社会系教科教育学 会『社会系教科教育学研究』第 2号1990 (pp.99-105)
へ き 地 ・ 小 規 模 校 に お け る 授 業 改 善 と 教 育 委 員 会 の 援 助 に 関 す る 一 考 察
一 中学校社 会科を例とし て−
A Report on the Improvement of Instruction and Support b y Education Board at a Small-Sized School Located at Outlying Area in Tokyo
内 田 和 子 ( 岡山大 学文学部助 教授) I へ き 地 ・ 小 規 模 校 の 特 性 と 援 助 の 必 要 性 へ き 地 ・ 小 規 模 校 の特 性 は ,ま ず 都 市 か ら隔 遠 地 に あ り ,児 童 ・ 生 徒 数 が 少 な い 点 に あ る が ,以 下 に具 体 例 を あ げ ,そ の特 性 と 本 論 で 検 討 す る主 題 に か か わ る 問 題 点 に つ い て 述 べ る 。 東 京 都 の西 部 山 間 に 位 置す る へ き地 1級 指 定 校 O 町 立 O 中 学 校 は ,山 梨県 に 隣 接 し ,都 民 に上 水 を 供 給 す る 〇 湖 の ほ と り に あ る。 学 校 か ら 最 寄 り の 鉄道 駅 まで 約12km あり ,学校 下 まで の定 期バ ス は1日 3便 で あ る。 生 徒 数 は 昭 和61 年 以 降20 名 を 割 り ,平 成 元 年 度 は15 名 ,2 年 度 は 9名 で あ る。 地 元 の 〇 町 に は高 校 が な い の で ,生 徒 は 中 学 校 卒 業 時 に は親 元 を 離 れ な け れ ば な ら な い。 一 方 ,平 成 元 年 度 の 教 諭 数 は10 名 ,年 齢 構 成 は20 代 7名 ,30代 1 名 ,40 代 2 名 で あ っ て ,現 職 員 の 〇校 に お け る 勤 務 年 数 の 平 均 は3.2 年 で あ る 。 次 に ,都 立 多 摩 教 育 研 究 所(n (1988) に よ れ ば ,東 京 の へ き 地 ・ 小 規 模 校 の児 童・ 生 徒 は ,明 る く 素 直 で あ る が , 競 争 心 ・ 向上 心 ・ 困 難 を 乗 り 越 え よ う とす る 意 欲 が乏 し く ,他 と の 人 間 関 係形 成 が 不 得 意 で あ る こ と , ま た 同地 域 の教 師 や 父 母 が児 童 ・ 生 徒 に 特 に 身 に 付 け さ せ て お く べ き資 質 や 能 力 と し て ,自 立 で き る 力 と 学力 の向 上 を あ げ て い る こ とを 指 摘 し て い る。 こ のよ う に ,へ き地 ・ 小 規 模 校 に お い て は教 師 の 年 齢 や 経 験 年 数 と 児 童 ・ 生 徒 の特 性 か ら ,教 師 の指 導 力 を 向 上 さ せ る た め の研 修 や 研 究 の必 要 性 が 大 き い。 し か し ,研 修 会 や 研 究 会 へ の 参 加 は , 距 離 的 一時 間 的 な 問 題 と , 参 加 者 の 仕 事 を 代 行 す る 人 員 の 確 保 等 の人 的 な 問 題 に よ っ て 大 き く 制 約 さ れ て い る。 ま た ,校 内 に 指 導 的立 場 の ベ テ ラ ン教 師 が少 な い こ と か ら ,経 験 の 浅 い 教 師 は 自 己 の 仕 事 に関 し て ,校 内 で 直接 的 な 指 導 や 改 善 の手 掛 か り を 得 る 機 会 が少 な い 。 とこ ろで ,教育 委員 会 は こ れ まで 学 校 に 出 向 い たり , 資 料 を 送 付 し た り し て ,学 校 の要 請 に 応 じ た 指導 ・ 助 言 を 行 っ て き た 。 特 に ,上 記 の よ う な 様 々 な 課 題 を 抱 え る へ き地 ・小 規 模 校 に対 し て は , こ と さ ら に援 助 活 動 や指 導 体 制 の 充 実 が 望 ま れ る とこ ろ で あ る が ,委 員 会 側 の 人 的 問 題 や 時 間 的 問 題 もあ っ て ,学 校 の要 請 に 必 ず し も十 分 に 応 え て い な い と い う の が実 情 で あ る。 − さ らに教育委員 会の学校 への援助 の在り方 につ いて も ,これ まで十 分な 研究 が行 わ れて い な い。 代 表 的 な既 往 の研究 と いえ る中等 カ リ キ ュ ラ ム開 発 研究 会 (1988) の ものも ,総 括的 なサポ ート システ ムにつ い て言及 した もので ,具体的 な援 助の手立て について 述 べ られていない。 そこで,都立多摩教育研究所(1989) では ,へき地・ 小規模校 の特性 と現状 及び援助 の必 要性及 び父 母の願 いを踏 まえ ,同校 の児 童・生徒 が自立心を身 に付け , 学力を向上 させる ために育て たい能力 と態 度として次 の2点を設定 して研究 を行 った。 ①学習 の仕方 を身 に 付け ,意欲を もって自 ら学 習に取り 組む能力 と態度 。 ②自分の考え や気 持ちを 進んで表現 し ,人 とともに向 上 しよう とす る能力 と態度。 本論 は,この うち①の能 力 と態度を育成 するた めに行った研究 の一 環を なした 授業 改善の実践 について ,報告す るものであ る。 H 授 業 者 へ の援 助 の 実 際 へ き地 ・ 小 規 模 校 の 児 童 ・ 生 徒 に 匚学 習 の 仕 方 を 身 に 付け ,意 欲を もっ て 自 ら学 習 に取 り 組 む 能力 と態 度 」 を 育 成 す る に は , ま ず 日 常 の授 業 を 分 析 ・ 評 価 し , そ の結 果 に基 づい た実 践 を 積 み重 ねる こ と が必 要 で あ る 。 そ の た め ,0 中 学 校 の 新 規 採 用 K 教諭 を 対 象 と し て 授 業 改 善 の た め の 援 助 を 行 い , 3年 間 に わ た る 授業 実 践 を 分 析 ・ 考察 し た 。 ま ず 初 年 度 は 授業 と生 徒 の 実 態 把 握を 行 い ,授 業 の 問 題 点 を さ ぐ っ た。 第 2 年 度 は ,初 年 度 の 実 態 把 握 の 結 果 に基 づい て授業 を 設 計 し ,実 施 して 評 価 を 行 っ た。 第 3年 度 は 2年 度 の 結 果 に基 づ 軋 さ ら に 授 業 を 改 善 す る た め に ,年 間指 導 計 画 の見 直 し と学 習活 動 の工 夫 等 を 行 っ て ,実 践 の 結 果 を 学 校 の共 有 の財 産 と す る手 立 て につ い て 研 究 し た。 第 1 表 に は 第 2 年 度 に 行 っ た授 業 改 善 に か か わ る研 究 所 の援 助 の 実 際 を 示 し た 。 本 研 究 に お け る援 助 の特 色 と し て は 授業 の計 画 , 実 施 ,評 価 の す べて の段 階 に 研 究 所 が か か わ っ た こ と で あ る。 特 に ,半 年 間 を か け た 計 画 段 階 にお い て は ,指 導 技 術 の みな ら ず ,素 材 の 選 定 と 教 材 化 の手 法 及 び そ の 理論 を 授 業 者 に身 に 付 け 99 −
さ せるよう配慮 した。 また,授業 者 が自己の授業 の評 価を 行う手掛 かりとな る授業 分析の一手 法について も 習得 させたO 第1表 第2年度にお ける援助 の実際 援 助 の 内 容 計 画 ・地 域 素 材 例 の 提 示 と基 本 文 献 の 紹 介 ・ 地 域 素 材 例 の 提 示 ・地 域 研 究 の 理 論 と 方 法 の指 導 ・地 域 素 材 の 選 定 と調 査 活 動 の手 法 の 指 導 ・ 調 査 結 果 の ま と め方 の 指 導 ・ 生 徒 の 調 査 活 動 計 画 の 作 成 方 法 及 び 調 査 用 紙 の作 成 方 法 の 指 導 ・ 学 級 経 営 と 生 徒 理 解 へ の援 助 ・ 学 習 指 導 計 画 と学 習 指 導 案 例 の 提 示 ・ 学 習 指 導 計 画 と学 習 指 導 案 作 成 方 法 の指 導 ・ 教 育 研 究 所 研 修 会 へ の 参 加 機 会 の設 定 ・ 都 及 び 各 地 区 社 会 科 研 究 