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日本語学習者の学習意欲に影響を与える要因に関する質的調査 : タイ中部P大学日本語主専攻者を取り巻く文脈において

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─調査報告─

日本語学習者の学習意欲に影響を与える要因に関する質的調査

─タイ中部P大学日本語主専攻者を取り巻く文脈において─

富吉 結花 要 旨  本稿は、タイ中部P大学の学習者を対象に、学習意欲に影響を与える要因を学習者の視 点から捉えることを目的として行った自由記述式質問紙調査の報告である。タイ語を使用 して得た質的データを、従来の動機づけ研究における動機構成概念を7局面に整理した「動 機構成概念の7つの局面」(Shoaib & Dörnyei 2004)を枠組みに分析し、要因を抽出した。 そして、協力者を取り巻く文脈から考察した。その結果、要因は7局面全てに現れ、幅広 い局面を視野に入れる必要性が示された。具体的要因としては、〈理想モデルの存在〉、そ のモデルの面を持つ〈友人〉 〈先輩〉、社会文化的文脈の影響を受けた〈実際使用場面での 経験〉などが意欲向上要因として抽出された。低下要因には〈宿題の多さ〉〈学習内容の難 しさ〉など教育文脈のワークロードに関する要因が顕著に現れた。これらの要因は学習環 境・社会文化的文脈の影響を受けており、学習意欲は学習者を取り巻く文脈と不可分であ ることが明らかになった。  【キーワード】 動機づけ、学習意欲、質的調査、学習環境、社会文化的文脈 1.背景と目的  言語教育の場において、学習意欲は教師・学習者双方にとって、常に大きな関心事の一 つだといえる。「学習意欲」は、研究上は「動機づけ」の研究とされており(磯田 2005)、 動機づけは学習者要因の中でも常に注目され、比較的早くから盛んに研究されてきた(小 西 2006)。日本語教育分野における動機づけ研究は、1990年代以降から盛んに行われるよ うになった。しかし近年、それらの研究の問題点も指摘されている。問題点は「対象」 「手 法」 「視点」の3つに分けられる。  「対象」の問題点としては、「なぜ日本語を勉強するのか」の研究に偏っている点が挙げ られる。守谷(2002)は「日本語の動機づけの研究は、『なぜ日本語を学習するのか』とい ういわゆる日本語学習動機に関する研究と、実際の学習場面での動機づけを扱った研究の 二つに大別される」(p.323)としている。そして、後者の研究の少なさを指摘し、今後の研 究の蓄積が望まれると述べている。「学習意欲」に関する研究は、後者に属するものであ ると考えられる。さらに、学習場面のみならず、もっと広い場面を視野に入れた研究が望 まれるのではないだろうか。  「手法」の問題点は、質問紙を用いた量的手法によるものが多いことが挙げられる。守 谷(2002)は研究手法についても述べ、従来の量的手法の他に質的な手法での研究が必要

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だとしている。従来の動機づけ研究は、リカートスケールを用いた量的研究が多数を占め てきた。しかし、小西(2006)は、量的研究の質問項目は調査者側が決めたものであり、 学習者の真の考えが現れない場合も考えられると指摘している。羅(2005)も、従来の研 究は研究者の概念が先行する手法(研究者が自らの考えに基づき項目を作成するアンケー ト調査など)が用いられており、学習者自身の視点から捉えていないとの批判があると述 べている。  「視点」に関しては、羅(2005)において、学習動機は個人が生きている社会に影響され るものであるにも関わらず、「個人側あるいは社会側のどちらか一方に属するものとして しか検討されて」こなかったと指摘されている(p.190)。  以上の指摘を踏まえ本研究では、タイ中部P大学の日本語主専攻者を対象に、学習意欲 が上がるとき/下がるときを問う自由記述式質問紙調査を実施した。課題は、協力者の学 習意欲に影響を与える要因とその特徴を明らかにすることである。本稿ではその結果を報 告し、協力者が置かれている文脈から考察する。なお本調査では、対象をP大学日本語主 専攻の学習者に限定する。筆者は以前P大学に勤務しており、学習者の傾向や学習環境が 理解しやすく学習者を取り巻く文脈からの考察が可能であると考えられるためである。 2.用語の定義  本稿では、「動機づけ」ではなく「学習意欲」という用語を用いる。上述の通り、「学習 意欲」は「動機づけ」の研究とされている(磯田 2005)。「動機づけ」は“motivation”の訳 語として用いられている。しかし “motivation”の定義も研究者により様々である(守谷 2002)。Dörnyeiは“motivation”は次の3点に関する概念であるとしている(Dörnyei 2001, 筆者下線および訳)。

1) Why people decide to do something (なぜ人が何かやろうと決定するのか) 2) How long they are willing to sustain the activity

(どのくらいの期間その活動を進んで続けるのか)

3) How hard they are going to pursue it (どのくらい熱心に取り組もうとするのか)

