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「学級がうまく機能しない状況」にある学級担任の支援方法に関する考察

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(1)Title. 「学級がうまく機能しない状況」にある学級担任の支援方法に関する考 察. Author(s). 深見, 智一. Citation. 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 : 教職大学院研究紀要 , 9: 121-134. Issue Date. 2019-03. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10441. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学大学院高度教職実践専攻研究紀要 第9号. 自由投稿論文. 「学級がうまく機能しない状況」にある学級担任の支援方法に 関する考察 深 見 智 一*. 概 要 本稿では、担任する学級が「学級がうまく機能しない状況」になって児童への指導から外れた教員 が、担任業務への復帰を目指すにあたっての支援方法について検討する。方法として、 「学級がうま く機能しない状況」になった学級担任が筆者の授業を参観した後、筆者および管理職と共に行った全 19回の検討会の結果についてカテゴリーに分けて分析を行った。成果として、授業参観、授業参観 シートの作成、検討会の実施という一連の取組により、当該教諭は、これまでの当該児童への指導で 改善すべき点に気づき、新たな指導の視点を獲得することができた。一方、課題として、第一に、検 討会による成果が見いだされたものの、それが当該教諭の担任復帰につながらなかったこと、第二に、 メンター役を務める教員の物理的・精神的な負担が挙げられ、 「学級がうまく機能しない状況」にあ る学級担任を支援する困難さの一面が明らかになった。. 1 はじめに 1)「学級がうまく機能しない状況」について 自ら学び自ら考える力や社会の変化に主体的に対応できる力、豊かな人間性とたくましく生きるた めの健康や体力などの「生きる力」の育成が求められている現在、学校教育に対する社会全体からの 関心は極めて高い。学習集団・生活集団としての両方の側面を有する学級において、児童を指導する 学級担任には、 「生きる力」を育成することに資する学級経営が求められている。加えて、児童や保 護者の価値観・ニーズが一層多様化しているなかで、児童や保護者の願いに誠実に対応し、信頼され る存在であり続けるためには、それに見合った専門性を有する「学び続ける教員」でなければならな い(文部科学省 2012)1。 小学校では、それぞれの学級担任が児童の学校生活のほとんどに関わるため、学習・生活両面の指 導を一貫して行うことができる利点がある。一方で、学級担任の役割を過度に重視して、学級担任に 任せきりになり、互いの学級経営に口を出さないという雰囲気が醸成されることもある。佐古(2006) は、 「学校の教育活動が個別教員に拡散し、それぞれが自己完結的に遂行することで存立している組 織」を「個業型組織」とし、その問題点として、 「第1には、学校組織レベルでは、学校としての教 育意思形成やそれをふまえた教育活動の組織的な改善や改革が成りたちがたい状態が学校において常 態化してしまうこと、第2には、教員のレベルでは、教職の閉塞性を強め、教員の個別的なレベルに おいても教育活動の改善を困難にさせる」という点を指摘する2。そして、学級担任自身がその責任 を意識しすぎるあまり、学級担任以外の教職員と連携せず、組織的で開かれた学級経営がなされな ───────────────────── *. 鶴居村立幌呂小学校(北海道教育大学教職大学院修了生2014年3月). 121.

(3) 深 見 智 一. かった結果、いわゆる「学級崩壊」と呼ばれる「学級がうまく機能しない状況」 (学級経営研究会 2000)に陥ってしまう学級担任も少なくない。2000(平成12)年に文部省の委嘱研究として学級経営 研究会が行った「 『学級経営の充実に関する調査研究』最終報告書」では、 「学級がうまく機能しない 状況」を「子どもたちが教室内で勝手な行動をして教師の指導に従わず、授業が成立しないなど、集 団教育という学校の機能が成立しない学級の状態が一定期間継続し、学級担任による通常の方法では 問題解決ができない状態に立ち至っている場合」と定義している3。本報告書では、そのような状況 に至るには様々な要因が複雑に絡み合うことから、意図的に「学級崩壊」という語を用いていないこ とを説明している。そして、学級がうまく機能しない状況にある150学級の事例を問題要因ごとに10 のケースに分類している。 2)目 的 本稿の目的は、担任する学級が「学級がうまく機能しない状況」になり、児童への指導から外れた 教員が、担任業務への復帰を目指すにあたっての支援方法について検討することである。その方法と して、まず、 「学級がうまく機能しない状況」になった学級担任が筆者の授業を参観し、授業参観シー トを作成する。その後、筆者および管理職と共に検討会を行う。授業参観、授業参観シートの作成、 検討会という一連の取組を行うことで、これまでの実践を省察し、新たな視点を獲得するとともに、 担任業務に必要な力量を身に付けて担任業務に復帰できるのかを検証する。. 2 先行研究 1)学級経営の状況の類型化 学級経営の状況について、学級経営研究会の分類とは別に、河村(1999)や蘭・高橋(2008)の類 型化もある。河村(1999)は、Q-Uテストをもとに、ルールとリレーションの確立の観点から尺度を 設定し、学級の児童生徒の状態を「学級生活満足群」 「非承認群」 「侵害行為認知群」 「学級生活不満 足群」「要支援群」の5つに類型化している4。さらに、この5つの群の分布傾向から学級集団全体の 状態を「満足型」 「管理型」 「なれあい型」 「荒れ始め型」 「崩壊型」 「拡散型」の6つに類型化し、こ れらのうち「なれあい型」 「荒れ始め型」 「崩壊型」は、教師のリーダーシップを発揮することが難し く、教育的環境とは言い難い状態として「学級がうまく機能しない状況」に当てはまると言える。蘭・ 高橋(2008)は、学級集団経験をもとに「主導性」 「活動性」の二軸をベースとして、 「創発学級」 「放任学級(生徒階層型学級) 」 「安定学級(専制型学級) 」 「安心学級(教師リーダーシップ型学級)」 「放任学級」は、教師の指導はおこなわれず、「生 の4つに学級集団を類型化している5。このうち、 徒の自主性に任せるという名目で放任されている」状況であり、 「一部の生徒が教室内の勢力をもち、 集団活動ができにくい学級」としており、 「学級がうまく機能しない状況」にあてはまると言える。 2)「学級がうまく機能しない状況」に関する先行研究 いわゆる「学級崩壊」に関する先行研究を含めると様々な視点から行われてきた。第一に、学校教 育の問題としてとどめるのではなく、社会現象としての「学級崩壊」と捉え、学校・家庭・地域の課 題として総合的に検討しているものがある(朝日新聞社会部 1999、尾木 1999)6。例えば、朝日新 聞社会部(1999)に基づくと、いわゆる「学級崩壊」が校内暴力と異なる点として、中学校・高等学 校だけではなく小学校においても生じていたこと、一部の児童生徒による逸脱的・脱落的な行動では なく、初期段階から多くの児童生徒に関わる教育問題となっていたことが挙げられている。第二に、 「学級がうまく機能しない状況」をどのように立て直すかのノウハウの提案と立て直しに成功した学 122.

