大都市における地域包括ケアをつくる政策研究会報告書(2018年5月〜2019年1月)
98
0
0
全文
(2)
(3) 「大都市における地域包括ケアをつくる政策研究会」 報. 告. 書. 2018 年 5 月~2019 年 1 月. 座長:新田 國夫 (医療法人社団 つくし会 理事長). 助成:公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団. 1.
(4) ―目. 次―. ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 ■はじめに(座長:新田 國夫氏). ■参加委員名簿・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6. ■【第 1 回】研究会(2018 年 5 月 24 日) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 テーマ :地域包括ケアシステムと診療報酬・介護報酬改定 話題提供:黒田 秀郎氏(厚生労働省保険局 医療介護連携政策課長)※講演当時. ■【第 2 回】研究会(2018 年 7 月 26 日) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 27 テーマ :在宅医療の充実に向けた栃木県の取り組み 話題提供:早川 貴裕氏(栃木県県南健康福祉センター 総務福祉部総務企画課 副主幹). ■【第 3 回】研究会(2018 年 9 月 27 日)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 43 テーマ :東京都多摩地区における地域包括ケア進捗度比較から考える 平均的な自治体の課題 話題提供:山路 憲夫氏(白梅学園大学小平学・まちづくり 研究所長) テーマ :なぜ「次世代医療基盤法」か ~現場から提供されるデータの利活用の成果が現場へ還元される 社会全体の好循環を目指して~ 話題提供:田中 謙一氏(内閣官房 健康・医療戦略室 参事官). 2.
(5) ■【第 4 回】研究会(2018 年 11 月 15 日) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 57 テーマ :シンポジウム――介護保険地域戦略 2040 ~保険者シートの活用を通じて地域の将来を見透す~ 進行役 :新田 國夫氏(医療法人社団つくし会 理事長)※コーディネーター 趣旨説明:石田 光広氏(稲城市 副市長) 登壇者 :大川 潤一氏(国立市 健康福祉部長) 田中 謙一氏(内閣官房 健康・医療戦略室参事官/元桑名市副市長(特命)) 石原 美和氏(宮城大学 看護学研究科 教授) 宮武 剛氏(日本リハビリテ-ション振興会 理事長). ■【第 5 回】研究会(2019 年 1 月 24 日) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 61 テーマ :保険者シートに関する報告 話題提供:石田 光広氏(稲城市 副市長) テーマ :平成 30 年度稲城市在宅医療・介護連携推進協議会 要介護高齢者の在宅医療に関するアンケート報告 話題提供:工藤 絵里子氏(稲城市 福祉部高齢福祉課 課長) テーマ :地域包括ケア推進のために ~医療行政の課題と展望~ 話題提供:武田 俊彦氏(前厚生労働省 医政局長/医政局参与・厚生労働省参与) 参考資料(保険者シート・パンフレット). 3.
(6) 「大都市における地域包括ケアをつくる政策研究会」報告 書座長:新田國夫(医療法人社団つくし会 理事長). <はじめに> 1.. 本研究会の目的. 日本における超高齢社会は諸外国に例をみないスピードで進行している。急激な高齢化 に伴い、医療、介護サービスの必要性が高まるなか、団塊の世代が 75 歳以上となる 2025 年問題の対策として、国は「地域包括ケアシステム」の構築が急務であるとして法制化を 進めてきた。 「地域包括ケアシステム」の目的は、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援で あり、可能なかぎり住み慣れた地域で自分らしい人生を最後まで続けられるよう、地域に おける包括的な支援・サービス体制を確立しようとするものである。地域包括ケアシステ ムの理解度がすすまない中で保険者である市町村や都道府県が地域の自主性や主体性に基 づき、地域の特性に応じて作り上げるとしている。 「地域包括ケアシステム」が、今後普及していくためには、それぞれの地域が現状の問題 点を十分に把握する必要があるが、大都市部なかでも首都圏における高齢化の著しい上昇 を考えると、従来の政策によりこの超高齢社会を乗り切ることはきわめて困難と考えられ る。地域包括ケアシステムの構築の必要性、そのために課題を提案し、解決する方法が求 められる。2042 年にピークを迎え、その後も 75 歳以上の人口割合は増加し続けることが 予想される状況を見据え、今後の医療・看護・介護の課題を分析し、大都市部における総 合的な地域包括ケアの政策を提言することが、本研究会の目的である。. 2.. 事業内容. . 多職種の関係者間の目指すべき方向性の共有. . 医療・看護・介護の課題等実態把握に向けた研究. . 多職種連携における課題等実態把握に向けた研究. . 首都圏における地域特性を踏まえた医療・看護・介護の課題分析. . 都民を中心とした地域包括ケア構築の研究. . 高齢者医療と在宅医療の調査研究. . 以上に基づく政策提言、普及啓発 等. 3.. 構成メンバー(別途参加委員名簿参照). 医師・保健師・看護師・介護士 厚生労働省行政官・地方自治体職員・学識経験者 等. 4.
(7) 4.. これまでの活動と今後の取り組み. 2014 年 12 月よりこれまでに毎月 1 回定例研究会を開催し、各回とも前半は医療・介護 および地域づくりに関与する多彩な関係者のプレゼンテーション、そして後半はそのプレ ゼンテーションを受けて参加者全員で討議を行なうというプログラムで進められた。プレ ゼンテーションは課題と分析、さらには実践経験を通じて、共通する問題を多様に検討し た。現場での実践と課題、学問的知見等を共有し、議論の中からより普遍的な中核課題は 何かを洞察しながら問題意識と目指すべき方向性を見出すというプロセスを継続している。 その検討の中で必要なことは、地域包括ケアシステムの構築には第一に各地域での在宅医 療の実情、介護保険に見られる具体的な数字から、各保険者の今後の課題を把握するため のツールが必要であるになり、そのために保険者シートのツールを開発しました。このツ ールを利用することにより各保険者は自らの自治体の介護保険の課題解決、多職種の連携 の在り方、さらにはその有効性について、さらに、在宅療養に関する在宅医療の量の問題 と質について把握可能となり将来への課題解決につながることになる可能性を見出した。 区市町村の自主性と主体性を有識者のワーキンググループにて議論した。地域包括ケアシ ステムにおける医療、介護の連携の指標の具現化をめざした。地域包括ケアシステムにお ける自治体の具体的な取り組みから時間軸を見据え、標準シート作りを行い大都市圏の地 域包括の取り組みの課題を検討した。平成 29 年度「介護保険「保険者シート」 (平成 27 年 度版) 」として千葉県、東京都、大阪府を対象に調査を実施した。続いて平成 30 年度の研 究会では、東北の宮城県、山形県も加わり 55 市町村の「平成 27・29 年度時系列分析」調 査(※) 、そしてミニシンポジウムも開催した。各回のテーマは以下の通りである。. ※「保険者シート」調査の詳細は、勇美記念財団のホームページよりご覧いただけます。「介護保険 保険者シート(平成27・29年度時系列分析)調査報告書」をご参照ください。. 5.