 また、桜井(1997:2)では、「意欲」と「動機づけ」の違いを、以下のようにしている。 動機づけ:「広い範囲で何かを達成しようとする行動」に対して使う。 意欲  :「勉強や仕事といった、どちらかと言えば知的なことを達成しようとする      行動」に対して使う。  磯田(2005:85)は、従来の動機づけ研究では、学習の理由や目的の種類が論じられる ことが多いのに対し、教師が言う「意欲」は、生徒の気持ちや学習への取り組み方を指し ていると思われると述べている。さらに「意欲」「動機づけ」共に、人により異なる意味 で使われていると指摘している。

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 本稿で扱うのは、Dörnyeiの定義における 3)How hardに当たる部分である。これは磯 田の言う「意欲」 「生徒の気持ちや学習への取り組み方」であると考えられる。また「動機 づけ」という用語は Dörnyeiの 1)Whyを指すこともあり、混乱を招く恐れがある。よって、 本稿では「学習意欲」という用語を用い、「熱心に学習に取り組みたいと思う気持ち」と定 義する。ただし、先行研究において使われている表記については、それに従うものとする。 3.先行研究概観  ここでは、本研究に密接に関わる、学習意欲の変化に関する研究および質的手法を用い た動機づけ研究に絞って述べる。  今福(2011)は、台湾の大学における教室内学習場面に焦点をあて、学習意欲に影響を与 える要因を探った。協力者の日記およびフォローアップインタビューによる質的データか ら、要因同士がどのような関係にあるのかを分析した。グラウンデッドセオリーアプロー チ(GTA)により分析を行い、要因を ①楽しさや満足感を感じる授業 ②不満や退屈さを 感じる授業 ③情意要因 ④評価およびテストへの不満 ⑤教師と学習者の信頼関係 ⑥報酬 ⑦授業活動要因 ⑧他の学習者との比較要因 の8グループに分類した。そして、教師と学 習者の信頼関係を前提とした上で、楽しさや満足感を感じる授業や授業活動を行うことが、 学習意欲に強い正の影響を与えると述べている。また、他の学習者との比較要因は、直接 学習意欲に影響を与えるものであるとしている。  西部(2009)は、日本で日本語を学ぶ学習者を対象に、教室外も含めて学習意欲の変動 に関わる出来事を調査した。その結果、学習者が自身の「努力不足」に原因を帰属できる 出来事は意欲を高め、自分の力では変えられない出来事は意欲を下げることが明らかにな った。また、心理的要因の「可能性の予期」が学習意欲と強い関係を持つことが示唆され た。そして、学習意欲の維持のためには、学習者が自身の日本語能力の将来に可能性を感 じることが重要であると述べられている。西部が対象としたのは日本国内で学ぶJSL学習 者であり、意欲変動に関わる要因として教室外における出来事が多く挙げられている。し かし、学習者が教室内のみで生きるわけではない以上、国外で学ぶ学習者を対象とした場 合でも、学習環境に教室外を含めることは重要であると考えられる。  文野(1999)では、ある中国人留学生 N のライフ・ヒストリーを、N を知る第三者への インタビュー、調査者自身の観察記録を加え複眼的に解釈した。その結果、中国で出会っ た年下の友人へのライバル意識が、協力者の留学決定から来日後の進路変更に至るまでの 動機づけに強く影響していることが明らかになった。文野は、動機づけにはある環境にお かれた際比較的自然に誰の内面にも起こるものと、外的要因と個人要因の強い相互作用の 結果起こるものがあると結論づけている。  このように、学習意欲は教室内外の要因に影響を受けることが明らかになっている。し かし上に挙げた研究は、教室場面の要因や心理的要因など、一部の要因を軸に据えたもの である。

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ある。動機構成概念の7つの局面は、これまでの研究における第二言語学習動機の異なる 構成概念を7局面に整理したものである1)。これに動機づけの時間的変化を視野に入れた プロセス・モデルを合わせ、英語の長期学習継続者 20 名の学習 motivation に影響する要 因と、motivationの時間的な変容パターンを明らかにした。英語学習motivationに影響す る要因は、頻度は異なるものの7局面全てに現れた。また、motivationを上げる要因と下 げる要因が見出された。特に、教育文脈に関係した局面に属する「教師」「授業方法」は motivation を上げる要因としても下げる要因としても多くの協力者に言及されたことか ら、実際の学習環境の重要性を強調している。また、目標の特定も意欲向上要因として多 く言及されたことから、具体的で明確な目標を設定することの重要性が明らかになったと している。  岩本(2010)も同じ理論的枠組みを用い、外国語環境における英語学習者と日本語学習 者の言語学習ヒストリー(LLH)から、学習継続要因を明らかにした。Shoaib & Dörnyei (2004)と同様に、学習継続要因は7局面全てに現れた。また、日本語学習者に影響を与え る要因として「大衆文化」の存在が明らかになった。さらに、「仲間」や他者との関わり で生まれる自己概念が、意欲に影響を与える大きな要因であることが明らかになった。つ まり、形成される自己概念がポジティブなものであれば意欲向上につながり、ネガティブ なものであれば意欲低下をもたらすということである。  これらの研究は、質的データを用い、動機づけに影響する要因を包括的に検討したもの である。上記の研究では、要因は幅広い局面に存在することが明らかにされている。しか し、日本語学習者を対象としたこのような研究はまだ十分に行われていない。特に「学習 意欲」に焦点を当て、影響を与える要因を包括的に検討したものは、管見の限り見当たら ない。よって本稿では日本語学習者の「学習意欲」に注目し、学習意欲に影響する要因を 包括的に検討する。そして、協力者が置かれている文脈から考察する。 4.調査概要と分析方法 4.1 調査協力校の概要  まず、協力者が置かれている文脈を示すため、調査協力校であるタイ中部P大学日本語 学科の概要を示す。日本語学科長への聞き取り調査をもとに、筆者の勤務時における観察 も加え、(1)P大学日本語学科の概要 (2)日本語学科の学習者 (3)学習・実際使用の環境 の3つに分けて述べる。 (1) P大学日本語学科の概要  P大学は、タイ中部にある国立総合大学である。P大学における日本語教育は、1980 年代初頭に選択科目として始まり、副専攻コースを経て、2001 年に主専攻コースが開講 された。主専攻コースでは、総合日本語、会話、読解、作文、ビジネス日本語、通訳、翻 1) 「動機構成概念の7つの局面」の詳細は、4.2で述べる。

