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温室効果ガス排出削減貢献量評価に関連するガイダンス等とその特徴

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1. 温室効果ガス排出削減貢献量の算定に向けたガイドラ インの役割  パリ協定など世界的な温室効果ガス排出削減の目標に向 けて、様々な主体による温室効果ガス排出削減に向けた取 り組みが進められている。温室効果ガス排出削減に向けた 社会の変革は容易ではないが、早急な対策が求められる中 で新しいエネルギー技術、省エネルギーシステムや様々な 機器のエネルギー利用効率の向上などの技術革新による温 室効果ガス排出削減への期待は大きい。こうした技術革新 による温室効果ガス排出削減を促進する上で、その効果を 定量的に示すことは温室効果ガス排出削減に対する当該技 術の貢献を裏付ける意味で重要であり、また当該技術導入 の促進につながることも期待される。一方で、革新的技術 の導入によってある製品に関わる温室効果ガス排出削減が 期待できる場合においても、その温室効果ガス排出削減効 果を論じる上ではライフサイクル全体での議論が欠かせな い。例えば、自動車に用いられる部材が従来品から新たな 素材に置き換えられることで、軽量化によって自動車の走 行段階における燃料消費抑制とそれ伴う温室効果ガス排出 削減が期待できる場合、走行段階での温室効果ガス排出量 だけでなく、当該部材の生産や自動車への組み込みも含め てライフサイクル全体で温室効果ガス排出量がどのように 変化するのかを分析しなければ、その温室効果ガス排出削 減効果を正確に把握することができない。その意味におい てライフサイクルアセスメント(LCA)が果たすべき役 割は大きい。  一方で、これまでもLCAによって従来製品と比べて新 たな製品がどの程度ライフサイクルで温室効果ガス排出量 を削減できるのか、といった分析は数多く行われてきてい る。いわゆる製品LCAと温室効果ガス排出削減貢献量評 価との違いとしては、前者は個別の製品単体(機能単位あ たり)での評価であることに対して、後者では当該製品が 社会全体にもたらす温室効果ガス排出削減効果とそれに対 する貢献を評価することが概念としての大きな違いである。 温室効果ガス排出削減量評価では、評価の対象とする製品 がベースライン(評価対象製品が導入されなかった場合) に対して機能単位あたりで温室効果ガス排出量をどれだけ 削減することができるかに加えて、評価対象製品が社会全 体にどれほど普及し、その総量としてどれだけの温室効果 ガス排出削減につながるかを分析する。さらに、こうした 温室効果ガス排出削減はライフサイクル全体を通じて様々 な素材や部品などの組み合わせによって実現されており、 必ずしも社会全体での総量としての温室効果ガス排出削減 量と評価対象製品による温室効果ガス排出削減に対する貢 献量とが完全に一致しているとは限らない。社会全体での 温室効果ガス排出削減量はベースラインの設定によっても 結果が変わりうるため、ベースラインの設定方法も重要な 論点の一つとなる。

[解説]

温室効果ガス排出削減貢献量評価に関連するガイダンス等とその特徴

醍醐 市朗

1

,本下 晶晴

2,*

,稲葉 敦

3 1 東京大学,2 産業技術総合研究所,3 一般社団法人日本LCA推進機構 *連絡先:[email protected] 概要:脱炭素社会に向けた温室効果ガス排出削減目標を達成する上で、温室効果ガス排出削減に資する製品等の普 及を広く進めることは重要な役割を果たすと考えられる。ライフサイクルアセスメント(LCA)は製品等による ライフサイクルを通じた温室効果ガス排出削減量を定量化することで温室効果ガスの排出削減につながる製品等の 普及を支援することができる。その一方、社会における温室効果ガス排出削減への貢献を評価する際に特に注意す べき点もいくつか存在する。これまで様々なガイダンス等において、温室効果ガス排出削減への貢献を評価する上 での原則、要求や推奨事項がまとめられている。本稿では様々な主体から発行されている関連ガイダンス、ガイド ラインや国際規格を紹介する。既存のガイダンス等について、評価の対象、LCA の適用、算定方法、およびその 他の特徴といった視点からそれらを整理し、実務に活用する上で目的に応じたガイダンス等の選定に資する情報を 提供する。 キーワード:プロジェクト算定、製品ベース、カーボンニュートラリティ、attributional LCA、consequential LCA

