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国土地理院時報: 第126集

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平成

26 年 8 月豪雨災害に関する国土地理院の対応

Responses of GSI to the heavy rain disaster in August 2014

企画部 防災推進室

Planning Department Disaster Management Office

要 旨 国土地理院は,大規模自然災害の発生時において 救命・救助活動及び復興に寄与するため,関係機関 へ地理空間情報の提供を行っている。平成 26 年 8 月豪雨についても,国土交通本省をはじめとする関 係行政機関(以下「関係機関」という.)からの要請 に応じて地理空間情報を提供した.本稿ではその取 り組みについて報告する. 1. 平成 26 年 8 月豪雨の概要 平成26 年 8 月豪雨(以下「8 月豪雨」という.) は,台風第12 号及び台風第 11 号が相次いで接近す るとともに,前線が日本付近に停滞し,暖かく非常 に湿った空気の流れ込みが継続したため大雨となり, 日本各地に甚大な被害をもたらした(図-1).特に広 島県広島市では,8 月 19 日から 20 日明け方にかけ, 1 時間降水量,3 時間降水量及び 24 時間降水量が観 測史上1位の記録を更新する猛烈な雨となり,広島 市北部の安佐北区や安佐南区の住宅街を中心に多く の土砂災害が発生し,死者74 名の被害をもたらした (図-2). 図-1 平成 26 年 8 月 19 日 21 時の天気図 (広島地方気象台 8 月 20 日 14 時現在の 気象速報より) 図-2 広島市の土砂災害 2. 国土地理院の主な対応 8 月豪雨に関する国土地理院の対応は,台風 12 号・11 号の大雨等による被害に対応する 8 月 3 日の 注意体制から始まった(表-1).台風による体制を一 時解除したものの,8 月 20 日に広島市の土砂災害に 対し,8 時 21 分非常体制に入り,8 月豪雨の対応を実 施した(図-3). 図-3 災害対策本部会議 8 月豪雨における対応は連続して発生した自然災 害に対応するもので,各災害時における対応の概要 は以下のとおりである. 2.1 高知土砂災害等の対応 8 月 13 日に測量用航空機「くにかぜⅢ」(以下「く にかぜⅢ」という.)により高知県北川村について, 斜め写真及び垂直写真の緊急撮影を実施し,応急・ 復旧のため,関係機関へ提供した.

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2.2 兵庫及び京都土砂災害等の対応 16 日から 17 日にかけ,西日本を中心に降った豪 雨により,兵庫県丹波市,京都府福知山市で土砂災 害及び浸水被害発生し,19 日に「くにかぜⅢ」によ り緊急撮影を実施した. 2.3 広島土砂災害等の対応 8 月 20 日に広島市で土砂災害が発生したとの一報 を受け,現地の被災状況を確認するため,「くにかぜ Ⅲ」により,同日被災地の斜め写真(図-2)を撮影 し,関係機関へ提供した. また,広島土砂災害においては8 月 20 日に政府の 現地対策本部が設置され,国土地理院から本部員1 名,リエゾンとして専門家11 名(述べ 22 名)を派 遣し,現地活動における地理空間情報の提供要望に こたえ,災害対応に貢献した(図-4). 図-4 広島市災害対策室 2.4 北海道土砂災害等の対応 8 月 24 日に発生した北海道地方の記録的大雨によ り,礼文島(礼文郡礼文町)において土砂災害が発 生した.この災害においては9 月 3 日に垂直写真を 撮影し関係機関への提供を実施した. 2.5 各部の対応 8 月豪雨における各部の主な対応は,以下のとお りとなる. 1) 基本図情報部 「くにかぜⅢ」による垂直写真,斜め写真の撮 影及び提供する画像データの作成 2) 応用地理部 写真判読図の作成 3) 地理空間情報部 作成した各種データのホームページ上での提 供,3D 地図及び立体模型の作成 4) 地理地殻活動研究センター 斜め写真からの正射画像の作成 5) 中国地方測量部 災害対策図等の提供 3. まとめ 国土地理院は,災害対策基本法の指定行政機関と しての責務を果たすべく,今回の風水害はもとより 今後発生が予想される東海地震や南海トラフ地震を はじめ,火山活動に対しても万全な体制を備える所 存である. 最後に本災害において被災された皆様方に心から お見舞い申し上げる. (公開日:平成26 年 12 月 26 日) 表-1 平成 26 年 8 月豪雨における主な国土地理院の対応

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平成

26 年 8 月豪雨災害に対する空中写真の撮影

Aerial photography of disaster areas of the heavy rain in August 2014

基本図情報部

災害対策班

National Mapping Department Countermeasures Group

要 旨 平成26(2014)年7月30日から8月26日にかけて, 日本列島各地に大きな被害をもたらした平成26年8 月豪雨に対する国土地理院基本図情報部(以下「当 部」という.)の災害対応について報告する. 1. はじめに 当部では災害発生時に現地の状況を迅速に把握す るため,空中写真の撮影を実施し,写真画像や正射 画像等の地理空間情報を提供している.これまでは, 主にデジタル航空カメラによる垂直写真の撮影を行 い,処理した画像を関係機関に提供してきたが,撮 影実施の可否や撮影した画像の状態が標準飛行高度 (対地高度:1,400m~2,800m 程度)下の雲の有無に 大きく左右されること及び画像生成処理に時間を要 することから,垂直写真の撮影のみでは航空機の機 動性や航続距離を活かし切れていないといった課題 があった.このうち風水害においては,発災直後に は雲の障害により垂直写真撮影に適さない天候とな ることが多いが,一刻も早く関係機関に現地の画像 を提供する観点から,雲下(対地高度:1,000m 以下) で飛行しても撮影可能かつ画像生成に特別の処理を 要しないデジタル一眼レフカメラを用いた斜め写真 撮影に今年度から本格的に取り組んできた.平成26 年8 月豪雨は日本列島各地に大きな被害をもたらし たが,この間,当部災害対策班の測量調査チームに おいては,迅速性で優る斜め写真と,迅速性ではや や劣るが位置精度や解像度の高い垂直写真の撮影と を行い,写真画像,正射画像(簡易オルソ画像のこ とであるが,以下「正射画像」という.),正射写真 地図等を関係機関に提供した.さらに,作成した成 果は,地理空間情報部の協力を得て地理院地図より 公開した. 2. 平成 26 年 8 月豪雨で発生した各地の災害への対 応(8 月 8 日~9 月 4 日) 2.1 台風第 11 号による大雨等 8 月 8 日,台風第 11 号の予想進路上にあって大雨 の続く西日本方面で災害が発生した場合に機動的に 撮影できるよう,測量用航空機「くにかぜⅢ」(以下 「くにかぜⅢ」という.)を調布飛行場から八尾空港 に移動させた.12 日,大雨による土砂災害で 11 日 から一部集落が孤立している高知県北川村について 緊急撮影の実施が決定された.くにかぜⅢは,天候 の回復した13 日 9 時 52 分に八尾空港を離陸し,斜 め写真(216 枚)(写真-1)及び垂直写真(1 コース: 19 枚)(図-1)の撮影を実施し,12 時 6 分に八尾空 港に着陸した. 写真-1 斜め写真(北川村の法面崩壊付近拡大) 図-1 垂直写真の撮影範囲 八尾空港から直ちに斜め写真を国土地理院の大容 量ファイル転送システムで伝送,13 時 59 分に本院 で後続作業を完了させ,直ちに関係機関に提供した. 垂直写真については,撮影枚数が少なかったため, 斜め写真の伝送中に八尾空港で画像生成処理を行い, データ容量を小さくした上で本院へ伝送,16 時 18 分に位置情報を付与した垂直写真画像(Exif 形式) の作成を完了した.これらも直ちに関係機関に提供 した.さらに後続作業として正射画像の作成も 1723 分に作業を完了した.これら写真画像及び正射 画像は,地理院地図での公開に備えて,地理院マッ 位置図

