毅然とした態度で厳罰化を推し進める「生徒指導」の位相について -「ゼロトレランス」理論の限界-
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(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第60巻 第2号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(Education)Vol.60,No.2. 平成22年2 月 February,2010. 毅然とした態度で厳罰化を推し進める「生徒指導」の位相について. −「ゼロトレランス」理論の限界−. 山田 潮・桑原 晴. 北海道教育大学札幌枚比較教育学研究室. RegardingthePhaseofStudentGuidancetoPromoteSevere PunishmentthroughaResoluteAttitude. −TheLimitationsoftheZeroToleranceTheory− YAMADAUshioandKUWABARAKiyoshi DepartmentofComparativeEducation,SapporoCampus,HokkaidoUniversityofEducation. 概 要 近年の教育動向として「成果主義」「厳罰主義」へと変貌,傾倒した視座がみられ,子どもの規範意識の 低下を憂い,猶予なき積極的な「生徒指導」が学校教育に影を落としている。本稿では,些細なことでも見 逃さず毅然とした態度で形式的・表面的手法を活用して解決するのではなく,子どもと向き合った実体のあ る教育実践を通して量的・質的に個々が変容していく生活軸に即した実証的な「生徒指導」の必要性を明ら かにしている。予定調和論的な理論で実証が見られない「ゼロトレランス」「プログレッシブ・ディシプリン」. の脆弱さを概観しつつ欠落した部分を補完する観点で,日常的な教育実践において子どもの些細な言動を細 密に見取り,変容を記録する実証的な実践を試みた。子どもが自己決定意識を育むための具体的関わり自己 決定行動へと変容していく際の教育活動(場)の重要性を実証的に論じてい. 1.「厳罰化」へと傾倒した教育動向 (1)ゼロトレランス導入の意図. る。. 的・表面的な手法として次々と現場へ降ろされて くる。子ども間による「いじめ」の問題,命をも 奪ってしまうような過激な問題行動,規範意識の. 現在,全国の学校現場では子どもに関わる諸問. 欠如等,子どもの問題行動をこれ以上積み重ねな. 題が多様化・複雑化し混乱している状態がある。. い手だての一つとして,文科省は2000年以降規則. 大きな問題が起こるたびに次々と新しい教育政策. に対して厳格であり,米国である一定の成果を上. が提起されるが,学校教育の具体的な状況を的確. げたと言われているゼロトレランス方式を生徒指. に把握し,それに基づいたものとは言えず,形式. 導に取り入れる検討を始めた。. 13.
(3) 山田. 潮・桑原 清. 具体としては,近々相次いだ重大な問題行動等. 人れる動きは,時は異にしているものの米国学校. への対応の充実を図るために「新・児童生徒の問. 現場で生じた諸問題と通ずるような昨今の我が国. 題行動対策重点プログラム」(’05)をとりまとめ,. の学校現場,子どもの様子と酷似しているためと. さらに国立教育政策研究所生徒指導研究センター. 思われる。生徒指導に関する様々な問題点がク. が,文科省初等中等教育局児童生徒課と連携して. ローズアップされ,パターナリズムに由来する厳. 「生徒指導体制の在り方についての調査研究」報. 罰的な規律などを求める伝統的な手法への回帰,. 告書(’06)を作成している。どちらも生徒指導. 子どもの規範意識の低下を懸念する言説の過熱ぶ. の対応に関する指導基準を明確化する必要がある. り,問題に対する即効的方法を切望する世論,そ. こと,それらの児童生徒又は保護者等への周知徹. して早急に問題解決しなければならない現実にあ. 底を図った上で問題行動や非行等に対してはあら. る教師たちの気運と連動した形からも想像でき. かじめ定められている規則や罰則に基づき「して. る。. はいけない事はしてはいけない」「毅然とした粘 り強い指導」が大切だと碇案されている。さらに この趨向は,同センターから出された「生徒指導. (2)ゼロトレランスの弊害. 米国学校現場においては,「ゼロトレランス」. 資料第3集」(’08)においても引き続き踏襲され. というパノブティコン的監視・取締体制での抑止. た内容になっており,「いじめている子供や暴力. 力により,一過性の成果をあげたにもかかわらず,. をふるう子どもには厳しく対処,その愚かさを認. 近年,ゼロトレランス導入への批判が現れはじめ. 識させる」「暴力など反社会的行動を繰り返す子. ている。それは大学関係者,弁護士や保護者等か. どもに対する毅然たる態度」1といった基本軸を崩. らであり,情状酌量のない厳格な処罰を肯定する. していない。. ゼロトレランスに対して批判的で教育的効果はな. これらは,伝統的な人格教育・割れ窓理論と密. いとする動きである4。つまり,強制的な必罰指. 接に絡み合いながら全米へ広がっていったゼロト. 導よりも,子どもが自己有用感を感じられるよう. レランス理論と共通する部分が多い。90年代後半,. な手だてや,自己決定意識をもち,自己決定行動. 当時の米国学校現場においては,暴力や麻薬,銃. をしながら進むべき道を探っていく過程を温かく. の蔓延に苦慮していた。そこで子どもへのしつけ,. 見守り,示唆を与えていく関わりが,より自律的. 生徒規律,怠学是正,学習保障する観点から即効. に社会的適応と自己実現の両方を満たし,より良. 的方法を模索していた世論の高まりと連動した形. い人間関係を構築できる力を育むのではないかと. で,このゼロトレランスが波及していく2。また,. いうものである。. これは19世紀に入って積極的に主張された「バレ. 我が国の「ゼロトレランス」(プログレッシブ. ンス・パトリエ」3の考え方に近接する。段階的な. ディシプリン)の全国導入は,子どもへの管理強. 罰則規準を設け,子どもの些細な問題行動にも,. 化を増幅し,指導基準に従わせ守れない場合には,. 毅然とした態度でその規準を機械的に運用し,問. 罰を累積的に与えていく一貫した指導を展開でき. 題そのものだけでなく行動を起こした子ども,問. る。確かに,生徒指導での指導基準が明確に設定. 題兆候のある子どもも排除したわけである。結果. されれば,「誰でも」「どこでも」「プレることなく」. として,パノブティコン的監視・取締体制が学校. 一律に指導でき,表面的には問題事象は減ると. 内外にわたって強化され,上からの強権的な指導. いった即時的効果はあるだろう。しかし,規則に. 排除の論理が貫徹した「ゼロトレランスという抑. 違反した子どもには,寛容さなしで対処し(高等. 止力」により,校内における「暴力・けんか行為」. 学校:停学退学処分,小中学校:出席停止)シス. は減少していく。. テマチックな罰則規定に従って責任を取らせる指. このように,生徒指導にゼロトレランスを取り. 14. 導が,子どもの自信を喪失させ,教師の顔色をう.
