、将来への病 気の不安が強いことがわかった。また、「病院」と関連を強く示したのは、「行く」「通院」 であり、さらに「大変」という語ともつながりを示したため、病院へ行くことの大変さが感じ られた。. 図 2 回答全体の共起ネットワークの結果. 14.
(16) -年代別の対応分析により抽出された語(図 3)年代ごとの対応分析を行った結果、抽出された特徴語は、20 歳代「医療費」「お金」、30 歳代「治療」「負担」、40 歳代「仕事」「収入」、50 歳代「医療費」「お金」、60 歳代「生活」、 70 歳代「心配」であった。それぞれの単語が含まれる文章には、「高い医療費」「高い自 己負担額」、「増える治療費」、「仕事の収入減の負担」、「少ない年金の心配」などが書 かれていた。. 図 3 年代別の対応分析. 15.
(17) -年代別の対応分析による結果から導きだされた特徴語の文章(一例)10 歳代. ・制度の変更などに伴って、自己負担上限額がだんだん高くなるのが困る。 ・これ以上自己負担上限額が高くなれば、病院に行くのをやめたくなる。 ・高い薬代を受給者症をもらえなくなったらどうやって支払えばいいのか考える。 ・薬代が急激に高くなって、家計を圧迫している。 ・医療費が高い。. 20 歳代 50 歳代. ・仕事に行くことが出来ないときがあります。 そういったときは、収入が少なくなり、医療費を払うお金がありません。 ・もし入院となっても動いてくれる人もいません。お金もありません。 将来はとても 不安です。 ・とにかくお金が足りない、今は親に頼って生きています。 ・親も年なので自分より先に死んだらと思うとますます不安になる。 ・お金がないと家中がうまくいかない。 ・家の中のことは他の人に言っても理解されません。. 30 歳代. ・2割負担でも病気の人はお金の負担になる。 ・外出が困難で家に閉じこもりがち。バスの便も悪く、タクシーも頻繁に使うと 経済的に負担が大きい。そのため買い物も不便である。 ・年々増加する自己負担金について将来がどうなるのか不安。 ・将来、一人になった時が非常に不安である。 ・将来の生活やその後の治療費等がどのようになるのか。また、収入などにどの 程度負担になるのかなど心配です。. 40 歳代. ・今後 10 年仕事ができるのか、収入の面、体調、精神的な面、両方とも心配です。 ・仕事を休むと収入が減るし、相談もできず不安に思います。 ・筋力が完全になくなった場合、仕事(収入)がなくなる不安が強い。 ・今後病状が進行すると仕事が続けられなくなると収入がなくなり生活が不安です。 ・今は少しの時間仕事をして収入がありますが、病気が悪くなって、 働けなくなった 場合の生活が不安である。. 60 歳代. ・これからの生活には収入面で不安があります。 ・年金も少なく、生活は大変です。 ・4-‐5 年後に透析を受けなければならないようですが、その時の生活やその後の 治療費等がどのようになるのか。 ・再発することもあると言われましたが、まだまだ働かないと生活ができない為、 治療を続けながら働いています。 ・将来どのように病気が進み、生活がどのようになるのか不安。 ・自己負担額が今後増加すると生活が苦しくなるので不安です。. 16.
(18) ・治療費、特に服用薬が高価であり生活費が苦しい。長期入院になれば非常に心配. 70 歳代. である。 ・この年金額で入所できる施設があるのか心配です。 ・年金のこと、老老介護のことが心配です。 ・老人保健施設は、なかなか空かないとの事。又、額もかなりかかるので心配です。 ・施設があった場合も、高額なときは生活費を圧迫してしまうため心配です。 ・年金が少ないので元気でいつまで仕事ができるかが心配である。. 17.
