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日本におけるニホンウナギの保全と持続的利用に向けた取り組みの
現状と今後の課題
海部 健三
1*・水産庁
2・環境省自然環境局野生生物課
3・望岡 典隆
4パルシステム生活協同組合連合会
5・山岡 未季
6・黒田 啓行
7・吉田 丈人
8,9 1中央大学法学部・2水産庁・3環境省自然環境局 4九州大学大学院農学研究院・5パルシステム生活協同組合連合会 6中央大学研究開発機構・7水産研究・教育機構西海区水産研究所 8東京大学総合文化研究科・9総合地球環境学研究所Current activities and challenges for conservation and sustainable harvest of Japanese eel in Japan
Kenzo Kaifu1*, Fisheries Agency2, Wildlife Division, Nature conservation bureau, Ministry of Environment3, Noritaka Mochioka4
Palsystem Consumers’ Co-operative Union5, Miki Yamaoka6, Hiroyuki Kurota7, and Takehito Yoshida8 1Faculty of Law, Chuo University, 2Fisheries Agency
3Nature conservation bureau, Ministry of Environment
4Laboratory of Fisheries Biology, Faculty of Agriculture, Kyushu University 5Palsystem Consumers’ Co-operative Union
6The Research and Development Initiative, Chuo University
7Seikai National Fisheries Research Institute, Japan Fisheries Research and Education Agency 8Department of General Systems Studies, Graduate School of Arts and Sciences, University of Tokyo
9Research Institute for Humanity and Nature
要旨:古来より人間は、ニホンウナギから多様な生態系サービスを享受してきたが、国内漁獲量は 1961 年の約 3,400 ト ンをピークに、2015 年の 70 トンまで大きく減少し、2013 年には環境省が、2014 年には国際自然保護連合(IUCN)が、 本種を絶滅危惧 IB 類および Endangered に区分した。本稿は、今後の研究や活動の方向性を議論するための情報を提供 することを目的として、現在我が国で行われているニホンウナギの保全と持続的利用に向けた取り組みと課題を整理し た。水産庁は、放流と河川生息環境の改善、国内外の資源管理、生態・資源に関する調査の強化等を進めている。環境 省は、2 ヵ年に渡る現地調査を行なったうえで、2017 年 3 月に「ニホンウナギの生息地保全の考え方」を公表した。民 間企業でも、一個体をより大きく育てることで消費される個体数を減少させるとともに、持続的利用を目指す調査研究 や取り組みに対して寄付を行う活動が始まっている。しかし、web 検索を利用して国内の保全と持続的利用を目指す取 り組みを整理すると、その多くは漁業法に基づく放流や漁業調整規則、シンポジウムなどを通じた情報共有であり、生 息環境の保全や回復を目的とした実質的な取り組み件数は限られていた。漁業管理を通じた資源管理を考えた場合、本 種の資源評価に利用可能なデータは限られており、現時点では MSY(最大持続生産量)の推定は難しい。満足な資源 評価が得られるまでは、現状に合わせて、限られた情報に基づいた漁獲制御ルールを用いるなど、適切な評価や管理の 手法を選択することが重要である。本種の生息場所として重要な淡水生態系は劣化が著しく、その保全と回復はニホン ウナギに限らず他の生物にとっても重要である。ニホンウナギは水域生態系のアンブレラ種など指標種としての特徴を 備えている可能性があり、生態系を活用した防災減災(Eco-DRR)の促進など、水辺の生物多様性の保全と回復を推進 する役割が期待される。 キーワード:絶滅危惧種、資源管理、淡水生態系、Anguilla japonica
学術情報
緒 言
(海部健三)※各項の担当者・組織を( )内に示す。 ニホンウナギ(Anguilla japonica)は、外洋のマリアナ 諸島西方海域に産卵場を持ち、陸水で成長する降河回遊 魚である(Tsukamoto 1992, 2006)。孵化した仔魚はレプ トセファルスと呼ばれ、北赤道海流に乗って西方へ運ば れた後、黒潮に乗り換えて北へ輸送され、その過程でシ ラスウナギへ変態する(Kimura et al. 1994;Otake et al. 1998)。シラスウナギは東アジア近海で黒潮を脱し、陸域 へ接岸する。河川、湖沼および沿岸域の成育場に加入し たシラスウナギは、色素が発達し、クロコと呼ばれる時 期を経て、黄ウナギになる(松井 1972)。数年から十数 年を黄ウナギとして東アジアの成育場で過ごした後、銀 ウナギとなり産卵回遊を開始する。 古来より人間は、ニホンウナギから多様な生態系サー ビスを享受してきた。