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プシート(後述)を用いてKML ファイルを作成し, 18 時に外部公開用サーバに画像とともに格納し,公 開は地理空間情報部に引き継いだ.こうして,当日 中に作成した全ての画像を関係機関に提供するとと もに,地理院地図上で一般に公開することができた. ちなみに,この正射画像とは空中写真画像を地図 と重なるように歪みを補正したものをいうが,地図 に正射画像を重ね合わせると被災地の状況を一挙に 把握することが容易になるため,当部では一般の写 真画像と併せて迅速に作成するように努力している ところである.また,地理院マップシート(国土地 理院技術資料E1-No.328)とは,撮影画像の Exif の 情報(緯度,経度,日時,高度,方向)をエクセル の帳票に自動的に展開し(図-2),撮影位置等が地理 院地図で表示できるKML ファイルを作成するため の処理ツールのことである. 地理院地図で公開している撮影位置及び撮影方向 を表示した災害情報(地理院地図)のページを図-3 に示す. 図-2 Exif 情報を読み込んだエクセル帳票(地理院マッ プシート) 図-3 垂直写真の撮影位置と斜め写真の撮影位置及び方 向を示した地理院地図(高知県北川村) 2.2 8 月 16 日から続く大雨等 8 月 16 日から 17 日にかけて,近畿,北陸,東海 地方に降った大雨により兵庫県丹波市,京都府福知 山市で土砂災害や浸水被害が発生し,18 日夕刻にく にかぜⅢによる緊急撮影の実施が決定された.19 日 10 時 30 分に調布飛行場を離陸したくにかぜⅢは, 丹波市の斜め写真(37 枚)と垂直写真(3 コース: 46 枚)(図-4)(写真-2)及び福知山市の斜め写真(144 枚)を撮影し,八尾空港で一旦給油した後16 時 11 分に調布飛行場に戻った. 斜め写真については直ちに伝送を開始し,18 時 56 分には本院での後続作業も完了させた上で,直ちに 関係機関に提供した.また,垂直写真は,斜め写真 の伝送と並行して調布飛行場で画像生成処理を行っ た後に伝送し,19 時 21 分に位置情報付与の作業ま でを行った.標定図作成以降の作業は翌日実施とし, 9 時 49 分に完了させ,直ちに関係機関に提供した. さらに正射画像の作成作業は14時56分に完了させ, 直ちに関係機関に提供するとともに,これら垂直写 真画像や正射画像を地理院地図で公開するための作 業も並行して実施し,15 時 31 分に外部公開用サー バへの格納を完了し,公開は地理空間情報部に引き 継いだ. 図-4 垂直写真の撮影範囲(丹波市市島地区) 写真-2 垂直写真(国道 175 号八日市橋の落橋付近拡大) 2.3 8 月 19 日から続く大雨等 2.3.1 斜め写真の撮影(8 月 20 日・21 日) 丹波市及び福知山市の災害対応を行うなか,20 日 早朝に広島市で大規模な土砂災害が発生,甚大な被 害が発生しているという情報がもたらされた.8 時 30 分に緊急撮影の実施を直ちに決定,撮影の準備に 入った.被災箇所の情報収集を急ぐ一方,撮影チー ムは,くにかぜⅢに百里飛行場(茨城空港)で搭乗 するため本院を出発した.くにかぜⅢは,9 時 7 分 に調布飛行場を離陸し,撮影チームと合流後の 1010 分に百里飛行場を離陸して被災地へ向かった. 途中,八尾空港で給油する際に被災状況と斜め写真 位置図

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撮影の概ねのコースを本院から撮影チームに伝達, 13 時 30 分に八尾空港を離陸した.この時点におい ても被災箇所の情報が十分には得られていなかった ため,現地上空では被災箇所を確認しながら,被災 状況の全容を明らかにすべく,14 時 30 分に斜め写 真撮影を開始し,173 枚(写真-3,4)を撮影後,1541 分に北九州空港に着陸した.着陸後,北九州空 港から伝送を行い,18 時 19 分には後続作業まで完 了,直ちに斜め写真画像を関係機関に提供した.ま た,これら画像を地理院地図で公開するための作業 も実施し,21 時までに外部公開用サーバへの格納を 完了し,公開は地理空間情報部に引き継いだ. 写真-3 斜め写真(広島市安佐南区八木付近拡大) 写真-4 斜め写真(広島市安佐北区可部東付近) 翌日 21 日も垂直写真の撮影に適さない天候であ ったため,くにかぜⅢは9 時 30 分に北九州空港を離 陸後,中国地方整備局から要望があった地域を優先 に20 日の撮影地域を補完するように斜め写真(573 枚)を撮影し,12 時 27 分に北九州空港に着陸した. 着陸後直ちに伝送を開始したが,この日は撮影枚数 が多かったため,要望があった地域から優先順位を 付けて地区ごとに伝送を行うこととし,本院では並 行して後続作業を実施した.地区ごとに後続作業を 完了させた画像は,その都度直ちに関係機関に提供 したが(関係機関への提供は計318 枚),北九州空港 からの伝送においてファイルを選定しながらまとめ る作業やファイルの圧縮等で試行錯誤もあったこと から,全ての斜め写真の伝送が終了し,最後の地区 の作業が完了したのは19 時 24 分であった.最後の 地区についても直ちに関係機関に提供した.これら 斜め写真画像を地理院地図で公開するための作業も 並行して実施し,20 時 27 分に外部公開用サーバへ の格納を完了させ,公開は地理空間情報部に引き継 いだ. 2.3.2 垂直写真の撮影(8 月 28 日・30 日・31 日) 22 日から 27 日は,天候不良のため北九州空港に 待機した.解析等に必要な垂直写真撮影の要望が寄 せられるなか,28 日から 31 日にかけて,垂直写真 の撮影が実施できた. 28 日は,9 時 23 分に北九州空港を離陸し,被害の 大きい地域を中心とした全6 コース(354 枚)(図-5) の撮影を実施し,11 時 25 分に北九州空港に着陸し た.垂直写真はデータ容量が大きく,撮影枚数が多 い場合は画像生成処理及び伝送に時間がかかること から,28 日の撮影では,一部を北九州空港での現地 処理,残りを交代の撮影士が現地から生データを持 参して民間機で空輸する本院処理とし,それらの終 了時刻がほぼ同じとなるように各処理の負荷を調整 して画像生成処理を行った.この方法により,17 時 48 分に最優先の 3 コース分の垂直写真の作業を完了, 19 時 3 分に残り 3 コース分の垂直写真の作業を完了 させ,それぞれを直ちに関係機関に提供した. 図-5 垂直写真の撮影範囲(8 月 28 日撮影) 翌日の29 日は,正射画像(図-6)を作成し 18 時 53 分に作業を完了,直ちに関係機関に提供した.28 日撮影の垂直写真画像や正射画像を地理院地図で公 開するための作業も並行して実施し,19 時 35 分に 外部公開用サーバへの格納を完了させ,公開は地理 空間情報部に引き継いだ.また,広島市安佐南区の 八木地区及び緑井地区付近については,被害状況を より分かりやすい形で可視化するため,正射画像と 位置図

