特別支援学校(視覚・知的・肢体不自由)教員の
食育に対する意識と食育実践の現状と課題
―食育に関するアンケート調査から見えてきたもの―
土田裕美
*§・山下房江
**・青山妙子
*** * 筑波大学附属大塚特別支援学校 〒 112‒0003 東京都文京区春日 1‒5‒5 ** 元筑波大学附属視覚特別支援学校 〒 112‒8684 東京都文京区目白台 3‒27‒6 *** 筑波大学附属桐が丘特別支援学校 〒 173‒0037 東京都板橋区小茂根 2‒1‒12Current Situation and Challenges of Food and Nutrition Education for Teachers
at Special-Needs Schools(for the Visually Impaired, Intellectually Disabled
and/or Physically Disabled)and their View towards the Education
—Findings from Questionnaire Survey Regarding Food and Nutrition Education—
Hiromi Tsuchida*, Fusae Yamashita** and Taeko Aoyama***
*School for the Mentally Challenged at Otsuka, University of Tsukuba 1-5-5 Kasuga, Bunkyo-ku, Tokyo 112-0003
**Special Needs Education School for the Visually Impaired, University of Tsukuba 3-27-6 Mejirodai, Bunkyo-ku, Tokyo 112-8684
***Kirigaoka School for the Physically Challenged, University of Tsukuba 2-1-12 Komone, Itabashi-ku, Tokyo 173-0037
While special-needs schools provide various coaching on food and eating, current efforts are not organized. The following information regarding food and nutrition education for visually impaired, intellectually disabled and/or physically disabled children was collected from teachers at special-needs schools and analyzed to determine the current situation and future challenges.
98.4% of surveyed teachers felt/somewhat felt challenged by the current dietary habits of their students. 96.9% were interested/somewhat interested in food and nutrition education and 93.7% said food and nutrition education was provided/somewhat provided at their schools. However, only 78.1% provided/somewhat provided food and nutrition education themselves, which was significantly lower (p < 0.05)than the percentage interested in food and nutrition education or the percentage of schools
providing food and nutrition education Moreover, only 73.4% of the teachers who do provide food and nutrition education themselves felt/somewhat felt food and nutrition education was effective.
