子ども一人ひとりが考え,意見をもつことのできる授業の手立て
高度学校教育実践専攻 教 員 養 成 特 別 コ ー ス 細 略 亜 矢 1 課題設定の理由 筆者は,子どもたちが意見を交流することで, 学びを深めていくことのできる授業を目指し, 実践を進めた。具体的には,子ども一人ひとり が課題について考え,意見を周りの子どもと意 見を比べたり交わしたりする授業の在り方につ いて研究した。 筆者がそう考えるきっかけになったのが,大 学院 1年次の実習でさせていただいた.r
大造じ いさんとガンJ(光村図書5 銀 河 全9時間) の授業実践である。 授業実践の計画は, l時間目.教材との出逢い 2 時間目 ~6 時間目・各場面の内容理解 7 時間目 ~8 時間目.朗読練習 9時間目 朗読発表会 であり 2 時間目 ~6 時間目に行った内容理解 において,各場面での大造じいさんの気持ちに 焦点を当て,それらを読み取っていくことで, 大造じいさんの気持ちの変化を考えることをね らいとする授業を行った。その中で子どもたち がこのねらいを達成するために,文中にある「大 造じいさんの気持ちが分かる所J
に線を引かせ, その時の「大造じいさんの気持ちJを考える活 動を行った。 最初の 2時間は,ほとんどの子どもが「大造 じいさんの気持ちが分かる所」に線を引くこと ができていた。加えて「大造じいさんの気持ちJ
を一つでも考えることができていた子どもが, 実 習 責 任 教 員 葛 上 秀 文 実 習 指 導 教 員 江 川 克 弘 専 任 教 員 端 村 達 也 半数以上見られた。しかし,単元後半になると, 次第に教科書に線を号│かない,気持ちを考えよ うとしない子どもが増えてくるようになった。 その原因として,学習課題に対して考える 意味を,子どもが明確にもつことができてい なかったと分析した。この学習では最終的に 朗読を行う計画であり,主人公の気持ちを深 く理解させることで,朗読に対する関心を高 めることがねらいであった。しかし,その説 明が不十分であり,内容理解の学習で大造じ いさんの気持ちを考え,その考えを表現する 揚が最後の朗読発表会であることを子どもに 十分に理解させることができなかった。その ため,子どもが大造じいさんの気持ちを考え る活動の意味を十分理解できず,次第に課題 に対して考えなくなったのではないかと考え る。また,最後に行う朗読発表会がどのよう なものなのかの説明も不十分であり,子ども に朗読発表会のイメージをもたせることがで きなかった。学習の見通しがもてないために, 子どもたちの学習意欲が下がり,考えなくな ってしまったと筆者は考えた。 このことから,子どもが自分の考えをもつよ うになるには,子どもが学習のめあてを十分理 解し,学習意欲が湧くような工夫をする必要が あると実感した。子ども一人ひとりが「考えた い」と思、えるような手立てを含んだ授業をした いと考え,本主題を設定した。2 研究の目的と方法 (1)研究の目的 本研究では,子ども一人ひとりが考えをも つことができる授業を実践するために,子ど もの学習意欲が湧き,それを深めていく手立 てについて考えることを目的とする。 ( 2 )方法 上記の目標を達成するために,以下の4つ の観点を重視して授業を行い,実践考察を行 ワ。 ① 授業を通して子どもに学ばせたい内容 (価値)は何なのか,ねらいを明確にし, 子どもがねらいに迫れるような活動や手立 てを考え,授業を組み立てる。 ② 授業のねらいに沿った資料を使い,子ど もに学習意欲をもたせたり,学習を効果的 に進めたりすることができるようにする。 [ねらいに沿った資料の工夫
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③ 子どもの意見に問い返しを行うことで, よりねらいに迫った発言を引き出すことが できるようにする。 [授業のねらいに沿った問い返し] ④ ワークシートを用い,授業の終わりに今 回の学習のまとめをする時間を設ける。 [授業のねらいに沿った振り返り] 3. 授業実践の分析と考察 2年次の実習で行った実践を対象とし,分析 と考察を行った。 (1) 6年生国語科「学級討論会をしよう」 (20 1 3年6月 2 5日) 「学級討論会をしよう」の 1時間目,導入 の授業である。この授業でのねらいは,r
討論 会の流れと討論会での話し方・聞き方につい て理解することができる。」である。実際に討 論会の映像を見せ,討論会の進め方と役割に ついて確認し,その後もう一度映像を見せ, 討論会の話し方・聞き方について気づいたこ とをまとめさせるようにした。子どもの発表 から話し方・聞き方のポイントをまとめ,本 時のまとめを行った。 < 手 立 て > 4つの視点に沿って,本授業では以下の4 つの手立てを考えた。 ①ねらいを「討論会の流れと討論会での話し 方・聞き方について理解する。」に設定し, 子どもがねらいに迫れるような活動や手立 てを考える。また,細案を作成することで 子どもの気づきを予想し,その気づきから 討論会での話し方・聞き方のポイントを引 き出せるような問い返しを考える。 ②討論会の映像を用意し,学習意欲をもたせ る。また討論会での話し方・聞き方の特徴 について気づくことができるようにする。 ③授業のねらいである「話し方・聞き方につ いて理解するJ
に沿うように,映像資料か らの気づきに対して問い返しを行う。 ④ワークシートを用いて,子どもたちが授業 のねらいについてどのようなことを学んだ のか,まとめることができるようにする。 < 成 果 > ①授業のねらいを明確にし,子どもが最終的 に行う活動をイメージし,r
