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ストレスマネジメント教育の一考察Ⅲ ― 保健体育科・保健分野における実践 災害時における心理的支援を通して ―

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(1)Title. ストレスマネジメント教育の一考察Ⅲ ― 保健体育科・保健分野におけ る実践 災害時における心理的支援を通して ―. Author(s). 木須, 千明; 柴田, 題寛; 安川, 禎亮. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 70(1): 409-421. Issue Date. 2019-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10555. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第70巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 70, No.1. 令 和 元 年 8 月 August, 2019. ストレスマネジメント教育の一考察Ⅲ ― 保健体育科・保健分野における実践 災害時における心理的支援を通して ―. 木須 千明・柴田 題寛・安川 禎亮* 北海道教育大学附属釧路中学校 *. 北海道教育大学釧路校. A Study of Stress Management Education ― Using the Psychological Supports Provided during a Disaster ―. KISU Chiaki, SHIBATA Mitsuhiro and YASUKAWA Sadaaki* Kushiro Junior High School Attached to the Hokkaido University of Education *. Hokkaido University of Education Advanced Teacher Professional Development Program. 概 要 本稿では,日本における相次ぐ地震の発生やそれに伴う被災者の心理的ストレスの実態から, 災害時の心のケアの重要性と防災教育における支援者の2つの視点を踏まえ,中学校保健体育 科・保健分野の授業においてストレスマネジメント教育をもとに災害時における心理的支援の 学習を行った実践事例を詳細に記している。事前調査により,本校の生徒は平成30年9月に起 こった北海道胆振東部地震において被災の実体験がないこともあり,同じ北海道内ながら危機 感を感じていなかったことがわかり,災害時の具体的な想起を手だてとして防災の意識を高め られるよう授業を構成した。また,震災により母を亡くした少女の例から被災者への配慮を踏 まえた心理的支援の方法として,「傾聴」と「触れるケア」の2点に焦点を絞り,体験的に実 践を行った。実践後のワークシートの記述からは,多くの生徒がノンバーバルコミュニケーショ ンにおける傾聴の効果と触れるケアの効果を感じ取っていたことがわかった。また,授業にお いては災害時における支援という視点からしか実践を行わなかったにも関わらず,傾聴と触れ るケアの両方とも,日常と結び付けて考える生徒が複数みられた。 このようにストレスマネジメント教育を通して得たものを日常生活の中で発揮させるために は,保健体育科・保健分野を要としながらも,様々な教育活動に位置づけた系統性のあるカリ キュラム開発が求められると考える。 キーワード:ストレスマネジメント教育 災害 心理的支援 傾聴 触れるケア. 409.

(3) 木須 千明・柴田 題寛・安川 禎亮. の知識だけではなく,災害時の子どもの心のケア. 1.はじめに. に一層力を入れることや,支援者としての役割も. 平成7年に起きた阪神・淡路大震災以降,自然. 学ぶことが求められている。. 災害を発端とする,外傷後ストレス障害(PTSD). しかし,保健体育科・保健分野で災害について. とされる症状の懸念から,子どもの心のケアにつ. 扱う傷害の防止という単元では,心理的支援につ. いて注目されるようになった。平成10年に文部科. いては記載されていない。. 学省から「非常災害時における子どもの心のケ. これらを踏まえ,中学生という発達段階におい. ア」が出され災害や事件・事故発生時における子. て人が人を支援するというソーシャルサポートの. どもの心のケア,子どもの心のケアの体制づくり,. 体験を大事にしたいと考え,中学2年生の保健体. 危機発生時における健康観察の進め方が示され. 育科保健分野の傷害の防止の単元の中で,災害時. 1). た 。さらに新潟県中越沖地震などの自然災害を. の心理的状況とそのケアを行うことの重要性を理. 受けて平成22年に改訂され,自然災害時における. 解し,支援者として心理的支援を行うことを通し. 2). 心のケアの進め方が具体的に提示された 。その. て心のケアの方法を扱うこととした。保健体育. 後,平成23年3月,東日本大震災が起き,続いて. 科・保健分野において,ストレス対処について扱. 熊本地震,平成30年9月には北海道胆振東部地震. うのは学習指導要領上では1年生のみだが,本実. と,大規模な地震が相次いでいる。. 践では2年生の災害の単元でストレスマネジメン. また,平成29年12月19日に政府の地震調査研究. ト教育を実施する意義について検討する。. 推進本部より,北海道東部の十勝沖から択捉島沖 の太平洋に横たわる千島海溝で,マグニチュード 9級の超巨大地震が今後30年以内に7~40%の確 率で起きるとの予測を公表した3)。このことから,. 2.実 践 ⑴ 対象 中学校2年生3クラス(各35名). 本校が在する北海道東部での大規模地震の発生が 危惧され,より一層震災への防災教育やそれに関. ⑵ 時期 平成30年12月. わる子どもの心のケアへの必要性が高まってい る。 防 災 教 育 に お け る 心 の ケ ア と し て, 冨 永. ⑶ 題材について. (2000)は被災した際の心のケアとしてストレス. 本題材のねらいは,自然災害による傷害が,災. 4). マネジメント教育の授業実践を行っている 。. 害発生時だけでなく,二次災害によっても生じる. 文部科学省から出された「学校防災のための参. ことや,災害に対する備えについて理解すること. 考資料「生きる力」を育む防災教育の展開」では,. である。また,危険の予測やその回避の方法につ. 中学校段階における防災教育の目標は, 「日常の. いて考えることを通して実践できるようにするこ. 備えや的確な判断のもと主体的に行動するととも. とである。. に,地域の防災活動や災害時の助け合いの大切さ. 本実践の3ヶ月前に北海道胆振東部地震が起こ. を理解し,すすんで活動できる生徒」とされてい. り,本校生徒は北海道内全域停電というブラック. 5). る 。さらに3つの具体的目標の1つ「ウ社会貢. アウトの被害に遭っている。この時の生徒が感じ. 献,支援者の基盤」として,「地域の防災や災害. た危機感について実践前に調査を行ったところ,. 時の助け合いの重要性を理解し,主体的に活動に. 「北海道胆振東部地震で危機感を感じたか」とい. 参加する」 と位置付けられている5)。このように,. う質問項目について,危機感を感じたと回答した. 防災教育では災害の知識だけでなく,支援者とし. 生徒は3%であった。今回の地震において,生徒. ての役割も学ぶことが求められている。. は2日間程度の停電を経験していたが,危機感を. 以上のことから,災害に関する学習では,通常. 感じている生徒が少なかったため,災害に対する. 410.

