〔害五畿。4第鷺,勾留〕
原 著漏斗胸患者の呼吸機能に関する研究
一手術前および手術後の評価一
東京女子医科大学 第1外科学教室(主任 カグ ラ オカ ハル ピコ 神 楽 岡 治 彦 新田澄郎教授) (受付平成2年2月21日)AStudy of Respiratory Function, before and after Surgery, in Patients with Funnel Chest
Haruhiko KAGURAOKA
Department of Surgery I(Director:Prof. Sumio NITTA) Tokyo Women’s Medical College
Quantitative assessment of respiratory function has not been well documented yet in patients with anterior chest wall deformities. We assessed respiratory function in l38 patients with funnel
chest, with special reference to the severity of their deformities.
We defined the severity of funnel chest based upon our previously reported index and CT−index, the shortest length between the sternum and the vertebra divided by its internal transverse distance of the thorax on computed tomographies. We measured the respiratory function of patients with the use of an automatized respirometer, before and after surgical treatment(sterno−costal elevation;SCE, or sternal turn−over;STO).
Following results were obtained.
1) In patients with funnel chest,there was a significant positive correlation between%VC and CT−index(y=137x十58, n=138, r=0.61, p〈0.01), proving that the severity of chest wall deformities does correspond to that of restrictive disorder.
2)The level of%VC, decreasing 10%in the 2nd postoperative month, recovered to its baseline within 6 postoperative morlths.
In the 5th postoperative year respiratory function including ventilatory function, lung volumes and diffusing capacity, were averaged close to the standard values(n=63), suggesting our surgical correction of chest wall deformities did contribute to improve respiratory function of patients with severe funnel chest.
緒 言 漏斗胸患者の呼吸機能に関する従来の研究で は,肺活量:,最大換気量,全肺気等等が欝乎を示 す症例を認める一方,これらが正常値である症例 も存在することが報告されてきた1)∼5). しかし,これら諸報告の多くは,呼吸機能検査 の成績に相違を認めるが,対象症例の漏斗胸患老 の前胸部陥凹度を明確には記載しておらず6)∼9), 従って陥凹度と呼吸機能との関係7)8)については ほとんど検討されていない.また,漏斗胸患者の 残気量,拡散能について述べた報告3)4)10)は少な い.このため,本研究では漏斗胸患者の呼吸機能 諸量を測定し,前胸部陥凹度との関係について検 討を加えた. 漏斗胸患者の手術後の呼吸機能については改善 されるという報告1)6)11>∼13)の他,改善は得られない