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訳、日本事情などの科目が開講されている。また、日本語版のコンピューターソフトの使 い方を学ぶ科目や、日本のビジネス組織でのコミュニケーションをテーマとした科目もあ る。また、4年時には日本語を使う職場での実習が義務付けられている。これは、日本語 学科が学生の日系企業就職を大きな目標としているからである。  一方で、日本語能力試験は重視されていない。日本語能力試験を受けずに卒業する学生 も多く、受験する場合でもN2以上の合格者はほとんど見られない。それでも、多くの学 生が卒業後はP大学周辺の日系企業に就職する。このように、協力校周辺での日系企業就 職において日本語能力試験はあまり影響力を持っていないといえる2)。そのため日本語学 科のカリキュラム内では重きを置かれていない。  日本語学科の教師は、タイ人教師が4名、日本人教師が3名である。タイ人教師は、ほ とんどが日本留学経験を持ち、日本語運用能力は非常に高い。タイ人教師4名中3名は長 年に渡りP大学での日本語教育に携わっている。反対に日本人教師は2年〜3年で退職し 入れ替わりが激しい。7名の教師は、科目により個人やチームで授業を担当する。学習者 は1年時から、タイ人教師のみ/日本人教師のみ/タイ人教師日本人教師のチームティー チング の3種類の授業を経験することになる。   (2) 日本語学科の学習者  日本語学科には毎年25名程度が入学するが、退学者もいるため、例年卒業時には15名 前後になる。男女比は女性が約8割以上と大多数であり、男性は1学年に5名前後(全学 生の2割前後)であることが多い。  日本語学科の学習者は、日本語学習の目的、大学入学以前の日本語学習経験の有無、入 学時の日本語レベルなどの日本語学習面のみならず、学習習慣や基礎学力、年齢、出身地 まで多様である。これは協力校の特徴である。  P大学では、学科ごとに学費や入学試験システムが異なる。日本語学科の学費は、他学 科のみならず他大学に比べても安く、経済的な面から選ばれる場合も多い。入学試験は、 大学が実施する一般教養試験に加え、日本語学科が行う面接試験がある。しかし、一般教 養試験の結果は重視されず、実態は面接のみによる選抜といえる。面接においても、あま りにも漠然とした興味を志望動機とする学生3)を不合格とするのみで、高校までの成績や 日本語の知識は評価対象とならない。さらに、入学試験の日程が遅く、他大学の結果が出 てから出願することも可能である。このような「入りやすさ」の面から入学を決める学習 者が一定数いる。一方で、P大学日本語学科を第一志望として入学する学習者もいる。「こ の地域で日本語を勉強するならP大学がいい」という評判から志望する場合もある。P大 学の日本語教育は比較的歴史が長く、教育内容にも一定の評価を受けていると考えられる。  また、高校以前に日本語学習を始めた学習者(既習者)と、大学で初めて日本語を学ぶ 2) これはタイ全般に当てはまるものではなく、あくまでもP大学周辺の状況である。 3) 「なんだかわからないが、外国語である日本語はすごい」というような認識を持つ学生など。