While the challenges that teachers face regarding the dietary habits of their students vary, there seems to be a gap between what is and should be taught. When teaching food and nutrition education, teachers prioritize the improvement of unbalanced diets, the enjoyment of eating, appreciation and communication, and the value of manners. The most common challenge they face is cooperation from the family. Moreover, they expect nutrition educators to manage and provide school meals that are balanced, safe and reassuring.
In the future, nutrition educators should play a more central role in seeking ways for teachers and families to provide food and nutrition education and cooperate more effectively.
────────────────
Key words : Food and nutrition education, Special-needs schools, Teachers, View towards food and
nutrition education, questionnaire survey
1. 緒 言 2005 年の食育基本法1)の施行、2007 年文部科学省か らの食に関する指導の手引2)を受け、普通学校や特別支 援学校において、さまざまな食育が実践されている3), 4)。 2010 年に食育推進基本計画が完成年度を迎え、新 たに 2011 年には第 2 次食育推進基本計画5)が示され た。前計画との大きな違いとして「周知から実践へ」 を概念に、「生涯にわたるライフステージに応じた間 断ない食育の推進」、「生活習慣病の予防及び改善につ ながる食育の推進」、「家庭における共食を通じた子ど もへの食育の推進」の 3 点が重点課題として掲げられ た。学校や家庭における子どもへの継続的な食育の重 要性が、再度示されたことになる。 このような中で、普通学校の教員や保護者を対象と した研究6)~10)が蓄積されてきている。 特別支援学校では食育基本法1)の施行以前から給食 指導、摂食指導や自立活動などでさまざまな指導が行 われており、実践報告がされている11), 12)。しかし、特別 支援学校の教員を対象にした先行研究はほとんどない。 障害のある子どもたちにとっては、将来自立し、社会 参加する基盤として望ましい食習慣を身につけることが 大切であり、また「食べること」自体が咀嚼や嚥下など の食べる機能の発達を促し、食事の基本動作やコミュ ニケーション能力、情緒面などの調和的発達を促す重 要な行為である13)。2011 年には「食育」が教育要領・ 学習指導要領14)の総則に明記され、「健康の保持」、「心 理的な安定」、「人間関係の形成」、「コミュニケーション」 といった自立活動の視点を加味して目標を設定し、個別 の指導計画を生かした食育の推進が示されている。 著者らの学校でも栄養教諭の立場からみると、「食育」 という言葉自体は周知されており、全体計画はあるも のの、給食指導にとどまっていたり、教員の考えに委 ねられた指導になっていたりする。学校全体として効 果的な指導がなされていないように感じる。また、食 これらの原因を探るため、特別支援学校の教員は食 育に対し、どのような意識を持ち、どのように行って いるのか、さらにはどんなことに困っているのかなど、 食育に対する意識、食育実践の現状と課題を明らかに したいと考えた。 本研究では国立 T 大学附属特別支援学校 3 校(視 覚障害、知的障害、肢体不自由)の教員を対象とした。 (以下、それぞれ視覚・知的・肢体不自由とする) 対象校は、同じ大学の附属学校である。附属学校組 織のひとつである教師教育研究推進部門に位置づけら れた食育推進部会では、栄養教諭を中心に連携した活 動を行っている。視覚・知的は幼稚部から高等部まで、 肢体不自由は小学部から高等部までを有しており、幼 稚部から高等部までの長期間を同一校で学ぶことが出 来る教育体制をとっている。教員の異動もほとんどな いため、障害種別の専門的な視点で、継続した指導が 行えることが特徴である。これらのことが公立の特別 支援学校との違いである。今回、本研究はパイロット 研究とし、障害のある子どもたちへの食育推進に向け ての基礎資料としての調査を行ったので報告する。 