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教師の信念と児童認知が児童の社会性や学級集団力動に与える影響

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山本 愛子 *・永山 智之 **

教師の信念と児童認知が

児童の社会性や学級集団力動に与える影響

要約  本研究では、教師の信念と児童認知が児童の社会性や学級集団力動に与える影響について、社会性に関 する教師の児童認知と児童の自己認知のズレも含めて検討することを目的とした。質問紙調査を行い、小 学校の4年生以上の学級担任14名とその学級の児童405名を分析対象とした。その結果、ルールづくり重 視群の教師が担任する学級の児童が、仲間づくり重視群より社会性評価得点(情緒得点及び機能得点)が 高く、学級で気持ちが通じると共に学級内で役割を果たせると感じていたことがうかがえた。さらに、バ ランス群の教師と児童の社会性評価得点とのズレが他の2群より小さいことが示され、バランス群の教師 が担任する児童のバラつきが、情緒得点では他の2群より小さく、機能得点ではルールづくり重視群より 小さいことが示された。これらのことから、教師と児童の上下関係を確立し、さらに教師と児童及び児童 間の水平関係を確立したバランスの良い信念で学級経営を行うことで、児童の自己認知に沿った児童認知 を行い、児童の社会性を高め、まとまりのある学級集団を形成できることが示唆された。 キーワード:教師、児童、信念、社会性、学級集団力動 Ⅰ.問題と目的  学級経営研究会(2000)は、学級がうまく機 能しない状況のうち、教師の学級経営が柔軟さを 欠いている事例が7割を占めていることを報告し ている。学級集団づくりの在り方は教師によって 様々であるが、河村(2010)は、一部の管理意 識の強い教師が担任する学級集団では、子どもた ちの友人関係や学習意欲、学級活動へのかかわり などのスクールモラールが、他の学級に比べて有 意に低くなっていることを明らかにし、決まりな どで教師が管理するような学級集団づくりが子ど もにマイナスの影響を与えるとしている。こうし たことから、学級集団がより良く機能するために は、まず教師の学級集団づくりのあり方に着目す ることが重要と考えられる。  教師の学級集団づくりのあり方と学級集団の状 態の関連を見ていくにあたっては、Bionの集団力 動の考え方が有用となると考えられる。Bion (1961 / 2016)は「個人内力動(個人の心的過 程)」と「集団の無意識」は絶えず相互に影響を 与えあっていると考え、集団に帰属する個人の精 神病理や心理状態は、その集団の意識(作動グルー プ)や無意識(基底的想定グループ)に大きく影 響されるとしている。平尾(2008)は、満足型 学級では指導と援助のバランスや、ルールとリ レーションの定着も良く、親しい人間関係が形成 され、クラスは活気や笑顔で れ学力の定着も良 く全体の満足度も高い状態であり、作動グループ の状態と捉えている。さらに、基底的想定グルー プの特徴は河村(2007)の「管理型学級」と「な れあい型学級」に類似すると述べ、さらに、「管理 型学級」では規律や規律重視の指導に傾き、ルー ルは定着しているが子ども同士の関係は希薄で、 子どもの意欲や承認感に差があり、常に教師の評 価を気にするという状態で、闘争・逃避基底的想 定に支配されている状態であるとしている。教師 が自分の指導の傾向や認知の特徴に気付き、児童 *  川西市立多田小学校 ** 兵庫教育大学

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発達心理臨床研究 第25巻 2019 なる(近藤,1984)。浦野(2001)は、学級の 荒れは、子どもと教師の関係性の中に潜む食い違 いやズレに気づかないことに端を発していること が多く、それが両者の関係の悪循環を促進してい ることを指摘している。教室は本来、子どもたち にとって、自身の居場所が確保できる空間であり、 存在が承認される空間であるにもかかわらず、実 際は、教師と子どもの間で必ずしも了解されない 不安定な状況が渦巻く空間になっており、このよ うな双方の捉え方の相違をどのように埋めていけ るかが大きな課題である( 原他,2011)。これ らのことから、児童の社会性や学級集団力動を検 討するにあたって、教師と児童の認知のズレを扱 うことが重要であり、担任教師の信念に偏りがあ ると、子どもの自己認知に沿った児童認知が行わ れなくなり、また教師と児童との認知のズレが大 きくなると、児童の自己認知する社会性が低くな ることが予想される。  以上を踏まえ、本研究では教師の指導の方針で ある教育観を教師の信念と定義し、教師の信念が 児童の社会性や学級集団力動に与える影響につい て、社会性に関する教師の児童認知と児童の自己 認知のズレも含めて検討することを目的とした。 児童の自己認知や学級集団の実態を測るために、 先の「学級内での社会性を見取るための児童用自 己評価シート(瀧口,2009)」を用いることとし た。この尺度は、「機能面(役割を果たすか)」と「情 緒面(気持ちが通じるか)」2因子で構成され、 児童の社会性、ひいては学級内の人間関係を把握 しようと開発された。また、教師の児童認知を測 定するために教師用の「学級の社会性評価シート」 (瀧口他,2014)を用いることとした。  さらに、小学校という場は学校目標に向かい学 校職員で教育活動を取り組む体制があるうえ、地 域に即した教育を行う風土があり、それぞれの学 校文化が存在するため、教師の信念や児童認知に 与える影響は所属する学校ごとに異なると考えら れる。教師が児童に与える影響がそうした学校集 団の影響も含まれると仮定した上で、児童に与え る影響を検討することとした。 の人間関係を敏感に捉えて学級集団の発達を促す ことができれば、児童を取り巻く問題を未然に防 止するだけではなく、授業におけるより質の高い 学習環境の構築や学級内の人間関係形成が可能と なろう。  藤田(2000)によると、教師の教育観には、 従来から強く存在していた、「望ましい人間に育て たい」という方向に引っ張って行く教師主導型と、 教師が子どもの思い、やりたい気持ちを大切にし て、それを育てていく児童中心型の2つが伝統的 に存在するという。森田・山田(2013)は、集 団の望ましい経営の在り方について、教師による 指導重視型(上下関係優先型)と、教師と児童の 間の上下関係を最小化することを重視する児童尊 重型(水平関係優先型)のおおむね二つに大別で きると指摘している。そして、「縦糸・横糸チェッ クシート」(野中・横藤,2011)の質問項目をも とにした「学級経営傾向調査シート(森田・山田, 2013)」を作成し、瀧口(2009)が開発した「社 会性を見取るための児童用自己評価シート」と合 わせて学級経営に影響を与える教師―児童関係に 関して調査を行った。その結果、社会性が高く、 多種多様な集団形成の可能性があり、学級に対し て居心地よく過ごせていると感じていることがう かがえる児童が多い学級の担任は、教師と児童の 上下関係(ルールの徹底)を確立し、教師と児童 および児童間の水平関係(フラットな心の通い合 い)も確立した学級経営を行っていると自覚して いることを報告している。このことから、上下関 係と水平関係が両立した信念を持つ教師の学級が 児童の社会性が高く、学級集団にまとまりがあり、 逆にどちらかに偏った場合、児童の社会性が低く、 学級集団にまとまりがないことが予想される。  教師は、それまでの生活上の経験から重要視す る視点や価値基準をもち、教育実践を行う(林・ 大橋・広岡,1983)。つまり、物事を捉える視点 が教師個人によって異なるがゆえに、教師が子ど もに期待する特性もおのずと異なってくる。この ことは、教師の児童認知次元と、子ども個人の持 つ特性とが適合しているか否かを考察する指標と

