Title
Fat and carbohydrate in western diet contribute differently to
hepatic lipid accumulation( 内容と審査の要旨(Summary) )
Author(s)
WU WUDELEHU
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学) 甲第1013号
Issue Date
2016-03-25
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/54573
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与要件 学位論文題目 審 査 委 員 WU WUDELEHU (中華人民共和国) 博 士(医学) 甲第 1013 号 平成 28 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当
Fat and carbohydrate in western diet contribute differently to hepatic lipid accumulation
(主査)教授 永 田 知 里
(副査)教授 中 島 茂 教授 深 尾 敏 幸
論 文 内 容 の 要 旨
Carbohydrate Response Element Binding Protein(ChREBP)は,余剰の糖質をエネルギー効率のよい トリグリセリドに置き換える転写因子の一つである。ChREBP の機能抑制により,糖質の過剰摂取で 生じる脂肪肝,肥満,耐糖能障害が改善することは報告されているが,脂肪の過剰摂取に対する ChREBP の関与に関しては不明である。そこで,本研究では,脂肪を豊富に含むウエスタン食(WD)を 負荷した ChREBP ホモ欠失マウス(Chrebp-/-)を用いて,高脂肪により誘導される脂肪肝形成過程にお ける ChREBPの役割を解析した。 【対象と方法】 野生型 C57BL/6J マウス(WT)およびChrebp -/-に対して,8 週齢から WD(タンパク質 17 kcal%,脂質
41 kcal%,糖質 42 kcal%;4.7 kcal/g)を開始し,体重や摂餌量などを経時的に測定した。採血に より,血糖値,インスリン値,遊離脂肪酸(FFA),β-ヒドロキシ酪酸(β-OHB),線維芽細胞増殖因 子(FGF)21,総コレステロール(T-Chol),トリグリセリド(TG),アスパラギン酸アミノ基転移酵素 (AST),アラニンアミノ基転移酵素(ALT)を評価した。21 週齢で各臓器を摘出し,組織重量を測定し た。肝については,組織染色(ヘマトキシリンエオジン染色,オイルレッド染色)を行うと共に,肝 内の脂質含量(T-Chol,TG)を測定した。 次に,病態に関連する mRNA 発現レベルの変化を半定量 RT-PCR 法により評価した。対象として, 脂肪分解の関連タンパク質(ペルオキシゾーム増殖剤応答性受容体α(Ppara),アシル CoA オキシダ ーゼ(Acox),Fgf21),脂肪酸合成の関連タンパク質(Chrebp,ステロール調節エレメント結合タンパ ク質 1c(Srebp1c),脂肪酸合成酵素(Fasn),肝型ピルビン酸キナーゼ(Pklr),ミクロソームトリグ リセリド輸送タンパク質(Mttp)),コレステロール合成系タンパク質(Srebp2,HMG-CoA 還元酵素 (Hmgcr),小腸脂質代謝の関連タンパク質(コレステロール輸送体(Npc1l1),Cd36,ジアシルグリセ ロールアシルトランスフェラーゼ 2(Dgat2)),炎症性マーカー(腫瘍壊死因子α(Tnfa),単球走化性 タンパク質-1(Mcp1),CD68),繊維化関連マーカー(α-1 1型コラーゲン(Col1a),トランスフォー ミング増殖因子β1(Tgfb1),組織メタロプロテアーゼ阻害物質 1(Timp))のコード遺伝子を評価した。 小腸からの脂肪吸収能は,18 時間の絶食後にチロキサポール(500 mg/kg BW)投与と 200μl オリ ーブオイル負荷によって解析した。肝臓からの超低比重リポタンパク質(VLDL)放出は,3時間の絶 食後にチロキサポール(500 mg/kg BW)を投与して検討した。 [ ]