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基盤地図情報(建築物の外周線)及び地名等を重ね 合わせた正射写真地図を被災前と被災後で各 3 面 (1:2500 国土基本図図郭)作成し,関係機関に提供 した. 図-6 正射画像の作成範囲(8 月 28 日撮影) 28 日に撮影した垂直写真で雲の障害があった部 分と要望のあった安佐南区の山本地区周辺部分につ いて,全11 コースのコース設計を再度行った上で, くにかぜⅢは北九州空港に待機していたが,天候が 回復した30 日,8 時 42 分に北九州空港を離陸,11 コース(322 枚)(図-7)の撮影を実施し,11 時 11 分に北九州空港に着陸した.28 日と同様に現地処理6 コース分)と空輸後の本院処理(5 コース分)に 分けて後続作業を行った.この日は宅配業者により 民間機で空輸後,羽田空港で国土地理院職員が受け 取る方法としたため,28 日と比較して本院到着まで 1 時間半ほど多く運搬時間を要した.伝送の 6 コー ス分は18 時 4 分,空輸した 5 コース分は 20 時 56 分に作業を完了させ,それぞれ直ちに関係機関に提 供した.また,写真画像を地理院地図で公開するた めの作業も並行して実施し,21 時 27 分に外部公開 用サーバへの格納を完了し,公開は地理空間情報部 に引き継いだ. 翌日の31 日は,9 時 19 分に北九州空港を離陸, 30 日の撮影画像で雲が写り込んでいた 4 コース分 (96 枚)について再撮影を行い,10 時 57 分に北九 州空港に着陸した.画像生成処理は30 日撮影画像で 特に雲が多く,正射画像作成の上で優先度の高い 2 コース分から北九州空港で行い,画像が完成した順 に本院へ伝送した.正射画像作成は 8 時 30 分より 30 日撮影の画像を使用して着手していたが,優先度 の高い2 コース分の画像も合わせて使用して作成し た.標定図作成等の後続作業は,正射画像の作業進 捗に合わせて関係職員を招集し,19 時 25 分に垂直 写真,20 時 52 分に正射画像の作業を完了,それぞ れを直ちに関係機関に提供した.なお,地理院地図 に掲載するためのデータ作成は,翌日の9 月 1 日に 行い,9 時 55 分に外部公開用サーバへの格納を完了, 公開は地理空間情報部に引き継いだ. 図-7 垂直写真の撮影範囲(8 月 30 日,31 日撮影) 8 月 20 日の調布飛行場離陸から 10 日間以上に渡 り,北九州空港に進出していたくにかぜⅢは,途中, 現地撮影チームの交代を行いながら,9 月 1 日 11 時 30 分に北九州空港を離陸,名古屋飛行場経由で翌日 の9 月 2 日 10 時 53 分に調布飛行場に帰投した.さ らに,くにかぜⅢは,予定していた礼文島の撮影実 施に向け,12 時 53 分調布飛行場を離陸,16 時 4 分 に札幌(丘珠)飛行場へ進出した. 2.4 礼文島の撮影 8 月 24 日,北海道地方の記録的豪雨によって,礼 文島で土砂災害が発生した.くにかぜⅢは広島市の 土砂災害の撮影に派遣していたため,緊急撮影は実 施しなかったが,年度当初より北海道地方の垂直写 真撮影を計画していたことから,被災地区の撮影を 当初計画に追加して,垂直写真の撮影を行った.撮 影ができた場合,成果をなるべく早く道庁等の関係 機関に提供する観点から,緊急撮影に準じて作業す ることとした.9 月 3 日,札幌飛行場から稚内空港 に移動していたくにかぜⅢは,10 時 13 分に稚内空 港を離陸し,垂直写真の撮影(6 コース:165 枚)(図 -8)を実施,12 時 25 分に稚内空港に着陸した.画 像生成処理を行える場所が空港内にないため,北海 道宗谷総合振興局地域施策部に場所提供のご協力を 得て,画像生成処理を行った.生成した画像全ての 伝送は長時間に及ぶため,低解像度画像のみを伝送 し,高解像度画像は北海道地方測量部へ宅配業者に 位置図

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より翌朝着で送付,インターネット経由で国土地理 院(茨城県つくば市)へ伝送するという方法とした. 翌日,正射画像作成や地理院地図掲載用のデータ作 成等の後続作業を行い,10 時 36 分に垂直写真,1702 分に正射画像を完成させ,その後関係機関に提 供した. 図-8 垂直写真の撮影範囲(礼文島全域) 3. 報道発表 8 月 19 日に撮影した兵庫県丹波市と京都府福知山 市の空中写真及び 20 日に撮影した広島市の空中写 真について,国土地理院の地理院地図で公開する旨 を21 日 14 時に発表した.空中写真の公開は,現地 の被災状況を心配されている国民の皆様への直接の 情報提供や関係機関が行う今後の対応等についての 検討などに対する情報提供を目的に行っている.本 件に対する反響は大きく,報道機関からの問合せは, 当部だけでも発表後 2 日間で約 30 件にのぼった.ま た,テレビ,新聞等が報道したことで,国土地理院 の地理院地図へのアクセスが集中し,一時つながり にくい状態となった. 4. 提供までの所要時間 本災害では,くにかぜⅢにより斜め写真及び垂直 写真の撮影を行い,垂直写真から正射画像の作成も 行った.写真画像は標定図作成等の後続作業を完了 したのち,直ちに関係機関に提供を行っているが, くにかぜⅢが拠点空港へ着陸後,当部において関係 機関に提供するデータを完成させるまでに要した時 間を表-1 に示す. 5.まとめ 当部では,今回の災害対応において,斜め写真, 垂直写真及び正射画像等の地理空間情報について, 一部を除き当日中に関係機関に提供するとともに, 地理空間情報部の協力を得て地理院地図で一般に公 開した.今回の対応は,斜め写真の撮影訓練を含め, 平常時における部内の訓練により,大きな遅滞が発 生することなく任務を遂行できた.また,垂直写真 の画像生成処理を現地で実施することで伝送時間の 短縮を図るとともに,途中工程も極力自動化するな ど作業効率を向上させてきた.一方,斜め写真につ いては,マニュアルの整備や広域で災害が発生した 場合の対応方法の確立が急がれるとともに,後続の 写真処理により正射画像や 3D モデルの作成が技術 的に可能となってきている(実際に後日発生した別 の災害においては,斜め写真から正射画像を当部に おいて作成している)ことから,それらに対応可能 な撮影方法を検討する必要がある. 今後も速報としての斜め写真提供と高精度な垂直 写真提供をより迅速に進めるため,訓練等を行い災 害対応の緊急撮影に活かしていく予定である. 表-1 斜め写真の提供までの所要時間 地区名 枚数 空港 時間 北川村 216 八尾 1 時間 53 分 丹波福知山 181 調布 2 時間 45 分 広島(8/20) 173 北九州 2 時間 38 分 広島(8/21) 573 北九州 6 時間 57 分 表-2 垂直写真及び正射画像提供までの所要時間 地区名 枚数 垂直写真 正射画像 北川村 19 4 時間 12 分 5 時間 17 分 丹波福知山 46 4 時間 29 分※ 9 時間 36 分※ 広島(8/28) C2~C4 193 6 時間 23 分 18 時間1 分※ 広島(8/28) C1~C5・6 161 7 時間 38 分 広島(8/30) C1~C6 207 6 時間 53 分 21 時間 44 分 ※ 広島(8/30) C7~C11 115 9 時間 45 分 広島(8/31) C7~C10 96 3 時間 55 分 礼文島 165 6 時間 6 分※ 13 時間4 分※ ※翌日に作業している場合は,実働時間で算出. (公開日:平成26 年 12 月 26 日) 参考文献 久保 領一,畠山 真介,中埜 貴元(2014):測量用航空機からの斜め写真を用いた迅速な被災情報提供の 取り組み,平成26 年度国土交通省国土技術研究会論文集 pp19-22 位置図

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写真-1 8 月 20 日撮影空中写真 図-1 斜め写真による判読図

平成

26 年 8 月豪雨災害に関する土砂流出範囲写真判読図の作成

Preparation of Debris Flow Distribution Map in Northern Area of Hiroshima City by Aerial

