【話題提供】
工藤 絵里子氏(稲城市 福祉部高齢福祉課 課長)
1.アンケートについて
アンケートの概要
お配りしている資料は、稲城市の 在宅医療介護連携推進協議会でこの 夏に行った、要介護高齢者の在宅医 療に関するアンケートの報告です。
目的は、要介護高齢者の在宅医療 および在宅看取りの実態を知ること です。ケアマネジャーを対象に、利 用者についてたずねています。なお ここでは、在宅で訪問診療を受けて いて、在宅または入院後7日以内に 病院で亡くなった場合を、在宅看取 りと定義しています。
設問について
設問は5つあります。設問1では訪問診療・往診を受けている利用者の人数について、設問2 ではその利用者が受けている
医療について、設問 3 では利 用者の関わっている医療機関 名について聞いています。この 設問1~3については、平成27 年度にも同様の調査を行って います。
設問 4 では、担当する利用 者が直近 1 年間で亡くなった 人数を聞いています。設問 5 では、設問 4 の利用者の経過 についてたずねています。
2.アンケート結果
まとめ① 平成27年度と平成30年度の比較 平成27年度調査との比
較では、稲城市内で在宅 医療を受けている利用者 数が、126 人から161 人 に増えたことがわかりま した。在宅で受けている 医療の種類については、
あまり変化はありません でした。在宅医療に関わ っている医療機関につい ては、11か所から13か所 と微増していました。
まとめ② 亡くなった人数と受けていた在宅医療 ケアマネジャーが担当
する利用者の中で亡くな った人は、117人です。少 ないようですが、平成 29 年度中の第 1 号被保険者 の死亡者数が 515 人であ ることを考えると、調査 としては実態をつかんで いると思います。事業所 によりばらつきが大きく、
1 年間で死亡がゼロとい う事業所もあれば、36 人 というところもありまし た。多いところは、訪問
看護ステーションが併設されていて、退院支援などを多く受け持っている事業所であることもわ かりました。
亡くなった利用者が受けていた在宅医療については、訪問診療と訪問看護を両方とも受けてい
まとめ③ 看取りについて 看取りの希望場所に ついては、在宅看取り を希望する人は 42 人
(36.2%)、在宅看取り を希望していない人は 33 人(28.5%)、わか らない・未記入は 41 人(35.3%)でした。
亡くなった場所につ いては、自宅が 35 人
(30%)、病院が75人
(65%)でした。
亡くなった人のうち、
在宅での看取りとなっ た人は36人(31%)
でした。保険者シートにもありますが、稲城市の自宅死割合が13.2%ということで、それよりも 高い割合というのがこの調査でわかっています。
まとめ④ 在宅看取りの希望と実際 在宅での看取りを希望してい た42人のうち、30人(71%)が 希望どおり在宅で最期を迎えて います。一方、在宅を希望してい なかった33人のうち、30人(91%)
が在宅以外での看取りになって いました。また、希望がわからな かった 21 人についても、19 人
(90%)が在宅以外での看取りに なっていました。
3.まとめ
在宅看取りの実現には本人の希望が重要
以上の調査でわかったことは、在宅看取りの実現には本人の希望がたいへん重要であるという ことです。しかしながら、本人が在宅を希望していても 3割は在宅で看取られていません。その 原因について知りたいと思っています。また、希望が確認できていなかった35%の方についても、
その理由は認知症なのか、それ以外のことなのか、今後、確認してみたいと思っています。
◆第5回③
地域包括ケア推進のために~医療行政の課題と展望~
【話題提供】
武田 俊彦氏(前厚生労働省 医政局長/医政局参与・厚生労働省参与)
1.はじめに
わが国の高齢者人口の推移
これは皆さんもお馴染みの、日本の人口推移を表したグラフです。高齢化は急速に進みますが、
2040年をピークに日本でも高齢者人口が減り始めます。
一方で、社会保障と税の一体改革は、2025 年を目指して進められてきました。2040 年は一つ のピークですが、その前の2025年までの改革も、まだ完走したわけではありません。2040年を 語る前に、まずは2025年の対応をしっかり行っていくことが、私たちに求められています。
社会保障の充実こそが最大の経済政策
