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〈論文〉土地利用制度とガバナンス-ベトナム・カマウ省のマングロープ湿地の事例から-

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(1)土地利用制度とガバナンス ーベトナム・カマウ省のマングロープ湿地の事例からー. 鈴木伸二. ベトナムでは、 1 9 別年代中頃から 1 9 9 5年頃にかけて、マングロープ湿地 の荒廃が社会問題として取り上げられるようになった。その大きな原因と されたのが、マングロープ湿地帯でのエピ養殖だった。ベトナム最大のマ ングロープ湿地を有するカマウ省ゴックヒエン県では、 1 9 8 0年から 1 9 9 4年 にマングロープ森林面積が 9 3 4 3 5ヘクタールから 2 3 9 0 3ヘクタールにまで. 1 3トン(1 9 8 0年)から 1 3 7 9 8トン 激減した。一方、養殖エピの生産量は 3 ( 1 叩4年)にまで急増した。 このようなエピ養殖の拡大と、森林面積の減少は、 1 9 8 0年代にベトナム で採択された政策上の変更に起因していた。ベトナムでは、 1 9 8 0年代中頃 から、社会主義的な集団生産体制を見宜し、個人の生産インセンテイプを 高める政策が採用された。その具体的な手法として導入されたのが、個人 に土地使用権を認めるというものだった。マングロープ湿地帯でも、従来 は国営営林署が管理・使用していた湿地が個人使用を目的として配分の対 象となった。マングロープ湿地帯での土地配分は制度上の整備が不十分な 中で実施きれ、それがエピ養殖池の急増と、マングロープ林の破壊という かたちで現れた[鈴木却0 5 。 ]. 1 9 9 2年、ベトナム政府は閣僚評議会決定 3 2 7 C T号「禿山、課地、低質 地、砂E、湿地の活用に関する政府決定」で植林事業への国家予算の投入. [ 1 3 3 ]. (1).

(2) を決定し、翌年から 3 2 7 C Tプログラムが始動した。その際、マングロープ 湿地帯の経清発展と環境保護を両立させる土地利用として採用されたのが、 林・禍結合型養殖(LamNguKetHop )と呼ばれるものであった。この土. 2 7 C Tプログラムの発動と前後して、 地利用については詳しく後述するが、 3 土地利用に関する法整備や管理システムが整えられ、結合型養殖の推進に 向けた制度的基盤が生み出された。 本論は、この結合型養殖の定着について考察を行う。その際、二つの点 に留意する。このご点とは結合型養殖がエピ養殖の生産技術であると同時 に、土地利用制度でもあることだ。土地配分を受けて、エピ養殖に従事す る人々にとっては、結合型養殖はあくまで固家が定めた生産技術でしかな い。一方、国家の側からみれば、結合型養殖は固家が定めた一元的な土地 利用制度となる。国家は制度を作り出すために法的基盤を整える。その後、 この基盤の上に制度を運用することになる。法的基盤がなければルールと しての制度は創れない。また、こうした制度的基盤が整っていても、実際 にそれを執行する力、すなわちガパナンスが伴わなければ、それは絵に描 いた餅でしかない。制度的基盤とガパナンスがうまくかみ合うことで、ょ うやく制度は成果を得られるのである。 ガパナンスの問題は、加∞年代に入り世界的な森林破壊が進む中で、国 際的に大きく取り上げられるようになった。 2 0 0 1年にはパリで「森林法の )」が発足し、東アジア閣僚会議(EA-FLEG )プ 施行・ガパナンス(FLEG ロセス、 ASEAN事務局、アジア森林パートナ}シップ、 EU-FLEGプラン、. FAO 、ITTOなど、様々な固際機関でガパナンスが議論されるようになっ た。このような国際的な議論は、途上国の森林で広範に見られる違法伐採 を抑制する仕組み、とりわけ木材認証制度の構築に関するものであった。 これらの特徴は国境をまたぐ木材取引の取り決めに焦点が置かれ、具体的 な圏内ガパナンスを分析の対象とはしていなかった。 研究の分野ではスコットやオストロムがガパナンスの研究を牽引した。 スコットの研究では、国家が多様な生態環境、地域の複雑な利害関係をい かに「単純化」し、「可視化」するのかを批判的に考察した[S c o t t1 9 錦 ] 。. (2). [ 1 3 2 ].

(3) つまり、国家による「単純化」は、多様で複雑な地域の文脈を無視するも のだと批判したのである。一方、オストロムは森林など共有資源の保全を 可能とするガパナンスの条件に関して理論的な枠組みを提供しノーベJ レ経 仕om1 9 開]。この中で彼女は、森林などの共有資源 済学賞を受賞した[Os. の保全や管理は、「国家による解決」や「市場による解決」という二者択一 的な方策ではなし得ず、第三の方法としてのセルフガパナンスが重要であ ることを指摘した。セルフガパナンスとは、共有資源に利害関係をもっ当 事者(地域住民など)が適切なル]ルを取り決めて保全・管理を行うこと である。 本論が対象とするカマウ省ゴツクヒエン県では、 3 2 7 C Tプログラムの実. 0 0 0年までに 5 1 4 7 6ヘクタールへと増加した。マン 施以降、森林面積は 2 グロ}プ湿地での結合型養殖という土地利用制度の定着が森林面積の増加 を促したのである。土地利用制度の策定は「固家による解決」であり、ス コットの言葉を借りれば「単純化」された制度である。だが、オストロム の議論を援用すれば、「国家による解決」すなわち「単純化」では共有資 源は保全・管理できない。なんらかの地域レベルでのセルフガパナンスが 必要となるはずだ。結合型養殖という「単純化」された土地利用制度のも とで、オストロムが想定したようなセルフガパナンスが機能しているのか。 この点については最後に考察を行うが、そのために以下においては、筆者 が2 0 0 3年にカマウ省ゴックヒエン県で実施したフィールドワークにもとづ いて、まず第 l章で結合型養殖の技術的側面、第 2章で養殖技術の生産性 について考察する。これらの分析において、結合型養殖という土地利用の 経済性について明らかにする。第 3章では、「国家による解決」の側面から 土地利用制度としての結合型養殖を検討する。次いで第 4章では、国家の 制度が地域に浸透する上で、どのようなガパナンスが行われているのかを 明らかにする。以上の議論を統合することで、結合型養殖という土地利用 制度の定着がどのように達成されたのかを明らかにする。. [ 1 3 1 ]. (3).

