IRUCAA@TDC : フッ化モリブデン酸アンモニウムの齲蝕進行抑制効果に関する臨床的研究
9
0
0
全文
(2) 謂m. 原 著. フッ化モリブデン酸アンモニウムの而蝕 進行抑制効果に関する臨床的研究* 米 津 卓 郎 町 田 幸 雄 東京歯科大学小児歯科学講座 (主任:町田幸雄教授) (1992年3月4日受聾) The Clinical Study on the Dental Caries Arrestment Effects of Topically Applied ( NH4)2Mo02F4 Solution Takuro YoNEZU and Yukio MACHIDA Department of Pediatric Dentistry, Tokyo Dental College (Chief : Prof. Yukio Machida). 蘭蝕作用が明らかにされている。また,亜急性毒性も. 緒 言. フッ化ジアンミン銀と同等であると報吾9)されている。. フッ化ジアンミン強〔38%Ag(NH3)2F〕の顧蝕進行抑 制効果に関する研究は数多く,その有効性が報吾1) ̄5). そこで今回著者らは本剤を蘭蝕確患歯に応用し,長期間. されている.しかしながら,本剤はAgを含有するた め,塗布された歯面に酸化演が生成され歯薯が黒変する. にわたって観察したので幸匡吾するo 語査対象並びに調査方法. という欠点がある。笠原ら6)は子どもの前歯についての 意識調査の中で,フッ化ジアンミン強が塗布された小児. 被験対象小児は,本学小児歯科臨床を訪れた小児のう. のうち,年長児では「カッコ悪い」とはっきり意思表示. ち,原則として口腔内に左右対称性に重度かつ同程度の. したものが21%存在し,母親の感想としても「黒すぎて. 離散を有していた小児15名である。これらの小児につい. 子どもがかわいそう」と答えた者が17%存在したと報害. て, -側の商強健患歯を実験価として10%フッ化モリブ. している。この欠点は最近の保護者や小児における審美. デン酸アンモニウム溶液を塗布し,反対側同名歯は対照. 的要望から考えても大きな問題点であり,自ずと応用範. 側として蒸留水を塗布したo調査対象歯は乳歯15組30. 囲は限定されるものであるoまた味は刺激的であり,決. 歯,永久歯10組20歯の計25組50歯である。これら歯牙の. して小児にとって好ましいものではない。. 塗布前の商触進行程度をみると,克球宴表面が自蔵した. ところで,近年歯薯を変色させない斬蝕進行抑制剤. り粗横面を室している要観察歯(以後Coと略)に対して. としてフッ化モリブデン酸アンモニウム〔10%(NH4)2. 応用したものが16組32歯で,東郷葉蘭蝕(以後C lと略) に応用したものが9組18歯である。また,塗布した歯面. Mo02F4)〕が開発され,動物実験の結果7) ̄8)からその抗. 別にみると,平滑面に応用したものが22組44歯で,小高 裂溝に応用したものは3組6歯であるo. *本論文の要旨は,第244回東京歯科大学学会総会(平成 3年11月9日,千葉)において発表した。. フッ化モリブデン酸アンモニウム暮夜の塗布は1週間 63.