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【担任教師用】 ①フェイスシート  担当学年、性別、教職経験、年代の記入を求め た。 ②学級経営傾向調査シート(森田・山田,2013)  学級状態に影響を与える教師の信念を測定する 尺度である。「縦糸・横糸チェックシート」(野中・ 横藤,2011)の質問項目をもとに作成され,学 級内のルールに関することを指導し学級内の「上 下関係」を築き上げることを指す「縦糸」と、子 ども同士や子どもと担任との関係づくりに重点を おく「水平関係」を築き上げることを指す「横糸」 の2因子で構成されている。20項目に4件法で回 答を求めた。 ③学級の社会性評価シート(瀧口・森田・山田, 2014)  学級内での社会性を見取るための児童用自己評 価シートの各項目内容を、担任教師による様相の 見取りを問う表現に変更した尺度である。児童用 と同様に30項目に4件法で回答を求めた。この シートの結果は児童用の自己評価シートから作成 された座標軸にプロットすることができ、直観的 な見取りを反映した担任の評価と、児童の実際の 回答とを照合することができる。 (ⅲ)調査手続きと倫理的配慮  2017年4月∼ 9月に、調査協力を得られた関西 圏内のA市内の各学校の学校長を通して、学級担 任には個別配布個別回収形式で、また児童に対し てはその学級の担任教師による集合調査形式で実 施した。調査に先立ち、対象校関係者に口頭及び 文書によって研究目的の説明・対象校や対象の担 任教師、その児童の匿名性が保護される旨を説明 した。また、調査に関して調査協力者のプライバ シーが保護され、回答を拒否する権利があること などを文書にして配布した。 Ⅲ.結果 (ⅰ)担任教師の信念と児童の社会性自己評価得 点  仮説1の学級担任の信念が児童に与える影響を  本研究では以下の仮説を検討することとした。 仮説1:担任教師の信念に偏りがあると、児童の 学級内の人間関係を表す社会性自己評価得点 は低くなる。 仮説2:担任教師の信念に偏りがあると、子ども の自己認知に沿った児童認知が行われず、教師の 社会性得点と児童の社会性自己評価得点とのズレ は大きくなる。 仮説3:担任教師の信念に偏りがあると、学級集 団としてのまとまりがなくなる。 仮説4:担任教師個人の信念や児童認知は所属す る学校ごとに異なる。 仮説5:社会性得点に関する担任教師の認知と児 童の自己認知のズレが大きくなると、児童の社会 性自己評価得点は低くなる。 Ⅱ.方法 (ⅰ)対象者  関西地方の公立小学校の4年生以上の学級担任 15名とその学級に在籍する児童442名から回答 を得た。そのうち、調査項目に不備があるものは 除き、最終的に学級担任14名(男性9名,女性5名。 20代∼ 50代)と児童405名が有効回答者となった。 (ⅱ)質問紙の構成 【児童用】 ①フェイスシート 学年、性別、出席番号の記入 を求めた。学校の成績に関係がないことを明記 した。 ②学級内での社会性を見取るための児童用自己評 価シート(瀧口,2009)  学級が目標を共有し役割を分担して活動に取り 組む機能集団としての側面を有していることに着 目し、「機能面(役割を果たすか)」と「情緒面(気 持ちが通じるか)」2因子で構成され、児童の社 会性、ひいては学級内の人間関係を把握しようと 開発された。「今自分がいる学級の同級生といっ しょにいるときや、話し合ったり、活動したりし ているときのことを考えて、一番近いと思うとこ ろに〇をつけて下さい」と教示文を挿入し、30 項目に4件法で回答を求めた。