Photo Interpretation of the Heavy Rain Disaster in August 2014

応用地理部 災害対策班

Geographic Department Disaster Countermeasures Group

要 旨 応用地理部は,平成26 年 8 月に日本列島(特に広 島市)に被害をもたらした「平成26 年 8 月豪雨」に おける被災状況の把握のため,写真判読等を行って 土砂流出範囲図を作成し,公開したので報告する. 1. はじめに 8 月豪雨では特に広島市安佐北区及び安佐南区の 国道 54 号線沿いの山地において発生した土砂流出 によって,山麓の市街地に土砂が流入した. 応用地理部では被害の実態を明らかにするととも に救助や復旧作業に使用していただくことを目的と して,土砂流出範囲の写真判読と数値データ作成等 を行い,土砂流出範囲写真判読図及び数値データを 関係機関に提供するとともに,地理院地図で公開し た. 2. 土砂流出範囲の判読図の作成 今回の豪雨災害における被害は,斜面崩壊による 土砂流出によるものであったことから,くにかぜIII が撮影した斜め写真及び垂直写真を用いて応用地理 部災害対策班の写真判読班が土砂流出範囲の判読を 行い,その結果を数値データ作成班が数値化(GIS データ)作業を行った. 2.1 8 月 20 日 21 日撮影斜め写真による判読 8 月 20 日及び 21 日に撮影した斜め写真(写真-1) を基に土砂流出範囲の判読を行い,国土地理院が開 発した地理院地図キット(マップメーカー)を用い てKML 形式のデータファイルを作成し,8 月 22 日 に関係機関にA0 判の「写真判読図」(図-1)として 提供するとともに,地理院地図を通じて公開した. 判読に使用した斜め写真は,デジタル一眼レフカ メラにより撮影したものである.本カメラには GNSS 測位装置が備えられており,撮影した写真 (JPEG 画像)の Exif 情報には GNSS 測位装置から 得られる撮影位置と方位が記録されることから,写 真とともに提供される標定図では撮影方向を矢印で 表示した撮影地点情報が表示される.これを用いて 地上位置と方向を地図上で同定することが容易にで きるので判読作業に迅速に着手できるようになった. 2.2 8 月 28 日 30 日 31 日撮影垂直写真による判読 斜め写真と同様に,8 月 28 日,30 日及び 31 日に 撮影した垂直写真を用いて判読図(図-2)を作成し, 9 月 2 日に公開した.本図の作成中に垂直写真を基 にした正射画像が作成されたので,GIS ソフトを用 いて確認作業を行い,最終公開データとした.

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写真-2 8 月 28 日撮影垂直写真の正射画像 豪雨災害後の垂直撮影は撮影高度の関係及び天候 の関係から雲の影響が避けられず,今回撮影したも のでも雲の影響の残るところがあった(写真2)が, これについては 21 日までに撮影された斜め写真で 補完することで,対象区域全体の判読図(図-3)を 作成した. 3. まとめ 応用地理部では,土砂流出により大きな被害を受 けた地域の写真を判読し,緊急情報提供資料として 公開した.斜め写真による場合は撮影地点と地表の 関係から十分に判読できない箇所も存在するが,迅 速性の観点から早期の情報提供が可能となった.ま た,垂直写真を用いた場合でも,緊急撮影であるこ とから雲の影響が残ることから,斜め写真による判 読結果を併用してできるだけ速やかな情報提供を目 指した.今後も積極的に災害情報の集約につとめ, 速やかな情報提供を行っていく. (公開日:平成26 年 12 月 26 日) 図-2 垂直写真による判読図

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平成

26 年 8 月豪雨災害における地理空間情報部の対応

Responses of the Geospatial Information Dept. of GSI to the heavy rain disaster in August 2014

地理空間情報部 災害対策班

Geospatial

information Department Disaster Countermeasures Group

要 旨 平成26 年 8 月豪雨(広島市内)における地理空間 情報部の災害対応について報告する. 1. はじめに 地理空間情報部では,被災地区を撮影した空中写 真等の各種地理空間情報を地理院地図から公開する とともに,既存空中写真や3D 地図(立体模型)の 関係機関への提供等の対応を実施した. 2. 地理院地図から公開した地理空間情報 8 月 21 日より順次,各種地理空間情報を地理院地 図に掲載・公開した. 具体には地理院地図の左メニ ューの防災タブに「8 月 16 日からの大雨」「広島市 内」を新規作成し,各種地理空間情報を追加した. 2.1 8 月 21 日・22 日に公開した地理空間情報 1) 8 月 20 日・21 日に撮影した斜め写真 8 月 20 日・21 日に撮影した斜め写真を 8 月 21 日 に公開した.撮影した地点をカメラ方向のアイコン で表示し,そのアイコンをクリックすることにより 斜め写真(全107 枚)が表示される.(図-1) 図-1 8 月 20 日に撮影した斜め写真 2) 過去に撮影した空中写真 2005 年から 2009 年に撮影した空中写真 5 枚を 8 月22 日に公開した. 3) 斜め写真による正射画像タイル 3 地区 8 月 20 日に撮影した斜め写真から作成した正射画 像タイル(安佐南区八木・山本,安佐北区可部の3 地区)を8 月 21 日・22 日に公開した(図-2). 図-2 斜め写真による正射画像タイル 2.2 8 月 25 日・28 日に公開した地理空間情報 過去に撮影した空中写真(3 枚.1948 年)を 8 月 25 日に公開した. 8 月 20 日撮影斜め写真から作成した3D 地図(立 体図)(八木・緑井地区)を8 月 25 日に公開した. 過去の正射画像(6 時点(1947~1948 年米軍撮影, 1962 年,1974 年~1978 年,1979 年~1983 年,1988 年~1990 年,2007 年~))を 8 月 28 日に公開した. 2.3 8 月 29 日~9 月 1 日に公開した地理空間情報 1) 8 月 28 日・30 日・31 日に撮影した垂直写真 8 月 28 日・30 日・31 日に撮影した垂直写真を 8 月29 日・30 日・31 日に公開した.垂直写真の主点(航 空機が撮影した場所)情報を表示させ,そのアイコ ンをクリックすることにより垂直写真(計772 枚) が表示される.(図-3) 図-3 8 月 28・30・31 日に撮影した垂直写真

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2) 垂直写真による正射画像図郭版 垂直写真による正射画像図郭版を8 月 30 日・9 月 1 日に公開した.図郭枠内をクリックすることで,8 月28 日・30 日・31 日に撮影した垂直写真から作成 した正射画像図郭版(269 枚)が表示される.(図-4) 図-4 垂直写真による正射画像図郭版 3) 垂直写真による正射画像タイル 8 月 28 日・30 日・31 日に撮影した垂直写真から 作成した正射画像タイルを、8 月 30 日・9 月 1 日に 公開した.(図-5) 図-5 垂直写真による正射画像タイル 2.4 9 月 2 日に公開した地理空間情報 8 月 28 日・30 日・31 日に撮影した垂直写真を使 用した写真判読図を9 月 2 日に公開した.(図-6) 図-6 写真判読図 2.5 既存コンテンツの追加 地理院地図の既存コンテンツ「数値地図25000(土 地条件)」「治水地形分類図・更新版」を8 月 22 日に メニューに追加した. 2.6 アクセス状況 地理院地図における広島被災地へのアクセス状況 を解析した結果は次のとおりである. ・被災地域について,平常時のアクセスは数万タイル /日であるところ,発災後は約 50 倍の約 120 万タイル /日に急増 ・発災後は,地理院タイルへのアクセス全体の約 5% が広島市被災地(アクセス状況の調査対象として約 278 ㎢;国土面積の約 0.07%を設定)に集中 3. 関係機関への地理空間情報の提供 3.1 既存空中写真の提供 8 月 20 日,国土地理院が過去に撮影した被災5地 区の空中写真データを準備し,防災推進室から関係 機関に提供した. 3.2 3D 地図(立体模型)の提供 8 月 20 日より順次,各種3D 模型(図-7)を関係 機関(現地対策本部ほか)へ提供した. 図-7 被災箇所全域写真判読図(立体模型 5 点貼付 A2 版) 4. 関係行政機関との情報共有 関係行政機関との災害情報の共有を図るため,行 政機関向けサイトを構築し,「2.」と合わせ,解像度 の異なる斜め写真,垂直写真,正射画像図郭版のほ か,現地写真も掲載した. 5.その他の対応 1) 8 月 22 日朝,地理院地図へのアクセス増により繋 がりにくい状態が発生,輻輳状態回避のための各種 対応を実施し、14 時過ぎに改善した. 2) 災害対応等に必要な被災地における地図の在庫 調査及び販売数調査を8 月 29 日に実施した. (公開日:平成26 年 12 月 26 日)