(3) 米津,他( NH4)2Mo02F4の商蝕進行抑制効果について. 978. 間隔で2回連続して行い,以後は4ヵ月毎に行った。塗. 次に,塗布前における蘭蝕の進行程度別にみたのが表. 布に当たっては,患部表面を可及的に清掃した後,水. 5である。塗布前における蘭蝕の状態がCoであったも. 秩,乾燥し,簡易防湿下で中綿球を用いて4分間行っ. のをみると,実験側では16歯全てにおいて磨蝕が進行し たと考えられる所見は認められなかった。しかし,対照. た。 商蝕病巣の観察は塗布前,その後一定間隔毎並びに最. 側では16歯中8歯(50. 0%)に商蝕病巣の進行する所見が. 終観察時に行った。観察に当たっては,視診および触診. 認められた。これもカイ2乗検定の結果,有意差が認め. で商蝕病巣の程度,蘭地表面の硬さおよび擦過癖の有無. られた(P<0.01)。一方商蝕がClであったものをみる. を調査した。同時に窮地病巣の広がりの程度並びに色調. と,実験側において離散が進行したと考えられるものは. の変化を評価する目的で,被験歯の写貢撮影を行った。. 9歯中2歯(22.2%)であり,対照側では9歯中7歯. 観案期間は最短12ヵ月,最長28ヵ月である。. (73. 3%)に敵地病巣の進行する所見が認められた。これ. また本剤の商蝕進行抑制率をフッ化ジアンミン豪のそ. もカイ2乗検定の結果,有意差が認められた(P<0.05)。. れと比較する目的で,鈴木3)や鈴木ら4)の研究で用いら. 最後に,塗布した歯面を平滑面と唆合面に分けてみた. れた算定方法,すなわちフッ化物の商蝕予防効果を判定. のが表6である。平滑面の蘭蝕を対象としたものをみる. する場合に用いられている算定式を一部改変した下記の. と,実験側において敵地が進行したと考えられるものは. 方法で算出した。. 22歯中塵か1歯(4. 5%)であったが,対照側では22歯中 12歯(54. 5%)に顧亜病巣の進行する所見が認められた。. 実験側において蘭蝕の進行した歯牙数 対照側において敵地の運行した歯牙数. )×100%. なお,フッ化モリブデン酸アンモニウム溶液塗布時に. これもカイ2乗検定の結果,有意差が認められた(P< 0.01)。一方,小高裂溝離散を対象としたものでは,実 験側において離散が進行したと考えられるものは3歯中. おける歯敵粘膜への障害や匪病の有無,塗布歯牙の捧痛. 1歯(33.3%)であり,対照側では3歯中全てに窮地病巣. の有無,歯牙の着色の有無など局所的不快事項発現の有. の進行する所見が認められた。しかし,統計学的には有. 無については,問診並びに視診により評価した。. 意差は認められなかった。 以上を総括すると,多くの場合,実験側すなわちフッ. 結 果. 化モリブデン酸アンモニウム塗布柳は嚇他の進行が高率. 1)商蝕の進行抽制効果について. に停止しており,中でもCoのようなごく初期の商蝕に. 今回観察を行った25組50歯の塗布前と最終観察時にお. 塗布したものは全例において進行が停止していた。とこ. ける商蝕病巣の所見は表1並びに表2に示す通りであ. ろで,実験側聞を比較してみると,乳歯応用例が永久歯. る。表3は実験側と対照側における窮地病巣の進行状態. 応用例に比べて進行の停止した率が高く,また平滑面群. をまとめたものである。すなわち,実験例において離蝕. が小高裂溝群より進行の停止した率が高い傾向にあっ. が進行したと考えられるものは25歯中僅か2歯(8.0%). た。 2)商亀の進行抑制率について. にすぎなかったが,対照側では25歯中15歯(60.0%)に 斬高の拡大や形成並びに軟化など商蝕病巣の進行する所. 実験を行った25組の歯牙についてフッ化モリブデン酸. 見が認められた。これはカイ2乗検定の結果,有意差が. アンモニウム塗布側の蘭蝕進行抑制率を算定したとこ. 認められた(P<0.001)。. ろ 3.7%と極めて高率であった。次に,塗布前におけ. さらに,表4は被検歯を乳歯と永久歯に大別して商他. る磨亜進行程度がC oであった16組の歯牙における斬蝕. の進行状態をみたものである。乳歯の実験側において商. 進行抑制率をみると,実験側は進行した所見を呈したも. 蝕が進行したと考えられるものは15歯中怪か1菌. のが存在しなかったことから100%になり,完全に抑制. (6. 7%)であったが,対照価では15歯中11歯(73.3%)に. されていたことになる。一方,塗布前の商触進行程度が. 離散病巣の進行する所見が認められた。これもカイ2乗. Clであった9組の歯牙の進行抑制率は71.4%であっ. 検定の結果, -有意差が認められた(P<0. 001)。永久歯. た。また,乳歯と永久歯に大別してみると, 15組の乳歯. では,実験側において商歯が進行したと考えられるもの. における進行抑制率は90. で, 10組の永久歯は75.0%. は10歯中僅か1歯(10. 0%)であったが,対照側では10歯 中4歯(40. 0%)に商蝕病巣の進行する所見が認められ. であった。次に, -平滑面と小高裂溝に大別してみると平. た。しかし,統計学的に有意差は認められなかった。. 滑面に対して塗布を行った22組の歯牙の進行抑制率は 91.7%であり, 3組の小高裂溝に応用した3組の歯牙は 64 --.