(4) ストレスマネジメント教育の一考察Ⅲ. 備えを考えるに当たり,現実的な備えを考えるこ とが困難であると判断した。そこで,災害発生か ら時系列に起こる出来事や困る出来事について具. ・避難所での生活を想起する。 ・資料の少女に対する心理的支援につ いて考える。 ・傾聴と触れるケアの考え方や方法を 理解し,実践する。. 学習 活動. 体的に想定させることを重要視し,班ごとにX チャートと付箋を用いてブレーンストーミングを 行うことで被災による被災地や被災者の状況とそ. ⑸ 授業の流れ. の状況に必要な具体的な支援を想定しやすくする. 汎用性を考慮し,授業案という形ではなく,実. こととした。. 際の授業の様子の写真を挿入し,教師の働きかけ. また,実際に被災した一人の少女を取り上げ,. を詳細に明記して授業の流れを示すこととする。. その少女のために何ができるのかを考えること 表2.1時間目の授業の流れ. で,支援者としての立場から震災を捉えさせるこ ととした。特に傾聴と触れるケアに注目しノン バーバルな関わりや,身体から心に働きかけるこ とに重点を置いて実践することとした。 ⑷ 題材計画 表1.題材計画. 1. 学習 目標. ・自然災害発生時から,復興までの状 況を時系列に想定することができる。. 学習 活動. ・身近に起きた災害や今後予想される 災害について発表することができる。 ・被災後起きることを想定することが できる。 ・被害や困ることから対応策を調査す る。. 学習 目標. ・自然災害から身を守るために日ごろ からどう備えるかについて理解する。 ・震災時の想定を踏まえ,準備するも のと知識と意識の3つの面から災害 の備えについて具体的に考えること ができる。. 学習 活動. ・災害時の対応策を交流する。 ・避難時の持って行くものを考える。 ・災害に対する備えや復興に向けた考 え方について理解する。 ・自らの命を守るための考え方につい て理解する。. 学習 目標. ・自然災害時の心身のストレス状態や ストレスを緩和させる必要性を理解 することができる。 ・心理的支援について相互の役割を体 験することを通じて,その効果を体 感することができる。. 2. 3. 主な 学習活動 1 最 近 身 近 に あった災 害につい て発表す る。. 教師の働きかけ. 備考. ・今 年9月6日何がありまし 発表 たか。 →北海道胆振東部地震 ・他 に知っている自然災害は なんですか。 ・地震 ・津波 ・台風 ・火災 ・洪水 ・雷 ・竜巻 など ・災 害は一次災害と二次災害 に分けることができます。 例 えば地震→津波・土砂崩 れ・火災・液状化現象. 2 釧 路 で今後起 こること が予想さ れている 災害につ いて発表 する。. ・昨 年政府の調査研究本部よ 新聞 り発表された釧路で今後起 記事 こることが予想される災害 はなんでしょうか。また, どういった予想でしたか。 ・今 回の北海道地震で,何か こまったことはありません か。 ・釧 路でも,近い将来東日本 大震災のような巨大地震が 起こるかもしれません。. 3 震 災 後に起こ ることを 具体的に 想定する。. ・2月△日 深夜1時30分釧 路沖で震度7 マグニチュー ド9.5の地震発生 ・ど んなことが想定されます か。 →津波,火災 ・自 分 の 家 の 海 抜 の 高 さ を 知っていますか。また,学 校の高さや,避難所の場所 はしっていますか。. 緊急 地震 速報 ①. 411.