食料としての供給サービスの歴史 は古く、国内でも多くの貝塚遺跡からウナギ属魚類の遺 骨が発掘されている(小島ほか 2012)。日本における 2014 年のウナギ養殖の生産量は 17,627 トン、生産額は 497 億円に上り、生産額では、国内内水面養殖生産額の 66.2%を占めている(農林水産省 2015)。また、本種は甲 殻類や小型魚類のほか、陸生のミミズや昆虫を捕食する ことが報告されている(Kaifu et al. 2013;Itakura et al. 2015)。捕食は、小型生物の過剰な増殖を抑制し、生態系 の物質循環を促す重要な基盤サービスを担っている。こ のほか本種は、趣味としての釣りや漁の対象として、和 歌や絵画の題材として、伝統的な食文化を支える食材と して、多様な文化的サービスをも提供してきた。ニホン ウナギを保全し、持続的に利用することは、多くの利益 を人間にもたらすと考えられる。 日本国内における、ニホンウナギの黄ウナギと銀ウナ ギの漁獲は、1961 年の約 3,400 トンをピークに,2015 年 の 70 トンまで大きく減少した(農林水産省 1958-2016)(図 1)。漁獲量は漁業者の増減など社会的な影響を強く受け るため、漁獲量の減少がそのまま個体群の減少を示すわ けではないが、急激な漁獲量の減少を受け、2013 年 2 月 には環境省が絶滅危惧 IB 類に区分したことを発表した (環境省 2013)。続いて 2014 年 9 月には国際自然保護連 合(IUCN、International Union for Conservation of Nature)が、 漁獲量のほか、個体数密度の指標となる CPUE(Catch Per Unit Effort、単位努力量あたり漁獲量)に基づいた評 価を行った結果、環境省のレッドリストにおける絶滅危 惧 IB 類と同等のランクとされる Endangered に本種を区 分した(Jacoby and Gollock 2014)。また、2016 年 9 月に 開催された通称ワシントン条約(CITES、the Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora)において、他のウナギ属魚類とともに生態お Abstract: The catch of the Japanese eel, Anguilla japonica, has decreased since the 1970s and this species is currently listed as endangered in the IUCN Red List of Threatened Species. This article reviews current activities for the conservation and sustainable harvest of the Japanese eel in Japan and discusses the challenges that need to be overcome. The public and private sectors have been conducting stocking, research, and habitat restoration activities and making donations for the purpose of species conservation. However, only one academic paper has assessed its population dynamics and a web search revealed only a few activities aimed at restoring the Japanese eel habitat. Because the available data on its population dynamics are so limited, stock management procedures should be selected carefully. In addition to fisheries management, the rivers and lakes where the Japanese eel spends its growth phase should be restored. Because of its high trophic level and broad habitat range, the Japanese eel can be a flagship species for aquatic ecosystems.Keywords: stock management, threatened species, freshwater ecosystem, Anguilla japonica