2. 方 法 (1)対象者および調査方法 対象者は、国立 T 大学附属特別支援学校 3 校に勤務 する教員とした。栄養教諭に関しては調査対象外とした。 2011 年 6 月~7 月にかけて自己記入方式による「食 育に関するアンケート調査」を実施した。対象者には 事前に調査の目的、個人情報の保護、自由意思による 参加を文書で説明し、回答によって同意を得たものと した。アンケート用紙は無記名とし、各校の栄養教諭 が配布・回収した。結果、教員 64 名(回収率 64.6%) から回答が得られた。 回答者の属性は表 1 の通りである。内訳は、視覚で は小学部教員 9 名、その他として寄宿舎指導員 1 名、 知的では幼稚部教員 5 名、小学部教員 8 名、中学部教
部教員 7 名、高等部教員 2 名、その他として管理職・ 養護教諭 2 名、未回答 1 名であった。 今回は、回答者の属性にバラつきがあったため障害 種別や学部別にはせず、3 校の教員を一括して分析を 行った。 (2)調査内容 アンケートによる調査内容は属性の他、下記の通り で、大項目としては以下の 2 項目、① 子どもたちの 現在の食生活について、② 自身の食育に対する意識 と食育実践の現状と課題についてである。 ① 子どもたちの現在の食生活について―「子どもた ちの食生活に課題を感じていますか」(「感じる」から「感 じない」の 5 段階)、ここで「感じる」「やや感じる」 と回答した者に、「主にどのようなことに課題を感じま すか」(選択肢から上位 5 つまで「好き嫌い」「偏食」「こ だわり」「朝食欠食」「肥満」「やせ」「咀嚼・嚥下」な ど 19 項目とその他自由記述)、項目については、学校 における食育の中でこれまでに取り上げられている項 目16)と、著者らの話し合いから収集し作成した。 ② 自身の食育に対する意識と食育実践の現状と課 題について―「食育に興味がありますか」(「ある」か ら「ない」の 5 段階)、「学校は食育を行っていますか」 (「行っている」から「行っていない」の 5 段階)、「ご 自身は、食育を行っていますか」(「行っている」から 「行っていない」の 5 段階)、自身で食育を「行ってい る」「やや行っている」と回答した者に、「主にどのよ うな内容の食育を行っていますか」(選択肢から上位 5 つまで、選択肢は同 19 項目とその他自由記述)。同 じ回答者に「食育の指導の際、大切にしていることが ありますか」「食育の指導の際、難しさを感じること がありますか」(「ある」「ない」)、「ある」場合は具体 的内容を自由記述とした。「学校やご自身による食育 の効果を感じますか」(「感じる」から「感じない」の 5 段階)、「今後、学校や家庭で更に食育を推進するため には、どのようなことが必要ですか」(「子どもたちの食 生活の実態把握」、「明確な課題・目標の設定」など 7 項目)、それぞれに(「必要」から「必要ない」の 5 段階)、 その他自由記述とした。「食育に際して、栄養教諭には 特にどのような役割を期待しますか」(「栄養バランスの よい給食の管理・提供」、「安心・安全な給食の管理・ 提供」など 6 項目)、それぞれに(「期待」から「期待 しない」の 5 段階)、その他で自由記述とした。 3. 解析方法 回答の得られた特別支援学校教員 64 名を解析対象 とし、分散分析の結果、有意差が認められたので、さ らに多重比較(LSD 法)で検討した。解析には統計 解析ソフト js-STAR2012. for Windows を使用した。 有意水準は 5%とした。 4.結 果 ① 子どもたちの現在の食生活について 表 2 の通り、「子どもたちの食生活に課題を感じて いますか」の質問事項に対し、「感じる」36 名(56.2%)、 「やや感じる」27 名(42.2%)、「どちらともいえない」 1 名(1.6%)で、「あまり感じない」や「感じない」 はいなかった。 子どもの食生活に課題を「感じる」「やや感じる」 と回答した 63 名に、上位 5 つまでという条件付きで 課題の内容について質問したところ、延べ 289 の回答 があり、「偏食」39 名(13.5%)、「食事のマナーやルー ル」35 名(12.1%)、「正しい姿勢や道具の使い方」30 名(10.4%)、「好き嫌い」27 名(9.3%)、「肥満」23 名(8.0%)の順に割合が高かった(図 1)。 ② 自身の食育に対する意識と食育実践の現状と課 題について 表 2 の通り、「食育に興味がありますか」では、「あ る」34 名(53.1%)、「ややある」28 名(43.8%)、「ど ちらともいえない」2 名(3.1%)、「あまりない」「ない」 はいなかった。「学校は食育を行っていますか」では、 表 2 教員の食育に対する意識と食育実践の現状