(4) 「学級がうまく機能しない状況」にある学級担任の支援方法に関する考察. 級の実践例が報告されている(向山 1999、山田 2014)7。一例として、山田(2014)では、いわゆ る「学級崩壊」した学級を立て直した15人の教員の実例から、立て直しのプロセスにある指導方法が、 「学級崩壊」の未然防止に役立つことを報告している。第三に、 「学級がうまく機能しない状況」に 至る過程や原因について分析した研究がある(須藤 2015、高橋・綾 2006) 。須藤(2015)は、ミ クロ要因(教育実践的な要因)として、小1プロブレム仮説、ベテラン教師仮説、学級規模仮説、個 人要因仮説が挙げられ、マクロ的要因(社会構造的な要因)として、教師地位低下仮説、消費社会浸 透仮説、情報化社会進展仮説を指摘している8。高橋・綾(2006)は、学級崩壊の原因を教師の指導 力不足に求め、子どもたちは変化してきているのに、それに対応できないベテラン教員が学級崩壊を 引き起こすという言説の原因帰属様式の問題性を指摘している9。同じく教師の対応に注目する研究 として、河村(2011)は、教師の対応の重要性を前提に、学級経営に問題が生じたときに、教師の対 応如何によっては、さらなる問題行動が生じ、その対応方略の習得はとりわけ初任教師にとって大き な課題となっていることを指摘する10。第四に、実際に「学級がうまく機能しない状況」に直面した ことがある教員へのインタビュー調査がある(滝沢 2013) 。滝沢(2013)が行った学級経営に困難 を感じている教員への調査では、児童や保護者への心理が理解できないことの困難、困難が重なるこ とでの困難、同僚への遠慮から来る困難が明らかになっている11。第五に、学級経営分野の教育研究 12 。 の視点の一部として「学級崩壊」を例示している研究がある(石川 2016). 3 本研究の意義と方法 1)本研究の意義 このような事例の報告が少ないことの理由の第一は、 「学級がうまく機能しない状況」になった場 合、その状態を回復するのは当該学級担任であることよりも他の教員が多いことが考えられる。学級 がうまく機能しない状況に陥った場合、管理職は即効性のある対応(初期対応) 、学級担任の指導力 の向上(中・長期的な対応)を並行して行っていく必要がある。学習環境の確保・学力保障、メンタ ルヘルスや規範意識の定着といった児童の生活の質を保障するために、場合によっては担任を交代し たり、担任外の教員がチームとなって学習・生活指導を支援したりすることがある。赤坂・堀 (2018) は、 「小学校の多くの現場は個人戦で凌いでいることが多く、それに勝利するとカリスマ的力量とし て賞賛の対象とな(り) 、学級崩壊を起こした担任のあとを力量の高い教師がもっておさめている」 ことを指摘している13。第二に、学級経営は事例の個別性が強いことから、事例への対応を一般化す ることが難しく(藤川 2012)14、なおかつ、学級経営の営みが概ね1年スパンであることから、大 学の研究者が研究しづらい領域であることが挙げられる(藤森 2014)15。第三に、教育実践におけ るうまくいかない事例の報告は成功事例に比べて少数であることが挙げられる。 学級経営に関する先行研究は、いわゆる「学級崩壊」に関する報道が多くなった2000年前後から報 告されているが、 「学級がうまく機能しない状況」になった学級担任が学級経営を改善していくため の支援の方策やその過程について、支援に携わった教員が報告したものは管見の限り見当たらない。 また、本稿で取りあげる事例のように、へき地・小規模校においては、もともと配置されている教員 数が少ないことから、限られた人的資源で効果的・組織的な指導ができることがより一層求められて いることもあり、本研究の意義と言える。 2)事例の経緯 本研究の当事者は、201X年度のA小学校(へき地・複式学級小学校)において、B児(中学年) 123.