よび流通の実態調査を開始することが決議されている(欧 州委員会、http://ec.europa.eu/environment/cites/pdf/cop17/ eels.pdf、2017 年 5 月 12 日確認)。 ニホンウナギ個体群の危機的現状には、(1)外洋で生 まれた仔魚の輸送に影響を与える海流や風などの大気海 洋条件、(2)過剰な漁獲、(3)成育場の環境劣化の 3 つ の要因が影響を与えていると考えられている(「東アジア 鰻資源協議会(East Asia Eel Resource Consortium)緊急 提 言( 東 ア ジ ア 鰻 資 源 協 議 会 )」、http://easec.info/ EASECdeclarationsFinal_JPN.PDF、2017 年 5 月 12 日確認)。 上記『緊急提言』によれば、このうち(1)の大気海洋条 件については、人為的な温暖化を通じた海洋環境の変化 を最小限に低減させる長期的な取り組みは重要ではある ものの、ニホンウナギ個体群の回復を目的として短期・ 中期的な効果を目指した取り組みを行うことは難しく、 その一方で、(2)および(3)は人間がある程度管理する ことが可能であり、このため、ニホンウナギの保全と持続 的利用を実現するためには、資源管理、および成育場であ る河川および沿岸域の環境の保全と回復が必要とされる。 過剰な漁獲について、2014 年の我が国におけるニホン ウナギを含むウナギ属魚類の年間消費量は約 51,139 トン にのぼる(「ウナギをめぐる状況と対策について(水産 庁 )」、http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/pdf/meguru.pdf、 2017 年 8 月 28 日確認)。このうち、99%以上は養殖され た個体であり、河川や湖沼、沿岸域で捕獲されるいわゆ る「天然ウナギ」が占める割合は 1%にも満たない。ウ ナギ属魚類においては、未だ人工種苗の商業的生産は成 功していないため、養殖に用いる種苗には、天然加入の シラスウナギが用いられている。 成育場の環境劣化は、河川横断工作物による遡上の阻 害と、護岸の整備・河川の直線化・外来種の侵入・水質 汚濁・富栄養化など局所生息域(マイクロ・ハビタット) 環境の劣化に大別される。Chen et al.(2014)が衛星写真 をもとに、日本、韓国、中国、台湾の 16 河川を対象に行 った研究では、1970 年から 2010 年にかけて 76.8%の有 効な成育場が失われたと推測されている。過剰な漁獲と ともに、有効な成育場の減少が本種個体群の減少に与え てきた影響は、非常に大きいと推測される。 ニホンウナギに限らず、生物を保全し、持続的に利用 していくためには、その生態に関する基礎的な情報が必 要不可欠である。これまで、ニホンウナギに関する研究 は水産学の分野を中心に進められてきた。おもなテーマ は、養殖に利用するための人工種苗生産技術の開発(例 えば Tanaka et al. 2003 など)、産卵生態の解明(例えば Tsukamoto et al. 2011 など)、および稚仔魚の輸送経路(例 えば Kimura et al. 1994 など)である。このほか生理学の 分野においては、本種が広塩性魚類であることから、浸 透圧調節機構の解明のためのモデル生物としても利用さ れている(例えば、Tse et al. 2008 など)。その一方で、本 種の絶滅リスクが懸念されているにも関わらず、個体群 動態、およびそれに影響を与える要因の解明に関する研 究は進んでいない。2014 年になってようやく、本種の個 体群動態の推測が提示されたが(Tanaka 2014)、用いられ た CPUE データは分布域の一部である日本国内に限られ ている。国内外での CPUE の相違や、シラスウナギ採捕 量の約半分が報告されていないこと(Shiraishi and Crook 2015)、国内で盛んに放流が行われていることを考慮し、 今後、利用するデータを改善していく必要がある。個体 群動態に影響を与える要因に関しては、上述の Chen et al.(2014)の報告の他には、行政による事業報告書(例 えば、環境省 2015, 2016)は存在するが、査読を経た学 術論文は多くない。 個体群の危機的な状況が問題となっているニホンウナ ギの保全と持続的利用のためには、個体群動態に影響を 与える要因の把握を主要な目的の一つとし、保全生態学 の基盤ともなっている、生態学の視点からの研究が不可 欠である。しかし、日本における本種の研究は、主に水 産学の分野で盛んに行われているのが現状である。国立 情報学研究所の学術情報データベース CiNii(http://ci.nii. ac.jp)を利用し、これまで発表されてきた論文を検索す ると、主として水産学を扱う日本水産学会からは、本種 に関する 100 以上の文献が検索される(表 1)。これに対 して、日本生態学会の出版する専門誌である「Ecological Research」、「日本生態学会誌」、「保全生態学」を対象に検 索した場合、ニホンウナギに関する文献は全く結果に表 示されない。ニホンウナギの個体群動態、およびそれに 影響を与える環境要因に関する、生態学的な視点に基づ く研究が限定されていることは、本種の保全と持続的利 用の取り組みが、十分な理論的裏付けのないまま進めら れている可能性を示唆している。 このような現状をふまえ、本稿は、現在我が国で行わ れているニホンウナギの保全と持続的利用に向けた取り 組みを整理し、今後の研究や活動の方向性を議論するた めの情報を提供することを目的とする。なお、ここで紹 介されている取り組みの事例には、前述のように、個体 群回復の効果が確認されていない、または理論的な裏付 けが不十分なものが含まれている可能性があることに留 意が必要である。
現在行われている取り組み事例の紹介
