電磁場の相対論的性質 : 高校物理の背後にあるもの
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(2) . 電磁場の相対論的性質 -- 高校物理の背後にあるもの --. 平. 野. 雅. 宣 ・細. 川. 富. 生・本. 田. 勤二郎. S I. は じめ に. ) 今日, 高校の物理教育 では, 電磁場に ついては じめから場の概念を導入して教える傾向にある.1 そこ では, 電荷や磁石がつくる電気力線や磁力線, 電流がつくる磁場, 磁場から電流を取り出すこ. t と(電磁誘導) z力などが対象に なっ ており, 電磁場を場の概念で理解するため ren , 電子に働く Lo に必要な内容はほとんど含まれている. ところ で, 電磁場について場の概念を導入して教えるとき, その背景として私たちは今日, 電磁. 場について どのような理解の仕方をしているのであろうか. この論文ではその点を中心に論ずるこ. とにする。. . ぶ 喜 警言姿室 オメ暮 春麗驚髪議す れない。 なぜ磁石の回転によって電流は流れない の か。 な ぜ 円 板 と 磁 石 の 間 でこ の よ う な 非 対 称 性. 図1:Faraday 型単極子誘導. が現われるのか. 磁石の回転によっ て磁石の周囲 の磁場には, どのような変化が生ずるのだろうか. 磁石に引きずられて磁場も回転するの であろう. か. 電荷の運動や磁石の運動を取り扱うとき, どうしてもそのような疑問に直面せ ざるを得ない. 実は, これらの疑問の中にこそ今日の電磁場の考え方が含まれていると言うことが できる.. 上に述べたいくつかの疑問は, 電磁場の相対論的な性質を考慮することによって理解される. つ t まり,電荷の運動が電流に相当すること,Lo ren z力が 現われることなどはすべて電磁場の相対論的 性質に基くものであり, そのことによってはじめて実験に現われているのである.. 233.
(3) . 平野雅宣・細川富生・本田勤二郎. ここ では, 上に述べた疑問点を念頭におきながら, 電磁場の相対論的性質を論ずる. 次の三点が 議論の中心になる. (1) 電磁 場はどのような物理量なのか.. (2) 電磁場は どのような変換則に従うのか. l l方程式はどうなるのか. (3) 運動系では Maxwe また, 先に例示した単極子誘導は, 磁石の回転によって周囲の磁場がどのように変化するのかとい. う問題を提起している. それは場としての電磁場の存在様式の理解にかかわって非常に興味深い. その意味から, 特に単極子誘導の起電力も論 じておく.. 話の順序は次の通りである. S2で電磁場の概念がどのように確立されてきたのかを歴史的に概 観する. それは同時に今日の電磁場の考え方を理解することにもなる. S3で電磁場の相対論的性 質を一般的に論ずる. S4で運動する系での電磁場についていくつかの例を取り扱う. S5で単極 子誘導の起電力を論ずる. S6がむすびである. また, 付録として反対称テンソルとしての電磁場 が与えられている.. S2. 電磁場の概念についての歴史的概観 4 ) ) i) 問 題 の は じま り3. よく知られているように,電磁場の実体を近接作用の立場から,はじめて空間に求めたのは Fa ra ‐ day である. Fa raday は有名 な電磁誘導の発見とその実験事実から, 空間が磁化していることに気 付いた. それは, それま で単に抽象的なものと考えられていた磁力線や電気力線の物理的な存在の 可能性を意味するものであった.そのことが Fa radayに電気的および磁気的現象が空間そのものと 深 く か か わ っ て い る こ と を 確 信 さ せ る に 至 っ た. そ れは 次 の Faraday 自身の言葉の中によく表わさ. れている.「……実験に従えば空間は磁気を帯びている. しかし, 仮にエーテルの存在を信ずる立場 から言えば, 空間という概念はエーテルの概念を含まなければならない. いいかえると, 空間の状. 態ないしは条件に関して, 今後いかなる新しい概念が生じようとも, それは, たっ たいま実験との 関連において空間と呼ばれている考え方に含まれることを認めなければならない. 私は, どちらか. といえば, 重さのある物質は物理的磁力線の存在に対して本質的なもの ではないと確信している.」 (文章は文献3より引用した.) 