(5) 深 見 智 一. が在籍する特別支援学級(児童数1名)の担任を務めるC教諭である。201X年度の2学期開始頃(8 月)から、B児がC教諭の指示や助言を素直に聞き入れない場面が多く見られるようになった。とく に、C教諭がB児と個別に学習をする国語や算数の時間に多く見られ、やがて、交流学級での学習中 でも、C教諭からの個別指導を受ける場面で、B児が反抗する姿が多く見られるようになった。その 結果、学習が思うように進まなくなったり、心理的な不安定さが友人や家族とのトラブルにつながっ たりするなど、学校生活や家庭生活に支障が見られるようになってきた。 この間、管理職がB児の学習の様子やC教諭の指導について参観し、C教諭と個別に面談する機会 を設けていた。また、 校内の「子ども支援委員会」 (主に、 特別支援学級担任で組織される特別委員会) の教諭らが、学習指導についてC教諭に対して個別に助言することもあったが、B児とC教諭の関係 性が改善する気配は見られなかった。その間に、B児はC教諭からの指示に対して、 「やりたくあり ません」 「その説明では分かりません」 「忘れました」 「言いたくありません」という課題非従事行動(山 田 2015)が顕著となっていった16。これらの原因としては、B児の特性に起因することも考えられた が、C教諭以外の教諭がB児を指導した場合には課題非従事行動は見られなかった。C教諭は、「指 導に困っているわけではない」ということだったが、校長は、 「学級がうまく機能しない状況」の「特 別な教育的配慮や支援を必要とする子どもがいる事例」 「教師の学級経営が柔軟性を欠いている」状 況と判断した。その結果、C教諭は「B児としばらく距離を置く」ということで、B児の指導から外 れることとなった(10月中旬頃) 。 その後、B児の指導については、複数の教員で対応することとなり、国語・算数の学習はD教諭(特 別支援学級担任)が、自立活動の学習、保護者との連絡、交流学級での学習のサポートはE教諭(特 別支援学級担任、交流学級におけるTT担当教諭)が行うこととなった。交流学級での学習のMT (Main Teacher)は、F教諭(筆者)が務めた。原田・坂口(2010)では、 「学級がうまく機能しな い状況」でも、「学級担任が交代した後には学級に大きな変化が見られることがあることを考えると、 適切な変化をもたらせば荒れからの立ち直りも早い」と報告されている17。本事例でも、新しい体制 に移行した後は、B児の心理的な不安定さはほとんど見られなくなった。また、これらと並行して、 C教諭の指導力の向上を図る取り組みが行われた。管理職とのケース検討や特別支援教育関係の専門 書の読み合わせを通して、これまでのB児への指導について振り返ったり、B児の実態に合った指導 法を検討したりする場が設けられた。 3)研究方法 まず、筆者(F教諭)が通常学級で行う授業をC教諭が参観し、C教諭は授業参観シートを作成す る。授業参観の5つの視点をあらかじめ設定し、①B児の実態把握、②B児に対する支援方法、③ TTとして交流学級で指導する場合の指導法、④通常学級の学級経営や授業づくり、⑤C教諭自身の 気 づ き を C 教 諭 自 身 が 授 業 参 観 シ ー ト に 記 録 す る。 こ の 5 つ の 視 点 は、korthagen(2010) の ①行為 (Action) 、 ②行為の振り返り (Looking ALACTモデルをベースとしている18。ALACTモデルは、 back on the action) 、③本質的諸相への気づき(Awareness of essential aspects) 、④行為の選択肢 の拡大(Creating alternative methods of action) 、⑤試み(Trial)という5段階で循環する省察のス タイルである。今後の担任復帰過程でもC教諭にメリットがあると判断し、筆者がC教諭に対して提 案した。 201X年度の1月から2月にかけて、合計19回の授業公開・授業参観・検討会を行った19。基本的に 1日1回の授業参観(45分授業)とし、検討会の時間は30分程度と想定していた。検討会には、C教 諭、筆者のほかに、学校長が指導役として同席した。C教諭が授業参観する教科は、B児が交流学級 124.

(6) 「学級がうまく機能しない状況」にある学級担任の支援方法に関する考察. で学習する時間のなかから、C教諭自身の希望や筆者の意向を踏まえて決定した。その結果、理科8 回、社会8回、体育2回、図画工作2回、道徳1回、総合的な学習の時間1回となった。なお、C教 諭および筆者はいずれも、従前の「十年経験者研修」を修了している。山﨑(2002)の分類に基づき、 C教諭はベテラン教員、筆者は中堅教諭となる。どちらも、これまでは通常学級の担任を長く務めて きており、C教諭は、筆者よりも年齢・教職経験年数・A小学校における勤続年数がすべて上回って いる20。筆者は、校務分掌の生徒指導グループ(6名)のリーダーで、C教諭はそのメンバーの一人 という関係性で、特別支援学校教諭免許状は、どちらも所持していない。 本研究における考察対象は、第一に、C教諭が授業参観後に作成した観察シート、第二に、検討会 の際に筆者が自身の発言内容及びC教諭を含む参加者の発言を書き留めたフィールドノーツである。 これを、佐藤(2008)の定性的コーディングの帰納的アプローチを用いて類型化を試みた21。本研究 では、分析対象者が1名しかいないことが課題である。しかし、一つの授業について議論が焦点化さ れたなかでの質問であり、質問には教師の教育観が直接に反映されていると考えられる。それで、継 続して行われた省察における教師の授業観や指導観を抽出することができると考えた。 4)研究倫理上の配慮 研究倫理上の配慮として、学校長に研究の趣旨を説明し、事前の許可を受けた。また、B児の保護 者及びC教諭を含む関係者にも周知し、個人の情報が特定されない形で公表することに同意を得て実 施した。本稿では、本質を損なわない程度に発言記録や記述の一部を改変している。. 4 結 果 「学級がうまく機能しない状況」を克服するためには、C教諭自身が現在の学級の状況、とくにB 児への対応全般についての現状をどのように認識しており、今後、どのような学級経営を目指してい くのかを理解することが重要となる。 1)C教諭から筆者への質問(表1、表2) 表1 C教諭からF教諭への質問回数. 質問の有無. 回数(N=19). 該当する回. 質問あり. 10(52.6%). 1、2、3、4、5、6、7、8、14、17. 質問なし. 9(47.4%). 9、10、11、12、13、15、16、18、19. この検討会全体を通じて、C教諭からF教諭へなされた質問の回数は10回(52.6%)だった(表1)。 全19回の検討会のうち、質問がなされたのは主に前半に多い傾向が見られた。秋田ら(2008)は、授 業研究協議会の言葉を聴いて学ぶ過程の一つとして、「教師は他者が語る授業の事実を、自身が捉え ている事実及び解釈と照らし合わせて、自身の授業の見方と他者の見方を省察し、吟味する。この過 程を通して、自身の見方が精緻化されたり、他者の見方を理解し取得したりすることが生じると考え る」と言う22。本研究に照らし合わせて考えてみると、授業を参観する側であるC教諭は、筆者が行っ た授業について理解するために、C教諭自身の経験や知識、事実関係の情報に基づいて推論し解釈す ることが求められる。それだけではなく、C教諭自身の理解を言語化すること(授業参観の5つの視 点に沿った観察シートの作成)によって、授業者と参観者の認識の差を埋め合わせる必要がある。さ 125.