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発達心理臨床研究 第25巻 2019 た(表3)。その結果、情緒得点及び機能得点に 有意差が認められた(情緒:F(2,400)=4.29, p<.05、機能:F(2,400)=3.80,p<.05)。Tukey の HSD 法による多重比較を行ったところ、情緒 得点・機能得点共に「ルールづくり重視」群の得 点が「仲間づくり重視」群の得点より有意に高かっ た(p<.05)。「バランス群」においては、他の2 群との差はみられなかった(p=n.s.)。 (ⅱ)担任教師の信念と、教師と児童の社会性得 点のズレ  仮説2の学級担任の信念が児童に与える影響を 調べるため、教師の社会性評価得点とその教師が 担任する児童の社会性自己評価得点の差を算出し、 3群に分けた担任教師でどのように異なっている のかを検討するため一元置配置の分散分析を行っ た(表4)。その結果、機能得点のズレに有意差 が 認 め ら れ た(F(2,400)=9.50,p<.001)。 Tukey の HSD 法による多重比較を行ったところ、 機能得点のズレでは「ルールづくり重視」群、「仲 間づくり重視」群の得点は「バランス群」の得点 より有意に高かった(p<.05)。 調べるため、教師の信念を測定する学級経営傾向 調査シートより、縦糸得点と横糸得点を算出した (表1)。  本研究では教師の個人内の信念の傾向が児童に 与える影響を測るのが目的であるので縦糸得点と 横糸得点を比較し、学級担任14名(男性9名、女 性5名)を縦糸得点が高い教師を「ルールづくり 重視」群(5名、男性3名、女性2名)、横糸得点 が高い教師を「仲間づくり重視」群(6名、男性 4名、女性2名)、縦糸横糸同じ得点である教師を 「バランス群」(3名、男性2名、女性1名)とし、 3群に分けた。さらに、教師及び児童の社会性を 測定する尺度より、逆転項目は修正した上で児童 の社会性における情緒得点及び機能得点をそれぞ れ算出した(表2)。  3群に分けた担任教師の学級に所属する児童の 情緒得点及び機能得点がどのように異なっている のかを検討するため一元置配置の分散分析を行っ 山 田 ,2014)  学 級 内 で の 社 会 性 を 見 取 る た め の 児 童 用 自 己 評 価 シ ー ト の 各 項 目 内 容 を 、 担 任 教 師 に よ る 様 相 の 見 取 り を 問 う 表 現 に 変 更 し た 尺 度 で あ る 。児 童 用 と 同 様 に 30 項 目 に 4 件 法 で 回 答 を 求 め た 。 こ の シ ー ト の 結 果 は 児 童 用 の 自 己 評 価 シ ー ト か ら 作 成 さ れ た 座 標 軸 に プ ロ ッ ト す る こ と が で き 、 直 観 的 な 見 取 り を 反 映 し た 担 任 の 評 価 と 、 児 童 の 実 際 の 回 答 と を 照 合 す る こ と が で き る 。 ( ⅲ ) 調 査 手 続 き と 倫 理 的 配 慮 2017 年 4 月 ~ 9 月 に 、調 査 協 力 を 得 ら れ た 関 西 圏 内 の A 市 内 の 各 学 校 の 学 校 長 を 通 し て 、 学 級 担 任 に は 個 別 配 布 個 別 回 収 形 式 で 、 ま た 児 童 に 対 し て は そ の 学 級 の 担 任 教 師 に よ る 集 合 調 査 形 式 で 実 施 し た 。 調 査 に 先 立 ち 、 対 象 校 関 係 者 に 口 頭 及 び 文 書 に よ っ て 研 究 目 的 の 説 明 ・ 対 象 校 や 対 象 の 担 任 教 師 、 そ の 児 童 の 匿 名 性 が 保 護 さ れ る 旨 を 説 明 し た 。 ま た 、 調 査 に 関 し て 調 査 協 力 者 の プ ラ イ バ シ ー が 保 護 さ れ 、 回 答 を 拒 否 す る 権 利 が あ る こ と な ど を 文 書 に し て 配 布 し た 。 Ⅲ . 結 果 ( ⅰ ) 担 任 教 師 の 信 念 と 児 童 の 社 会 性 自 己 評 価 得 点 仮 説 1 の 学 級 担 任 の 信 念 が 児 童 に 与 え る 影 響 を 調 べ る た め 、 教 師 の 信 念 を 測 定 す る 学 級 経 営 傾 向 調 査 シ ー ト よ り 、 縦 糸 得 点 と 横 糸 得 点 を 算 出 し た ( 表 4—1)。 本 研 究 で は 教 師 の 個 人 内 の 信 念 の 傾 向 が 児 童 に 与 え る 影 響 を 測 る の が 目 的 で あ る の で 縦 糸 得 点 と 横 糸 得 点 を 比 較 し 、 学 級 担 任 14 名( 男 性 9 名 、女 性 5 名 )を 縦 糸 得 点 が 高 い 教 師 を「 ル ー ル づ く り 重 視 」群(5 名 、 男 性 3 名 、女 性 2 名 )、横 糸 得 点 が 高 い 教 師 を「 仲 間 づ く り 重 視 」群(6 名 、男 性 4 名 、 女 性 2 名 )、縦 糸 横 糸 同 じ 得 点 で あ る 教 師 を 「 バ ラ ン ス 群 」(3 名 、男 性 2 名 、女 性 1 名 ) と し 、3 群 に 分 け た 。 さ ら に 、 教 師 及 び 児 童 の 社 会 性 を 測 定 す る 尺 度 よ り 、 逆 転 項 目 No. 性別年代教職年数 縦糸 横糸 信念の傾向 N 機能平均 情緒平均 機能標 準偏差 情緒標 準偏差 機能得点 情緒得点 機能得点 のズレ 情緒得点 のズレ 1 男 30 2 30 30 バランス群 21 45.80 46.23 6.70 6.25 41 40 4.80 6.23 低い 2 女 20 3 38 34 ルールづくり重視群 22 46.50 46.00 7.38 7.24 49 46 -2.50 0.00 やや高い 3 男 30 9 29 26 ルールづくり重視群 29 45.06 44.55 8.14 7.36 37 41 8.06 3.55 低い 4 女 40 20 37 34 ルールづくり重視群 28 47.46 45.57 5.67 4.90 42 40 5.46 5.57 低い 5 男 30 14 31 25 ルールづくり重視群 30 44.34 45.10 6.03 6.90 34 35 10.34 10.10 低い 6 男 20 8 32 39 仲間づくり重視群 28 45.57 45.89 7.79 7.12 48 46 -2.43 -0.11 高い 7 男 50 22 21 15 ルールづくり重視群 30 41.72 42.79 4.55 4.44 43 47 -1.28 -4.21 やや高い 8 男 20 3 30 32 仲間づくり重視群 32 44.07 44.72 5.30 6.65 33 39 11.07 5.72 低い 9 女 30 7 33 34 仲間づくり重視群 31 44.90 44.90 3.96 4.72 40 40 4.90 4.90 低い 10 男 30 14 15 15 バランス群 27 40.86 41.31 5.07 4.07 44 36 -3.14 5.31 高い低い 12 女 40 13 33 35 仲間づくり重視群 28 42.93 41.14 7.20 7.55 43 42 -0.07 -0.86 やや高い 13 男 40 4 33 36 仲間づくり重視群 27 41.59 40.48 3.80 4.54 41 38 0.59 2.48 低い 14 女 50 8 34 34 バランス群 34 43.31 43.10 5.96 5.97 45 46 -1.69 -2.90 高い 15 男 20 4 28 29 仲間づくり重視群 36 42.78 42.19 6.36 6.90 37 40 6 2.19 低い 表2 クラスごとの記述統計量  学級経営傾向 児童用自己評価シート 学級の社会性評価シート       注:情緒得点・機能得点のズレは児童-教師の得点で算出 表1  学級経営傾向調査シートの得点(N =14) α係数 平均  SD 縦糸 .503 3.16 0.80 横糸 .753 3.27 0.76 山 田 ,2014)  学 級 内 で の 社 会 性 を 見 取 る た め の 児 童 用 自 己 評 価 シ ー ト の 各 項 目 内 容 を 、 担 任 教 師 に よ る 様 相 の 見 取 り を 問 う 表 現 に 変 更 し た 尺 度 で あ る 。児 童 用 と 同 様 に 30 項 目 に 4 件 法 で 回 答 を 求 め た 。 こ の シ ー ト の 結 果 は 児 童 用 の 自 己 評 価 シ ー ト か ら 作 成 さ れ た 座 標 軸 に プ ロ ッ ト す る こ と が で き 、 直 観 的 な 見 取 り を 反 映 し た 担 任 の 評 価 と 、 児 童 の 実 際 の 回 答 と を 照 合 す る こ と が で き る 。 ( ⅲ ) 調 査 手 続 き と 倫 理 的 配 慮 2017 年 4 月 ~ 9 月 に 、調 査 協 力 を 得 ら れ た 関 西 圏 内 の A 市 内 の 各 学 校 の 学 校 長 を 通 し て 、 学 級 担 任 に は 個 別 配 布 個 別 回 収 形 式 で 、 ま た 児 童 に 対 し て は そ の 学 級 の 担 任 教 師 に よ る 集 合 調 査 形 式 で 実 施 し た 。 調 査 に 先 立 ち 、 対 象 校 関 係 者 に 口 頭 及 び 文 書 に よ っ て 研 究 目 的 の 説 明 ・ 対 象 校 や 対 象 の 担 任 教 師 、 そ の 児 童 の 匿 名 性 が 保 護 さ れ る 旨 を 説 明 し た 。 ま た 、 調 査 に 関 し て 調 査 協 力 者 の プ ラ イ バ シ ー が 保 護 さ れ 、 回 答 を 拒 否 す る 権 利 が あ る こ と な ど を 文 書 に し て 配 布 し た 。 Ⅲ . 結 果 ( ⅰ ) 担 任 教 師 の 信 念 と 児 童 の 社 会 性 自 己 評 価 得 点 仮 説 1 の 学 級 担 任 の 信 念 が 児 童 に 与 え る 影 響 を 調 べ る た め 、 教 師 の 信 念 を 測 定 す る 学 級 経 営 傾 向 調 査 シ ー ト よ り 、 縦 糸 得 点 と 横 糸 得 点 を 算 出 し た ( 表 4—1)。 本 研 究 で は 教 師 の 個 人 内 の 信 念 の 傾 向 が 児 童 に 与 え る 影 響 を 測 る の が 目 的 で あ る の で 縦 糸 得 点 と 横 糸 得 点 を 比 較 し 、 学 級 担 任 14 名( 男 性 9 名 、女 性 5 名 )を 縦 糸 得 点 が 高 い 教 師 を「 ル ー ル づ く り 重 視 」群(5 名 、 男 性 3 名 、女 性 2 名 )、横 糸 得 点 が 高 い 教 師 を「 仲 間 づ く り 重 視 」群(6 名 、男 性 4 名 、 女 性 2 名 )、縦 糸 横 糸 同 じ 得 点 で あ る 教 師 を 「 バ ラ ン ス 群 」(3 名 、男 性 2 名 、女 性 1 名 ) と し 、3 群 に 分 け た 。 さ ら に 、 教 師 及 び 児 童 の 社 会 性 を 測 定 す る 尺 度 よ り 、 逆 転 項 目 No. 性別年代教職年数 縦糸 横糸 信念の傾向 N 機能平均 情緒平均 機能標 準偏差 情緒標 準偏差 機能得点 情緒得点 機能得点 のズレ 情緒得点 のズレ 1 男 30 2 30 30 バランス群 21 45.80 46.23 6.70 6.25 41 40 4.80 6.23 低い 2 女 20 3 38 34 ルールづくり重視群 22 46.50 46.00 7.38 7.24 49 46 -2.50 0.00 やや高い 3 男 30 9 29 26 ルールづくり重視群 29 45.06 44.55 8.14 7.36 37 41 8.06 3.55 低い 4 女 40 20 37 34 ルールづくり重視群 28 47.46 45.57 5.67 4.90 42 40 5.46 5.57 低い 5 男 30 14 31 25 ルールづくり重視群 30 44.34 45.10 6.03 6.90 34 35 10.34 10.10 低い 6 男 20 8 32 39 仲間づくり重視群 28 45.57 45.89 7.79 7.12 48 46 -2.43 -0.11 高い 7 男 50 22 21 15 ルールづくり重視群 30 41.72 42.79 4.55 4.44 43 47 -1.28 -4.21 やや高い 8 男 20 3 30 32 仲間づくり重視群 32 44.07 44.72 5.30 6.65 33 39 11.07 5.72 低い 9 女 30 7 33 34 仲間づくり重視群 31 44.90 44.90 3.96 4.72 40 40 4.90 4.90 低い 10 男 30 14 15 15 バランス群 27 40.86 41.31 5.07 4.07 44 36 -3.14 5.31 高い低い 12 女 40 13 33 35 仲間づくり重視群 28 42.93 41.14 7.20 7.55 43 42 -0.07 -0.86 やや高い 13 男 40 4 33 36 仲間づくり重視群 27 41.59 40.48 3.80 4.54 41 38 0.59 2.48 低い 14 女 50 8 34 34 バランス群 34 43.31 43.10 5.96 5.97 45 46 -1.69 -2.90 高い 15 男 20 4 28 29 仲間づくり重視群 36 42.78 42.19 6.36 6.90 37 40 6 2.19 低い 表2 クラスごとの記述統計量  学級経営傾向 児童用自己評価シート 学級の社会性評価シート       注:情緒得点・機能得点のズレは児童-教師の得点で算出 表1  学級経営傾向調査シートの得点(N=14) α係数 平均  SD 縦糸 .503 3.16 0.80 横糸 .753 3.27 0.76