ウナギ資源を持続的に活用するための水産庁の取り組み (水産庁) ウナギ養殖では、冬から春の時期に遡上のために河口 域に現れたシラスウナギを採捕し、それを種苗として養 殖池で育成する。このため、ウナギ養殖業ではシラスウ ナギを安定的に確保することが重要だが、シラスウナギ の漁獲量は長期減少傾向にある(農林水産省 1958-2016)。 特に 2012 年及び 2013 年には、日本をはじめ、中国や台 湾を含む東アジア一帯でシラスウナギが不漁となったた め、シラスウナギの価格が高騰した(日本養鰻漁業協同 組合連合会調べ)(図 2)。この影響を受け、ウナギ(活鰻) の価格が上昇し、鰻丼や鰻加工品(蒲焼き製品等)価格 も上昇した(総務省統計局小売物価統計調査)。 水産庁はシラスウナギの不漁を受けて、2012 年 6 月、 養殖業者向け経営対策、放流と河川生息環境の改善、国 内外の資源管理、シラスウナギ大量生産技術確立のため の研究や生態・資源に関する調査の強化等から成るウナ ギに関する総合的な対策(ウナギ緊急対策)を公表した (「ウナギ緊急対策について(水産庁)」、http://www.jfa. maff.go.jp/j/press/saibai/120629.html、2017 年 5 月 2 日確認)。 これを機に、中国、韓国、台湾等ニホンウナギを養殖用 種苗として利用する東アジアの関係国・地域間において、 国際的な資源管理の実施に向けた協議を進めるとともに、 国内においては、ウナギ漁業者、シラスウナギ採捕者、 ウナギ養殖業者というニホンウナギを利用する関係 3 者 による三位一体の資源管理の取組を推進している(図 3)。 ウナギ漁業については、都道府県知事が定める漁業調 整規則等に基づき、禁止期間の設定、漁具漁法の制限等 が行われてきている(例えば、鹿児島県 1966)。水産庁は、 2012 年 6 月のウナギ緊急対策に則して、ウナギの漁獲抑 制を含むウナギ資源管理に向けた関係者の話し合いを促 進するよう全都道府県に依頼するとともに、特に、ウナ ギ漁業、シラスウナギ採捕、ウナギ養殖業が盛んな県に 担当者を派遣し、関係者に対する直接の働きかけを行っ てきた。この結果、産卵に向かうために河川から海へ下 る時期(概ね 10 月から翌年 3 月)のウナギについて、こ れまで 7 県において内水面漁場管理委員会指示や海区漁 業調整委員会指示による採捕禁止の措置がとられたほか、 5 都県において漁獲自粛等の取組が始まっている(水産庁 調べ)。今後更に取組が全国に広がるよう働きかけている。 ウナギ養殖の種苗であるシラスウナギの採捕は、都道 府県知事が定める漁業調整規則に基づき、特別採捕許可 によって行われている。平成 25 年 9 月以降、水産庁は都 府県に対しシラスウナギの特別採捕許可について、①採 捕期間の短縮並びに採捕数量の上限設定及び縮減に努め 表 1.日本水産学会と日本生態学会が刊行する学術誌に掲載されたウナギに関わる文献の検索結果。 国立情報学研究所の学術情報データベース「CiNii」を用いた。カテゴリーは「論文検索」、検索対象は「すべて」 とした。検索語句と刊行物名の欄に表中の語句を挿入し、その他の欄は空欄として検索した。検索語句は標準和 名の「ニホンウナギ」、学名の「Anguilla japonica」、英名の「Japanese eel」とし、引用符「”」で括って入力した。 検索日は 2017 年 5 月 2 日。検索結果には、学術論文だけでなく論文紹介も含まれる。また、重複して検索され る文献も存在する。CiNii による検索結果には表示されなかったが、2016 年には Hakoyama et al.(2016)のデー タ論文が、Ecological Research に Data Paper として発表されている(2017 年 5 月 18 日時点では、データは一般公 開されていない)。日本水産学会 日本生態学会
検索語句 日本水産学会誌 Fisheries Science 日本生態学会誌 保全生態学研究 Ecological Research " ニホンウナギ " 22 0 0 0 0 "Anguilla japonica" 120 131 0 0 0 "Japanese eel" 78 122 0 0 0 図 2.日本におけるシラスウナギ取引価格の変遷(日本養鰻漁業 協同組合連合会調べ)。
るべきこと、②シラスウナギの採捕の実態等の把握が必 ずしも十分でない状況を踏まえ、採捕者に対して、採捕 量と出荷先毎の出荷数量の報告及びあらかじめ出荷先を 決めている場合は、そこへの出荷を義務づけすべきこと、 ③ウナギ資源の保護に必要な河川遡上量の確保の観点か ら、採捕期間の再点検をすべきこと、④ウナギ養殖業に おいて池入れ量管理が行われることに見合った採捕数量 の上限設定を行うべきこと、⑤密漁対策を含めた現場で の監視や確認の強化のための写真付き証明書の発行、ワ ッペンや帽子等の着用の義務化を図ること、⑥適切な採 捕数量報告を徹底させるための許可の取り消し等の未報 告者への処分の強化を図ること、についても通知した(「ウ ナギの持続的利用のための資源管理の推進について(26 水 推 第 649 号 )」、http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/pdf/ jyogen.pdf、2018 年 3 月 1 日確認)。 水産庁は国内のウナギ養殖業者の池入れ等の実態を把 握するため、2014 年 11 月 1 日、内水面漁業の振興に関 する法律に基づき、ウナギ養殖業を「届出養殖業」に指 定し、農林水産大臣への届出や池入れ数量等の報告を義 務づけた(「内水面漁業の振興に関する法律施行令」(平 成 26 年政令第 234 号))。