(4) 歯科学報 Vol. 92, No. 6 (1992). 979. 表1実験側と対照側における商蝕の経時的変化 症例N 0. 年商 令 (歳). 性別. 部. 5. M. 2. 4. 3. 5. F. 4. 5. M. 5. 6. 7. 8. 9. 10. ll. 5. 5. 6. 4. 4. 4 L. 3. M. M. M. M. F. F. F. 唆 合面. 13. 14. 3. 5. Id. Cr >. H. TBl 唆 合 面. C0. H. 匿. C0. H. uj. 唇. 面. F. M. 5. M. 曹醍. -. H. fl 唇. 面. Co. H. 匿. 面. Cl l. H. 唇. 匿. 唇. 面. C 1. 甘. 酸. 面. C 1. H H. Til 額. 面. C l. D- 噸. 血. C 1. ∼. -. c 2. +. H. 面. C 1. -. H. tl 層. 面. C 0. -. H. C+ 唇. 而. C o. LR. 面. C0. 額. 』. 頑. 面. C0. 匿. 唇. 面. C0. H. -. H. C l. -. H. 衝. 面. C0. -. H. jjl 額. 面. C0. 匪. 面. C 1. ∼. C l. 】. H 16M H. 匿 唇. 面. C 1. -. H. ∼. H. tl 唇. 面. Cl. 耳. 面. C0. rBl 唇. 面. 対照側の自蔵部が粗醇化. Cl. H. 実験側の白歯部のJ 部透明化 対照側一部雨音の形成. +. S. C 1. 】. H. c2. -. S. C l. -. H. C l. H. C 0. H. C0. -. 対剰別 の白 濁部が黄褐色に変化. -. H. 対照側自蔵部が黄褐色に変化. C o. -. H. 実験側の白歯部が一部透明化. C1. 】. S. 対朗 睡自蔵部が黄褐色に 変化. H 対照側の白濁部が褐色化. C2. +. S. C0. -. H. C l. -. H. 対照側の白濁部が拡大. H. 変化なし. C 1. -. H. c 2. +. S. 実験側, 対照側ともに着色,. C 2. +. S. 雨音の形成. C l. -. H. C 2. 1I 】. S. 対照側着色, 雨音の形成. C0. -. H. 実験側の白歯部が透明化. C0. -. H. 対照側の白歯部がJ 部透明化. C0. -. H. 実験側の自蔵郭が透明化. C0. -. H. 対照側の白歯部が一部透明化. 16M i. 対照側J 部歯 棺 の形成. C l. 16M H. C0. C0. c2. C 1. H. -. 面. H. 16M. C l. 唇. Cl. 】. C0. H. 面. 匪. 実験側の白濁部が透明化. 20M. 膏1 唇. 唇. 冒. 20M. H. C 1 面. 対照側の小官裂溝部が褐色化. 20M. 20M. 面. 唇. H. 20M. H. 対照側の小首裂溝部が褐色化. Cl. 16M. 宅」 魯 額. S H. C0. H 】. H. C0. 20M. ijl 額. そ の 他 の所 見 硬さ. 20M. H. -. 甥 乗. C 0. 12M. F. F. H. C0. B と唇 15. C0. 硬さ. Bl 唆 合面. Å1. 3. ∴+. 纏御 間. 28M. rgl 唇 12. 鼻終観察時の診断. 初診時の診断. (上段:実験側) 曹桂 官. 1. 位. l H H 16M H. 66. 7%であった。 び粘膜に対する刺激がみとめられたものや,塗布歯牙に 3)局所的不快症状の発矧こついて 匪癖が発現したものは皆無であったOまた,本斉暗起薗 フッ化モリブデン酸アンモニウム塗布に伴う歯敵およ して歯牙が着色したものも皆無であった。逆に,実験側 -65.