(5) 木須 千明・柴田 題寛・安川 禎亮. ・ハ ザードマップで確認して みましょう。 ・津波の心配はありません。 ・ま ず,みんなで震災発生直 後の身の回りの状況を想定 してみましょう。起こる被 害や困ることを付箋に記入 してXチャートに貼りま しょう。 ・付 箋を班で分類し,グルー ピングしましょう。. 緊急 地震 速報 ②. 2 避 難 時に持っ ていくも のを考え WSに記 入する。. 付箋 Xチ ャー ト配 布. ・避 難する時に持っていくも のは何でしょうか。 →防災リュック ・防 災リュックの中身につい て,班で検討しましょう。 ・ 「防災グッズ」でまとめられ てしまうことが多いのです が,一次避難用品(命を守 るために必要なもの)と二 次避難用品(生き続けるた めに必要なもの)に分けて 考えることができます。 ・ま ずは,命を守るために必 要なもの選択しましょう。 ・そ れ以外はリュックに余裕 があったり,別のリュック に入れたり,備蓄として家 に保管しておくなど。 あとで参考資料配付します。 ・防 災リュック以外で自分の 家に足りないものを班で話 し合いながら探してくださ い。. 写真1.Xチャート結果 4 被 害 や困るこ とから対 応策を調 査する。. ・被 害や困ることにたいして 何が必要でしょうか。自宅 で行っている防災対策を調 べてきてください。. 3 被 災 後情報を 得る手段 について 考える。. ・情 報はどのように入手すれ ばよいでしょうか。 ・災 害 用 伝 言 ダ イ ヤ ル171や WEB171もあります。また, 各携帯会社にもあります。. 4 備 え や復興に 向けた考 え方につ いて理解 すること ができる。. ・み んなが想定してくれたも のは,3つに分類すること ができます。 →自分ですること →地域の人とすること →国がしてくれること ・災 害による被害をできるだ け少なくするためには,一 人一人が自ら取り組む「自 助」,地域や身近にいる人同 士が助け合って取り組む 「共助」,国や地方公共団体 などが取り組む「公助」が 重 要だと言われています。 その中でも基本となるのは 「自助」,一人一人が自分の 身の安全を守ることです。 だんだん被災から時間が経 つにつれて,自助→共助→ 公助へと比率が大きくなっ ていきます。. 5 自ら. ・自助で一番大事なことは何. 表3.2時間目の授業の流れ 主な 学習活動. 教師の働きかけ. 1 前 時 ・前 回の想定ではみなさんか の震災時 らこのようなことがでてい の想定を ました。各班のXチャート 交流する。 を比較してみましょう。 ・こ の想定をふまえて具体的 な備えを考えてみましょう。 ・時系列で考えてみましょう。 ・被 災直後の想定はこれらで す。 どのような備えが必要でしょ うか。 (家具固定の図提示). 412. 備考 各班 のX チャ ート 配付. WS配 付. WS 記入 参考 資料 配付.

(6) ストレスマネジメント教育の一考察Ⅲ. の命を守 るための 考え方に ついて理 解するこ とができ る。. だと思いますか。 →命を守ることです ・ 「つなみてんでんこ」という 言葉を知っていますか。ど のような意味だと思います か →東 北地方に伝わる合言葉で 津波がきたら一目散に逃げ ろという意味です。地域に 根付いているからこそ,釜 石市という大きな被害を受 けた地域でも,逃げるのが すごく早くて助かったとい う「釜石の軌跡」と呼ばれ ています。 ・ど れ だ け 準 備 し て も, 「意 識」が足りないと,命を守 ることができません。今回 した想定は,現実になって ほしくないけど現実になる 確率が高いことを忘れない でください。 ・このように「備え」には「準 備する物」と「知識」と「意 識」が必要です。 ・精 神的なケアについては備 えについては次回行います。. ・想 定を考えた時に多くの班 が1ヶ月後の所に「余震」 と書いてくれていました。 胆振東部地震は1ヶ月間余 震289回。東日本大震災の時 は864回(そのうち震度4以 上が113回)。 2 資 料 から心に 傷を負っ た人の心 身の状態 を考え発 表する。. 1 避 難 所生活の 状況と避 難してい る人の心 身の状態 を発表す る。. 教師の働きかけ ・今 日は,Xチャートの被災 1ヶ月後の所に多く見られ た「被災した時の精神面」 について考えていきましょ う。 ・避 難所の生活はどんな様子 でしょうか。 心:いらだち・不安・混 乱 身体:疲れ・腹痛 行動:眠れない・泣く. 写真3.被災した少女 3 資 料 の人物に 対する心 理的援助 について 考えるこ とができ る。 備考 これ まで の学 習を 振り 返り なが ら進 める. 避難 所の 写真. 写真2.避難所. 少女 の写 真提 示. 新聞 記事 配布 音読. 表4.3時間目の授業の流れ 主な 学習活動. ・不 安を抱えながら避難所生 活を送っている人の中に, こんな人もいました。実際 の東日本大震災1ヶ月後の 4月11日の写真です。. ・地 震によって,この人には 何が起こったでしょうか。 ・実 際の新聞記事の一部抜粋 です。 ・こ の人の心・体・行動(生 活の状態)はどのような様 子だったでしょうか。 心:絶望・悲しみ・生き ていくのもつらい・ 苦しい・思い出した くない 身体:頭 痛・ 腹 痛・ 緊 張・震え 行動:眠れない・泣く・ 食べられない. 4 傾 聴 ・こ の人に,何かしてあげら の考え方 れることはないでしょう と方法を か。どのような心理的援助 理解し, がでしょうか。 実 践 す る (・誰 が・どのようになど掘 ことがで り下げて聞く) きる。 ・励ます・話を聞いてあ げる ・カウンセリング ・精神科医 ・音楽 ・そばにいてあげる. 20秒 ずつ. ・どのように聞いてあげたら. 413.

