Title Synthesis and Properties of Chiral OrganophosphorusCompounds Originating from Binaphthyloxy-Substituted Phosphoroselenoyl Chlorides( 要約版(Digest) )
Author(s) 前川, 侑輝 Report No.(Doctoral Degree) 博士(工学) 工博甲第518号 Issue Date 2017-03-25 Type 博士論文 Version none URL http://hdl.handle.net/20.500.12099/56178 ※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。
1 別紙様式第17号
学位論文全文に代わる要約
Extended Summary in Lieu of the Full Text of a Doctoral Thesis
氏 名: Full Name 前川 侑輝 学位論文題目: Thesis Title ビナフチル基を有するセレノリン酸クロリドを起点としたキラルな 有機リン化合物の合成と性状
(Synthesis and Properties of Chiral Organophosphorus Compounds Originating from Binaphthyloxy-Substituted Phosphoroselenoyl Chlorides) 学位論文要約: Summary of Thesis 有機リン化合物の中で、P-C 結合を有する化合物は、天然物に含まれる骨格であることや、 生理活性を示すものが知られている。加えて求核触媒や、金属触媒の配位子としても利用さ れている。特にこれらの化合物の中で分子内に不斉炭素を有するものは、その絶対配置によ る生理活性の違いや、不斉触媒としての活性や選択性に興味が持たれている。そのためキラ ルな有機リン化合物を効率的に合成するための数多くの反応がこれまでに開発されている。 キラルな化合物を導く不斉合成では、適切な不斉源の選択が高エナンチオ選択的反応を達 成するうえで最も重要となる。軸不斉骨格を特徴とするビナフトールは不斉源として最も汎 用されている化合物であり、今日までに様々なビナフトール誘導体が合成され、それらを用 いた不斉反応が爆発的に開発されてきた。 特にその誘導体であるリン酸クロリドやチオリン 酸クロリドは、アミンやアルコールの不斉識別剤として効果的であること、さらにリン酸 、 チオリン酸や、リン酸アミド、チオリン酸アミド は有機分子触媒として高い不斉触媒能を示 すことが明らかにされている。それらに加え、2006 年にビナフチル基を有するセレノリン酸 クロリドが合成できることが報告された。このクロリドは酸素、硫黄の同族体と比較し、様々 な反応剤に対して高い反応性を示すとともに、高い不斉識別能を有することが明らかにされ た。しかしこれまでこれらのリン塩化物を用いた反応は P-O、P-N 結合 を含む誘導体を経由、 もしくは利用したものであった。それに対して P-C 結合を有するホスホン酸エステルの合 成、利用例は、実際に幾つかの反応でホスホン酸エステルの有用性が示されているにもかか わらず、圧倒的に少ない。そのため、それら誘導体の潜在的な有用性に興味が持たれる(第1 章)。 そこで著者はビナフチル基を有するセレノリン酸クロリドを起点として、効率的な P-C 結 合の形成とジアステレオ選択的な反応の開発を目指すとともに、種々のキラルな有機リン化 合物の合成とその性状を明らかにした。 P-C 結合を形成する反応として、リン中心ラジカルを発生させ、それを不飽和炭素結合へ付 加させる方法が古くから研究されている。しかし、光学活性部位を分子内に含むリン化合物 をラジカル反応に用いた例は非常に少なく、さらにその中でジアステレオ選択的なラジカル 付加反応に成功した例はない。第 2 章ではビナフチル基を有するセレノリン酸誘導体からセ レノホスホリルラジカルを発生させ、アルケンへと付加させることで P-C 結合を構築すると ともにジアステレオ選択的なラジカル付加反応を検討した。その結果、ビナフチル基に嵩高 い置換基を導入することで付加生成物のジアステレオ選択性が大幅に向上した。
2 またリン塩化物と有機金属反応剤との反応も、P-C 結合を形成するための一般的な方法の一 つである。ビナフチル基を有するホスホン酸エステルを合成する方法としては、ジクロロホ スフィンから導く方法、もしくはビナフチル基を有する亜リン酸ブロミドから導く方法が主 に利用されている。しかし、いずれの方法も不安定なリン化学種を経由する必要があり、安 定なリン化学種から有機金属反応剤との反応で種々のホスホン酸エステルを合成する手法は 報告されていない。第 3 章では安定に単離可能なビナフチル基を有するリン塩化物に対して Grignard 反応剤を反応させることでホスホン酸エステルの効率的合成を検討した。セレノリ ン酸クロリドを用いることで置換反応はスムーズに進行し、P-C 結合を有するセレノホスホン 酸エステルへと導くことに成功した。 先に述べたように、分子内に不斉炭素を有するホスホン酸エステルの有用性から、それら を高選択的に合成する手法が数多く報告されている。しかし、リン原子の隣接炭素上に炭素 置換基のみを持つホスホン酸エステルを合成する手法は未だ少なく、より多彩な置換基の効 率的な導入法の開発は現在でもチャレンジングな目標の一つである。特に炭素置換基のみを 含む四置換炭素を持つホスホン酸エステルの合成例は極めて少ない。第 4 章では第2、3章 で合成したセレノホスホン酸エステルのリン原子に対して隣接炭素上の水素原子を塩基で引 き抜くことでカルバニオンを発生させ、そこに求電子剤を加えることで不斉炭素の導入を検 討した。その結果、セレノホスホン酸エステルに対して様々な置換基を高いジアステレオ選 択性で導入することに成功した。また、リン原子上の原子をセレン原子から酸素原子へと変 換することで、再度脱プロトン化することができ、高いジアステレオ選択性で四置換炭素を 有するホスホン酸エステルへと導くこともできた。 第 5 章では、不斉炭素を導入したホスホン酸エステルを還元することで、合成例が極めて 少ないキラルな一級ホスフィンへと導き、その性状を明らかにした。