(7) 深 見 智 一. 表2 検討会におけるC教諭からの質問 カテゴリー B児への対応. コード. ラベル ( )内の数字は、検討会の回数を表す. 一斉指導でのB児 (1) B児は、自らが挙手をした際に指名されないと我慢できな への配慮. いことがあるが、C児が交流学級で学習する場合に配慮をし ているのか。 (3) 複式授業での学習計画や一単位時間の見通しを示した学習 計画表の作成にあたって、B児を意識した対応(「ユニバー サルデザイン」の授業)をしているか。 (5) B児が板書をどのようにノートに書き写してよいかあまり 理解できていない様子だったが、ノートのとり方の指示や普 段の指示の際に意識していることはあるか?自ら(注:C教 諭自身)は、「何行開ける」など口頭の指示や、教師が全て 書き終わってから書くよう指示したり、描き方の統一など分 かりやすさ・伝わりやすさを重視したりしてきた。. 個別に指導が必要 (2) B児は、社会科の学習でワークシートを2回連続で忘れて な場合のB児への 対応. きたが、どのような対応をしたのか。 (4) B児の誤答への対応について、「発表したことを否定しな いことで意欲をそがないこと、C児のイライラを低減するこ とをねらったのではないかと考える」がどうか。. 交流学級(通常学 グループ分け. (16) 図工の授業のグループ分けは、意図的なのかどうか。. 級)の学習指導. (17) 体育のリズムダンスの授業でのグループ分けの意図は何か。 授業づくり. (6) 理科の学習でビデオ教材の視聴をする際に、どんな判断規 準で取り入れているのか。 (8) 図工の作品作りで、自由に作り始められるようにすること で、児童が作りながら想像力を膨らませることができるよう にしているのか。. TTとしての対応. (7) 理科の学習でワークシートや表などを準備せずに、水を冷や す実験を開始したが、何の変化を調べる実験か分かっていな い児童もいた。対応できない子には何らかの手立てが必要か。. らに、不足する情報について授業者に質問をすることではじめて自身の省察のリソースを獲得すると 考えられる。検討会が行われる前までは、B児の指導に関わって、C教諭から筆者に相談される場面 はほとんど見られなかったが、本検討会を実施したことで、筆者に対してB児への対応や交流学級で の学習指導に関する質問が行われ、C教諭にはこれまでなかった指導の視点が獲得されたと考えるこ とができる。 質問内容については、 「B児への対応」 「交流学級での学習指導」の2つのカテゴリーに分けること ができた(表2) 。表においてラベルの先頭に記入されている括弧内の数字は、全19回のうち何回目 の検討会で話された内容かを表している。 (7) (8)の質問のように、直接B児の指導に関係のない質 問も見られたが、B児への指導に関する質問が(1)から(5)で連続して出現し、検討会での質問を 通して、B児への指導改善に役立てようというC教諭の意欲の表れと考えることができる。. 126.

(8) 「学級がうまく機能しない状況」にある学級担任の支援方法に関する考察. 2)B児への対応についてのC教諭の気づき(表3) 授業観察に基づいて作成された観察シート・C教諭の発言記録を「B児への対応についてのC教諭 の気づき」(表3) 「C教諭の教師としての専門性の向上」 (表4)の2つのカテゴリーに大別した。 「B児への対応についてのC教諭の気づき」では、C教諭が「見守る」 「直接、支援すること」「見 守ると直接、支援することのバランスをとる」ことに悩んでいる様子が伺えたものの、 (13) (14) (17) のラベルから、B児を見守ることの重要性を新たに認識するようになったことが伺える23。これまで C教諭は、見守る時間が短く、B児に対してすぐに指導する傾向が見られた。加えて、B児に対する 指導が、B児が理解したり納得したりできるものではなかったことやB児にとっては望ましいタイミ ングのものではなかったため、C教諭とB児の関係がかえって悪化する原因ともなっていた。直接的 に指導することだけが特別支援学級担任の役割ではなく、他の児童との関わり方を見たり、B児への 支援が必要なタイミングを見極めたりするなど、B児の実態把握をもとにした指導の重要性について 表3 B児への対応についてのC教諭の気づき コード1 「直接、支援すること」と「見守ること」のバランス (11)  理科の学習で「これまでは、何とか自分の力でやらせたいという思いが強く、あまりヒントを出 さなかったり、さわりの部分までしか教えなかったりした。そのため、「できない」となっていた ことが多かったように思う。教えることと考えることのバランスを今後考え、達成感を感じられる ようにしていきたい。 (13)  社会科の学習で、B児に対して「隣の人に教えてもらうことをベースとして考えていきたい」「友 達同士でできるところはこれからも友達に聞いて、子どもたちで解決できるよう声かけをしたい」 「困った様子を見せていたので、支援に入っていきたい」「困った場面での固まっている様子など を見極めながら支援に入りたい」「本人ができたと感じられるような距離感とタイミングで支援で きるよう探っていく」 (14)  図工の学習でのB児への指導について、「固まっても様子を見て、友達との関わりを見ながら待 つことも必要だと考える」「どうしたら良いか分からない場面では、短い言葉で支援していきたい」 「やる気は感じるので、どんなことをする必要があるのか簡単な声かけを行いたい。友達との関わ りを観察しながら見極めたい。友達を手本にするようにすることも考えられる」 (17)  体育のリズムダンスの授業でのB児の様子について、「どのような振り付けをするかで、同じグ ループの友達と意見が分かれた。B児本人が納得できる形には見えなかったが、特にイライラして いなかった。基本的に見守って対応していきたい。」 コード2 「直接、支援すること」 (4)  (筆者が行った)B児の誤答への対応について、「発表したことを否定しないことで意欲をそがな いこと、B児のイライラを低減することをねらったのではないかと考える」 (12)  道徳の学習において、登場人物の心情を予想する場面で、B児に対して「どうしてそのようにし たのか理由を尋ねることで実態を把握していきたい」 (15)  社会科の地図帳を使った学習で、「『B児は活動を続けていたが、(湖を)見つけられずにいた』 ときに、(筆者)は最初に示した手順をB児と一緒に作業しながら復習していた。手順を示して、 自分でもできるようにやり方を理解させたい」 (16)  理科の実験の結果のまとめで、「(筆者が)B児に『他の子と比べて違いがあった?』と尋ねる。 『かなり違いました』と答え、『かなりってどれくらい?』『書き足してみたら?』と投げかけてい た。より具体的に書けるように、声かけが必要だと考える」. 127.