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教師の信念と児童認知が児童の社会性や学級集団力動に与える影響

デ ル(HLM) をMicrosoft ExcelのVisual Basic Applicationで動く統計分析用フリーソフトであ るHAD(version 15.106)(清水他,2006)を用 いて行った。この分析法を用いることにより、担 任教師が所属する学校に組み込まれているという、 学校特有のデータ構造を積極的に利用しつつ、も し学校間で違いが見られた場合、その違いを学校 に関する要因で説明できるかどうか検討すること が可能となる。  データに個人レベルと集団レベルの階層性があ るかどうかを判断する基準としては、①級内相関 係数が有意である、②級内相関係数が.10ない し.05を超える、③Design effectが2以上である、 など複数のものが挙げられている(清水,2014)。 分析の結果、「教師の信念」及び「情緒得点のズレ」 「機能得点のズレ」の級内相関係数がそれぞ れ.107、.029、.087で有意であったが(p<.01)、 級内相関係数が.05を超えDesign effectが2以上で あった「教師の信念」「機能得点のズレ」につい て階層性を有すると判断した(表6)。 (ⅲ)担任教師の信念と児童の社会性得点のバラ つき   仮説3の学級担任の信念が児童に与える影響を 調べるため、各クラスの社会性得点におけるバラ つきを算出し、3群に分けた担任教師でどのよう に異なっているのかを検討するため一元置配置の 分散分析を行った(表5)。その結果、情緒得点 及び機能得点の標準偏差それぞれに、有意差が認 められた(情緒得点:F(2,400)=7.45,p<.01、 機能得点:F (2,400)=5.97,p<.05)。Tukey の HSD 法による多重比較を行ったところ、情緒得 点の標準偏差では「ルールづくり重視」群、「仲間 づくり重視」群の得点は「バランス」群の得点よ り、有意に高いことが明らかになった(p<.01)。 また、機能得点では、「ルールづくり重視」群が「仲 間づくり重視」群、「バランス」群の得点より有意 に高かった(p<.05)。 (ⅳ)教師の信念や認知が学校ごとに異なるかど うかの分析  仮説4の教師が学校(集団)ごとに異なる影響 を受けていたかどうか検証するため、階層線形モ

得 点 及 び 機 能 得 点 を そ れ ぞ れ 算 出 し た ( 表

4—2)。

3 群 に 分 け た 担 任 教 師 の 学 級 に 所 属 す る

児 童 の 情 緒 得 点 及 び 機 能 得 点 が ど の よ う に

児 童 の 情 緒 得 点 及 び 機 能 得 点 が ど の よ う に

異 な っ て い る の か を 検 討 す る た め 一 元 置 配

置 の 分 散 分 析 を 行 っ た( 表

4—3)。そ の 結 果 、

情 緒 得 点 及 び 機 能 得 点 に 有 意 差 が 認 め ら れ

た ( 情 緒 :

F

( 2

,400) =4.29 ,

p

<.05 、 機

能 :

F

( 2

,400)=3.80,

p

<.05)。Tukey の

HSD 法 に よ る 多 重 比 較 を 行 っ た と こ ろ 、情

緒 得 点・機 能 得 点 共 に「 ル ー ル づ く り 重 視 」

群 の 得 点 が 「 仲 間 づ く り 重 視 」 群 の 得 点 よ

り 有 意 に 高 か っ た (

p

<.05)。「 バ ラ ン ス 群 」

に お い て は 、 他 の

2 群 と の 差 は み ら れ な か

っ た (

p= n.s.