(4) 毅然とした態度で厳罰化を推し進める「生徒指導」の位相について. かがいながら「びくびく」過ごすような状況を生. 性の関連について「活動に対して有能であるが自. み出す可能性がある。実際は,教師の顔色に敏感. らの意志で自己決定できると心から感じられない. に反応しながら行動し「バレなければいい」といっ. ならば,いくらそれがうまくできても内発的動機. た行動規範のダブルスタンダードが生じるだろう5。. づけを高めることはないし満足感も生まれない」. これが子どもに規範意識を醸成し,規範を内在化 させる有効な手段なのであろうか。. 「さらに内発的動機づけは人の自律性を支えるよ うな対人的な文脈において促進される」9と述べて いる。. (3)ゼロトレランスが見落としているもの. ゼロトレランスに欠落している部分は,失敗や. このように教師は,子どもが内在化すべき構造 を培う「学校」という媒体の中で,子ども自らが. 弱さから学べる1、レランスがないことであり,子. 自律感,有能さ,関係性への欲求を満たすことが. ども自らの力と意志で自己決定しながら行動する. できる環境を整えていく必要がある。つまり,必. 自治的(自律的)な活動の端緒を阻害することで. 罰をちらつかせて規範を守らせようとしたり,守. ある。子ども同士で「なぜいけないのか」「どう. る態度をインドクトリネーションするのではな. したらよいのか」といった規範を学び合うような. く,時間や手間がかかっても,本当にその子の自. 機会をも奪ってしまうのである。. 律性を支援したいのであれば,行動と結果を結び. 自己決定する機会を保障されず,十分に発達さ. つけるしくみが重要なのである。例えば子どもの. せていないバランスを崩した子どもの自己決定感. 日常の生活を軸とした些細な言動を細密に記録化. は,「自分の勝手・個人の自由という考えを道徳. しながら子どもの変容を励まし伸ばしていくよう. 領域や慣習領域へも適用し,反社会的行動や大人. な関わりや,子ども同士で「なぜ守るのか」「ど. への反抗心を生み出している可能性」「本来なら. うしていけばよいのか」といった相互に自立でき. ば個人の判断に委ねられている個人領域まで他者. るような関わりを生み出す場を設定することなど. の判断や決定を優先させようとするかもしれな. が考えられよう。このような活動の蓄積が,社会. い。つまり,後者の場合,他者や規則に対する適. に出てからも持続・発展し得る規範意識を育むこ. 度の依存から,「指示待ち人間」になったり,自. とにつながっていくのではないだろうか。. らの進むべき道を見つけられず不適応になる可能 性もある」6という指摘がある。. 人間の「内発的動機づけ」について研究をすす めたことで有名なデシ(E.L.Deci)は,「自己決. 2.学校教育の教師・子どもの状況(実態調査) (1)目 的. 定感」と「有能感」という二つの要因を感じるこ. 子どもは規範をどのようにとらえ実際に行動し. とができる活動に従事するとき,人は内発的に動. ようとしているのか,規範意識が本当に低下して. 機づけられた行動をしていると説いている。つま. いるのか,小学校高学年を対象に実態調査を行い. り,内発的動機づけを維持するためには,自らが. 分析を加えた。同時に,学校現場で苦労している. 有能と感じ,自律的であるという感覚を認識して. 教師たちにも学級経営の難しさ,教師からみる子. いることが必要なのだということなのである。周. どもたちの事態,生徒指導観等を問う内容の実態. 囲から強制されたり命令されながら受動的に行動. 調査も実施し分析を施した。. するのではよくないのである7。 さらに他者とのよりよい結びつきや関わりにお いて生じる「関係性」も内発的動機づけを高揚さ. (2)方法 被調査者((手教師(多子ども). ①公立小学校5・6学年担任184名,調査資料. せ,さらには個々の自尊感情の高まりまでもうな. 配布した学校74校に対し,回収できた学校数は51. がす8と説いている。自己決定感,有能さ,関係. 校であった。②公立小学校5年283名(男子141名,. 15.
(5) 山田. 女子142名),6年307名(男子147名,女子160名),. 学級数は5・6年ともに10クラスであった。. 潮・桑原 晴. □とてもそう□わりとそう田あまりそうでない田ぜんぜんそうでない. ○質問紙の内容((手教師(彰子ども). ①学級経営,子どもの学習生活実態,子どもの 規範意識について,②規範意識,基本的生活習慣, 自らを振り返る自己評価,学級の満足,担任への. 信頼,友達との関係について尋ねた。 ○調査方法. 石狩管内の南部地区1校,中部地区2校,北部 地区2校に直接依頼し,アンケー1、用紙をまとめ て送付し対象者へは各学校で配布してもらう。休 み時間等をつかって回答してもらう。回答された. 教師のとらえ. 子どもの意識(5・6年). 図1 教師や大人の前だけ守ればよい. 調査票は各学校でとりまとめ実施者が回収した。 ロとてもそう□わりとそう国あまりそうでない固ぜんぜんそうでない. (3)結 果. 調査で明かになったことは,子どもと教師の規 範意識について少なからず「ずれ」があった。教 師が思っているよりも子どもは,意識をもって規 範遵守しようとしている実態が見られ,外在化し ていた規範意識が徐々に内在化へと着実にべクト ルを進めている事実があった。一方教師は,現下. の子どもの動態から「規範意識が低下している」 「必罰化していく必要がある」と厳しく指導する. こと,強権的に規範遵守を刷り込んでいくことへ 傾倒している兆候がうかがえる結果となった。. 教師のとらえ. 子どもの意識(5・6年). 図2 細かい決まりを身につけるために厳しく指導 する(子:してほしい). (4)分 析. 図1からは,教師から見た子どもの規範意識と 実際の子どもの規範意識を比べてみると少なから ず開きが生じている。この開きを子どもの意識と 教師の意識の「ずれ」ととらえる。. 図2は「ずれ」が徐々に大きくなるに従い,互 いの信頼感を歪め,教師の役割が「守れないから 守れるように矯正する」だけのものとなってしま. あまりそうではない. う恐れが出てくる可能性を示唆する。. 図3のように,規範は面倒なものだと認識して いるにもかかわらず,自分たちで決まりは作って. ぜんぜんそうではない. いきたいと答えており,学年が上がるにしたがい その値は強くなっている。表1からも子どもは, 規範は自分たちがより良く生活していく上でなく. 16. 図3 自分たちで決まりを作りたいか.