特集「温室効果ガス排出削減貢献量評価−ガイドや活用の最新動向−」

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 温室効果ガス排出削減貢献量の評価は製品などによる社 会全体への貢献を定量化し、技術革新などによる温室効果 ガス排出削減を促進する上で重要な役割を果たすことが期 待される一方で、様々な主体が独自の評価方法に基づいた 評価結果が乱立すると、グリーンウォッシングの横行や評 価結果に対する社会の信頼の失墜などが懸念される。こう した懸念を解消するためには、温室効果ガス排出削減貢献 量を評価する方法論としてのガイダンス等が必要となる。 このような背景から温室効果ガス排出削減効果を定量する ためのガイダンス等が国内外にて数多く公表されており、 新たに温室効果ガス排出削減効果を定量しようとした際に、 どれを参照すべきか決めることが困難であると考えられる。 そこで、以下では、さまざまなガイダンス等の目的や特徴 を概説することとする。 2. 温室効果ガス排出削減貢献量評価に関連するガイダン ス等 2.1 温室効果ガス排出削減貢献量評価に関するガイダン ス等の違い  現在公表されているガイダンス等は、目的に応じて2つ に大別できる。一方は、温室効果ガス排出の削減あるいは 吸収の促進を目的としたプロジェクトを算定対象としたも のである。他方は、温室効果ガス排出削減の効果が期待さ れる製品を算定対象としたものである。算定の手法におい ては、多くの点が共通はするものの、目的が異なるため、 目的に応じたガイダンス等を参照することが望ましい。 2.2 プロジェクトを算定対象としたガイダンス等  まずは、プロジェクトを算定対象としたガイダンス等に ついて紹介する。プロジェクトを対象として温室効果ガス 排出の削減あるいは吸収の促進を定量する手法は、京都メ カニズムの1つであったクリーン開発メカニズム(Clean Development Mechanism:CDM)において、多くの方法 論として発展してきた。特に、CDMでは、その定量され た温室効果ガスの排出削減量の一部がクレジットとして発 行されていたため、算定の方法には結果の信頼性と過大推 計でないことが求められ、より正確に、より保守的な方法 論が取られていた。温室効果ガス排出量の削減のためのプ ロジェクトを対象とするガイダンス等は、その流れを汲ん でいると考えられ、暗に算定結果をクレジットとして発行 す る こ と を 目 的 と し て い る と 考 え ら れ る。 以 下 に ISO14064-2とGHG protocol for project accountingの2つ を紹介する。  ISO 14064ファミリー規格は、温室効果ガス排出量や吸 収量の算定、モニタリング、報告のための明瞭さと一貫性 などを担保するために整備されてきている規格群である。 その中の1つに、ISO14064-2「プロジェクトにおける温室 効果ガスの排出量の削減又は吸収量の増加の算定化、監視 及び報告のための仕様ならびに手引き」がある。ここでは、 プロジェクト実施前の計画のフェーズと実施のフェーズに 分けられており、計画時点で、プロジェクトそのものを明 確に記述し、プロジェクトに関わる温室効果ガスの排出源、 吸収源、貯蔵庫(sources, sinks, and reserves:SSR)を 特定することが求められる。これは、排出量の特定という 意味合いだけでなく、それに続く削減量の算定基礎となる ベースラインGHG排出量(GHG baseline)を決定するた めに重要なプロセスである。ベースラインシナリオに基づ いてベースライン排出量を決定したのち、算定、監視、報 告に関する方法を決定して、実行フェーズに移る。一般的 には、何らかのGHGプログラムにプロジェクトを登録す る場合は、実行する前にプログラムの運営主体等から設備 認定(validation)を得る。実行フェーズでは、定期的なデー タ品質の管理、モニタリング、そして、プロジェクトの GHG排出量ならびにベースラインGHG排出量の差分を用 いて削減量を算定・報告し、結果の検証(verification) を経て、排出削減量の認証(certification)を得ることに なる(設備認定、検証、認証は第三者機関が実施すること が一般的である)。  また、GHG算定・報告の世界的な基準・ガイドライン の1つである「GHG protocol」においても、プロジェクト 算定のガイドライン「GHG Protocol for Project Account-ing」が公表されている。こちらは、CDMプロジェクトの 構築にも使うことができると記されている。そのため、 CDMプロジェクトの登録において大きな論点であった追 加性(additionality)についても言及されている。追加性 とは、そのプロジェクト活動がなくとも実施されたのでは ないかという批判に対する弁護であり、経済的な要素や技 術的な要素がその理由として考えられている。このガイド ラインにおいて、追加性の解釈はいまだ明確ではないと記 されており、本ガイドラインでは追加性それ自体の判定は しないとしつつも、ベースライン排出量の推計手法の一部 として潜在的に組み込まれていると明記している。このガ イドラインでの算定の手順は、評価範囲の設定から始まり、 二次的な効果を見落とすことなく列挙し、その影響の大き さを評価する手順を提供することで、二次的な効果をどこ まで考慮すべきか設定することを要求している。次にベー スラインを設定する2つの手順のうちどちらを選択すべき か解説している。2つの手順とは、法や制度等による基準値、 業界平均値等との比較による性能基準法(performance standard procedure)と、当該プロジェクトにより代替さ れる特有の影響を評価する個別プロジェクト法(project-specific procedure)である。次に、ベースライン候補か