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平成

26 年 8 月豪雨災害に関する地理地殻活動研究センターの対応

Responses of Research Center, GSI to the heavy rain disaster in August 2014

地理地殻活動研究センター 災害対策班

Geography and Crustal Dynamics Research Center Disaster Countermeasure Group

要 旨 平成26 年 8 月 20 日に広島市に甚大な被害をもた らした豪雨による土砂災害に対して,地理地殻活動 研究センターが対応した斜め写真の正射画像化作業 やツイッター*1による情報発信,現地対策本部*2(広 島市)へのリエゾン*3派遣について報告する. 1.はじめに 地理地殻活動研究センター(以下「研究センター」 という.)では,8 月 20 日 9 時 45 分に風水害の警戒 体制から非常体制への移行に伴い,情報の収集とツ イッターによる被害箇所等の情報発信を行った.そ の日のうちに,「くにかぜⅢ」による緊急撮影が実施 されたため,斜め写真の画像173 枚を入手し(図-1), 正射画像の作成に着手した. 図-1 斜め写真の例(8 月 20 日撮影) 2.正射画像の作成 斜め写真から正射画像を作成 するためには, SfM(Structure from Motion )/ MVS(Multi-View Stereo)

という技術を利用した.SfM は,動画や複数の静止 画からカメラの撮影位置を推定する技術,MVS は, 三次元形状を復元する技術である.これらの新しい 技術を組み合わせて使えば,比較的簡単に斜め写真 を含む複数の空中写真から,正射画像とデジタル表 層モデル(DSM)などの地形情報を得ることができ る.研究センターでは,市販の自動オルソモザイク 及 び 3D 処理ソフトウェアである Agisoft 社製 「PhotoScan Pro」を用いて,斜め写真から正射画像 を作成した.今回の被災地域は広範囲であったため, 3 地区に分けて処理を行った.処理に先だって,ま ず適切な斜め写真を選択した.処理工程は,次のと おりである. 1)画像の取り込み 2)撮影時の位置情報の取り込み 3)座標系の指定 4)カメラキャリブレーション(校正) 5)ポイントクラウド(点群データ)の作成 6)地上基準点の追加 7)ポイントクラウドの最適化 8)ポイントクラウドの高密度化処理 9)3D モデルの作成 10)テクスチャの貼り付け 11)正射写真の作成 基本的な処理はほぼ自動化されているが,良質な 結果を得るためには,地上基準点の追加やノイズデ ータの除去,パラメータの設定を手動で行う必要が あった.また,処理時間は写真の枚数,解像度,コ ンピュータのスペック等に依存する.7 月の長野県 南木曽町での土砂災害で試験的に実施した経験もあ ったが,試行錯誤も含めて 1 地区の処理時間に約 3 ~4 時間を要した.作成した正射画像のうち,広島 市安佐南区八木・緑井地区の正射画像を図-2 に示す. 正射画像は,「地理院地図」で上乗せ情報として公開 された. 図-2 広島市安佐南区八木・緑井地区の正射画像

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3.正射画像作成における今後の課題 今回の斜め写真からの正射写真の作成では,写真 の画素数(5760×3840 ピクセル)は十分であったが, 写真の撮影方向とオーバーラップ率に問題があり, 部分的に歪むなど,良質な正射画像が得られなかっ た.今回のような広範囲を対象とした正射画像を作 成するためには,垂直写真に近い角度(少なくとも 垂直軸から30 度以内)での斜め写真撮影と 80%近 いオーバーラップ率及び垂直写真撮影時並みの撮影 コース数が必要であり,手持ちカメラによる下向き 撮影と自動的なインターバル撮影を行う方法の検討 が必要である.また,正射画像作成に使用したソフ トウェアのライセンスが1 つしかなく,複数の作業 者により並行して作業することができなかったため, 処理に時間を要した.さらに,災害調査における UAV(無人航空機)による適切な撮影方法の確立や 航空機撮影との役割分担を検討する必要がある. 4.ツイッターによる情報発信 研究センターでは,平成25 年 10 月から,国民の 関心が高いと思われるもの,公共性が高いと思われ るものを主として,ツイッターによる情報発信を行 っている.今回の災害対応においても,20 日未明か らの情報を収集し,地理院地図に被害の場所を示し た図をツイートしたり,空中写真がホームページに 公開されると同時にツイートしたりと積極的に情報 を提供してきた.それに伴い,リツイートやフォロ ワーも普段よりも急激に増加した(図-3).被害情報 等は関心が高く,有益な情報には反響が大きいこと がわかる. また,「ソーシャルメディアによる災害情報の提 供」の観点から,研究センターでは今後も情報を適 時に発信していく予定である. 図-3 研究センター公式 Twitter の画面の一部 https://twitter.com/GSI_Research 5.現地対策本部への職員の派遣 リエゾンの役割は,内閣府をはじめとした関係省 庁,県及び市から,空中写真や地図の加工,印刷の 依頼を受け,本院や中国地方測量部へ作業を依頼す ることであった.簡単な資料の作成は自身でも行う が,大判印刷を伴うデータの加工は本院や中国地方 測量部へ依頼した. 国土地理院の空中写真(正射画像等)や地図(写 真判読図等)は,本部室の壁に大判印刷図として貼 られており,警察・消防の捜索活動や地方整備局・ 市の土砂撤去活動計画等に大いに役立てられた. 6.まとめ 研究センターでは,広島市の豪雨災害において, 斜め写真の正射画像化作業やツイッターによる情報 発信,現地対策本部へのリエゾン派遣を行った.斜 め写真の正射画像化においては,いくつかの課題が 残されたが,写真を撮影する基本図情報部や正射画 像を地理院地図で公開する地理空間情報部等と連携 し,今後の対応方策について検討する必要がある. ツイッターによる情報発信,リエゾン派遣について は,今後も必要に応じて対応していく. 注 釈 *1ツイッター ツイート(つぶやき)と呼ばれる140 字以内の短い 文章で情報交換を行うインターネット上のサービス. Twitter,ツイッターは Twitter, Inc.の登録商標.

*2現地対策本部 8 月 20 日「政府現地対策室」設置. 8 月 22 日「政府現地対策室」から「非常災害現地対 策本部」に格上げ. 9 月 9 日「非常災害現地対策本部」から「政府現地 連絡調整室」に改組. *3リエゾン 組織間の連絡・連携のための調整員 (公開日:平成26 年 12 月 26 日) 研究センターからは,9 月 2 日から 4 日の間,現 地対策本部のある広島市役所にリエゾンとして職員 を派遣した.

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平成

26 年 8 月豪雨災害に対する中国地方測量部の対応

Responses of the Chugoku Regional Survey Department to the heavy rain disaster

in August 2014

中国地方測量部

Chugoku Regional Survey Department

要 旨 中国地方測量部は,広島市北部で大規模な土石流 を発生させた平成26年8月豪雨に伴う記録的な大雨 による被災に対応するため,体制を確保し,関係行 政機関へ各種地理空間情報を提供するとともに,政 府非常災害現地対策本部,中国地方整備局災害対策 本部及び政府現地調査団に職員を派遣したので報告 する. 1. 中国地方測量部の体制 中国地方測量部では,平成26 年 8 月豪雨に伴い, 8 月 20 日 9 時 45 分に非常体制を発令し,災害に対 応した. 2. 職員派遣 広島市に設置された政府非常災害現地対策本部へ 次長を本部員として派遣するとともに中国地方整備 局災害対策本部会議へ防災情報管理官をリエゾンと して派遣した.また,8 月 21 日と 9 月 6 日に行われ た,政府現地調査団の現地視察に中国地方測量部長 を派遣した(写真-1,2). 写真-1 8 月 21 日の視察の様子 写真-2 9 月 6 日の視察の様子 3. 提供した地理空間情報 3.1 中国地方測量部が提供した地理空間情報 中国地方測量部では,本院で作成した斜め写真や 垂直写真並びに正射画像,正射写真地図及び写真判 読図等を関係機関へ提供した. また,関係機関から災害対策図や正射画像等の提 供依頼に応じて,中国地方測量部で災害対策図,正 射画像及び写真判読図を作成・出力のうえ提供した. 特に,写真判読図,災害対策図,正射画像及び斜め 写真は多くの提供依頼があり,様々な仕様で提供し た.中国地方測量部から提供した主な地図や空中写 真等は,図-1~図-7 のとおりである. 図-1 TEC-FORCE 調査用の写真判読図(A3 版)