)。

( ⅱ ) 担 任 教 師 の 信 念 と 、 教 師 と 児 童 の 社

会 性 得 点 の ズ レ

 仮 説

2 の 学 級 担 任 の 信 念 が 児 童 に 与 え る

影 響 を 調 べ る た め 、 教 師 の 社 会 性 評 価 得 点

と そ の 教 師 が 担 任 す る 児 童 の 社 会 性 自 己 評

価 得 点 の 差 を 算 出 し 、

3 群 に 分 け た 担 任 教

る た め 一 元 置 配 置 の 分 散 分 析 を 行 っ た ( 表

4—4)。 そ の 結 果 、 機 能 得 点 の ズ レ に 有 意 差

が 認 め ら

れ た(

F

( 2

,400)=9.50,

p

<.001)。Tukey

HSD

ろ 、機

能 得 点 の ズ レ で は「 ル ー ル づ く り 重 視 」群 、

「 仲 間 づ く り 重 視 」 群 の 得 点 は 「 バ ラ ン ス

群 」 の 得 点 よ り 有 意 に 高 か っ た (

p

<.05)。

( ⅲ ) 担 任 教 師 の 信 念 と 児 童 の 社 会 性 得 点

の バ ラ つ き 

仮 説

3 の 学 級 担 任 の 信 念 が 児 童 に 与 え る

影 響 を 調 べ る た め 、 各 ク ラ ス の 社 会 性 得 点

に お け る バ ラ つ き を 算 出 し 、

3 群 に 分 け た

α係数 平均  

SD

平均  

SD

平均  

SD

情緒得点 .769 45.32 6.50 43.21 6.69 44.50 5.90 4.29 * 機能得点 .793 45.53 6.34 43.64 6.08 44.26 5.73 3.80 * 平均  

SD

平均  

SD

平均  

SD

情緒得点のズレ 3.89 7.57 2.60. 6.81 3.33 7.64 1.26. 機能得点のズレ 4.97 7.62 3.77 7.39 0.61 6.20 9.50 *** 平均  

SD

平均  

SD

平均  

SD

6.30 0.10 6.28 0.09 5.74 0.13 7.45 ** 6.10 0.11 5.73 0.10 5.52 0.14 5.97 * 仲間づくり重視群の 児童(

N

182) バランス群の児童 (

N

82) ルールづくり重視群 の児童(

N

139) 表3 社会性得点(児童)の担任教師の信念別による比較

値 **

p

<.01,*

p

<.05 情緒得点標準偏差 機能得点標準偏差 *

p

.05 表5  各クラスの社会性得点におけるバラツキの担任教師の信念別による比較 ルールづくり重視群 の児童(

N

=139) 仲間づくり重視群の 児童(

N

=182) バランス群の児童 (

N

=82)

値 ***

p

<.001 表4 担任教師と児童の社会性得点のズレの担任教師の信念別による比較 ルールづくり重視群 の児童(

N

=139) 仲間づくり重視群の 児童(

N

=182) バランス群の児童 (

N

=82)

(6)

82

発達心理臨床研究 第25巻 2019 くり重視」群の教師の担任する児童の社会性自己 評価得点は「ルールづくり重視」群よりも有意に 低い結果であった。このことから、教師の信念の 偏りが児童の社会性自己評価得点にマイナスの影 響を与えるとする仮説1は支持されなかった。  以上の結果から、ルールの徹底を信念とした学 級経営を行っていると自覚している教師が担任す る児童は、学級において役割を果たしたり友だち と協力したりでき、さらに学級に所属感を感じ、 友だちと心理的な結びつきを感じ、自他ともによ さの認めができていたと考えられる。これは、森 田・山田(2013)の学級内の児童の良好な人間 関係に寄与しているのは、学級内の水平関係(仲 間づくり)ではなく、上下関係(ルール作り)の 確立であるということを実証する結果となったと 言える。しかし、児童の社会性が高い学級の担任 は、上下関係を確立し、水平関係も確立した学級 経営をしていると自覚していると報告した森田・ 山田(2013)の結果とは異なり、バランス群の 学級担任の児童の社会性得点の平均が他の2群と 差があるとは言えなかった。この要因として考え られることは、まずサンプル数の問題である。本 研究ではバランス群の担任教師が14名中3名と少 なく、十分な結果を得ることが出来なかったので はないかと推測される。また、本研究では個人内 の信念の傾向を重視した結果、バランス群の担任 教師の得点差が19点もあり、同じバランス群の 教師であっても信念の強さを考慮することが出来 なかったと考えられる。 (ⅱ)教師の児童認知と児童の自己認知とのズレ に与える影響  仮説2である担任教師の信念の偏りが教師と児 童の社会性得点の差(ズレ)に与える影響につい て検討した結果、担任教師の信念の傾向が「バラ ンス」群の学級の児童は「ルールづくり重視」群  階層性が認められた「教師の信念」「機能得点 のズレ」を個人レベルと集団レベルが混在(元の データ)、個人レベル、集団レベルと分けて説明 変数とし、目的変数である児童の機能得点に与え る影響を分析した。その結果、個人レベルと集団 レベルが混在している機能得点のズレに有意な結 果が得られた(p<.01)(表7)。このことから、 機能得点のズレは個人レベルと集団レベルの影響 が混在しているモデルで、機能得点に対して正の 有意な効果をもっていることが明らかになった。 その他の変数では有意な結果は得られなかった (p=n.s.)。 Ⅳ.考察     (ⅰ)担任教師の信念が児童に与える影響  仮説1である担任教師の信念の偏りが児童認知 及び児童の社会性自己評価得点に与える影響を検 討した結果、担任教師の信念の傾向が「ルールづ くり重視」群である学級の児童が、「仲間づくり重 視」群の教師が担任する児童より機能得点・情緒 得点共に有意に高い結果であった。一方、「仲間づ 担 任 教 師 で ど の よ う に 異 な っ て い る の か を 検 討 す る た め 一 元 置 配 置 の 分 散 分 析 を 行 っ た ( 表4—5)。そ の 結 果 、情 緒 得 点 及 び 機 能 得 点 の 標 準 偏 差 そ れ ぞ れ に 、 有 意 差 が 認 め ら れ た( 情 緒 得 点:F( 2,400) =7.45,p<.01、機 能 得 点:F ( 2 ,400)=5.97, p<.05)。Tukey の HSD 法 に よ る 多 重 比 較 を 行 っ た と こ ろ 、 情 緒 得 点 の 標 準 偏 差 で は 「 ル ー ル づ く り 重 視 」群 、「 仲 間 づ く り 重 視 」 群 の 得 点 は 「 バ ラ ン ス 」 群 の 得 点 よ り 、 有 意 に 高 い こ と が 明 ら か に な っ た (p<.01)。 ま た 、 機 能 得 点 で は 、「 ル ー ル づ く り 重 視 」 群 が「 仲 間 づ く り 重 視 」群 、「 バ ラ ン ス 」群 の 得 点 よ り 有 意 に 高 か っ た (p<.05)。 ( ⅳ ) 教 師 の 信 念 や 認 知 が 学 校 ご と に 異 な る か ど う か の 分 析  仮 説 4 の 教 師 が 学 校 ( 集 団 ) ご と に 異 な る 影 響 を 受 け て い た か ど う か 検 証 す る た め 、 階 層 線 形 モ デ ル(HLM)を Microsoft Excel