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ら採用するベースラインを特定し、ベースラインの排出量 を定量する。プロジェクトによる排出量をモニタリングに より得て、削減効果を算定し、報告する。 2.3 製品等を算定対象としたガイダンス等  次に、温室効果ガス排出削減の効果が期待される製品を 算定対象としたガイダンス等である。日本LCA学会は、 いくつかの自治体や業界で削減貢献量が算定されてきてお り、それらの参照すべき画一的な算定方法論がなかったこ とから、2013年に環境負荷削減貢献量算定研究会を立ち 上げガイドライン(2015)を公表した。3つの要素(ベー スライン、寄与率、普及量)を設定することが、削減貢献 量を導出する基本となっている。日本LCA学会(2015) により一般化された算定式を式1に示す。  削減貢献量= [(ベースラインの排出量)-(削減効果を発揮 する製品等の排出量)]×(寄与率)×(普及量) ・・・(1)  経済産業省は、2018年に温室効果ガス削減貢献定量化 ガイドライン(METI 2018)を公表した。これは、「地球 儀を俯瞰した温暖化対策」を長期戦略の核とする方針に基 づき、各事業者が自らのGHG排出削減を実現することは もとより、GHG削減に資する環境性能の優れた製品・サー ビス等を国内外に展開し、グローバル・バリューチェーン (GVC)を通じた世界全体の大幅削減の実現に貢献するこ とが重要との認識から、その定量化・発信を後押しするた めに整備された。このガイドラインは、それぞれに算定対 象の特徴によって設定やデータの適格性など判断に悩むこ とが想定される算定において、本ガイドラインだけを読め ば判断できるよう配慮されたものになっている。また、削 減貢献量を累積する方法に、フローベースとストックベー スがあること、それらの違いならびにそれぞれの定量方法 が丁寧に記されている。 2.4 特定の製品等を算定対象としたガイダンス等  ここまでは、対象とする製品やプロジェクトを特定しな い一般的なガイダンス等を紹介してきたが、対象が特定さ れるほど、カーボンフットプリント制度におけるPCR (Product Category Rules)のように、算定における課題 も明確で、手法もより具体的に規定できると考えられる。 経済団体連合会は、加盟している各業界の製品等による削 減貢献の算定事例を取りまとめた報告書(2018)を公表し ている。算定方法は、それぞれの業界独自であり、それぞ れの対象製品等の特徴あるいはデータ入手可能性からさま ざまな手法が混在していることがわかる。  業界固有のガイダンス・ガイドライン・報告書として、 半導体・電子部品(JEITA 2012)、化学産業(ICCA 2009, ICCA & WBCSD 2013)、電子部品(JEITA 2016)がある。 総じて、これらの対象製品は川上や川中の素材や部品であ り、最終製品ではないと言える。そのため、削減貢献量を 主張する際には、削減効果を発揮する製品による削減貢献 量の中に、評価対象の素材や部品以外の貢献も含まれるこ とになる。これは、先述の削減貢献量を導出する基本とな る3つの要素(ベースライン、寄与率、普及量)のうち、 寄与率の設定に関わる論点である。  化学産業(ICCA 2009)の取り組みは、その後の世界的 な削減貢献量算定のトリガーになったとも考えられる。そ の一方、この当時、GHG削減貢献という新たな主張のた めの手法論は十分で広範な議論もなく未成熟であり、GHG 排出量と等価に扱ったような解釈や指標が散見される。そ の後、化学産業では、手法を成熟させ、新たなガイドライ ン(ICCA & WBCSD 2013)を発行した。ここでは、算 定のガイドライン、報告のガイドラインとともに1章を割 いて貢献度に関するガイドラインを記している。基本的な 考え方として「一般に、ひとつのパートナーのみに削減貢 献量を帰属させることはできない。削減貢献量は第一に、 バリューチェーン全体に帰属されることが望ましい」とし ている。そのため、本文書では定量化された削減貢献量の 配分を推奨しないとし、なるべく配分を回避するよう求め ている。また、バリューチェーンにおけるその製品の役割 として削減貢献量に対する貢献度合いを定性的に判断し報 告しなければならないとしている。これは、削減貢献量に 変化を及ぼさないにもかかわらず、部品として使われてい るだけで削減貢献量があると主張するのを避ける意図があ る。加えて、それでも削減貢献量の配分が望ましい場合は、 機能的、経済的、物理的な複数の配分方法の中で貢献度を 最もよく表している方法を判断し、バリューチェーンパー トナーと合意したのち、バリューチェーンパートナーと配 分方法ごとの結果も比較することとしている。  半導体・電子部品(JEITA 2012)では、寄与率算定に限っ て考え方をまとめており、LCAにおける配分と同様の考 え方で削減貢献量も配分すると考えている。いくつかの方 法を比較して検討した結果、政府統計データから推計され る産業分類ごとの製品の構成材料コスト比率を用いる方法 を採用するとしている。電子部品(JEITA 2016)は、評 価対象を2つに大別し、電力の伝達経路で使われるものに ついては、電子部品自身の消費電力の低減効果から削減貢 献量を直接算定することが可能であり、配分は回避できる とした。他方、機器の省エネのための運転制御に貢献して いる部品や、直接機器の省エネには関与しないが電子回路 を形成する上で不可欠である受動部品等については、その