(5) 980. 米津,他(NH4)2Mo02F4の鹿蝕進行抑制効果について 表2 実験側と対照側における蘭蝕の経時的変化. 症例N 0. 年齢 (歳 ). 性別. 部. 8. 17. ll. 18. ll. 19. ll. 20. ll. 21. ll. 22. 13. 23. 9. 24. 9. 25. 9. F. F. F. F. F. F. F. F. F. F. 初 診 時 の診 断. (上 段 :実 験 側 ) 曹整 TBJ. 16. 位. 唆 舎 面. C l. 且. 唆 合 面. C 1. 』. 唇. C 0. 面. 止. 唇. 面. C o. 』. 唇. 面. C 0. 吾車. 硬さ. i. H. -. H. -. 冒. ∼. H. 最終観察時の診断 難 産. H. 面. C 0. -. H. Ll. 唇. 面. C 0. ∼. H. S. 実験側の裂 溝部が一部着 色. C 2. +ト. S. 対 照側の裂溝 部が褐色化. C 0. -. H. 実験側 の 自蔵 部が透 明化. C 0. i. H. C o. -. H. C 0. -. H. 酋. 面. C 0. -. H. LL. 唇. 面. C l. i. H. 唇. 面. C 1. 且. 近心隣接面. C l. 』. 近心 隣接面. C 1. 蔓」. 近JL、隣接 面. C 0. H H. i. H i. H. ∼. 冒. rF. 唇. C 0. -. H. 酋. 面. C 0. -. H. Ll. 唇. 面. C 0. -. H. C n. LZT. 酋. 面. C n. 蔓」 唇. 面. C 0. 進行停止. 行. 実 験 側. 23(92.0). 2( 8.0). 25. 対 照 側. 10(40.0). 15(60.0). 25. 計. 33(66.0). 17(34.0). 50. -. H. 実験側 の自蔵部が透 明化. C 蝣 >. +. S. 対照側一 部覇膏の形成. C l. -. H. C 2. -. S. 対酬 物 日滝部が黄褐色に変化. H. 実験 側の 白濁 部が透 明化. C 0 C l. -. C 0. H H. 両側 とも自蔵部 が消失傾 向. C 0. -. H. 実験側 にその傾 向が強 い. C o. H. 変化 な し. 16 M H. -. H. ∼. H. C 0. -. H. C o. i. H. C 0. -. H. 16M. 表3 実験側と対照側における商蝕の変化 ( )内% 窮地の状態. C l. 16M. L2 l. 面. H. 16M. C 0. 変化 な し. i. 16M. 近心隣接面. 唇. H. 実験側 の 白濁部 が透明化. C o 16M. Ll. 』. C 0 16 M. ユ」. そ の 他 の 所 見. +. 12 M. l』. サ] 蝣 硬 さ. C l. 12M. 唇. 進. 間. 16M. 且. 面. I柳. 変化 な し. 後)における実験伽と対照側の口腔内写桑で,塗布前の 嚇蝕進行程度はClと判定したものである。 20ヵ月後の 実験側をみると自蔵部が不明瞭となり,一部透明化して. 計. いる所見が認められる。一方,対照側においては一部に 雨音の形成が認められ,歯牙表面の硬さも実験開始時の. ***. 触診では硬いと判定したものがやや軟化していた。 図2は上顎永久側切歯の近心隣接面を被験対象とした. ・**pく).001. 症例No22の実験開始時と義終観察時(16ヵ月後)におけ る実験側と対照側の口腔内写真である。塗布前の蘭蝕進. 25歯のうち9歯(36. Q%)は,本剤の塗布に伴って経時的 に蘭蝕の白濁部が消失し,滑沢な歯冠色を呈するように なった。その他,本剤の塗布にあたって不快な味がする と訴えた小児も皆無であった。 4)実験側と対麿側における商亀病巣の変化の代表例 図1は症例N04の実験開始時と最終観察時(20ヵ月. 行程度はCoと判定した。 16ヵ月後の塗布側をみると白 歯部が不明蛭となり,全体的に透明化している所見が認 められるo一方,対照伽は白歯部の拡大傾向や着色こそ 認められないものの,触診により一部歯面に粗縫感が増 したためClと判定した。. -66-.