(6) 毅然とした態度で厳罰化を推し進める「生徒指導」の位相について. てはならないものであると認識している。また主. 要であり,どちらか一方に力点が傾斜してはバラ. 体的に決まりを守ろうとする姿勢を自身の内面に. ンスが崩れてしまう。その結果,教師が抱く独善. 取り込むためには,規範そのものについて考える. 的な鋳型に必罰と厳罰をちらつかせながら子ども. 機会を得たいという要求が含まれていた。. を押し込んだり,何をやっているのか全く分から. 表2の自由記述からは,子どもが考える要求で. ないで活動している子どもが現れるのである。. あるから直感的・感覚的であったりするかもしれ. 図4・5からは,教師にとって,指導基準を明. ないが,その中には我々教師や大人へのまっとう. 確化し毅然とした態度で指導することが子どもを. な要求の断片が紛れ込んでいる可能性があり,今. 取り巻く様々な問題を打開する有効な手だての一. の学級の現状を的確にとらえ改善を求めている切. つであるようだ。細かい決まりを厳しく指導して. 実な要求が垣間見られた。そのことを教師は,しっ. いく傾向もあり,「ダメなものはダメ」と毅然と. かり見取ることが大切ではないか。. した態度で対応していることがわかる。. 一方で,子どもに対して外から与えていかねば. さらに図6からは,体罰を否定している年代に. ならないものも当然ある。しかし,子どもが自然. ばらつきがあるものの,体罰は絶対禁止であるは. 発生的に必然性をもって取組む活動,そのような. ずにもかかわらず,体罰に頼る指導観や体罰を容. 教育的営みが実践できることとの相関の問題が重. 認する風潮が,極少数ではあるが,教師の中に少. 表1 記述式調査(子ども:A/ト学校の例) 05学年 自分たちで決まりを作っていきたいか? はい13% いいえ 88% 「はい」と回答(抜粋). ・自分たちで決まりを作った方がそうしなきゃいけないと感じることができるから。 ・小学生は好奇心が強いので,たまについ行っちゃダメなところに行くことがあるけど,強く言いすぎたら余計に行き. たくなるので先生方はたまに注意するぐらいがいいと思います。 「いいえ」と回答(抜粋). ・今でも十分決まりがあるのにこれ以上決まりが増えたら決まりを守れなくなるかもしれないから。 ・学校や学級の決まりとかめんどくさいから自分たちでつくろうなんて思わない。 06学年 自分たちで決まりを作っていきたいか? はい 63% いいえ 33% 無回答1 「はい」と回答(抜粋). ・私は自分で作った決まりを自分で破るのはいやです。でも先生達の決めた決まりは縛り付けられた感じでなかなか守 ることができないから自分たちでつくりたい。 ・自分たちで守る決まり,自分たちのことだから自分たちで考えたい。 「いいえ」と回答(抜粋). ・大人が決めた決まりを守ることがいい。なぜなら子どもが決めるより大人が決めて奥が深い。. 表2 記述式調査(子ども:B/ト学校の例) 子どもたちが担任の先生や対して言いたいこと,伝えたいこと(自由記述). ・女子の中で何人かでかたまって行動しないでみんなで仲良くしたい。 ・学校の決まりを少し厳しすぎないでほしい。 ・みんなはきちんと仕事をやっているけど,友達は何もしないでいるからきちんと仕事などを責任持ってやってほしい し,先生がよくわかっていないのに怒ったりするのをやめてほしい。. ・勉強をわかりやすく教えてほしい。高い理想を私たちに押しつけないでほしい。たまにはみんなの意見を聞いて先生 の性格を直してほしい。自分が失敗したら終わらせるのに生徒が失敗したら自分のことを棚に上げて怒るのをヤめて ほしい。家庭のことまで首をつっこまないでほしい。 ・友達関係のこと。中学校に行ったら今のクラスじゃなくなってしまうから,あんまり仲の良くない友達とも仲良くし. たい。担任の先生のこと。どうでもいいことでもすぐ怒る。差別。 ・運動が大好きなので体育の時間を増やしてほしい。学校の行事でいろいろなところを見学したい。 ・先生達が思っていることと,自分たちが思っていることとは違うとわかってほしい。先生が言ったことが間違ってい. るときがあるので自分のミスを認めてほしい。 ・自分の身は自分で守れるから帰宅時間を決めないでほしい。家庭学習をさせないでほしい。. 17.
(7) 山田 潮・桑原 晴 表3 記述(教師による自由記述) 子どもの規範意識が低下しているととらえている(抜粋) ・自分中心に物事を考え,周りのことに意識がいかない。決まりを守ることの必要性を理解する力の欠如あり。周りに. 流される傾向が大変強い。 ・親の指導力不足や親の意識と子どもの意識の同化。 ・自分だけが規則を破っているわけではないという考えや自分が規則を破るとどうなるかということを想像できない。 ・悪いと思っていてもみんなが守っていない。どうして私だけ守らないといけないのかという自分本位に考えてしまう ことが多い。なぜ決まりがあるのかまで考えないと考えようとしない。 子ども規範意識は低下していないととらえている(抜粋) ・規範意識が低下しているのではなく,規範意識を養う場や環境が減っている。. ・低下していると感じるほど平気でルールを破っている子は少ない。 ・規範意識が低くなっているとは思わない。むしろ昔の方が危ない遊びをしたりすることは多かったと思う。ただ耐え る力,我慢する力,人とのコミュニケーションなどは低下していると思う。. 田とてもそう田わりとそう固あまりそうでない国ぜんぜんそうでない□無回答日とてもそう 目わりとそう 国ぜんぜんそうでない □無回答. 国あまりそうでない. 5年以下(22名). 5年以下(22名). 6∼10年(32名) 6∼10年(82名). 11■−15年(41名) 1ト15年(41名). 16∼20年(42名) 16∼20年(42名). 21∼25年(24名) 2ト25年(24名). 26∼80年(19名). 31年以上(3名). 図4 細かい決まりを身につけるために厳しく指導. 26∼30年(19名). 81年以上(3名). 図6 軽い体罰もやむを得ない. する(教職年数との関係). Dとてもそう日わりとそう国あまりそうでない国ぜんぜんそうでない. なからずある事実が明らかになった。 表4からは,子どもの率直な意見を聞き取った。. 5年以下(22名). 賛成意見の子に「悪いことをして家で叩かれるこ とがあるか」と問うと全員「ある」と解答する。. 6∼10年(32名). 反対意見の子たちにも同様の質問をすると7∼8 11∼15年(41名). 名の子が「ある」と解答する。データ数が少ない ので一概には言えないが,反対意見を持っている. 16■−20年(42名). 21−25年(24名). 子の発言から,「叩かれる」などの身体的な矯正 の仕方が決して子どもの心に響いているわけでは なく,かえって信頼関係を壊す要因(悪いと決め. 26−30年(1g名). つけられる)になっていることがわかる。興味深 かったのは,「外から叩くという行為による矯正. 31年以上(3名). 図5 指導基準を明確にし毅然とした態度で指導. 18. があったとしても内面はかわらない」とか「叩か れることで「おまえは悪いやつだ」と決めつけら.
(8) 毅然とした態度で厳罰化を推し進める「生徒指導」の位相について 表4 聞き取り(子ども) 厳しく正していく手法の一つ「叩く:げんこつ」について(A小学校4学年32名 聞き取り) 「げんこつ」に賛成(2名). ・やっぱり悪いことをしたんだから,叩かれて当然だ。 ・叩かれて痛いから,次悪さをしなくなる。 「げんこつ」に反対(27名). ・叩かれることによって,「おまえは悪いんだ」と頭ごなしに決めつけられるような気になる。 ・「悪いことだ」とわかるためには,外から叩くようなことをしてわからせるのではなく,一人一人心の中で「悪い」. と思わなければ意味がないと思うから。 わからない(どちらとも言えない)(3名) ・叩かれてわかるような気もするし,叩かれてもわからない時もあるし,どっちもわかる気がする。. れることが嫌だ」という内容であった。9∼10歳. たり,教師から見れば稚拙な要求であったりする. の子どもであっても,大人がする行為について冷. かもしれないが,その要求の中には教師へのまっ. 静に見つめている一端を垣間見ることができた。. とうな要求の断片が紛れ込んでいる可能性があ. 若干,横道に逸れるが,この「叩く」というし. る。したがって拡がる可能性がある端緒を,自分. つけについて保護者に聞き取りをする機会に恵ま. たちの生活に密着させようとしている芽を,教師. れた。叩いたり,強い口調で叱責する方法で,子. はしっかりととらえなければならないし,規範が. どもに善悪の判断や規範を遵守することの大切さ. より自然と行動に転化できる到達点まで推し進め. を伝えている保護者が意外に多いこと,また自分. る好機であることを見逃してはいけないのであ. が子どものときにされたことを,繰り返しやって. る。. いるといった連鎖型のしつけがあることがわかっ. 教師が思っているよりも子どもは,意識をもっ. た。結果として「子どもはどのように変わりまし. て規範遵守しようとしている実態があるし,外在. たか」と尋ねると「その場限りですね」「また繰. 化していた規範意識が徐々に内在化へと着実にべ. り返します」と述べていたことが印象的であった。. クトルを進めているのである。学校生括の中で子. 日々忙しい保護者にとって「すぐ解決させたい」. どもは,様々な規範から逸脱するような言動を引. 「叩いてわからせる」といった反応をとってしま. き起こすかもしれない。しかしそのことだけに特. うのだが,子どもには,あまり変化が見られない. 化して子どもの動態がこうであるから「規範意識. 実態が家庭であることがわかった。. が低下している」「必罰化していく必要がある」. とはならない。つまり現下の水準だけで子どもの (5)実態調査分析からの考察. 発達段階を規定するのではなく,子どもの発達段. 5・6学年の子どもは,教師や周りの人から少. 階が,教師が求める到達点あるいは子ども自身が. しずつ影響を受けながら規範意識を内在化し,着. ここまでやってみようと目標としている点まで進. 実に規範意識を伴った遵守へと変容している段階. 行しつつある状態であること,徐々に成熟しつつ. にある。その歩みは遅く,場面によっては退行的. ある状態にあるということをしっかりと受け止め. な行動に出たり,未だ注意を受けたりして行動に. 見逃さずに,さらに伸長させる手だてを講じてい. 移す段階かもしれない。しかし子どもは,着実に. く必要があると考える。. 教師が目指している到達点に向かっており,今ま で外在化していた規範意識が徐々に内在化できる よう試みている。その事例が,学年が上がるに従. い自分たちで決まりを作っていきたい強い要求で ある。たとえ,子どもがその事態から学び能動的. な姿勢を示したとしても,直感的・感覚的であっ. 3.教育実践分析と教師の活動 子どもが心の中で「満足感」「安心感」「連帯感」. 「自信」が感じられるような人間関係を,学び合 う活動と,子どもたち自ら問題解決していく活動. 19.
