第2学年2組 美術科学習指導案 1 題材名 「修学旅行の思い出を線描で表現しよう」 2 題材設定の理由 ○スクラッチボードとは,厚さ1㎜程度のプラスチック製のボードで,板の表面に黒い塗装が施してある。 スクラッチボードの表面を,先のとがった釘や,スクラッチボード専用のニードルでひっかいて図柄を表 現することができる。スクラッチとは,釘,あるいはニードルでスクラッチボードの画面をひっかいて白 い線の重なりで対象(モデル)を表現していく線描の技法である。本題材で取り扱う対象(モデル)は線 で表現しやすい建物や風景に限定した。 本題材の領域は絵画であるが,絵の具などの色を使わず白と 黒の線描で表す素描的な教材である。生徒は,テレビやインタ ーネットなど,生活のあらゆる場面で,様々な絵画・デザイン・ イラストに接している。視覚的な情報が氾濫する中で,本当の 良さ,美しさを見失っているところも感じられる。このような 社会の中でこそ,心豊かな生活を創造していく意欲や態度,感 性や想像力,良さ,美しさを感じ取る心を育てていくことが大 切である。素描をスクラッチで行うという技法で,対象をじっ くりと観察し,対象から受ける感じを素直に表現し制作の喜び を味わわせることは意義深いと考える。また、線の動きや重ね 方の工夫によって表現に深まりが出てくる線描は,制作意欲を 高め描画の表現力や対象の良さや美しさを感じ取る力を付ける ために有効であると考える。 本学年では,9月に奈良・京都の修学旅行に行ったばかりで ある。京都の風景や伝統的な建造物などを,実際に自身の目で 見た時の気持ちが残っているこの時期に,修学旅行の思い出の 一場面をスクラッチボードに線描で表現する。対象(モデル)は,修学旅行での資料である写真や絵・イ ラストを使用する。これらは平面に処理してあるので,平面的なスクラッチボードに取り入れやすいから である。本題材は対象をとらえて描く最も基礎的な技能である素描であるが,スクラッチボードに表現す ることにより,明暗のコントラストや量感・質感の表現力が要求される。本題材では,1年生で学習した スケッチの発展・応用につながると考える。スケッチの学習では,写真に描かれた動物をスケッチしたが, 形をとることが苦手な生徒が多く苦労していた。さらに,3年生でアクリル絵の具を使って,絵画の学習 を行うので,2年生のこの時期に本教材を設定することは有効であるとか考える。 ○本学級の生徒に対して,美術的な作業についての意識調査を行った。その結果以下のような結果になった。 1,絵を描いたり,制作することについての質問 好き どちらかといえば好き どちらかといえば苦手 苦手 18% 20% 32% 30% 2,苦手な生徒に対して,制作過程上で苦手なところについての質問 構想段階 下書き 着色 35% 31% 24% アンケートの結果から,「絵を描くことや,制作することが好き・どちらかといえば好き」と答えた生徒 は38%で,「どちらかといえば苦手・苦手」と答えた生徒は62%という結果だった。美術に対する興味, (動物をテーマのスクラッチボード参考作品)
関心は,イラストや漫画に興味を持っている生徒は72%と多いが,描くことや作ることに関しては興味・ 関心を持っている生徒が少ない。また,制作の,それぞれの段階で3分の1が苦手意識を持っているという ことがわかった。さらに,日頃の授業から,道具の出し入れなどで面倒なことに抵抗がある生徒や,基礎的 な技術が定着していないために,授業に集中して制作活動を進められない生徒もいる。そこで,各制作過程 に於いて,興味・関心がもてるような手だてを行う必要があると考える。また,技能面では,基礎的な演習 を取り入れるようにする。1年生では,色彩の学習やデザイン・絵画の表現技法の基礎を学習し,2年生で は,それらの技術を発展・応用させ,自分の思いを表現し,写実的に対象を表現できる力をつけたいと考え ている。また,1年生で行った鑑賞の授業では,生徒が好む絵画の多くは「本物みたいに表現されていてす ごい」であるとか「リアルだから好き」というという感想を述べている。この感想から,生徒は,より写実 的な実物に忠実な絵画に興味を持つことが多いと考えられる。さらに,スケッチの学習では,対象に忠実に 描きたいという思いはあるが,正確に形をとることができない生徒が多く,スケッチに対して抵抗のある生 徒が多かった。