また、後述する 4 か国・地域に よる非公式協議において、2015 年漁期のニホンウナギ及 び異種ウナギ(ニホンウナギ以外のウナギ属の種)の池 入れ量を削減することとされたことを踏まえ、ニホンウ ナギ及び異種ウナギについて、養殖業者毎に 2015 年漁期 の池入れ量の上限を設定するための数量配分ガイドライ ンを策定(「池入れ数量の数量配分ガイドライン(水産 庁)」、http://www.jfa.maff.go.jp/j/press/saibai/pdf/141114_1-01.pdf、2017 年 5 月 2 日確認)し、ガイドラインに従って、 養殖業者毎に、池入れ量の上限を配分した。2015 年漁期 の池入れ量の削減は、これらの枠組みの下で、ウナギ養 殖業者による自主的な資源管理の取組として実施された。 水産庁は 2015 年 6 月 1 日、ウナギ養殖業における池入 数量の管理を的確に行うため、内水面漁業の振興に関す る法律に基づき、ウナギ養殖業を、農林水産大臣の許可 を要する「指定養殖業」に指定した(「内水面漁業の振興 に関する法律施行令の一部を改正する政令」(平成 27 年 政令第 236 号))。「指定養殖業」の許可は、養殖できる数 量を定めて行うとされており、第 7 回非公式協議による 共同声明を踏まえた池入れ量の制限(ニホンウナギ 21.7 トン、異種ウナギ 3.5 トン)については、この許可制度 により実施している。 国際的な資源管理の動きとしては、2012 年 9 月、日本 の働きかけにより、日本、中国、台湾の 3 者で「ウナギ の国際的資源保護・管理に係る非公式協議(以下「非公 式協議」)」が開催され、ニホンウナギの国際的資源管理 のために協力していくことが確認された(ウナギの国際 的資源保護・管理に係る第 1 回非公式協議)。以降、関係 国・地域間でどのような協力が可能か、議論が重ねられ、 2013 年 9 月の第 4 回非公式協議からは、近年の国内需要 の高まりにより養鰻生産量が増加している韓国も議論に 加わった。また同回から、漁獲量が減少したニホンウナ ギの代わりに利用が急増している異種ウナギの管理につ いても議論がなされるようになった(「ウナギの国際的資 源保護・管理に係る第 4 回非公式協議(水産庁)」、http:// www.jfa.maff.go.jp/j/press/sigen/130906_1.html、2017 年 5 月 2 日確認)。 2014 年 9 月の第 7 回非公式協議では、ウナギの国際的 資源保護・管理の第一歩として、日本、中国、韓国及び 台湾の 4 者間で、① 2015 年漁期(2014 年 11 月から 2015 年 10 月)において、ニホンウナギの池入れ量を直近の数 量から 20%削減し、異種ウナギについては近年(直近 3 カ年)の水準より増やさないための全ての可能な措置を とる、②保存管理措置の効果的な実施を確保するため、 各 1 つの養鰻管理団体を設立し、それぞれの養鰻管理団 体が集まって国際的な養鰻管理組織を設立する、③法的 拘束力のある枠組みの設立の可能性について検討する ことを内容とした共同声明の発出に至った(「ウナギ の国際的資源保護・管理に係る第 7 回非公式協議に係る 共同声明(水産庁)」、http://www.jfa.maff.go.jp/j/saibai/ 図 3.水産庁が実施している国内の資源管理。
pdf/140917jointstatement.pdf、2017 年 5 月 12 日確認)。 2015 年 6 月の第 8 回非公式協議以降は、共同声明の履 行状況について議論されるとともに、次漁期(毎年 11 月 から翌年 10 月)の池入れ量の上限等を確認するために、 毎年 1 回非公式協議を実施している。また、共同声明の ③を踏まえ、2015 年 2 月及び 6 月には「ウナギ資源の保 存及び管理に関する法的枠組み設立の可能性の検討のた めの非公式協議」が開催された。 さらに、これらの政府間協議に加え、2014 年 5 月からは、 関係国・地域の養鰻業者の資源管理意識の向上を図るた め、官民合同の会合が開催された。2014 年 10 月には、 共同声明の②を踏まえて、日本の養鰻管理団体として「一 般社団法人全日本持続的養鰻機構」が設立され、2015 年 6 月には、日本、中国、韓国、台湾の養鰻管理団体が集 まり、国際的な非政府養鰻管理団体である「持続可能な 養鰻同盟(ASEA)」の第 1 回会合が開催され、ASEA の 目的、活動、会長及び同盟事務局等について定めた規約 や広報活動について議論が行われた。 ウナギの資源管理の目標は、ウナギ資源の持続的利用 を確保し、関連産業の健全な発展と、和食の重要な構成 要素であるウナギの安定供給を図ることである。そのた めに、今後も、東アジア関係国・地域と国際協議を続け、 法的拘束力のある国際的なウナギ資源の保存管理の体制 の構築に取り組むとともに、国内においては、河川等生 息環境の整備を図りつつ、ウナギ養殖、シラス採捕、 ウナギ漁業の関係者による資源管理を三位一体で進め ていく。 ニホンウナギの生息環境保全に関する環境省の取り組み (環境省自然環境局野生生物課) ニホンウナギには海域で一生を過ごす個体と、海域か ら河川に遡上し成長した後、産卵のため再び海域へ下る 個体の存在が知られている。2007 年の環境省レッドリス トの見直しでは、河川に遡上する個体が産卵に寄与して いるかなど、生態に関して不明な部分が多いことから情 報不足(DD)と判断していた。しかし、産卵場であるマ リアナ海溝で捕獲されたニホンウナギの成魚 13 個体すべ てにおいて、河川感潮域に生息していた証拠となる汽水 履歴が確認され、また淡水履歴がないものも 4 個体に限 られることが明らかとなった(Mochioka et al. 2012)。