(4) 1 . 技術としての結合型養殖 結合型養殖は、一定の区画内でマングロープの育林とエピ養殖を同時に 行う一種のシルポフィッシャリーである(図 1 )。区画の四辺には水路と土 手が建造され、河川に向かつて水門が取り付けられる。水路の内側ではマ ングロープの植林・育成が行われ、水路ではエピ養殖が営まれる。この水 路での養殖方法は当初、粗放養殖であった。粗放養殖では大潮の満潮時に 水門をあけて河川l から取水する。このとき、天然の稚エピが池の中に流入 するので、これを 2 0日間ほど放置しておく。エピは水路内部の有機物に よって成育し、人為的に飼料や水質管理用の薬物の投与は行われない。そ の後、大潮の干潮時に水門に網を取り付けて排水すると成長したエピが収 穫できる。 100 血. 1000 皿. 洞J I [. 図 l マングローブ結合型養殖 (4). 口ぬ].

(5) しかし、 1 9 9 0年代の終わりごろから天然エピに依存したこの粗放養殖で は経営が成り立たなくなってくる。これは、天然エピの乱獲による種苗資 源枯渇によるものであった。そこで、人工的に鮮化されたブラックタイガー ( P e n a e u smonodon )が放流され天然エピと混養されるようになった。これ. をベトナムでは改良型粗放養殖と呼んでいる。 プラックタイガーが養殖されるようになり養殖方法も変化した。変化し なかったのは、水路の構造と河川からの取水である。もっとも特徴的な変 化は、飼育期聞が乾季を中心に行われるようになったことである。従来、 カマウ省で飼育されていた天然エピはヨシエピ類の M e t a p e n a e u se n s i sと M.l y s i a m ぉs aであった。 M.e n s i sは 1 0月から 1 1月頃に癖化してマングロー y s i a n a s s aは 4月 、 5月にマングロー プ湿地帯に流入してくる。一方、 M.l. プ湿地帯に流入する ( J o h n s t o n 、加O O a )。そのため M.e n s おは 1 0月から 1 月にかけて、 M.l y s i a n a s s aは4月から 8月にかけて収穫され、水路の泥さ らいや水門の手入れなどは 2月 、 3月に行われていた。しかし、ブラックタ イガ」が養殖されるようになると、プラックタイガーの生物学的な特性に 合わせて飼育期聞が変更された。ブラックタイガーの稚エピは水中の塩分 濃度が低いと漫透圧の影響で死んでしまう。各養殖従事者たちは試行錯誤 を繰り返し、雨季の終わりである 1 1月に稚エピを放流するようになった。 この放流は断続的に 2月まで行われる。収穫はブラックタイガーが出荷サ イズまでに生育する 2月から行われる。ヨシエピ類の養殖では飼育日数が. 2 0日間ほどであったが、プラックタイガーでは 4ヶ月ほどになった 1。また、 養殖を行っている世帯の中で飼料や水質管理用薬品を投入するものも現れ た。経営面では、まず人工の稚エピを放流するコストが必要になった。ま た、飼料や水質管理用薬品の投与にもコストがかかるようになった。ヨシ エピ類の飼育では稚エピは天然のものに依存していたので種苗コストは必 要ないし、飼料や水質管理用薬品などのコストも必要なかった。つまりプ ラックタイガーの導入によって各世帯はコスト・ベネフィットを天然エピ の養殖以上に考慮せねばならなくなった。. 口29]. (5).

(6) 2 . 結合型養殖の生産性 カマウ省での結合型養殖に関する論考は、自然科学にもとづいたアプ ローチからその生産様式に関して行われてきた。ジョンストンは、カマウ 省ゴックヒエン県の 1 8 4林漁場およびタムザンパー林撒場において、 1 9 9 6 年から 1 9 9 8年にかけて断続的に結合型養殖の調査を行い、年間の収量が 却 6± 1 0 6kg/haであると報告した口o h n s t o n2 α沿b]。また、収量に対す. る養殖池の構造や水質の調査から、池の深さと水位、水中のアンモニア漉 度が収量に影響を与えること、さらに養殖水路の稚エピの個体数が 1立方 メートルに l個体未満しかないために収量が少なくなっていることを指摘. o h n s t o n反 別b 。 ] した[J 彼が調査を行った当時、養殖水路では人工騨化されたブラックタイガ} の養殖は行われていなかった。しかし、羽0 3年の段階ではほとんどの水路 でブラックタイガーが養殖されており、彼の議論をそのまま利用すること はできない。また、彼は生産性を考慮するうえで技術や養殖水路の環境に 終始しており、こうした要因が改善されれば生産性も向上するとしている。 例えば、彼は生産性を向上させるには、天然の稚エピだけに依存するので はなく、人工癖化されたブラックタイガーの種苗放流が不可欠であると論 じている。そこで、ジョンストンが指摘したようなプラックタイガーの導 入によってエピ養殖の生産性が向上したのかを検証する。 筆者はジョンストンが調査を行った 1 8 4林漁場およびタムザンパー林漁 場で 2 2 3世帯を対象としてインタピューを実施し、 2 1 8世帯から検証に有効 な回答が得られた 2。表 lは各世帯から得られた回答から lヘクタール当り の総収量、プラックタイガ」収量、天然エピ収量、プラックタイガーの稚 エピ放流個体数と収穫個体数および生存率を集計したのものである。天然 エピの年間平均収量は 1 0 7± 60kg/haで、ジョンストンの 2 8 6土 1 0 6kg/. haと比較すると 7年で半分以下に減少している。インタピューでは、全て の世帯で天然エピの生産量が 9 6年頃と比較すると半分以下に敢減して、プ ラックタイガーを養殖するようになったと聞かされていたが、集計の結果. (6). 口28].