しかし,絵画における対象の再現性や実在感というものに関心があり,自分もそのように描 いてみたいという願いを持っていると思われるので本題材を設定した。 ○本題材は第一次で,作品の鑑賞や線描の表現についての基礎技法を学習し,第二次でアイデアスケッチを 行う下絵を完成する。第三次で制作を行い,第四次で完成作品の鑑賞を行う。本題材では画面が黒色のスク ラッチボードを使用するが,今までの白い画用紙とは白と黒の表現方法が逆転するので,描画の得意な生徒 も表現に抵抗を感じると予測される。そこで,構想の段階で練習の時間を多めに取り線描の工夫の学習を取 り入れ抵抗感を少なくするように工夫する。 第一次では,線描の表現技法について理解し,制作のイメージや発想を広げることをねらいとしている。 さらに,参考作品を掲示し,生徒が鑑賞し,教材であるスクラッチボードに直接触れることによって抵抗 感や制作への不安を取り除くようにする。生徒にとってスクラッチボードは初めて使う教材なので,素材 の特性や道具の使い方を充分に説明する。特に注意すべき点は,今までの学習では,ほとんどの教材が白 い画用紙に黒い鉛筆で表現していたことである。スクラッチボードは表面が黒く,ニードルでひっかくと 白く描かれる。陰や黒くしたいところを残し,光の当たっている部分をひっかいていくことを認識するた めに,黒い画用紙を使って簡単なスケッチを体験する。 第二次では,制作のイメージを考えながら,表したいテーマである建物や風景を選び,アイデアスケッ チの中で配置や構図を決める。ここでは,個人の興味・関心を重視して好きな建物や風景を選ばせるよう にする。しかし,生徒の興味,関心と技能や表現力とがアンバランスにならないように,対象(モデル) である建物の選び方を提示し,下表の①,②と A,B を参考にしながら生徒が選択し対象を決定する。 ① 写真を使う ・・・リアルであるが立体的なので画面に取り入れにくい ② 絵画で表現した物を使う ・・・平面なので画面に取り入れやすいが細部が抽象的である A 輪郭のはっきりしたもの(建物) ・・・ 線描で表しやすい B 輪郭のはっきりしていないもの(木や山などの風景) ・・・ 線描で表しにくい 次に,決定した建物や風景のスケッチを行う。ここでは,線描で質感や量感を表現することが苦手な生 徒のために,様々な線描の表現方法について理解させ,自分の作品に合った表現方法を選び,演習プリン トで練習する。次に,建物の形を精密に描き,下絵を完成させる。さらに,対象(モデル)をどのように 画面に取り入れるかを決定する。ここでは,スクラッチボードの上に下絵を置いてみて効果的な配置にな るように決定していく。
なので取り扱いの注意を十分に行うようにする。 第四次では,完成した作品の自己評価と相互評価を行う。鑑賞用プリントを使い自分の作品や友達の作 品について感想を書く。評価の観点は,「①ていねいに最後まで制作している」「②たくさんの線描を使 っている」で行う。 3 学力向上プランとの関連 生徒の美術作品に対する興味関心や,制作意欲を高めるために,美術科の授業に於いては,作品を制作 する上で技術面の基礎的・基本的な力をつけることが必要であると考える。発想・構想・表現・観賞の各 制作過程で,練習や試しなどの手だてを仕組むことにより,生徒が制作することに対しての不安や抵抗を 取り除き,作品完成の見通しを持って制作できるよう工夫をする。 4 題材の目標 ○スクラッチボードの素材や線描の表現技法に興味を持ち,最後まで粘り強く取り組み楽しく制作する ことができる。(関) ○自分なりに美しく表現するために,線描で質感や量感を捉え,対象(モデル)が引き立つ構図を考え ることができる。(発) ○対象(モデル)の特徴を捉えたニードルによる線描の表現方法を使って,線の重なりや,向き,長さ などを工夫して,質感や量感を表すことができる。(創) ○白黒による,しかもニードルによって表せる線の表現のおもしろさを感じ,自他の作品の良さを認め ることができる。(鑑) 5 題材指導計画 (13時間) 次 (時間) ねらい・学習活動 評価規準 評価方法 関心・意欲・態度 発想や構想の能力 創造的な技能 鑑賞の能力 1 (2) 1,スクラッチについて 知ろう。 ・スクラッチの技法につ いて説明を聞く。 ・スクラッチボード の素材の特性を理 解する。 ①技法や 素材につ いての特 性につい て理解し 興味を持 つことが できる。 ②参考作品 の良いと ころを2 つ以上述 べること ができる ① 観察 ② 感想 (1) (本時) 2,いろいろな線描の表現 方法を見つけよう。 ・線描の方法や種類を知 りいろいろな表現で 表す。 ①線描の方 法や表現 に興味を ができる。 ②20種類 の線描の 表現を考 えること ができる ①観察 ② 線描の プリン ト