(8) 「大都市における地域包括ケアをつくる政策研究会」参加委員名簿 (2019.3月当時) 氏. 名. 所. 属. 役. 職. ★にった くにお. 医療法人社団つくし会. 理事長. ◆わたなべ よしき. 2 ◆渡邉 芳樹. 日本赤十字看護大学/前・駐スウェーデン特命全権大使. 客員教授. ひろし 3 ◆のなか ◆野中 博. 医療法人社団博腎会 野中医院. 院長. まさこ 4 あきやま 秋山 正子. 株式会社ケアーズ 白十字訪問看護ステーション. 所長. いいじま かつや. 東京大学 高齢社会総合研究機構. 教授. いしだ みつひろ. 稲城市. 副市長. いしはら みわ. 公立学校法人宮城大学 看護学群・大学院研究科. 教授. いしやま れいこ. 国際医療福祉大学大学院. 教授. うりゅう りつこ. 世田谷区 高齢福祉部. 部長. えざわ かずひこ. 医療法人和香会/医療法人博愛会. 理事長. おおかわ じゅんいち. 国立市 健康福祉部. 部長. くむら のぶまさ. 東京都福祉保健局 医療政策部. 地域医療担当課長. こがわ たかし. 東京都福祉保健局 高齢社会対策部. 部長. こみやま えみ. 帝京科学大学 医療科学部看護学科 地域看護学. 講師. さこい まさみ. 厚生労働省 大臣官房(医政、医薬品等産業振興、精神保健医療、災害対策担当). 審議官. ささい はじめ. 武蔵野市. 副市長. ささき まさひろ. 厚生労働省 がん・疾病対策課. 課長. すずき くにひこ. 医療法人 博仁会. 理事長. たけみ けいぞう. 参議院議員. たなか けんいち. 20 田中 謙一. 内閣官房 健康・医療戦略室. 参事官. しんいち 21 にしだ 西田 伸一. 公益財団法人 東京都医師会. 理事. しゅうぞう 22 にしむら 西村 周三. 1 ★新田 國夫. (敬称略・順不同). 5 飯島 勝矢 6 石田 光広 7 8 9 10. 石原 美和 石山 麗子 瓜生 律子 江澤 和彦. 11 大川 潤一 12 久村 信昌 13 粉川 貴司. 14 小宮山 恵美 15 迫井 正深 16 笹井 肇. 17 佐々木 昌弘 18 鈴木 邦彦 19 武見 敬三. 一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構. 所長. はせがわ としひこ. 一般社団法人 未来医療研究機構. 代表理事. はっとり しんじ. 一般財団法人医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構 研究総務部. 次長. ひらかわ ひろゆき. 公益財団法人 東京都医師会. 副会長. ほった さとこ. 慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科. 教授. まつおか てるまさ. 厚生労働省 医政局 地域医療計画課 在宅医療推進室. 室長. まつだ しんや. 産業医科大学 医学部 公衆衛生学教室. 教授. みやじま としひこ. 日本製薬団体連合会. 理事長. みやじま わたる. 社会福祉法人 恵仁福祉協会. 常務理事. みやたけ たけし. 一般財団法人 日本リハビリテーション振興会. 理事長. やまじ のりお. 白梅学園大学小平学・まちづくり研究所. 所長. やまわき まさなが. 京都府立医科大学 総合医療・医学教育学. 教授. 23 長谷川 敏彦 24 服部 真治 25 平川 博之 26 堀田 聰子 27 松岡 輝昌 28 松田 晋哉 29 宮島 俊彦 30 宮島 渡 31 宮武 剛. 32 山路 憲夫 33 山脇 正永 ★座長 ◆顧問. (敬称略・50音順). ご陪席者 氏. 名. 所. 属. 役. 職. いいの なつこ. NHK(日本放送協会)解説委員室. いとう しょういち. 日の出町地域連携型認知症疾患医療センター 相談員. いとう けんゆう. あやめ診療所. かじもと あきら. 一般社団法人 医療介護福祉政策研究フォーラム. かわの げん. 西東京市 健康福祉部 高齢者支援課. 介護保険担当課長. くどう えりこ. 稲城市 福祉部 高齢福祉課. 高齢福祉課長. たしろ たかお. 放送大学教養学部 / 順天堂大学. 教授 / 客員教授. なぐら みちあき. 埼玉医科大学総合医療センター 小児科. 講師. はんだ ゆきこ. 株式会社生活構造研究所. 代表取締役 研究主幹. 10. ひわたり けんすけ. 一般社団法人 未来医療研究機構. 助手. 11. もりやす はるみつ. 武蔵野市 健康福祉部. 部長. 1 2 3 4 5 6 7 8 9. 飯野 奈津子 伊藤 正一 伊藤 憲祐 梶本 章 河野 源 工藤 絵里子 田城 孝雄 奈倉 道明 半田 幸子 日渡 健介 森安 東光. 解説主幹. 院長. 6. (敬称略・50音順).
(9) 第1回. 「大都市における地域包括ケアをつくる政策研究会」. テーマ. :地域包括ケアシステムと診療報酬・介護報酬改定. 話題提供:黒田 秀郎氏 (厚生労働省保険局 医療介護連携政策課長)※講演当時. 日時:2018 年 5 月 24 日(木)19:00~21:00 場所:ステーションコンファレンス東京 605A 会議室. 7.
(10) ◆第 1 回. 地域包括ケアシステムと診療報酬・介護報酬改定 【話題提供】 黒田 秀郎氏(厚生労働省保険局 医療介護連携政策課長)※講演当時. 1.はじめに 2040 年を見据えての議論 本日は報酬改定も含め、全体のお話をさせていただきたいと思います。 この図は、これまでにもすでにご案内の通りです。人口が減少しているということ、その中で 特に 75 歳以上人口の割合にウエイトがあるということを示しています。これを受けて、社会保障 と税の一体改革や地域医療構想といったさまざまな施策が、2025 年をキーワードに行われてきま した。これらの施策をきちんと進めていかなければいけないことは今も全くゆるがないわけです が、そういう中で、消費税の引き上げが来年度に迫り、一体改革の方はいよいよ一つの区切りを 迎えようとしています。 現在、進行中の経済財政諮問会議では、これらの 2025 年に向けた施策をしっかりと行った上 で、次の節目として高齢者数がピークを迎える 2040 年を見据えて取り組んでいく必要があると いう議論が行われています。高齢者数は 2025 年から 2040 年に向けてなだらかに増加するという. 8.
(11) ことですが、一方で子どもの数はガクンと減ってきます。支え手となる母体の人口が減少してい く中で、増えていく高齢者を支える体制をつくらなければならない。このことをプラスαの軸と して考えていくという話が、これまでの施策に加えて議論されているところです。. 人口減少の局面へ 次に人口減少ですが、これについては幼児教育の無償化をはじめ、子育て支援をきちんと行っ ていこうという議論が行われています。高等教育や大学の授業料の話も出ています。以前はどち らかというと、支え手の拡大のためにコストをかける方向でしたが、最近はどちらかというと、 子育をする人々の負担を抑えていく方向に、ウエイトが置かれている状況です。 日本の人口の歴史的推移をみると、今はまさに人口減少の局面にあります。このままトレンド が続くと、日本の人口は 9000 万人を割れるといわれています。これはちょうど終戦直後の人口 より少し上くらいです。戦後、一気に増えた人口が再びもとに戻る局面にある、という見方もあ ります。 人口が減るということは、まちづくりにも当然、大きく影響してきます。都市化が進んだ東京 や関東近郊の自治体では、広がった市街地が縮んでいく局面を迎えることになります。こういう まちの姿というのは、これまで誰も見たことがありません。それがどういう姿なのか、これから 考えていくことになると思います。. 9.
(12) 急速に高齢化する日本に、世界が注目している 高齢化のピークを世界各国と比較すると、今の日本はすでに高いレベルに達していることがわ かります。現在はこの状況を、皆でなんとか工夫して乗り越えていこうとしています。 そのような日本の経験を最も必要としているのは、アジアの国々です。例えば中国、韓国、ベ トナム、マレーシア、シンガポールといった国々が、日本のことを非常に熱心に研究しています。 中でも熱心なのは、韓国です。 「これから大変だ」と言われるようになって久しい日本では、社会全体である程度、危機意識 が共有されている側面があります。これに対して韓国の状況ははるかに深刻で、出生率は日本よ. 10.