あるいは呼吸機能低下を来すという報告2》5)8}10)も 少なからず見られる.しかし,従来の報告では手 術症例の陥凹度は不明瞭であり手術術式も種々で ある.従って,術後の呼吸機能をより明確にする ために教室における漏斗胸手術後の近接期および 遠隔期の呼吸機能を測定し,手術による影響につ いて陥凹度と手術術式を考慮して検討した. 対 象 対象は術前群,術後群(近接期,遠隔期),対照 群に分類した.なお,術前群,術後群とも漏斗胸 にMarfan症候群または心疾患を合併した症例は 対象より除外した. 1.術前群 1985年1月より1989年5月までに当教室に入院 した漏斗胸患者683例のうち12歳以上の138例を対 象とした.年齢は12∼55歳(平均19.6±7.6歳), 性別は男性104例,女性34例であった.漏斗胸の陥 凹度は教室の臨床分類均では,Grade II(比較的陥 凹が強く,心肺の圧迫があるもの)45例,Grade III (陥凹がさらに強く,心肺の圧迫も著しいもの)86 例,Grade IV(陥凹が最も強く,最陥凹部胸骨内 側面が胸椎前面に達するもの)7例であった. 2.術後群 胸骨翻転術(sternal turn−over;STO)且5)または 胸肋挙上術(stemo・costal elevation;SCE)16}を 施行した漏斗胸患者を術後群とした. 1)近接期 1987年9月より1988年5月までに当教室にて手 術施行した漏斗胸患者115例のうち,12歳以上かつ 術後に呼吸機能検査を施行した22例(男性17例, 女性5例)を対象とした.手術時年齢は15∼41歳 (平均21.5±7.8歳)であった.陥凹度はGrade II 7例,Grade III 12例, Grade IV 3例であり,手
術術式はSCE, STOそれぞれ11例であらた. 2)遠隔期
1983年1月より1984年12月に手術施行し,術後 約5年経過した63例(男性46例,女性17例)を対
象とした.手術時年齢は,3ん40歳(平均9.9±7.7 歳)であり陥凹度はGrade II 31例, Grade III 32 例であった.術式はSCE 52例, STO 11例であっ た. 3.対照群 1987年1月由り1988年12月に当教室に入院した 患者より胸郭変形を認めない50症例を無作為に抽 出し,胸部CTスキャンにより胸郭の形を評価す る際の対照群とした.年齢は12∼67歳(平均46.2± 14.0歳),性別は男性28例,女性22例であった. 方 法 漏斗胸の前胸部陥凹度の評価には,教室の臨床 分類とCT indexを使用した. CT indexは術前群 および対照群の最陥凹部での胸部CTスキャン像 より次式により算出した17)(図1). CT index二最陥凹部内側と椎体前面との距離/ 骨性胸郭最大横径 また,CT indexと教室の臨床分類との関係に ついて検討した. 呼吸機能検査は術前群および術後群ともに肺気
量として肺活量(VC),換気量として1秒量
(FEVL。),最大換気量(MVV)を測定した.また, 術前群および術後群とも一部症例では肺気量としてVCの他,機能的残気量(FRC),全肺気量
(TLC),残気量(RV),ガス交換能としてDLcoを 測定した.術前群ではさらにV25, V5。を測定した. 術後群(近接期)では,術後2,6,12ヵ月に 呼吸機能検査を施行し,呼吸機能諸量の術前から の変化をSCE, STOの術式別に検討した.術後群 (遠隔期)では術後約5年時に呼吸機能を測定し た.術後群(遠隔期)63例のうち術前の%VCが判CT index=上_
aa=骨性胸郭最大横径
b=最陥凹部内側と椎体前面との距離
図1 CT index明している25例(Grade II 11例, Grade III 14例) については,それぞれの術後5年半の%VCとの 比較を行なった.また,術後5年時の%VCを含め た呼吸機能諸量に関しては術後群(遠隔期)の63 例をSCE, STOの術式別に検討した.さらに,症 例数の多いSCE施行例については,以下の両群 の比較を行なった.すなわち,術後群(遠隔期) より抽出した術前の前胸部陥凹度Grade IIかつ 手術時年齢6∼10歳の16例よる成る手術群と術前 群より抽出したこれら16例と陥凹度および年齢の 対応する漏斗胸患者15例より成る非手術群であ る.手術群,非手術群の両群の平均年齢に有意差 は認めな:かった.陥凹度の臨床分類Grade IIIの 症例についても同様の比較を行なった. 呼吸機能測定には,Chestac 25(チェスト社製) を使用し,被験者座位にて行なった.呼吸機能酌 量の測定値は,Chestac 25内蔵の予測式による予 測値に対する%表示とし,平均値±標準偏差で表 した. なお,FRC, TLC, RV, DLc。の各項目の測定 は小児では信頼性に乏しいユ8)とされるため,測定 時年齢12歳以上の症例に限定した.VC, FEV、.o, MVVなどについても測定した症例は8歳以上で あり,被験者の年齢,協力度には配慮した. 統計処理は,Student’s t−testを行ない, p<0.05 を有意差判定規準とした. 成 績 1.術前群 肺活量(%VC)は, Grade II群90.3±12.1%, Grade III群85.3±16.2%, Grade IV群68.6±
12.9%であり,前胸部陥凹度の増強に伴い拘束性
変化は有意に増加した(図2).