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学習者(未習者)も混在している。さらに、既習者内でも高校で受けた教育内容に差がある。 未習者・既習者の割合は年によって異なるが、平均すると半数ずつである。   (3) 学習・実際使用の環境  P大学が位置する地域は観光地であり、日本人観光客も数多く訪れる。これらの観光客 はツアーに参加している場合もあれば、個人旅行の場合もある。よって学習者は、日本人 観光客はもちろんのこと、日本語を含む外国語を使用するタイ人ガイドの姿も日常的に目 にしている。また、調査地の日本人観光客は、概ね日本語を学習している学生に対して好 意的であり、学習者がたとえつたない日本語で話しかけても交流が成り立つ。日本人観光 客の側から話しかけられることもある。加えて、P大学の周辺には日系企業も多い。30分 〜1時間程度の通勤圏内に、日系企業を多く擁する工業団地が複数存在する。日系企業勤 務者は大半が工場で着用する作業着で行動しており、街中にいてもすぐにわかる。また、 そこで働く日本人社員の生活範囲も学習者の活動範囲と重なる。さらに、家族、親戚、先 輩、近所の住人などが日系企業に勤めている場合もある。  このようにP大学の日本語学習者は、タイ人日本人を問わず日本語使用者を見かけたり 接触したりする機会が多くある環境に置かれている。ただし、日本語使用は学習者が望め ば可能であるものの必須ではなく、使用場面でも高い運用能力は必ずしも必要とされない といえる。 4.2 調査と分析の方法 (1) 協力者  協力者は、タイ中部P大学日本語主専攻の1年生から4年生、計 66 名である。内訳を 表1に示す4) 表1 調査協力者の内訳 学 年 協力者数 日本語学習開始時期 在籍学生数 高校以前 大学 合計 男性 女性 1年生 17 9 8 18 2 16 2年生 22 14 8 24 1 23 3年生 25 17 8 28 2 26 4年生 2 1 1 13 1 12 合計 66 41 25 83 6 77  1〜3年生とは調査時が初対面であった。4年生とは、元学生・教師の関係である。調 査時、4年生は企業実習中で登校していなかったため、対象から除外せざるを得なかった が、調査日に登校していた2名に協力を得られた。筆者との関係性の影響が危惧されたが、 1〜3年生の回答と比較した結果、問題はないと判断し分析対象に含めた。なお、本調査 4) データはすべて、調査時におけるものである。

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では性別は尋ねていない。以前の勤務経験上、協力校において不用意に性別を聞くことは、 ラポール形成および回答内容に影響を及ぼす可能性があると判断したためである。加えて、 男子学生の少なさから個人が特定される恐れもある。参考として、協力者以外も含む在籍 学生数を男女別に記す。 (2) 調査方法  自由記述式質問紙調査を行った。質問紙は 1)日本語学習を始めた理由 2)日本語学習意 欲が上がる状況 3)日本語学習意欲が下がる状況 を問う3項目で構成される。その内、本 稿では質問 2)、3)の回答を分析対象とした。質問紙はタイ語に翻訳し、回答もタイ語で 求めた。分析には日本語訳5)された回答を用いた。  調査は2012年11月に実施した。P大学教員の協力を得て、授業の前後の時間に学年ご とに行った。回答から回収までは、教員は立ち会わなかった。実施にあたり、回答済みの 質問紙はP大学教員の目には触れず、成績には関係がないことを特に説明した。回答時間 は制限せず、書き終わった者から退出して構わないこととした。所要時間は各学年 15 分 〜20分ほどであった。 (3) 分析の枠組み

 Shoaib & Dörnyei(2004)の動機構成概念の7つの局面(表2)を分析枠組みとした。こ の枠組みは動機づけに関わる種々の概念を整理したものであり、学習意欲に影響する要因 を包括的に検討するために妥当であると判断した。また、Shoaib & Dörnyei(2004)、岩 本(2010)でも分析枠組みとして用いられている。同じ枠組みを用いることで比較が可能 になり、日本語学習やタイP大学の日本語学習者に特徴的な要因の検討ができると考えら れる。 表2 動機構成概念の7つの局面 英  語 日 本 語 訳 例 1 Affective/Integrative Dimension 情意的・統合的局面 目標言語に対する態度、気分 2 Instrumental Dimension 道具的・実用的局面 現在の仕事、 就きたい職業 3 Self-Concept-Related Dimension 自己概念に関係した局面 自信、満足感、限界の認知 4 Goal-Oriented Dimension 目標に関係した局面 目標の設定 5 Educational-Context-Related Dimension 教育文脈に関係した局面 教師、教室活動 6 Significant-Other-Related Dimension 重要な他者に関係した局面 両親、友人、パートナー 7 Host-Environment-Related Dimension L2 接触と環境文脈に関係した局面 L2 との接触、学習環境

(Shoaib & Dörnyei 2004,小西 2006,岩本 2010を参考に筆者作成)