「行っている」31 名(48.4%)、「やや行っている」29 名(45.3%)、「どちらともいえない」3 名(4.7%)、「あ まり行っていない」1 名(1.6%)、「行っていない」は いなかった。「ご自身は食育を行っていますか」では、 「行っている」15 名(23.4%)、「やや行っている」35 名(54.7%)、「どちらともいえない」7 名(11.0%)、「あ まり行っていない」5 名(7.8%)、「行っていない」2 名(3.1%)であった。 「ご自身は食育を行っていますか」での「行っている」 「やや行っている」の回答者に上位 5 つまで、実際に 行っている食育の内容について質問したところ、延べ 218 の回答があり、「食事のマナーやルール」35 名 (16.1%)、「正しい姿勢や道具の使い方」30 名(13.8%)、 「好き嫌い」20 名(9.2%)、「偏食」19 名(8.7%)、「手 洗い・衛生の習慣」、「食を楽しみ味わうこと」、「感謝の 心の育成・挨拶」16 名(7.3%)の順に多かった(図 1)。 次に、「ご自身は食育を行っていますか」に「行っ ている」「やや行っている」と回答した者の「食育の 指導の際に大切にしていることがありますか」では「あ る」48 名(96.0%)、「ない」1 名(2.0%)、「未回答」 1 名(2.0%)。「ある」とした回答者の具体的内容は延 べ 53 の回答があり、図 2 の通り「栄養バランスや健 図 1 教員が子どもたちの食生活で課題に感じる内容と実際に行っている食育の内容
康面」14 名(26.4%)、「食を楽しむこと」11 名(20.7%)、 「感謝の心・コミュニケーション」10 名(18.9%)、「マ ナーを大切にする」9 名(17.0%)、「その他」9 名(17.0%) であった。同者への「食育の指導の際に難しさを感じ ることがありますか」では、「ある」45 名(90.0%)、「な い」1 名(2.0%)、「未回答」4 名(8.0%)、その具体 的内容は延べ 53 の回答があり、図 3 の通り「学校と 家庭との連携」15 名(28.3%)、「栄養バランスや健康 面」12 名(22.6%)、「食事時間やスピード」5 名(9.4%)、 「正しい姿勢や道具の使い方」4 名(7.6%)、「その他」 17 名(32.1%)であった。なお具体的内容は自由記述 であったが、カテゴリ化は著者らが研究目的等を考慮 し行った。 次に食育の効果について、表 2 の通り「学校やご自 身による食育の効果を感じますか」では「感じる」10 名(15.6%)、「やや感じる」37 名(57.8%)、「どちら ともいえない」15 名(23.5%)、「あまり感じない」2 名(3.1%)、「感じない」はいなかった。 食育の意識についての質問「食育に興味があります か」、「学校は食育を行っていますか」、「ご自身は食育 を行っていますか」で分散分析を行い、5 段階評価の 平均値を検定したところ有意差がみられた(p < 0.01)。そこで多重比較を行ったところ、「食育に興味 がありますか」と「ご自身は食育を行っていますか」 の間、また、「学校は食育を行っていますか」と「ご 自身は食育を行っていますか」の間に有意差がみられ た(p < 0.05)。 食育推進のために必要なこととして「今後、学校や 家庭で更に食育を推進するためには、どのようなこと が必要ですか」の設問 7 項目の結果は、表 3 の通りで 表 3 今後の食育推進に向けての教員の意識 表 4 今後の食育推進に向けての教員の意識と「食育に興味がありますか」の関係
あった。「食育に興味がありますか」との相関関係で は表 4 の通り、「子どもたちの食生活の実態把握」、「明 確な課題・目標の設定」、「食育に関する知識・理解の 普及」、「学校・家庭の連携・共通理解」、「地域や外部 専門家との連携」、「食育のための時間・機会の確保」 において有意差がみられた(p < 0.01)。 次に栄養教諭に期待する役割について「食育に際し て、栄養教諭には特にどのような役割を期待しますか」 の設問 6 項目の結果は表 3 の通りであった。「食育に 興味がありますか」との相関関係は表 4 の通り「栄養 バランスのよい給食の管理・提供」、「安心・安全な給 食の管理・提供」、「給食時の集団的な指導の実施」、「肥 満・偏食・アレルギー等に対する個別指導の実施」で 有意差がみられた(p < 0.05)。 5. 考 察 本研究は、特別支援学校(視覚・知的・肢体不自由) 教員の食育に対する意識と食育実践の現状と課題につ いて検討を行った。 子どもたちの食生活に課題を感じているとした教員 の割合は 98.4%と顕著に高かった。特別支援学校にお いては個別の指導計画が作成され、給食や教科・領域 等での指導だけでなく、自立活動でも食に関する指導 が行われており、食生活に関する課題を意識する場面 が多いと推測される。