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引きこもり青年の事例研究

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Academic year: 2021

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引きこもり青年の事例研究

学校教育専攻 臨床心理士養成コース 入 谷 紘 樹 フ。ライパシ」保護のため,要旨において事 例の内容を言晴肘ーることはせず,論考したこ とを以下に言靖たする。 1.クライエントの成長した側面について 引きこもりの青年が立ち直るためには居場 所が必要である。 Aが相談室に居場所を見つ けるために,雑談をすることが非常に有効だ ったと言える。雑談をする中で相手のことを 知り,関係、を深めていったことで, Aは安心 して内省を深めていくことができたのではな し、カ「b また,相談室に来ることや,メンタルフレ ンドを受け入れることにより,安心できる環 境の中で外界とのつながりを保つことで,外 の世界への檎渡しになるのではなし治、 引きこもりの背景として考えられるうつ病 の症状には,思考カヰ集中力の減退,決定困 難がある。うつ傾向の引きこもりのクライエ ントが相談室の中で安心できることにより, 自分を表現できる場を持てるようになれば, 楽しみを自分で見出すことができるようにな り,回復に繋がるのではなし治、 また自分で意思決定をした事柄に対し,カ ウンセラーがそれを認めることで, Aは自信 を持つことができ,前向きに考えられるよう になると考えられる。ただし,そこに根拠や 内実を伴わないとき,それらは肯定と受け取 られるよりも,軽く扱われ見下されている感 覚として受け取られる場合がしばしばあるこ q u つ ' U 指 導 教 員 山 下 一 夫 とから,その際にはカウンセラー自身も本腰 を入れて関わることが必要だろう。それはク ライエントの成長した側面を見つけ出し,そ れをどれだけ心から喜べるかということにか かっていると言える。 2.筆者の関わり方について 全体を通して,カウンセリングと言うには, 筆者はAの気持ちに沿ってこちらの意見を譲 る姿勢が足りなかったと言えるO 筆者は,自 分の意見と食い違うAの話に内心反発する気 持ちを抱え,筆者ばかりが折れることに対し 抵抗を感じていた。それは公平の原則にこだ わり過ぎていたと言うこともできるだろう。 またAから語られる話についても,内容に領 くだけで,筆者から話を深め話題を広げてい く場面があまり見られていなし、。筆者の関わ り方はカウンセリングの儲リとはかけ離もて いたと言える。 筆者は雑談の相手としてAと関わることで, 公平の原則の中でAが問題なく暮らしていけ るための技術を身に付けさせようとしていた と言えるのではないか。面接中の雑談も,カ ウンセリングとしての雑談ではなく,雑談そ のものを目的として面接をしていたと考えら れる。しかし,これは本来のカウンセリング の繍!とはかけ離してし、ることから,カウン セリングに来ているAに対しこのような関わ り方をしたことが適切だったのか,というこ とを考える必要があるだろう。

(2)

初めにクライエントの意向についてよく確 認すること,またカウンセラーの方でどのよ うな対応ができるのかということをよく説明 することで,適切な関わりができるようにな ると考えられる。 雑談の相手としてAと関わっていく中で, 関係を泰樹寺するために必要な限界を意識する ようになった。雑談をする関係の中で,引っ 張っていってほしいとし、う気持ちを潜ませた 話は聞くことはで、きなかった。これらの行動 がなぜ聞く方には負担に感じるのカミコ 考えられる理由のひとつとして, 日常会話 や今回のケースのような雑談のレベルでは, 聞く側はその行動の基となっている本来の気 持ちに直接関与できず,結果だけを浴びせら れることになり そこで苛立ちが起こるため ではなし治、八つ当たりが典型的な例だろう。 これによって話した方は気が楽になるかも知 れないが,聞く方にはイライラが残る。結果 として話し手から聞き手にストレスが移行し たと見ることができることから,これを「ス トレスの密輸jと呼び今後の研究課題とした し、これに対し,カウンセリングの場面でカ ウンセラーが話を聞くことができるのは,ク ライエントの抱えている気持ちに直接焦点を 当て深めていくことで,関与しているという 実感を得ているためではないだろうヵ、 筆者は,カウンセラーとしての役割に徹し きれていなかったと言える。結局筆者は人の いいお兄さんとして

A

と関わってきたので、は ないヵ、この関係を通じて

A

は,引っ張って いってほしい気持ちが叶えられず,やるせな さを感じた。その気持ちを受け,筆者は面接 中にユーモアを交えることで, Aに対し苦し い状況を切り抜けるために創造住を用いると 4 つ ム いう方法のモデルを示したと考えられるので はなし治、 3.面接中,目に涙が溜まる現象について 面接中,筆者の目に涙が溜まる現象が何度 か見られた。それはしばしばAにも見られて し、る。 雑談をしてして関係の中で,引っ張ってい ってほしいとしづ欲求を受け入れることはで きなし1。欲求が受け入れられないというA,と 受け入れたいが受け入れられない筆者の心に やるせない気持ちが生じていたのではなし治、 そしてそれぞれに起こったやるせなさを共に 感じ合っていたと考えられる。このような形 でAの感情に向き合い,共に悩むことで, A の孤独は癒されていたのではないだろうれ 4.今後の課題 まず筆者がカウンセラーの役割を全うする ことが何より大事なことだろう。そのために 必要な知識,心構え等の要件を満たすことが 今後の課題として挙げられる。ロールプレイ を繰り返すことにより,面接の技術を磨いて いくことで,カウンセラーとしての関わり方 を身につけることができるのではなし治、 筆者は独自の問題意識にとらわれるあまり, 先行研究の知見を活用する姿勢を見失ってい たと言える。クライエントの理解,面接の進 め方にもその影響は現れている。これまでに 体系付けられた態命を学び,クライエントの 状態像から適切な関わり方を導き出し,そし てそれを実践できるようになることが,カウ ンセラーとしての役割を果たすことに繋がる だろう。 その上で,人と人が関わり合うことについ ての哲学を深め,筆者にできることを考えて いくことを今後の課題としたい。

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