5 } ) i i) 数学的定式化4 Fa l lによって受け継がれ, 数学的定式化が行われた. Max ‐ raday の物理的力線の概念は Maxwe l l we は磁力線や電気力線が非圧縮流体の運動を表わす流線と類似していることに着目して, その物 l lの理論に特徴的な 理的な “アナロジー (類似性)“ から定式化を試み, 成功した. それは Maxwe 変位電流の概念を含むものであって, 同時に電磁波の存在を予言するものであっ た. し か し, こ の 物 理 的 ”アナロジー” は, 同時に, 非圧縮流体として運動する媒質 (エーテル) の l lに と っ て は エ ー テ ル がつ く る 流 線 が, 結局, 力 線 を 存 在 を 前 提 と して い る. そ れ ゆ え に, Maxwe. 表わすもの であって, 空間のもつ電気的・磁気的性質は, 力学的性質をもつエーテルがとる一つの 運動状態にすぎないものであった. それは電磁場を場の概念で把える今日の理解の仕方とは非常に 異 な っ た も の であ る.. 6 } ) i i i ) 実験的検証と理論の整理4 Maxwe l lの電磁 場の理論の理論としての正しさは He t r zに よる変位電流およ び電磁波の実験的. 234.
(4) . 電磁場の相対論的性質. l lが与えた式そのものは, 電磁場や今日いう ポテンシャ 検証によっ て確められた. しかし, Maxwe l lの理論を t ルを含む複雑なもの であっ て, 概念的に整理されたものではなかった.He r zは Maxwe. 整理し, エーテルを含めあらゆる物質中には電気と磁気と二種類の乱れが存在するということ, ま たその乱れの大きさは 獅 (電場の強さ) および H (磁場の強さ) という方向をもつ量 (ベ クトル) で表わされるという要請をおいた. その上で, 彼は静止しているエーテル中,で 賦,H が従う式とし l l方程式として周知の四つの式を与えたのである. て, 今 日 Maxwe. t しかし,He r zによる電磁波の存在の確認は, 当時は, 媒質としてのエーテルの存在を決定した実. tz 自身も, エーテルに一方において電磁 的性質 (Maxwe l l方程式) を, 他方 験 と 見 倣 さ れた。 Her. l l方程式を修正 においては力学的性質(ガリレイ変換)を与えて, 静止エーテルで成立する Maxwe して, エーテルの運動が電磁気的に及ぼす効果を検出する試みを行ったが, 結果は否定的に終っ て ) い る。7. 8 ) ) i v) 新 し い 進 展4. l l 1887 年, Mi che sonと Mo r ey は光の伝播に関する実験を行ない, 静止エーテルに対する地球の. ) 運動について否定的な結果を得た.9. こ の 実 験 結 果 は, 特 に, Lorentz の 電 子 論 の 展 開 に 深刻 な 問 題 を 投 げか け た. Lorentz は こ の 難 問. を, 運動方向に対する空間の収縮という大担な考え方を導入することによって克服し, 更に, 運動 する物体における時間のおく れを示す局所時の考えを導入した. このことにより今日 Lorentz 変 換 として知られている. 〆=〃 . (2-1 ). ----. ′ 二一 云. 乍 ず. (ただしβ=v/cでvはx方向への速度). を導き,. l l Mi ‐Mor son ey の 否 定 的 な 結 論 が 自明 の も の で あ る こ と を 示 す こ と に 成功 し た。 更 に che. l l方 程 式 の 形 が 不 変 で あ る こ と を 証 明 した こ こ に お い て, エ ー テ ル は, こ の 変 換 に 対 して Maxwe .. は力学的特性を失い(ガリレイ変換ではない!) , 電磁場は力学と独立な物理量として存在すること が確立されたのである. それは著しい進展であっ た。. し か し, Lorentz に と っ て は, エ ー テ ルは(絶 対 空 間 に)不 動 の も の と して 存 在す る の で あ っ て(真. l l方程式はそこで成立する) の Maxwe , エーテルに対する相対運動の効果を高次まで計算しつくす l l方程式の形が保たれるということであっ て, その ことにより, 結果として運動する系でも Maxwe t 限りでは Lo z 収縮や局所時の物理的な意味は不明のまま残ってしまうことになる. ren 0 ) v) 相対論現わる1. Ei in は, この Lo te t ns ren zの理論に全く新しい観点から物理的な解釈を与えることによって, 最. 終的な解決へと導いた. それは次の 二つの原理的な仮定に基いている。 (イ)全ての慣性系で物理法則は同一の形をとる。 (相対性原理). (ロ)全ての慣性系に対して光速は 一定 である (光速一定の原理) . t この最初の仮定は Lo ren zがエーテ ルの存在の記念碑として残 しておいた不動性 を意 味のない 235.