課題の内容については項目間に 有意な差はみられなかった。上位 5 つまで選択という 条件であったが、5 つ選択した者が多く、教員が子ど もたちに感じる食生活についての課題は多岐に渡ると 考えられる。 教員は、食育に興味があり(96.9%)、学校は食育 を行っている(93.7%)という意識が非常に高いこと が示唆された。ところが、自身は食育を行っている (78.1%)との前向きな回答の教員に対し、消極的な 回答の教員は 21.9%であった。「子どもたちの食生活 に課題を感じる」、「食育に興味がある」、「学校では食 育を行っている」と食育に関して前向きな回答をした 割合が極めて高かった結果と比較し、「自分自身が食 育を行っている」と答えた割合は低い結果となった。 評価方法を検討することが必要と思われる。これは栄 養教諭など食育をコーディネートする立場にある教員 が、早急に着手すべきことと考える。 自分自身が食育を行っていると回答した関心度の高 い教員が指導していた内容は、図 1 の通り、「食事の マナーやルール」、「正しい姿勢や道具の使い方」、「好 き嫌い」、「偏食」の順に多かった。子どもたちの食生 活において課題に感じることと比較すると、課題に感 じてはいるが、実際の食育では行われにくい内容は「偏 食」、「肥満」、「咀嚼・嚥下」、「食経験の不足」、「卒業 後の食生活」といった長期的な指導が必要な内容で あった。また、実際の食育で多く行われている内容は 「手洗い・衛生の習慣」、「正しい姿勢や道具の使い方」、 「食事のマナーやルール」、「感謝の心の育成・挨拶」 など、給食指導中心の内容であった。食育は学校教育 活動全体の中で体系的に行われるべきものであるが、 未だ給食時間中心の指導になっていると考える。 食育の指導の際に大切にしていることがあると回答 した教員の割合は 96.0%と極めて高かった。その内容 は「栄養バランスや健康面」(例:嫌いなものも一口 は食べる・いろいろな食材や味に慣れる・健康との関 わりや食事が健康と直結していることを自覚する)、 「食を楽しむこと」、「感謝の心・コミュニケーション」 (例:食材や作ってくれた方への感謝の心)、「マナー を大切にする」(例:一方的でなくやりとりを大切に している)などがあげられた。教員は、指導の際に大 切にしていることがあり、その一人ひとりの食育観が 積極的な食育への取り組みに繋がっている。しかし、 それらが共通理解されていないために、せっかく積極 的に取り組んでいても、学校として系統的な食育が行 われていないのは非常に残念である。今後は、これら を学校全体で共通理解する必要がある。 食育の指導の際に難しさを感じることがあると回答 した教員の割合も 90.0%と極めて高かった。その内容 は「学校と家庭との連携」(例:学校だけでは身に付 かない・家庭と考え方が異なる・家庭を含む環境要因 が大きく関与しており、子どものみの指導だけでは十 分な効果が望めない)、「栄養バランスや健康面」、「食
向きな回答は 73.4%であったが、一方で消極的な回答 は 26.6%あった。効果を感じられないのが学校全体と してなのか、教員自身としてなのか、あるいは両方な のか明確ではないが、いずれにしても先の「食育の指 導の際に難しさを感じること」であがった課題が関係 していると思われ、この改善が必要である。 これらのことから、今後は、栄養教諭が中心となり、 例えば専門家による研修等で知識や技術を身につける 機会を設けるなどの取り組みが必要である。 表 3 の通り、今後の食育推進のためには「子どもた ちの食生活の実態把握」、「学校・家庭の連携・共通理 解」などが特に必要と考えられている。栄養教諭には 「栄養バランスのよい給食の管理・提供」、「安心・安 全な給食の管理・提供」、「肥満・偏食・アレルギー等 に対する個別指導の実施」など専門的な内容が特に期 待されている。 また表 4 の通り、「栄養教諭には特にどのような役割 を期待しますか」と「食育に興味がありますか」との 相関関係から、「給食時の集団的な指導」は期待され ているものの、「教科・総合等での集団的な指導」はあ まり期待されていなかった。これは、給食時の指導は 栄養教諭の役割だと認識されているが、教科・総合等 での指導は教員が行うものと考えていると思われる。 さらに「学校・家庭・地域との連携・コーディネー ト」は栄養教諭にはあまり期待されていなかった。先 の結果の、「今後、学校や家庭で更に食育を推進する ためにはどのようなことが必要ですか」、と「食育に 興味がありますか」との相関関係では「学校・家庭の 連携・共通理解」や「地域や外部専門家との連携」で は有意差がみられたことと合わせて考えると、外部と の連携は食育推進において大切だと考えているが、そ のコーディネーターの役割を栄養教諭にはあまり期待 していない結果となった。 