(19) 8. 考察 本研究は、指定難病患者の方々が質の高い療養生活を送るために、介護者の介護 負担感と QOL の関連要因を明らかにするために、統計学的な手法を用いて分析を行っ た。 その結果、介護者の介護負担感に影響を及ぼしている因子は、指定難病患者の「社 会的 ADL」と、介護者の「介護時間」および「EQ-5D」であった。さらに、介護者の EQ-5 D は男女ともに介護者の年齢、介護者の病気の有無が有意に関連していることが明ら かとなった。 介護負担感に関する先行研究の多くは、介護負担軽減の方法として、介護者が介護 から解放され心身ともに休むことができる時間を積極的に作ることが重要とされている。 本研究結果においても、介護時間との関連が示されたことから、介護者が介護から解 放される時間は、特に重要であると考える。 介護時間については、過去の様々な報告から、直接的な介護時間を減らすことの重 要性を示すものが多い。つまり、積極的な介護サービスの利用、あるいは介護サービス の中でもショートステイのような宿泊を伴うサービスを優先的に利用すると良いとされて いる. 12). 。また、指定難病患者の介護は、1人で完璧に介護を行うことは難しいため、症. 状が軽いうちから、できるだけ多くの協力を得る体制づくりをすすめている。介護負担が 大きいまま長期間の介護を行うことは、介護者にとってストレスであり、心身の健康を損 なうことで介護者の QOL 低下を招きかねない。本調査からも、介護者の病気の有無は QOL へ影響しており、さらに介護負担感には介護者の QOL が影響していたため、支援 者は介護者の心身の健康にも、より注意しなければならないと考える。 また、指定難病患者の病状が進行し介護が大変だと自覚する前から、なるべく介護だ けではなく、社会とのつながりを介護者が持っていることも、介護者の QOL を保つため には重要である 13)。そのため、介護者の QOL を保つためには、患者・家族の会など、他 の指定難病患者やその家族と触れ合いをもつことも必要なのかもしれない。 質の高い療養生活を維持するためには、早期から介護者の介護負担の軽減は不可 欠である。特に指定難病患者の場合、経過とともに医療行為が必要なこともあり、喀痰 や吸引、あるいは導尿などの処置も必要になることもしばしば認められる 14)。そうなれば、 処置に必要な物品の購入も増えることから経済的な負担が大きくなる。 この経済的負担については、本研究の調査で介護や生活で不安に思うことや困って いることなどを自由に記載してもらった結果と一致していた。年代別に分析を行った結 果、「医療費」「お金」「治療」「負担」「仕事」「収入」など、どの年代においても経済面に 18.
(20) 関する用語が、特徴語として抽出された。つまり、毎月の医療費や自己負担額、仕事に おける収入などの不安が強いことが明らかとなった。 難病は慢性の経過をたどり、生涯にわたりつきあうことが多い病気であることから、 様々な環境の変化に伴い、未来や老後などの、将来の生活がイメージしづらい。長期 的な問題となれば、直接的な影響を受けやすいのは経済面であり、これが不安とつな がる用語として表出されたのではないだろうか。よって、支援者はこれまで以上に療養 生活における経済的な視点も支援の際には十分に留意する必要があると考えられた。 平成 27 年 1 月 1 日より「難病の患者に対する医療等に関する法律」が施行された。こ れは、持続可能な社会保障制度の確立をはかるための改革の推進に関する法律に基 づく措置として、指定難病患者に対する医療費助成に関して法定化することで、公平か つ安定的な制度を確立するためである 15)。 指定難病患者や家族を取り巻く制度面の整備が行われているなかで、患者・家族の 様々な不安は拭いきれておらず、難病という病気そのものの不安は言うまでもないが、 療養を続けていく上での経済的な不安も強い。この点は、社会保障が十分に一人一人 の指定難病患者や家族に伝わっていない可能性もあるため、現状の社会保障制度を わかりやすい表現で、患者だけでなく、家族や支援者にも理解するためのツールが必 要と思われた。. 19.
(21) 9. 今後の展望 難病は、疾患ごとに症状や重症度、あるいは進行性の経過を辿るなど、病態は異な る。そのため、疾患に応じた負担感の違いなども考えなければ、本来のリスク要因の検 討にはならない。今後は、疾患ごとの負担感の分析についても検討していきたい。 また、介護負担感は、介護者一人一人の考え方や捉え方で、大きく左右されるもので もある。信頼している人、仲の良い友人、あるいはふとした時に聞いた言葉や見た文章 などで、急に気持ちが軽くなり、負担感が軽減されることもある。そのような中で、負担を 感じやすい人や負担を感じにくい人もいるのではないだろうか。介護者それぞれのパー ソナリティなども、介護負担感の研究を行う上では重要な視点だと考える。そのため、今 後はこのような視点も加味した上でさらに検討していきたい。 一方で、現在強く負担を感じている介護者がいるのも事実であり、そのような方々の 負担を軽減していくことは急務である。負担を減らすためにも本研究結果より、まずは 取りかかれることを始めていきたいと考えている。本研究結果より、お金の不安が多い ことが明らかになったため、不安解消に向けた取り組みを行いたい。まずは、難病の療 養生活についてのハンドブック等の作成を検討している。そのために、現在作成方法に ついて、共同研究者と検討しているところである。ぜひ実現し、少しでも難病支援におけ る一助となる活動を引き続き行っていきたい。. 20.
(22) 10.. 謝辞. 本研究にご協力頂いた、島根県内の特定医療費(指定難病)受給者の皆様と、その ご家族の皆様に心より感謝申し上げます。また、お忙しい中本研究にご協力頂いた多く の協力者の方々に深謝致します。 . 21.