1秒率(FEVL。%)は, Grade II, III, IVの各
群において平均値は約85∼90%であり,閉塞性変 化はいずれの群においても認められず,群間差も 認められなかった(図3). しかし,%FEV1.oはGrade II群で73。5±ユ6,4% を示し,陥凹度が増すにつれてさらに低値をとる 傾向がみられた(図4). %MVVは,ぼらつきが大きかったが平均値は
Grade II群で80。6%であり, Grade III, IV群で
はさらに低値をとる傾向を認めた(図5).
%FRC,%TLC,%DLcoは, Grade II, III, IV群
ともにほぼ予測値に近い値ないし軽度減少した値 となった.%TLCは陥凹度が強くなるにつれて低 くなる傾向がみられた. 匪V1、。% 〔%) 100 50 0
日志
84、r±「3 0 85.5±15,0 (n=ア〉 〔n=45) (”=86) Mean±S. D. II Iil w 臨 床 分 類 図3 漏斗胸の術前臨床分類とFEVL。% %VC (%) 100 50 0 { 90.3±12,1 (n需45) 85、3±16.2 (n=86) } **lP〈σ.σ1 *:Pく0.05 Mean±S. D. 1 6811封i’9 1%1 100 %FEV1.o 50 II iII IV」上一L___L
一一
臨 床 分 類 図2 漏斗胸の術前臨床分類と%VC 0 17灘4
}1聯7
Mea口±S, D. } 6011圭ll層。 II III 臨 床 分 類 図4 漏斗胸の術前臨床分類と%FEV、.。表1 漏斗胸の術前臨床分類と%FRC,%TLC,%RV,%DLc。 %FRC %TLC %RV %DLC。 Grade II in=16) 101,5±11,2 104.7±9.5 134,2±35.8 99,0±23.9 Grade III in=28) 89.8±17.7 98,9±17.3 116.0±34.1 97.6±19.9 Grade IV in=2) 96 87 124 100 (Mean±S.D.) 〔%) 100 %MVV 50 0 { { 80『6±22・8 79、3±22.8 (・=45) (,・86) Mean±S, D. 68.2±21、5 (n=ア) CT index O.6 0.5 D.4 0.3 II 1II 臨 床 分 類 図5 漏斗胸の術前臨床分類と%MVV %RVは,他の呼吸機能諸量よりぼらつきが大
きい傾向にあり,Grade II, III, IV群いずれにお いても増加していた(表1). CT indexは漏斗胸患者では対照群に比し明ら かな低値を示し,またCT indexと臨床的陥凹度 との関係においてはGrade II群がらIV群へ陥 凹度が強くなるにつれてCT indexは有意に低値 となった(図6). CT indexと呼吸機能諸量との関係は,%VC, VC/m2との相関係数がそれぞれ0.61,0.58と他よ り高値であった(表2).以下TLCに軽度の相関 が認められたが,その他の指標との明らかな相関 関係は認められなかった.CT index(x)と最も 良好な相関関係を示したのは%VC(y)であった. (y=137x十58, n=138, r=0.61, p<0.01)(図7). 2.術後群 1)近接期 %VCはSCE, STO施行例において個々の症例 0.2 0.1 0 : …・
L
権
多 O.42±G.G6 n=50 *;P<0,01 Mear1±S. D. * * 一一「「『『一一「 0.25±二〇.07 0.18±0,05 0.09±0.05 けサ … 7 ●L一
* 翫 …: 藷 鉱 …. n=85 }撞
多 n= 1} ● 対照群 II ill IV L臨 床 分 類」 図6 漏斗胸の術前臨床分類とCT index 表2 CT indexと呼吸機能諸量:の相関係数 %VC VC/m2 %TLC TLC/m2 %FRC FRC/m2 %RV RV/m2 0,61 0,58 0.51 0.52 0,29 0,45 0.22 0.18 FEV、.。% FEV1.。/m2 V5。 ▽25 ▽5。バr25 %MVV %DLco DLC。/m2 0,07 0.25 0.10 0.10 0,07 0,12 −0.09 −0.01 (m2:体表面積) はほぼ同様の経時的変化を呈した.すなわち,術 後2ヵ月に減少し(減少率0.2∼23.7%,平均 1⑪.1±5.9%),術後6ヵ月にはほぼ術前値に回復 し,次いで術後12ヵ月に軽度上昇したが術前値と%VC 〔%〕 100 50 〔} .・.二:3・・;・・ . :3 :≡豊.践 ●. ・ .’