2 (1) 3,表現したい対象を選ぼ う。 ・対象を選ぶ。 ・簡単なスケッチをして 対象の感じをつかむ。 ①対象に興 味を持ち 楽しくス ケッチし ている。 ②表現効果 を考え対 象を選ぶ ことがで きる。 ① 観察 ②スケ ッチ (2) 4,対象の特徴を捉えてス ケッチしよう。 ・対象をスケッチする。 ①対象の形 を興味深 く観察し ている。 ②対象の形 の特徴を 捉えスケ ッチして いる。 ① 観察 ② 作品 (1) (1) 5,配置や構図を工夫し, 効果的な下絵を作ろう ・机上で,対象と背景の配 置のバランス考える。 ・友だちの作品を鑑賞し, 自分の作品と比較する。 6,完成をイメージしなが ら下絵を完成しよう。 ・第2次で練習した,線描 の表現方法を基に線描 でスケッチし下絵を完 成させる。 ① 効果的な 配置にし ようと, 工夫を してい る。 ①たくさん の線描を 使って意 欲的に表 現してい る。 ②対象と背 景とのバ ランスが 良く,対 象が引き 立つ下絵 になって いる。 ②対象の質 感や量感 を線描で 表現する ことがで きる。 ③友達の下 絵の良さ を鑑賞し 構図や配 置の良い ところを 感じ取る ことがで きる。 ①観察 ②③ 作品 ① 観察 ② 作品 3 (1) 7,下絵を正確にスクラッ チボードに転写しよう。 ・白カーボンを使い,てい ねいに下絵を写す。 ①下絵見て ていねい にスクラ ッチボー ドに転写 すること ができる。 ①作品
ひっかいていく。 制作して いる。 を進めることが できる。 ③線の重なりに よって量感・質 感・明暗を表現 することができ る。 ②③ 作品 観察 4 (1) 9,完成作品の良さを味わ おう。 ・ 完成した自分の作品を 鑑賞し,感想を書く。 ・ 完成した,友だち作品 を鑑賞し,感想を書く ①友達の作 品を興味深 く鑑賞して いる ②自他の作 品の良さ を見いだ すことが できる。 ① 観察 ② 感想 6,本時 (1) 本時の主眼 ○ 線描の方法や表現の仕方に興味を持ち,積極的に取り組むことができる。(関) ○ 20種類以上の線描の表現を考え,学習プリントに表現することができる。(発) (2) 本時の指導観 前時の学習でスクラッチボードの特性を学び,生徒は線描で表現することを知っている。本時の活動 では,具体的に参考作品から,ヒントとなるいくつかの線の表現の仕方を学び,それらを参考に,いろ いろな線描の表現方法を考えさせていく。次時では,線描表現の方法を生かせるように対象を選ばせる。 そこで,本時に於いては次のような手だてをとる。 導入の段階では,線描表現の美しさや,線で表現できる可能性を感じ取らせ,今からの学習に対する 興味・関心をもたせるために参考作品を掲示し観賞させる。 展開に於いては,生徒に線描の表現方法の多様さを理解させるために,参考作品を印刷したプリント を見せて,様々な線描の表現方法があることに気付かせる。次に,生徒自身に線描の表現を考えさせる ために,「線の表現プリント」を使い,線の種類を書かせる。作業の意欲を喚起させるために目標を設 定する。日頃に学習状況から,生徒にとって10~15種類は簡単にできると予測し,最低20種類の 線の種類を書かせる。作業の進まない生徒には,線の特徴を「ギザギザ」とか,「なみ」「ぐるぐる」 など言葉の書かれたプリントを配り,言葉を手がかりに線の表現を考えさせる。さらに,線の表現を考 え出すことが困難な生徒に対しては,教師があらかじめ10種類ほど線描を書いたプリントを配り,生 徒に写させるようにする。また,線描がたくさんかけた生徒には2枚目のプリントを配布し,さらにた くさん考えさせる。また,生徒の発想を広げ,単調な線を重ねたり,方向を変えたりすることによって, 多様な線の表現ができることに気付かせるために,進んでいる生徒の作品を掲示する。 終末では,本時の学習についての感想を書かせ,次の活動につなげる。 (3) 準 備 ○ 生徒・・・鉛筆,消しゴム ○ 教師・・・参考作品,参考作品のプリント,線描を書き込むプリント,感想記入用紙
(4) 展 開 学習活動・内容 指導上の留意点 形態 評価 配時 1 本時の活動について知る。