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図-2 UTM グリッド入り対策図(A0 版) 図-3 土砂撤去等実施エリアを図示した対策図(1m×2m) 図-4 残土置き場を表示した対策図(A3 版) 図-5 特に被害の大きかった八木・緑井地区を表示した正 射画像(1m×3m) 図-6 緑井 7 丁目の正射画像 図-7 八木・緑井地区の斜め写真(A0 版) 3.2 提供先 中国地方測量部から以下の機関へ情報を提供した. ・内閣府 ・農林水産省中国四国農政局 ・林野庁 ・経済産業省 ・中国地方整備局 ・中国運輸局 ・広島地方気象台 ・環境省 ・防衛省 ・広島県 ・広島県警察 ・広島市

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3.3 提供数 合計で527 部の地図,空中写真等を関係機関へ提 供した.詳細は,以下のとおりである. ・災害対策図:63 部 ・斜め写真と地理院地図を重ねた図:45 部 ・正射画像:110 部 ・正射画像地図:10 部 ・斜め写真:31 部 ・垂直写真:2 部 ・被災前の空中写真と被災後の斜め写真:12 部 ・写真判読図:158 部 ・標定図:2 部 ・土砂撤去実施エリア及びボランティアセンター位 置図:15 部 ・土砂撤去活動エリア及び避難所位置図:15 部 ・土砂撤去等実施エリア位置図:40 部 ・広島市応急復旧計画の進捗状況図:20 部 ・3D 模型:4 セット 4. 提供した地理空間情報の利用事例 関係機関へ提供した地図や空中写真等は,政府非 常災害現地対策本部で被災状況の情報共有(写真-3) に利用されたほか,各種会議,記者発表,捜索活動 の基礎資料として役立てられた.例えば,9 月 5 日 に発表された国・県・市の災害復旧計画(図-8,9) の中では,国土地理院が撮影した空中写真や写真判 読図,地理院地図が用いられた.また,国土交通省 TEC-FORCE による緊急渓流点検結果報告(図-10) にも提供した斜め写真や地理院地図が用いられた. 写真-3 災害対策図に様々な情報を記載し,情報共有に利 用された. 図-8 国県市の復旧計画における利用(広島県 HP より 引用) 図-9 国県市の復旧計画における利用(広島県 HP より 引用) 図-10 TEC-FORCE の緊急渓流点検結果報告における 利用(中国地方整備局HP より引用) 5. まとめ 中国地方測量部では,管内で発生した今回の災害 対応において中国地方整備局や被災自治体等へ各種 地理空間情報や出力図を提供した.災害対策図等に ついては,日頃の業務や訓練の経験を活かし,迅速 に作成し提供することができた.今後とも関係機関 にとって必要な地理空間情報を迅速に提供できるよ う努めていきたい. (公開日:平成26 年 12 月 26 日)

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参 考 文 献

広 島 県: 8.20 土 砂 災 害 に 係 る 復 旧 工 程 及 び 各 箇 所 の 応 急 復 旧 計 画 の 発 表 に つ い て ,

http://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/95/oukyuufukkyuu.html (accessed 9 Oct. 2014).

国土交通省中国地方整備局: 平成 26 年 8 月豪雨による広島市内土石流発生渓流等の緊急渓流点検結果(一次

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企画部 永山 透・芹澤由尚

Planning Department Toru NAGAYAMA and Yoshihisa SERIZAWA

要 旨 国土地理院は平成26年4月に基本測量に関する長 期計画及び国土地理院研究開発基本計画を策定し た. 基本測量に関する長期計画は国土地理院が行う基 本測量の目標とその達成のための施策を明らかにす るものである.また,国土地理院研究開発基本計画 は国土地理院が実施すべき研究開発の基本的な方向 性を定めるものである. これらの計画は,国土地理院の成果のよりどころ となる指針である. 本項では,新たな基本測量に関する長期計画と国 土地理院研究開発基本計画の概要について報告する. 1. はじめに 国土地理院は平成26年4月に基本測量に関する長 期計画(以下,「長期計画」という.)及び国土地 理院研究開発基本計画(以下,「研究計画」という.) を策定した. 長期計画は,測量法第12 条に根拠を持ち,国土交 通大臣によって決定される,国土地理院が行う基本 測量の目標とその達成のための施策を明らかにする 計画である.測量の正確さの担保,測量への重複投 資の回避,地理空間情報の整備を通じて,地理空間 情報高度活用社会の実現に資することを目的として いる. また,研究計画は,国土地理院長によって決定さ れる,国土地理院が実施すべき研究開発の基本的な 方向性を定める計画である.今後実施すべき研究開 発とその推進に必要な方策をまとめ,長期計画の推 進に資することを目的としている. 長期計画と研究計画は,国土地理院のあらゆる成 果のよりどころとなる指針である.いわば,基本図 や基準点など地理空間情報の整備や,防災・減災の ための利用など地理空間情報の利用促進といった, 国土地理院の業務の成果物を花に例えるならば,長 期計画は土,研究計画は肥料に例えられるものであ る. 本稿では新たな長期計画と研究計画の概要につい て報告する. なお,長期計画と研究計画は国土地理院の Web サイトで公開されている(国土地理院,2014a;国土 地理院,2014b). 2. 基本測量に関する長期計画 2.1 策定の背景 2.1.1 これまでの長期計画の変遷 昭和28 年に第一次長期計画が策定されて以来,時 代の要請に応じた内容に更新する形で,第五次長期 計画策定まではおおよそ 10 年ごとに長期計画が策 定されてきた.また,改訂第五次長期計画策定以来, 近年の時代の速い潮流に対応するため,5 年ごとに 長期計画が策定されてきている.これまでの長期計 画の柱立ての移り変わりを表-1 に示す. 表-1 これまでの長期計画の柱立ての移り変わり 昭和28 年に策定された第一次長期計画では,測地 基準点の改測及び維持,地図調製及び空中写真の整 備といった,主な事業分野に加えて,機材を含む設 備の充実が計画の柱の一つとなっており,戦後の経 済成長の前の時代にあって機材の調達が課題であっ た時代背景に沿った内容となっている. その後,昭和39 年策定の第二次長期計画から平成 16 年策定の第六次長期計画までは,測地基準点の整 備,基本図の整備,各種主題図の整備など,主な事 業分野に着目した柱立てとなっている.各次の長期 計画に基づいて,国土地理院は長きにわたり地理空 間情報の整備業務を遂行し,国土の開発や社会資本 の整備に重要な役割を果たしてきた. 平成 19 年に地理空間情報活用推進基本法が策定 され,地理空間情報の一層の活用を通じた社会の発 展を目指すこととなった.国土地理院は,地理空間