G・∵iri・;
3 。 FEV19% 〔%) 100 50SCE
術前 2 6 12 月 L一一一術 後一一」 n=138 y=137x+58 r講0.61 pく0.01 〔%) 0.1 0.2 0.3 CT index 図7 漏斗胸のCT indexと%VC (%} 150 100 %VC 50 0SCE
n=日 ***:p<0.DO5 **:P<0.01 一L_____一」L__一一___一_」 0.4 FEV、。% 100 50 0STO
n=11術前2 6 12月
L術 後一一」 図9 術後近接期のFEVL。%の変化 *** *** ** 〔%) 150 100 %VC 50 o 術前 2 6 12 月 L一術 後一一」 STO ・=11 ***:p<0、005 く L」L_一」L__一一____」 *** *** ** 術前 2 6 12 月 L_術 後一_」 図8 術後近接期の%VCの変化 術後12ヵ月の値に有意差を認めなかった(図8). FEVL。%は, SCE, STO各施行例とも術後に有 意な変化は認めず,術後12ヵ月時にも明らかな閉 塞性変化ぱ来さなかった(図9). %MVVは,個々の症例間のばらつきが大きい がSCE施行例では術後12ヵ月時に軽度増加を認 めた(図10). %FRCは, SCE, STO各施行例とも術後2ヵ月 に減少傾向を示したが術後12ヵ月での術前値との 差は認めなかった(図11). %TLCは,術後2ヵ月に減少した後増加傾向に なり,%VCと同様の変化を示した. SCE, STO各 施行例とも術後12ヵ月では術前値との差は認めな かった(図12)。 %RVは, SCE, STO各施行例とも術後の変化 は不定であり,術後12ヵ月でも高値を呈しており 術前値との有意差は認めなかった(図13).%DLcoは, SCE, STO各施行例とも術後の増減 はぼらつきが大きく有意な変化は認めなかった
〔%) 150 100 %MVV 50 0
SCE
n=11 **:PくG.Gl *:p<0.05 L___」L_一_」 ** * ** 術前 2 6 12 月 L一一術 後一一一」 〔%) 150 100 %FRC 50 0SCE
n−7 術前 2 6 12 月 L一一術 後一一」 〔%l 150 100 %MVV 50 0STO
n=11 *:p<0.05 %FRC 〔%! 150 100}
術前 2 6 12 月 L一一一術 後一一」 図10術後近接期の%MVVの変化 50 術前 2 6 12 月 L術 後一一一」 図11 術後近接期の%FRCの変化 (図14). 2)遠隔期 術前の%VCが明らかな25例についてみると, Grade II, III群ともに術前と術後5年時の%VC平均値に有意な変化は認めなかった.しかし,個々 の症例の変化をみるとGrade II, III群にて%VC
の減少を示したのはそれぞれ3例,6例であった が,増加した症例は各群ともに8例に認めた.こ の結果,術後5年時に拘束性障害(%VC<80%) を示した症例数は各群とも2例のみであり減少の 傾向にあった(図15). 術後5年時の%VCを含めた呼吸機能諸量は, SCE, STO各施行例とも予測値に近い値を示した (表3).ただし,SCE症例では%FRCが72.1± 16.5%と低値であった. 術前の前胸部陥凹度,年齢を対応させたSCE 施行後5年の手術群,非手術群の比較では陥凹度 Grade IIの場合,手術群の%FRCが低値であった 以外は非手術群と差を認めず,ほぼ予測値に近い 値を示した(表4). Grade IIIの場合も手術群の%FRC低下傾向を 認めたが,二上の呼吸機能諸量に有意差は認めな かった(表5). 考 察 漏斗胸患者の前胸部陥凹度と%VCとの関係を 検討し,胸郭変形度の増強に伴い拘束性変化が増 加することが判明した. 漏斗胸患者の%VCに関する諸家の報告1)∼5)で は対象症例の一部に%VC低下を認めたとするも のがある.Wegら4)は対象症例25例中3例は%VC が80%以下であったと述べており,Klinkeら5)は, 対象症例42例の半数の%VCが予測値の80%以下 であり,とくに症例の10%は予測値の55%以下で あったと報告している.これらの症例の前胸部陥 凹度の程度は不明であるが,今回の測定結果では 図7に示されるように前胸部陥凹度が%VCと強