(5) . 平野雅宣・細川富生・本田勤二郎. ものとして葬り去るものであった.二番目の仮定は,時刻の同時制について新たな吟味が必要であっ t て, 絶対的な意味での時間というものは存在しないことを述べている. そして,Lo r en zの得た結論 i t を導くには, この二つの仮定から出発するだけ で十分であることを Ei e ns n が示したのは余りにも. 有名,な話である. ここにおいて, エーテルはもはや不動性すら失っ た何の力学的性質も持たないものとして残るし t かない. それは正に, 時間と座標空間が同等の意味をも っ て異なっ た慣性系の間で変換(Lo ren z変 換) する物理空間そのものであることを示していた. ここに電磁場はその空間に相対論的な場の量 1 ) として存在することが確立されたのである.1. 2 ) S3. 電磁場の相対論的性質1 i) Lorentz 変 換. S2でも述べたように, 相対論は, いかなる慣 性系でも同 じ物理法則が成立することを, 基本原 ′ ′ 理として含んでいる. それは-っの慣性系が絶対 z (均 ) x3) z( 的な意味で存在することを禁じており, 慣性系は. ( x ) y 2. 相対的ないみ でしか存在しない. そして, 異なっ た慣性系の間の変換則は Lo t r en z変換に 従う.. 1 ノ一 V. い ま, 図 2 の よ う に, 静 止 した L 系 か ら, そ れ. に 対 して 尤 軸 方 向 に 速 度 り で 運 動 し て い る じ 系. へ の Lorentz 変 換 を 考 え る. そ れ は 前 節 の (2 一. 1) 式と同一になるが, 乙 系 ( 系) の時間成分 t(ギFi )として, 時間と空間座標を 4 を 為 =i c cr. o. X(x7) X′ (. o′. ). 図2:L 系 錠 γ, 2 あるいは ね, 物, 為) とそれ. 化 . に対して 軸方向に速度りで運動する. 系. (メ, ダ, 〆 あるいはェ ; 壕 填) ,. t 元ベ クトル化 (ただし第4成分は虚数) して取り扱うと, Lo ren z変換は行列形式で, 、. . . . . 0. 1. 0. 0. 0. 0. 1. 0. . . . . ノ. と表わされる. ただし γ=1/. 乍. る.. 1 2 尤2 3 尤3 4. (3一.). Frである. この行列が変換行列として Loren t z変換を特徴づけ. 系 が速 度 り=(偽 ろ, 後)で任 意 の 方 向 に 運 動 して い る とき, そ の Lorentz 次に, 乙 系に対して 変換は どうなるであろうか. 一般には少し複雑になるが, 結果だけを示すと, 変換行列は次のよう )β (γ-1 )β (γ-1 立 二 望2L ・β 3 2β 2 ・β ,十 ,γ 2 2 β β. β. (γ-.)β1β2. A(β)=. 236. β2. 1十. (γ - -1)鷲 β2. (γ一 β β 彦 13. (γ一 β β 彦 23. - 弟・γ. - 弟2γ. 2. (γ{1)β2β3 β2. ( )鷲 1十 亨 -Zβ3γ. 2β2γ. 3-2) (. 娩γ γ.