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貢献を直接的に数値化することは困難とし、いくつかの既 存の考え方を紹介している。また、大別された2つについて、 それぞれ直接貢献量、間接貢献量と名称において区別して いる。これらに加えて、自動車部品は、LCIガイドライン 第二版(JAPIA 2016)において、使用段階における負荷 算定の考え方として、質量基準、消費電力基準、動力(軸 出力)使用基準など複数示している。これらの考え方を用 いて高性能部品の従来部品に対する削減量が評価できるも のと考えられる。  この他に、情報通信技術(ITU 2012)、電気電子製品や システム(IEC 2014)、ITソリューション(JEITA 2017) があり、これらはプロジェクトを対象とした評価に類似し た手法論に基づいている一方、基本的にはクレジットの発 行を目的としていない(但し、IEC (2014)の場合は、ユー ザーが削減貢献量の自主的な主張のみならず、クレジット の発行を目的にする場合、「追加性」や「有効性確認」、「検 証」、「モニタリング」といった一連の手続きの必要性を説 明し、ISO 14064-2やGHG Protocol for Project Account-ingの要求に沿った電気・電子製品向けのガイダンスを記 載している)。これら3つの中での大きな違いは、電気電 子製品やシステム(IEC 2014)、高性能製品の導入台数も 含めて削減効果を有する1つのプロジェクトとして設定す ることでベースラインと比較しているのに対し、情報通信 技術(ITU 2012)とITソリューション(JEITA 2017)は、 機能単位あたりの削減効果量に活動量を乗じる点である。 これは前者の手法論はCDMに端を発する文脈に沿ってい る一方、後者の手法論はLCAに基づいていることに由来 すると考えられた。情報通信技術(ITU 2012)では、中 間部品についても言及しているものの、削減効果を発揮す る製品の特定や、その製品普及量と中間部品普及量との間 の関係性に対する言及のみであり、寄与率に関する記載は ない。また、ITソリューション(JEITA 2017)では、ク レジットの発行は目的としておらず、個別にプロジェクト を対象とする評価が先述のように煩雑であるため、簡易化 するアプローチを整備している点が特長である。なお、電 気電子の最終製品やITソリューションを含めて、関連工 業会で構成する「電機・電子温暖化対策連絡会」は、上述 のガイドライン等を踏まえた方法論を策定・公表し、実際 に、低炭素社会実行計画の中でそれらの削減貢献量を算定 している。 2.5 自治体による取り組み  各業界とは異なるアプローチとして自治体による取り組 みがある。川崎市は、世界に先駆けて、市内事業者の製品 やサービスが市域外で温室効果ガス排出の削減に寄与して いる域外貢献量を算定するためのガイドラインを公表した (川崎市2009)。先述の川崎市とともに滋賀県においても 類似の取組みをおこなっており、算定の手引き(滋賀県 2013)が公表されている。 2.6 目的に応じたガイダンス等の選択と課題  削減貢献量算定における問題として、市場を介した影響 があるためconsequential LCA(Zamagni et al. 2014)に よる評価が望まれるが、その影響がわからないために attributional LCAが用いられていることをWRI(2019)が 指摘している。この点はAEF(Mission Innovation 2020) では、attributional LCAであるものの、普及量に応じて 削減原単位が変わるかもしれないことに留意するよう記さ れている。WRI報告書(2019)では、顧客が自身の調達 決定のscope 3関連事項を把握するのに役立つ場合に限り、 scope 3でのシステム境界に限る意味で積極的にattribu-tional LCAを使うべきとしている。指摘のように、ほと んどの算定ガイダンスはattributional LCAを採用してお り、consequential LCAによる評価を採用している例は著 者らが知る限り”Greenhouse Gas Protocol Policy and Action Standard (WRI 2014)”だけである。本規格は、 特定の政策や措置によるGHG影響を評価する助けであり、 その結果から政策決定者等が影響をより良く理解するため の助けでもある。本規格の使用者には、政府やGHG削減 プロジェクトの予算執行団体、さらには、企業等において も個別プロジェクトよりも大きな取組みの場合などを想定 すると記されている。また、GHG protocol for project accounting (WRI & WBCSD 2006)との関係として、よ り大きなスケールの取り組みを対象としていると明記され ており、ここまでに記述してきた内容も含めてまとめると、 GHG削減に寄与する評価対象ならびにそれによる影響の 複雑さの観点から、表1のように整理できると考えられる。  このようなガイダンス等の整備とともに、近年、多くの 企業が温室効果ガス排出の削減貢献量の主張を試みている。 その中には、IEC TR 62726のように、製品をベースとし ながらもプロジェクトとみなす方が望ましい取り組みもあ ると考えられる。ただし、プロジェクトを対象としたガイ ダンスは、表1にまとめたようにその効果量をクレジット として発行することを目的としているため、温室効果ガス 排出の削減貢献量の主張を目的にクレジットの発行を目的 としたガイダンス等は必ずしも必要ではない。その意味に おいては、ITソリューション(JEITA 2017)の事例は、 クレジット発行を目的に含めないプロジェクトによる削減 貢献量の定量のためのガイドラインとして好事例であると 言える。経済産業省のガイドライン(METI 2018)にお いても、削減貢献量と温室効果ガス排出削減量認証制度(J -クレジット制度等)に基づく「CO2クレジット(認証排