団 体 の 紹 介 ・ パ ソ コ ン に よ る資 料 の 処 理 方 法 の 指 導 ・ 授 業 へ の パ ソ コ ン の導 入 方 法 の 指 導 ・ 学 習 活 動 の 種 類 と内 容 ,組 み合 わ せ 方 の指 導 ・ 生 徒 へ の夏 休 み の課 題 作 成 指 導 ・ 学 習 指 導 案 及 び添 付 資 料 の検 討 と 修 正 ・ 郷 土 史 家 や 社 会 科 教育 実 践 家 の 紹 介 ・ 生 徒 の パ ソ コ ン操 作 訓 練 の ス ケ ジュ ー ル設 定 ・ 授 業 の シ ナ リ オ製 作 の 指 導 ・ 授 業 記 録 の取 り 方 の 指 導 ・ 発 問・ 指 示 の方 法 指 導 ・ 授 業 分 析 方 法 の指 導 ・ 教 室 環 境 の整 備 実 施 ・授業 参観 ・授業記 録の作成 評 価 ・ 授 業 観 察 記 録 の 提 供 ・ 授 業 記 録 の分 析 ・ 成 果 と 課 題 の ま と め 方 ・ 成 果 の 発 表 機 会 の設 定 Ⅲ 授業実 践と分析・ 考察 次に初年 度から3年度 の授業 の概 要を示 し ,分 析・ 考察 を加え ることとす る。 まず ,< 事 例1> は教 師と 生 徒の実態 と授業 の問題点を 把握す るための基礎 的資 料を 得た初 年 度の授業であ る。 < 事例1> 第1学年地理 的分野授業 (昭和62年 9月16日) 単元「 アングロ アメリカ」 小単元「 アメリカ合衆国 の工業」 (1) 学習活動 の実際 以 下 は上記 の授業 記録 の一 部であ る。 ●●●●●●●●● 略 … … … T : こ の 工 業 都 市 名 は , な ん で す か 。 A 子 。 S 1 : ヒ ュ ー ス ト ン。 T : そ こ で と れ る 資 源 と都 市 の 位 置 は ?B 男 。 S 2 : 石 油 。 メ キ シ コ の方 。 T : プ リ ント の工 業 都 市 名 は 何 ?。ヒ ン ト は乗 り 物 。 じ ゃ あ ,C 男 。 S 3 : 乗 り 物 の名 前 ? タ イ ヤ が あ る ? T : 資 源 を 考 え て 。 S 3 : 資 源 ? T : 山 で と れ る。 S 3 : 山 ? ど の辺 に あ る ? T : ヒ ント ,貿 易 摩 擦 ,乗 り 物 の種 類 を 考 え て 。 S 3 : 車 。 セ ン ト ル イ ス ? T : セ ント ル イ スよ り 大 き い 町 。 S 3 : じ ゃあ , デ ト ロ イ ト。 ■●●・●・・・● 略 … … … (2) 分 析 ・ 考 察 授 業 は一 問 一 答 式 で 進 行 し た た め ,指 名 さ れ な か っ た生 徒 は活 動 場 面 を 得 ら れ な い で い た。 ま た ,指 名 さ れた生 徒 もヒ ントを 与 え ら れ な い 傾向 があ る。 さ らに , き わ め て 小 さ な学 習 集 団 の中 で ,教 師 も 生 徒 もお 互 い の 性 格 や 学 力 に つ い て 十 分 な 認 識 を も っ て い る こ と か ら , 発 問 や 答 え も説 明 を 要 さ ず ,単 純 な も の に な り が ち で あ っ た 。 こ の 授 業 か ら は ,生 徒 間 の 話 し 合 い や 作業 を 取 り 入 れ る等 ,生 徒 が 自 主 的 に活 動 で き る場 面 の設 定 や 発 言 の 内 容 を 深 め て い く 教 師 の 発 問 の仕 方 等 を 工 夫 す る 必 要 が認 め ら れ た。 < 事 例 2> 第 3学 年 公 民 的 分 野 授 業 ① 昭 和63 年10 月13 日 単 元 「 国 民 生 活 と 財 政 」 小 単 元 厂〇 町 の水 道 の し く み」 (1) 学 習 活 動 の 実 際 [ 単 元 の指 導 計 画 ] ( 6 時 間 扱 い ) ・ 政 府 の 役 割 ,・ 国 の 財 政 , 一地 方 財 政 ・ 私 た ち の 生 活 と租 税 ,・ O 町 の 水 道 の し く み ( 本 時 ), ・ 東 京 都 の 水 道 の し く み 研究 所 は昨 年 度 の授 業 の 分 析 結 果 に 基 づ い て 指 導 ・ 助 言 を 与 え ,授 業 者 と協 議 の 上 ,次 の点 に 留 意 し て 授 業 の 改 善 に務 め た。 ① 地 域 教 材 に よ って 生 徒 の 学 習 意 欲 を 高 め る。 ② 地 域 調 査 や 資 料 の 読 み 取 り ・ 活 用 ,パ ソ コ ンに よ る図 表 化 ,調 査 結 果 の 発 表 , ま と め 文 の作 成 等 等 の様 々 な 学 習 活 動 を 取 り 入 れ ,生 徒 が 活 動 で き る 場 面 を 工 夫 す る。 100 −
