240 (104) 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
トヨ ダ マサ コ豊田昌子(昭和37
博士(医学) 乙第1450号平成6年3月18日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
心血血管手術における脳梗塞発生の危険因子としての脳動脈狭窄に関する検
討 (主査)教授 重田 帝子 (副査)教授 細田 瑳一,相川 英三論文 内 容 の 要 旨
目的 早大血管手術時にその補助手段として体外循環が用 いられるが,その際に術後の神経症状の発現を見るこ とがある.そこで,開胸術を前提とした心大血管疾患 患者に対し,術前に脳血管撮影を施行し,その血管撮 影像と開胸術術中および術後の経過を比較し,脳動脈 内示の変化と術後の閉塞性脳血管障害発生との関連に ついて検討した. 対象および方法 開胸術を予定した男性27症例,女性13症例,年齢 23~74歳(平均52歳)の40症例の心大血管疾患を対象 とした.疾患の内訳は胸部大動脈瘤19例,胸部大動脈 解離18例,弁膜疾患2例,心筋梗塞1例である.脳血 管撮影はセルジンガー法を用いて両側鎖骨下動脈を含 む全ての脳血管を撮影した. 結果 40症例中33症例に手術が行われた.そのうち12例 (36%)に頸動脈または椎骨動脈あるいはその両者に狭 小化が見られ,うち3例に中等度以上の狭小化を含む 複数血管の狭小化が認められた.このうち1例に術後 脳梗塞が発生し,1例が術後に死亡した.この死亡例 も術後脳梗塞の発生が強く疑われた.これら2例では 術前より高血圧を合併しており,術中の血圧低下時間 も長かった.また,他の1例は出血により術中に死亡 した.なお,1カ所のみ軽度の脳血管狭小化を認めた 他の9例では脳梗塞発生はみられなかった.手術施行 例中,脳動脈狭小化の見られなかった21例中2例は術 中あるいは術後の出血により死亡し,1例は術後に DICで死亡した.残りの18例には脳障害の発生はみら れなかった. なお非手術例7例中3例に強度,2例に軽度の脳動 脈狭小化を認めた.これらのうち2例では強度の脳動 脈狭小化のためにこれまでの経験に基づき手術が見合 わせられたものである. 考察 体外循環時は,脳血管のautoregulationが消失し, 血圧変化に応じて脳血流は変動する.脳動脈狭窄部よ り末梢では脳血流は低下し,体外循環中は定常流とな るためさらに末梢の血流は低下する.また,高血圧症 例ではautoregulationの上方偏位により通常より高 い血圧が要求される.今回の症例が示すように,術前 に高度の脳動脈狭小化がある場合,体外循環時の定常 流での低血圧と大きく関連して,術後神経症状の発現 を惹起される原因となり得ると考えられた.また,脳 動脈の狭小化が複数血管に存在している場合にはさら に術後脳梗塞の発生頻度を上昇させる原因となる可能 性が大きいと考えられる. 結論 脳動脈の狭窄は,その程度により体外循環下におけ る定常流下での低血圧と関連し,心大血管手術に際し て脳虚血による神経症状発現の重要原因となり得るこ とが示唆された. 一846一241