(6) 981. 歯科学報 Vol. 92, No. 6 (1992). 表6 歯面別にみた顧蝕の変化 平滑面敵地群 ( )内%. 表4 乳歯群と永久歯群別にみた蘭蝕の変化 乳 歯 群 ( )内% 顧 極 の状 態. 進行停止. 実. 14(93.3). 対. 験 照. 側 側. 計. 蘭蝕の状態. 進. 行. 1( 6. 7). 計 15. 4 (26.7). ll(73.3). 15. 18 (60.0). 12(40.0). 30. ***. 進. 行. 計. 商鹿の状態. 進行停止. 実. 験. 側. 21 (95.5). 1 ( 4.5). 22. 対. 照. 側. 10 (45.5). 12 (54.5). 22. 31(70.5). 13 (29.5). 44. 計. **. ***P<0.001. **P<0.01. 永久歯群 ( )内%. 小高裂溝嚇触群 ( )内%. 、 進行停止. 進. 行. 計. 蘭蝕 の状態. 進行停止. 進. 行. 計. 実. 験. 側. 9 (90.0). 1(10.0). 10. 実. 験. 側. 2(66.7). 1(3 3. 3). 3. 対. l照. 側. 6 (60.0). 4 (40.0). 10. 対. 照. 側. 0(. 0). 3( 100). 3. 15 (75.0). 5 (25.0). 20. 2 (33.3). 3.7). 6. 計. 計. 総括並びに考案 フッ化ジアンミン泉の磨触進行抑制効果に関する研究. 題などいくつかの欠点がある。 そこで,フッ化モリブデン酸アンモニウム〔10%. は数多く1) ̄5)その有効性が報吾されている。しかしな. (NH4)2Mo02F4)〕は歯寛を変色させない磨蝕進行抑制. がら,本剤は塗布された歯面に酸化銀が生成され歯嚢が. 剤として開発されたものであるo実際,今回の実験では. 窯変するという欠点があり,寛在の小児や保護者の審美. 25歯に経時的に塗布して臨床的に観察したところ,全例. 的要求とは相反するものである。また, Mercerら10)は. において歯嚢の変色は認められなかった。このような結. フッ化第1錫を平滑面の初期顧蝕部に応用し,蘭蝕の進. 果から考えると,フッ化モリブデン酸アンモニウムは. 行抑制に有効であったと報吾している。しかし,フッ化. フッ化ジアンミン強の欠点を補ったものである。しかし. 第1錫も初功蘭蝕部や充壌物辺縁を着色させることが知. ながら,変色しないといっても商蝕の進行抑制効果が. られており,また特有の鉱酸味や調整溶液の安定性の問. フッ化ジアンミン銀と比較し,どの程度であるのか問題. 表5 進行程度別にみた麻蝕の変化 co(要観察歯)群 ( )内% 顧蝕 の状態. 進行停止. 実. 験. 側. 16( 100). 対. 照. 側. 計. 進 0(. 行 16. 8(50.0). 8(50. 0). 16. 24 (75.0). 8(25.0). 32. ムは歯薯の無機薯相とりわけ健全な碇知嚢に対して抗商 蝕性を付与できる有望な薬剤であること11)また象牙寛. 計. 0). である。 基礎的研究によれば,フッ化モリブデン酸アンモニウ. に対しても抗商独性を付与できること12)が示唆されてい るoさらに,ラットを用いた動物実験7)-8)の結果から,. **. フッ化ジアンミン銀と同等の顧蝕進行抑制効果が認めら. *P<0.01. れている。 ところで,フッ化ジアンミン銀の衝亜進行抑制効果に 関する研究の中で,今回のフッ化モリブデン酸アンモニ. cl(蘭蝕症第1度)群 ( )内% 蘭蝕 の状態. 進行停止. 進. 行. 験. 側. 7(77.8). 2 (22.2). 9. 対. 照. 側. 2 (22.2). 7(77.8). 9. 9(50. 0). 9(50.0). 18. 計. れる研究について比較検討した。西野。は今回とほぼ同 様の実験方法で,フッ化ジアンミン演塗布歯と対照歯に. 計. 実. ウムの臨床成績とある程度比較することができると患わ. っいて,個々の歯牙の顧強権患部の面積増加率を30ヵ月 にわたり経過観察したところ,本剤の商蝕進行抑制率. *. は,12カ月後で87%,24ヵ月後で/on 3,OK)カ月後で97% であったと報害している。また,鎗木ら4)はフッ化ジア P<0.05 -67. ンミン豪の乳臼歯における2年後の廓蝕抑制率は33.3%.