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学 習 活 動 の概 要 ( 第 5時 ) 導 入 ・ 国 と地 方 公 共 団 体 の役 割 を 分類 す る。 ・ 〇 町 の 過 去 の水 利 用 に つ い て 発 表 す る。 ・ 近 世 の 水 争 い と台 地 の 水 利 用 の 資 料 を 読 む 。 展 開 ・ 〇 町 の 水 道 のし く みを 発 表 す る。 ・ 資 料 か ら 事業 費 や管 理 費 の意 味を 考 え る。 ・〇 町 とA 市 の水 道料 金 領 収 書を 比 較 ・ 分 析 す る。 ・〇 町 とA 市 の水道 事業 の 収支 の違 い を 発 表 す る。 ・ 以 上 の結 果 か ら ,0 湖 の 水 の行 方 を 予 想 す る。 ・生 徒 の家 は 湖 面 よ り 高 く ,A 市 は 低 い こ とを 予 想 す る 。 終 末 ・ O 町 や A 市 は ○ 湖 の水 を 使 用 し て い る か ど う か 考 え る 。 ・ キ ー ワ ード を 使 っ て ま と め の文 を 書 く。 第 3 表 マ ト リ ッ ク ス 集 計 表 ① (2) 分析・ 考察 第2表 カテゴリ ーの集計①\
内 容 回数 % 教 師 非難 0 指示・ 要請 26 説明 24 狭い質 問 49 広い質問 5 励 まし 2 明確化 36 受 容 7 沈黙 0 そ の他 0 0.0 10.3 9.5 19.4 2.0 0.8 14.2 2.8 0.0 0.0 生 徒 沈 黙 6 単 純応答 64 読 み 0 読 解 5 て いねいな応答 22 てい ねいな説明 3 自発的 発言 3 質問・要請 1 そ の他 0 2.4 25.3 0.0 2.0 8.7 1.2 1.2 0.4 0.0 合 計 253 100.0 ◇ 内 容 非 指 説 狭 広 は 明 受 沈 そ 示 い い げ ・ 確I の 要 質 質 ま 難 請 明 問 問 し イヒ 容 黙 他 沈 単 読 読 て て 自 質 そ い い 発 純 ね ね 的 問 い い ・ の 応 な な 発 要 応 説 黙 答 み 解 答 明 言 請 他 非 難 指 示 ・ 要 請 説 明 狭 い 質問 広 い質 問 は げ ま し 明 確化 受 容 沈 黙 そ の他 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 7 3 0 1 1 0 0 0 0 10 3 6 1 0 2 0 0 0 0 0 2 0 0 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 8 7 8 1 0 2 0 0 0 0 0 0 3 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 0 4 2 1 1 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 , 2 34 0 0 8 0 0 0 0 2 2 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1 7 0 0 2 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 「1 0 0 0 沈 黙 単 純 応 答 読 み 読 解 て い ね い な 応 答 て い ね い な 説 明 自 発 的 発 言 質 問 ・ 要 請 そ の 他 0 1 0 2 0 0 1 0 0 0 0 3 1 17 2 0 19 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 1 0 0 0 0 0 0 0 1 2 5 1 0 5 3 0 0 0 0 0 2 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 1工 0 0 6 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 2 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 こ の授 業 を 分 析 す る た め に ,授 業 の中 の教 師 と 生 徒 が多 い 。 