(6) . 電磁場の相対論的性質 3 ) に な る.1. ただし, β=v/c=(A, 角, 焦) β1 およ び γ=1/ , β=1 t での Lo r en z 変換を与える変換行列 である. i i) 電流および電磁 場の Lo t ren z 変換. T 戸である。 これが最も一般 的な形. 空間と時間が4元ベクトルとして Lo t r en z 変換を受けたように, 電流j=(ム , み, ル)と荷電密度 ベ t en z変換を受ける. 電流の4元ベクト ルを ( 九 p も4元 クトルを形成し, Lor cp) ,ル ,ゐ , ル =i とすると (成分を表わす×, y, zの添字については4元ベ クトルでは1, 2, 3が用いられる) , そ の Lorentz 変 換 は か;. 卿 か. (3-3). 4 )ただし A“ ′ で与えられる.1 , し は変換行列の成分, ん(“) は 乙 (L) 系の4元電流 である. 変換行 列として (3-2) を用いれば, 上の変換は電流と荷電密度について次のようにまとめることが で き る.. ′=′+ 伊 1 )歯 ・ i (リガ ー 卿 ( 3-4). ただし, ( ) はベクトルの内積 である. v・j 次に, 電磁 場については付録で示すように, 電磁場は反対称テンソルの物理量 である それは . , 電場の強さ (賦) と磁束密度 (B) を用いると, 次のような行列形式で表わされる . 0. ル. ール. ー ÷E. -&. ○. ル. ー÷ &. ル. ール. 0. 一÷ &. . . . (F〆 )=. ( 3-5 ). . ところで, 行列の成分 を 表 わ す ”, リ は 4 元ベ ク ト ル の 足 であ る か ら, 反 対 称 テ ン ソ ル の Lorentz 変 換は 3-6 ( ) で与えられる. ただし, F〆 (F卿′ ) はL (L′ ) 系の電磁場 である. 変換行列として (3-2) を用 し いると, 上の変換は, 電場の強さと磁束密度に ついて次のようなベクトル形式にまとめることがで き る.. 捗 γβ-(γ-1 )リキ ザ L さ 如 ×E) E 霧′=γβ-(γ-1 ) 噛 i 」 走 xB). 3-7) (. 237.
(7) . 平野雅宣・細川富生・本田勤二郎 た だ し, (v×B) は ベ ク ト ルの 外積 で あ る. こ れ が 電磁 場 の Lorentz 変 換 の 一 般 形 であ る.. i i i ) 非相対論的近似. ところで, 通常, 私たちは電磁場の相対論的性質を非相対論的な実験の中で見出すの である. そ t こで, 先の Lo ren z変換に よっ て与えられた式の 非相対論的近似 (v《C. だからβキ0あるいは. γキ 1) を 調 べ て お く. ま ず, (3 - 4) に つ い て は 明 ら か に ′ もヒメ. ( 3-8 ). ) が電流に相当することは明らかである. となる. は じめの式から, 電荷の運動 ( pv また, 電磁場については (3-7) より お′ ; β. (3-9 ). 弱′ 二 弱 十ひ× β. となる.ここではv×B が運動系では新 しく電場として観測されることとが重要である.磁 場の中を 運動する電荷に働く Lorentz 力 が 現 わ れ る 原 因 も こ こ に あ る.つ ま り, 系にのっ た電荷eは 肥 か ら e脳 の 力 を 受 け る そ れ を L系 で 観 測 す れ ばe 個 十v× B) と な り, Lorentz力e ×B) が現わ. . れ る の で あ る. こ の こ と は 正 に, B と 賦 が単 に ベ ク ト ル であ る と いう こ と だ け で なく, (3 - 5)で. 与えた相対論的な反対称テンソルの 物理量であることに 起因している. l l方 程 式 i v) Maxwe. l l方程式に従う. そ ある慣性系(たとえば 乙 系)で観測された電磁場は, その慣性系での Maxwe. れは次の四つの式で表わされる. div β = O. 3-10 ) ( div D = P. また, D は電束密 度, H は磁場の ただし, 鷺 , B は前述のように 電場の強さおよび磁束密度である. 強さ であっ て, 真空中では D. =E oE お よ び. B = 〆。封. (3-11). の関係が成立する. 恥 駒 はそれぞれ真 空の誘電率および透 磁率 であって, C=1~窃マぶ は真空中 での光速を与える. また p, jは荷電密 度および電流であることは 前述の通りである. l l方程式は どうなるであろうか. この電磁場を別の慣性系(L′系)にいる人が観測すると Ma×we そのとき, じ 系の観測者は, 観測した電磁場について, その慣性 系 (じ 系) で定義された時間と空 l l方 程 式 が l l方 程式を 見出す であ ろう. そ れは Maxwe 間座標 を用 いて 同 一の 形を した Maxwe. Lorentz 変 換 に 対 して 形 を 不 変 に 保 つ こ と を 意 味 す る. つ ま り,Lorentz 変 換に よ っ て 関 係 づ け ら れ. l l方程式は, いかなる慣性系 る慣性系は 互いに同等のものであ って, 電磁場の理論としての Maxwe 238.