(7) も同様のものとなった。. 表 1 結合型養殖の生産性 総収量. 却 9± 1 0 9 k g / h a. BT収量 天然エピ収量. 1 0 1±7 0 k g / h a. BT放流数個体数. 飽 O土日4 7 4尾 /ha 7 9. BT収穫個体数. 1 6 9尾 /ha 2日5± 1. 生存率. . 1 % / h a 3 . 9土 3. k g / h a 1 0 7主 印i. n=218 ( 注 ) BTはプラックタイガーを意味する (出所)著者の臨地調査より作成. 0 1±7 0kg/haで、天然エピを合わせた ブラックタイガーの収量は年間 1 総収量でも 2 0 9±1 0 9kg/haにしかならず、 1 9 9 6年当時の水準には達して いない。このブラックタイガーの収量は、飼育期間中の生存率に影響され ている。世帯当りの年閥放流個体数は 7 9 飽0 ±53474尾 /haであるが、収 穫個体教は 2 5 4 5± 1 1 6 9尾 /haし か な し そ の 生 存 率 は 3 . 9±3 . 1% / h aに すぎない。実に放流した稚エピの約 96%が養殖過程で死んでいた。インド ネシアやフィリピンの粗放養殖ですら、生存率が 4 0∼印%だと言われるこ とからも 3、結合型養殖は極めて生産性が低い養殖技術だといわざるをえな. u 。 、. このような生産性の低さは結合型養殖の養殖方法に起因する。結合型養 殖では、大潮の満潮時に水門をあけ、河川から取水を行う。この河川から の取水はプラックタイガーの養殖が主流となっても続けられていた。稚エ ピ放流後の生育過程で常に水中の溶存酸素や塩分漣度を調整しなければな らないからである。 原理的には、塩分を含む水(海水や汽水)は水よりも密度が高いため、 満潮時に水門をあけると底部から汽水が流入する。また、流入の際には汽 水は掻動を起こしているため巻き上げが起こり、これによって上部の水と 混ざり合う。この撹揖作用によって水中にくまなく酸素が供給されること. [ 1 2 7 ]. (7).

(8) になる。 ただし、こうした状態が生じるのはあくまで河川水が養殖水路の水より も密度が高い場合である。プラックタイガーの養殖は先述した通り乾期に 行われる。水路の用水の蒸発などを考慮すると、必ずしも河川水の方が塩 分損度が高いとは言えないのである。この場合、密度差による取水は困 難となる。また、取水の時間帯によっても河川水の溶存酸素量に大きな違 いが生じる。務存酸素は日中に植物プランクトンの光合成によって生成さ れるため、日没直後がもっとも多くなる。一方、夜間は酸素の消費のみが 進むため、日の出頃がもっとも洛存酸素量の少ない時間帯になる。たまた ま日没直後が満潮で、その時に取水を行えば溶存酸素の豊富な河川水が水 路に流入するが、日の出ごろに取水を行っても河川水による溶存酸素の供 給は期待できない。養殖池に流入する河川水の水質は、水路外の生物活動 や季節変化、太陽の日周変動と潮汐の変動などによって左右されるため、 人為的に水質をコントロールするのが極めて困難なのである[東海大学. α 2) ( ) ] 。 表 2 BTの生産性に関する要因分析 要因. 0. AFhuhuu. 口. (出所). 1 . 5 8 1 0 . 4 5 8 2 . 6 3 8 0 . 3 7 3. P検定. ’ 侃河 m UnunU. A)種苗費 B)メンテナンス費 C)飼料費 D)水質管理用薬品費 n=218. 相関. 著者の臨地調査より作成. 事実、筆者が行った生産要因分析においても上記の物理的プロセスに合. 1 8カ所の結合型養殖について、筆者が 致する結呆となった。この表 2は 2 聞き取り調査を行ったデータをもとに多変量解析で分析した結果である。 単位面積あたりのエピ粗収入を従属変数、 A)種苗費、 B)水路のメンテナ ンス、 C)飼料、 D)水質管理薬品それぞれの単位面積あたりの費用を独立 変数として解析を行った。その結果、種首費と水路のメンテナンスは収量. (8). 口26].

(9) と相関関係が認められた。種苗費が多いと収量が増えるのは、プラックタ イガーが死んでも水路の汚水を排出して再度放流しているためである。水 路のメンテナンスは泥底のヘドロを取り除く作業なので、それが生産性と 相関関係にあるのは妥当な結果だといえる。しかし、水質管理薬品に関し ては相関関係があるとは言えない結果となった。 以上のように、結合型養殖は極めて生産性の低い養殖技術であった。天 然エピの収穫量はわずか 5年で半分にまで減少し、プラックタイガーは致 死率が極めて高かった。その最大の原因は水質の管理が人為的に困難な点 にあった。結合型養殖に従事する人々は、エピが死ねば再び稚エピを放流 することで対応していた。もちろん、再放流には稚エピを購入する必要が あるため、追加的なコストを常に強いられることになる。結合型養殖は養 殖従事者にとって経済性が低い生産様式といわざるをえず、地域の生態環 境に合致しているとは言えないものだった。それにも係らず、ゴックヒエ ン県では結合型養殖が定着している。そこで以下では、制度という「国家 による解決」について考察する。. 3 . 土地利用制度としての結合型養殖 ここでは、結合型養殖とはどのような土地利用制度であるのかについて 論じるが、まずマングロープ湿地における土地管理の主体について概観す る。その後で、制度としての結合型養殖について考察する。. [ 1 2 5 ]. (9).