(13) りもかなり低く、それでいてかなり長生きです。これから 40 年の間に日本と同じような状況にな ることは明らかで、だから韓国は非常に緻密に日本の制度のことを研究しています。日本が介護 保険制度を導入したときも、その仕組みをつぶさに研究し、実際に介護保険を導入したのも韓国 でした。日本の少子化のことも非常によくリサーチしていて、日本がどういう課題に直面し、そ れをどう議論しているのか、その議論の過程までつぶさに研究しています。 もう一つ、出生率が低い国にドイツがあります。ドイツも少子化と言われていましたが、最近 ベビーブームがやってきて、足元の出生率が反転しています。この傾向がずっと続くかはわかり ません。このベビーブームはドイツに移り住んできた方々の間で起こっているからです。子ども の数が増えるという期待がある一方で、その支え手の活躍の場をつくるとき、その支え方をどう するか、社会的なコストも含めて議論が行われている。それが最近のドイツの状況です。 いずれにしても、日本は相当な工夫をしながらここまで歩んできている、というのが世界的な 評価のようです。日本にいるとなかなか気づきにくいのですが、世界から見ると、日本でどうし てそういうコンセンサスを形成できたのか、各国がそのことに非常に注目しているのです。 高齢化率と医療・介護・年金の規模の国際比較 高齢化のスピードは各地域で異なります。すでに高齢化が進んでいるところは、これから人口 が減っていくフェーズに入りますが、若い首都圏はこれから高齢化率が上がることになります。 年間死亡者数はこれからも増えます。そして高齢者の単身世帯が増加します。社会保障給付費は 現在の 120 兆円から、やがて 190 兆円になる見込みです。金額自体よりも、それが身の丈のあっ たかたちになっているのか、ということが問題なのだろうと思います。 これは、高齢化率と医療・介護・年金の規模の国際比較をした図です。横軸が高齢化率、縦軸 が対 GDP 比を表しています。日本では徐々に高齢化率が上がっていくのに対して、コストであ る対 GDP 比はマイルドな上昇となっています。韓国と比較するとよくわかるのですが、日本は 高齢化が進んだからといってコストが発散するのではなく、その都度、苦しい制度改革をしたり、 自治体の皆さまにご迷惑をかけたりしながら進めてきたことで、このような結果になっているの だと思います。こういったことが外国からの評価につながっているのかもしれません。. 11.
(14) 2.地域医療構想 (1)地域医療構想について この構想は、平成 28 年度に策定され、実現に向けて各地域で動き出しました。 「医療費をカッ トするためのものではないか」という指摘もありましたが、そうではないということを私どもは ずっと申し上げてきました。医療費を削ることが目的なのではなく、人口構造の変化によって移 っていく需要に合わせて、供給を行っていく必要がある。それを合意でやっていくというのが地 域医療構想の主旨だと考えています。現在は、そのあたりの一定の理解がようやく得られ、話し 合いのテーブルが少しずつ動き出しているところかと思っています。. 合意で進めるための場として地域医療構想調整会議があるわけですが、この調整会議の中で、 公立病院の立ち位置についてもしっかり議論していただくようお願いしています。医政局と総務 省との連携の中で、公立病院の位置付けを明確にしていくことが一つのテーマとなっています。 そこで地域医療構想に先立って、「新公立病院改革ガイドライン」を設けました。これに基づき、 一つひとつの予算の位置付けを見直し、 「新公立病院改革プラン」を策定していただくようお願い しています。 このガイドラインの中で総務省が策定したのが、公立病院の機能の定義です。1~4まであり ますが、それを改めて再確認するということです。公的医療機関についても同じように、2025 年 という節目をにらんで、その立ち位置について協議していただき、プランの策定をお願いしてい ます。双方について、大まかに申しますと、ほかの機関ではなかなか担うことが難しい機能が重 視されています。 12.
(15) (2)地域医療構想調整会議における議論の進捗状況について では、どのようなかたちで議論が進められているのでしょうか。医政局が開催している地域医 療構想に関するワーキンググループで、議論の進捗状況について資料が出されましたのでご紹介 します。平成 30 年 3 月末の時点で、公立病院および公的医療機関ともに、すでに多くの都道府県 で議論が開始されています。開催述べ回数をみても、都道府県によりかなり凹凸はあるものの、 それなりに議論が進んできていることが、このデータから読み取れます。. 13.
(16) (3)参考事例の紹介 参考事例として、佐賀県の取り組みをご紹介させていただきます。佐賀県では、3 つの公的医 療機関等のあり方が、この協議の場でディスカッションされました。例えば、佐賀県東部地域で は回復期病床が足りていない状況があったことから、NHO 東佐賀病院より、休棟している 55 床 の回復期病床を動かす提案が出されました。しかし、その後のさらなる協議の中で、その機能は 民間の病院でも吸収可能ではないか、との意見交換が行われ、 「確かにそうですね」ということで、 NHO 東佐賀病院では休棟していた病床を削減することで合意に至りました。 このようにして公的医療機関の役割が明確に示される中、その地域で民間の医療機関が担って きた役割と照らし合わせ、 「それが本当に必要ですか?」という協議が改めて行われています。さ らには、そのことを通じて医療機関同士の連携が進んできているという話も聞きます。一方で佐 賀県の自治体側も、協議の場の作り方など、かなり工夫をされています。例えばエリアごとでお 見合いにならないよう全体を束ねる会議をつくるなど、きめ細かな目配り、密な意見交換、情報 の共有が行われているのです。 佐賀県が掲げるキーワードは「対話と信頼」とのことですが、ここに佐賀県庁の心意気が感じ られますし、関係者の信頼関係がいかに重要かということがわかります。 言うほど簡単ではないということは、私どもも理解しているつもりではありますが、こういっ たかたちで、各地で少しずつ協力の輪が広がることを期待しているところです。. 14.
(17) 15.
(18) 3.介護保険制度改正 介護保険法等の一部を改正する法律のポイント 介護保険制度の一部改正のポイントを簡単に申し上げます。 まず、地域包括ケアシステムの深化・推進ということで、保険者機能の強化(自立支援型の取 り組みの推進)ということと、相乗り型のサービスを作っていこうということで、これまでも基 準該当のかたちで行われていましたが、これを制度の中にきちんと位置づけるとともに、新たな 介護保険施設(介護医療院)の創設が行われています。 また、介護保険制度の持続可能性の確保ということで、一定以上の所得がある方にはプラスα のご負担をお願いすることとなっています。. 16.
(19) 4.介護医療院の創設 創設の背景 医療・介護ニーズを合わせ持つ方々への新しいサービスを、少しご紹介します。 平成 30 年 4 月より、新しい介護保険施設として、介護医療院がスタートしました。生活施設で はありますが、日常的な医学管理が可能な体制を整えており、医療法上の医療提供施設としての 位置付けもあります。それから療養病床の転換の受け皿という位置付けにもなっており、名称の 使用等について経過措置も設けられています。 新しい施設ではありますが、同時に、約 10 年前に行われた制度改正の中での介護療養型医療施 設の取り扱いということも念頭にあって、その経過も十分に踏まえたかたちで構想されたもので す。. 介護医療院の特徴 10 年前の介護療養型医療施設からの転換が結局のところうまく進まなかった理由として、利用 者の方々の状態像と、提供側の状況がうまくかみ合わなかった、ということがあると思います。 そういう意味で介護医療院は、利用者の方々の状態像が先にあり、そこに立脚したものになって います。一つのタイプに押し込めてしまうと非常に硬直的になってしまうということで、手厚い タイプとややスリムなタイプの両方を定めて、選べる設定にしました。 それから、一つの施設の中で 2 つのタイプを組み合わせることも認めています。提供側で患者 さんの状態に応じた組み合わせの仕方、あるいはその医療スタッフ等のことも考え、一番いいか たちを選んでいただけるようにしています。これは、特にこれから人口が減っていく郡部におい て、こういう場所があり続けて欲しいという意図も織り込まれています。 計画上の取り扱いも、療養病床について比較的柔軟な取り扱いがされておりますので、それを 踏襲するかたちです。また診療報酬上の取り扱いも、この施設は病院ではなく介護保険施設であ 17.
(20) り、生活施設ですので、病院からの「退院先」として扱うこと、 「自宅」と同等の取り扱いとする といったことが示されています。. 18.