(9) 深 見 智 一. コード3 「見守ること」 (10)  B児が行っている教科リーダーとしての仕事について、「これまでは、すぐに取り組めないとき には早めのサポートを心がけていた。これまで、特に反抗したりはしなかったが、B児が自分自身 (注:C教諭)に依存傾向にあったと思う。自分でできるという自信もそいでいた可能性あり。(こ れからは、)本当に困るまで見守りたい」 (12)  「唇を噛む仕草は継続。緊張?考えている?」「もう少し様子をみとっていきたい。今後,どん な場面なのかを観察していきたい」. の認識が生まれた。 その認識が生じるまでの状況について触れておきたい。筆者の考察では、これまでのC教諭とB児 との関係を考えると、 「自分の力でやらせたい」という指導観とB児の特性を考えるとできないだろ うという児童観がC教諭にあり、指導観と児童観のねじれにより、B児に対する指導で一貫した指導 とならない場面が多く見られた。それが、C教諭とB児の学習が成立しない状況になる一つの要因と なったと考えられた。それでも、本検討会の(10)では、B児の実態に応じた指導として、 「本当に 困るまで見守りたい」という「見守る」ことに関する気づきが見られ、 (11)では「教えることと考 えることのバランスを今後考え」ていきたいという認識が生まれた。 「本当に困るまで」ということ がB児にとって適切な指導と言えるかは別にして、C教諭にそのような認識が生まれたことは成果と いえる。 それで、(11)の検討会の際に、筆者からC教諭に対して、 「子ども同士で学び合う学習形態を中心 にすることで、友達に聞いたり、全員ができているか確かめたりする動きが子ども達に自然に身につ いてくる」という学級経営の視点と「あらかじめ、今日の学習では何がB児にとって難しそうなのか を考え、指導方策を用意しておく」というB児の困難さに対応した個別指導の視点を助言した。その 結果、(13)(14) (17)にあるように、B児の様子を見守ることと直接、支援することのバランスを 意識した考え方が出現するようになったと考えられる。なお、 (12) (15) (16)のラベルでは、直接 指導することを念頭に置いたC教諭の記述が見られた。これは、B児の特性に合った適切な支援策と 言えることから、C教諭がB児の学習状況を適切に判断することができていたと判断できる。 3)B児への指導に関するC教諭と筆者の指導観や価値観の違い 上述したように、B児の指導においては、 「見守る」 「直接指導する」を適宜判断して指導すること が重要であったが、C教諭の「このように指導したい、このようにしなければならない」という指導 観とB児についての実態把握や児童観が逆方向のベクトルを向いている状況で、そこにC教諭の葛藤 があったものと考えられる。 B児が交流及び共同の学習を行う通常学級の学級担任であった筆者は、教師の指導をできるだけ減 らして、子ども同士のつながりを創り出すことを大切にしたいという思いがあった。筆者の立場から すると、C教諭のそれまでの学級経営(通常学級)は、教師が主導的な立場となって児童の指導にあ たることで、教師と児童との個別の関係性が強化される一方、児童同士の関係性がやや薄いように見 受けられた。また、B児の特性に応じた指導という点では、これまでの授業の場面で、筆者が児童に 対して指示を与えた直後に、B児に対して筆者と同じ説明を繰り返すという不必要と思われる指導を 行ったり、本検討会のコード3の(10)のように、 「本当に困るまで見守りたい」という極端な見方 が見られたりするなど、 B児への指導の仕方についての規準が明確ではなかったように見受けられた。 128.