(8) . 電磁場の相対論的性質. においても同等の意 味をもち同じ形 で成立するのである.. S4. 運動系での電磁場 (具体例) 前節での一般論から明らかなように, 電磁場の相 対論的な性質は, 運動系 で電磁場を取り扱うと きによく表われる. そこで, 電磁場の相対論的な性質について理解を深めるために , l l方程式は慣性系ごとに成立すること ① Maxwe , ② 電磁場の変換則は (3-7) (非相対論では (3-9)) で与えられること 。 の二点を念頭において, 運動する系 での電磁場についてよく知られた具体例をいくつか調べておく ことにする. 取り扱いは非相対論的に行う (従って変換式は (3-9) 式) . i) 磁 場 & の中を銅線が横切るとき (図3). ○. ′ ′ …′ ′ 0,. →. V. ′ Xx ,. N 図3 :磁場の中を運動する銅 線. 図3により, 乙 系では磁場 β 2の中を銅線が x軸方向に運動することによ って, 内部の自由電子. (-e< 0)は y 方 向 に Lorentz 力 (Fy= 例β)を受け 電流が流 れる 一方 じ 系では (3-9) , , 。 ,. より明らかに,. L′系 ; βだ =βz,Ey ′= -〃Bz. ′による力として観測す る ま の電磁場を観測し, L 系でLo t ren z力として観測された力を電場 Ey . た, む 系では明らか に Lo t ren z力は現われない (じ系では銅線は静止している) , i i) 磁場 & の中を回路が横切るとき (図4) Z. y ↑ D. 〒z. ↑. -- - - - - - -. A + + + + + ++ + B. C. 図4 :磁場の中を運動する 回路. 239.
(9) . 平野雅宣・細川富生・本田勤二郎. t r en z力 (F 図 4 より, L 系ではi) と同様に 回路内の自由 電子はLo y= 例β) を受 け, その た. 系 ではi) と全く同じ理. めに電子の移動によ って回路に図4のよう な十と一の分極が現われる. 由から, それは E~に 起因する. と こ ろ で, 乙 及 び. l l方程式が成立し, それを用いて回路の起電力を 系は慣性系なので Maxwe. l l方 程 式 か ら 系 では Lorentz 力 が 現 わ れ な い の で, Maxwe 論ずることができる. この場合, 特に l l方程式は 系の Maxwe 直接に回路の起電力が求められる.. m′″′+ 帯. 4-1 ( ). -。. ′ ぬこよる微分を意味する) いまは磁場に時間的変化がないので ag/ar=0 となる( roで は ガ,y . , 系では回路に起電力は現われない. それは, 図4でA→D, B→ と な っ て, 結 局 ror g = 0 より. Cの方向に電場が働き, 互いに打ち消し合うために回路に電流を生み出す起電力とはならないので t z力 で論じるしか ある. 一方, 乙 系ではこの場合電場はない存在 しないので, i) と同様に Loren 声 し、 .. この例から明らかなように, 一つの 電磁気的現象も慣性系が異なってくると取り扱いも違ってく る. 一般に, 電場と磁場が存在する慣性系の中を回路が運動しているとき, その慣性系では回路の l l方程式) と Lo t 起電力については 電場 (Maxwe ren z力の双方からの寄与を考慮しなければいけな. 5 ) し、 1. ) 電磁誘導が生ずる例 i i i あまり現実的でないが, いま L 系で 乙系 、; Bx= -尤, Bz=z. で与えられる磁場の中を,紗 平面内の半径 γの 円 回路 (中心はz軸) がz方向に速さ り で運動 して. Z. Bz T. いる場合を考える(図5) .この場合,円回路がのっ ′ L 系で ている 観測される電磁場は (3-9) より, 系 ; Br= -%~ βザ= 0, Er= 0 ,. Eザ ニ ー リ尤,. βz = z. となる. これをL′系の時間 (の と座標を用いて 表わすと, L′ 系 、 ; B r = - 尤, Er = 0 ,. β ザ = 0,. Eダ ニ ーリx ;. ▲. ー. → →↓ ↓. Ez ニ0. 図5:磁場の中を運動する回路 (電磁誘導の例). Bz = z′+ りr. E〆 =O. l l方程式に従う (ただし, 非相対論的近似が施 してあることに注 系 での Maxwe 意!). この場合, L′系では β!が時間的に変化するので電磁誘導による起電力が現われる. それは と なる. こ れ は. y= 応 ぜr= ”。 留 αg 〉 仔警丹 那 -- 〆 240. 4-2 ( ).