(7) 982. 米津,他:(NH。)2MoO2F一の鰯蝕進行抑制効果について. 図1症例No・4の実験開始時と最終椒時における鰯蝕病巣の変化. であり.C2への進行抑制率は42.1%であったと報告し なければならないと述べている。したがって,フッ化モ ている。また,鈴木さ)は乳臼歯における18カ月後の腐 リブデン酸アンモニウムが歯質を変色させない 蝕抑制率は42.1%でありiC2への進行抑制率は52,9% 徴を有する鰯蝕進行抑制剤であるにしても,塗布後も必 であったと報告している。今回のフツ化モリブデン酸ア ず経過は観察する必要がある. ンモニウムの進行抑制率は86.7%であり,C℡への進行. 結. 抑制率は71.4%であった。すなわち,鈴木ヱ〉と鈴木ら4〉. の研究における結果よりは高率であり,西野1〉の研究に おける結果とはぼ同等であった。したがって,本剤の臨. 論. 東京歯科大学小児歯科臨床を訪れた小児のうち,口腔. 内に左右対称性に軽度かつ同程度の鰯蝕を有し 床的にみた鰯蝕進行抑制効果はフッ化ジアンミン銀と同 児について,一側の鰯蝕確患乳歯15歯と永久歯10歯の計 25歯を実験側として10%フッ化モリブデン敢アンモニウ 等もしくはそれ以上の効果があるものと考えられた。 ところで,フッ化ジアンミン銀の開発者である山賀ら ム溶液を経時的に塗布し,反対側同名歯25歯は対照側と が監修したフッ化ジアンミン銀応用の手引き13)の中に して蒸留水を塗布して最短12カ月から最長28カ月にわ たって鰯蝕の進行状態を観察した。その結果,実験胸に は,「低年齢の幼児に対する進行抑制を本来の目的と おいて鰯蝕が進行したと考えられるものは25歯中底か2 し,治療に協力できる年齢に達してから最終的には修復 歯(8.0%)にすぎなかったのに対し,対照側では25歯中 処置をなるべく早く施すペきである。」と適応症を明確 に記載してある。また稗田ら14)も,フッ化ジアンミン銀 15歯(弧0%)に厳高の拡大や形成並びに軟化など鰯蝕病 塗布治療という治掠法が存在するという錯覚に陥った 巣の進行する所見が認められた。したがって,銅銭の進 行抑制率は86.7%と撮めて高率であった。 り,これで処置が終了したと患者に説明することは避け 一88−.
(8) 歯科学報 Vol.g2,No.6(1g92). 983. 図2 症例No.22の実験賄姶時と最終節察時における欄蝕病巣の変化 稗田豊治(1970):フッ化アンモニア銀(S且forlde)の. また,10%フッ化モリブデン醒アンモニウム溶液は歯. 乳歯う故に対する効果についての臨床成貞乱 臨. 質を変色させず,歯厳や粘膜に対しても局所的な不快症 状の尭親が皆無であったことから,本剤は鯖蝕進行抑制 剤として適応症を充分選択したうえで応用すれば,臨床 的応用価値が大であると考えられる。. 科,226:亜∼53. 8)笠原 粗 大村泰一.松田厚子,中野瀾三郎,外村 誠,今西孝博(19糾):子どもの前歯についての意識調 査,一乳前歯の審美的修復の恵挙上.小歯議.22: 3(;5∼872.. 文. 献. 7)谷口 学,泉谷 明,落合信行,大崎 敵視父江 敏弘 西村英明(1981):(ⅣF4〉2MoO2F4によるラッ 1)西野瑞穂(1粥g):ふっ化アンモニア鋭による乳歯僻 ト実験鰯蝕抑制効果,小歯誌,柑:150∼158. 蝕の進行抑制に関する研究,阪大歯誌.14:1∼14. さ〉泉谷 阻 落合信行,墨 典夫,葉木正実,谷口 2)西野瑞穂,吉田定宏(1g6g):ふっ化アンモニア銀の 学.大場 敵 組父江鎮雄.西村英明(1982):ラット 鮮蝕抑制効果と乳歯髄に対する影響についての臨床成 実験鰯儀系における(NH4)電MdO屋F4およぴSrTif’。 績,小歯誌,丁:55∼59. の抑制効果,小歯誌.20:825∼632. 3)鈴木俊行(1973):フッ化ジアンミン銀の局所塗布に 9)石田 乱 小川裕三,八木俊払西村英明(1981): よる臼歯のう蝕抑制効果について,小歯誌,11:33∼ フツ化モリブデン酸アンモニウムの亜急性毒性 54. る病理学的研究,歯科基礎医学会雑誌,23:859∼ 4)鈴木俊行増田典凰大嶋 阻下野 勉,西田百代, 祖父江鎮姓(1973):フツ化ジアンミン銀の局所塗布に 878. 18)M8reer,Ⅴ.H.andM血1er,J.C.(1965):The よる臼歯のう蝕抑制効果に関する臨床および野外実験 clini(:81demonstr如ion of e鼠ries arrestment 成績,小歯言乱11:165∼173. fouowing tQpic81stanIlOuS fl110rlde treatmeIlt, 5)森谷泰之,土居将男.矢島和最善原正象宮崎 健. J.Dent.Cllild.,32:65−72. 伊藤稚気大東適治一乾 淳一,田中帯彦,数田表札 6g.