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(4) 分析方法

 Shoaib & Dörnyei(2004)に倣い、動機構成概念の7つの局面を分析ガイドとした照合 アプローチを採用する。これは、初めに分析ガイド(テンプレート)を作り、それを利用 してデータを分析する方法で、解釈のためにデータを体系的に縮小し明示的な形にするこ とが目的である。本稿では、SCAT(大谷2007)を一部援用した分析シートを作成して回 答をキーワード化し、7つの局面のどれに関連するか分析した。その際、1文に複数の内 容が含まれる場合は分けてキーワード化した。また、複数の局面との関係が読み取れる場 合は、複数局面に属するものとした。最後にキーワード同士を比較し、類似するものをま とめて、キーワード化しなおした。なお、分析過程においては複数人からコメントを得て、 検討を繰り返した。 5. 結果と考察  表3に、動機構成概念の7つの局面と抽出された要因を示す。要因は、動機構成概念の 7つの局面すべてに現れた。ただし、局面[2]道具的・実用的局面には、意欲低下要因は 見られなかった。以下、まず要因の分析・考察結果を向上要因と低下要因に分けて示し、 次に総合的考察を述べる。 5.1 意欲向上要因  意欲の向上要因で多く言及された上位3局面は[4]目標に関係した局面、[7]L2接触と 環境文脈に関係した局面、[6]重要な他者に関係した局面 だった。  局面[4]では〈理想モデルの存在〉6)が多く見られた。特に、局面[6]に属する〈先輩〉の 職業的成功、すなわち日系企業に就職し高額の給料を得ている姿が理想モデルとなってい た。以下に回答例を示す7)   ・卒業した先輩が良い仕事に就いて良い収入を得ているのを見ると、私ももっとがん  ばりたいと思う。[1年生] ・先輩や他の人に、日本語関係の仕事で成功したという話を聞いた時。[2年生] ・先輩が成功し、良い職に就いているのを見た時。[3年生]    このように、学年を問わず、日系企業に就職した〈先輩〉という〈理想モデルの存在〉が 意欲向上要因となっていることがわかる。局面[2] 道具的・実用的局面にも〈将来のため〉 〈将来就きたい職業との関わり〉という要因が見られた。調査地においては、日本語を使 う仕事、特に日系企業への就職が、主に経済面から学習者やその家族にとって憧れ・目標 となることが多い。したがって、日系企業で働く〈先輩〉は、道具的・実用的局面に関連 6) 以降、要因を〈 〉で示す。 7) 以下、本項における回答例はすべて、質問紙の(2)意欲が上がる状況 に対する回答である。

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表3 動機構成概念の7つの局面と抽出された要因 局 面 意欲を上げる要因 意欲を下げる要因 [1] 情意的・ 統合的局面 学習の楽しさ 勉強の大変さプレッシャー 体調・気分 [2] 道具的・ 実用的局面 将来のため将来就きたい職業との関わり 日本渡航の奨学金を得るため [3] 自己概念に 関係した局面 満足感 競争心 劣等感 自己効力感の不足 自己の能力への不満足感 挫折感 劣等感 自己効力感の不足 できるはずのことができない 自己の能力への不満足感 [4] 目標に 関係した局面 理想モデルの存在競争心による目標設定 必要性の認知による目標設定 大衆文化に関する目標設定 L2接触による目標設定 L2接触を想定した目標設定 修業計画に関する目標設定 目標に向けた努力と成果が見合わ ない ゴールの遠さの認知 [5] 教育文脈に 関係した局面 試験結果(悪い/不満足/良い)試験前 成績(悪い/良い) 指名された時に答えられない 学習内容の多さの認知 学習内容がわからない 学習内容の難しさ 宿題の多さ 学習量の多さ 学習内容の難度の上昇 学習量の増加 宿題の時間配分上の問題/失敗 試験結果(悪い/不満足) 成績(悪い/不満足) 「できない」 暗記の挫折 指名された時に答えられない 教師からの叱責・注意 日本人教師の話がわからない [6] 重要な他者に 関係した局面 先輩(理想モデル)友人(理想モデル、仲間、ライバル) 日本人(友人、恋人) 両親・家族への思い 先輩(苦労モデル) 友人(ライバル) [7] L2接触と 環境文脈に 関係した局面 実際使用場面の経験 実際使用場面での不満足感(会話、コ ミュニケーション) 大衆文化 (アニメ、ドラマ、旅行番 組など) 日本訪問・滞在への期待/憧れ 実際使用場面での挫折感(漢字)

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した理想モデルとなり、日本語学習意欲へ大きな影響を持つといえる。また、特に〈先輩〉 が理想モデルとして言及された背景には、P大学の学習環境があると考えられる。筆者の 勤務時、P大学では先輩後輩のつながりが非常に密であった。さらにP大学では、卒業式 が約半年〜1年後に行われ、社会人となった先輩が訪れる。つまり、協力者には少なくと も1年に1度、日本語を使う仕事に就いた先輩との接触機会が必ずある。まさに今、日本 語を使用して働いている同校の先輩の姿は、「自分も同じようになれるはずだ」という気 持ちを喚起するに十分であると考えられる。  局面[4]には〈理想モデルの存在〉の他、多様なきっかけによる〈目標の設定〉が現れた。 下に示す回答例のように、大衆文化や L2 接触、L2 接触の想定が、「〜ようになりたい」 という目標を生み、意欲向上につながっているといえる。   ・日本語のアニメを見る時や、本を読む時、歌を聴く時、聞いて意味が分かり、訳せ  るようになりたいと思う。[1年生] ・日本人に会った時、日本語をもっとがんばって勉強したいという気持ちになる。も  っと上手になれるよう勉強して、日本人とうまく話せるようになりたい。[2年生] ・日本旅行の番組を見た時、話したい、日本にかならず行きたいと思う。[3年生]  大衆文化やL2接触は、具体的な目標設定は伴わずとも8)、意欲向上要因となっていた。 局面[7]の〈実際使用場面の経験〉 〈大衆文化〉の抽出元となった回答例を以下に示す。   ・タイに旅行に来た日本人に会った時。[2年生] ・***(調査地)で日本人観光客と出会うと、話をしたいと思ったり、助けてあげた  いと思ったり、***の観光地を紹介したいと思ったりする。[1年生] ・日本人に会って、助けを求められた時。[1年生] ・日本のドラマを見るとき。[4年生] ・日本語のついた本や物を見ると、読めるようになりたい、理解したいと思う。それ  から日本旅行の番組を見た時。[3年生]  前述の通り、調査地には日本人観光客が多く訪れる。そのため、協力者には観光客との 接触の機会が多く、その実際使用場面の経験が意欲向上につながっていることがわかる。 また、上記の例からは、日本語を使ってホスト側としての役割を果たしたいと感じている ことが読み取れる。調査地における実際使用場面には、責任感や貢献したいという気持ち を伴う場面があり、それらも意欲向上をもたらしていると考えられる。  大衆文化に関しては、アニメやドラマに加え、旅行番組も意欲向上につながっているこ とが明らかになった。アニメやドラマは、原語で楽しみたい、内容を理解したいという気 8) 目標設定につながったと推察できるが回答に明確に示されていないものは、局面[4]には含めなかった。