の Visual Basic Application で 動 く 統 計 分 析 用 フ リ ー ソ フ ト で あ る HAD ( version 15.106)( 清 水 他 ,2006)を 用 い て 行 っ た 。 こ の 分 析 法 を 用 い る こ と に よ り 、 担 任 教 師 が 所 属 す る 学 校 に 組 み 込 ま れ て い る と い う 、 学 校 特 有 の デ ー タ 構 造 を 積 極 的 に 利 用 し つ つ 、 も し 学 校 間 で 違 い が 見 ら れ た 場 合 、 そ の 違 い を 学 校 に 関 す る 要 因 で 説 明 で き る か ど う か 検 討 す る こ と が 可 能 と な る 。 デ ー タ に 個 人 レ ベ ル と 集 団 レ ベ ル の 階 層 性 が あ る か ど う か を 判 断 す る 基 準 と し て は 、 ① 級 内 相 関 係 数 が 有 意 で あ る 、 ② 級 内 相 関 係 数 が.10 な い し .05 を 超 え る 、 ③ Design effect が 2 以 上 で あ る 、 な ど 複 数 の も の が 挙 げ ら れ て い る( 清 水 ,2014)。分 析 の 結 果 、 「 教 師 の 信 念 」及 び「 情 緒 得 点 の ズ レ 」「 機 能 得 点 の ズ レ 」 の 級 内 相 関 係 数 が そ れ ぞ れ.107、 .029、 .087 で 有 意 で あ っ た が (p <.01)、 級 内 相 関 係 数 が .05 を 超 え Design effect が 2 以 上 で あ っ た「 教 師 の 信 念 」「 機 能 得 点 の ズ レ 」 に つ い て 階 層 性 を 有 す る と 判 断 し た ( 表 4—6)。 階 層 性 が 認 め ら れ た「 教 師 の 信 念 」「 機 能 得 点 の ズ レ 」 を 個 人 レ ベ ル と 集 団 レ ベ ル が 混 在( 元 の デ ー タ )、個 人 レ ベ ル 、集 団 レ ベ ル と 分 け て 説 明 変 数 と し 、 目 的 変 数 で あ る 児 童 の 機 能 得 点 に 与 え る 影 響 を 分 析 し た 。 そ の 結 果 、 個 人 レ ベ ル と 集 団 レ ベ ル が 混 在 し て い る 機 能 得 点 の ズ レ に 有 意 な 結 果 が 得 ら れ た (p<.01)( 表 4—7)。 こ の こ と か ら 、 機 能 得 点 の ズ レ は 個 人 レ ベ ル と 集 団 レ ベ ル の 影 響 が 混 在 し て い る モ デ ル で 、 機 能 得 点 に 対 し て 正 の 有 意 な 効 果 を も っ て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 そ の 他 の 変 数 で は 有 意 な 結 果 は 得 ら れ な か っ た (p= n.s.)。 説明変数 係数 標準偏差 信念 個人+集団 -0.01 2.70 切片 44.40 55.76 切片の分散 1.01 ** 1.00 個人 -0.02 0.00 集団 0.03 0.00 切片 44.48 0.00 切片の分散 0.33 ** 0.57 個人+集団 0.66 ** 0.06 切片 44.41 ** 0.50 切片の分散 0.65 ** 0.81 個人 0.69 0.00 集団 -0.32 0.14 切片 44.54 0.00 切片の分散 2.57 ** 1.60 機能得点の ズレ 表7 教師の信念・児童認知と児童の社会性得点の階層 線形モデリングによる分析結果(目的変数=機能得点) **p<.01 変数名 有効N 級内相関 95%下限 95%上限 DE 信頼性 df1 df2 F値 p値 教師の信念 403 0.11 0.03 0.83 14.87 0.94 2 400 16.65 0.00 情緒得点のズレ 403 0.03 0.00 0.59 4.73 0.79 2 400 4.87 0.01 機能得点のズレ 403 0.09 0.02 0.80 12.39 0.93 2 400 13.57 0.00 表6 級内相関係数の推定結果 担 任 教 師 で ど の よ う に 異 な っ て い る の か を 検 討 す る た め 一 元 置 配 置 の 分 散 分 析 を 行 っ た ( 表 4—5)。そ の 結 果 、情 緒 得 点 及 び 機 能 得 点 の 標 準 偏 差 そ れ ぞ れ に 、 有 意 差 が 認 め ら れ た( 情 緒 得 点:F( 2 ,400) =7.45,p<.01、機 能 得 点:F ( 2 ,400)=5.97, p<.05)。Tukey の HSD 法 に よ る 多 重 比 較 を 行 っ た と こ ろ 、 情 緒 得 点 の 標 準 偏 差 で は 「 ル ー ル づ く り 重 視 」群 、「 仲 間 づ く り 重 視 」 群 の 得 点 は 「 バ ラ ン ス 」 群 の 得 点 よ り 、 有 意 に 高 い こ と が 明 ら か に な っ た (p<.01)。 ま た 、 機 能 得 点 で は 、「 ル ー ル づ く り 重 視 」 群 が「 仲 間 づ く り 重 視 」群 、「 バ ラ ン ス 」群 の 得 点 よ り 有 意 に 高 か っ た (p<.05)。 ( ⅳ ) 教 師 の 信 念 や 認 知 が 学 校 ご と に 異 な る か ど う か の 分 析  仮 説 4 の 教 師 が 学 校 ( 集 団 ) ご と に 異 な る 影 響 を 受 け て い た か ど う か 検 証 す る た め 、 階 層 線 形 モ デ ル(HLM)を Microsoft Excel