(9) 米淫,他 NH4)2Mo02F4の蘭触進行抑制効果について. 984. ll)落合信行(1984) : (NH4)2Mo02F4の歯薯無機質相 用の手引き, 21-23,医歯薬出版,東京. に及ぼす影響に関する研究,中歯誌, 22 : 36-66. 14)稗田豊治,吉田定宏(1976) :フッ化ジアンミン泉を 12)楽木正実(1986) :フッ化モリブデン酸アンモニウム めぐって,子どもの歯に応用する場合の達意,臼歯評 の象牙質に及ぼす影響,中歯誌, 24 : 114-137. 論, 404 : 56-61. 13)山套礼一,横清一郎(1980) :フッ化ジアンミン銀応. Takuro yONEZU and Yukio MACHIDA : A Clinical Study on the Dental Caries Arrestment Effects of Topically Applied (NH4)2MoO2F4 Solution, Shikwa Gakuho, 92 : 977-984, 1992. (Department of Pediatric ]⊃entistry,Tokyo Dental College.Chiba 261, Japan) Key Words : Clinical study-Caries arrestment effect-Topical application ∼(NH4)2Mo02 FA solution The present clinical study was conducted to determine the caries arresting effect of a topically applied 10% (NH4)2Mo02 F4 solution. For the study,15 children were selected from patients of the Pediatric Dentistry Clinic of the Tokyo Dental College. These children had pairs of carious teeth in the same arch. In. an initial examination of 25 pairs of teeth,15 -I. children were found to have symmetrically placed teeth affected with the same slight degree of canes. Topical applications of a lO% (NH4)2Mo02 F4 solution were made to one of each pair of teeth 2 time at 1-week intervals. Distilled water was employed to the other tooth in each pair; these teeth were employed as controls. Subsequent topical application and clinical examination were continued at 4 months intervals until from a minimum of 12 to a maximum of 28 months after initial examinations. Results l) Caries demonstrated signs of progression in 15 (60.0%) of 25 control teeth. Such signs appeared in only 2 (8.0%) of the experimental teeth. Consequently, caries arresting effect in this study was 2) No clinical disadvatages at all were assosiated with application of a l0% (NH4)2 Mo02 F4 solution. In addition, it produced no discoloration of caries areas. These data suggest that topical application of a 10% (NH4)2Mo02 F4 solution may be a valuable method for arresting initial caries.. 70.
(10)
関連したドキュメント
In this report, we ex- plain three of the DPC studies about(i)outcomes of argatroban treatment in patients with atherothrombotic stroke,(ii)comparison of short-term mortality
緒 爾来「レ線キモグラフィー」による心臓の基礎的研
筋障害が問題となる.常温下での冠状動脈遮断に
〜3.8%の溶液が涙液と等張であり,30%以上 では著しい高張のため,長時間接触していると
シークエンシング技術の飛躍的な進歩により、全ゲノムシークエンスを決定す る研究が盛んに行われるようになったが、その研究から
直腸,結腸癌あるいは乳癌などに比し難治で手術治癒
A Study on Vibration Control of Physiological Tremor using Dynamic Absorber.. Toshihiko KOMATSUZAKI *3 , Yoshio IWATA and
算処理の効率化のliM点において従来よりも優れたモデリング手法について提案した.lMil9f