(7) 木須 千明・柴田 題寛・安川 禎亮. よいでしょうか。 ・カ ウンセリングは専門家が 行うものですが,誰でも話 を聞いてあげることはでき ます。カウンセリングの基 本「傾聴」という言葉を知っ ていますか。 ・ 「傾ける」という字が使われ ていますが,何を傾けるの だろう。 ・傾 聴では,相手のありのま まを無条件に受け入れると いうことが基本になります。 ・ペ アでやってみましょう。 廊 下 側 の 人 は, 「資料の少 女」の立場,窓側の人は支 援者として話を聞いてあげ てください。 ・聞 い て 貰 っ て, す ご く 良 かった思った人,感想を教 え て く だ さ い。 ど こ が よ かったですか。 ・支 援者側の人は何を意識し たのですか。 ・表情は穏やか ・声のトーンは落ち着い ている ・声の大きさは大きすぎ ない ・姿勢は前のめり ・目線は相手 (傾聴スキルで足りないもの 補う) ・で は, 意 識 し て も う 一 度 やってみましょう。 ・メ ッセージの7~8割は非 言語コミュニケーションと 言われています。言葉以外 にはどんなことから相手の 状態が伝わってくるでしょ うか。 ・話を聞く方も同じです。 「あ な たのことを心から思って います」というメッセージ は,言葉以外のところから 伝わります。 5 リ ラ ク セ ー ションを 体感する ことがで きる。. 414. ・み んなが話を聞いてあげた くても,この人が抱えてい る辛さを話すことができる でしょうか。 支援 ・傾 聴は,言葉だけでなく相 者と 手の感情を受け止めるもの 被災. です。 ・実 際に行われた被災者の心 理的援助を体験してみよう。 ・話 せないこともあるとき, 身体に働きかける方法です。 ・き ずなのワークを体験して みましょう。 ①後ろの人は自分の手をこ すりあわせて温めます。 ②座っている人は目を閉じ てうつむくようにしてく ださい。 ③前の人の肩に手をおきま す。軽すぎず,力入れす ぎず,相手が手の重みを 心地よく感じるくらいの 重さでおいてあげてくだ さい。 ④少しそのまま手を当てて いてください。じんわり あったかいのを感じてく ださい。 ⑤後 ろ の 人 は 心 の な か で 「よく頑張っているね」 などとプラスのメッセー ジを送ってあげてくださ い。 ⑥次は首から肩にかけてさ すってあげてください。 ⑦最後にもう1度肩に手を 当てて,またじんわりと した温かさや心地の良い 重みを感じてください。 ⑧終了です。交代してくだ さい。. 写真2.ペアワーク. ・心 が苦しくなった時の状態 を知って欲しい。どんなに 強い人でも,状況によって は誰でも,なることがあり ます。そんな時は,一人で はどうにもできないことも あります。 そんな時,そっと寄り添って. 者に 役割 分担 をす る。.

(8) ストレスマネジメント教育の一考察Ⅲ. 表6.被災後の時間経過と心理状態の想定 時間. あげられる人になって欲し い。これらは災害のような非 日常の強いストレスの時だけ でなく,日常のストレスにも 有効です。みんなも,ストレ スを感じることがあると思 う。小さなストレスでも,積 もれば大きなストレスになる こともある。人間関係のスト レス・テスト前のストレスや 緊張・試合前の緊張などにも 効果的です。. 被災直後 被災三日後. 3.結果と考察. 実践の2ヶ月前にあった地震に対し生徒の意識 が低かったことから,震災を具体的に想起させる. 被災一週間後. ⑴ 災害の具体的な想起. 方法として,Xチャートと付箋を用いてブレーン ストーミングを行い,時系列で具体的な被災状況 を想起させた。以下は各班の付箋の内容をグルー ピングし,その枚数をカウントした数値である。 表5.被災後の時間経過と被災状況の想定 被災 直後. 被災3 日後. 被災1 週間後. 被災1 か月後. 二次災害や被 害. 199. 45. 13. 8. 情報. 8. 28. 9. 5. 食料. 0. 34. 19. 11. 治安や経済. 0. 0. 19. 12. 衛生・健康. 0. 25. 31. 53. 公助. 4. 21. 11. 22. 精神. 39. 28. 58. 94. 生活上の不便. 7. 41. 42. 38. その他. 1. 0. 3. 4. 被災一ヶ月後. 項目. コード. 数. 焦り8,状況を理解できない,パニック 11,精神的ストレス2,不安定3,恐怖 39 9,不安4,ドキドキ 不安7,パニック,ストレスによる精神 の不安定2,恐怖,疲労3,精神崩壊2, うつ病,眠れない,眠い,怖い2,被害 28 の大きさが見えてくる,今後への不安, 食料・物資に対する不安,家族・友達の 心配,疲れ,悲しみ2 いつまで続くかわからない避難所生活, 不安10,恐怖3,病み期2,イライラ4, 食欲をなくす,無気力,精神崩壊3,疲 労7,病い,精神ノイローゼ,家族が心 配,老人の精神状態,元の生活に戻れる 58 のか不安,憂鬱,今後の生活への不安3, 気持ち悪い,ストレス3,焦り2,不快 感,苦痛,悲しい,つらい4,ストレス を発散する場所がない,健康の不安,友 達に会いたい,二次災害への不安 笑顔が減る,精神的ダメージ3,疲れ7, 精神が不安定になる5,精神病になる人 が増える2,ストレス8,1か月が長く 感じる,少し疲れてくる,幻覚を見る, 不安10,避難所生活のストレス5,トラ ブル,生きることへの疲れ,苦痛6,友 達に会えない2,当たり前への感謝,う つ病3,不安で眠れない2,叫ぶ人がい 94 る,一人になりたい,自殺願望3,混乱 2,自殺者が増える4,死亡者が発覚し 悲しい2,何も考えたくなくなる,発狂 2,無口になる,明日の希望がない2, ストレスによる犯罪,絶望3,友達や知 り合いへの心配,PTSD,今後への生活 の不安2,悲しみ,危険な精神状態3, つらい2,美味しいものが食べたい. 実際に,被災時の心理状態は時間的経過ととも に変化していくと報告されており,災害直後の茫 然自失期を経て,被災者同士が固い絆で結ばれる. 生徒の想定から,二次災害や被害状況に関わる. ハネムーン期が訪れ,災害直後の混乱が収まって. 内容は被災直後が多く,精神面については直後か. きた時に幻滅期となる。復旧が進み,生活の目処. ら1ヶ月にかけて増加していた。このことから,. がたち始める頃になると再建期と呼ばれる6)。. 生徒は震災直後の直接的な被害が落ち着いてくる. 授業においては,災害が起こった後の状態をよ. と精神的な被害に着目していることがわかる。精. り具体的に想起し防災に対する意識を高めること. 神面の付箋の内容は以下の通りである。. が目的であったため,被災による心理状態がどの. 415.