のVisual Basic Application で 動 く 統 計 分 析 用 フ リ ー ソ フ ト で あ る HAD ( version 15.106)( 清 水 他 ,2006)を 用 い て 行 っ た 。 こ の 分 析 法 を 用 い る こ と に よ り 、 担 任 教 師 が 所 属 す る 学 校 に 組 み 込 ま れ て い る と い う 、 学 校 特 有 の デ ー タ 構 造 を 積 極 的 に 利 用 し つ つ 、 も し 学 校 間 で 違 い が 見 ら れ た 場 合 、 そ の 違 い を 学 校 に 関 す る 要 因 で 説 明 で き る か ど う か 検 討 す る こ と が 可 能 と な る 。 デ ー タ に 個 人 レ ベ ル と 集 団 レ ベ ル の 階 層 性 が あ る か ど う か を 判 断 す る 基 準 と し て は 、 ① 級 内 相 関 係 数 が 有 意 で あ る 、 ② 級 内 相 関 係 数 が.10 な い し .05 を 超 え る 、 ③ Design effect が 2 以 上 で あ る 、 な ど 複 数 の も の が 挙 げ ら れ て い る( 清 水 ,2014)。分 析 の 結 果 、 「 教 師 の 信 念 」及 び「 情 緒 得 点 の ズ レ 」「 機 能 得 点 の ズ レ 」 の 級 内 相 関 係 数 が そ れ ぞ れ.107、 .029、 .087 で 有 意 で あ っ た が ( p <.01)、 級 内 相 関 係 数 が .05 を 超 え Design effect が 2 以 上 で あ っ た「 教 師 の 信 念 」「 機 能 得 点 の ズ レ 」 に つ い て 階 層 性 を 有 す る と 判 断 し た ( 表4—6)。 階 層 性 が 認 め ら れ た「 教 師 の 信 念 」「 機 能 得 点 の ズ レ 」 を 個 人 レ ベ ル と 集 団 レ ベ ル が 混 在( 元 の デ ー タ )、個 人 レ ベ ル 、集 団 レ ベ ル と 分 け て 説 明 変 数 と し 、 目 的 変 数 で あ る 児 童 の 機 能 得 点 に 与 え る 影 響 を 分 析 し た 。 そ の 結 果 、 個 人 レ ベ ル と 集 団 レ ベ ル が 混 在 し て い る 機 能 得 点 の ズ レ に 有 意 な 結 果 が 得 ら れ た (p<.01)( 表 4—7)。 こ の こ と か ら 、 機 能 得 点 の ズ レ は 個 人 レ ベ ル と 集 団 レ ベ ル の 影 響 が 混 在 し て い る モ デ ル で 、 機 能 得 点 に 対 し て 正 の 有 意 な 効 果 を も っ て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 そ の 他 の 変 数 で は 有 意 な 結 果 は 得 ら れ な か っ た (p= n.s.)。 説明変数 係数 標準偏差 信念 個人+集団 -0.01 2.70 切片 44.40 55.76 切片の分散 1.01 ** 1.00 個人 -0.02 0.00 集団 0.03 0.00 切片 44.48 0.00 切片の分散 0.33 ** 0.57 個人+集団 0.66 ** 0.06 切片 44.41 ** 0.50 切片の分散 0.65 ** 0.81 個人 0.69 0.00 集団 -0.32 0.14 切片 44.54 0.00 切片の分散 2.57 ** 1.60 機能得点の ズレ 表7 教師の信念・児童認知と児童の社会性得点の階層 線形モデリングによる分析結果(目的変数=機能得点) **p<.01 変数名 有効N 級内相関 95%下限 95%上限 DE 信頼性 df1 df2 F値 p値 教師の信念 403 0.11 0.03 0.83 14.87 0.94 2 400 16.65 0.00 情緒得点のズレ 403 0.03 0.00 0.59 4.73 0.79 2 400 4.87 0.01 機能得点のズレ 403 0.09 0.02 0.80 12.39 0.93 2 400 13.57 0.00 表6 級内相関係数の推定結果

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える影響について検討した結果、個人レベルと集 団レベルの影響が混在している機能得点のズレは、 児童の機能得点に正の効果を示す結果が得られた。 担任教師と児童の機能得点のズレは児童の得点― 教師の得点で算出しているので、機能得点のズレ が大きいほど児童の機能得点が高いということが 示唆された。つまり、担任教師の機能面での児童 認知が児童の自己認知よりも低く、教師が児童自 身と比べ、学級において児童が役割を果たしたり、 友だちと協力したりすることができていないと感 じていたほど、その学級の児童は学級において役 割を果たしたり、友だちと協力して取り組むこと ができていると感じていたことが示唆された。 Ⅴ.まとめと今後の課題 (ⅰ)まとめ  総じて、教師と児童及び児童間のフラットな心 の通い合いを確立しようとする信念の教師が担任 する学級は、ルールの徹底を確立しようとした信 念の教師が担任する学級と比べて児童は学級内で の役割を果たすことができない(機能面)と感じ、 気持ちが通じない(情緒面)と感じていたことが 示唆された。一方で、教師と児童の上下関係を確 立しルールの徹底を図ろうとする信念を持つ教師 の学級では、児童は機能面・情緒面共に高い自己 評価をすることが示唆されたが、学級に居場所が ないと感じている児童も存在するということを担 任教師が見落とす危険性があると考えられる。そ して、教師と児童の上下関係を確立し、さらに教 師と児童及び児童間の水平関係を確立したバラン スの良い学級経営を行うことで、児童の自己認知 に沿った児童認知を行い、児童の社会性を高め、 まとまりのある学級集団を形成できると考えられ る。しかし、バランスの良い学級経営を行うとい うことで、児童の社会性を高めるとは言えないこ とに留意する必要があろう。  最後に、機能面に関して教師の児童認知が児童 の自己認知より低いほど、児童が学級内での役割 を果たせていると自己評価していたことが示唆さ れたが、これは教師が児童の努力や成果に目が行 「仲間づくり重視」群に比べて機能得点で、有意 に低い結果が得られた。このことは、担任教師の 信念の傾向が「バランス」群の学級では、「ルール づくり重視」群「仲間づくり重視」群に比べて児 童の自己認知に沿った児童認知が行われていると 考えられる。このことから、担任教師の信念に偏 りがあると、児童の自己認知に沿った児童認知が 行われず、児童の社会性得点とのズレが大きくな るという仮説2が支持された。  上下関係を確立することも水平関係を確立する ことも重要であるとした信念のもと学級経営を 行っている教師は、児童の自己認知に沿った児童 認知を行っていたと考えられる。 (ⅲ)教師の信念と児童の社会性得点のバラつき  仮説3の担任教師の信念の偏りが学級集団のま とまり具合に与える影響について検討した結果、 児童の社会性得点の情緒得点では「バランス」群 の標準偏差が「ルールづくり重視」群「仲間づく り重視」群の標準偏差に比べて有意に小さい結果 となった。一方、機能得点では「バランス」群「仲 間づくり重視」群の標準偏差が「ルールづくり重 視」群の標準偏差に比べて有意に小さい結果と なった。これらのことから、学級の中で友だちや 教師と通じていると感じている児童の分布が同じ ような位置になるのが、「バランス」群の担任教師 の学級の児童であるということが示唆された。一 方、学級の仕事に取り組む事ができていると感じ ている児童がいたり、反対に取り組めていないと 感じている児童がいたりして、学級の中でもバラ つきが大きい傾向にあるのが「ルールづくり重視」 群の担任教師の学級の児童であることが示唆され た。 (ⅳ)教師の信念や認知が学校ごとに異なるかど うかの分析  仮説4の教師が学校(集団)ごとに異なるかど うか検証した結果、学校間での違いに有意な結果 は示されなかった。 (ⅴ)教師の信念や認知が児童の社会性に与える 影響  仮説5の教師の信念や認知が児童の社会性に与