こ れにより河川へ遡上する個体が産卵に大きく寄与してい ることが確かめられ、これに基づき改めて評価を行った (環境省 2013)。 ニホンウナギについては、農林水産省が公表している 全国の主要な河川におけるウナギの漁獲量データ「漁業・ 養殖業生産統計」(農林水産省 1958-2016)が存在する。 日本の河川に遡上した個体の総数及びその動向は不明で あるが、この漁獲量データから少なくとも個体数の変動 を読み取れると推測した。2013 年に行われた評価では、 ニホンウナギの成熟年齢は 4 ∼ 15 年と考え、漁獲量デー タ(天然ウナギ)を基にした 3 世代(12 ∼ 45 年)の減 少率は 72 ∼ 92%と推測した(環境省 2013)。以上より 3 世代において、少なくとも 50%以上は成熟個体が減少し ていると推定されることから、環境省レッドリストの判 定基準の定量的要件 A-2(過去 10 年もしくは 3 世代の長 い期間を通じて、50%以上の減少があったと推定される) に基づき、絶滅危惧 IB 類(EN)に選定し、2013 年 2 月 に公表した。 ニホンウナギが絶滅危惧種に選定された理由は、個体 数の減少率が著しいと推測したためであるが、その減少 には海洋環境の変化、漁獲、河川・沿岸環境の変化等様々 な要因が関与していると考えられている(「東アジア鰻 資 源 協 議 会(East Asia Eel Resource Consortium) 緊 急 提 言( 東 ア ジ ア 鰻 資 源 協 議 会 )」、http://easec.info/ EASECdeclarationsFinal_JPN.PDF、2017 年 5 月 12 日確認)。 しかし、これらの要因がそれぞれどの程度個体数の減少 に影響を与えているかは明確ではない。また、ニホンウ ナギの保全と個体数の回復を図るために必要とされる各 種取組のうち、海洋環境の変化については短期的な行政 施策により対応することは困難であり、漁獲に関しては ニホンウナギの養殖量の上限の設定や親ウナギの漁獲抑 制等の資源管理の取組が始まったところである。以上を 踏まえ、環境省では、産卵回遊により繁殖海域に到達す るニホンウナギの多くが、汽水から淡水域に遡上する個 体であると考えられることから、汽水から淡水域の生息 環境を保全・再生することで個体数を増やす方策を検討 することとし、そのために必要な生態等に関する調査を 2014 年度から開始した(環境省 2015)。 ニホンウナギの生態については、最も基礎的な情報で ある全国的な自然分布域も明らかにされていなかった。 ニホンウナギは全国に分布しているが、養殖場で育った ニホンウナギが資源増殖のために各地で放流されており、 これらを除くニホンウナギの自然分布域を明らかにする 必要があるためである。調査の結果、ニホンウナギの自 然分布域は本州全域に広がるものの、日本海沿岸および 青森県へのニホンウナギの天然加入は、西南日本と比較 して少ないと考えられることが明らかにされた(環境省 2015, 2016)。また、河川と海、上流域と下流域、河川と
水田との連続性が確保されていることが個体数密度に最 も影響すること、浮き石や河岸植生、瀬淵構造といった 局所環境の複雑性が重要であることなどについても明ら かにされている。 これらの調査結果も踏まえ、2016 年 9 月から専門家及 び関係省庁(国土交通省、農林水産省、水産庁)を含め た検討会を 4 回開催し、ニホンウナギの生息地保全の考 え方を検討した。その後パブリックコメントを行い、そ の結果を踏まえ、2017 年 3 月に「ニホンウナギの生息地 保全の考え方」を公表したところである(環境省 2017)。 この考え方の内容としては、予防原則と順応的管理を 用いて行うことを念頭におきつつ、本来河川や沿岸域等 が有している生物の多様な生育・生息環境を保全・回復 することが必要としている。また、河川、沿岸域等の水 域全体のつながりを含めた移動の確保、かくれ場所のあ る多様な環境が存在する等、局所環境の改善が重要であ ることを示し、巻末にはニホンウナギの保全につながる 14 の取組事例を紹介している。 今後、この考え方をニホンウナギが生息する河川や沿 岸域等の保全や管理に携わる機会があると考えられる各 主体が活用することで、ニホンウナギの生息地保全が進 むことを期待している。なお、「ニホンウナギの生息地保 全の考え方」は、環境省ホームページ内で閲覧可能であ るので参照されたい(「ニホンウナギの生息地保全の考え 方(環境省)」http://www.env.go.jp/nature/kisho/index.html、 2017 年 5 月 12 日確認)。 地域におけるウナギの保全の取り組み (望岡典隆) 日本の約40%のウナギ養殖生産量を有する鹿児島県は、 2009 年から 4 年連続のシラスウナギ漁獲量の不漁をうけ、 2012 年 10 月に鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会を発 足した(「県ウナギ資源増殖対策推進協議会が開催されま した(水産技術開発センター)」、http://kagoshima.suigi.jp/ Kouhou/h24/1016eel.pdf、2017 年 5 月 16 日確認)。本協議 会は事務局を鹿児島県商工労働水産部に置き、ウナギに 関わるステークホルダー間の情報の共有や勉強会を通じ て資源保護の意識醸成をはかるとともに、効果的なウナ ギ資源の保護・増殖対策について協議することを目的と している。