やってみたい」 と思えるようにすることで,子どもがねら いを達成するための活動や手立てを考えら れた。また,細案を作成し子どもの意見を 予想することで,取り上げたい意見と問い返しを考えることができ,子どもがよりね らいに迫っていくことができた。 ②映像など,ねらいに沿った資料を見せるこ とで,子どもが学習や活動のイメージを掴 むことができ,学習意欲をもたせることが できた。また,映像を用いたことで. C D では分からない動作面での気づきを含め, 討論会を進めていく上で必要なポイントを 子どもたちに見つけさせることができた。 ③発問に対する子どもの発言を予想し,問い 返しを考えておくことで,子どもからねら いに迫った発言を引き出すことができた。 く 課 題 > ②子どもが話し方・聞き方の気づきを発表し た時に,もう一度その場面の映像を流して 共通理解を図る必要があった。全員が発表 された話し方に気づいていたわけではなか ったため,その部分の映像を流して確認を してから,全員でそういった話し方をする 理由を考えさせるようにするとよかった。 ③子どもが学習と生活が結びついていること を意識することができるように,子ども自 身の生活経験から考えて発表できるような 問い返しを行うことができなかった。 ④今日の学びを自分の課題を解決するために どう活かすか,次からどのようなことに気 を付けていきたいかなどの観点でまとめさ せることができなかった。 (2) 6年生道徳「ぼくは後悔しない」 (20 1 3年 12月 5日) 「ぼくは後悔しなし、」という資料を使用し, 道徳的価値
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誰に対しても差別を することや偏見をもつことなく公正,公平に し,正義の実現に努める。]に関して,子ども に気づかせようと試みた授業である。資料か ら主人公の気持ちの揺れを考えさせ,役割演 技を通じて間違ったことをしている友達への 対応を考えられるようにし,本時のまとめを1
1'った。 < 手 立 て > (1)の実践をふまえ,以下の手立てを考 え,実践を行った。 ①ねらいを「自分の感情や友達関係にとらわ れず,誰に対しでも公平,公正に接しよう とする態度を養う。Jに設定し,子どもがね らいに迫れるような活動や手立てを考える。 ②事前にアンケートを取ることで,子どもが 課題に対して自分の生活を振り返ることが できるようにする。 ③授業のねらいである I自分の感情や友達関 係にとらわれず,誰に対しでも公平,公正 に接しようとする態度を養う。」に沿うよう に,子どもの意見に対して問い返しを行い, 間違ったことをしている友達への対応を考 えさせるようにする。 ④学習の振り返りをする時間を設けることで, 子どもが自分自身を見つめ直し,今回の授 業での学びを,これからの学習や生活の中 でどう活かしていくのかについて書かせる ようにする。 < 成 果 > ①ねらいについて考えることができるように 役割演技の活動を組むことで,子どもに間 違ったことをしている友達への対応につい て,子どもの意識を変えることができた。 ④「学習を.振り返って,これから友達にどう注意していくのか,自分の考えをまとめよ う。」という観点を設けてまとめを書かせる と,ほとんどの子どもがこれからの行動に ついてまとめられていた。学習のまとめを させることで,授業での学びをふまえて自 分の行動を見つめたり,次の授業に活かし たいことをまとめたりするきっかけを子ど もに{乍ることができた。 < 課 題 > ①ねらいを絞りきれず,細案を立てる際に子 どもがねらいに迫ることができるような発 聞を考えることができなかった。そのため, 実際の授業でも子どもの意見から経験を引 き出す問い返しを行うことができなかった。 ②事前アンケートを行い,子どもに学習内容 に関して自分の生活経験を振り返らせよう と試みたが,子どもの生活経験を引き出す ような質問を考えることができず,生活経 験の振り返りをさせることができなかった。 そのため,学習内容に関して子どもに課題 をもたせることができず,学習意欲をもた せることができなかった。 ③発問に対する子どもの意見を十分に考える ことができず,問い返しも考えることがで きなかった。そのため,ねらいに迫った発 言を引き出すことができず,学習が浅くな ってしまった。 ④教師側がまとめをしてしまったので,その まとめをそのまま書いてしまっている子ど もが多くいた。授業での学びをふまえて, 自分の行動を決定していくためには,活動 の中で問い返しを行い,子どもたちからね らいについてのまとめを出すようにしてい く必要があった。 4 研究のまとめ 本研究で得られた成果と課題から,子ども一 人ひとりが考え,意見をもつことができるよう にするために,以下の4点、が明らかになった。 ( 1 )授業のねらいを明確にすることで,子ど もがねらいを達成するための活動や手立て を考える。子どもの体験を学びと結びつけ ること,学びの過程をイメージしてねらい を明確にすることが重要である。また細案 を立て,子どもの意見を予想することで, 取り上げたい意見やその意見への問い返し を考えることができ,子どもがよりねらい に迫っていけるようにすることができる。 ( 2)映像やアンケートなど,資料を効果的に 使用することで,子どもに学習の見通しを もたせることができ,自分の考えをもたせ ることが可能となる。 ( 3)授業細案を作成し,子どもの発言を予想 して子どもの意見に問い返しを考えておく ことで,実際の授業において,子どもに新 たな気づきや考えをもたせることができる。 ( 4 )生活や次の学習でどう活かすかという観 点をもたせて学習のまとめをさせることで, 子どもたちが授業で学んだことを活かして 行動を変えようとするきっかけを作ること ができる。授業の中で考え,自分の意見を もつことで, 日常生活が変化する可能性が あることに子どもが気づくまとめが重要で あり,そのためには①ー③が保障されてい る必要がある。 今後も 2年間の研究で得られた学びを活かし, 子ども一人ひとりが考え,意見をもつことので きる授業を行っていきたいと考える。