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Title
天然アパタイトの組成と生体応用の可能性
Author(s)
見明, 康雄; 三島, 弘幸
Journal
歯科学報, 117(6): 441-443
URL
http://hdl.handle.net/10130/4427
Right
Description
―――― カラーアトラス ――――
天然アパタイトの組成と生体応用の可能性
み あけ やす お見 明 康 雄
1),
み しま ひろ ゆき三 島 弘 幸
2) 1) 東京歯科大学組織・発生学講座 2) 鶴見大学歯学部歯科理工学講座カ ラ ー ア ト ラ ス の 解 説
はじめに アパタイトは歯科領域ではよく知られた材料であ り白というイメージがあるが,天然アパタイトは 色々な色彩を持ちパワーストーンとしても知られて いる。アパタイトの核形成や結晶成長には,Mg, Al,Si,S,Cl といった微量元素が大きく関与して いるが,生体アパタイト結晶は微細な単結晶の集合 物で,炭酸イオンが多く,これが歯や骨アパタイト の変異や多様性を作り出し,結晶構造に格子不正を 引き起こしている。一方,天然鉱物のアパタイトは 極めて大きな単結晶であり,比較的結晶構造に歪み は少ないが,色調や組成に変異がみられ,種々の結 晶のインクルージョンも認められている1,2) 。 この研究では,天然アパタイトを解析し,生体ア パタイトとの組成や構造の類似性あるいは違いを探 求し,新たな歯科材料や硬組織の標準試料を開発す るための情報を得ることを目的とした。今回は特に 色彩と構成成分との関係について検索を行った。 方 法 天然アパタイトの分析は,各結晶を c 軸と垂直方 向の板状に切出し表面を鏡面研磨した後,EPMA を用いて EDS および WDS で定性分析と定量分析 を行った。また顕微ラマン分光分析で測定を行った。 石灰化組織の定量評価のため,天然アパタイトを標 準試料としてX線撮影(CMR)を行った。撮影に際 しエナメル片と天然アパタイトを同一ブロックとし て樹脂包埋し,種々の厚み(130∼200µm)の研磨片 を作製して画像解析装置で石灰化度の比較検討を 行った。 結 果 今回観察した結晶を図1a∼dに示す。メキシコ 産はやや黄色みを帯びた透明で(Yellow),コロン ビア産は光の透過性の高いピンク色(Pink),ブラジ ル産は透過性のある青色(Blue)と透過性のほとんど ない濁った灰緑色(Green)であった。 EPMA の定性分析では,全てのサンプルから Ca, P と F が検出され,Fluorapatite であることが示さ れた。また他の含有元素として O,Na,Si,S,Cl, Mn が広範囲で検出された(図2a∼d)。面分析を 行ったところ,透過性の高い結晶ではこれらの元素 が比較的均一に分布し(図3a,c),一部でにイン クルージョンがみられ(図3b,d),定量分析では 色の違いにより含有元素比に差がみられた(Table 1)。灰緑色結晶ではインクルージョンが特に多く 観察され(図3d,図4),C,O,F,Na,Mg,Si, P,S,Ca,Fe,Mo,Ba,La,Ce,Th 等が検出さ れた(図5)。 ラマン分光分析法ではリン酸基 PO43−のピーク値 が964∼967cm−1 であり(図6),これは F によるピー クシフトと考えられ,天然アパタイトは Fluorapa-tite であることが示された。 天然アパタイトとエナメル質の CMR 撮影を行っ たところ,天然アパタイトの密度を100vol%とした 場合, エナメル質では80∼90vol%位の値であった。 考 察 天然アパタイトの色の変化は微量元素の含有比が かなり異なることから,微量元素量の違いによるも のと思われた。面分析ではこれらの元素が均一に分 布していることより結晶格子に組み込まれている可 能性も高い。灰緑色(Green)の結晶はインクルー ジョンが特に多く,これが透過性の低下を招いてい ると思われた。またインクルージョン結晶として ThSiO4ハットナイト,CaSO4石膏,SiO2シリカ,Ca2MgSi2O7オケルマナイト,BaSO4重晶石,CaCO3方解
石等が考えられた。 ラマン分光分析では,アパタイトの PO43−のピー ク値は4種類認められ,CO3含有アパタイトである 骨アパタイトの v1は960cm −1 で3) ,ヒトエナメル質 では v1が961cm−1,サメエナメロイドでは963cm−1 である。天然アパタイトはサメエナメロイドに近い ピークシフトを示していることより Fluorapatite に近いものと考えられた。また,これらのピークは 生体アパタイトの特徴であることや,天然アパタイ トは長さ10mm 以上ある大きな単結晶で100%近い 密度を持つことから,生体石灰化組織の密度,結晶 成長や結晶化などの測定のための標準試料や骨代替 材料のインプラント後に,その周囲に形成される骨 組織の結晶成熟度の比較対照試料としての可能性が 示唆された。 また,CMR による定量評価実験では,天然アパ タイトの密度を100vol%とした場合,エナメル質で は80∼90vol%位の値であったが,エナメル質の無 機質重量パーセントは97%前後であるのに対し容量 パーセントは89%で有ることが報告されており4) , 概ね容量パーセントに近い値を得ることが出来た。 従って,エナメル質の無機容量パーセントについ て,動物種による違いや部位による違いを詳細に検 討する上で重要な指標となる可能性が示唆された。 謝 辞 顕微ラマン分光装置の分析では,東京都市大学機器分析室 の吉田明先生と新藤恵美先生のご助力を受けた。本研究は東 京歯科大学共同研究プロジェクト研究費と科研費基盤研究 C (23592727)の助成を受けた。 文 献 1)小林暉子:本邦産燐灰石について.東京歯科大学教養系 研究紀要,8:22−34,1992. 2)小林暉子:渦の沢産燐灰石のインクルージョンについ て.東京歯科大学教養系研究紀要,13:10−13,1997. 3)Penel G, Delfosse C, Descamps M, Leroy G :
Composi-tion of bone and apatitic biomaterials as revealed by in-travital Raman microspectroscopy. Bone, 36:893−901, 2005.
4)Boyde A : Enamel. Teeth(Handbook of Microscopic Anatomy V/6)(ed by Oksche A, Vollrath L),pp. 309− 473,Springer-Verlag, Berlin, 1989.