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出削減量)」は似た概念であるとした上で、削減貢献量に 含まれる排出削減プロジェクトからの温室効果ガス削減量 をCO2クレジットとして発行・取得するには制度に基づき 認証・検証などの手続きを経る必要があると、その違いを 明記している。クレジットの発行を目的として、温室効果 ガス排出の削減貢献量の主張を目的とするガイダンス等を 用いることは、算定結果の信頼性の観点から不十分である ことを理解すべきである。  一方、製品のガイダンスにおける課題として、1つの製 品の削減貢献量を算定の後、普及量を乗じる方法が一般的 であるのに対して、その普及規模に応じた二次的な効果な ど、機能単位あたりの削減量に単純に普及量を乗じたので は扱えない効果について、consequential LCAの採用など、 今後議論されていく必要があると考えられた。Conse-quential LCAに関する説明や議論については、日本語で はZamagni et al.(2014)、福島(2014)、英語ではConse-quential-LCA(2020)、Earle and Halog(2011)などがある。 3. 削減貢献量算定に関係する国際標準規格  削減貢献量の算定の特徴は、当該製品とベースラインの 環境負荷の差を算定することにある。表2に示すように、 製品及びサービスと組織の「環境負荷物質の量」を算定す る国際標準化機構(ISO)の規格はあるが、ベースライン との差である「削減貢献量」の算定方法を示す国際標準化 機構(International Organization for Standardization: ISO)の規格はまだ存在しない。昨年(2020年)に作成作 業が始まったISO14068(カーボンニュートラリテイ)の中 で、削減貢献量の算定方法を記述するかどうか議論されて いる最中である。  ISO14068(カーボンニュートラリテイ)の規格は、カー ボンオフセットを中心として、製品または組織がカーボン ニュートラルであることを算定する方法とその開示方法を 示す規格として英国の提案で始まった。当初は削減貢献量 の算定は含まれていなかったが、規格作成作業に加わった 複数国の専門家(エキスパート)から、企業の自主的な削 減努力を示す削減貢献量を加えるべきという意見が出され、 検討されることになった。削減貢献量はイノベーティブな 製品やサービスの開発を訴求する方法として、カーボン ニュートラリテイに向かう「トランジション」の段階では 認めるべきという好意的意見がある反面、机上に計算で あって実際にGHG排出量を削減しているわけではないと いう反論、「ダブルカウント」が生じやすいという反論が ある。  ISO-14064-2:2006(プロジェクトにおける温室効果ガス の排出量の削減又は吸収量の定量化、モニタリング及び報 告のための使用並びに手引き)は、既存のISOの中でベー スラインとの差を算定することが書かれている唯一の国際 標準規格である。京都議定書に規定されたクリーン開発メ カニズム(CDM)で実施される開発計画(プロジェクト) の様な、省エネルギーや再エネ導入プロジェクト実施によ るGHG排出削減量を算定する方法であり、GHG削減クレ ジットを算定する基本的な方法と理解されている。  ライフサイクルでのGHG排出量を過去の同等の製品と 比較する方法は、「カーボンフットプリント」として知ら れるISO14067:2018(製品のカーボンフットプリント-算 定のための要求事項及び指針)に「パーフォーマンストラッ キング」として紹介されている。この規格はSCOPE3と協 調するように作成されている。過去の製品のGHG排出量 表 1 評価対象の違いによるさまざまなガイダンス等の違い 評価対象 製品 プロジェクト 政策や取組 ガイダンス等 - Mission Innovation (2020) - 経済産業省(2018) - 日本LCA学会(2015) - 川崎市(2009) - 滋賀県(2013) - ISO14064-2 - GHG protocol for project accounting - Clean development mechanism proj-ect standard - GHG Protocol Policy and Action Standard (WRI 2014) LCAの適用 Attributional LCA ライフサイクル思考が必ずしも必須では ない ライフサイクルを通した影響の考慮も 推奨される Consequential LCA 算定式 式1 [排出量削減量] = [ベースライン排出量] -[プロジェク ト排出量] [GHG排出量変化量]= [政策シナリオ排出量]-[ベースライ ンシナリオ排出量] 特徴 部品や素材が評価対象である場合に寄 与割合が必要である。 単位機能あたりの削減貢献量に乗じる 普及量が必要である。 対象とするプロジェクトをよく定義し、 それによる影響を網羅することが要求さ れる。 クレジットの発行を目的としている。 排出も吸収も考慮し、増加することも 想定しているため、引き算の前後が他 と逆順になっている。