協議会には、鹿児島県の内水面漁業協同組合 連合会、養鰻団体・養鰻業者、シラスウナギ採捕団体・ 採捕者、鹿児島県商工労働水産部水産振興課、鹿児島県 内水面漁場管理委員会、鹿児島県水産技術開発センター、 学識経験者および準会員として消費者団体(生活協同組 合)が参画している。ここでは協議会が中心となって実 施しているウナギの保全活動について紹介する。 2013 年 5 月、鹿児島県は産卵場に向かう下りウナギの 保護を目的として島嶼部を除く全内水面と海面において 法的規制(内水面漁場管理委員会指示および鹿児島海区・ 熊毛海区漁業調整委員会指示)による 10 ∼ 12 月のウナ ギ採捕禁止を決めた。海面を含めた採捕禁止は全国に先 駆けた取り組みである。協議会では上記の漁獲抑制と平 行して以下のウナギ保全活動を開始した。すなわち、1) ウナギ生息域の質的な改善策として、コンクリート護岸 や矢板護岸化されウナギをはじめ生物の生息場所が減少 した河川汽水域に石倉カゴの設置、2)生息域の量的な改 善策として、河川横断構造物への石倉カゴ魚道の開発・ 設置およびコンクリート 3 面張農業用排水路への石倉カ ゴの設置と河川と農業用水路の接続改善のための石倉カ ゴ魚道の設置である。以下にそれぞれの取り組みの概要 とモニタリングについてのべる。 1)石倉カゴは伝統漁法「石倉漁」と伝統土木工法の「蛇 篭」にヒントを得て考案された。コンクリート護岸化さ れた場所の多くは汽水域であるため、カゴは錆びない素 材のポリエステルモノフィラメント亀甲網を用いた。カ ゴのサイズは 1.5 × 1.0 × 1.0 m で、底面にはモニタリン グ 用 の も じ 網( 目 合 い 2 mm) を 収 容 し た( 図 4-A)。 2013 年 8 月に鹿児島県枕崎市花渡川のコンクリート護岸 の汽水域に、径 20-40 cm 程度の石を詰めた石倉カゴを汽 図 4.鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会によるウナギ保全活動。 A:枕崎市花渡川のコンクリート護岸域に設置された石倉カゴ。 モニタリング時、モジ網でカゴを囲っている状態。 B:花渡川支流中州川の落差工に設置した石倉カゴ魚道。 C:出水市荘地区農業用排水路に設置中の石倉カゴ(2014 年 3 月)。 D:同工事完了時(同年 4 月)。矢印は石倉カゴ部を示す。
水域上部に 2 基、河口部に 2 基設置し、同年 9 月から月 1 回の頻度でモニタリングを実施した。その結果、シラ スウナギから銀ウナギに至る発育期のニホンウナギが石 倉カゴを利用することがわかった。また、カゴ内はウナ ギの餌となる魚類(ハゼ類等)、甲殻類(スジエビ類、テ ナガエビ類、カニ類)が生息し、またカゴ底面に敷いた 洗屈マットには多毛類(ゴカイ類)が多数みられた。 2)河川横断構造物の中には、ウナギやハゼ類にとって 遡上困難なものも存在する(安田ほか 2001)。ウナギの 生息域の拡大をめざし、上記石倉カゴと同じ網を筒状(幅 約 50 cm)に形成し、その中に径 10-15 cm ほどの石をい れたウナギ用簡易魚道を考案し、2014 年 4 月に花渡川支 流の中州川の落差工(高さ約 1.8 m)に設置した(図 B)。 設置後のモニタリングによって、クロコ∼小型の黄ウナ ギをはじめ、モクズガニ、テナガエビ類、ヌマエビ類の 遡上が確認された。本魚道は短時間で設置・撤去できる ので、ウナギの遡上時期にあわせた設置や台風シーズン には撤去するなど、柔軟な対応が可能である。 かつて、河川で結ばれた農業用水路や水田はウナギを はじめメダカ、ドジョウなどの魚類が生息する豊かな生 態 系 で あ っ た が、 そ の 環 境 は 失 わ れ つ つ あ る( 紀 平 1983;斉藤 1984)。2013 年 11 月、鹿児島県出水市荘地区 の農業用排水路が土水路から 3 面コンクリート張り水路 に改修されることになり、土水路時の環境をできるだけ 復元するためにコンクリート床に長さ 4 m、深さ 0.3 m の 溝を約 20 m 間隔で設け、そこに石倉カゴを設置した。設 置後、定期的に電気ショッカー等によるモニタリング調 査を実施した。設置後 1 年間のモニタリングではユスリ カ幼虫、ミミズ類、モクズガニ等の生息を多数確認したが、 ニホンウナギは確認できなかった。河川と排水路の接続 部の段差は 50 cm 程度であり、当初はウナギの遡上に大 きな問題はないと考えられたが、段差内に凹部があり、 これが遡上を阻んでいる可能性が示唆された。そこで、 段差に上記石倉カゴ魚道を設置し、2 ヶ月後のモニタリン グで排水路石倉カゴ部にニホンウナギの生息が確認された。 石倉カゴ等によるウナギ生息場所改善は 2014 年より水 産多面的機能発揮対策事業(水産庁)として採用され、 全国規模で展開されている。 ウナギの消費に関するパルシステム生活協同組合連合会 の取り組み (パルシステム生活協同組合連合会) パルシステム生活協同組合連合会(以下パルシステム) は首都圏を中心とした 1 都 9 県、10 の地域生協が加盟す る連合組織である。パルシステムは「心豊かなくらしと 共生の社会を創ります」という理念の下、その一例として、 みそづくり提案や飼料米を与えて飼育した「こめ豚」の 供給、サンゴの植え付けなどを行い、食文化の継承、自 給率の向上、環境保全の取り組みを行っている。 パルシステムは 2001 年から大隅地区養まん漁業協同組 合(以下大隅)のウナギを推奨している。その当時中国 産ウナギの産地偽装や指定外医薬品使用事件による消費 者の不安の声もあったが、安価な中国産が市場を席巻し ていた。