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持ちを喚起する。一方、旅行番組は、日本渡航への憧れを掻き立てると共に、実際使用場 面の擬似的な体験にもなり、意欲を向上させていると考えられる。  また、局面[7]の実際使用場面に関しては、〈実際使用場面での不満足感〉も意欲向上要 因になっていた。 ・タイに留学や旅行に来た日本人に会って、自分が十分にうまくコミュニケーション  できなかった時。[2年生] ・日本で、文化大使としてのプロジェクトに参加した時、日本人とたくさん話したか  ったのだが、日本人の話す単語が分からないこともあり、もっとがんばって勉強し  たいと思った。[3年生]    上記の例からは、実際使用場面で自らの日本語力の不足を感じたことが、意欲向上につ ながったことがわかる。意欲低下要因に現れた〈実際使用場面における挫折〉が漢字使用 を巡ってのものである9)ことを鑑みると、実際使用場面の中でも、接触場面における不満 足感は意欲を低下させず、むしろ意欲向上につながると推察できる。  局面[6]重要な他者に関係した局面には、上述した理想モデルとしての〈先輩〉に加え、 学習のライバルや励ましあう仲間としての〈友人〉や、日本語の実際使用の相手となる〈日 本人〉の友人や恋人が現れた。また〈両親・家族への思い〉という要因が抽出された。以下 に回答例を示す。   ・友達の方が(試験の結果が)良かったりした時、もっと勉強しようという励みになる。  [2年生] ・友達(日本人の友達)と日本語で話せるようになりたい。[1年生] ・両親に誇りを持ってもらえるようにしたい。[1年生] ・よい将来のため、それから家族のため。[1年生]  ライバルとしての〈友人〉や、実際使用相手としての目標言語話者(本稿においては〈日 本人〉)は、Shoaib & Dörnyei(2004)および岩本(2010)にも現れた要因であり、同様の結 果となった。一方、上記回答例の3、4番目に代表される〈両親・家族への思い〉は、先行 研究には見られない要因である。Shoaib & Dörnyei(2004)における要因“Parents”は、幼 少時に英語学習のきっかけを与えた存在であった。また、岩本(2010)では、目標言語話者 としての両親が意欲向上要因となっていた。これらは「学習の支援者」であるといえる。 しかし、本稿で現れた両親・家族は、日本語学習に直接関係はなく、日本語を学習するこ とやその成果を通じて「喜ばせたい相手」であると解釈できる。この〈両親・家族への思い〉 という要因は、タイの社会文化を反映した要因であると推察できる。Webサイト『タイ国 9) 回答例 【日本の本を見て漢字が読めず、たくさんあった時。[2年生]】