(21) 5.診療報酬・介護報酬同時改定 平成 30 年度同時改定における 4 つのテーマ 続いて報酬改定の話に移ります。今回は同時改定ということでバラバラにやらないようにとい うことがずっと言われていましたので、本格的な議論を始める前に、ある程度の心合わせを行い ました。中医協と介護給付費分科会との心合わせ、それから老健局と保険局、医政局で先に共通 のテーマを決めてから、個別の取り組みを入れていくということを行いました。話し合いの中で、 ごく自然に出てきたのが、次の4つのテーマです。一つ目は地域包括ケアを充実していくという こと、二つ目は、医療と介護の連携、三つ目は人材確保、四つ目は制度の安定性・持続可能性の 確保です。. 診療報酬改定における主な改定内容 診療報酬の改定内容についてスライドに示しました。「負担軽減・働き方改革」のところでは、 医療スタッフの配置要件の緩和や、ICT の活用があります。入院医療についても、患者の重症度 等にきめ細かく階段をつくって、患者さんの状態や提供する医療機関の方々の事情に応じて、最 も適したかたちを選んでいただけるようにする、という考え方が入っています。 もう一つ、医療介護連携が必要な場面である入院時・退院時において、現場の方々の実践によ って一歩進んだ取り組みが行われています。それを下支えするということで、これまでよりも少 し早く情報共有した場合にプラスの評価が行われています。特養に関しても、配置医にきめ細か く対応していただけた場合にプラスの評価が取り入れられています。 このように、今まで一つひとつピースをはめ込んでかたちを作ってきたわけですが、その中で 19.
(22) まだ少しピースが粗いと言われるところを一つひとつ埋めていく、といったことが今回の改定に 盛り込まれています。. 6.健康寿命延伸に向けた取り組み 健康寿命への関心の高まり 健康寿命の話が取り上げられる機会が増えてきました。これまでは予防や健診という話になる と、 「無駄遣いだ」とか、 「効果が上がらない」とか、 「意味がない」とさんざん言われてきたわけ ですが、最近では経済財政諮問会議や未来投資会議のような、財政面を中心に議論いただくよう な場でも、健康寿命ということが真剣に語られるようになりました。これは、ここ 1、2 年の変化 ではないかと思います。 そこには、少し理由があります。無尽蔵に労働力が得られた時代とは異なり、少し景気が良く なってきた今は、どこも働き手が足りない事態に直面しています。事業を続ける意味でも、従業 員には働き続けてもらう必要があり、それには従業員の健康維持がとても重要になってくる。そ うでないと、中小の中堅企業が次代に事業を手渡せないのです。そういう時代にあって、いよい よ企業も健康、予防といったことに正面から取り組まなければならなくなっている事情があると 思っています。 そこには医療関係の先生方の力がどうしても必要で、これからはチェック&バランスではなく、 みんなが同じ目線で進んでいく必要があります。その理解が少しずつ深まってきたのかなと、私 自身は思っています。 20.
(23) 平均寿命の延びを上回るペースで延びる健康寿命 実際に、足元の数字も少しずつ改善しています。平成 30 年 3 月に健康局の健康日本 21 の研究 班が出した数字によりますと、男女とも平均寿命が伸びていますが、それを上回るかたちで健康 寿命が延びています。6 年前と比べると、その傾向がよりはっきりと表れています。 この健康寿命にはかなりの地域差があって、都道府県格差そのものは全体として縮小傾向にあ るものの、最小と最大では男性で 2 歳、女性で 2.7 歳という差になっています。 平均寿命および健康寿命ともにコンスタントに長い都道府県の代表例が、山梨県と静岡県です。 静岡県の知事に健康長寿の理由をおたずねしたところ、 「保健活動が盛んなことが影響しているの では」とのことでした。実際のところ、どのような取り組みが健康寿命の延伸に奏功したのか、 その因果関係を特定することは困難だとは思います。しかしながら、このような地域差は課題で あると同時にヒントにもなっていて、地域同士でお互いの取り組みを学ぶことにより、健康寿命 を引き上げていくことは、実はそれほど絵空事ではないのではないかと考えています。. 健診受診率も向上 もう一つ、健康・予防の機運が高まってきた背景にあるのが、生活習慣病予防対策です。特定 健診の受診率は、この 10 年間で少しずつ上がってきました。もちろん特定健診だけで全てが解決 するわけではありませんが、少なくとも国民の健康・予防への意識を高める方向に働いているこ とは言えると思います。. 21.
(24) さまざまなプレイヤーによる協働に意義 ~呉市の事例~ 経済界がこの分野に目を向けているもう一つの理由は、医療界とほかのプレイヤーが協働して 進める取り組みに、意義を見出している点にあると思います。これは広島県呉市の事例ですが、 糖尿病の重要化予防の取り組みを、医師会が旗振り役となり、そこに自治体(保険者)や糖尿病 の協議会、さらに厚労省も加わるかたちで行っていきました。こういった取り組みは国から言う だけではなかなか進みませんが、こうしていろいろなプレイヤーの共感を得ることで、前に進め ることができるのだと思います。それを実践しているのが、呉市です。 この取り組みの中でわかったことは、健康保険組合にもう少し頑張っていただく必要があると いうことです。国保は全体の中での立ち位置がわかる仕組みになっていますが、健保組合がバラ バラなので、全体の中での立ち位置がわかりません。ここでは日本商工会議所の三村明夫会頭か ら、 「健保組合だけでは難しく、事業主の協力もいる。保険者のデータを使って、それを健保組合 と事業主とで共有することで、健康通信簿のようなものをつくり、見える化する仕組みを作って みてはどうだろう」という主旨のご提案があり、皆で取り組むことになった経緯があります。 あとはビジネスとの協力も必要です。加藤勝信大臣も、 「保険者が言うだけではなかなか一人ひ とりが動かない。保険者と企業がタイアップできるような環境を作らなければいけない」という 主旨の話をされていました。そこで経済産業省とタイアップして、健康に携わる大企業や中小企 業を表彰したり、ロゴマークを作るなどの取り組みを行っています。こういったことが、上場し ている大企業にとっては株価に響きますし、中小企業にとっては人材確保になるなど、企業側に もメリットをもたらすと考えます。. 22.
(25) 保険者機能の抜本強化 取り組みが不十分である保険者は名前も公表しますし、ペナルティも課されます。若いうちか ら予防に力を注いでいかないと、後期高齢者医療制度に加入したときに医療費が高くなりますの で、支援金に加減算の仕組みが設けられています。これまでは非常に抑制的に運用してきました が、今後は 3 年かけて+10%に引き上げていく話もあります。. 23.
(26) きっかけは日本健康会議 そもそもこういった予防や健康づくりの価値というものに、経済界が関心を持ってくれるきっ かけとなったのが、日本健康会議です。この会議は、日本医師会の横倉会長と、日商の三村会頭、 そしてメディアの代表として読売新聞の及川前社長が発起人となって立ち上げられたものです。 経済界、医療関係、自治体保険者の連合体、さらに有識者も入り、立ち場の違いを超えて、予防・ 健康づくりに向けて一緒に進めていきましょう、というものです。医療費の適正化も合わせて行 おうとしている点が、非常に優れていると思います。. 縦割りの制度がネックに 2040 年に向けての健康寿命を延ばす取り組みの中でも、特に重要となってくるのが、高齢期の 介護予防とフレイル対策ではないかと思いますが、ここでネックになっているのが、縦割りの制 度です。介護は全て市町村になりますが、医療保険は 75 歳までは市町村で、75 歳以上になると 市町村ではなくなります。制度が別なので、レセプトの情報も切れてしまいます。医療のレセプ トが無い状態で何かをしようとしても、なかなか大変だという問題があります。 医療保険の単位は広域でいいと思うのですが、保険事業のほうは市町村とタイアップしたほう がいいと思っています。介護の現場をベースに、そこに医療の保険事業が相乗りするようなかた ちを、今後は考えていく必要があると思います。 対立の構造から、同じ目線で協働する社会へ 以上、報酬改定を含め、全体のお話をさせていただきました。いろいろな意味で、今は節目の 時期にきていると思います。そういう中で、次の節目である 2040 年に向けて一つ追い風になっ 24.