(9) 山田. 潮・桑原 晴. を通して構築し,一人一人の持ち味よさ・自信を. (1)Sを通して相互の人間関係づくりの実践. 引き出すことを主眼とした教育実践を論じる。. OSとの出会い. まず子ども一人一人の見取りを細密に記録して. 学校長より「学級全体として低学年の時より約. きた。その記録には,多種多様な問題事例との格. 束事が守れず,授業もなかなか成立せず当時の担. 闘が記されている。未解決・現在進行形もあり,. 任が大変苦労している」と説明を受け,前担任か. 教師として反省をすべき点も少なくはなかった。. らの引き継ぎで「特にSという子に注意してほし. 対子どもだけではなく,保護者を巻き込んだ事例. い」と伝えられる。低学年の時から保護者に学習. などがある。この記録が結果として,その子に教. 状況,生活習慣,友達とのトラブルについて説明. 師が「どうか かわり」「どう変容したのか」「今後. しているが,なかなか改善されていないとのこと. の手立てはどうするのか」といった教師自身の指. であった。このSは,授業中周りの子にちょっか. 導の方法や内容を振り返ることができる貴重な材. いをかけたり,鉛筆や消しゴムで遊んでいたりす. 料となり,子どもへの揺るぎない指導観を構築で. るなど,授業についていけない類の子であった。. きる要素となった。これが,時間や手間がかかっ. 幼稚園の段階から現在に至まで友達に暴力をふ. ても,子ども自らのよくなりたいという力や子ど. るったり,悪口を言ったり,物を壊したりするい. も同士の相互作用を活用しながら,子ども自身の. わゆる暴れん坊であった。身体は小さく,どこか. 自発的な変容を「促す・支える」取組みの実証的. 暗い表情をときどきするS。友達は全くいないわ. 裏付けとなったことはいうまでもない。. けではないが,それほど多くない状態であった。. 次に,記録化は,保護者に一定の効果を生むこ. 新学期当日,全校児童が体育館で緊張の面持ち. ととなった。「子どもたちの変容」を具体的事例. で静かに座っている中,この学年だけガヤガヤと. を通して学級通信・懇談会・個人懇談で伝えるな. している。来賓が来ている中,緊張した雰囲気が. ど子どもの実際をわかりやすく丁寧に伝えること. ただよっている体育館で,この学年だけが宙に浮. で,結果として教師と保護者との関係性が豊かに. いているようであった。目立たぬよう話をしてい. なり,積み残された案件への改善がみられるなど,. る子どものところへ行ってみると,その中にSが. より安定した信頼関係が育まれ,その子について. いた。「静かにしなさい」と声をかける。男性教. の深い交流を実現することができた。. 員から怒られたためか,一瞬Sの表情も変わった. さらに教師間の意識,職員室の雰囲気の改善に. が依然として止まない。「話を止めろ」と少し大. も効果が現れた。学年打ち合わせの際に,個々の. きな声で注意をすると「ジロツ」と睨みつけてき. 複雑で微妙な様態を記録することの大切さを紹介. た。私は結局Sのそばなら離れられず集会を終え. したり,問題事例に対してどのような対処をした. ることとなる。. か,気になった子のちょっとした言動を意識して. OSに対する冷ややかな態度. 話をすることで,ある事例を通して共感的な雰囲. Sはよく忘れ物をする。忘れてくるたびに,周. 気ができ,他学年教員からも意見や情報を得られ. りの子たちは「またS忘れてきたの」と少しあき. るようになった。教職員が協働し合い,学び合い. らめと小馬鹿にしたような声を上げる。たぶんS. ながら個々の子ども・集団を高めていくような共. の低学年の噴からの継続的な実態が周りの子たち. 同関係ならば,このような情報の共有化が,職員. にその反応をさせたのであろうことは予想でき. 間を活性化させる手段であることは間違いない事. た。馬鹿にする子に対してSは,「お前だってい. 実であるといえる。. つも忘れるくせに」「絶対許さないからな」と厳 しい顔で脱みつけている。明らかにSはクラスの 中で浮いている状況であった。その周りの子の様 子を観察してみると「(発言:え∼,また忘れたの). −ご(1.
(10) 毅然とした態度で厳罰化を推し進める「生徒指導」の位相について. 小馬鹿にする子=男子2名,女子4名」「(発言: 昨日の00も忘れてきたんだよ・いつもそうだか. OSの本音と周囲の変化 1学期の終わり頃,グループ活動で学習内容を. らしょうがない)と丁寧にSの状況を解説してく. 発表する場面があった。その準備の際,Sは蛙員. れる子=女子2名」「説教タイムが始まるのでは. から預かっていた発表原稿を忘れてきてしまう。. ないかとビクビクしている子=男子2名,女子2. しかも自分の割り当て作業をやってこなかった。. 名」「無視しているわけではないが関心を示さな. 当然班員たちからはSに対して文句を言い始め. い子=クラスの大半」という構造がわかってきた。. る。Sは蛙員から総攻撃されたことに腹を立てた. Sの実態改善,そしてSに対する周りの子たちの. ことと,みんなで自分をのけ者にしたことへの孤. 意識を何とか早急に改善させなくてはならないと. 独感により,共同で作っていた発表物をびりびり. 思い,Sに対しては多少口うるさくても「忘れ物. に破き「おれなんかいなくてもいいんだ」と叫び. をしない」「提出物は期日までに出す」「毎日少し. ながら教室から飛び出して行った。教室から飛び. でも勉強する」と繰り返し伝えるようにし,周り. 出すことは今まで何回もあり,すでにSを探す数. の子には「人の失敗や過ちについて非難したり馬. 名の子が固定化していた。今回もその子たちは「先. 鹿にしてはいけない」ことをその都度指導するこ. 生探してくる」といって教室から出て行き私も後. とにした。. を追った。一緒に探した数名の子がSを抱きかか. ある時,休み時間にSとクラスの男子数名が教. え「泣くなって」「気にするな」と励ましている. 室前の廊下でプロレスのような遊びをしながら. 様子を目にすることができた。いつもなら小馬鹿. じゃれ合っていた。職員室から戻った私は,「廊. にしたり露骨なあきらめ顔をする子たちであった. 下で遊ぶことはいけないことだ」と彼らに注意を. が,この時はSの立場を擁護する励ましの言葉を. するが,私が教室に戻った後もSたちはその遊び. かけている。後で話を聞いてわかったことである. を継続していた。Sは自分の存在や思いが相手に. が,「教室だとついついSに言ってしまうんだよ. 認められないと機嫌を悪くする傾向があり,それ. な。でも探しに行ったときは自然と「大丈夫か」「泣. がもとで喧嘩に発展することがよくあった。この. くな」とか励ましているんだ」と語ってくれた。. 時も友達のなにげない一言「Sと遊んでいるとす. Sとは別室でじっくりと話し合うことができ. ぐマジになるからな」から喧嘩が始まった。その. た。何か問題が生じると必ず2人で話し合いをす. 言葉を言った子の腹を足蹴り一発「おまえむかつ. るが,この事件の時の話し合いはいつもと違って. くんだ」と大きな声を張り上げる。周りの子たち. いた。Sの継続的に繰り返される日々の言動に対. が「何だ」「何があった」と叫びだし,「Sが悪い. して,私自身の慣れと即決しなければならない学. んだ」と自然発生的に声が上がってくる。Sは「俺. 級事情が重なり,不適切なかかわりをしてきたこ. なんかいなくてもいいんだ」と叫びながらその場. とを素直に謝った。Sははじめ私を無言で睨みっ. から走り去っていった。. けていたが,いつもと違う対応を見せた私に対し. このような喧嘩が絶えない状況であり,その度. て徐々に重い口を開き「自分が姓員に迷惑をかけ. に周りの子から注意され,教室や学校から抜け出. たこと」「忘れ物をしてしまう自分が嫌になるこ. したりする。徐々に学校からの飛び出しはなく. と」「友達から励まされる言葉がうれしくて,教. なってきたが,空き教室の机の下や体育館の用具. 室を出てしまうこと」「学校がつまらないこと」等,. 室で隅で小さな身体を曲げて体育座りをしながら. Sが心の奥にしまい込んでいた内容をぼつぼつと. 泣いている光景が繰り返された。周りの子たちは,. 語ってくれたのであった。. 「Sなら机の下で泣いてるよ。先生」と「まただ. これまでのSに対する指導は,プログレッシ. よ」と言いようであったが,必ずSの居場所を教. ブ・ディシプリンである。細かい規律を作り,小. えてくれる子が現れてきた。. さな規則違反の段階で直ちに軽い罰を与え,その. 21.
