• 検索結果がありません。

フォーラム メキシコのフェミニズム

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "フォーラム メキシコのフェミニズム"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

フォーラム メキシコのフェミニズム

著者

松久 玲子

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

ラテンアメリカレポート

28

1

ページ

1-1

発行年

2011-06-20

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00005926

(2)

1

ラテンアメリカ・レポート Vol.28 No.1 1911 年にクララ・ツェトキンが「女性の政治的自由と平等のためにたたかう」ことを主張し,アメリ カ合衆国の女性労働者がデモを行った日に因んで 3 月 8 日を「国際女性の日」とすることを提唱してか ら 100 年がたった。国連は,1975 年にこの日を「国際女性の日」と定めたが,2011 年 2 月に発足した UN ウィメン(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関)事務局長に就任したチリの 前大統領ミチェル・バチェレ氏は,「国際女性の日」の演説で「20 世紀に女性の法的な権利や資格は飛 躍的に拡大した」が,「100 年前にうたわれた平等への望みの実現には程遠いのが現状」 と述べている。 メキシコでは,19 世紀末から女性の尊厳を求めて女性運動が開始され,法的権利の平等と参政権獲 得を目指した第一波フェミニズム運動を経て,1970 年代から第二波フェミニズム運動が形成された。そ の間に,メキシコのフェミニズム運動は,女性参政権や民法上の権利を勝ち取り,最近では中絶の無罰 化や DV の処罰化などを達成した。特に首都メキシコ市では,ここ数年,急進的なフェミニズム政策が 話題を呼んでいる。2007 年には妊娠 12 週までの中絶の無罰化の法案が連邦区議会を通過し,中絶が認 められた場合に,安全で無償の処置を受けられるように相談窓口と医療サービスが設置された。また, 2008 年に小学校と中学校で性教育を実施する教育改革が承認された。2009 年には同性婚を認める民法 の改正が可決された。同時に,「平等と社会の多様性のための総合局」を設置し,性の多様性を認め差 別をなくすためのプログラムが推進されている。一方,他州では,1931 年以降性暴力を理由とした中絶 は認められているが,その他の中絶の条件は多くの州で限定的であり,法的に中絶が認められても中絶 を受ける医療サービスが保障されているとは言い難い。また,メキシコ市での一連の政策の反動として, 受胎したその時からを人権の対象とする法律が 2010 年までに 24 州で可決されている。性教育と中絶の 無罰化は,女性の身体と生殖を誰が管理し決定権をもつのかという点で,第一波,第二波フェミニズム を通じて女性の自律性に関する象徴的闘争として大きな意味をもってきた。これをめぐり,政府とカトリッ ク教会との間で大きく政治化されてきた問題である。性と生殖に関する自己決定権を求めるフェミニス トの闘いは,一世紀以上にわたり現在も続いている。 メキシコの女性たちが,一世紀を経て獲得してきたものは多いが,一方,現在のフェミニズム運動は 若い女性層を引き付けているとは言い難い。メキシコの第二波フェミニズム運動で象徴的役割を担った 雑誌『FEM』が 2005 年に紙媒体での発行に終止符を打ち,デジタル誌化した。また,1980 年代以降, メキシコのフェミニズム運動を理論的側面から率いて来た『DEBATE FEMINISTA』 は,昨年 20 周 年を迎えたが,資金不足と若い世代の読者の獲得に恒常的な問題を抱えている。フェミニズム運動は, 女性差別の存在を前提として,差別撤廃や女性の解放を目指す社会運動である。1980 年代に入り,フェ ミニズムの理論枠組みは,人を男女という性別に二分化し非対称的権力関係を作った社会的・文化的仕 組みを解明しようとするジェンダー論へとシフトした。「ジェンダーの視点」 や政策レベルでの「ジェン ダーの主流化」が国際社会で流通し始めるとともに,女性差別に立脚したフェミニズム運動は次第に役 割を終えたかのように見える。現在の性差別は複合差別化し,グローバル化が進む中で国際労働のジェ ンダー・チェーンも存在する。これらの事象を分析するうえで,ジェンダー論が新しい地平を開拓した ことは明らかだが,一方で女性差別を相対化したことも事実である。メキシコの状況も世界の状況も, まだ女性固有の問題に立脚したフェミニズムの存在理由がなくなるまでに至ってはいない。

フォーラム

メキシコのフェミニズム

松久 玲子(同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授)

参照

関連したドキュメント

 処分の違法を主張したとしても、処分の効力あるいは法効果を争うことに

1970 年には「米の生産調整政策(=減反政策) 」が始まった。

このような情念の側面を取り扱わないことには それなりの理由がある。しかし、リードもまた

また自分で育てようとした母親達にとっても、女性が働く職場が限られていた当時の

私たちは、2014 年 9 月の総会で選出された役員として、この 1 年間精一杯務めてまいり

・平成 21 年 7

二院の存在理由を問うときは,あらためてその理由について多様性があるこ

に会社が訴追の主体者であったことを忘却させるかのように,昭和25年の改