新たな基本測量に関する長期計画と国土地理院研究開発基本計画

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情報の整備サイクルに立脚して事業を行うにとどま らず,社会の地理空間情報の活用サイクルまで視野 に入れて事業を行うことが必要となった(図-1).そ れを背景として,平成21 年度策定の長期計画から, 地理空間情報の整備に加えて,国土地理院が保有す る既存の地理空間情報の活用が大きな柱となり,地 理空間情報のライフサイクルに着目した計画に柱立 てが大きく変化した. 本稿で報告する新たな長期計画も,前回の長期計 画と同様に,地理空間情報のライフサイクルに着目 した柱立てとなっている.新たな長期計画の策定の 背景については,次項で詳しく著す. 図-1 地理空間情報の整備・活用のサイクル 2.1.2 新たな長期計画の策定の背景 近年の情報通信技術の発展によりデジタルデータ の利用がますます重要となり,近年の行政機関にお いては限られた人員・予算の中で効率性が重要とな っている中で,既存の地理空間情報の利活用の推進 を図ることが不可欠である. 平成21 年に策定された前回の長期計画では,その ことに鑑みて地理空間情報がもたらす新しい社会像 を想定し,国土地理院はその実現に向けて着実に計 画を実行してきた. しかし,平成23 年の東日本大震災の発生を受けた 防災意識の高まり等の国民の意識の変化,地理空間 情報を活用した情報通信技術の進展を踏まえた社会 情勢やニーズ変化とそれらを受けた政府の新たな動 き,民間サービスの新たな発展など,前長期計画で 想定した社会像ではカバーしきれない課題が生じた. また,平成25 年度に国土地理院の事業を対象とした 国土交通省の政策レビューにおいて,地理空間情報 の引き続きの整備・提供,地理空間情報が利活用し やすい環境の整備,防災分野などにおける関係機関 に対する支援の重要性が確認された. これらの背景を踏まえて,時代に合った取組を行 う必要があることから,前回の長期計画の終了を待 たずして新たな長期計画を策定するに至った. 次節からは,新たな長期計画の概要について著し ていく. 2.2 長期計画の概要 2.2.1 計画期間と構成 新たな長期計画は,平成26 年度から平成 35 年度10 年間を計画期間として,平成 26 年 4 月 9 日に 策定された. 長期計画全体の構成の流れを図-2 に示し,各構成 要素の内容を大掴みに整理する. 図-2 長期計画の構成 まず,目指すべき社会像として,地理空間情報の 活用がもたらす新たな社会の展望を示している.こ れは,国土地理院のみならず,官民の関係各機関の 事業により実現すべきビジョンを提示したものとな っている. 次に,目指すべき社会へ向かうための基本的な方 向性として重点戦略を示したうえで,重点戦略を実 施するための施策として国土地理院の取組を示して いる. 最後に,それら取組の実行のための短期の実施計 画と、定期的なフォローアップについての方策を示 す流れとなっている.短期の実施計画では,長期計 画に示された取組の実施のための具体的な事業を示 し,定期的なフォローアップによりその事業が,重 点戦略の実現にあたり有効であったかを振り返るこ とを定めたものとなっている. 次項からは,地理空間情報の活用がもたらす新た な社会の展望,重点戦略と国土地理院の取組,短期 の実施計画とフォローアップについて順に著してい く. 2.2.2 地理空間情報の活用がもたらす新たな社会の 展望 長期計画では,実現すべきビジョンとして地理空 間情報の活用がもたらす新たな社会の展望が示され ている.ここで示された新たな社会の展望は,前回 計画で示した社会の展望を,2.1.2 に示した背景を踏

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図-3 新たな社会の展望の再考 まえて再考したものである(図-3).具体的には,以 下の5 つの社会像が掲げられている. 1) 国土環境が良好に保たれる社会 2) 安全で安心できる社会 3) 公共データの活用を促進する取組の推進等に より行政の透明化が図られた社会 4) 新たな技術等の活用により豊かで暮らしやす く便利な社会 5) 新たなビジネスが創生される活力ある社会 1 つ目の「国土環境が良好に保たれる社会」は, 前回の長期計画でも新たな社会の展望として掲げら れていた目指すべき社会像であるが,引き続き目指 すべき社会像として掲げた.地理空間情報の活用に より,国土の利用,整備及び保全の推進に寄与する ことを政策課題とした. 2 つ目の「安全で安心できる社会」は,国民の安 全・安心への関心の増大を踏まえて,前回の長期計 画より引き続き目指すべき社会像として実現するも のとし,前回の長期計画で掲げた「地域がいきいき と自立した社会」を踏まえて地域活性化の観点を包 含して行うものとした.地理空間情報の活用により, 国民の生命及び財産の保護に寄与することを政策課 題とした. 3 つ目の「公共データの活用を促進する取組の推 進等により行政の透明化が図られた社会」は,地理 空間情報を活用した情報通信技術の進展を踏まえた 社会情勢やニーズ変化とそれらを受けた政府の新た な動きから,行政の効率化の必要性が増したことを 踏まえて,目指すべき社会像として掲げた.地理空 間情報の活用が,行政の運営の効率化及びその機能 の高度化に寄与することを政策課題とした. 4 つ目の「新たな技術等の活用により豊かで暮ら しやすく便利な社会」は,前回の長期計画で掲げら れた「豊かで暮らしやすい社会」に,民間分野にお ける新技術の活用の発展を観点に加えて,目指すべ き社会像として掲げた.地理空間情報の活用が,国 民の利便性の向上に寄与することを政策課題とした. 5 つ目の「新たなビジネスが創生される活力あふ れる社会」は,前回の長期計画より引き続き目指す べき社会像として実現するものとして掲げ,前回の 長期計画で掲げられた「地域がいきいきと自立した 社会」を踏まえて地域活性化の観点を包含して行う ものとした.地理空間情報の活用が,経済社会の活 力の向上に寄与することを政策課題とした。 以上のように,目指すべき社会像として5 つの社 会の展望を掲げた.これにより,国土地理院,関連 行政団体及び民間団体の各種関連する取組の実施に より実現すべきビジョンを設定した. 本項では,長期計画の実行にあたって共有すべき ビジョンについて紹介した.次項では,ビジョンの 実現のための重点戦略と国土地理院の取組について 著していく. 2.2.3 重点戦略と国土地理院の取組 前項に示した目指すべき社会像を実現するための 方向性として,2 つの重点戦略を定め,各戦略及び 両戦略共通の課題を整理したうえで戦略を実施する ための国土地理院の取組を示している.重点戦略及 び国土地理院の取組を図-4 に示す. 重点戦略として,以下の2 つの戦略が位置づけら れている. 重点戦略1:地理空間情報の整備力・活用力の向上

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の全国レベルでの推進(以下,「整備・活用力 向上戦略」という.) 重点戦略2:新産業の創生や国民生活の利便性向上 等のための行政機関などが保有する地理空間 情報の流通・活用の促進(以下,「流通・活用 促進戦略」という.) 特に,重点戦略1 については,国民の関心が非常 に高まっている防災分野を足がかりとして実施する ことが示されている. また,両戦略を実現するにあたって,官民の多方 面の分野において地理空間情報の整備・提供、活用 及びその促進のための連携,研究開発も行うことが 示されている. (1)「整備・活用力向上戦略」の実現のための取組 重点戦略1「整備・活用力向上戦略」については, 国民全体の地理空間情報の活用力の向上,行政機関 における地理空間情報の整備・活用にむけた取組の 格差の是正,地方公共団体等の地理空間情報の活用 のための先進的取組に関する知見の共有が課題とな っている. そこで,「整備・活用力向上戦略」に関する国土地 理院の取組として,国土状況を表す地理空間情報の 継続的把握と提供,行政機関における地理空間情報 の適切で無駄のない整備・提供の支援,効率的で正 確な公共測量実施の支援,国土の危険性の把握とそ の情報の提供,災害時の国土状況の把握とその情報 の提供が示されている. (2)「流通・活用促進戦略」の実現のための取組 重点戦略 2「流通・活用促進戦略」については, 地理空間情報を誰でも容易に入手・活用できる環境 の整備,各行政機関の保有する地理空間情報のオー プンデータ化,準天頂衛星システム等を活用した高 精度な測位等の新技術の実用化の推進が課題となっ ている. そこで,「流通・活用促進戦略」に関する国土地理 院の取組として,行政機関等が保有する地理空間情 報の流通・活用環境の整備・改善,利用者が円滑に 利用できるような地理空間情報の整備・提供の支援, 地理空間情報の活用に資する人材の育成・知識の普 及が示されている.利用者が円滑に利用できるよう な地理空間情報の整備・提供の支援の一環として, 準天頂衛星システム等の新技術を活用した測位によ る,新産業の創生が含まれている. (3)両戦略の実現のための共通する取組 先に挙げた2 つの重点戦略の推進が国土地理院単 独では困難であることに鑑み,両重点戦略を推進す るうえでの取組として,産学官における連携・協力, 国際連携・協力,技術研究開発の推進が示されてい る. 以上のように,ビジョンを実現するための戦略と しての2 つの重点戦略と,各戦略及び両戦略共通の 課題を整理したうえで戦略を実施するために必要な 国土地理院の取組を設定した. 図-4 重点戦略と国土地理院の取組