(11) 山田. 潮・桑原 暗. 時点で改めさせる手法を行い累積的に厳しくして. かわってきた私であったが,友達に対して初めて. いった。そこには,Sへの「思いやいたわり」「S. みる光景であり,Sの優しさがにじみ出てくる行. がどのような状況でそうなったのか」よりも学級. 為に感動さえ覚えた。すぐその場でSに対して「す. の秩序を優先する指導法に固執し陥ってしまった. ごいな。友達が因っていることによく気づいたね」. 点があげられる。結果として,Sの行動には変化. 「実際に手伝ってあげたことがすごいね」「先生,. が見られず,ますます教師による罰への累積化が. 感動したよ」と伝えると照れくさそうに教室から. 図られる悪循環を生み出す構図が出来上がってし. 出て行ってしまった。その時のSの表情はいつも. まった。つまり「その子のためだ」と思いながら. 睨みつけているものとは全く別の顔であった。下. も結局は,教師自身の目標のみを画一的,強迫的. 校時の短学括の際も,Sに手伝ってもらった子が. に押しつけていることになり,子どもの人間性の 陶冶にはほど遠い教育活動だったのである。 しかし依然としてクラスの大半の子どもたちは. 「今日はSに椅子をあげるのを手伝ってもらいま. した」と全体の場で発表し,他の子どもたちもS の素晴らしい行為を知ることになった。私もSの. Sに対して不信感や中傷の目を向けていることは. 素晴らしい行動は「相手を思いやる一歩だと思う」. 事実であった。この子たちはSに対して全く無視. と伝えると誰かが拍手をした。それは徐々に広ま. しているわけでない。構造的に分類してみると「/ト. りいつの間にかクラス全員が拍手をしていた。S. 馬鹿にする子」を中心とし「いつものことだから. に対してとクラス全体の指導方針は間遠っていな. しょうがないと発言する子」「とばっちりがこな. い「今この学級に必要なのは良さを認め合う場で. くてよかったと思っている子」といったヒエラル. あることとSの良さを賞賛することだ」と確信を. キーがあり,どの層にも共通しているのが「Sの. 得たのである。. 言動に対してマイナス面ばかりとらえている」こ. このような取組を重ねることで,徐々にSのセ. とであった。これを「Sの言動からプラス面をと. ルフ・エステイームの改善がなされてきたように. らえられる」に転じること,そして学級全体とし. 思えた。それは「おれなんかいなくてもいいんだ」. ては,「学級」とは失敗は非難されることではなく,. という言葉の減少である。けんかしたり周りの子. 失敗を自分の失敗としてみんなで考えることがで. ともめると必ず聞かれた言葉であったが,2学期. きる場であることを共通認識できるような学級づ. 後半にはほとんど聞かれなくなった。まだ言い方. くりを目指していく方向性を見出すことができ. にはとげがあるものの,相手を思いやる,優しさ. た。これがある程度達成されれば,きっとSの自. がこもっている言葉と,表情の柔らかさも見られ. 己意識も変化するだろうと見通した。できるだけ. るようになってきた。Sの逸脱行為,他者への危. 全体の場で賞賛されるような場面をつくろうと努. 害,自己否定も学年後半には,年度当初から比べ. め,Sに対して否定的にならず許容的・肯定的に. ると比較にならないほど改善されている。. なるように少しずつ積み重ねることが教師として. Sを通して教師の役割とは何かを考えさせられ. の役割と判断した。. た。教師はあくまでも側面的援助者であり,一方. ○思いがけない優しさ. 的な管理者でもなく上意下達の実践者でもない。. 本格的に2学期がスタートした9月中頃,Sの. 管理,強制を全面に押し出すことは,対教師,対. 思いがけない優しさにふれることができた。それ. 子どもの関係を深化させる要素を消滅させるばか. は給食後の清掃活動の時間のできごとであった. りか,子どものセルフ・エステイームの芽を摘み. が,同姓に手を骨折した子がいて,椅子を机にの. 取ってしまうことになる。「自分もなかなかいい. せる作業に手こずっている様子にSが気づき「そ. な」「できるかも,やれるかもしれない」など自. んなのやってやるよ」とちょっと威張ったような. 分の行動を肯定的に,しかも互いに認識し合える. 口調で手伝った場面を見かけた。4月からSとか. 場がいかに人間性の陶冶を育むことにつながるか. ?2.
