Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
超高分解能電子顕微鏡の世界 : 脱灰と再石灰化
Author(s)
栁澤, 孝彰
Journal
歯科学報, 111(4): 424-424
URL
http://hdl.handle.net/10130/2549
Right
本講座は,故 花澤 鼎先生が主宰した我が国における最初の基礎学研究室である病理組織学研究室の嫡流 たる講座で,花澤先生が象牙質齲蝕の研究で歯科医師として我が国初の医学博士の学位を受領したこともあ り,齲蝕をはじめとする歯牙硬組織疾患は言うに及ばず,ヒトや各種動物の硬組織および硬組織疾患の研究を 中心に行っている。私も1971年に本学を卒業して以来,大学院時代を含め硬組織を中心とした研究生活を送っ てきた。 大学院時代の研究は基質小胞内に出現する結晶がアパタイトであることを電顕的に証明することであった。 当時,結晶の同定は X 線回折に頼っていたが,基質小胞内の結晶量が少ないため同法での解析は極めて困難 であった。一方,電子顕微鏡の分解能も現在のものとはほど遠かったことに加え,水道橋校舎の周辺には都電 および総武線と中央線の電車がひっきりなしに通っていたため,それらの電車が通過するたびに磁場と振動が 発生し,電顕にとっては極めて劣悪の環境であり,その証明に苦労したことを鮮明に記憶している。
その後,フランスに留学すべく準備を進めていたが,アメリカ合衆国 NIH, NIDR(現 NIDCR)の要請によ り留学先を変更して渡米し,D. B. Scott 所長および M. U. Nylen 研究部長から依頼されたエナメル質結晶とエ ナメルタンパクとの超微形態学的関係を明らかにした。 この研究の終了と時をほぼ同じくして,本学のメインキャンパスが稲毛に移転したこともあり,NIDR との 契約期間はまだ残っていたが,松宮誠一学長(当時)の命により帰国した。帰国後,本講座に高分解能電子顕 微鏡が,そして更に超高分解能電子顕微鏡が導入され,アメリカで行ってきたエナメル質結晶の観察を続行す ると共に,デンマーク王立歯科大学 O. Fejerskov 教授との共同研究でヒト並びに実験的ブタフッ素症歯エナ メル質結晶の解析も行った。 ところで,「再石灰化」という用語は国民周知のものとなったが,20年前には一部の研究者が知るのみで, 田熊庄三郎教授(現 名誉教授)はその最先端の研究を精力的に行っていた。その後,キシリトールガム開発 の依頼を受け,その過程で再石灰化の促進が歯科処置なしに初期齲蝕病巣を治すことを明らかにしたが,この 現象こそ再石灰化に他ならなかったのである。また,田熊教授以来の一連の研究で我々ヒトのエナメル質結晶 の極めて多くが種々の欠陥を本来有していることも明らかとなった。今回は超高分解能電子顕微鏡による形態 学的変化からエナメル質結晶の脱灰と再石灰化を中心に述べ,時間が許せばキシリトールによる再石灰化促進 効果も述べる。 ≪プロフィール≫ <略 歴> 昭和46年3月 東京歯科大学卒業 昭和50年3月 東京歯科大学大学院歯学研究科博士課程 修了 歯学博士 昭和50年4月 東京歯科大学助手 昭和51年4月 東京歯科大学講師 昭和54年5月 米国国立歯科衛生研究所客員研究員(昭 和56年6月帰国) 昭和56年12月 東京歯科大学助教授 平成3年4月 東京歯科大学教授(病理学講座) 平成5年4月 東京歯科大学教授(口腔超微構造学講座 主任) 現在に至る <学 会> 東京歯科大学学会理事,歯科基礎医学会評議員,日本病 理学会評議員,日本臨床口腔病理学会理事,日本解剖学 会評議員,日本歯科医学教育学会評議員など <超高分解能電子顕微鏡を用いた研究テーマ> 歯牙硬組織結晶の形成と成長ならびにその破壊と自然修 復,齲蝕の超微構造,脱灰と再石灰化など