(27) ていることは、 「予防や健康づくりそのものに価値がある」という意識が広まってきていることで す。理解が広まり、さらに実態が伴ってくればよいのですが、そのための転換点となるのが、対 立の構造ではなく、同じ目線での取り組みではないかと思います。. 25.
(28) 26.
(29) 第2回. 「大都市における地域包括ケアをつくる政策研究会」. テーマ. :在宅医療の充実に向けた栃木県の取り組み. 話題提供:早川 貴裕氏 (栃木県県南健康福祉センター 総務福祉部総務企画課 副主幹). 日時:2018 年 7 月 26 日(木)19:00~21:00 場所:ステーションコンファレンス東京 605A 会議室. 27.
(30) ◆第 2 回. 在宅医療の充実に向けた栃木県の取り組み 【話題提供】 早川 貴裕氏(栃木県県南健康福祉センター 総務福祉部総務企画課 副主幹). 1.栃木県の状況 栃木県の概要 栃木県は関東平野 の端にあり、丸い形 をしています。群馬 県と茨城県に接して おり、両側を山に囲 まれています。県の 中央部を東北新幹線 と高速道路が上下に 貫いており、この貴 重な交通の要所に沿 って、人口が集中し ている状況です。 栃木県の高齢化率 は 2015 年 時 点 で 26%、現在は 27%程度となっています。高齢者人口はこれからどんどん増えていき、高齢化率が 37.5%を過ぎる 2040 年頃にピークを迎えます。その先も高齢化率はさらに上昇していきますので、 これを人口減の中でどう支えていくかが課題となっています。 2 次医療圏と在宅医療圏 栃木県には 2 次医療圏が 6 つあります。一つは県中央部の宇都宮医療圏。私がいるのは県南医 療圏で、こちらもほとんどが平野です。両毛医療圏は北側が山で、人はほとんど平野部に住んで います。県東医療圏は東側がほとんど山で、それ以外のところに人が住んでいます。県北医療圏 は、中央に少し平地がある程度で、まちに出るまでに 1 時間以上かかる山奥に住んでいる人もい ます。最も厳しいのは県西医療圏で、ほとんどが山で平地はごくわずか、川筋ひとつ隣に行くの にも 1 時間以上かかるような地域もあります。 栃木県の医療圏と高齢者福祉圏域を図にすると、両圏域は一致しているのがわかります。どこ かの市町村が必ずどこかの郡市医師会の区域に入っており、医師会がまたがっていることはあり ません。昨年までは両毛保健医療圏が 1 つの在宅医療圏でしたが、1 つの在宅医療圏に医師会が. 28.
(31) 2 つあるような状況がやりにくいということで、あえて分けた経緯があります。今は 11 の在宅医 療圏と 11 の郡市医師会があり、それぞれの圏域で医師会単位での話し合いを行い、対応している 状況です。 在宅医療圏別の高齢者人口推計 在宅医療圏ごとの高齢者人口の推計をみると、今後、高齢者人口が増えていくのは宇都宮、小 山、那須の3地域です。すなわち、交通の便がいいところは比較的若い人が多いので、これから 高齢者人口が増加していきますが、それ以外の地域はすでに高齢化が進んでいるので、高齢化率 は上昇しても高齢 者人口自体は増え ません。このよう に、栃木県では県 内を大きく 2 つに 分けて考えていか なければいけない 状況にあります。. 29.
(32) 圏域ごとの在宅医療の状況 次に、国の見える化システム等のデータを利用して出した圏域ごとの在宅医療資源の状況です。 高齢化率は全体で 27%となっています。高齢化が進んでいるところは、高齢者の単独世帯および 高齢夫婦世帯が多く、こういう地域は介護力の問題も出てきます。在宅医療をどうするのか、地 域ごとに異なるかたちで考えていかなければなりません。 要介護率は 16%前後と、どのエリアもほぼ同じくらいです。栃木県の大きな課題は、在宅療養 支援診療所や後方支援病院の数が極めて少ないことです。訪問看護事業所も現在は 92 軒あります が、その半数近くは訪問看護師が 5 人未満と小規模です。資源が乏しい中で在宅医療をいかに行 っていくのか、栃木県の大きな課題となっています。. 在宅医療の実施状況をみる と、実際に訪問診療をしてい る医療機関は、2017 年ベース で 283。約 1400 の医療機関 がある中で、2 割程度が何ら かのかたちで訪問診療を行っ ています。 一方、往診に限ってみてい くと、その 2 倍の 530、全体 の 4 割が行っています。往診 であればやるという医師が多 くいることが読み取れます。. 30.
(33) 在宅医療圏別の診療実績 訪問診療、往診の診療実績を在宅医療圏別にグラフにすると、圏域により非常に差が大きいこ とがわかります。どちらも多いのが栃木地区です。両毛地区は訪問診療が多くなっています。一 方で那須地区はどちらも少ない状況です。特徴的なのは南那須地区で、往診が飛び抜けて多くな っています。先生方に話を聞くと、訪問診療というかたちで行くのは難しいとのことでした。つ まり往診により在宅療養を支えていることが、このデータからわかります。このように、地域の 特性はそれぞれに異なりますので、県全体でカバーするというよりも、医療圏ごとにどうするか を判断していく必要があります。. 一般診療所における訪 問診療と看取りの実績 次に一般診療所にお ける訪問診療の実績を みてみると、訪問診療 の約 85%は在宅療養 支援診療所が担ってい ます。一方、在支診以 外の医療機関による訪 問診療はわずか 15% にとどまっています。 在宅での看取りとなる 31.
(34) と様相は異なり、7 割が在支診、残り 3 割を在支診以外の医療機関が担っています。自宅での最 期を支えるためには、在支診だけではなく、地域のかかりつけ医の力が必要であり、栃木県とし てもかかりつけ医の役割を重視しています。 自宅および老人ホームの死亡者の割合ですが、平成 26 年当時のデータでみると、県北および県 西は自宅死の割合が低くなっています。市町村によっては老人ホームで亡くなる方が多いところ もあり、どこで最期を迎えるか、ということは、市町村ごと、あるいは圏域ごとに、在宅医療の 現状と合わせて考えていく必要があります。 さらに、平成 26 年のデータでショッキングなのは、この年の自宅死 2800 人のうち半数にあた る 1400 人もの人が、死体検案になっていたことです。平成 28 年には 36%程度にまで下がりまし たが、ここをどうするのかも大きな課題です。. 在宅医療の実態について調査 そこで栃木県では、在宅医療の現状について、平成 28 年に実態調査を行いました。 まず診療所の人員体制ですが、医師1人体制のところが多く、訪問看護ステーションも看護師 数の平均は 6.3 人、実際にはほとんどが小規模か中規模が多くなっています。訪問診療を行う時 間帯については、 「昼休みまたは外来の前後」が最も多く、外来の合間に時間を見つけて何とか訪 問に出ているような医療機関が、全体の 6 割を占めています。 在宅医療の連携体制については、主治医・副主治医体制やグループ診療といった連携体制を取 っていない医療機関が 6 割以上を占めています。さらに緊急入院先の確保についても、 「予め確保 している」という回答は少数で、 「その都度探す」がほとんどでした。 一方、課題についてたずねたところ、立場によって視点が異なることも見えてきました。まず、 病院、一般診療所、訪問看護ステーションへの調査では、マンパワー不足や急変時の後方支援体 32.