(10) . 電磁場の相対論的性質. Ey. y. 図6:回 路の起電力. 図7:磁場の中で回転する銅円板. なる. ただし,d臨ま回路に沿っての線分,ds は回路に囲まれた面要素 である. 事実, 円回路の各 系に静止した円回路には 電場 脳 に における 電場の強さを調 べて みると図6の ように なり, i) の場合とよい対 これは磁場が時間的に変化しないi って起電力が生じていることがよく分る.. になるであろう。 i v) 磁 場 & の中を銅円板が等速回転するとき (図7) これは非常によく用いられる例 である. まず, 乙 系では明らかに, 磁 場の中を円板が回転するこ t z力 ren によっ て, その中の自由電子も回転運動し, Lo. (4-3) 割ナる。 ただしvは個々の 電子の速度, B はその 点で の 磁 束 密 度 であ る. こ の Lorentz 力 は 動 径 合って おり, 図1のように回路をつくれば, OA 間に起 電力が生じて, 回路に電流が 流れる(単極 導) . ところで, これを銅板 内の電子にのった系でみると どうなるか. 明らかに, 円板上の各点は L 系 寸して異なった速度で運動 しており,そのために,銅板内の自由電子は全て異なった慣性系にのっ いる. 従って, ある点 (たとえば図7のP 点) で自由電子が観測する電場 (驚) , 磁場 (富) で求 グローバルな それを用いて も, それはその点におけるものであって, 局所的な意味しかなく, l l方程式を考 えることはできない。 このように, 非慣性系での取り扱いは複雑であ での Maxwe. S 5. 単極子誘導の起電力. 最後の例と して単極子誘導の起電力を取り扱 っておく. i) Fa raday 型単極子誘導 6 )それは 図1の Fa raday型の単極子誘導につ まず,広野氏が卒業研究で設定した問題を考える。1 , ) (次頁脚注) っ た.* ①. 円板だけを回転させると電流が流れる.. 241.
(11) . 平野雅宣・細川富生・本田勤二郎. ② ③ ④ ⑤. 円板・磁石ともに回転させるときも電流が流れる.. ②は磁石の回転方向に 無関係 である. 導線の両端が回転軸上にあるときは電流は流れない (図1の 点線) . 磁石のみが回転しても電流は流れない.. ①について 円板の回転によっ て起電力が現われることは, S 4 のiv) で述 べ た こ と か ら明 ら か であ る. い ま 一様な磁場 & の中を円板が回転 (角速度 の) しているとすると, 中心から γ(≦A;A は円板の半 径) ‐ の点にある自由電子が受ける Lorentz 力 は, 動 径 に 沿 っ て F = -8〆①& と な り, OA 間 で 生 じ. る起電力は. ( 5-1 ) で与えられる. ②, ③および⑤について この場合,磁石の 回転によっ て磁場がどのような影響を受けるのかを考えておく必要がある.S 2 で論じたように, 今は電磁場は場の量として理解さ れており, 時間の経過とともに空間内を移動す ることはない. 従っ て, 回転対称な磁石を回転させても磁場は全く変化しない. そのことは, S2 ) S4のi でも述べたように電磁場の存在は物質と独立のもの であることを示 していると言える▽ i) でみたように, 磁場に時間的変化がない限り, 静止した回路で起電力を取り出すことは でき ない . 従って, ⑤で電流が流れない のは当然である. また, ②と③では磁石が回転 しても磁場に変化は生 じないので, 結局①の場合と同様に磁場の中を回転する円板によっ て起電力が生じ, その大きさは ②, ③ともに (5-1) に等しい. また, 上に述べた ことから, ①と⑤の間に現われる非対称性は場としての電磁場の存在様式に基. づ く も の であ る こ と は 明 ら か であ る .. ④について これらについては論ずるまでもあるまい.. ,田. 醐 型単極 子誘導. ア. w ~. 導体磁石 を用 いた 図8の He t r z型単極 子誘導. を考える. i) の場合と同じ理由 から, 回転対称 な磁石 では磁石の回転によっ て磁石内の磁場に変 の従 っ て 磁石の 回転は一定の磁 化は生 じない! , 場の中を回転する自由電 子をつくり出すことにな り, それが受ける Lorentz 力 に よ っ て 回 路 に 起 電. 力が生じ, 電流が流れる. 磁石内の一様な磁場を. 図8:品edz型単極子誘導. *)この五つの設問はFa radayが実験結果を基にして設定したものである. 広野氏は, 卒業研究で, 電磁石を用い. て①と⑤について実験的に確かめている. 242.