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政府観光庁:AMAZING THAILAND』の文化の項には、「タイの人々のコミュニケーシ ョンにおいて、目上の人を敬うのは最も大切なことのひとつ。」との記載がある10)。また 筆者のタイ在住時の観察においても、「親孝行」という概念は、タイの人々の日常の言動 や価値観に深く浸透しており、社会的にも重要な概念であるという印象を持った。これら の社会文化的規範が背景に存在すると考えられる。  以上、意欲向上要因として頻繁に言及された3局面を中心に分析結果を示した。意欲向 上要因は、目標に関係した局面、L2 接触と環境文脈に関係した局面、および重要な他者 に関係した局面に多く現れた。また、これらの局面が相互に関連しあっている様子がうか がえた。加えて、抽出された要因には、P大学の学習環境や調査地の社会文化的文脈が反 映されていることが示された。 5.2 意欲低下要因  次に意欲低下要因の分析結果を示す。意欲を低下させる要因としては、局面[5] 教育文 脈に関係した局面 が圧倒的に多く言及された。中でも〈学習内容がわからない〉 〈学習内 容の難しさ〉〈宿題の多さ〉が多かった。〈宿題の多さ〉に関しては、より詳しい〈宿題の時 間配分上の問題/失敗〉という要因も抽出された。以下に回答例を一例ずつ示す11)   ・勉強が分からない時、やる気がなくなり、勉強したくなくなる。[2年生] ・難しい文法、難しい単語があった時。[3年生] ・時々、宿題が大変多いので、勉強したくなくなる。[2年生] ・宿題が非常にたくさん出ると、間に合うような時間配分を考えられず、できなくて  ストレスになる。宿題がうまくできないこともある。宿題が終わらず、くじけてし  まって、勉強したくなくなることがある。[3年生]  このように、教育文脈に関係した局面の中でも、特に日々の学習活動において意欲低下 を経験していることがわかる。Shoaib & Dörnyei(2004)では意欲低下要因として、局面[5] の“Teachers”“Methodology”、および局面[3]自己概念に関係した局面の“Satisfaction” が多く言及されていた。本稿の協力者の意欲低下要因も、局面[5] に属するものが多かっ たが、教師や教授法はあまり挙げられていない。また、局面[3] も意欲低下要因としては 2番目に多く言及されたものの、局面[5] に比べると言及数は非常に少なかった。したが って、意欲低下要因として局面[5] に属する日々の学習活動に関する要因が顕著に現れた のは、本調査の特徴的な結果だといえる。  2番目に多く言及された局面[3]には、局面[5] の要因と共起している要因が多かっ た。   10) http://www.thailandtravel.or.jp/about/culture.html 11) 以下、本項における回答例は、質問紙(3)意欲が下がる状況 に対する回答である。

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・勉強したのに分からない時。[3年生] ・勉強が友達についていけない時。[2年生] ・宿題や試験ができなかった時。[3年生]  以上の回答例から、〈挫折感〉や〈劣等感〉などの局面[3]に属する意欲低下要因は、教 育文脈の影響を受けていることがわかる。また、〈自己効力感の不足〉および〈自己の能力 への不満足感〉のように、意欲向上要因としても挙げられたものもあった。このような両 面性を持つ要因には、局面[5]における〈成績〉や〈試験結果〉の悪さ、〈指名された時に答 えられない〉などもあった。望ましくない出来事が起きたとき、奮起して意欲が向上するか、 挫折感を感じ意欲が低下するかには、学習者の個別性や他の要因との関係性が影響すると 推察できる。  以上をまとめると、P大学における意欲低下要因は教育文脈に関係した局面に集中して いるといえる。これは、JFL環境における大学生である協力者は主に教育文脈においてさ まざまな挫折・困難を経験しているためと考えられる。協力者は日本人との接触がある環 境にいるとは言え、日本国内のように、日本語使用が避けられない状況に置かれているわ けではない。それゆえ、実生活での日本語使用経験は、総じて「楽しい」経験であると考 えられる。なぜなら、JFL環境における一学習者としての使用に留まるため、要求される レベルが高くなく失敗しても大きな影響がないからである。したがって、日本語に関する 挫折や困難の経験は、教育文脈上に集中しているといえるだろう。加えて、本稿の協力者 の学習歴の短さも関係していると考えられる。Shoaib & Dörnyei(2004)では、意欲低下 要因として自己概念に関係した局面も多く言及されているが、その協力者は 20 年に及ぶ 長期学習継続者である。一方、本稿の協力者の学習歴は1年未満から5年半ほどであり、 後期中等教育および高等教育機関での学習が主である。岩本(2010)では、学習歴の短い 学習者ほど教室内の要因の影響力が強い可能性が示唆されており、本研究でもそれを支持 する結果となった。   5.3 総合的考察  まず、表3に示されるように、学習意欲に影響を与える要因は動機構成概念の7つの局 面すべてに現れた。また、要因同士の関連も見出された。これは、意欲に影響を与える要 因は多岐にわたることを示すものであり、学習意欲を捉える際には幅広い局面を視野に入 れる必要があるといえる。その一方で、意欲向上要因が現れやすい局面と、低下要因が現 れやすい局面が存在した。また、要因が特定の局面に集中する傾向も見られた。つまり、 どの局面が、どのように学習意欲に影響を及ぼすかには、差があることが明らかになった。 さらに、抽出された要因には先行研究との異同が見られた。このことから、学習意欲に影 響を与える要因の中には、多数の学習者に共通する要因と、ある学習者のグループに特徴 的な要因があると考えられる。