一 方 , 生 徒 は教 師 か ら の「 狭 い 質 問 」 に対 し と の 間 で 交 わ さ れ る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ンを そ の 内 容 に て の 「 単 純 応 答 」 が多 い も の め ,< 事 例 1> で は見 ら よ っ て 分 類 し , 頻 度 と の 関 係 を 調 べ る カ テ ゴ リ ー 分 析(2) れな か っ た 「 て い ね い な 応 答 」 や 「 て い ね い な 説 明 」 を 行 っ た。 「 自 発 的 な 発 言 」 が見 ら れ るよ う に な っ た。 カ テ ゴ リ ー分 析 の 結 果 の一 部を 第 2 ・ 3表 に 示 し た 第 3表 の マ ト リ ッ ク ス 分 析 は , 連 続 す る カ テ ゴ リ ー= 第 2 表 は カ テ ゴ リ ー の 単 純 集 計 で ,第 3表 は マ ト リ ッ 群 か ら 二 つ ずつ を 取 り 出 し , ど のよ う な 連 続 が 多 い か ク ス集 計 表 で あ る 。 第 2 表 に よ れ ば ,教 師 は 「指 示 ・ を 示 し て い る 。 例 え ば ,縦 の 「 指 示 ・ 要 請 」 と 横 の 要 請」 ,「 狭 い 質 問 」 , 「 説 明 」 , 「 明 確 化 」 の 発 言 「 説 明」 が クロ ス す る 数 字10 は ,授 業 記 録 の 中 で ,教 - 101 −師 が 「指 示 ・ 説 明 」 を 出 し て , 次 に そ の こ と を 説 明 し て い る 部 分 が10 回 あ る と い う意 味 で あ る。 第 3表 か ら ,教 師 は 「 説 明 」,「 指 示 ・ 要 請 」,「 狭 い 質 問 」,匚明 確 化 」 の カ テ ゴ リ ー を く り 返 し て い るが , 生 徒 は 「 狭 い 質 問 」 や 「 指 示 ・ 要 請 」 に 対 し , 「 て い ね い な 応答 」 や 「 て い ね い な 説 明」 も行 う よ う に な っ た とい え る 。 し た が っ て ,第 2 ・ 3表 に は ,教 師 が 一 問 一 答 式 か ら脱 却 し よ う と意 図 的 に 授 業 改 善 を 図 っ た成 果 のひ と つ が現 れ た と い え よ う 。 こ れ ら の 結 果 か ら 研 究 所 は指 導 ・ 助 言 を 行 い ,授 業 者 と協 議 の 上 ,授 業 の 問 題 点 等 と そ れ に対 応 す る改 善 の手 立 て を 次 の よ う に ま と め た。 [授 業 の 問 題 点 等 ] と [改 善 の手 立 て ] ① 内 容 が 盛 り沢 山 で 時 間 不 足 のた め , 授業 の進 め方 を 急 ぎ す ぎ た。 ‘ → 授 業 内 容 の精 選 や 時 間 配 当 を 改 善 す る。 ② 学 習 課 題 を 授 業 の終 末 ま で 明 ら か に し な か っ た の で ,生 徒 の問 題 意 識 が明 確化 し な か っ た 。 → 学 習 課 題 の提 示 時 期 を 再 考 す る。 ③ 「 指 示 ・ 要 請 」 匚説 明 」 「 狭 い質 問 」 等 が 多 く , ま だ 教 師主 導 型 で あ る。 → 発 問 や資 料 提 示 の工 夫 を す る と と もに ,生 徒 の 主 体 的 な活 動 を 促 す 工 夫 を す る。 ④ 地 域 素 材 の教 材 化 を 継 続 ・ 発 展 す べ きで あ る。 → 年 間 指 導 計 画 に 位 置 付 け , 来年 度 も実 践 す る。 < 事 例 3> 第 3学 年 公 民 的 分 野 授 業 ② ( 平 成 元 年10 月12 ・ 13日 ) 単 元 「 国民 生 活 と 財 政 」 小 単 元 「 O 町 の 水 道 のし く み 」 (1) 学 習 活 動 の実 際 [単 元 指 導 計 画] ( 7時 間 扱 い ) ・ 政 府 の役 割 , ・ 国 の財 政 ,・ 地 方 財 政 , ・ 私 た ち の生 活 と 租 税 , ・ ○ 町 の 水 道 の し く み<1>, ( 本 時 ) , ・ O 町 の 水 道 の し く み<2>, ・ 東 京 都 の水 道 のし く み .、 学 習 活 動 の 概 要 ( 第 5 時 ) 導 入 ・ 地 図 で 自 分 の家 の 位 置 を 調 べ る。 ・ 本 時 の学 習 課 題 ( 自 分 の家 で は ○湖 の水 を 飲 ん で い な い ) を 把 握 す る 。 展 開 ・ 資 料を 読 み ,近 世 のO 町 の 水 利 用 を 考 え る 。 ・ 調 査 結 果 に 基 づ き ,大 正 か ら昭 和 初 期 の ○町 の 水 利 用 につ い て 発 表 す る。 ・ A 市 で の同 時 代 の水 利 用 の 話 を 聞 く。 ・ 過 去 の水 利 用 のま と め の話 を 聞 く。 -展 開 ・ 調 査 結 果 に基 づ き ,自 分 の家 の 水 道 の 水 源 や 利 用 形 態 に つ い て 発 表 す る。 ・ O 町 の 水 道 の し く み 別 カ ー ド を 黒 板 の 白地 図 に 貼 る。 ・ ○ 町 の水 道 現 況 の 説 明 を 聞 く。 ・ プ リ ント に着色 し て ,0 町 の水 道 現 況図 を 作 る。 ・ O 町 の水 道 の し く み が 3種 類 で あ る理 由 を 発 表 す る。 終 末 ・ 自 分 の家 が 〇 湖 の 水 を 飲 ん で い な い 理 由 を 考 え る。 ・ 次 時 の学 習 課 題 を 知 る。 < 事 例 2> の分 析 に 基 づ き , 授業 者 が 研究 所 の援 助 に よ っ て 改 善 し た点 は次 の通 り で あ る。 ① 前 年 の内 容 を 2 時 間 扱 い と し た。 ② 学 習 課 題 を 授業 の冒 頭 に 明 示 し た。 ③ パ ソ コ ンを 効 果 的 に利 用 し た り , 図 の作 成 と 発 表 を 組 み合 わ せ る 等 ,学 習 活 動 の組 み合 わせ 方 を 工 夫 し た。 ④ 教 師 の発 問 ,指 示 , 説 明 の内 容 や 方 法 につ い て さ ら に工 夫 し た 。 (2) 分 析 ・ 考 察 第 4・ 5表 は ,< 事 例 3> の授 業 を カ テ ゴ リ ー 分 析 し た も ので あ る 。 そ の結 果 , こ の授 業 は 厂狭 い質 問 」 と そ れ に対 す る 匚単 純 応答 」 が ま だ多 い も の の ,前 年 に 比 べ て , 匚狭 い 質 問 」 や 「 単 純 応 答 」 の割 合 が 低 下 し て い る。 特 に 厂単 純 応 答レ の 割 合 は, 25.3% か ら 14.1% と減少 し ,「 て い ねい な説 明 」 や 「 自 発 的 発言 」 厂質 問 ・ 要 請 」 等 が 増 加 し て ,生 徒 が よ く活 動 し て い 第 4表 カ テ ゴ リ ー の 集 計 表 ②
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内 容 回 数 % 教 師 非難 4 指示・要請 57 説明 81 狭い質問 70 広い質問 11 励まし 15 明確化 54 受 容 20 沈黙 0 そ の他 2 0.9 12.5 17.8 15.4 2.4 3.3 1L9 4.4 0.0 0.4 生 徒 沈黙 6 単純 応答 64 読 み 0 読 解 1 て い ねいな応答 9 て い ねいな説 明 18 自発的発言 14 質問・要請 13 その他 16 1.3 14.1 0.0 0.2 2.0 4.0 3.1 2.9 3.5 合 計 455 100.0 102 −第 5 表 マ ト リ ッ ク ス 集 計 表 ②