(12) . 電磁場の相対論的性質. 1 7 ) B として, 磁石の半径をAとすると, その起電力は (5-1) で与えられる。. S6。. むす び. 今まで, 高校物理の背後にある今日の 電磁 場の考え方 (場の概念) を明らかにするために, 電磁 場について 主に理論的な側面から論じた。 それは, 電磁場が相対論的な場として存在することであ り, 次 の 三 点に ま と め る こ と が で き る。. ( 1 ) 電磁場は反対称テンソルの物理量である。 ( 2 ) 電磁場の変換則は (3-7) 式 (非相対論的近似では (3-9) 式) で与えられる。 l l方程式は各慣性系で同等に成立する. ( 3 ) Maxwe. t S 3で述べたよう に, 4元電流の Lo ren z 変換は電荷の運動が電流に相当すること を示 してい. る。 それは, , 電荷と同じ慣性系にいる観測者は電場のみを観測するが, 電荷と異なった慣性系にい る観測者は, 電荷の運動の効果として磁場も観測することを意味している. t しかし, 電磁場の相対論的な性質の最も著しい特徴は Lo ren z力が現われることである。 S 4 で 系に静止した電荷 (正しくは荷電粒子) はあくまでも電場 (脳) を観測 し, それによる力を受けているのであるが, L 系で観測すると 肥 はv×B を含んでおり, そのため. 具体例を調べたように,. に Lorentz 力 が 現 わ れ る の であ る。 つ ま り, Lorentz 力 が 現 わ れ る 理 由 は, 電 荷 に 働 く 力 を 観 測 者. が電荷と異なる慣性系で観測しているからに他ならない, それは, もちろん, 電場および磁場が単 にベクトルであるだけでなく, 反対称テンソ ルの物理量であることに起因していることは言うまで も な い。. t S5で述べたように, 単極子誘導の起電力は正に円板内の自由電子が受けるその Lo ren z力によ る。 しかし, 磁石の回転を伴うとき, 磁石の回転によって磁場がどのような影響を受けるのかを考 えなければならない. 電磁場は空間の各点も こ場として存在するのであっ て, 時間の経過とともに空 間内を移動することはない. 従って, 回転対称な磁石では磁石の回転によって磁場に何の変化も生 じな い。 S 5 の i) で述べたように, ①と⑤の間の非対称性は電磁場の場としての存在様式を反映 しているということができる. その意味で, 単極子誘導は電磁 場の場としての存在様式を理解させ るうえに, 特異な教育的役割を果たす可能性があることを示唆しているといえる.. 私たちは特に電磁場の相対論的性質を論じてきた. しかし, それは相対論的な速度の世界での観 t 測だけを意味するのではない. 私たちは電磁場の相対論的な性質を, たとえばLo r z力という形 en で, 通常の実験の中で観測しているのである. 付 録 本文中 (3-1 0 ) 式より, B, 配 は ポテンシャ ル A と め を用いて, . -grad の β = rot A, 弱 ; - --- . と 表 わ す こ と が でき る. い ま, ポテ ン シ ャ ル を. & ‐A. 2= ん, A3. 之. 4二 ÷の 243.