(10) 表 3 2003年、カマウ省における湿地管理組織一覧 管理組織. 1 タムザン 1林漁場 2 ゴックヒエン林漁場 3 キエンパン林漁場 4 184林漁場 5 チャンサオ林漁場 6 タムザン 3林漁場 7 13/12林漁場 8 ニュンミエン林漁場 9 タックピエン林漁場 1 0 ナムカン林漁場 1 1 ダットムイ林漁場 1 2 ダットムイ特殊使用林区 1 3 パイボイ保護林区 1 4 414農場 1 5 カマウ公安農場 1 6 339師団 1 7 ホンコアイ島 1 8 ゴックヒエン北部森林回復予定地 1 9 ミンハイ湿地林リサ]チセンタ】 2 0 ダムドイ林漁場 2 1 ダムドイ・パ】ドサンタチュアリ 2 2 タントゥアン村 2 3 サオルイ林漁場 24 チヤ】ヲ】・パ】ドサンタチユアリ 2 5 ピエンタイ保護林区 2 6 ソンチェム林議場 2 7 ウーミン 1林漁場. 2 8 ウ」ミン 2林滋場 29 ウ}ミン 3林漁場. 3 0 30/4林漁場 3 1 カイタウ Kl監 獄 3 2 カインホイ企業. 担当部局 ゴックヒエン県 農業・農村発展局 農業・農村発展局 農業 ・農村発展局 農業・農村発展局 カマウ省駐屯軍 農業,農村発展局 農業・農村発展局 農業・農村発展局 農業・農村発展局 長業 ・農村発展局 長業 ・農村発展局 フォレストレンジャー支部 フォレストレンジャー支部 第 9管区 省公安警察 第 9管区 フォレストレンジャー支部 ゴックヒエン県人民委員会 ミンハイ湿地林リサ】チセンタ】 ダムドイ県 農業・農村発展局 ダムドイ県人民委員会 ダムドイ県人民委員会 カイヌック県 農業・農村発展局 カイヌック県人民委員会 フォレストレンジャー支部 トイピン県 農業・農村発展局 ウーミン県 農業・農村発展局 農業・農村発展局 農業 ・農村発展局 長業 ・農村発展局 内務省 カマウ省共産党室 チャンヴァントイ県 農業 ・農村発展局 フォレストレンジャー支部 ミンハイ湿地林リサ』チセンタ』 フォレストレンジャー支部. 面積 / ha世帯数. 5 , 7 0 0 1 1 , 5 9 3 9 , 3 1 7 6 , 4 7 5 1 9 0 0 3206 6 , 5 3 2 5 , 3 0 2 7 , 5 6 2 7 , 9 7 1 1 0 , 9 3 3 4 , 3 3 8 8 , 5 5 5 2 . 1 0 5 4 4 9 2 1 1 5 6 1 2 1 . 7 2 5 8 7. 5 9 5 2 . 2 2 7 1 , 3 4 8. 1 , 3 8 9 1 0 1 2 1 7. 1 . 1 4 8 1 ρ 3 6 1 . 5 3 9 1 . 8 8 6 3 , 4 7 5 1 , 8 7 2 2 1 3 4 6 2 0 5 , 3 0 1 0. 1 0 , 2 3 0 1 , 5 3 3 1 3 2 0 旦1 4 2 2 3 1 4 , 9 2 1 1 , 6 5 3 1 4 0 5~里. 1 0 . J W L よ1 7 8 8 , 7 2 1 8 , 8 5 4 8 , 8 0 1. 3 , 6 1 1 開 1 , 0 1 . 7 6 2. 8 1 6 7 5 7 6 9 3 1 8 0 2 1 4. 1 0 . 2 3 4 1 却9 3 3 チャンヴァントイ林漁場 3 , 6 8 9 1 7 6 3 4 ボードイ特殊使用林区 1 9 8 0 3 5 ミンハイ湿地林リサ』チセンタ』 3 6 ホンチユイ島 1 4 0 0 (注)世帯数はエピ養殖に従事する世帯のほか、林漁場に居住する全ての世 帯からなる (出所)カマウ省農業・農村発展局内部資料より作成 ( 1 0 ). [ 1 2 4 ].

(11) 図 2 カマウ省湿地管理組織体系. ~. (出所)カマウ省農業・農業・農村発展局内部資料および行政官へのインタ − −. ピューより筆者作成. [ 1 2 3 ]. ( 1 1 ).

(12) 2 0 0 3年のカマウ省における湿地は 3 6の区域に区切られており、それぞ れに管理組織が設置されていた(表 3、図 2 )。まず、省レベルの行政機関 である農業・農村発展局が 1 8カ所の林禍場を統轄しており、その面積は. 1 4 0 0 4 2ヘクタールにおよぶ。同局は省紐の農業と林業に関する専門機関で あるが、中央官庁の農業・農村発展省からも指導を受けている。林禍場は 森林保護発展法の規定に基づき主に結合生産林(結合型養殖地)の管理・ 運営に当たっている 4。フォレストレンジャーは侵食防止林と特殊使用林か らなる 2 2 5 5 2ヘクタ −)レを続事脅している。また、省級の組織が湿地の管理・ 運営に当たっているものとしては、公安局に属するカマウ公安農場、軍が 管理する 4 1 4農場、 3 3 9師団、チャンサオ林撒場がある。 4 1 4農場と 3 3 9師 団は第 9軍区が、チャンサオ林漁場はカマウ省駐屯軍がそれぞれ管理して いる。さらにカマウ省党委員会が管理するカインホイ企業や、中央省庁の 公安省が管轄するカイタウ Kl監獄、科学・技術・環境省の専門機関である ミンハイ湿地林リサーチセンターなども林地の管理・運営に当たっている。 また、県人民委員会が管理する区域は 4ヶ所で面積は 2 4 0 1 3ヘクタールと なっている[SNNPTNT2 0 0 0 。 ] 同省最大の 1 1 4 5 2 2haのマングロープ湿地をもっゴックヒエン県では、 1 0カ所で林漁場が操業しており、その管理面積は 7 4 5 9 1ha(県湿地面積. の約 65%)、居住世帯は 1 4 8 印世帯(県総世帯の約 66%)に達している [SNNPTNT2 0 0 0 。 ]. 林漁場には、林業活動に携わる林漁場職員と、結合型養殖、油業、商業、 賃金労働に従事する世帯が居住している 5 林漁場は農業・農村発展局林業 0. 部門の管轄下にあり、その活動は林産物の生産・販売と植林、森林管理に ある。経営は独立採算制にもとづき、生産物の販売による粗利益から 4%を 経営税として納説し、職員の給与、伐採費、インフラの整備費等を捻出し た上で、これら諸経費を差し引いた純益からさらに 30%の利潤税を国家に 納めなければならない。原則的には植林費も林漁場が捻出しなければなら ないが、 1 9 9 3年から却0 3年まで全ての費用は 3 2 7 ・ CTプログラムや国際援 助によって賄われてきた九. ( 1 2 ). [ 1 2 2 ].