(12) 毅然とした態度で厳罰化を推し進める「生徒指導」の位相について 表5 Sに対するヒエラルキー構造の変容 Sに対する発言や様子. Sに対する発言や様子の変容. ●小馬鹿に. 共通して言えるこ. ・「00で泣いてるよ。先生」と,Sの居場所を教えてくれる子の出現. する子. ととして,「忘れ. ・探しに行く,Sを抱きかかえてくる. ●いつもの. 物」「失敗」に関. ・泣いているSにちり紙を渡す子,貸してあげる言うと子. ことだから. しても左記のよう. ・「泣くな」「気にするな」「大丈夫」の励まし. しょうがな いと発言す. な言動が徐々に無. ・「00の時は持ってきたのにね」と良い時のSを紹介する ・同調する子「僕も忘れた」同じレベルに立つ子. くなってきたこと. ・教科活動のなかで「Sすごい,うまい」と賞賛する子の増加. る子 ●とばっち. りがこなく. 「賞賛する」言動 が増えてきたこと. Sが誉められたことをまねする,一緒に参加する子(こぼれた牛乳ふき,机 イス運び). てよかった. Sが怒られていることに全く関連しない言動が,静かにSと担任との様子を. と思ってい. うかがう(関心をもつことなのか?). る子. 認識できたのであ. った。厳格無比で一方的に規範. 体的に学習活動や係活動を進めていくべきこと. を提示し,逸脱を許さない同調を強要していくよ. も,教師の意向に沿うように逐一行動を確認して. うな学級づくりではなく,教師は多忙感極まる状. くる子どもの実態があった。. 況であったとしても少し余裕を持って子どもに対. 学級には,大きく3つのヒエラルキーがあり,. 処すること,例えばじっくり子どもの問題背景を. A層:何事にも積極的に行動でき冷静に判断でき. さぐってみたり,子ども相互に話し合ったり考え. るタイプ子,B層:自ら進んで行動することより. たりする場を設けることが大切だということを認. うながされれば行動できるタイプ子,C層:落ち. 識することができたのである。. 着きがなく我が道を行くタイプの子であった。 ○自己決定する意識から行動へ. (2)問題点を見出し共感しながら具体的活動へ. 4月から教師の意向に確認しながら行動した. 中学年の学級を担任した。前学年の担任から「と. り,指示を待つ子どもの意識を改善しようといろ. てもまとまりのあるクラスです」「学習面でも生. いろな場面で試みた。学級全体への投げかけとし. 活面でも自分の意見を堂々と発表できます」と言. て「自分たちの問題であることをしっかり認識さ. われ,3月末から期待に胸をふくらませていた。. せ,逃げずに解決しようと試みることをうながし,. 新学期が始まり子どもたちとかかわる中で,前担. 自己決定させていくこと」を意識して取組んでき. 任が言っていたとおり,何事にも意欲的で意見ど. たのである。例えば,学級の係活動の内容決定,. んどん出てくる実態があった。しかし注意深くみ. 学習活動の時間で活動蛙内で自由に話し合う機. ると,子どもたちはとにかく自分の意見を述べる. 会,運動会の種目内容の決定,学習発表会の発表. ことが最優の欲求として現れ,自分と友達の意見. 内容の決定等,子どもによる意見の交流の場を設. が似てようと似てまいが,そんなことはどうでも. 定し時間をかけて話し合い決定していく過程を大. よい,単なる直感的な意の表出の場であった。自. 切にしてきた。そこでは,スムーズに活動できた. 分の意見を押し通そうとする,自分と違う意見や. 場面だけでなく,子ども同士で言い合いのけんか. 考えを虚心坦懐に受け止めることを疎かにする学. になったり,もめ事に発展する場面など子どもは. 級の実態がわかってきた。また,比較的多くの子. 多くの困難を乗り越えながら取組むこととなる。. が,一つ一つ担任に確認をしなければ行動できな. しかしその蓄積が,表6の文章に表れており,自. いことに違和感を覚えた。本来,子ども自らが主. 分たちで決定していくことの有用性を彼ら自身で. 23.
(13) 山田 潮・桑原 晴 表6 子どもの振り返り 「協力の大切さ」(0さん) 原文ママ ぼくたちは,今年の4月からクラス全員でいくつかの行事について話し合ってきました。自分たちで始めから計画を立 てて活動内容を決めていくという事は,今まであまり経験がありませんでした。しかし,みんなの意見を出し合って話し 合うことはとてもよいことだと思います。先生が物事を決めると,ぼくたちは何もやることがないので,とても助かりま すが,クラスのみんなの中で,もしかしたら,その物事をやりたくない人もいるかもしれないので,自分たちで物事を決 めた方が全員がやりたいことをまとめて作れるので,自分たちで決めていくことは大切なことだと思います。いろいろな 意見をまとめ上げることはむずかしいけれど,クラス全員で決めたことは,最後まで協力して活動することができるので. とても大切だと思います。 「今までの学習を振り返り」(∪さん) 原文ママ 今まで私たちは,どんな大きな行事も先生方がある程度決めてくれていました。例えば学習発表です。げきの内容は先 生方が決めてくれました。しかし,今年の私たちはちがいます。ふだんも,自分たちで考えて話し合ったりしてきました。 特に言いたいのは,11月に行った学習発表会です。今までとは全くちがう発表になりました。今までしたことのない調べ 学習発表をして「タメ」になりました。げきも調べたことを自分たちで台本づくりから取り組んで,作り,えんじました。 和太こえんそうも自分たちで作曲しました。とてもいい,学習発表会になりました。よかったです。私たちは,自分たち で作る,取り組むことをやってきました。今までとはちがう,自分たちの発表になってよかったです。これからも仲間と. 協力してがんばっていきたいです。. 自覚しており,「互いに高め合うよさ」「自分たち にとって心地よい空間」「つづれ織りのようでし なやかな学級」が育まれてきたのである。 ○自分たちの問題を自分たちの手で. 学校生括では,例えば学習活動の中で協働で取 組んでいくおもしろさ,共感しあいながら取組む 充実感を味わわせることが必要であると考えてい る。このような活動を通して子どもは試行錯誤し ながら考えを深め判断し,また人間関係を思い悩 みながら構築していくのである。その過程で相手 を受けとめる,認め励ますことの大切さを体感し,. 7月実践. 4月から様々な手立てを講じてきているがなかな か改善されない部分,それは生活面における廊下歩 行など,互いに注意し合う場面での対立であった。. A層とC層との対立,C層間でのけなし合い,B層 は何とかしたいがどうしてよいかわからない状況が あった。 当初,話し合いの時間を2時間設定していた。し. かし話し合いの途中で学級三役の一人が「こうやっ て話し合いでいろいろな解決の方法が出ても,みん な実際にできないことが多いし,みんなの心に入っ ていないのではないか。台本を作って劇にしたら,. みんな興味をもってくれるかもしれない」と発言し たことを契機に1時間追加してロールプレイングの. 台本づくりと発表会を行うこととなる。. そのことが友達との信頼感を築く方法の一つであ. 教師(話し合いを行い確認できれば十分)と捉え ていたのが,子ども(自分たちのリアルな問題とし て認識したい)にとってはより深刻な問題であると. ることを認識していくのである。. 実感している様子がここから明らかになった。これ. そこで普段の学枚生活の中で感じていることの 中から共通した内容を絞り込み,クラス全員が必 然性をもって取り組める課題を明らかにし設定し ようと考えた。具体的には,教師が牽引して「こ. れこれをやろう」と提案していくやり方もあるだ ろうが,学級の実態を考慮すれば,子どもたちが. 現実に起きている諸問題を「自分たちが直面して いる実際の問題」として認識し,自分たちの手で 解決の手がかりを探っていくことが断片的な個々. の意見を有機的につなげられる方法だと考えたの. は4月から取組んできた「自分たちの問題点をしっ. かり認識し逃げずに解決する試み」を行い自己決定 させていった成果といえる。 台本づくりは,学級三役と作成を希望した3名, 計6名で休み時間や放課後集まって取組んでいる。 演技する児童は4名であった。. C層のTは,シーン1の途中までは,友達と話を していたり笑い声をあげたりしていたが,徐々に真 剣に集中して演技にのめり込んでいく。これはTの 感想にも現れているが,演技の迫力感に圧倒された と同時に,自分も同じような嫌な思いを経験をして. いることへの共感・同調だと判断できる。AB層の 子たちは,学級の状況をリアルに振り返えられたよ うで,自分たちが何をしていくべきかこの劇から示. 唆を待たようだ。. である。そしてこのような過程を踏まえることで 自分たちで解決できるきっかけを生み出せるこ. 与えたかった。さらに相手の考えや感じ方を認め,. と,意見のぶつかり合いを乗り越えながら,自分. 受け入れ共感し合うことの大切さを学んでほしい. たちで決めていくことができる達成感や満足感を. という思いもあったのである。. ?4.