(%) 150 100 %TしC 50 0
SCE
n=7 **:P〈0.01}
術前 2 6 12 月 L一術 後一一」 (%) 200 %RV 100 日前 2 6 12 月一術 後■
〔%} 150 100 %TLC 50 0 STO .=9 く コロ 一L__一* * 術前 2 6 12 月 L一術 後一一一」 図12術後近接期の%TLCの変化 い相関を有することが明らかであり,陥凹度の記 載なしに呼吸機能を論じることはできない. 本研究では対象症例138例について測定を行 なったが,従来の報告のほとんどは症例数も少な く19),陥凹度と肺機能との定量的対比を行なった 成績はみられない. 漏斗胸の前胸部陥凹度の評価20)は重要であり, CTによる評価方法も種々報告されている2D22). とくに,呼吸機能と陥凹度の関係を定量的に論じ るときには,陥凹度の定量的評価が必要である. 今回は教室の臨床分類およびCT indexを使用 した.臨床分類は簡便であるが陥凹度を連続的に 表し,定量:的,客観的な評価を行なうためにCT indexを採用した. CT indexは,正常胸郭者およ び漏斗胸患者の臨床分類Grade II, III, IV各群間に有意差を認めた.また,最陥凹部より算出した 数値ではあるが,胸郭変形全容を表す臨床分類と 500 〔%) 200 %RV 100 術前 2 6 12 月
L術 後一一」
図13 術後近接期の%RVの変化 の良好な相関性もうかがわれた.CT indexと呼 吸機能諸量との関係において,%VC, VC/m2は相 関係数がそれぞれ0.61,0.58となり,他の呼吸機 能諸量との相関係数はこれよりも小さい値となっ た.従って,呼吸機能と陥凹度の関係を定量:的, 客観的に評価する際にCT indexは有意i義な指標 であると考えられた. 漏斗胸患者のFEVL。%は陥凹度の臨床分類の 各Gradeにおいて平均値80%以上と一見良好な 値を示した.また,前胸部陥凹度との相関関係も 認められなかった.しかし,%FEV、.。は臨床的陥 凹度の各Gradeにおいて平均値80%以下と低値 であり,また陥凹度増強に伴い低くなる傾向を認 めた.陥凹度の増加に伴い肺活量(FVC), FEV、.。 ともに減少するためにFEVL。%は良好な値を呈 したが,FEVL。の絶対値は低値であり実際には漏 斗胸患者では呼出障害を有しているとも考えられ た.〔%〕 150 100 %DLc。 50 (%〕 150 100 %DLco 50 0 術前 2 6 12 月 L一術 後一一一」 S’ro ・=10 ゆくむヨ
一
* 表3 術後遠隔期の術式別呼吸機能 SCE n STO n %VC eEV1ρ% 86.6±12.4 W9.9±5.9 52 92,6±13.5 W9.3±6.9 11 %FRC 唐sLC 唐qV 唐cLco 72.1±16.5 X4.9±14.0 P01.0±33.5 X5,0±20.0 30 93.5±14.1 X5.2±11.3 X5.9±20,3 P08.1±14,8 8 1%} 100 (Mean±S.D.) 表4 臨床分類別SCE術後遠隔期の手術群と年齢 の対応する非手術群との呼吸機能の比較(手術時 年齢6∼10歳,呼吸機能測定時年齢11∼15歳)… Grade II 手術群 n 非手術群 n %VC 90,7±10.3 16 89.3±11.5 15 FEVエゆ% 88.9±7.0 87.1±10.3 %FRC 70.5±10,1 101.2±18.9 %TLC 98.9±14.6 10 1G9.3±43 4 %RV 92.7±36.9 135.2±26.0 %DLCQ 94.0±21.0 81.0±14.2 80 %VC 0 術前 2 6 12 月 L術 後一一」 図14 術後近接期の%DLC。の変化 Grade II一