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と併記することが書かれているが、その差を削減量として 算定することには言及していない。  一方、電気技術分野の国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission:IEC)では、IEC/TR 62726:2014(電子電気機器及びシステムのベースライン との比較によるGHG排出削減量の定量化のガイダンス) を発行し、省エネ機器や低炭素技術への代替による削減貢 献量等の算定が進められている。さらに、昨年(2020年) 12月には、IoTソリューション等の削減貢献の算定もでき るように、同規格を拡張する新たな国際標準規格を作成す ることが決定された。電子電気技術の分野では、今後、製 品及びサービスの削減貢献量の算定が拡大するものと思わ れる。  以上のように、「製品及びサービス」の削減貢献量につ いては、IECが国際標準規格を既に発行済みであり、ISO も新規格であるISO14068(カーボンニュートラリティ)の 中で議論を開始した。そこでは「企業等の組織」の削減貢 献量も同時に議論されている。企業が製造する多種多様な 製品及びサービスの集計方法など「組織の削減貢献量」に は困難な技術的課題がある。しかし、ゼロカーボンを目指 す国際的活動が推進される中で、その算定方法と誤解を招 かないコミュニケーションの方法が、ISO及びIECの場で 今後さらに議論されて行くように思われる。 4. おわりに  温室効果ガス排出削減量の評価において、基本となる機 能単位あたりの温室効果ガス排出削減量の算定はこれまで のLCAにおける知見やデータなどの蓄積が大いに役に立つ。 一方で、社会全体での効果を論じる上で注意が必要な点は 多く、そうしたことを踏まえながら評価の実施者が温室効 果ガス排出削減量の算定を進める上では本稿で紹介した 様々なガイダンス等は大きな支えとなるが、2章でも紹介 したようにそれぞれのガイダンス等はそれぞれ目的に適し たものを選定する必要がある。本稿での各ガイダンス等の 整理がその一助となれば幸いである。  本稿で紹介した温室効果ガス排出削減量の評価に関わる ガイダンス等はそれぞれにおいて十分に検討されたもので あるが、個々の事例に適用した際に様々な課題が見えてく ることはあり得る。ガイダンス等の整備に比べて、適用事 例に関する議論はまだまだ不十分であり、これらのガイダ ンス等を活用した様々な温室効果ガス排出削減貢献量の評 価事例が報告・議論されることで、こうした方法論も成熟 していくものと期待される。  温室効果ガス排出削減貢献量は算定・評価することに加 えて、その結果の活用方法が十分に議論されることで、よ り社会における温室効果ガス排出削減につながると考えら れる。これまでのガイダンス等は主に温室効果ガス排出削 減貢献量の算定方法を対象としたものであったが、3章で も紹介したようにカーボンニュートラリティなどゼロカー ボン社会を目指す社会的な動きの中でその役割や活用方法 について議論が不可欠である。ダブルカウントやグリーン ウオッシュなどの懸念がある一方で、様々な革新的な技術 や温室効果ガス排出削減につながる製品等の普及を加速す る上で、温室効果ガス排出削減量の評価が果たすべき役割 も重要である。温室効果ガスの排出削減量の算定結果につ いて誤解を招かないような活用方法や、どのようなコミュ ニケーションに用いていくのかについても今後議論が深ま ることを期待する。 謝辞  本記事の内容に関して、コメントいただきました一般社 団法人エネルギー経済研究所理事、電力・新エネルギーユ ニット 担任工藤拓毅氏、一般社団法人日本電機工業会環 境部 齋藤潔氏に御礼申し上げます。 (2021年2月5日受付) 参照文献 C D M - E B65- A05- S T A N (2021), S t a n d a r d - C l e a n development mechanism project standard Version 02.1., CDMホ ー ム ペ ー ジ, 入 手 先 < https://cdm. unfccc.int/Reference/Standards/pp/pp_stan01.pdf>, (参照2020-12-15) C o n s e q u e n t i a l - L C A (2020), W h y a n d w h e n ? , Consequential-LCAホームページ, 入手先 <https:// 表 2 環境負荷物質の定量化に関するISO規格 製品及びサービス 組織 GHGのみ ISO14067:2018製品の(カーボンフットプリント-算定の ための要求事項及び指針) ISO/TR14069:2013(組織の温室効果ガス排出量の定量化 と報告-ISO14064-1の適用のための手引き) 多様な環境負荷 ISO14040:2006(LCA-原則及び枠組み) ISO14044:2006(LCA-要求事項及び指針) ISO/TS14072:2014(LCA-組織のLCAに関する要求事項 及び指針)