(10) 「学級がうまく機能しない状況」にある学級担任の支援方法に関する考察. 筆者自身も、通常学級の授業で、子ども同士で学ばせたほうがよいのか、教師が直接児童に指導し たほうが良いのかを判断するのが難しいと感じることがあり、C教諭も同じように考えていることが 分かる。ただ、B児の場合は、失敗することで意欲が低下することが多いという特性があるので、授 業を計画する際に本時でB児が理解しにくそうな点をあらかじめ考えておくこと、授業中にはB児が 悩みすぎることがないようにヒントを多めに与えて自信をもって取り組めるようにすることがポイン トであるという助言を行っていた(コード1(11) ) 。ただ、その後の検討会でのC教諭の発話・記録 からは、「支援に入りたい」 「声かけをしたい」など、B児への具体的な指導方法については抽象的な 考えにとどまっており、具体的な指導のタイミング、方法、規準については、この省察のなかでは共 に検討することはできなかった。 筆者は、B児に対する指導のスタンスとして図1のような考えをもっていた。これは筆者自身の暗 黙知であり、C教諭に明示されていたわけではなかった。もちろん、筆者の指導のスタンスが絶対的 なものではないので、指導方針のすり合わせを行う必要はあるが、通常学級担任と特別支援学級担任 という立場を超えて実践知として共有することができていれば、通常学級と特別支援学級の指導方針 の違いが児童に微妙な影響を与えるということはなかったと考えられ、筆者自身の今後の学級経営の 課題となった。. 図1 B児に対する筆者の指導スタンス. 4)C教諭の「教師としての専門性の向上」について(表4) 次に、 「教師としての専門性の向上」 (表4)のカテゴリーでは、 「E教諭(TT担当)の指導行為へ の着目」「これまでの教育実践の省察」の2つのコードを抽出した。 ①「E教諭の指導行為への着目」 この検討会が始まった当初の予定では、C教諭の学級担任業務への復帰過程として、TT担当とし てB児以外の児童への指導を担当し、その後、交流学習におけるB児の指導、個別学習におけるB児 の指導、という順で復帰していく予定だった。そのため、校長は初回の検討会で、 「当面の間は参観 者としての立場での参観となるが、TTとして入る場合にどのように児童の指導をするか、F教諭(筆 者)の意向を探ったり、T2(E教諭)の指導を観察したりする」よう促していた。 その結果、TT担当であるE教諭の指導行為についてC教諭が着目していることが分かる記述が、 コード4の(4) (9) (12) (17) (19)において見られた。例えば、コード4(19)では、授業終了後、 E教諭に対して直接質問し、その後の検討会では、 「これまで・・・してしまいがちだったが」という 視点を持った積極的な振り返りをしている。このような形式で検討会を行うことで、C教諭の視点か ら見るF教諭やE教諭の指導行為についての理解が正しいのかどうかを確かめることができるという 利点がある。同一の授業場面をもとに検討会で話し合いが行われることで、C教諭を含む参加者が共 通の土台で話し合うことができ、 教師の指導観や児童観の認識の差を修正することができたと言える。 129.

(11) 深 見 智 一. 表4 C教諭の教師としての専門性の向上 コード4 「E教諭(TT担当)の指導行為への着目」 (4) (TTとして指導しているE教諭の指導の仕方について、)「必要最低限の対応を心がけている」 (9)  「理科の授業で、E教諭が実験のサポートをしており、粘土を小さくちぎって丸めて渡していたが、 『もう少し大きめにちぎったほうがいいよ』などの助言をしたい。」 (12)  TT担当であるE教諭がB児に指導した「教科書を真ん中にずらさないと、隣の人も見えないよ」 という指導について、「教科書を範読している時に、見えないなどの問題が起こる可能性があった ため、 声かけは必要だったと感じるが、 もう少し様子を見て声かけをしたい」 という記述をしていた。 (17)  「E教諭が踊りのアドバイスをすると、B児がやや涙目になっていた。できるかどうか不安?ど うしたら良いか分からない?という状況になっていたが、子ども同士にある程度任せると良いかと 考える。」 (19)  体育の授業について、 E教諭に「グループ3人で手のひらを合わせて回る動作を提案していたが、 『友達と一緒に動きを深められることをねらっての対応だったのか』『B児が他の児童と踊って達 成感を味わえるように働きかけたのか』と質問した」 コード5 「これまでの教育実践の省察」 (3)  複式授業での学習計画や一単位時間の見通しを示した学習計画表の作成にあたって、B児を意識 した対応(「ユニバーサルデザイン」の授業)をしているか。 (5)  理科の学習で、 「教科書にラインを引く場面で、定規を使わないでラインを引く子、蛍光ペンでマー クする子など人それぞれ。統一しないのか?定規の使い方の指導を含むようにとこれまでは考えていた」 (8)  図工の学習で、「初めて使う『わりピン』の使い方の指導と、段ボールカッター・キリの安全面に 関わる指導をして、活動にすぐに移っていた」 (9)  理科の学習で、実験結果をまとめることが難しい児童に対して、「(筆者)は、最初から個別に助 言するのではなく、すべての児童に指導してから、個別に助言していた」「(筆者)は、子どもの発 表から身に付けさせたい言葉や概念をピックアップして確認していた。 (C教諭自身は、)これまでは、 まとめを書き写させて終わりがちだった。子どもの発表の中から、どんな言葉を定着させたいかを 事前に確認しておくことも大切だと感じた」 (19)  体育のリズムダンスの学習で、「これまでは紙に書くなどして動きの計画を立てさせたり、一斉 に同じ動きを練習させたりしていたが、資料の効果的な提示、見通しをもてるような授業展開、子 ども同士でよく考える児童を育てる学級経営を参考にしていきたい」. ただ、そのような状態に至るまでかなりの時間を要したことも事実である。コード4の (4) (9) (12) (17)において、C教諭からE教諭の指導行為に関する言及があったが、いずれもC教諭の解釈であ り、E教諭がどのようなねらいでB児に対して指導していたかを確認していたわけではなかった。検 討会において、筆者がC教諭に対して、E教諭に尋ねてみるよう繰り返し促すことで、コード4の( 19) の発言を引き出すことができた。無藤・久保・大嶋(1980)では、学習者は質問を思いついていると いう前提に立ち、質問しない場合の何らかの抑制要因があることが報告されている24。本研究におい ては、C教諭がE教諭に質問しなかったことの要因として、X教諭との関係性や検討会の雰囲気など も考えられるが、授業参観や参観シートの作成、検討会の開催自体がE教諭にとっては不本意であっ たという可能性も考えられる。 ②「これまでの教育実践の省察」 コード5においては、C教諭自身の学級経営や授業改善につながるような振り返りがなされてい 130.