十一上
篇1±s,D, 〔%) 100 80 %VC装
Grade III 0 術前 術後5年 術前 図15 術後遠隔期の%VCの変化土
翻±。.。, (Mean±S.D.) 表5 臨床分類別SCE術後遠隔期の手術群と年齢 の対応する非手術群との呼吸機能の比較(手術時 年齢6∼10歳,呼吸機能州定時年齢11∼15歳)… Grade III 手術群 n 非手術群 n %VC 85.7±8.1 83.5±14.3 14 28 FEV1ρ% 89.7±5.8 88.9±10.0 %FRC 65.7±17.4 81.2±19.4 %TLC 94.8±10.6 10 98.3±15.0 8 %RV 114.8±37.5 109.4±30.8 %DLC。 87.3±18,1 89.6±11.5 術後5年 漏斗胸患者の%FRCに関する報告は少なく, 97%との報告3)が見られる.今回の測定ではGrade II群では正常値であったが, Grade III, IV
群では予測値よりやや低い傾向を示し,CT index との相関係数は0.29であった. %TLCに関しては正常という報告lo)23)もある (Mean±SD.) が,Castileら9)は%TLCの平均値は79%であり, 軽度の拘束性障害を認めたと述べている.今回の 測定において%TLCは陥凹度の増強に伴い低値 となる傾向を認め,CT indexとの相関係数は 0.51であったことより陥凹度の差が従来の報告内 容の相違を来している一因かと考えられた. %RVはその増加を指摘した報告lo)がみられる が,本研究においてもGrade II群134%, Grade
III群116%と増加していた. 肺拡散能としてのDLC。は,正常との報告4)があ るが今回の測定でも陥凹度にかかわらず良好な値 を示し,漏斗胸患者の肺は正常の拡散能を有する と考えられた. 以上より,漏斗胸患者の呼吸機能の特徴は胸郭 変形度に規定されるVC減少, TLC減少,そして FRC減少, RV増加である.また,肺拡散能は胸 郭変形度にかかわらず正常である.漏斗胸の肺気 量分画に関して,Bergofskyの報告24)ではRVは 減少していると示されていたが,その成績は述べ られていない. また,漏斗胸患者の呼吸機能の特徴に示される 肺気量分画より胸壁のコンプライアンスは低下し ていると推測された。 漏斗胸手術後近接期に一時的に低下した%VC は術後12ヵ月には術前値にまで回復した,術後2 ヵ月には%VCは平均10%低下し,拘束性障害の 増強を認めた.術後6ヵ月にはほぼ術前値に回復 し,術後12ヵ月の値は術前値との有意差を認めな かった.光岡ら25>は,漏斗胸患者のSTO術後の% VCは術後6カ,月では術前値の約90%であるが術 後1年でほぼ術前値に回復すると述べており,同 様の傾向にあると考えられた.また,開胸術自体 による呼吸機能の変化に関しては,FVC, FEVL。,
TLCの術後2週間経過時の低下と2ヵ月以上経