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consequential-lca.org/clca/why-and-when/>,(参照 2021-01-19) Earles J.M., Halog A. (2011): Int. J. LCA, 16(5),445-453 ICCA (International Congress and Convention Association),WBCSD (The World Business Council for Sustainable Development) (2017), Avoided Greenhouse Gas Emissions The Essential Role of Chemicals Guidelines, ICCAホームページ, 入手先 < https://icca-chem.org/wp-content/uploads/2020/05/ ICCA-2017_Addressing_guidelines_WEB.pdf>, (参照 2020-12-15) I C C A (2009), I n n o v a t i o n s f o r G r e e n h o u s e G a s Reductions -A life cycle quantification of carbon abatement solutions enabled by the chemical industry, 一般社団法人日本化学工業協会ホームペー ジ, 入 手 先 <https://www.nikkakyo.org/sites/ default/files/icca_LCA_report2009_en.pdf>,(参照 2021-01-19) I E C T R 62726 (2014), G u i d a n c e o n q u a n t i f y i n g greenhouse gas emission reductions from the baseline for electrical and electronic products and systems, Webstoreホームページ, 入手先<https:// webstore.iec.ch/publication/7401>,(参照2020-12-15) ITU (The International Telecommunication Union) ( 2 0 1 2 ), I T U - T L . 1 4 1 0 . ( 0 3 / 2 0 1 2 ) TELECOMMUNICATION STANDARDIZATION SECTOR OF ITU - SERIES L: CONSTRUCTION, INSTALLATION AND PROTECTION OF CABLES AND OTHER ELEMENTS OF OUTSIDE PLANT - M e t h o d o l o g y f o r t h e a s s e s s m e n t o f t h e e n v i r o n m e n t a l i m p a c t o f i n f o r m a t i o n a n d communication technology goods, networks and services, ITUホームページ, 入手先 <https://www. itu.int/rec/dologin_pub.asp?lang=e&id=T-REC- L.1410-201203-S!!PDF-E&type=items>,(参照2020-12-15) JAPIA (Japan Auto Parts Industries Association) (2016), JAPIA LCI算出ガイドライン第二版, JAPIA ホームページ, 入手先 < https://www.japia.or.jp/ files/user/japia/work/kankyo/No21-1_JAPIA.pdf>, (参照2020-12-15) JEITA (Japan Electronics and Information Technology Industries Association) (2012), 製品のCO2排出抑制 貢献量に対する半導体・電子部品の寄与率算定の考 え方, JEITAホームページ, 入手先 <http://www. d e n k i - d e n s h i . j p / d o w n _ p d f . p h p ? f = p d f2014/ Guidelines_for_device_contribution.pdf>, (参照2020-12-15) JEITA (Japan Electronics and Information Technology Industries Association) (2017), ITソリューション によるCO2排出抑制量定量化のためのフレームワーク に関する報告書~算定・集計のアンブレラ的手法~ , JEITAホームページ,入手先 <https://home.jeita.or. jp/greenit-pc/contribution/pdf/it-framework.pdf>, (参照2020-12-15) Mission Innovation (2020), The Avoided Emissions Framework (AEF), Mission Innovationホームペー ジ, 入手先 <https://www.misolutionframework.net/ pdf/Net-Zero_Innovation_Module_2-The_Avoided_ Emissions_Framework_(AEF)-v2.pdf>,(参照2020-12-20) WRI (World Resource Institute) (2014), Policy and Action Standard -An accounting and reporting standard for estimating the greenhouse gas effects of policies and actions, Greenhouse Gas Protocolホー ムページ, 入手先 < https://ghgprotocol.org/sites/ default/files/standards/Policy%20and%20Action%20 Standard.pdf >, (参照2020-12-08) WRI (2019): ESTIMATING AND REPORTING THE COMPARATIVE EMISSIONS IMPACTS OF PRODUCTS, Greenhouse Gas Protocolホームページ, 入手先 < https://ghgprotocol.org/sites/default/ files/standards/18_WP_Comparative-Emissions_ final.pdf>, (参照2020-12-15) WRI & WBCSD (2006): The GHG protocol for project accounting, Greenhouse Gas Protocolホームページ, 入手先 < https://ghgprotocol.org/sites/default/ files/standards/ghg_project_accounting.pdf>, (参照 2020-12-15) Zamagni A., Guinee J., Heijungs R., Masoni P., Raggi A., 稲葉敦(訳), 中谷準(訳) (2014): 日本LCA学会誌, 10 (3), 213-229 滋賀県 (2013), 滋賀県製品等を通じた貢献量評価手法算定 の手引き<解説編>, 滋賀県ホームページ, 入手先 < h t t p s : / / w w w . p r e f . s h i g a . l g . j p / f i l e / attachment/47441.pdf>, (参照2020-12-08) 川崎市 (2009), 温室効果ガス削減に向けた川崎市の新たな 取組-域外貢献量算定ガイドライン, 低CO2川崎ブラ ンド等推進協議会事務ホームページ, 入手先 <http:// w w w . k - c o2b r a n d . c o m / a p p l y / f i l e /2019/ mechanismguidline.pdf>, (参照2020-12-08) 日本LCA学会 (2015), 温室効果ガス排出削減貢献量算定ガ