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 これらの違いは、学習者の個別性はもちろんのこと、学習環境や社会文化的文脈の違い にも起因すると考えられる。林(2006:51-53)は、第二言語学習/習得の個別性モデルを 提示している。そのモデルでは、『学習者要因』と『学習環境要因』は相互に作用しあい、 言語習得の過程に関わる。そして、学習者・学習環境の双方とも、『社会文化的要因』の 影響を受けているとされている。学習意欲は『学習者要因』に属するが、『学習環境要因』 や『社会文化的要因』の影響を受けるのである。本稿の分析でも、調査地における日系企 業の位置づけや日本人観光客の多さなどの『社会文化的要因』、および、日系企業に就職 する先輩の多さやその先輩との接触機会の存在などの『学習環境要因』が、意欲に影響を 与えていることがわかった。したがって学習意欲は、学習者を取り巻く文脈と切り離して 捉えることはできないことが明らかになった。 6.まとめと今後の課題  本調査では、学習者の「学習意欲」を対象とし、質的データから学習意欲に影響を与え る要因とその特徴を探り、学習者が置かれる文脈の中で捉えて考察した。分析の枠組みに は、従来の研究における第二言語学習動機の異なる構成概念を7局面に整理した「動機構 成概念の7つの局面」を用いた。その結果、学習意欲に影響を与える要因は7つの局面す べてに現れ、幅広い局面を視野に入れ包括的に検討する必要性があることが明らかになっ た。具体的な要因としては、意欲向上要因として〈理想モデルの存在〉 や、そのモデルと しての面を持つ〈友人〉 〈先輩〉 、社会文化的文脈の影響を受けた<実際使用場面での経験 >などが抽出された。意欲低下要因には〈宿題の多さ〉 や〈学習内容の難しさ〉 など、教育 文脈のワークロードに関係する要因が顕著に現れた。これらの要因は学習環境・社会文化 的文脈の影響を受けたものであり、学習意欲は学習者を取り巻く文脈と不可分であること が示された。  今後はインタビュー調査や学習者行動の観察などを含む追跡調査から、本調査で抽出さ れた要因がどのように学習意欲に作用するのかを明らかにすることが課題である。また、 本調査の協力者は日本語主専攻者であり、容易に学習をやめられる立場ではない。意欲低 下要因の偏りは、この協力者の属性を反映している可能性がある。したがって、学習を止 めてしまった学習者や、民間の教育機関などで学び比較的自由に学習を継続するか否かを 決められる学習者にも対象を広げた調査が必要である。それにより、特に意欲低下の側面 がさらに明らかになると思われる。また、異なる文脈における研究の蓄積も望まれる。引 き続き調査・研究を重ねて、意欲向上ストラテジーなどを含む教育実践上の応用方法を考 えていきたい。 付記  本稿は筆者が 2013 年度日本語教育学会秋季大会で行ったポスター発表の内容に、加筆 修正をしたものである。

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参考文献 磯田貴道(2005) 「学習意欲や動機づけに関する概念の整理へ向けて」 『広島外国語教育研 究』第8号,85-96. 今福宏次(2011) 「教室内学習場面における日本語学習意欲の変化 ─学習意欲を高め自律 学習を促す教師の役割─」 『淡江日本論叢』第23号,185-204. 岩本尚希(2010) 「外国語学習者の学習継続要因に関する一考察 ─言語学習ヒストリーか ら─」 『桜美林言語教育論叢』第6号,29-43. 大谷尚(2007) 「4ステップコーディングによる質的データ分析手法SCATの提案 ─着手 しやすく小規模データにも適用可能な理論化の手続き─」『名古屋大学大学院教育発 達科学研究科紀要』第54号2巻,27-44. 小西正恵(2006) 「動機・態度」津田塾大学言語文化研究所 言語学習の個別性研究グループ (編)『第二言語学習と個別性 ─ことばを学ぶ一人ひとりを理解する─』第二部Ⅱ-3, 春風社,pp.92-108. 桜井茂男(1997) 『学習意欲の心理学 ─自ら学ぶ子供を育てる』誠信書房 西部由佳(2009) 「教室内外での出来事による学習者の『学習意欲』の変動とその背景となる 心理的要因 ─『可能性の予期』に注目して─」 『小出記念日本語教育研究会論文集』第 17号,21-32. 林さと子(2006) 「第二言語習得研究から見た第二言語学習/習得の個別性」津田塾大学言 語文化研究所 言語学習の個別性研究グループ(編)『第二言語学習と個別性 ─ことば を学ぶ一人ひとりを理解する─』第二部Ⅰ,春風社,pp.48-58. 文野峯子(1999) 「学習過程における動機づけの縦断的研究 ─インタビュー資料の複眼的 解釈から明らかになるもの─」『人間と環境 ─人間環境学研究所研究報告─』第3号, 35-45. 守谷智美(2002) 「第二言語教育における動機づけの研究動向 ─第二言語としての日本語 の動機づけ研究を焦点として─」『言語文化と日本語教育』2002 年 5 月特集号,315-329. 八島智子(2004) 『外国語コミュニケーションの情意と動機 ─研究と教育の視点─』関西 大学出版部 羅暁勤(2005) 「学習者のモチベーションを研究する」西口光一(編著)『文化と歴史の中の 学習と学習者 ─日本語教育における社会文化的パースペクティブ─』第9章,凡人社, pp.189-211.

Dörnyei, Z. (2001) Teaching and researching motivation. Harlow: Longman

Shoaib, A. & Dörnyei, Z. (2004) Affect in lifelong learning: Exploring L2 motivation as a dynamic process. In P. Benson, & D. Nunan (Eds.), Learners’ Stories: Difference and diversity in language learning. Cambridge: Cambridge University Press. pp.22-41.

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参考Webページ

文化 | タイ国政府観光庁(Webサイト『タイ国政府観光庁:AMAZING THAILAND』内)   http://www.thailandtravel.or.jp/about/culture.html (2014年1月13日最終閲覧)

参照

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