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戦略とその実現のための取組を設定したものの, 実行が伴わなければ画餅に帰す.長期計画では,そ の実効性を確保するために,短期の実施計画を策定 し,短期の実施計画の改定により適宜フォローアッ プを行うこととしている.次項では,この短期の実 施計画とフォローアップについて著していく. 2.2.4 短期の実施計画とフォローアップ 長期計画に示された重点戦略及び取組は,具体的 な施策を立ててそれを実行していく必要がある.国 土地理院では,具体的な事業・予算を示した短期の 実施計画を策定し,この実施計画に従って長期計画 に示された取組を実施している.また,適宜それを 更新することで,フォローアップを行っている. 国土地理院では,短期の実施計画として,アクシ ョンプランを策定することとしている.アクション プランは,3 年後の目標像を見据え,3 年間の事業・ 施策を示したうえで,1 年間に実施する具体的な事 業を定める計画である.そのため,アクションプラ ンは,3 年計画ではあるが 1 年ごとに見直しを行う ローリングプランとなっている.アクションプラン を1 年ごとに見直すことで,長期計画に示された取 組のフォローアップを行っている(図-5).また,高 い実効性を確保しつつ変化し続ける社会状況に即し た取組を行うことが出来るよう,必要に応じて長期 計画も見直しも行われる. 図-5 長期計画とアクションプラン 3. 国土地理院研究開発基本計画 3.1 策定の背景 3.1.1 近年の社会の動向 平成23 年 3 月に起こった東日本大震災は,自然災 害の脅威を改めて認識させるものとなった.未曾有 の大災害を経験し,防災・災害対応に資する研究開 発の重要性が再確認された. また,少子高齢化・人口減少に伴って生産・消費 両面から経済活動の縮小が懸念され始めて久しく, IT 化による高付加価値型の生産構造への転換,科学 技術の発展による生産効率の向上が目指されてきた. その成果として,地理空間情報分野においては,宇 宙技術の活用,情報のデジタル化や情報通信技術の 発展などによって,測量作業の効率化,地理空間情 報の流通・活用が当たり前になった社会が実現しつ つある. 国土地理院では,測量,地理空間情報の整備活用 に関連する取組の的確な実行に資する研究開発を行 ってきた.その対象は基盤分野から応用分野まで多 岐にわたる.地理空間情報という切り口から,行政 施策に必要な研究開発のみならず,社会における共 通基盤として防災・災害対応及び社会問題の解決に 資する研究開発が必要とされる. 3.1.2 新たな研究計画策定の背景 前回の研究計画は平成21 年度から平成 25 年度ま でを計画期間として策定され,平成24 年の一部見直 しを経て平成25 年度末に計画期間が終了した. 国土地理院としては研究開発の継続性と着実な実 施に鑑み,前回の研究計画の成果と課題を洗い直し た上で,長期計画で示された取組,研究開発に対す る社会的ニーズを踏まえて,平成 26 年度から平成 30 年度の 5 年間を計画期間とする新たな研究開発基 本計画を策定した. 次節からは,新たな研究計画の概要についての報 告を行う. 3.2 研究計画の概要 3.2.1 計画期間と構成 新たな研究計画は,平成26 年度から平成 30 年度5 年間を計画期間として,平成 26 年 4 月 25 日に 策定された. 研究計画全体の構成を大掴みに整理すると,以下 の流れとなっている(図-6). まず,研究開発の方向性を定める前提として前回 の研究計画の成果と課題,長期計画で示された取組, 研究開発に対する社会的ニーズを整理した.次に, それらを考慮しながら基本的課題を設定することで 研究開発の方向性を定めたうえで,それぞれの重要 として取り組むべき分野として重点課題を設定した. 最後に,研究開発の推進方策および研究開発を通じ た国土地理院の資産の活用方策を示した. 次項からは,前回の研究計画の成果と課題・長期 計画で示された取組・社会的ニーズ,基本的課題と 重点課題,研究開発の推進方策について順に著して いく.

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図-6 研究計画の構成 3.2.2 前回の研究計画の成果と課題・長期計画で示さ れた取組・社会的ニーズ 研究計画では,まず,研究開発の方向性を定める 前提として前回の研究計画の成果と課題,長期計画 で示された取組,研究開発に対する社会的ニーズを 整理している.各々の概要を以下に示す. (1)前回の研究計画の成果と課題 前回の研究計画の成果と課題について,平成 248 月にまとめられた中間報告の結果及びその後の 研究開発の進展等を踏まえつつ整理している.前回 の研究計画に示された各々の研究開発課題について 成果と課題を整理した後に,研究開発内容全体にま たがる成果と課題を整理している.本稿では,研究 計画策定において特筆すべき成果と課題に絞って紹 介する. 成果としては,地殻変動解析をはじめとする研究 開発の成果が東日本大震災時の地理空間情報の収 集・提供に大きく役立ったこと,論文投稿・学会発 表による研究開発により得られた知見の提供,電子 国土基本図上に集約されたデータベースの提供など の成果があげられた. 課題としては,東日本大震災での成果の効果的ア ピール,研究開発成果の公開や広報資料への反映, 技術的研究だけでなく政策的研究もとりあげること の検討,準天頂衛星や新しい情報端末などの新技術 への対応,国外での研究発表の予算面からの実質的 な奨励,国土地理院の人材面・施設面の財産を利用 した外部人材の育成があげられた. (2)長期計画に示された取組 長期計画では,重点戦略 1「整備・活用力向上戦 略」,重点戦略 2「流通活用促進戦略」,両重点戦略 共通の連携・協力を推進する取組が示されている. 具体的取組については,本稿2.2.3 を参照されたい. (3)研究開発に対する社会的ニーズ 研究開発の推進にあたって踏まえるべき社会的ニ ーズとして,地理空間情報の活用による社会的課題 の解決と豊かな社会の実現,準天頂衛星等の活用と 宇宙利用に関する研究開発の促進,地理空間情報等 活用のためのオープンデータ(公共データの民間開 放)の推進,地震発生・火山噴火の予知・予測によ る防災・減災対策と災害時の迅速な情報収集及び提 供が示されている. 次項では,以上に著した前回の研究計画の成果と 課題,長期計画で示された取組,社会的ニーズを考 慮して設定した,今後の研究開発の取り組むべき方 向性を明確化するための基本的課題と,それぞれの 基本的課題について重要として取り組むべき分野を 示す重点課題について著していく. 3.2.3 基本的課題と重点課題 国土地理院の行う研究開発の取り組むべき方向性 を示す基本的課題として,以下の4 課題を定めた. 基本的課題の見取り図を図-7 に示す. 基本的課題1:地理空間情報の整備力・活用力向上 のための研究開発(以下,「整備・活用力向上 研究」という.) 基本的課題2:次世代の地理空間情報活用社会の実 現のための研究開発(以下,「次世代情報活用 社会実現研究」という.) 基本的課題3:防災・減災のための研究開発(以下, 「防災・減災研究」という.) 基本的課題4:地球と国土を科学的に把握するため の研究(以下,「地球・国土の科学的研究」と いう.) また,それぞれの基本的課題について,重要とし て取り組む分野として重点課題を示した(図-8). -7 基本的課題の見取り図 (1)基本的課題 1「整備・活用力向上研究」 基本的課題 1「整備・活用力向上研究」は,地理 空間情報の「整備→活用→便益→見直し」のサイク ル(図-7 中「現在」のサイクル)を効果的・効率的

参照

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