(8)

84

発達心理臨床研究 第25巻 2019

善点を考えるための道具としても活用できるであ ろう。

  引用文献

Bion,W.R. (1961).Experiences in Groups, London: Tavistock.(ハフシ メッド監訳,黒崎 優美・小畑 千晴・田村 早紀訳(2016).集団 の経験―ビオンの精神分析的集団論 金剛出 版.) 林 文俊・大橋 正夫・広岡 秀一(1983).暗黙裡 の性格観に関する研究(Ⅰ)─個別尺度法によ るパーソナリティ認知次元の抽出 実験社会心 理学研究,23,9-25. 藤田 正(2000).小学校教師の児童に対する指 導意識について 奈良教育大学教育研究所紀要, 36, 87-91. 学級経営研究会(2000).学級経営をめぐる問題 の現状とその対応―関係者間の信頼と連携によ る魅力ある学級づくり 学級経営の充実に関す る調査研究 文部省委託研究(平成10・11年度). 平尾 浩子(2008).河村による学級状態の類型 について 奈良大学大学院研究年報,13,97-105. 河村 茂雄(2007).データが語る①学校の課題  図書文化社. 河村 茂雄(2010).日本の学級集団と学級経営 ―集団の教育力を生かす学校システムの原理と 展望 図書文化社. 近藤 邦夫(1984).児童・生徒に対する教師の 見方を捉える試みその1 千葉大学教育工学研 究,5,1-27. 森田 純・山田 雅彦(2013).学級経営に影響を 及ぼす教師―児童関係に関する質問紙調査 東 京学芸大学教育研究年報,32,23-37. 野中 信行・横藤 雅人(2011).必ずクラスがま とまる教師の成功術!―学級を安定させる縦 糸・横糸の関係づくり 学陽書房. 清水 裕士(2014).個人と集団のマルチレベル 分析 ナカニシヤ出版. 清水 裕士・村山 綾・大坊 郁夫(2006).集団コ きやすく、ほめる機会が増えたことが可能性の1 つとして推測される。反対に、教師の児童認知が 児童の自己認知より高いほど、児童が学級内での 役割を果たせていないと自己評価していたとも捉 えることができ、このことは、児童の自己認知よ りもハードルが高く設定することとなり、叱責が 増えたことが可能性の1つとして推測される。 (ⅱ)今後の課題  本研究の課題として、教師の信念が実施時期に 影響を受ける可能性を考慮できなかったことが挙 げられる。担任教師にとって学年の始まりである 1学期は、学級のルールをできるだけ早く確立し 児童が落ち着いて過ごせるように学級経営を行う 時期であろう。野中・横藤(2011)は4月の1か 月間が「学級づくり」にとって、最も重要な期間 であり、この期間で学級の80%ができあがるとし ている。今後、調査時期の統一されたデータの集 積が望まれる。加えて、学級に指示・注意・叱責 などの「縦糸」の倍以上に、共感・本音・笑い・ 感動の涙などの「横糸」が安定してあるとき、学 級の空気は柔らかくなり、子供の方の力が抜け、 学級の結束力が高まっていくとされる(野中・横 藤,2011)。ルールづくりをしつつ、児童と教師 がフラットな関係を築くことが、学級経営を行う 上で重要であると考えられ、学級の経時的な変化 やグループ発達を視野に入れた検討が期待される。  また、「ルールづくり重視」を測る因子のα係数 が低い値となった。この要因としてまず教師の数 が少なかったことが影響した可能性も考えられる が、今後使用する際には尺度の再検討が必要だと 考えられる。さらに、教師の信念による3群の人 数のバラつきが大きかったことも課題となった。  学級経営においては、様々な問題が日々発生す るため、担任教師のみでなく、学校全体で児童や 学級に関われるような体制が望まれる。チームと して学校が児童に関わり、協力体制を作るための 道具として、本研究で得られたような客観的な データを集積し、活用していくことが期待される。 さらに、担任教師が学級の客観的なデータを自己 研修のために活用することで学級経営の方針や改

(9)

ミュニケーションにおける相互依存性の分析 (1)コミュニケーションデータへの階層的デー タ分析の適用 電子情報通信学会技術研究報告, 106(146),1-6. 瀧口 信晴(2009).児童の社会性の育成におけ る評価の研究について 東京学芸大学教職大学 院課題研究成果報告書(1年履修プログラム), 51-55. 瀧口 信晴・森田 純・山田 雅彦(2014).学校現 場における児童の社会性測定法の開発と活用に 関する事例研究―小学生高学年の学級集団づく りのための活動を対象にして 東京学芸大学紀 要 総合教育科学系Ⅰ,65,75-86. 原 禎宏・池本 淳子・出来 正晃・西村 府子・ 守山 雅史・森脇 正博(2011).授業中の「ペ ン回し」がもたらすもの―非言語コミュニケー ションに見られる教室の非制度 京都教育大学 教育実践研究紀要,11,197-207. 浦野 裕司(2001).学級の荒れへの支援の在り 方に関する事例研究─TTによる指導体制とコ ンサルテーションによる教師と子どものこじれ た 関 係 の 改 善  教 育 心 理 学 研 究,49(1), 112-122.

(10)

86

発達心理臨床研究 第25巻 2019

Effects of Teachers’ Belief and Recognition of Children on Children’s Sociality and

Class Group Dynamics

YAMAMOTO Aiko*, NAGAYAMA Tomoyuki** *Kawanishi Municipal Tada Primary School

**Hyogo University of Teacher Education

ABSTRACT

Effects of teachers’ belief and recognition of children on children’s sociality and class group dynamics, differences in teachers’ recognition of children, and children’s self-recognition about sociality were investigated. A questionnaire was administered to fourth- to sixth-grade elementary school students (N=405) and their class teachers (N=14). Results indicated that children enrolled in classes of teachers that valued rule-making had higher sociality evaluation scores (emotional and function scores), compared to children enrolled in classes of teachers that valued friend-making. It is suggested that children in the former type of classes could perceive that their feelings were understood by their classmates and they had a role to play in the class. Moreover, differences in the sociality evaluation scores between balanced-type of teachers and children enrolled in the classes of such teachers were less than the other two groups. Furthermore, the distribution of the emotion scores in children enrolled in classes of balanced-type of teachers was less than the other two groups, whereas the distribution of the function scores in such children was less than the children enrolled in classes of teachers that valued rule-making. The above results suggest the importance of establishing a hierarchical relationship between teachers and children, and conducting class management based on well-balanced beliefs by establishing friendly relations between teachers and children, as well as among children. This is leads to the recognition of children based on their self-recognition, improving their sociality, and developing classes having a sense of unity.

参照

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