(35) 制を課題とする回答が多く、中でも訪問看護ステーションで、在宅医療の必要性に関する介護関 係者の理解、そして家族のレスパイトケアという回答が多いことが特徴的でした。一方、相談支 援関係の事業所への調査では、レスパイトケアの必要性を指摘する回答が多く、特に相談支援事 業所では、医療機関などとの連携を課題とする回答が多くみられました。これに対して介護保険 施設への調査では、急変時の後方支援体制を課題とする回答が多く寄せられました。立場によっ て異なるさまざまな困りごとにどう対応していくか、今後の課題です。. 2.栃木県保健医療計画(7 期計画). 在宅医療の連携体制. 栃木県保健医療計画(7 期計画)策定の流れ 栃木県では、県全体の在宅医療を考える会議として、栃木県在宅医療推進協議会を年 3 回(計 画策定年は年 4 回) 、開催しています。そのほかに、平成 29 年度は医療・介護の体制整備にかか る協議を、2 次医療圏ごとに年 1~2 回、開催しました。さらに在宅医療の実態調査、DPC デー タを活用した患者調査などを行い、そのデータを使いながらいろいろな会議で議論しています。. 栃木県における在宅医療の連携体制 栃木県の考え方の特徴は、医療という側面だけではなく、患者さんやご家族など地域で暮らす 方々の目線で、在宅医療の連携体制づくりを行っていることです。ポイントは、 「はじまりを入院 にしない」ということ。入院する前はもともと地域で暮らしていたのであって、あくまで「外来、 地域からはじまる」という考えを基にして体制づくりを考えています。 施策においては「導入支援(移行支援) 」を医療機能として明確化しています。退院支援は当然 33.
(36) 必要ですが、外来から在宅に移行することもあります。外来で診ていたかかりつけ医がそのまま 継続して在宅で診ることができない場合には、引き継ぎも含め調整が必要となることもあります ので、そうしたことも考慮してこの項目を設けました。ここは、他県とは異なるところかと思い ます。. 34.
(37) 「かかりつけ」の医療機関を重視 栃木県では、 「かかりつけ」という概念を拡大し、診療所だけではなく身近な歯科、薬局などに もかかりつけが必要と考え、在宅療養支援に係る医療機関と、かかりつけ医療機関とに分けて、 役割を整理しています。県としては、かかりつけ医療機関がベースとなり、身近な患者さんを診 て欲しいという思いがあります。さらにそれを支援する医療機関とが連携して取り組むという、 二段構えのかたちをとっています。これらの医療機関を県のホームページに掲載していますが、 ただ載せるだけでなく実態調査にも協力してもらい、実績をホームページ上で公表しています。 2025 年の追加的需要 2025 年の追加的需要という ことで、これから在宅医療がど うなるのかを数字で示しまし た。 在宅医療等のうちの訪問診 療分は、2013 年時点では 1 日 約 5000 人でしたが、2025 年 には約 6500 人になるとの推計 が出ています。在宅医療等の 1 万 7000 人 か ら 訪 問 診 療 の 6500 人を引くと、約 1 万 600 人を入院医療機関以外で対応 する必要があります。さらに、 35.
(38) 追加的需要として介護施設や在宅医療等で対応する必要があるのが 1 日約 3500 人です。6500 人 プラス、この 3500 人のうちの何割かを訪問診療を含む在宅で診ることを考えていかなければい けない。これが県に与えられた課題です。. 3.医療・介護の体制整備に係る協議の場 追加的需要について協議 この追加的需要の数字をどう考えるか、ということで協議の場を設けています。地域医療構想 調整会議をベースにしながら、医療・介護療養病床を有する病院、診療所のうち介護医療院への 転換意向があるところと協議をしていくことになりました。地域医療構想調整会議の後にこの協 議を行うかたちで実施 しています。医療療養 病床に入っている人た ちを地域でどう見るの か、という議論を行う 中で、 「療養病床を退院 したあとの生活がどの ようになっているかを 見せてほしい」という 意見がありました。そ こで、国保データ分析 により、医療区分 1 に 相当する患者の退院後 のサービス利用状況を 調べたところ、介護施 36.
(39) 設と在宅医療が 10 対 3 の比率でした。そこで、追加的需要の案分を、この 10 対 3 を目安に圏域 ごとに検討することとしています。. 栃木県保健医療計画(7 期計画)在宅医療分野の目標設定 続いてこれらを 踏まえた目標設定 についてですが、 連携の指導やアウ トカムをどうする か、といった議論 はもちろんありま したが、そもそも 取り組む人がいな ければ始まりませ ん。まずは体制づ くりを行うことを 目標とし、4 つの 医療機関を増やす ことを念頭に目標設定を行いました。4 つとは、訪問診療を実施する診療所・病院、訪問看護ス テーション、訪問歯科診療を実施する歯科診療所、そして訪問薬剤指導を実施する薬局です。 訪問診療を実施する診療所・病院数は平成 27 年時点で 283 ですが、訪問診療を必要とする患 者は 1.2 倍に増えますので、そこをカバーする必要があります。普段、外来診療を行っているか かりつけ医が訪問診療を出られるのはせいぜい週 5 回程度とのことですが、この「外来の合間を 縫いながら地域に出る」というところを大事にしていく必要があると考えています。 37.
(40) 対応可能な訪問診療件数と、実績の比較 次に、対応可能な訪問診療件数と、実際に行われている訪問診療件数を比較してみました。対 応可能な訪問件数は、仮に毎週 5 回だとして月 20 回。訪問間隔は 2 週間に 1 回で計算していま す。表にしてみると、ほとんどの圏域において実績よりも対応可能な訪問診療患者数(平均値) が上回っていることがわかりました。この結果に基づけば、現在の医療機関の努力により、今の 1.5 倍程度の患者さんに対応できる可能性があることになります。. 38.
(41) 訪問診療を実施する医療機関数の目標設定 この数値のギャップをどう考え、どのように目標設定するのか、議論を行いました。栃木県の かかりつけ医の平均年齢は 63 歳で、 「今はできても 10 年後はやれない」という医師は少なくあ りません。平均 63 歳の先生方から出した平均値をもとに 5 年後、10 年後の数字を出しても、果 たして同じパワーでやれるのか、という問題もあります。そこで、まずは今後の目標設定として 3 つのパターンを提示しました。その中からより現実的な目標として、パターン 1 を選択するこ とを提案しています。今、在宅医療に取り組んでいる先生方に仲間を増やしていただいて、少し でも見ていただければ負担が減る、というかたちでカバーできるような設定となっています。. 4.在宅医療の推進に向けた今後の取り組みの方向性 今後、必要と考える 4 つの取り組み スライドは、さまざまな会議などで出た現状と課題、およびそれに対する今後の取り組みの方 向性をまとめたものです。具体的には、4 つの柱があると考えています。 1 つ目は、在宅医療専門の医療機関に頼るだけでなく、みんなが在宅医療に参加できる仕組み をつくること。2 つ目は、在宅医療を担う医師の負担軽減を行っていくこと。グループ診療など の連携体制や後方支援体制の構築を、さらに進めていく必要があります。3 つ目は、多職種協働 を円滑に行っていくための、顔の見える関係の構築、さらには多職種がともに専門性を高められ るような取り組みの推進です。そして 4 つ目が、地域住民に対してのアプローチです。住民のニ ーズを十分に尊重し、住民自ら選択できるようにするために必要な知識の普及、情報の提供は、 地域包括ケア以前の問題として、しっかり取り組んでいかなければなりません。 39.
(42) 栃木県における在宅医療の推進体制 そこで県では、市町村の支援、そして郡市医師会への働きかけとして次のような取り組みを行 っています。まず、双方をつなぐ役目を保健所が担うべく、保健所(広域健康福祉センター)内 に「在宅医療推進支援センター」を設置しています。在宅医療に関わる医療機関の連絡調整はも ちろん、退院支援や緊急に備えた後方支援体制をどうするかということも含め、広域における調 整業務を担うこととしています。 医師会に対しては、新たな事業として「在宅医機能強化支援事業」を立ち上げ、在宅医療に. 40.