(14) 毅然とした態度で厳罰化を推し進める「生徒指導」の位相について. 特にC層に属するTは,4月当初からグループ. るな」「ふざけるなら,あっちへいけ」と苦言を. で活動する際,ふざけながら物事を勝手に進めて. 呈する場面があり,またそれがTにとって面白く. しまうことが多く,それが原因でぶつかり合うこ. なく,ふてくされている様子があった。. とが多かった。Tに腹を立てた子らは「勝手にや. 表7 活動実践の詳細(ロールプレイング) ○共通する問題:「友達と言い合いに(口げんか)に発展すること」 ○具体的な場面 ① 廊下歩行について互いに注意し合っているうちに口げんかとなってしまう ② 友達に嫌なことを言ってしまって,それを注意したことで口げんかとなっ てしまう。. クラスのほとんどが,このこ とを「どうにかしたい」と思っ ている。. このような実態をどう解決したらよいか考えよう (特別活動:学級活動3時間). □げんかになる原因は何か くグループによる話し合いにより山された意見〉 *友達から注意されると素直に聞くことができないから,ついつい言ってしまう *言い返したくなる,腹が立つから. *注意している人だって守れていないときがあるから言い返す *一方的に決めつけないでほしいから. 解決の方法はどのようなものがあるか *注意されるのは嫌な気持ちがするけれど,素直に受け入れることが大切 *言い分を伝え合う. *どうして悪いことをしてしまったのか考えてみる。そうしたら受け入れられるか もしれない *「やったしょ」「やってないから」と平行線の言い合いのままでは解決しないから, 注意された方は素直に謝る *注意の言い方を考える(やさしく言う,自分もできないけれど気になったから注. 〈アドバイス〉 この場面だけに限定するので はなく,日常的(学習活動でも) に友達の意見について認め受け 入れる反応(うなずきや賞賛, 感嘆のつぶやき)をすることが 大切。先日の国語の授業でも話 をしたね。よいところに気づき ましたね。. 意するねと言う). *先生がいつも言っているように「自分が自分が・・」ではなく自分に非があるな ら認め受け入れること *この場面だけでなく,ふだんから相手の言うことを素直に聞き入れることが大切 だと思う *勉強中とか普段からやっていれば,素直に受け入れられる習慣が付いているから けんかにならないと思う. 担任がある子の意見を全体の 場で取り上げ賞賛したことで, 他の子どもからも次々とこのよ うな意見が出される。「そうだ そうだ」「これが解決の方法だ」 という雰囲気となり様々な声が 上がる。. よ二=二王 学級三役の一人,書記の子が国語の学習でやったロールプレイをしてみた らどうだろうかと提案する。理由として,「こうやって話し合いでいろい ろな解決の方法が出ても,みんな実際にできないことが多いし,みんなの 心に入っていないのではないか」「台本を作って劇にしたら,みんな興味 をもってくれるかもしれない」といった発言をする。. この提案は,クラス全体の意 欲を喚起させ,「よしやろう」 という雰囲気が拡がった。 台本づくりはだれがやる?演 じる人は⊂)⊂)さんがいいんじゃ ないか?など活発に意見が出さ れる。. ●一人の提案意見が,個々の気持ちをある一つの方向性へと導き収束させてくれた 瞬間であった。普段なかなか意見を言わない子や,どちらかといえば無関心を示 すことが多い子までもが,興味関心を示している状況であった。 劇化の台本作り 台本づくりを「ぜひやりたい」という児童(3名)により作成. 〈アドバイス〉 できるだけ具体的な場面を想 定して作るとよりみんなは実感 できると思うよ。. ●学級三役より活動時間を増やしてほしいという要望があったので,当初の2時間 の時数予定を,さらに1時間増やして3時間扱いとした。. 25.
(15) 山田 潮・桑原 晴. くシーン1:廊下方向での言い合い〉. N:廊下ですれ違うところでぶつかってしまう(走って角を曲がったため) Cl:痛いじゃないの C2:あんたがぶつかってきたからでしょう C3:廊下は走ったらいけないんだよ。あやまんなさいよ C2:どうして あんたがよそ見しているから悪いんでしょ 謝ってよね Cl:あんただってこの前,廊下走っていたじゃない C2:走っていないから Cl:走っていたから C2:あんたが悪いんだって,わかんない人だね。あんたと話していてもよくわかんないから行くわ Cl:ちょっとまってよ,話終わっていないじゃない C3:まちなさいよ Cl:なに逆ギレしてんのよ N:みなさんはこの様子を見てどう思いますか? くシーン2:友達に悪口を言う〉. N:Clの友達(C2)がピアノを弾いている場面。そこをC3とC4が通りかかる C3:C2のピアノって変だよね C4:(うなずく) そうだね Cl:どうしてC2の悪口言うの C2がかわいそうだよ そんなこと言ったら傷つくよ C2:(泣く) Cl:あんたたちが悪口言うからC2泣いたじゃない。謝りなさいよ C3:あんただってこの前,悪∩言っていたじゃない Cl:この前は関係ないから,今が問題なの。あやまんなさいよ。どうしてあんたたちが,C2のこと文句を言 えるわけ?おかしくない。一生懸命練習しているのに C2:もういい C3:私たちC2に別に悪口言ってないもん 何か変な昔が聞こえたから言っただけだもの Cl:嘘言わないでよね C2の悪口を言ったじゃない C4:(C3に)もう行こう その場から立ち去ろうとする N:普段私たちのクラスで起こっている場面の一例です。みなさん,どう思いますか? ●みんなに投げかけるように終わった方がよいという話し合いになった。その方が皆が考えるのではないかとい うことであった。演技練習を行い,細かい言い方やアドリブなど入れることにする。 演技発表をする 皆に練習風景を見せると新鮮さが無くなり,心に響かないという理由から練習は別室で行った。演技する子た ちは,休み時間を返上して積極的に練習に取組む。試行錯誤しながら練習を重ねる。発表場面では全員集中して 見ている。演技している子たちが本当に口げんかをしていると思い込んで驚いた表情をしている子もいるほどで あった。 交流し合う 発表後に演技を見た感想を記述してもらった。記述した内容を互いに発表し合い,それぞれの思いを明らかに した。記すことでなかなか口では言いにくかった部分,心にしまい込んでいた感情や思いを表すことができたこ とが,それぞれにとって良かったようだ。 (A層の子たちの感想)く抜粋〉. *迫力のある演技だった。すごかった。けんかにつながる演技だった。自分たちがやっていることだから, もししたらダメだってわかる演技だった。 *やったとおり,私たちの生活通りでした。とてもすごかった。見ている人の中には,笑っていた人もいた けれど 笑わないですごいと思い本当の物語に見えました。 *劇をやっていたとおり,クラスのほとんどがすごいきつい言い方をしていることがわかりました。これか らはそんなことの無いようにしたいです。 *友達の意見を素直に聞き入れること,受け入れること,自分が自分がと言うのではなくて,最後まで聞き 入れることが大切だとわかりました。. −ご(;.