【結果】 WD 負荷後には,体重および精巣周囲の脂肪重量は WT に比してChrebp -/-で有意に低値,肝重量は高 値,摂餌量に関しては有意に低値であった。肝の T-Chol および TG 含量は,WT に比してChrebp -/-で有意に低値であった。肝の組織所見については,WT では小葉中心は小滴性,辺縁は大滴性の脂肪 蓄積が,Chrebp -/-では小葉全体にび漫性に大小様々な脂肪滴の沈着,軽度肝細胞の変性,壊死が認 められた。空腹時の血糖値は両者で同程度であったが,Chrebp -/-の血中インスリン値は有意に低値 であった。脂肪酸分解に関しては,肝におけるPparaやFgf21 mRNA 発現量は傾向として低下し,空 腹時の血中 FFA 濃度,β-OHB 濃度,FGF21 濃度はChrebp -/-で有意に低値であった。小腸からの脂肪
酸吸収に関しては,Chrebp -/-で高値であった。肝からの VLDL 放出はChrebp -/-で有意に低下してお
り,Mttp mRNA 発現の低下と平行していた。また,肝脂肪合成の関連遺伝子(Chrebp,Srebp1c,Fasn,
Pklr)はChrebp -/-で発現が低下傾向を示したが,コレステロール合成の関連遺伝子(Srebp2,Hmgcr)
および小腸脂質代謝の関連遺伝子(Npc1l1,Cd36,Dgat2)の発現レベルは両者で同等であった。肝酵 素(AST,ALT)の上昇度には有意差を認めなかったが,肝脂肪含量の低下に一致して,炎症性マーカ ー(Tnfa,Mcp1,CD68)および繊維化関連マーカー(Col1a,Tgfb1,Timp)の発現はChrebp -/-で低下傾
向にあった。 【考察】 ChREBP の機能抑制は,摂餌減を介して高脂肪食負荷による肝脂肪蓄積を抑制したと考えられるが, その効果は限定的であった。肝臓における脂肪蓄積は,(1)摂餌量,(2) 脂肪酸分解,(3)小腸から の吸収,(4)肝臓からの VLDL 分泌,(5)グルコースからの脂肪合成により規定されるが,このうち, WD 負荷Chrebp -/-で見られる肝脂肪蓄積の背景として,(2)肝臓における脂肪酸β酸化,ケトン体産 生の低下,(3)小腸における脂肪酸吸収の増加,(4)VLDL 分泌の低下が挙げられる。(2)および(4)に ついては,ChREBP の標的遺伝子の発現低下によるものと示唆された。逆に肝脂肪蓄積を抑制する因 子として,(1)摂餌量の低下,(5)脂肪合成の低下が挙げられる。(1)については,現在のところ成因 は不明である。(5)については,ChREBP の標的遺伝子の発現低下によるものと示唆された。以上か ら,高脂肪食で肝の脂肪蓄積が生じるが,その背景としては,脂肪蓄積の促進効果が抑制効果を上 回っていることが関与すると考えられた。 【結論】 高糖質負荷に比して高脂肪負荷では,ChREBP 欠失による肝脂肪蓄積の抑制効果は限定的であった。 したがって,糖質および脂質はそれぞれ異なる機序で脂肪肝形成に関与すると示唆された。 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 申請者WU WUDELEHU は,高脂肪により誘導される脂肪肝形成において ChREBPの役割を解明するた め,ChREBP ホモ欠失マウス(Chrebp-/-)を用い,高脂肪食負荷時の肝脂肪蓄積に係るバイオマーカー への影響を明らかにした。また,これらの結果を高糖質負荷時と比較することで,脂肪肝形成のメ カニズムにおける ChREBP の関与は糖質摂取と脂質摂取では異なることを見出した。本研究の成果は 内分泌代謝病態学の発展に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌]
Wudelehu Wu, Hiromi Tsuchida, Takehiro Kato, Hiroyuki Niwa, Yukio Horikawa, Jun Takeda, Katsumi Iizuka: Fat and carbohydrate in western diet contribute differently to hepatic lipid accumulation