大きな青い矢印と赤い矢印がありますが、これは社会保障が強くなると経済が良くなって、そ の成果によってまた社会保障が良くなるという、好循環を表しています。
政府が新内閣を組織し、最初の閣議のときに「基本方針」をつくるのですが、平成27年の「基 本方針」には社会保障の充実と書かれています。そして、この一億総活躍のときの議論が、私は 非常に印象的でした。社会保障の充実こそが最大の経済政策だということが、言われていたから です。逆に社会保障が弱体化すると、経済も悪くなる。好循環とは反対に、悪循環に陥ります。
この考え方は、すごく大事だと思っています。社会保障と税の一体改革がこの後にどうなってい くのか、その議論は政府としていまだにきちんとできていない気がしています。そもそも新内閣 が最初に掲げたこのような精神が、花火を打ち上げたときのように一時だけで消えてしまうので はなく、この社会の将来を議論するときの重要な基本理念として、残していくことが大切ではな いかと思います。
これまでの社会保障制度改革と一体改革後の展望
2040年に向けてのテーマとして、「現役世代の人口が急減する中での社会の活力維持向上」(健 康寿命の延伸)、および「労働力の制約が強まる中での医療介護サービスの確保」(生産性向上)
という2つの柱が挙げられています。しかし、それだけが社会保障政策ではありません。その下 には、今から継続して行っていくものとして、「地域医療構想に基づく医療提供体制改革」「医療 費適正化計画」「データヘルス改革、審査支払機関改革」という3つのことが示されています。
中でも医療政策を語る上では、医療提供体制をどうするか、これが極めて大事だと思っていま す。地域包括ケア、在宅医療の推進ということが、非常に重要な医療改革であることをしっかり と自覚し、各地域において不退転の決意で取り組んでいくことが重要だと申し上げたくて、この 資料をお示ししました。
医療費の動向
最近は、医療費が伸びて大変だと、あまり声高に語られなくなった印象を持っている方も多い と思います。実際に医療費の対GDP比が、2011年以降はほとんど伸びていません。伸びがなだ らかだった時期はその前にもありました。2001年から5年間ほどほとんど伸びていませんが、こ のプラトーは、小泉改革の時代です。本人3割負担の導入や2度に渡る本体マイナス改定など、
非常に大きな改革のあった時期になります。そして二つ目が、2011年以降です。
大きな自己負担の引き上げがあったわけではありません。では、いったい何だったのか。この ときに行われたのが、地域包括ケアと在宅医療の推進、そして地域医療構想でした。さらに社会 保障国民会議の報告書が出されましたが、その方向性を踏まえて医療提供側も今後の医療を変え ていく必要性を提言されるようになりました。2011年以降は、このようにして医療提供体制の改 革が大きく進んだことによって、医療費も経済との関係においてはそれほど伸びることなくコン トロールされた時代といえます。
2.医療政策の振り返り
地域包括ケアを全ての政策のスローガンに
今日のテーマの地域包括ケアですが、そこにはいろいろな側面、観点があって、人によってさ まざまな捉え方があります。私が保険局の審議官のときの局長だった唐澤剛局長がいつも言って いたのは、地域包括ケアをスローガンに全ての政策を行っていく、ということでした。それはま ちづくりであり、住まいの話でもあり、地域の共同体をつくる話でもある。そういうことも含め て、大きな社会改革をする決意で臨んでいかないといけない。これは、私も非常に共感するとこ ろです。地域包括ケアを厚生労働省だけの問題にしてしまうのは小さく捉え過ぎで、関係省庁を 交えて広く行っていく必要があると思います。
これまでの医療の在り方を振り返る
では、これまで医療政策はどのような経過をたどってきたのか、私の35年の役人人生を少し振 り返ってみたいと思います。まず1990年代というのは、まさに介護対策の10年間でした。介護 保険制度の立案・法制化を経て、2000年(平成12年)の施行に向け厚生省としても介護問題に 非常に力を入れた時期です。一方、2000年代になると、今度は医療提供体制の改革が行われるよ うになりました。私もこ
の時期の多くを医政局 と保険局で過ごし、いろ いろなことを行ってま い り ま し た 。 そ し て 2010 年代には、社会保 障・税一体改革が進行中 です。地域包括ケアとい うスローガンのもとに、
医療の在り方そのもの が“治す医療”から“支 える医療”へと変わって きた。そういう流れであ ったと思います。