(16) 毅然とした態度で厳罰化を推し進める「生徒指導」の位相について. (B層の子たちの感想)く抜粋〉. *1日の生活を劇にして身体を使ってやってよかった。これから気をつけたいと思います。 *すぐ謝り,認め合う。そしてマナーに反したことをしないようにすればこういうことはならないと思う。 でも僕たちがそれをやっていると言うことはとても恥ずかしいと思う。 *私たちの学校生括の中でよくあることをやったので,こんなに強く言ったり,悪口を言ったりしていたの で,直さなきヤなと思いました。もっと仲のよいクラスにしたいです。こんなことが起きているので直し て仲のよい笑顔で笑っているクラスにしたいです。 (C層の子たちの感想)く抜粋〉. *いつものことを振り返るとよく強い言い方で注意しているのでこれからやめたい。ちょっとした事でけん かをしていたので「なさけないなあ」と思った。←シー ン1で笑っていたTの感想 *本当にけんかをしているみたいで演技がじょうずだなあと思った。 *普段の学校生括で言い方,注意の仕方を気をつけていきたいと思った。 *迫力があって,ぼくもそういうことをやっているんだなあと思いました。. 実際に上記のような活動を展開してみて,子ど. し,必然性のある課題を解決していこうとする関. も一人一人が「自分たちが直面している問題点は. わりの中で,相互の「良さ」に気づき,肯定的し. 何か」「自分たちがやっていることはどうなのか」. 合う喜びを得るたからではないだろうか。それに. 「これからはこうしていきたい」と,前向きな展 望を抱きながら徐々に具体的な行動に出るように なった。特にTは,この機会を契機に,徐々にで. よって満足や充実感を感じ,自分の自信や自尊心 の糧にすることができたからだと考える。. さらに,実際の場面を想起しながら自分の気持. はあるが周りの子たちの様子を気にしながら行動. ちを書き留めるという活動により,複雑な自らの. できるようになってきている。. 気持ちを整理することができ,今後の行動の方向. 具体の変容でいえば,言い方の改善がある。了一. 性を自分自身見つめ直す効果を生み出すこととな. ども同士の注意の仕方一つとっても「こうだから,. る。これは担任と子どもとの交換ノートの文面か. こうした方が良いのではないか」と直接的な言い. らも明らかである。. 方ではなくなってきた。また自分の直感的な思い や考えをなりふり構わず言い続ける日常の授業風 景も少しずつ変化し始める。友達の意見や考えに ついて「一端受け入れました(うなずき)」「なる. ほどね,そうなんだ(つぶやき)」といった反応 を徐々に示すようになってきた。相手を「受け入 れたよ」と意思表示する大切さを認識し始めるこ. とで,「こうした方がいいんじゃない」と素直に 言い合える雰囲気が学級の中に醸し出てきた。. 次に,子ども同士が信頼関係を深めていくよう. 〈交換ノートより〉 原文ママ 私は,「O」(筆者加筆)年生のはじめごろ,友だ ちとけんかをしたらすぐに話しかけられても「何!」 といって,またけんかになったり,よくそんなこと がありました。でも先生から「先を見通して,先を. 読み行動しよう」「有言実行」といわれて友だちにや さしくしたり先を見通しをしたりすることができる ようになってきました。でもときどきけんかになっ ちゃうことがあります。その時は,朝お互いにあや まったり,手紙を書いてあやまったりしています。 これから,先を見通しけんかをしてもすぐ自分をす. なおにみとめて友だちにあやまったりしたいです。. な言動が徐々に現れ始める。今まで自分の意見を 押し通そうとしたり,自分と違う意見や考えを虚 心坦懐に受け止められなかったのが,徐々に「い. (3)実践の振り返り. 各々の実践で子どもの振り返りの言葉「受け入. い考えだね,それいただき」など相手に対して好. れること,認めることを今日あらためてわかった」. 意的・肯定的な言葉が飛び交うようになったので. 「みんなで話し合いをして劇を作ってよかった。. ある。これは,一方的な人間関係ではなく,きれ. みんなの心に入ってくれれば,守ってくれればよ. い事ではない本音をぶつけ合うような場を設定. いと思った」等 から子どもの変容をとらえるこ. 27.
(17) 山田. 潮・桑原 晴. とができ,「悪いことだとわかるためには,外か 引用文献. らしかることをしてわからせるのではなく,一人 一人心の中で「悪い」と思わなければ意味がない」 「厳しくされても,大人が勝手にわからせようと. するだけだ」は,子どもから教師へ「分かってく ださい・知ってください」という切なる思いが内 在している。このような子どもの表出は,人に必. 要とされることを実感しながら何かを創造できる こと,何かを感じ取ることができるといった集団 があることで自己有用感の意味を感じることがで き,喜びを得ることができたコメントであり,子 どもから教師への投げかけとも言えるのである。. 1 教育再生会議 「社会総がかりで教育再生を∼公教 育再生への第一歩∼」,2007,pp.9−10. 2 加藤十人編 『ゼロトレランス規範意識をどう育て るか』,学事出版,2006,p.47. 3 坂田仰 「公立学校における生徒の自由と生徒規則 −アメリカにおける裁判例と検討−」,東京大学本郷法. 政紀要,1993,p.158. 4 RussellSkiba,他 「ゼロトレランス方策は学校で効 果的か」,アメT)カ心理学協会(APA),2006,p.80. 5 藤田英典編 『誰のための「教育再生か」』,岩波新書, 2007,喜多明人 「寛容なき厳罰主義 〈ゼロ・トレラ ンス〉 一子どもが育つ環境なのか−」,p.112.. 6 松尾直博・新井邦二郎 「子どもの自己決定と領域 別社会的ルールの発達」,筑波大学心理学研究第21号,. 4.あらためて問われる視座 一人一人の細密な記録化をもとに,日常的な実 践場面での試行錯誤が,子どもへの揺るぎない指 導観を構築できる要素となった。ゼロトレランス のような機械的運用を強いて子どもに社会性を身. p.108. 7 E.L.Deci・石田梅男訳 『自己決定の心理学』,誠. 信書房,1985,pp.47−49. 8 Ibid,p.53. 9 EdwardL.DeciandRichardFlaste 桜井茂男監訳 『人を伸ばすカー内発と自律のすすめ』,新曜社,1999, pp.96−99.. につけさせていくような予定調和論ではなく,時 間や手間がかかっても子ども自らのよくなりたい 参考文献. という力や子ども同士の相互作用を活用しなが ら,子ども自身の自発的な変容を「促す・支える」 取組みの実証的裏付けとなったのである。. 教師の役割は,子どもの人間としての成長の営 みを側面的に援助していくことである。子ども間 ではたらいている相互の揺れ動き,個々に表出さ れていることを的確にとらえながら,彼らがもつ 多様な力を表現できる,あるいは身の周りに存在. ○船木正文 「学校暴力と厳罰主義−アメリカのゼロト レランスの批判的考察−」,『大東文化大学紀要41号』, 2002.. 0藤本茂生 「教育・モラル・近代化−19世紀アメリカ における学校教育の一側面−」,同志社アメリカ研究, 第28号,1992. 0桜井茂男 『学習意欲の心理学一自ら学ぶ子どもを育. てる』,誠信書房,2006. 0ロイック・ヴァカン・森千香子・菊池恵介訳 『貧困. する様々な事象(人・もの・できごと・自然)と. という監獄 グローバル化と刑罰国家の到来』,新曜社,. 結びつけていける場を設定することが重要であ. 2008.. る。このことは「学び」についても同様であり, 本稿で示唆した有能さと自己決定の観点から内発. (山田 潮 石狩市立若葉小学校). 的動機づけへとアプローチするような活動を構築. (桑原 清 札幌校准教授). し,子どもの発達段階を考慮しながら個々の「学 び」を保障し,主体的に考えたり,感じたりする. 体験や集団内の人間的交流を通して,他者受容感 を味わいながら「学ぶことが楽しい」「やっと解 けた」というようなプラスの感情経験を得られる ような実践活動が求められるのではないだろうか。. ?8.
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