今回の結果から、特別支援学校の教員は食育とはど ういうものか、栄養教諭や教員それぞれの役割は何か の認識が曖昧であるため、学校全体での食育が効果的 に進められていないと考えられた。今後はこの結果を 踏まえて、教員に対し、わかり難い部分に対応したき め細かい研修を行い、正しい認識のもと連携して食育 を行っていきたい。 6. 結 論 教員は子どもたちの食生活について、多くの課題を 感じている。実際に行っている指導内容は、課題に感 じている内容とは異なっていた。また、食育への強い 興味・関心を示しながらも、自身が食育を行うまでに は至っていない。食育を積極的に行っている教員自身 も、その効果をまだあまり感じられていない。 指導の際に大切にしていることは、「栄養バランス や健康面」、「食を楽しむこと」であり、この教員の食 育観が積極的な食育への取り組みに繋がっている。一 方、難しさを感じることは、「学校と家庭との連携」 や障害特性に関わる内容からくる困難さであり、これ が食育推進における課題となっており、自身の食育の 効果を感じるまでに至らない要因にもなっていると推 測される。 今後の食育推進のためには「子どもたちの食生活の 実態把握」、「学校・家庭の連携・共通理解」などが特 に必要と考えている。栄養教諭には「栄養バランスの よい給食の管理・提供」、「安心・安全な給食の管理・ 提供」、「肥満・偏食・アレルギー等に対する個別指導 の実施」を期待している。 本研究では教員が子どもたちの食生活で感じている 課題、食育に対する意識、食育として行っている指導 の内容とその効果、食育を行う上での難しさ、今後の 食育推進のために必要な課題が分かった。 障害種、障害の程度が多岐に渡る特別支援学校にお ける食育を一般化することには限界があると思われる が、教員の研修とともにさらに調査を進め分析するこ とは可能と考える。 今回は基礎資料の収集であったが、今後は障害種別、 学部別、教員の属性別、健常児との比較や地域特性を 含む調査を行うことで、障害のある子どもたちへの食 育を推進していきたい。 文 献 1) 内閣府:食育基本法(2005) 2) 文部科学省:食に関する指導の手引(2007) 3) 文部科学省:学校を中核とした食育推進事業結果報 告書(2009、2010) 4) 山下房江:特別支援学校での食育—実物を使って丁 寧に食の楽しさを伝える—、月刊食育フォーラム、 vol.9、100、22︲28 頁(2009) 5) 内閣府:第 2 次食育推進基本計画 2︲5 頁(2011) 6) 篠原浩美:運動障害のある児童生徒の「食べる力」の 育成に関する研究—教職員及び保護者の意識や実態を 基にした指 導内 容 づくり—http://www.hiroshima-c. ed.jp/web/publish/ki/pdf1/kk37/undousyougai.pdf (2012) 7) 上岡美保、吉田昴平:教育者の視点からみた食育推 進の効果と期待に関する研究、日本食育学会誌、第 6 巻、第 3 号、273︲283 頁(2012) 8) 福島洋子、田島真理子:鹿児島県の中学校における 食育の取組状況と食育に対する家庭科担当教員の意
識について、鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要、 vol. 20、101︲111 頁(2010) 9) 鈴木洋子:小学校及び中学校における食育推進の課 題の究明—養護教諭の食育への参加実態と意識から の検討—、奈良教育大学紀要、第 60 巻、第 1 号、 107︲112 頁、(2011) 10) 福島洋子・田島真理子:中学生の保護者の食育に対 する意識と取組について、鹿児島大学教育学部教育 実践研究紀要、vol.22、37︲44 頁(2012) 11) 山本昌邦:自立活動からみた子どもの食生活、養護 学校の教育と展望、No.130、42 頁(2003) 12) 真木葉子、山下 光:大阪府下の肢体不自由養護学 校における給食指導—アンケート調査による検討—、 大阪教育大学紀要、第Ⅳ部門、第 53 巻、第 1 号、 73︲81 頁(2004) 13) 文部科学省:食に関する指導の手引—第 1 次改定版— 14、176 頁(2010) 14) 文部科学省:特別支援学校 教育要領・学習指導要 領(2009) 15) 三反田和人:特別支援学校(肢体不自由)における 食育、肢体不自由教育学会誌、no. 202、10︲15 頁(2011) 16) 神林裕子:特別支援学校における摂食指導(給食指導) に関する研究~実態調査と事例研究を通して~、福 島県養護教育センター研究紀要、第 22 号、32︲35(2008) (平成 25 年 4 月 19 日受付、平成 25 年 7 月 10 日受理) ────────────────────────