(13) 林組場は森林の保護・管理に関する主体であるが、浸食防止林や一部の 保護地区を除いてそのほとんどを結合型養殖に従事する世帯に委託して いる。そのため、保護・管理に関する林漁場の役割は結合型養殖地の配 分に関する計画の作成と被配分世帯の審査、土地利用の認可、結合型養殖 地の林木が違法に伐採されていないか監査することにある。被配分世帯は 林漁場の作成した土地利用計画書に同意した上で申請書を作成し、それを 社(行政村)および林識場に提出する。結合型養殖地は面積の 60%が R . a p i c u l a t aの林分で 40%が水産養殖に利用されるが、農業・農村発展省の土. 地利用規定では 60%が林地、 40%が農地とされているにそのため、土地 利用証書は林漁場および祉の耕作地管理部の認可を受けた上で県人民委員 会によって発行きれる\土地利用証書には、世帯主の氏名、配分地の総面 積、林分面積、養殖用水路面積とその土地等級と共に、却年聞の土地利用 の保証や林漁場の土地利用計画に順ずる旨が記載されている九 林分は省農業・農村発展局による規定にもとづき 2 0年間のサイクルで林 撒場によって伐採され、被配分世帯には伐採に関する権利はない。林木の 伐採と林産物の販売は林論場によって行われ、伐採費などの諸経費を差し 引いた利益の 4 0%からさらに資源税を差し引いた金額が被配分世帯に管理 費として支払われる。もし、被配分世帯が伐採等、林分の保護に関する規 定に違反した場合、林桶場は審査を行った上で罰金、土地没収などの行政 処分を課すことができる 10。つまり林分の利用権は林漁場にあり、被配分 世帯はあくまで林分の保護を請け負っているだけである。 一方、養殖用水路の利用権は全て被配分世帯に属する。水産養殖の経営 に関しては各世帯に自主権があり、収益もすべて各世帯に帰属する。養殖 用水路は法的に農地と規定され、農業地使用税法にもとづき土地等級 3級 (籾換算で 3 7 0kg/ha)の納税金を社に納めねばならない 11。林漁場は水産 養殖に関しては被配分世帯に一切関与しない。 以上のことを整理すると、一つの結合型養殖地には二つの経営主体があ ることになる。一つは結合型養殖地の林分を経営する林漁場で、もう一つ が水産養殖に従事する被配分世帯である。林識場は結合型養殖地の林分の. [ 1 2 1 ]. ( 1 3 ).

(14) 保護・管理を被配分世帯に委託する代わりに養殖地の利用権を譲渡する。. 0年聞は管理コストを削減できる。一方、被配分世 このことで伐採までの 2 帯は 2 0年という育林期間の長さから林産物に対する経済的インセンティプ は低い。しかし、林分の管理に関しては結合型養殖地に 60%の林分さえ残 していればよく、特に育林費が必要なわけではない。つまり、結合型養殖 地の構造を変えず林分に手を触れない限り、自由に水産養殖を行うことが できるのである。 このように、土地利用制度としての結合型養殖はあくまで森林の保護・ 育成を目的とし制度設計されたものであることが分かる。ここで重要なの は、結合型養殖という土地利用制度においては、養殖技術やその生産性に 対して国家が介入しないという点である。先述したように結合型養殖の特 色はその生産性の低さにあった。そのため、養殖に従事する人々にとって 養殖コストは商いものにならざるを得ない。稚エピの再放流などにかかる コストを捻出するために、違法な森林伐採が行われてもおかしくはないは ずである。ところが、ゴックヒエン県では違法な森林伐採はみられず、統 計的にも森林面積は増加していた。これを理解するためには、より小さな ガパナンスをみる必要がある。. 4 . 結合型養殖のマイク口・ガパナンス 1 8 4林漁場とタムザンパー林撫場は、経営組織としてカマウ省の農業農 村発展局の指導下にあるが、地理的には T杜(行政村)に属している。そ のため両林禍場に居住する住民は住民登記や納税を社に対して行う。社は 行政機関である人民委員会と、地方議会に相当する人民評議会からなる。 また、住民が日常的に関わる行政機関として社の下位区分に当たる集落. (Ap )と 12、集落の下位区分として組(To )が設置された。. 1 8 4林桶場およびタムザンパー林機場には 8つの集落が設置されており、 集落が上級機関の決定した政策や納税の通知を行う。集落には集落長のほ か、公安、徴税に関する担当者が置かれている 1 \集落の下位区分である. ( 1 4 ). 口20].

(15) 組は、 1 5世帯ほどが一つの単位となっている。この組は共同して結合型養 殖の森林管理にあたる。組は国家の行政区分ではなく、カマウ省が地方条 例として定めた住民組織である。組には組長と副組長が置かれているが、 彼らの役割は、農地使用税の納付期日を過ぎても未納状態にある世帯へ集 落からの通知を伝えたり、組の管理する林分の見岡りを組織したり、集落 の会合へ組の代表として参加することなどがある。ただし、組長はあくま で住民組織の代表であるため、社や集落から給与などの報酬を得ているわ けではないへそのため組長は行政に携わる立場と住民組織の代表者であ るという二重の性格をもつことになる。 この組はまた、林禍場に対し連帯責任をもって結合型養殖地の林分の保 護を請け負う。もし、管理区域で違法な伐採が生じた場合、組は林檎場に 対して罰金や土地没収などの連帯責任を負わねばならない。例えば、個 人 Aが使用している結合型養殖のマングロープが許可なく伐採された場 合 、 Aではなく Aの所属する組がその賠償を林漁場に対して行わねばなら ない。こうした組の機能が結合型養殖の執行にいかに関わっているのかを、 インタピューおよびアンケート調査の結果から考察してみる。. 1 8 4林撒場、タムザンパー林漁場で行ったアンケート調査で、 1)「マン グロープはエピ養殖にとって有益ですか」、 2)「もし、結合型養殖を実施 しなくてもよくなれば、あなたはマングロープを伐採しますか」という質 問事項を設定した。 218世帯からの回答のうち、 1)に関しては 208世帯が 「有益ではない」とし、 2)においては 1 4 1世帯が「伐採する」と答えてい る。このことから住民は潜在的に樹木を伐採したい動機を持っていること が分かる。インタピューでも「マングロープがある程度まで生育すると、 (林冠が形成されて)水面に日光が差し込まないようになるし、落葉量が増 えてエピの収量が落ちてくる。ドュック ( R .a p i c u l a t a )の葉は肉厚で重い から、稚エピは落葉の下敷きになって死んでしまうのだろう」、「結合型養 殖は生態環境にいいということだが、エピを育てるだけならマングロープ がない方がいいと思う」という回答がえられた。一方、「だからといってマ ングロープを伐採するなんてことはしない。エピ養殖の方が農業より実入. [ 1 1 9 ]. ( 1 5 ).