(9) 木須 千明・柴田 題寛・安川 禎亮. ように変化するかについては生徒には伝えていな. ⑵ 被災者の心情に寄り添う. い。しかし,生徒から得られたデータと報告され. 宮前(2018)は復興過程で被災者が被災時の心. ている被災による心理的変化の段階を比較してみ. 境について語らなかったことに関する議論はほと. ると,以下のような結果が得られた。. んどなされていないことを挙げ,被災者によって. 被災直後は「パニック」の記載が多く,茫然自. 語られなかった事例から,語られないことに着目. 失期の状態と言える。被災3日後ではコード数は. することの意義について述べている7)。このよう. 増えたが,付箋の数は被災直後と比べ減少してい. に,被災後は全国から支援者が集まり支援を行う. た。これはハネムーン期を表し,実際に精神的被. 中,被災者は経験したことのない精神的苦痛を味. 害ではない部分の被害に生徒は着目していた。被. わい,混乱した状況の中,語ることができないよ. 災1週間後から被災1ヶ月後にかけてコード数も. うな心理状態の人も少なくないことは事実である。. 付箋の数も大幅に増加しており,幻滅期の状態を. 荒木(2006)は,支援者に求められる態度の1. 具体的に想起できていると言える。実際に幻滅期. つとして「謙虚さ」があるとしている。さらに被. では被災者の忍耐が限界に達し援助の遅れや行政. 災者の不安・苦悩・悲観は支援者には決して理解. の失策への不満が噴出したり,人々はやり場のな. できないほどに深くて重いということを忘れては. い怒りにかられ,けんかなどトラブルも起こりや. いけないと述べている8)。. すくなると言われている。. 本実践の3時間目の授業では被災者への心理的. これらのことから,生徒は実際に被災していな. 支援を扱った。被災し母を亡くした少女について. くとも,被災した時の状況を時間経過とともに考. 書かれた被災1ヶ月後の新聞記事を取り上げ,心. えることにより,心理状態まで具体的に想起する. 理的支援としてできることを考えた。どの学級に. ことができていたと言える。このように,時系列. おいても苦しい少女の状況に対し「何かしてあげ. で被災状況を想起することで,防災への意識を高. たいけれど何もできない」「そっとしておいてほ. めることにつながったことは間違いない。さらに,. しいと思うかもしれない」「がんばれとか大丈夫. 精神状態に関する生徒の想定は,報告されている. だよと簡単に言ってはいけないような気がする」. 被災者の心理状態の変化と重なったことから,時. という意見が出され,被災した少女の状況を重く. 系列での具体的な想起が,3時間目に実施した被. 受け止め,心情に思いを馳せることができた。以. 災者への心理的支援の学習効果を高めることにつ. 上のことから,被災者の心情に寄り添い,被災者. ながったと考える。. を尊重した心理的支援の方法を扱うことが重要で. . あると考える。 ⑶ 心理的支援の方法 近年,災害時の心理的支援として,心理的デブ リーフィングが否定され,それに代わるものとし てサイコロジカル・ファーストエイドが注目さ れ,様々な国際的ガイドラインにおいて推奨され ており,日本でも東日本大震災以降多く取り入れ られている。心理的デブリーフィングとは,災害. 図1.時間の経過と被災者のこころの動き(金古, 2006). 直後の数日から数週間後に行われる急性期介入で あり,トラウマ的体験を話すように促し,トラウ マ対処の心理教育を行うものである。一方,サイ コロジカル・ファーストエイドは,危機的な出来. 416.