(12) 「学級がうまく機能しない状況」にある学級担任の支援方法に関する考察. た。コード5の(3) (5) (9)では、通常学級における指導についての気づきが記述され、授業観察 を教育実践に活かそうとするC教諭の意欲が見られた。検討会の前半部分の(3) (5) (8)では、B 児への指導に直接関わらない内容についての質問・記述が多かったので、まずは、B児への指導に活 かすという視点を中心に授業参観することを助言した。B児への指導という視点をもった授業参観を 繰り返し行うことで、これまでの失敗事例と成功事例の蓄積・言語化が行われることを期待していた からである。B児に対してこのような指導をした結果、このような成果が見られていた(行為の振り 返り) 、このようにすればよかったという省察(本質的諸相の気づき、選択肢の拡大)も必要である という助言を行った結果、コード5の(19)のように、過去の実践を相対化して新しい指導の手だて や選択肢に気づく変容が見られた。. 5 成果と課題 1)成 果 授業参観、授業参観シートの作成、検討会の実施により、C教諭は、これまでのB児への指導で改 善すべき点に気づき、新たな指導の視点を獲得することができた。とくに、検討会の実施により、C 教諭が指導上の課題を認識し、改善策を検討していくための場が設定されたことにより、C教諭が 「B児への対応」(表3)「教師としての専門性の向上」(表4)に関わって、ALACTモデルにおけ る「③本質的諸相の気づき」 「④行為の選択肢の拡大」が行われたことが成果として挙げられる。B 児を直接支援するだけではなく、見守ることも念頭に置いた指導が必要であること、TT担当教諭の 指導行為に着目すること、これまでの教育実践を省察することについて、C教諭が認識することがで きていた。これらのことから、 「学級がうまく機能しない状況」になった学級担任の支援方法として、 授業参観、授業参観シートの作成、検討会の実施という一連の取組の有効性が明らかになった。 また、本研究における取組の特徴として、C教諭を支援する方法が、いわば「伴走型」とも言える 一般教諭同士(C教諭と筆者)の関係において行われたことが挙げられる。立場は、それぞれ授業者 と参観者と異なるものの、当該児童の学習の様子を共に見て検討会を行うことができ、それにより、 B児への具体的な指導方法について検討することができた。 副次的な効果ではあるが、検討会を通じて、筆者自身も学級経営や授業づくりを省察する機会とな り、交流及び共同学習を行う際の特別支援学級担任への説明責任が不十分であったことを認識するこ とができた。これまで、学級経営に関しては、日常から児童同士の相談や交流を大切にした学級経営 を行っているつもりではあったが、その指導方針がC教諭と共有できていなかったことが明らかに なった。また、通常学級での指導方針に対してB児が全面的に適応できるわけではなく、一つ一つの 事象に合わせて柔軟に指導していく必要性について認識することもできた。とりわけ、検討会時にC 教諭にTTの役割について考えるよう促すことを通して、通常学級での授業を行う際に、T2となる特 別支援学級担任との打ち合わせの重要性について確認することができた。筆者が担任をする通常学級 では、E教諭と共に指導に当たることが多かった。E教諭とは事前の打ち合わせを念入りに行ってい なかったが、E教諭自ら、筆者が作成した「学習計画表」 (本時の目標、学習課題が書かれたもの) を見て必要な判断をし、児童への指導が手薄になる間接指導の際に適切な指導をしておられた。T1 である筆者の意図、つまり、できるだけ教師の直接的な指導を控えて、児童同士の学び合いにおいて 学習が進められるようにしたいという意図を汲んだ指導が行われた。これは筆者とE教諭の関係性に よって成り立っていたものと言えることから、初めて同じ学年を組む場合には、T1が考えるT2の役 131.

(13) 深 見 智 一. 割について年度当初や朝の打ち合わせなどで定期的に打ち合わせをしていくことが重要であるという 認識に至った。 2)課 題 第一は、検討会による成果が見いだされたものの、それがC教諭の担任復帰につながらなかったこ とである。つまり、検討会などの一連の取組により、C教諭はこれまでにない新たな視点を獲得する ことができたものの、担任復帰に至るまでの段階には達することができなかったということである。 ただし、このことをもって直ちに、授業参観、授業参観シート、検討会の取組に効果が全くないとい う判断をすることはできない。本事例において、C教諭が学級担任として復帰できるかを判断した校 長には、C教諭がB児との個別授業を受け持つ、もしくは、交流学級で児童の指導をして、検討会の 成果を発揮してもらいたいという思いがあった。しかし、B児がすでに安定した生活を取り戻してお り、年度末の時期にC教諭が再び指導することで生じるかもしれない様々な影響を考慮した結果、指 導に戻るという判断には至らなかったという事情がある。仮に、検討会を含む一連の取組が、C教諭 が担任業務から外れた直後から実施されていれば、多少時間がかかったとしても、少なくともTTと して復帰する段階までは進捗していたものと思われる。また、筆者らの指導のもと、通常学級での授 業を行い、C教諭が担任業務の一部に復帰する方法も考えられていた。しかし、通常学級の授業の一 部をC教諭が受けもつということは対児童、対保護者への説明責任から難しく、さらに、C教諭がB 児に対して一人で授業をすることも難しかった。A小学校は、 小規模校ゆえに担任外の教諭がおらず、 複数体制で授業を行うための教員を配置する余裕がなかったからである。検討会の取組が2月をもっ て終了したことも含め、個別的事情と時間的制約、人的制約の諸条件を取り除いたとして、一連の取 組は担任復帰の過程における支援方法として有効であったものの、担任復帰という所期の目的を達成 することはできなかった。このような事例を検討するにあたっては、個別の事例の背景や関連する要 素が異なることから、一般解を導き出すことは極めて困難と言えるが、あくまでも担任復帰を目指す 過程の一部としては効果が見られたと考える。 第二に、検討会の実施にあたっての負担についてである。筆者は、担任から外れることで何かしら の不本意さを感じていたと考えられるC教諭と19回にわたる検討会を実施し、その結果として、51)で触れたように、省察による副次的効果を得ることができた。C教諭への支援は、いわば「伴走 型」と言える支援方法であったものの、筆者の教職経験年数・年齢はC教諭よりも下であり、そのよ うな検討会が継続して行われることへの精神的な負担感があったことは否めない。また、時間の面で の負担感もあった。児童の下校後、毎日30分間から1時間程度が検討会に要する時間となっており、 その後、校長との意見交換も行い、翌日の検討会に臨んでいた。検討会が行われた後に、校務分掌に 関する打ち合わせや学級業務を行うことになり、全19回の検討会が行われていた期間中は、休憩時間 を十分確保することができず、勤務時間内に業務が終了することはなかった。このような精神的・物 理的な負担感から、検討会を含む一連の取組の汎用性については課題が大きいと言える。 学級経営や授業づくりで小学校の学級担任の裁量は極めて広く、自律性も高く、ともすると「個業」 に陥ってしまう危険がある。浜田(2012)は、 教師の力を十分に発揮するための鍵として「エンパワー 25 メント」 (自己効力感の向上)という考え方を示している 。教師が、一定の裁量を持って任されると、. 自らの発想と努力で学級を創り上げていくことに教師としてのやりがいや喜び、責任感を感じ、力が 十分に発揮されていくと言う。本研究においては、 「学級がうまく機能しない状況」になった学級担 任への支援方法について検討したが、学級担任として十分力を発揮している教師は、どのような過程 132.