(16) りが多いし、土地を没収されたら家族がぱらぱらになってしまう」という 回答もあり、土地没収というペナルティが違法伐採の抑制につながってい ることが分かる。では、誰が住民による違法な伐採を監視しているのか。 インタピューでは「組長に伐採しているのを見つかると大変だ」など、組 長が伐採を監視しているとの回答が多かった。違法伐採に対して国家が与 えるべナルティは組長を通じて行われるという共通の認識があることがわ かる。 その一方で、「組長は親切な人だから、俺は伐採したりしない」というよ うな意見も多く聞かれた。この言葉は、上記の監視者としての組長とは異 なった色調を帯びている。どちらかといえば、住民サイドに立った組長と いうニュアンスである。なぜ、こうしたニュアンスが生じるのであろうか。 そこで、住民サイドに立った組長というニュアンスが生まれるプロセスを 農地使用税の減税陳情の事例からみてみる。. 1 8 4林禍場に設置されている D集落では、 2 0 0 2年度の農地使用税が印% 減税された。これは 2 0 0 2年度のエピ生産量が前年と比較しでかなり低かっ たことに由来する。 2 0 0 2年度は稚エピの放流を行う雨季の終わりから乾季 の始めにかけて天候不順が続き、稚エピの大量死が続いた。このことはす ぐに住民の日常会話の中心となった。納税の公示がなされると組長への相 談が増え、これを受けて集落会議で集落長と各組長が協議を行い社の人民 委員会に対して 2 0 0 2年度末に 100%免税の陳情を行った。この陳情を受け て社の人民評議会が林撤場所長および人民委員会幹部による臨時会議を招 集した。臨時会議では農地使用税法第 2 1条および第 2 2条の規定を適用す ることが決められた 16。第 2 1条は、天災による収穫の被害に関して被害程 度に応じた減税および免税の規定がなされており、本件に闘しては収寝量. 0∼ 30%の損害に相当するとして 60%の減税が妥当とされた。また第 の2 2 2条 lの「生産および生活に多大な困難を有する高地、山岳地域、辺境、 島に居住する生産農家に対して免税、あるいは減視する」にマングロープ 湿地は相当するとして減税が適用されるべきであるとした。 こうして土地使用税の 60% 減額案が社で取り決められ上級機関へと上申. ( 1 6 ). [ 1 1 8 ].

(17) された。もちろん 60%減税案が決定された背景には、人民委員会や人民評 議会などといった地方行政幹部自身がエピ養殖に従事しているという事実 がある。しかし、住民にとっては最初に相談を受けて、それを集落会議の 議題とするように活動した組長が減税導入の立役者となった。住民の意見 を集約し、行政機関への申し入れの窓口として組長は活動した。こうした 日常における組長の役割が、住民組織の代表者という寵識を人々にもたら していたのである。. |村|. |林漁場|. 所有権 | | 樹木. |小. 契約 |く. I. 〉 |水産物|. I. 保護. 使用. 図 3 ガパナンスの経路. *実線はフォーマルな系統で点線はインフォーマルな系統 図 3は林漁場・社から集落、組、個人に至るガパナンス上の経路をフォー レなものとインフォーマ J レなものに分け、それぞれを実線と点線で整理 マJ したものである。林漁場に住む住民は、林漁場から土地を配分きれて樹木 の保護を請負い、その代価として配分地での水産養殖に関する権利を享受 する。樹木の保護は近隣住民と共同して当たることになるが、これが組と なる。組は林漁場に対して森林保護に関する連帯責任を有する。一方、水 産養殖は各世帯単位で行われる。養殖用水路は法的に農地と規定されるた. [ 1 1 7 ]. ( 1 7 ).

(18) め、各世帯は農地使用税を支払わねばならない。この農地使用税は集落を 通じて杜へ納税される。こうした経路の中で、組は納税の通知等を行う行 政組織や森林保全の請負単位というフォーマルな性質をもっ。しかし、住 民からみると組は日常的な社交の場でもあり、陳情などをともに実践する インフォーマ J レな単位として機能している。そうした中で、組を単位とし たインフォーマルな人間関係が構築きれる。この人間関係は、住民の生活 において重要な役割を担うため、樹木の違法な伐採という個人的行為を抑 制させる機能を呆たす。 このように、林漁場内部のマイクロ・ガパナンスを詳細にみていくと、 組という住民組織が結合型養殖の定着において重要な役割を有しているも のの、インフォーマルな経路がフォーマルな経路と比較して圧倒的に少な いことが分かる。. おわりに 本論では、ベトナムのカマウ省において導入された土地利用制度である 結合型養殖の定着について考察してきた。この中で、制度の定着を、結合 型養殖の生産性、土地制度の内容、土地制度のガパナンスから検証した。 そこで判明したのは、結合型養殖の定着は、決して養殖技術としての生産 性からもたらされたものではないことであった。養殖技術としての結合型 養殖は、極めて不安定な生産様式であり、これが養殖従事者(地域住民) のリスクを増加させていた。住民にとって結合型養殖はむしろ生産活動を 阻害する要因だと捉えられていた。 このような状況の中でも結合型養殖が維持され、カマウ省の森林面積が 23 叩 3ヘクター J レ(1 鈎 4年)から 5 1 4 7 6ヘクタール(2( 削年)へと増加し. たのは、生産性を無視したガパナンスによるものであった。このガパナン スにおいては、組という地方レベルで設定された住民組織が極めて重要な 役割を呆たしていた。 1 5世帯ほどで構成される組は、一方では国家の執行 機関の末端として、もう一方では住民のインフォーマルな関係性を生み出. ( 1 8 ). [ 1 1 6 ].