(13) . 平野雅宣・細川富生・本田勤二郎. と4元化して,. と す れ ば, Fメジ は B, 聡 を 用 い て. (F〆)=. -÷ & &. -&. 。. -÷ &. と表わされる. つまり, 電磁場は反対称テンソ ルの物理量である.. 〈参考文献およ び注〉 1) 岡 小天, 大川章哉編 「新訂物理1」 および 「改訂物理1 1」 (啓林館, 昭和5 7年度用) 倉賀野志郎 「教授学シリーズ No 4:高等学校における 「 場 」 の概念を中心とした電磁気学の指導 」(北海道大学・ . 教育学部教育方法学研究室, 1 ) 97 8 2) 科学史の観点から特に単極子誘導を論じたものとして, 清水孝一, 須藤喜久男 「単極子誘導の歴史的概観」(北海道科学史ノート創刊号, 19 ) 73 3) 大野陽朗監修 「近代科学の源流 -- 物理学篇1」(北大図書刊会, 19 4 )p 1 7 07 . . 1 (培風館, 1 4) 広重 徹 「物理学史1 9 68 ) 」 5) 前述3) p 1 3 5 . . 6) 前述3) p 1 65 . . t 7) He r zの理論を取り扱った教科書として, 砂川重信 「理論電磁気学」 (紀伊国屋書店, 19 )p 308 75 . . 8) ローレンツ 「電子論 (広重徹訳)」 (東海大学出版会, 197 3 ) l l 9) この Mi che s on・Mo r eyの実験は相対論の教科書では必ず論じられている. ) 辻 哲夫他編 「相対論」 1 0 (東海大学出版会, 1 06 9 )p .1. 湯川秀樹監修 「アインシュタイン選集」 (共立出版, 197 1 )p 19 . . 1」 1 1 ) 大野陽朗監修 「近代科学の源流 -- 物理学篇1 (北大図書刊行 会, 1976) p.328. ) 参考にした教科書としては前述7) の他に, たとえば, 12 内山龍雄 「相対性理論」 (岩波全書, 1 9 ) 7 7 i IE1 l t J Jackson”C1as John Wi s rodynami ) ca ec cぎ ( eyand Sons .D. .1975 ,lnc 13 ) 紙面の都合上, 導出方法は載せないが, たとえば, 前述12 ) のJa 5 32~p 1 ) を参考にす cksonの教科書( 54 p . . る とよ い.. 14 ) 同じ添字が二度現われているものについては1から4まで和をとる.. 15 ) 起 電力 に なる の は Lorent z 力 そ の もの では なく て, v×B であ る. 結局, 乙 系 では E+v×B (いま は E=0) l l方程式以外からの寄与である 以後 Lo が起 電力 に なる が, v×B は Maxwe t en z力による起電力とよぶとき , r .. はv×B からの寄与のことを意味する. 16 ) 広野達也 「運動する媒質中における電磁気学」(北海道教育大学物理学科卒業論文 (札幌分校) 9 ) 82 ,1 1 ) 磁石が回転対称であることが効いている. 回転に関して非対称な磁石では, 磁石の回転によって周囲の磁場に 7 変化が生ずる (この場合も磁場そのものが動いているわけではない) ので, 磁場が物体と独立な存在であること を理解するという目的には, 余り適していないと考えられる. ) もちろん, 磁石は非相対論的な回転をするとしている. また, 回転によって磁石内部に変化はないとしている. 1 8 244.
(14) . 電磁場の相対論的性質. 謝辞 著者のひとり (本田) は, 本稿作成にあたって, 特に, 平山雄三氏および森田一彦氏 (共に北大・理学部物理教 室) には非常に有益な議論をして頂きました. また, 高村泰雄先生 (北大・教育学部) および岩田健三先生 (北 大・理学部物理教室) には非常な励ましを受けました. 深く感謝するとともに, この場を借りて厚く御礼申し上 げます. (平野雅宣 本学助教授 札幌分校・細川富生 札幌分校・本田勤二郎 北海道大学理学部物理教室). 245.
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