152 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(39) シオ ダ ヤス オ塩田康夫(昭和19
医学博士 乙第748号昭和61年1月24日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
小児の高血圧スクリーニングに関する研究 第1編 自動血圧計を用いた小児の血圧測定について 第II編 小児の高血圧・フォローアップ成績について (主査)教授 福山 幸夫 (副査)教授 高尾 篤良,教授 野本 照子論 文 内 容 の 要 旨
目的 近年わが国の小児をとりまく環境は成人病の危険因 子が増加する傾向にあり,その予防のために小児期か ら対策を講じなければならない時期にきている,その 一環として児童生徒の血圧検診を学校保健の中でおこ なう必要がある.そこで自動血圧計を用いた血圧検診 のシステム化の可能性について検討した.また小児高 血圧の実態について検討した. 対象 検討した自動血圧計はマイクロフォン法による日本 コーリン社製BP-203X,パラマ社製GP-303,ドップ ラー法によるRoche社製Arteriosonde l225,オッシ ロメトリ一法によるKritikon早戸Dinamap 845の4 種である.対象の児童生徒は東京都江戸川区と千葉県 習志野市の男女児で,1980年は小中学生2,753名,1981 年は小中高生8,584名,1982年は小中高生4,936名で あった. 方法 上記の4機種について,直接血圧値と自動血圧計の 測定値との比較,水銀血圧計と自動血圧計との比較, 機種別血圧平均値の比較,自動血圧計の測定値と児童 の身長との関係について検討した.高血圧の基準とし て暫定的に小学低学年SBP 135and/or DBP85以上, 小学高学年と中学生140and/or90以上.高校生150and/ or90以上とした. 結果 1)直接血圧と自動血圧計の測定値との比較では,収 縮期圧・拡張期圧ともに良好な相関が得られたが,水 銀血圧計と自動血圧計による測定値との比較では,直 接血圧との比較に比べ,相関はやや不良であった.2) 機種別の血圧平均値を比較したところ,Dinamap 845 とArteriosonde 1225の値には有意差がなかったが, BP-203XとGP-303の値はDinamap 845に比べ有意に 低値であった。3)BP-203XとGP-303による拡張期圧 は,児童の身長と負の相関を示した.4)機械の操作と してはオッシロメトリー法によるものがエラーも少な く簡便であった.以上より1981年以降はDinamap 845 を主として用いた.5)1981年の検診で高血圧児は初回 測定時107名(1.2%),反復測定時43名(0.5%)であっ た.中学生以上では男子の約1%,女子の約0.3%に持 続的高血圧を認めた.6)高血圧児には高血圧の家族歴 を有するものが多く,肥満度20%以上のものも血圧正 常群より多かった.7)高血圧児を精査したところ,肥 満を有する高血圧児は,肥満のない高血圧児に比べ, 総コレステロール値,および動脈硬化指数が有意に高 かった.8)Dinamap 845による血圧平均値にもとづ き,小児の年齢別・性別血圧平均値を求め,その値を もとに高血圧判定基準を次の如く定めた.すなわち小 学生男女とも135and/or80,中学生男子140and/or80, 同女子135and/or80,高校生男子145and/or85,同女子 140and/or85以上である,9)1年間隔で,同一条件で 一774一153 血圧測定をおこなった対象の,年齢別,性別血圧平均 値は全く変動がなかった.2年連続して測定し得た 3,100名のうち,ともに上記の基準値以上のものは18名 (0.6%),3年連続して測定した560名のうち,ともに 基準値以上は3名であった, 考察 従来用いられてきた水銀血圧計を児童生徒の血圧検 診に使用すると,現在の学校保健のシステムの中では, 或る特定の人達への負担が増加することになり,広汎 なスクリーニングは困難である.そこで現在市販され ている自動血圧計を用いて小児の血圧検診が可能か否 かを検討したところ,オッシロメトリ一法による血圧 計が,測定値の妥当性,使用上の実用性という点で効 果的であることが判明した.また実際に自動血圧計を 用いて血圧検診をおこなったところ,無自:覚なまま持 続性高血圧を示すものが,中学生以上,高学年男子の 約1%,女子の約0.3%に存在することが明らかになっ た.これら高血圧児の多くは,肥満,高脂血症・高血 圧の家族歴など,複数の成人病危険因子を有しており, 血圧検診の意義は大きいと考えられた. 結語 小児期からの成人病予防の一環として,広汎な児童 生徒の高血圧スクリーニングを学校保健の中でおこ なっていく必要がある.