過時の術前値への回復が報告されており26),術後 急性期の呼吸機能低下の原因として落痛を含めた 胸壁損傷が指摘されている.胸壁への手術侵襲が 加わる漏斗胸患者の術後近接期の呼吸機能の低 下,回復過程は,開胸術自体に比し長期間を要す るがその手術術式を考慮すると,肋間筋などの呼 吸筋の機能および胸壁のコンプライアンスの変 化27)などが関与していると考えられた. 将士挙上術(SCE)および胸骨翻転術(STO) では胸壁の矯正に際し,余剰肋軟骨の切除を行な うため,術後遠隔期の呼吸機能への手術の影響を 明らかにする必要があると考えられる.とくに, SCEは成長期に施行されるため遠隔期の状態が 懸念される. 漏斗胸手術後遠隔期の呼吸機能に関する諸家の 報告では,術後の呼吸機能測定を経時的に行なっ たものは少なく,測定時期および手術術式は種々 であり諸報告問の比較は困難である.Orzalesi ら3)は,漏斗胸術後平均5年の呼吸機能検査にて%RV,%FRC,%VC,%TLC,%MVVを術前
値と比較し,肺機能の術前後での有意な変化は認 められないと報告しているが,症例数は5例と少 なかった.また,Gyllenswardら8)は術後のVC, TLCについて陥凹度も含めて報告しており手術 による改善は認められないと述べている.しかし, 呼吸機能検査時の年齢は不明瞭である. 今回の研究では,同一の患者における手術前と術後遠隔期の呼吸機能の比較をGrade II, III群の
25例について行なったところ,%VCの減少する 症例よりも増加する症例を多く認め,術後5年時
に拘束性障害(%VC<80%)を呈する症例は
Grade II, III各群ともに2例のみに減少し,呼吸機能の改善傾向を認めた.これは,漏斗胸手術に よる機能改善を示唆する意義あることと考えられ た. 漏斗胸術後遠隔期(5年)の呼吸機能は,表3
に示したごとく平均値ではSCE施行例にて%
VC86.6%, FEV、.。%89.9%, STO施行例にて% VC92.6%, FEV、.。%89.3%と良好な値を示した.また,手術時年齢6∼10歳の成長期にSCEを
施行した症例の遠隔期の呼吸機能は,表4および表5に示すように%FRCを除き術前に比べて少
なくとも悪化はみられなかった. 従って,成長期に行なわれるSCEの場合を含 めて,教室の漏斗胸手術は術後5年を経過した遠 隔期の呼吸機能へ障害を及ぼさないことが明らか となり,呼吸機能の点からもすぐれた術式と考え られた. ただし,SCE症例に認められた遠隔期におけ る%FRCの低下は今後さらに検討を要する研究 課題と考えられた. 結 論 1.漏斗胸患者の呼吸機能は,前胸部陥凹度に相 関して拘束性変化が増強した.CT indexと%VC との相関係数は0.61であり回帰式はy=137x十58 であった.2.漏斗胸手術(胸出挙上肉SCE,胸骨翻転術 STO)の術後近接期の%VCは,術後2ヵ月で術前 の約10%の低下を示し,6カ,月後にはほぼ術前値 まで回復した. 術後遠隔期(5年)には,拘束性障害を呈する 症例数の減少傾向を認め,機能改善が示唆された. また,手術時平均年齢9.9±7。7歳の63例の術後5 年時の%VCおよびFEV、.o%の平均値は, SCE症 例にてそれぞれ86.6%,89.9%,STO症例にてそ れぞれ92.6%,89.3%であり,他の呼吸機能諸量 もSCE症例の%FRCを除き良好な値であった. 3.現行の漏斗胸手術(胸骨翻転術および胸肋挙 上術)は,呼吸機能の面からも優れた術式と考え られた. 稿を終えるにあたり,終始御指導と御校閲を賜りま した新田澄郎教授に深謝申し上げます.また,御教示 いただきました横山正義教授,大貫恭正講師,板岡俊 成講師,毛井純一講師に感謝いたします. 文 献
1)Chin EF: Surgery of funnel chest and congen− ital sternal prominence. Br J Surg 44:360−376, 1957
2)Welch KJ:Satisfactory surgical correction
of pectus excavatum deformity in chi工dhood. J
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