(14) 「学級がうまく機能しない状況」にある学級担任の支援方法に関する考察. を経て力量形成をしてきたかについては、今後の検討課題としたい。. 付 記 本研究の一部は、JSPS科研費18H00068の助成を受けたものです。. 註 1 中央教育審議会(2012) 「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について(答申)」 2 佐古秀一(2006) 「学校組織の個業化が教育活動に及ぼす影響とその変革方略に関する実証的研究-個業化,協 働化,統制化の比較を通して-」鳴門教育大学研究紀要第21巻,41-54 3 学級経営研究会(2002) 「学級経営をめぐる問題の現状とその対応:関係者間の信頼と連携による魅力ある学級 づくり」 「学級経営の充実に関する調査研究」最終報告書 4 河村茂雄(1999) 『学級崩壊に学ぶ-崩壊のメカニズムを絶つ教師の知識と技術』誠信書房 5 蘭千壽・高橋知己(2008) 『自己組織化する学級』誠信書房 6 朝日新聞社会部(1999) 『なぜ学級は崩壊するのか-子ども・教師・親200人の体験と提言』教育史料出版会 尾木直樹(1999) 『 「学級崩壊」をどうみるか』日本放送出版協会 7 山田洋一編著(2014) 『THE 学級崩壊立て直し』明治図書 向山洋一(1999) 『学級崩壊からの生還』明治図書 8 須藤康介(2015) 「学級崩壊の社会学:ミクロ要因とマクロ要因の実証的検討」明星大学教育学部研究紀要第5 号,47-59 9 高橋克己・綾牧子(2006) 「 『学級崩壊』問題における予言の自己成就:『変化した子どもとそれに対応できない 教師』という原因帰属様式の展開と帰結」文教大学教育研究所紀要第15号,43-54 10 河村茂雄(2011) 『教育委員会の挑戦: 「未然防止への転換」と「組織で動ける学校づくり」』図書文化社 11 滝沢裕之(2013) 「特別な支援を要する児童が在籍する通常学級担任の感情と対応の分析」平成25年度千葉市教 育センター長期研修生論文,1-8 12 石川美智子(2016) 「学級経営の動向-学級の変遷・戦後の学級経営論文と小学校教師への調査」佛教大学教育 学部論集第27号,15-32 13 赤坂真二・堀博嗣(2018) 『最強の学級開き』明治図書 14 藤川大祐(2012) 「学級経営と利得構造-学級経営研究のための試論-」,授業開発研究第5巻,1-5 15 藤森宏明(2014) 「教職大学院制度がもたらした教育・研究に対するインパクト-とくに学級経営領域に着目し て-」 ,北海道教育大学高度教職実践専攻研究紀要第4号,27-37 16 山田雅彦(2015) 「課題非従事行動への対処法に関する研究の動向と展望」東京学芸大学紀要総合教育科学系66 ⑴,103-113 17 原田克己・坂口直子(2010) 「学級の荒れを未然防止するための多面的支援-小学校でのチームサポート-」教 育実践研究第36号,金沢大学人間社会学域学校教育学類附属教育実践支援センター,75-86 18 Korthagen, F.A.J.(2010) 『教師教育学 理論と実践をつなぐリアリスティックアプローチ』 (武田信子・今泉友 里・鈴木悠太・山辺恵理子訳) ,学文社 19 ここでは,省察の定義については詳述することができないが,本研究における省察とは, 「授業や生徒指導,学 級経営などの教師の教育活動全体を多様な視点から検討し直し(多面化,相対化) ,新たな課題を見つけるなど発 展的に再構築するための振り返り」と定義する。 20 山﨑準二(2002) 『教師のライフコース研究』総風社 21 佐藤郁哉(2008) 『質的データ分析法-原理・方法・実践-』新曜社 22 秋田喜代美・キャサリン=ルイス(編) (2008) 『授業の研究・教師の学習-レッスンスタディへのいざない』. 133.

(15) 深 見 智 一. 明石書店,98-100 23 B児はその特性ゆえに,学習課題を自力で理解したり,解決したりすることが難しいことがある。ここでは, そのような場合に,すぐにC教諭がB児に対して声をかけて指導することを「直接指導すること」とし,B児の様 子を観察して適切な対応を検討していることを「見守る」対応というように定義する。 24 無藤隆・久保ゆかり・大嶋百合子(1980) 「学生はなぜ質問をしないのか?」心理学評論23⑴,71-88,心理学 評論刊行会 25 浜田博文(2012) 『学校を変える力-教師のエンパワーメントとスクールリーダーシップ』小学館. 134.

(16)

参照

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