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佐藤郁哉著『社会調査の考え方』(上・下)

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Academic year: 2021

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(1)

佐藤郁哉著『社会調査の考え方』(上・下)

著者

浅羽 祐樹

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジア経済

57

3

ページ

89-89

発行年

2016-09

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00018756

(2)

89 『アジア経済』LⅦ-3(2016.9) 紹   介

『社会調査の考え方』

(上・下)

車も家電も競合他社の新製品が出ると,各メーカ ーはすぐに部品の一つひとつにまで解体し,しらみ つぶしに調べ上げる。市場における自社のポジショ ンやマーケティング戦略,ときに経営のあり方その ものを見直すためだ。研究でも,論文や本という最 終生産物からデータ,理論や方法,さらにリサー チ・デザインへと逆向きにたどる「リバース・エン ジニアリング」が生き残りに欠かせない。本書では, 通常「部外秘」になっている制作の全工程が惜しげ もなく公開されている。 独自ブランドのオーナーも最初は既製品のユーザ ーや製造ラインの工員だった。だが,その頃から常 に,眼前の仕事をこなすだけでなく,先を見据えて 製造から販売,人事まで構想していた。まずは習/ 倣うことで独り立ちする。そのうちコラボレーショ ンにも声がかかるようになると,使えるソルジャー4 4 4 4 4 4 4 4 であることを示しつつ,チーム編成のあり方として も参照する。ついに,単独で行うか,チームを組む か,適時選択できるようになる。それが著者の提唱 する「漸次構造化アプローチ」である。 リサーチ・クエスチョンや仮説の設定,データ収 集,データ分析と仮説検証,論文の執筆という一連 の研究プロセスについて,ひとつの工程が全部済ん でから次の段階に移っていく「各時期完結型」はキ4 レイに4 4 4映るかもしれない。前工程のやり直しはあり えず,当初の計画どおり進むのが理想とされる。実 際,そんなことはまずなく,あったとしてもむしろ 凡庸な結末になってしまう。それよりも,すべての 工程に最初から同時に取り組み,データに照らし合 わせながら「問い」と「答え」の組み合わせを何度 でも修正していくのが普通だし,その方が創発も期 待できる。当然,試行錯誤することはビルトインさ れていて,だからこそ「ニュース」(新しい知見) 浅 あさ 羽ば 祐ゆう 樹き

佐藤郁哉著

東京大学出版会 (上) 2015 年 ⅹ+ 297 ページ  (下) 2015 年 ⅳ+ 348 ページ に漸近していく。反証可能性を担保し,検証を重ね るのは,そもそも研究者コミュニティの構造や歴史 そのものである。 論文の執筆についても同様で,「問題・方法・結 果・考察」という定式どおりには進まない。読み手 としては「鬼という問題があり,桃太郎が立ち向か う。きび団子でイヌ・サル・キジを仲間にし,鬼ヶ 島に渡る。見事,鬼を退治し,村は助かった」とい う筋書だとストンと理解できるため,書き手として も最終的にはそのような体裁に仕上げるべきである。 とはいえ,冒ク険=探究には,目的が当初明確でなかエ ス ト ったり,仲間探しやレベル上げという地道な努力が 避けられなかったりするものである。クリアする前 は,小さなヒントも攻略ノートに書き込み,手探り で進んでいくしかないが,いざ凱旋を果たすと英雄 譚は,世界を救う運命だった,と伝承されるもので ある。「調査を始める前に論文を書いてしまえ」と さえ著者は助言する。漸次,書き直していく以上, 暫時,それで構わないというわけである。 この漸次構造化アプローチは,完成品の品評会と しての学会では無理でも,(クローズドな)セミナ ーや授業などの場で手の内を明かすフォーマットと しても活用できる。たとえば曽我謙悟・京都大学大 学院法学研究科教授は学部ゼミ(http://soga.law. kyoto-u.ac.jp/?p=92)で一学期をかけて砂原庸介 「事業廃止の政治学」(『年報政治学』2008-Ⅱ)を解 体・再現させたうえで,最終回に砂原本人を教室に 招いて挑戦させている。評者のいる大学院でも,教 員がそれぞれ自らの論文をもとに,制作の全工程を 大学院生と同僚に示す試みを始めている。 本書では,実験,サーベイ,フィールドワーク, 文献調査などさまざまな方法についても詳述されて いるが,「社会調査の方法4 4」ではなく「社会調査の 考え方4 4 4」と題されているのは,漸次構造化アプロー チによって「問いを育て,仮説をきたえる」ことを 何よりも重視しているからである。研究(者)にお ける「理論・データ・方法」「サイエンス(論理 性)・アート(創造性/感性)・クラフト(熟練/経 験値)」というトライアングルは,一時的な均衡の 崩れと再均衡化を繰り返しながらともに進化してい くのだ。 (新潟県立大学大学院国際地域学研究科教授)

参照

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