(10) ストレスマネジメント教育の一考察Ⅲ. 事に見舞われて,苦しんでいる人の心理的回復を. を強調した。実践後, 「支援する側として「傾聴」. 支えるための,人道的,支持的,かつ実際の役に. の意味を感じることができたか」「被災した人側. 立つ様々な支援をまとめたものであり,支援者が. として「傾聴」をしてもらって,「傾聴」のよさ. 被災者や犯罪の被害を受けた方などと関わるとき. を感じることができたか」について4件法にてア. どのように声をかけたり,何に気をつけて接した. ンケートを行った。結果は以下の通りである。. りしたらよいのかなどについて示されているもの である。 WHO(世界保健機関)版サイコロジカル・ ファーストエイドによると,WHOは2009年にト ラウマティックな出来事に遭遇して深刻な精神的 苦痛を感じている被災者には「心理的デブリー フィング」よりもサイコロジカル・ファーストエ イドを提供すべきという結論を出したとしてい る。さらに,サイコロジカル・ファーストエイド では「話したい人がいればその人の話を聴くが, 出来事に対するその人の感情や反応を無理やり話 させることはしない」等と支援者の被災者への具. N=93 図2.「傾聴」のよさを感じることができたか. 体的な関わり方について明記されている9)。 このように, 「被災者に何もしてあげることは. 支援者側も被災者側もどちらの立場も結果に差. できない」と嘆く生徒が,自ら被災者の心理状態. は見られず,両者とも「とても思う」「思う」の. や心理的支援の必要性,そして効果的な心理的支. プラスの回答をしている生徒の数は95%以上と高. 援の在り方について考えるきっかけとなった。. い結果を示した。授業後の生徒の自由記述からは,. 以上の心理的支援の在り方に則り,授業におい. 以下の効果がみられた。. ては,少女に対してできる心理的支援として「傾 聴」と「触れるケア」の2点に焦点を当てて実施. 表7.傾聴の生徒の感想. した。理由として,これらは,どちらも無理に話. 生徒記述(WSより原文まま). を聴くのではなく,被災者の想いに寄り添う方法. ・少 し気持ちが楽になる。それとあいづちをして もらうことによって, 「共感してもらえてる」と 心の支えにもなる。 ・一方的に話しているだけ(あいづちはあったが) なのに, まるで会話しているような感覚になった。 ・自 分の話を聴いてもらっている時にあいづちを 打ってくれたり頷いてくれたときに,聴いても らえている感じがした。 ・自 分が話したことに優しく相づちをしてくれた ので,話していて気持ちが楽になった気がした。 相手がこれ以上悲しむことのないようにと考え ながらしていた。 ・傾 聴をされるとつらい気持ちがだんだん相づち だけでもあたたかくなってく感覚がありました。 ・支 援する側でも物資だけでなく,ただ話を聴く だけでも助けになる。被災した側は頷いてもらっ たり目線を合わせて話を聴いてもらうだけでも 楽になると思った。. だからである。授業においては実践を交えながら それぞれの支援の意味や効果を感じられるよう授 業を構成した。 ①傾聴について 授業では,ペアになり被災者側は事例として挙 げた被災した少女の新聞記事を読み(事実だけを 話す) , 支援者側は傾聴するという実践を行った。 日本看護科学会が定める定義では,傾聴とは「相 手の感情や思考に沿って,相手の話に耳を傾ける こと」とされている10)。 本実践において, 「心で聴く」ために,ノンバー バルコミュニケーションが重要な意味を持つこと. 417.

(11) 木須 千明・柴田 題寛・安川 禎亮. ・聴 いてもらい,相手の頷きや姿勢など共感して もらっている感じや相手がしっかり聴いてくれ ていることを感じ,安心することができた。 ・自 分の話を目を見て聴いてくれたり頷いて話を 聴いたりしてくれて,心地よかった。目を見て 聴 くことで心に感じることがあった。被災した 人側として目を見て頷きながら話を聴いてもら えたことは,とても安心したし,支援する人側 として相手の話を聴いて安心してもらえたら嬉 しいと考えました。. 生徒の記述からは,あいづち,頷き,目線など, ノンバーバルコミュニケーションの部分と関連さ. N=93 図3. 「触れるケア」のよさを感じることができたか. せて「共感してもらえている」 「気持ちがあたた. ちらの立場も結果に差は見られず,両者とも「と. かくなった」 「楽になった」 「安心した」 「心地よかっ. ても思う」「思う」のプラスの回答をしている生. た」 などの感想が多く,生徒に傾聴の良さが伝わっ. 徒の数は95%以上と高い結果を示した。しかし,. ていることがわかった。. 傾聴と比べ,触れるケアについて支援者側と被災. . 者側の両者とも「とても思う」と回答した生徒の. ②触れるケアについて. 割合が高い結果となった。これは,無理やり聞き. 授業で用いた被災者への支援の2つ目として,. 出すことをしなかったとしても,やはり語ること. ペアで肩に手を当てるというリラクセーション技. に抵抗感を示す生徒が多かったこと,そして触れ. 法を実践した。触れることは災害支援の場や看護. るケアはそのような不安や懸念が全くいらないと. の現場,親子の愛着形成等でも注目されており,. いうことが考えられる。授業後の生徒の自由記述. そ の 呼 び 方 は タ ッ チ ン グ・ タ ッ チ ケ ア・ タ ク. からは,以下の効果がみられた。. ティールケア・きずなのワーク等様々であること から,山本(2014)の触れるケアという言葉を用. 表8.触れるケアの生徒の感想. いて統一することとする。山本は,「触れるケア. 生徒記述(WSより原文まま). は血圧低下,心拍数の低下等副交感神経を優位に. ・肩 に手をあてることによって肩から人のぬくも りを感じることができ気持ちが落ち着いた。話 さなくても心が通じ合えている気がした。 ・肩 に手を当ててもらうととても肩が楽になり, 手のあたたかみが感じられた。手の力のすごさ というのを感じました。 ・言 葉にして伝えるのが難しい,辛い場合に実際 に体を通してみることで,あたたかさや安心感 が伝わるので,非常に良い方法だと思った。 ・人の手の温かさを感じて「誰かと繋がっている」 「一人ではない」という気持ちになりました。 本当にこんなにつらい体験をしてはいないけど, すごく落ち着いた。 ・手 を当てている人から応援のメッセージが送ら れているような気がして,リラックスしました。 「相手に伝える」ことを意識することが大切だ と感じました。 ・被 災した人側の時は,安心した。支援する人側 の時は,心の中で「大丈夫だよ」とか「がんばっ て」と言っているのが伝わっている気がした。. する作用があり,対象者が抱えている苦痛や不安 などを緩和および軽減することが可能となる」と 述べている11)。さらに,「触れるケアはコミュニ ケーションが困難な対象者や終末期にある対象者 の重要な治療手段になると考える。 」と述べてお り,触れるケアは本実践における被災者の心情に 寄り添う支援にも同様の効果を示す手段であると 考えられる。 実践後,「支援する側として肩に手を置くこと の意味を感じることができたか」 「肩に手を置い てもらうことのよさを感じることができたか」に ついて四件法にてアンケートを行った。結果は以 下の通りである。 傾聴の結果と同じく,支援者側も被災者側もど. 418.