(43) 関心のある診療所を対象とした研修会の開催などを行うという事業を考えました。さらにもう一 つ、新たに在宅療養支援体制強化研修開催事業を立ち上げ、在宅医療に携わる多職種を対象とし た研修などを行うというものです。これらの事業を通じて、市町村および医師会等の支援を、県 としてしっかり行っていかなければならないと考えているところです。 在宅医療の体制整備にあたってのいくつかの課題 今回、担当として感じ ていることを今一度、整 理しました。 一つは、そもそも地域 包括ケア自体への理解が なければ、在宅医療の体 制整備は始まらないとい うことです。人が老いて いく過程というものを、 もう少し住民が理解する 必要がありますし、その 上で自分はどうしたいの か、Helthy Ageing(健康 的な高齢化)の考え方を広めていかなければいけない。ここが一番、基本になるところだと思い ます。 一方で難しいのは、行政側がいくつもの事業をこなすことに追われ、それが何のための事業な のか、何を実現したいのか、本来の目的が共有されていないことです。目指すは「生活の充実」 であり、 「人生の満足」である、ということがしっかりと共有され、評価されなければ、各事業が バラバラになってしまうと感じています。 もう一つ、個人的に感じているのが、自宅、自宅と強調し過ぎではないか、ということです。 自宅ではやっていけない地域というのが必ずあります。あくまで在宅療養を選択肢の一つであり、 その人にとって何が満足かを考えていく必要があると思います。同時に、やはり医療というと入 院医療が先にくるイメージが強いので、在宅医療についての正しい理解を広めていくことも大切 だと思います。 そして、住民の急変時に関する不安です。 「いつでも見て欲しい」という期待が大きく、それが 医師の在宅医療参入の妨げにもなっています。住民の不安に対して、いくら「大丈夫」といった ところで不安を軽減することはできません。支える体制づくりと同時に、リスクの十分な説明が 必要です。医療従事者がこれから起こることに対して、責任を持って語らなければいけない、と いうことは、栃木県の太田秀樹先生もよくおっしゃっていますが、 「これからこういうことが起こ りますよ」 「でもそのときに私たちがいますよ」という、両方を保障していくことが必要です。 かかりつけ医に対するイメージも多種多様です。例えば、県南地区には大学病院が 2 つあり、 周辺の住民の方に聞くと、自分のかかりつけは大学病院で、何かあれば入院させてもらえると思 っている。さらには、医師側のかかりつけ医に対する認識もさまざまです。大切なのは、看取る 41.
(44) かどうかより、 「看取りも含めた患者のこれからに責任を持って対応できること」であり、それが できるのがかかりつけ医ではないかと思います。 そして、在宅医療に関わる先生方が一人で抱えている悩みや負担を、解決していくこと。先生 方の困りごとを共有し、ともに考えていくということを、栃木県はないがしろにしてきた気がし ますので、改めて検討していきたいと思っています。 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)も大事です。多職種連携の最強のツールだと考える 先生もいます。難しさもありますが、しっかりとやっていく必要があります。 一方、市町村の困りごとは、現状把握が困難であることです。データをもって示すと言います が、そのデータをどう扱ったらいいかわからない。データを出して地域性を把握することは非常 に大事ですので、ここは保健所としても努力してやっていく必要があると思います。. 42.
(45) 第3回. 「大都市における地域包括ケアをつくる政策研究会」. テーマ. :東京都多摩地区における地域包括ケア 進捗度比較から考える平均的な自治体の課題. 話題提供:山路 憲夫氏 (白梅学園大学小平学・まちづくり 研究所長). テーマ. :なぜ「次世代医療基盤法」か ~現場から提供されるデータの利活用の成果が 現場へ還元される社会全体の好循環を目指して~. 話題提供:田中 謙一氏 (内閣官房 健康・医療戦略室 参事官). 日時:2018 年 9 月 27 日(木)19:00~21:00 場所:ステーションコンファレンス東京 602A 会議室. 43.
(46) ◆第 3 回①. 東京都多摩地区における地域包括ケア進捗度比較から考える平均的な自治体の課題 【話題提供】 山路 憲夫氏(白梅学園大学小平学・まちづくり 研究所長). 1.はじめに 小平学・まちづくり研究所が目指すもの 小平市には、玉川上水をはじめ素晴らしい 環境、歴史、そして文化があります。東京都 内では決して知名度が高いわけでもなく、ど ちらかというと地味なまちですが、そんな小 平市で地域学を深めることで、まちづくりに 資する何かができるのではないかと考え、白 梅学園大学小平学・まちづくり研究所を立ち 上げました。 ここでは、地域包括ケアを柱としながら“総 合知としてのまちづくり”を目指した小平市における、あらゆることに目を向け、その取り組み を調査・研究しています。先日は、この一年の成果を『小平のまちづくり研究のフロンティア』 (論創社、BS 版 308 頁)というタイトルで一冊の本にまとめました。 本日は、その小平市を含む東京都多摩地区 4 市の自治体を対象に行った、地域包括ケア進捗の 比較、およびそこから見えてきた課題についてお話したいと思います。 4 市比較の理由 国立市、小平市、東村山市、小金井市の 4 市の地域包括ケアの進捗度は、ほぼ平均的も しくは平均以下となっています。今まで大都 市における地域包括ケア研究会では、先進自 治体の事例を中心に研究してきたと思います が、こういう平均以下の自治体について考え、 課題を明らかにすることは、全国的なレベル の底上げを図る意味でも必要ではないかと思 います。 多摩地区には 26 の市がありますが、同じ多摩地区でもより都心に近い武蔵野市、三鷹市、調布 市のような自治体と、八王子を除く立川市よりも西側の自治体とでは、かなり様相が異なってき ます。東部の自治体は今も人口が増え続けていますが、西部ではみるみる減ってきているのです。. 44.
(47) 特に青梅線沿線では、最 近では特養の待機待ち がなくなり、空きも増え 始めました。このように 東と西でかなり異なる わけですが、その中で国 立市、小金井市、小平市、 東村山市は恐らくまだ 当分は人口が増え続け、 高齢化がますます進む と考えられています。こ れから後期高齢者人口 の増加が非常に大きな 課題となる、まさに典型 的な東京のベッドタウンです。 比較の手法 団塊世代の多いベッドタウンであるこの 4 市を比較することで、平均的な自治体の課題 を明らかにしたい、というのが今回の狙いで す。比較にあたっては保険者シートを活用さ せていただきました。すでにこのシートを使 っている国立市と小金井市に加え、新たに小 平市と東村山市も保険者シートから分析しま した。各市の第 7 期の介護保険事業計画、地 域保険計画も、参考にさせていただきました。 さらに地域支援事業や在宅医療、医療介護の連携など、データに出ないことも含め、4 市の状況 を承知している私のほうで分析してまとめています。. 2.小平市の現状と問題点 小平市における地域包括ケアの現状 続いて小平市の現状です。2010 年から 2 期 6 年、介護保険運営協議会の会長を務めました。結 論から言うと、6 年間、いろいろ言い続けたことが結局、実らないまま終わったという反省があ ります。そこでいったん仕切り直し、改めて小平市の問題を取り上げてみたいということもあっ て、この研究所を立ち上げたという背景があります。 まず小平市の問題の 1 つ目は、在宅医療が決定的に不足していることです。先進的な取り組み もありますが、それはごく一部に過ぎず、立川市をはじめ隣の市から応援が入ってきているのが 45.