(23) 11. 引用文献 1) 井口 高志: 認知症家族介護を生きる-新しい認知症ケア時代の臨床社会学-, 東信堂, 2007. 2) 泉宗 美恵: 在宅療養者の医療ケアを行う家族の介護ストレスに及ぼす介護 環境の影響. 民族衛生 76(4): 155-161, 2017. 3) 村上 正和: 家族介護者の介護負担感との関連因子についての文献的考察. 作業療法 36(4):386-395, 2017. 4) 渡辺 千種: 人工呼吸器を装着した神経難病患者が在宅療養継続困難となる 要因の検討. 難病と在宅ケア 20(5):55-58, 2014. 5) 荒井 由美子: Zarit 介護負担尺度日本語版(J—ZBI)と短縮版(J-ZBI_8)の概 説および J-ZBI_8 の新たな利用法. 臨床精神医学 45(5):591-596, 2016. 6) Arai, Y,. Zarit, S.H.:Determining a cutoff score of caregiver burden for predicting depression among family caregivers in alarge population – cased sample. Int J Geriatr Psychiatry 29(12):1313-1315, 2014. 7) EuroQol Group. EuroQol; a new facility for the measurement of health-related quality of life. Health Policy; 16: 199-208, 1990. 8) 日本語版 EuroQol 開発委員会, 日本語版 EuroQol の開発: 医療と社会, 8, 109-123, 1998. 9) JST 版活動能力指標利用マニュアル. 第 1 版. 2014. 10)古谷野 亘: 地域老人における活動能力の測定-老研式活動能力指標の開発- 日本公衆衛生雑誌 34(3): 109-114,1987. 11)樋口 耕一: 社会調査のための計量テキスト分析 -内容分析の継承と発展を目 指して-, ナカニシヤ出版, 2014. 12)斎藤明子他: 在宅で療養している筋萎縮性側索硬化症患者の介護負担. 日本 地域在宅看護学会誌 3(1):38-45, 2001. 13)加藤由里 他: 在宅生活をおくる神経難病患者の健康関連 QOL-SF-36 を用いて -. 北関東医学 64; 197-203, 2014. 14)中川 悠子: 多系統萎縮症の介護負担と QOL. 難病と在宅ケア 18(6):45-48, 2012. 15) 伊 藤 た て お : 患 者 会 か ら み た 難 病 法 と 指 定 難 病 制 度 . 医 学 の あ ゆ み 258(12):1128-1132, 2016. . 22.
(24) 12. 研修会の開催について 自由記載における研究結果より、「お金」の不安や心配が強いことが明らかにと なったことから、島根県内の医療・福祉従事者および当事者を対象に、下記テー マの研修会を 2019 年 6 月 30 日に開催した。講師は、社会保険労務士 松原 智治 氏で、講演タイトルは治療と仕事、様々な制度と暮らしのファイナンスとした。 参加者は、支援者 16 名(医療ソーシャルワーカー、保健師、介護支援専門員、ハ ローワーク職員など)、当事者 6 名(家族含)であった。 研修会終了後に行ったアンケートより、お金に関する悩み事については参加者の 8 割が解決できたと回答しており、意味のある研修会であった。また、感想にもあ るように、新たな視点や見直す機会になったなど、満足度の高い研修会となった (14.参考資料②参照)。 しかし、当事者の参加者が少なく、外出できない当事者への配慮等が不十分で あった。そのため、来場型の研修会だけではなく、オンライン中継やオンデマン ド形式などの企画を検討し、改めて開催を検討したい。 23.
(25) 13. 参考資料①(調査票) . 21 24.
(26) 25. 22.
(27) 26. 23.
(28) 27. 24.
(29) 14. 参考資料②(研修会の感想) 一番印象に残った内容は何でしたか? 研修会の感想をお書きください . 28.
(30) 15. 感想 関係機関のご協力を得て大規模な調査を行い、結果に基づいた研修会を開催で きた。さらに、研究結果を報告書にまとめて県内の難病支援従事者に配布するこ とができたことが良かった。これらを遂行することができたのは、ご協力頂いた 指定難病患者およびご家族のおかげである。心から感謝致します。また、研究の 遂行だけでなく、研修の開催、報告冊子の作成に至るまで、普段の業務が忙しい 中でも協力して頂いた共同研究者の皆様にも、この場をお借りして感謝致します。 研究を進める上での仲間の大切さを改めて感じました。 本研究を通して共同研究者や研究に協力を頂いた公的機関とも良好な関係を構 築することができたため、さらに発展的な活動へとつなげ、難病支援の充実に貢 献していきたいと考えている。 本研究は、公益財団法人在宅医療助成勇美記念財団 2018 年度(前期)一般公募 「在宅医療研究への助成」による研究助成を受けて実施された。 . 令和元年 10 月 1 日 第一版発行 発行 島根大学医学部附属病院 リハビリテーション部 〒693-8501 島根県出雲市塩冶町 89-1 TEL:0853-20-2457 FAX:0853-20-2305 EMAIL: moriwaki@med.shimane-u.ac.jp 無断転載禁止 29.
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