(19) す組織として機能した。これが結合型養殖という制度を支えるマイクロガ パナンスの役割を担っていたのである。 ただし、上記のガパナンスは、決してオストロムの理論的な条件と一致 するわけではない。彼女は、共有資源の自治管理がうまく機能する条件と して、 ( 1 } コモンズの境界が明らかなこと ( 2}資源採集・調達のルールが地域的諸条件と整合的であること ( 3}利害関係者の意思決定への参加が確保されていること ( 4 }. ルールを守ることについて監視がなされていること. ( 5}違反へのペナルティが段階的に存在すること ( 6}紛争解決のメカニズムが備わっていること. ( 7}共有資源の占有者が独自の制度を考案する権利が地域外の政府当局. によって無効にされないこと ( 8 } 占有、提供、監視、総争解決および運営の諸行為は、入れ子状の諸. 事業の複数の層において組織化されていること という 8つの条件を挙げている 17。本論で対象とした結合型養殖において は、(2) や (3} 、 (7)が決定的に不足していた。結合型養殖はマングロープ湿地 帯の生態環境に整合的な技術とは言えないため(2}の地域的諸条件との整合 性は少なかった。また、利害関係者である養殖従事者には決定に参加する 権利は与えられていなかったので(3)の条件は満たされていなかった。さら に ( 7)の独自の制度を考案することも認められてはいなかった。このように、 結合型養殖の定着は、オストロムが想定しているようなセルフガパナンス が効果的に作用した結果ではなかったのである。それはむしろ、国家のガ パナンスが最小単位の住民組織にまで貫徹していく中で形成されたもので あった。スコットが批判的に論じた「単純化」によって共有資源が保全さ れたとも言えるだろう。 もちろん、このような強い国家という像には一定の保留が必要である。 なぜなら、人々は盲目的に国家に服従するわけではないからだ。国家が定 める制度を人々が承認してこそ、制度は機能する。もし、人々から承認さ. [ 1 1 5 ]. ( 1 9 ).

(20) れない制度であれば、必ず制度から逸脱した行為が横行するだろう。事実、 ベトナムにおいては、人々による国家制度に対する「日常的抵抗」によっ て制度変化が生じてきた[Kerkvliet2005]。カマウ省のマングロープ湿地. 9 8 0年代は「日常的抵抗」による制度変化の時代であった 帯においても、 1 [鈴木 2 0 0 5 。 ]. 9 9 3年以降の制度定着を上からのガパナンスの浸透という面 本論では、 1 から考察したわけであるが、これだけで「日常的抵抗」がなくなるわけで はない。上から与えられたガパナンスに対して、住民がこれを承認する要 素を考える必要がある。本論でも、わずかに言及したが、結合型養殖の承 認においては、土地面積の 60%に相当する森林のコストを圃家が受け持つ ていたことが重要な役割を果たしていた。本論では、こうした財政面には 紙面の関係上言及できなかった。この問題については改めて別稿で論じる。 引用文献及びベトナム面公文書 −多屋勝雄編著. 2 0 0 3 .『 アジアのエピ養殖と貿易J成山堂書店.. ,鈴木伸二.笈治5 . 「なぜマングロ}プ林は再生したのか?:ベトナム、カマウ省ゴックヒ エン県の湿地利用制度とインセンティプ」『東南アジア研究J4 3巻 3号:勾8 2 7 2 −東海大学海洋学部沿岸物理研究室 2 0 0 0 . 『ベトナム・マングロープ水域物理環境調査i ’J o l m s t 叫 D . J . ;TronιN.V.;T u a n ,T . T . ;X u a n ,T . T .2 0 0 0 a也 rim p民 edr e c r u i 岡 田t包 mixeds h r i m pandmangrovef o r e s t r yf a r m si nCaMaup r o v i n c e , 初 . ・ t hemV i e t n a m . 叫t u r e( 1 8 4 ): 8 9 1 0 4 . Aquac ’J o h n s t o n .D . J . ;T r o n g ,N . V . ;Ti 叫 D . V . ;X u a n ,T.T . .2 0 0 0 b .出 rimpy i e l d sandh a r v e s t c h a r a c ぬr i s t i c so fmixeds h r i m p m a n g r o v ef o r e s t r yf a r m si ns o u 白ぽ宣 V i e t n a m :f 誌はo r s a f f e c t i 皿p r o d u c t i 血 Aq 四c u l t u r e( 1 8 8 ) お3 2 8 4 . ’K e r k v l i e t ,B . J . T .2 0 0 5 .ThePowero fEv ぽy dayPo 刷 c s :HowV i e t n a m e s eP e a s a n t s T r a n s f o r m e dN a t i o n a lP o l i c y .C個 略IU n i v e r s i t yP r e s s . ・Os 位。m .E .1 9 ! ね.G ove 江主1 g出eC 田 町1 o n sTheE v o l u t i o no fI n s t i t u t i o n sf o rC o l l e c t i v e 勾 eU : 凶Vぽ s i t yP r e s s . A叩叩.Cambri ・P r i m a v e r a ,J . H .1 9 9 3 .A C r i t i c a lReviewo fShrimppondC u l t u r ei nt h eP h i l i p p i n e s . Re 吋. e w si nF抽 出. e sS c i e n c e1 ( 2 ) :1 5 1 却 1 . ’S c o t t ,J . C .1 9 9 8 .S e e i n gL i k eaS t a t e :HowC e r t a i nSchemest oImprovet h eHuman C o n d i t i o nHaveF a i l e dY a l eU n i v e r s i t yP r e s s . ・L u a tb a ovevap h a t出 血 r u n g .3 1 / 8 / 1 9 9 1 . ’L u a td a td a i ,1 4 / 7 / 1 田 ,3 .. ( 2 0 ). [ 1 1 4 ].