(12) ストレスマネジメント教育の一考察Ⅲ. ・言 葉じゃない言葉みたいな感じがあって,とて もよかった。 ・お 互いに体の接点から気持ちや思いが流れるよ うな気がした。. 触れるケア実践後の生徒の記述からは, 「手の ぬくもり」から, 「心が通じ合えている」 「安心感」 「誰かとつながっている」 「応援のメッセージを 感じた」 「言葉じゃない言葉」「体の接点から気持 ちや想いが流れる」などの感想が多かった。生徒 は,傾聴と同様ノンバーバルコミュニケーション の部分から触れるケアの効果を感じていたことが わかった。 ⑷ 日常とのつながり 本実践においては,災害時における心理的支援 という視点のみから心のケアの技法を取り扱った が,実際にペアで傾聴と触れるケアの実践を終え た生徒の記述からは,傾聴・触れるケアともに災 害時の心理的支援を日常生活と結びつけて考えて いたことがわかった。 生徒がこのように感じたことには,中学生の実. 表10.触れるケアと日常とのつながりに関する記述 生徒記述(WSより原文まま) ・手 を当ててもらっていたとき,今抱えていたも のとか悩んでいるものとかを全部出して泣いて しまいたかった。自分が手を当てているときは, 相手に向かって心の中で呼びかけや寄り添うこ とがしやすかった。 ・温 かみを感じました。災害でなくて,日常生活 でも使っていけるのではないかと思いました。 辛いときとかに。 ・す ごく安心できるし,一人じゃないんだと思え た。どんな時でも使えるなと思った。 ・と っても心がほぐれて,とっても泣きそうにな りました。こんなことと思うかもしれないけど, 人の温もりは人の一番の心のケアになるという ことをたくさんの人に知ってもらいたいです。 ・肩 に手をあてるだけでこんなに落ち着けるのだ と分かったので,この体験を活かせる場面があ れば活かしたいと思った。 ・肩 に手を当ててもらうだけで,こんなに落ち着 くと思わなかった。 ・自 分がやっている時は意味なんかあるのだろう かと思ったが,やってもらうと安心したので少 し驚いた。 ・相談にのってもらう時,相手が自分のことをしっ かり目を見て聴いてくれていて,優しく頷いて くれるようなところが良いと思ったし,実際本 当に心が軽くなりました。. 態が関係していると考える。平成29年児童生徒の. 間で一番新規の不登校生徒数が多くなっている。. 問題行動等生徒指導上の諸課題に関する調査か. 本校生徒についても例外ではなく,特に中学2年. ら,中学1年生になる時に不登校生徒数が急増し. 生においては例年友人関係におけるトラブルや不. ている. 12). 。特に,中学2年生では,中学校3年. 登校生徒の出現も少なくない。 思春期である中学生は時に友人関係でトラブル. 表9.傾聴と日常とのつながりに関する記述 生徒記述(WSより原文まま) ・自 分の辛さを他の人に聴いてもらうだけでも心 が軽くなるからすごいなと思った。普段他の人 の相談を受けている時にも使えそうだなと思っ た。 ・傾 聴されると気持ちいいなと思ったから,気持 ちが沈んでいる人にやってあげたいなと思った。 ・自 分が辛いとき,苦しい時に傾聴してもらった ら,心が軽くなるんじゃないかと思った。逆に 誰かが辛い時に,ちゃんと話を聴いてあげられ るようになりたいと思った。 ・人 に話を聴いてもらえるきっかけを作ることが できて,相手が自分の信頼している人だったら 安心できるな…と思います。こんな人が近くに いたら,側にいてあげようと思いました。. を抱えていたり,悩みを抱えていたり,うわさ話 や悪口,いらいらが収まらずにきつい言い方をし てしまう等,思春期特有の複雑な感情が入り交 じった心理状態にある。しかしながら,中学生は このような感情をありのまま受け止めてもらう体 験は日常でそう多くはない。今回,被災者への心 理的支援の学習において生徒が自然と日常と結び つけて感想を記入したことは,被災者と支援者と いう疑似体験によりそれぞれの立場における効果 が得られたものと考えられる。 被災者の体験からは,被災者と現在の自分を重 ねたということが考えられる。実際に被災してい なくとも,支援者に無条件に受け入れてもらえた. 419.