(48) 実情です。 2 つ目に、 私が身を持って感じてきたのが、 行政の動きが極めて鈍いということです。 3 つ目は、一般的な意味での地域の支え合 い、コミュニティの薄さです。これは小平市 に限らず、多摩地区のベッドタウンに共通す る特徴といえると思います。 一方、小平市の地域資源の強みとしては、 一部ではありますが在宅医療に熱心に取り組 む医師がいることです。行政の中にも問題意 識を持っている職員もいます。そしてもう一つ、小平市の特徴であり強みといえるのが、市民活 動が非常に活発で、地域包括ケアに関心を持って取り組む住民が増えつつあることです。このあ たりを突破口に活性化できないかと考えています。 小平市の課題①. 地域支援事業. 小平市の課題の一つは、地域支援事業です。 私が運営委員会の会長のときに再三申し上げ たのは、いろいろな介護予防事業をやるのは 結構だけれども、どういう効果があるのか、 費用対効果をもう少し考え、中身を練り上げ てやり直したらどうか、ということでした。 認知症サポーター養成も熱心にやっています が、養成したサポーターをどう活用するの か?. 具体的になっていません。見守りボラ. ンティア養成も同じで、その活用については 何ら手を打っていない。ほかの市でも似たような状況があるかもしれませんが、後で取り上げる 東村山市は、認知症サポーターとして養成された人が、小学校で子どもたちに認知症サポーター の養成講座を開くということをやっています。役割を付与して活用しているわけです。 居場所づくりも、私の大学も含めいろいろな取り組みが自然発生的にできていて、市も助成し たりしています。しかしながら、目標や計画をきちんと立てて進めているわけではありません。 そして、多くの自治体が一番、苦労している生活支援サービスについても、小平市もご多分に 漏れず、協議会ができてコーディネーターもいるのですが、具体的なサービスの中身については まだ何も進んでいない、という状況です。 2017 年 10 月には、 『先進事例に学ぶ―生活支援と住民の力』というテーマで市民公開講座を行 い、シンポジストとして稲城市、武蔵野市、さらに岐阜県大垣市より担当課長にお越しいただき ました。一方、小平市役所で中心的な役割を担ったのは保健師さんでしたが、実際のところ、保 健師さんだけではどうしても限界があります。先進事例を取り上げる一方で、小平市ではほとん ど進んでおりませんと、公言せざるを得なかった。さらに 2018 年 2 月には、2 度目の市民公開講 座を開催し、立川市から新田國夫先生にもお越しいただいて、 『人生の最終段階をどう迎えますか』 46.
(49) と題してシンポジウムを行いました。当日は 350 人の市民が集まり、国立市の市長も来てくださ いましたが、小平市は市長も含め幹部がほとんど顔を出さないという情けない経験をしました。 小平市の課題②. 医療介護連携. もう一つの課題は、医療介護連携です。小 平市では、医師会に丸投げしている状況です。 2010 年度から在宅医療連携相談窓口を医師 会に委託し、連携推進協議会も発足させまし たが、情報公開が不十分で市民に周知されま せん。また、これも私が再三要望したことで すが、連携推進協議会の委員は 3 師会の専門 職が中心で、患者・利用者・市民といった第 三者メンバーが入っていません。さらに信じ がたいことに、地域の中核病院である公立昭 和病院は、退院支援をしないことを公言して います。 これらの問題点がどこにあるか、基本的に 市長の姿勢が不明確ということだと思います。 だから、地域包括ケアについての組織改革や 明確な方針が立てられず、市民に全く伝わっ ていない。市職員の問題もあるとは思います が、トップの姿勢がこれでは無理もありませ ん。 「小平市は市民活動が活発なのだから、もう少し市民の力を活用したらどうか」ということを これまでも市の担当者に申し上げているのですが、そこが本当にできていない。市民との対話を しようとしないのです。. 3.多摩地区 4 市の現状と課題 小金井市の状況 では、ほかの 3 市はどうでしょうか。小金 井市では、小金井市地域包括ケア研究会とい う組織が 2015 年 7 月にできました。活動の 中心となっているのは医師会で、当時の医師 会長が旗振り役となって多職種連携を呼びか けたことで、ほかの専門職も動き、行政も加 わって議論をはじめました。非常に熱心に活 動していて、最近では市議会の議員が 20 人も 出席するところまでこぎつけました。医師会 47.
(50) が専門部会の開催を提起し、軌道に 乗り始めています。 このように、医師会が中心となっ て積極的に動いているところが小 金井市の特徴です。おかげで ICT の活用も進み、多職種研修会も開催 されています。医療介護連携も、主 治医が関係者を招待して患者グル ープをつくり、隣の武蔵野市とも連 携しながらいろいろな研究会を行 っています。非常に稀有な例だと思 います。 ただし、裏を返せば行政が動かない典型的な自治体ともいえます。もっと行政がこういった活 動に全面的に取り組み、人やお金を出すようにすると良いのではないかと思います。 東村山市の状況 東村山市の特徴は、非常に市民活動が活発 であることです。市民が行政を巻き込み、さ まざまな地域包括ケアの取り組みを行ってい ます。認知症の徘徊を“一人歩き”と呼んで、 「認知症一人歩き模擬訓練」という先進的な 取り組みを、清瀬市と同時期に 5 年前からは じめています。見守りネットワークも、市も 後方支援はしていますが、市民が中心となっ てしっかりとしたものをつくっています。 一方で東村山市の問題は、小平市以上に在宅医療が不足していることです。医師会員 104 人の うち、在宅医療の看板を掲げているのはわずか 2 人だけです。この 10 年間で、状況はほとんど変 わっていません。そこはやはり、医師会の動きが鈍いと言わざるを得ません。 国立市の状況 ほかの 3 市と比べてうまくいっているのが 国立市です。国立市では、新田國夫先生のご 活躍により在宅療養推進連絡協議会が設立さ れて、もう 10 年近くになります。東京都のモ デル事業、国立市の委託事業、それから在宅 医療連携拠点事業と、いずれも協議会主導で 取り組んできました。いろいろな分科会も開 いて活動してきたことが、国立市の大きな原 動力になっていると思います。 48.
(51) さらに、それを行 政もしっかりとバッ クアップしてきまし た。介護保険運営協 議会が、在宅療養推 進連絡と連動するか たちで検討部会を立 ち上げ、具体的に中 身を詰めてきたとこ ろが国立市の大きな 特徴です。. 4.多摩地区4市の比較 4 市の概況 4 市の概況を比較してみます。これは保険 者シートと第 7 期の事業計画から出した数 字です。基本的にはほとんど変わらないので すが、小金井市は比較的若いまちで、最も高 齢化が進んでいるのが東村山市です。 共通して言えるのは、人口が当分の間は増 え続けることです。ただ、それも、2025 年 から 2030 年にかけて頭打ちになり、それ以 降は後期高齢者の人口比率がどんどん増え ていきます。 地域支援事業の 4 市比較 これは 2016 年度の決算の数字ですが、こ れだけを見ると意外なことに、最も動きが鈍 い小平市が、地域支援事業で一番高い比率に なっています。ただし、これは従来型サービ スを「みなし」として継続しているためで、 新たな市町村の取り組みが展開されている という意味での数字にはなっていませんの で、あまり参考になりません。 49.
関連したドキュメント
・補助 73 号線、補助 83 号線、鉄道付属街路、補助 85 号線、補助 87
所 属 八王子市 都市計画部長 立川市 まちづくり部長 武蔵野市 都市整備部長 三鷹市 都市再生部長 青梅市 都市整備部長 府中市 都市整備部長 昭島市 都市計画部長
地域 東京都 東京都 埼玉県 茨城県 茨城県 宮城県 東京都 大阪府 北海道 新潟県 愛知県 奈良県 その他の地域. 特別区 町田市 さいたま市 牛久市 水戸市 仙台市
北区都市計画マスタープラン 2020 北区住宅マスタープラン 2020
・本計画は都市計画に関する基本的な方 針を定めるもので、各事業の具体的な
一般社団法人 葛西臨海・環境教育フォーラム事務局作成 公益財団法人 日本財団
表4 区市町村 千代田区 中央区 港区 新宿区 文京区 台東区 墨田区 江東区 品川区 目黒区 大田区 世田谷区 渋谷区 中野区 杉並区 豊島区 北区 荒川区 板橋区 練馬区
※1 13市町村とは、飯舘村,いわき市,大熊町,葛尾村, 川内村,川俣町,田村市,富岡町,浪江町,楢葉町, 広野町, 双葉町, 南相馬市.