(21) ’L u a tt h u e叩. dungd a tnongn g h i e p ,1 0 / 7 / l 切3 ・Quyetdinhαmchut i c hH o idongBo官 uongs o327-HDBT.1 5 / 9 / 1 9 9 2 ,Vemots ochu 回 o ng ,出出 s a c hs udungd a t回 n g .d o in 盟 国 巳 n皿 g ,b a i』 iv田 b i e nvamatnu 皿 佐u ongbonongn g h i e pvap h a t廿i e nnong廿1 0 ns o笈!9Z-BNN-QD/ PTLN,4 / 1 1 / 1 9 9 8 ,Phed u y e tquyhoachphanv u 且gk h o iphucrungngapma 且t h u o c4 也 hCaM au.BaeL i e u ,SocTrang羽 TraV i n h .. ’Q uyetd i n hc u a加. . o n gvamot鉛 c h i n h銅 山 由un出 . e mvev i e cgiao d a t ,g i a orung,t ochucd i e udong白 nd i n hcudennhungvungd a tmoi ・So2 0 1 . ( ごVパJ B .辺必/1 9 9 1 .Huong也 且 mots od i e 皿 回 且 匂p仕u ng仕ongv i 民 g i a od a t. ’S o169-CV/UN.1 9 / 4 / 1 9 9 0 ,Chu凶. iv ac anhanden u o itomvat r o n gr u n g . c h oc a cdonv No 昭 N ghiepvaP h a tT r i e nNongThon百 出 CaMau( S 附 P叩 T). 2 0 0 0 .DeAn TαigQuanPhatT r i 田 L amNghi 句 G i a iDoan2 0 0 0 2 0 0 5 .. お. 1 天然エピは 4月から翌年の 1月まで大潮のたびに収穫される。プラックタイガーでは. 2月頃から 8月にかけての大湖毎に収穫が行われる。. 2 2 2 3世帯のうち 5世帯が天然エピのみ養殖していた。ここでは、こうした 5世帯を含 まず試算を行っている。. 3 放流した稚エピの生存率に関しては、インドネシアで 4 0∼ 6 0 9 6、フィリピンで 50∼ 6 0 9 6だと報告されている[Pr 泊i a v e r a1 9 9 3 :1 5 4 ;多屋調 2 0 0 3 :7 6 。 ] 4 Luatbaovev aphat出 enrung,31/8/1991第 3 6条 5 以下は.筆者が 1 8 4林漁場およびタムザンパー林漁場で笈氾3年度に行った臨地調査に 8 4林漁場の職員は 2 4名、タムザンパー林漁場は 3 6名であった。職員は よる。なお、 1 所長、副所長、会計、林業・土地計画などの幹部職員と、一般職員とに分けられている. 6 以上は林者現場所長へのインタピューによる。. 7 農業・農村発展省承寵 So299Z-BNN-QD/PTLN 、4 / 1 1 / 1 9 9 8にもとづく。 8 土地利用証書の発行規定はカマウ省方針 So169-CV /UN 、1 9 / 4 / 1 9 9 0にもとづく。 9 カマウ省方針 So169ζV 八JN 、1 9/4/E 削 及 び9 3年土地法(L四 tda 士 白i .1 4 / 7 / 1 9 9 3 ) 第2 0条による。 1 0 以上は林機場所長へのインタピューによる。 1 1 Luat也 出 血 dungd a tnongn g h i 旬、 1 0 / 7 / 1 9 9 3第 9条による。 1 2 カマウ省方針 So169-CV /UN 、1 9 / 4 / 1 9 9 0により設置きれた。 1 3 組の設置を明確に規定した公文書は発見できなかったが、 1 9 9 1年 6月 2 2日付けカマ ウ省指導 So2 01-CV パJBでは林漁場内に小面積の森林管涯を担う組織を設立するよう指 われている。おそらくこの条文が組のもとになったと恩われる。 導古匂7. 1 4 集落長は社によって任命される。 184林漁場の D集落の集落長は共産党員であり、 1 9 7 7年から 80年にかけて省の政策幹部、. u 削年から 9 7年は水産加工場の幹部として着. 7年に同加工場を退職すると林漁場へ移住して周年から集落長に就任した。 任し、 9 1 5 1 8 4林漁場の N集嘗 2組の組長は、 1 9 8 0年までペンチェ省で郵便夫をしていた。 89年 に林漁場へ入植して結合型養殖に従事するようになり、 9 6年から組長に就任している。. [113]. ( 2 1 ).

(22) また、 2朋年からは N集落の小学校教頭も兼任するようになったが党員ではなく、文字 書きに堪能であるという理由から組長に選ばれている。 1 6L u a t也. u e s ud田 1gdatnαign g h i e p ,1 0 / 7 / 1 9 9 3第 2 1条、第 2 条. 1 7 Os 回 m [ 1 9 9 0 ]第 3章を参照されたい。. ( 2 2 ). [ 1 1 2 ].

(23)

表 3 2003 年、カマウ省における湿地管理組織一覧 管理組織 担当部局 面積 /ha世帯数 1  タムザン 1 林漁場 2  ゴックヒエン林漁場 3  キエンパン林漁場 4  184 林漁場 5  チャンサオ林漁場 6  タムザン 3林漁場 7  1  3/ 1  2 林漁場 8  ニュンミエン林漁場 9  タックピエン林漁場 1 0 ナムカン林漁場 1 1 ダットムイ林漁場 1 2 ダットムイ特殊使用林区 1 3 パイボイ保護林区 1 4   4 1  4 農場 1 5 カマウ公安農場 1 6   3
図 2 カマウ省湿地管理組織体系 ~  − −  (出所)カマウ省農業・農業・農村発展局内部資料および行政官へのインタ ピューより筆者作成 [ 1 2 3 ]  ( 1 1 ) 

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