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Guidance/Guidelines and their Features on Assessing the Contribution of Products to

Avoided Greenhouse Gas Emissions

Ichiro DAIGO

1

, Masaharu MOTOSHITA

2,*

and Atsushi INABA

3

1 The University of Tokyo, 2 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 3 Japan Life Cycle Assessment Facilitation Centre

Corresponding author: [email protected]

[Commentary and Discussion]

Synopsis: It is crucial to spread the products that reduce Greenhouse Gas (GHG) emissions to achieve the ambitious target towards the decarbonized society. Life Cycle Assessment (LCA) can support the obtaining of a market for such products by quantifying the avoided GHG emissions through the life cycle. At the same time, there are some additional points to be noted when assessing a product's contribution to the reduced GHG emission in society. Several guidance and guidelines summarize the principles, requirements, and recommendations for assessing the contribution to avoided GHG emissions. In this article, we introduce the existing relevant guidance and guidelines published by different entities and some international standards related to the assessment of the contribution of products and/or projects to avoided emissions. We summarize the characteristic points of them from some aspects (targets of the assessment, application of LCA, calculation approaches, specific features), which will support the practitioners to select the appropriate references according to the scope of their assessment. Keywords: project accounting; product contribution; carbon neutrality; attributional LCA; consequential LCA

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