「主体的・対話的で深い学び」を目指して ーオランダの教育からの示唆― 人間教育専攻 現代教育課題総合コース 松永 友樹 はじめに 一問題の所在と研究の目的― 平成29 年3 月、次期学習指導要領が告示さ れた。本改訂では、外国語教育やプログラミン グ教育、特別な教科として道徳教育を務羽匕す るなどを試みようとしている。その中でも、「ど のように学ぶかー主体的・対話的で深い学び(ア クティブ・ラーニングの視点からの授業改善) ―」を中心に、「どのように学び」、「何を理解し て何ができるようになるカりが明確化される運 びとなった。次期学習指導要領が目指す「主体 的・対話的で深い学び」の実現に向けて本研究 では、オランダのイエナプラン教育を採り上げ る。2019 年4 月に長野県南佐久郡佐久穂町に 開校した大日向小学校は、 日本で初めてのイエ ナプランスクール認定校であり、イェナプラン 教育のコンセプトを日本で初めて導入すること で話題となった。また、2022 年4 月には、広島 県福山市で新たにイェナプラン教育校を開校す ることが決定していることや名古屋の市立小学 校でも試験的導入が試みられているなどイェナ プラン教育の注目度は高し~「主体的・対話的で 深い学び」を目指すうえで注目度の高いオラン ダの教育(特にイェナプラン教育)から示唆を 得ることを目的とし、論考を進める。 第1章 「主体的・対話的で深い学び」の必要 性とその内実 中央教育審議会答申では、「知識基盤社会」の 指導教員 金野 誠志 到来を前提として様々な提言がなされている。 「知識基盤社会」とは、第4 次産業革命ともい われる、進化した人工知能が様々な判断を行っ たり、身近な物の働きがインターネット経由で 最適化されたりする時代である。学校では、「何 を」学ぶかではなく「どのように」学ぶかとい うことに焦点が当てられ、主体的に追及し、ク ラスの中で考えを交流させながら、既存の知識 べ経験をもとに、新たに学んだ知識を結びつけ ながら深く考え、その知識が後世に与えたり、 今後与えたりするであろう影響を考え身につけ ていくことが目指された。子どもたちが学習内 容を深く理解し、資質能力を身につけ、生涯に わたってアクティブに学てJ続けるようにするた めの授業改善の重要性が、「主体的・対話的で深 い学び」というフレーズにまとめられている。 第2 章 注目されるイェナプラン 「主体的・対話的で深い学び」を目指すうえ でオランダの教育に着目した。 オランダの公教育は、1801年の教育法の成立 にはじまる。オランダでは、20 世紀初頭の欧米 先進諸国における教育改革運動で生まれた様々 なオルタナティブ教育の理念に基づく実験的な 学校教育の試みが、すでに1920 年代から始め られていた。この改革う鋤は、それまでの、教 師による知識伝,望lJの古し’云統的な教育に対し て、まさに「オルタナティブ(取って代わる方
法)」として、従来はなかった子どもたちの自主 性や主体陛を重んじて、子どもたち自身の内発 的な発達の力、学びへの意欲を引き出し、それ を最大限に花開かせるという新しい理念や方法 によって教育活動を展開した。 落ちこぼれ児童の問題等を背景に1960 年代 のはじめまで主i,fiであった画一的な一斉教育の 反省を受けて、教育改革を進める際にたどり着 いたものが実験的に行われていたオルタナティ ブ教育であり、個別教育であった。オルタナテ ィブ教育は子どもたちが「主体的」に学ぶとい う面をもち、オルタナティブ教育のーつである イェナプラン教育は「対話」の持つ教育的な意 義を重視している。「主体的・対話的で深い学び」 を目指すうえで、オルタナティブ教育であるイ ェナプラン教育から示唆を得ることとし、イエ ナプラン教育の特徴を麹雪lした。 第3 章 オランダの教育からの示唆 オランダの教育から示唆を受け止める際に発 生する問題を考える際に、本質主義と経験主義 の大きな2 つの考え方に着目した。 本質主義と経験主義には両方に大きなメリツ トとデメリットがあり、どちらが優れていると は簡単には言い難1,、本質主義と経験主義の2 つの考え方を行き来していることに、一定の価 値はあるであろうが、そこに留まり続けること は、あまり建設的ではないであろう。本稿では 本質主義と経験主義の対立として勝田・1樹艮論 争に注目した。この論争は何を教えるべきか、 どういうカリキュラムで教えるべきかという学 習内容の問い直しが主となり学習そのものの在 り方を考えるという視点が欠けていると考えた。 そこで、オランダのイェナプラン教育のよう に子どもたちの興味や関心を中心として主体的 に自ら学ぼうという意志を持って活動、探究し ていく部分と学間の体系的知識を学ばせる部分 が片方に偏ることのないようにバランスをとり、 本質主義と経験主義の併用が望ましいと考えた。 その中で留意したいのは、体系的知識を学ばせ る部分が本質主義に偏りすぎないことである。 体系的知識を学ぶ際にも子どもたちが「学ぶこ との意味」を見失わないようにすることが求め られるのではないだろうカ~ さらに、学習そのものの在り方として、「学ぶ」 「学ぶ」ということは、自分の世界を広げてい くことだと考察した。そこには、主体的に自ら 学ぼうという意志を持って活動、探究していく ことが求められる。学ぶことで世界が広がり、 そこに学びが活きた実感や喜び、感動が生まれ ることで、さらに学ぶェネルギーとなるのでは ないだろうカ、そして、教育実践の場において 子どもたちが主体的に学ぶには、教師の働きか けが不可欠で、教師自身もまた学て腕ける必要 があるのではないだろうカ~学びは浅い、深い という縦方向だけでなく、異なる分野を欄断す るというかたちで横方向にも伸びる。そのとき に点となるのが知識であり、その点と点を結ん で行くことで学びの幅が広がり、自分の世界が 広がっていくであると考えた。 おわりに ー本研究のまとめー 本研究では、「主体的・対話的で深い学び」を RI:旨すうえでオランダの教育から示唆を得るた めに以上のようなことを述べてきた今後の研 究課題としては、子どもたちが報教育に選択 肢を持つという意味で、学習指導要領に縛られ ない教育を目指し、オランダの教育のように制 度的に多様性をもたせることができないかを考 えていきたし~