(13) 木須 千明・柴田 題寛・安川 禎亮. という体験が,現在の自分の苦しい思いを楽にす. が見られたことや,実際にストレス対処を体験す. ることにつながった。今回の実践で「ただ聴いて. ることの効果や重要性がより明確になった。. もらう」 「ただ肩に手を置いてもらう」だけで,. さらに授業実践後,生徒会の委員会の取り組み. そうされることの心地よさや,心が軽くなるとい. としてリラクセーションを行いたいとの声が上が. うことを知るきっかけになったと考える。. り,実施することとなった。昨年度までは,受験. 支援者の体験からは,支援をすることにより被. 前の3年生の中で必要感を感じている生徒を対象. 災者の様子の変化を感じることや助けてあげたい. に補充の時間として保健室で養護教諭がリラク. という意欲につながったことが考えられる。日常. セーションを行っていたが,今回2年生を対象に. で友人が悩んでいるときにどうしてあげたら良い. したストレスマネジメントの授業では生徒の自主. かわからないという経験がある生徒が,アドバイ. 的な委員会活動に広がりを見せた。このことから,. スや元気を出させるような積極的な支援ではな. 授業でストレスマネジメントを扱うことにより,. く,ただありのままを受け止め,寄り添うという. 生徒達の中でストレスをコントロールすることが. ことの重要性や効果を理解することにつながった。. 日常生活や健康に必要なものであることが認識さ. 支援者と被災者のどちらの立場からも,中学生. れていることがわかる。. という心が揺れ動く時期だからこそ,人間関係に. このようにストレスマネジメント教育を通して. おいて人が人を支えることの意味や,心から他人. 得たものを日常生活の中で発揮させるためには,. を思いやること大切さ,それによりどれだけ救わ. 保健体育科・保健分野を要としながらも,様々な. れるかということのよさの実感に結びつく実践に. 教育活動に位置づけた系統性のあるカリキュラム. なったと考える。. 開発が求められると考える。. 4.おわりに 本稿では,日本における相次ぐ地震の発生やそ れに伴う被災者の心理的ストレスの実態から,災 害時の心のケアの重要性と防災教育における支援 者の2つの視点を踏まえ,中学校保健体育科・保 健分野の授業においてストレスマネジメント教育 をもとに災害時における心理的支援の学習を行っ た実践事例を記した。 これまでの中学校保健体育科・保健分野の学習 指導要領では,イ欲求やストレスへの対処と心の 健康において, ストレスへの適切な対処について, 自分に合った対処法を身に付けることが大切であ ることが理解できるようにするとされていた13)。 しかし,新学習指導要領では,従来のものに加え 技能として,リラクセーションの方法等を取り上 げ,ストレスによる心身の負担を軽くするような 対処の方法ができるようにするとされた14)。本. 【参考・引用文献】 1)文部科学省(1998) .非常災害時における子どもの心 のケアのために 2)文部科学省(2020) .子どもの心のケアのために―災 害や事件・事故発生時を中心に― 3)地震調査研究推進本部(2017) .千島海溝沿いの地震 活動の長期評価(第3版) 4)冨永良喜(2000) .心理教育プログラムの実践例 ス トレスマネジメント教育の実践例 学校臨床研究,1, 2,39-45 5)文部科学省(2010) .学校防災のための参考資料「生 きる力」を育む防災教育の展開 6)金古晴(2006) .外傷ストレス関連障害に関する研究 「心理的トラウマの理解とケア」第2版:じほう 7)宮前良平・渥美公秀(2018) .被災写真による「語り えないこと」の恢復 実験社会心理学研究,58,1, 29-44 8)荒木憲一(2006).被災者に対する心理的支援の基本 的態度 現代社会学部紀要,4,1,29-34 9)World Health Organization,Wae Trauma Foundation and World Vision International(2011).. 実践では,心理的支援として「傾聴」と「触れる. Psychological first aid:Guide for fieldworkers.. ケア」を体験したこと,それにより日常との関連. WHO:Geneva(訳)(独)国立精神・神経医療研究セン. 420.

(14) ストレスマネジメント教育の一考察Ⅲ. ター,ケア・宮城,国益財団法人プラン・ジャパン (2012).心理的応急処置(サイコロジカル・ファース トエイド:PFA)フィールド・ガイド 10)公益社団法人日本看護科学学会.看護行為用語の定 義一覧Retrieved from . . https://www.jans.or.jp/modules/committee/index. php?content_id=33 11)山本裕子(2014).触れるケアの効果 千里金蘭大学 紀要,11,77-85 12)文部科学省(2017).児童生徒の問題行動等生徒指導 上の諸課題に関する調査 文部科学省 Retrieved from http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/30/10/1410 392.htm(2019.2.1) 13)文部科学省(2008).中学校学習指導要領解説保健体 育編 日本文教出版 14)文部科学省(2017).中学校学習指導要領解説保健体 育編 日本文教出版. . (木須 千明 附属釧路中学校養護教諭). . (柴田 題寛 附属釧路中学校教諭) . . (安川 禎亮 釧路校教授) . 421.

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参照

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