大隅は、シラスウナギの池入れ以降は国内で一 貫製造しており、養殖池までトレースが可能という優位 点があるにもかかわらず、池に販売見込みが立たないウ ナギを抱え困窮していたため、国産ウナギの販促キャン ペーンをスタートさせた。 パルシステムは大隅が蒲焼きとして出荷する量の 3 割 のシェアを持つが、蒲焼に加工されるウナギは水揚げ全 体の 3 割ほどで、他は活鰻として生きた状態で出荷され るため、大隅の生産量全体のうちパルシステムが購入す る割合は 8%ほどであり、また価格は 2 尾 240 g で 2008 年は 1790 円、2013 年は 2,980 円と 1,000 円以上高くなっ たため、供給数量は如実に減少し、パルシステムにおけ る大隅産ウナギの取り扱いは、2011 年は約 198 t であっ たが、2013 年には約 117 t と 2 年間で約 40%減少した。 2013 年 2 月にはニホンウナギが環境省により絶滅危惧 種に指定されたことを受け(環境省 2013)、組合員から 不安の声があがり、有識者による学習会を開いて意見交 換を行い「ウナギを食べながら守る(資源・食文化・水 産業)」方針を固め、以下の活動に取り組んでいる。 1)組合員に伝える活動:全組合員に現状を正しく理解 してもらうため、2013 年より配送担当者の学習会を強化 した。例年の 1 泊 2 日の産地研修には新たに水産総合研 究センター(現水産研究・開発機構)の人工種苗生産の 取り組みを見学に取り入れた。その参加者およびパルシ ステム水産課を講師として、配送センターを回り 62 セン ター約 2,700 人の配送担当者を対象としたウナギの学習 会を実施した。配布するカタログやチラシにおいてもウ ナギの現状を伝える記事を掲載した。 2)資源を有効利用した商品作り:1 匹あたりの可食部 を増やして資源を有効利用するため、「大きく育てたウナ ギ蒲焼の商品化」を始めた。市場では通常、200 g ∼ 250 g 前後のウナギが販売されている。大きく育てると生産 に必要とされる時間と費用が増大し、商品は骨があたり やすく皮が固いというデメリットが生じるために、単価 が下がりやすい。加工の技術で 300 g 以上の大きい個体
ならではの味や食感を楽しんでもらえるように工夫した ウナギを、単価を下げずに販売することにしたところ、 2014 年製造 2 万パックは 2 ヶ月で完売しクレームがなか ったため、次年度は増産した。200 g で出荷する場合と比 較すると、同じ量の商品を得るために必要な個体数は 3 分の 2 にまで削減されることになる。 3)研究への支援:パルシステムでは大隅産商品 1 点を 組合員が購入するにつき 10 円を積立てるとともに、商品 利用でたまるポイントを組合員より寄付してもらう取り 組みで、2014 年には約 563 万円を支援金として集め、資 源回復事業に使用した。そのうちの一部は鹿児島県ウナ ギ資源増殖対策協議会に対し、ポスター・パンフレット などウナギの現状を伝える広報費用、ウナギが成育場と して利用する河川環境改善を目指した研究の費用として 寄付した。その中の石倉カゴ設置の取り組みは、水産多 面的機能発揮対策事業として全国展開されている。これ により、ウナギを知り大切に食べてもらい、取り組みに 賛同した消費者がウナギ資源回復のための支援金を送り、 ウナギ個体群回復を目指す研究を進める、という流れが 構築された。 パルシステムでは 140 万人の組合員を対象に、生産者 の思いやウナギの現状を伝える環境がある。また、環境 や資源を守るための方法を生産者と話し合い取り組むこ と、またその取り組みを支え続ける意志がある。生産者 を支え続けていくために、研究者の方には資源を持続的 に利用するための適正な消費量や、生産者や消費者とと もに実施できる資源保全の取り組み内容を一緒に考えて もらいたい。 ウェブ分析を用いた日本における保全と持続的利用のた めの取り組みの調査 (山岡未季) 現在、ニホンウナギの保全と持続的利用を目的として 行われている国内の取り組みの現状を把握することを目 的に、ニホンウナギが環境省により絶滅危惧 IB 類に区分 されたことが発表された 2013 年 2 月 1 日以降、2016 年 3 月 31 日までの間に日本で行われた取り組みの内容および 主体者を調査した。対象は、国内におけるニホンウナギ の保全や持続的利用を目的とした活動とし、より多くの 生物種が取り組みの目的に含まれている場合であっても、 「ニホンウナギ」または「ウナギ」の文言が目的に含まれ ている場合は対象とみなした。「オオウナギ」と明記され ているものは除外した。なお、この調査結果は本稿にお いて初めて公開される未発表のデータである。 情報収集には主に Web 検索を用い、補足として各都道 府県の漁業調整規則、日本養殖新聞の参照、および関係 者へのメールによる聞き取りを行った。Web 検索では、 環境省、国土交通省、水産庁、農林水産省の公式ホーム ページ、内閣府 NPO ホームページ、朝日新聞記事データ ベース(聞蔵 II ビジュアル)、農林水産技術会議および公 益財団法人日本環境協会のホームページのほか、国公私 立四年制大学(文部科学省認定されている全国の四年制 大学)、水族館(日本動物園水族館協会に登録されている 館)、各都道府県および各都道府県の水産試験場の公式ホ ームページを利用した。上記サイトのサイト内検索を利 用し、「うなぎ」「ウナギ」「鰻」の 3 語を入力して検索を 行なった。国立研究開発法人水産総合研究センター(現: 国立研究開発法人水産総合研究・教育機構)、および国公 私立四年制大学のうちサイト内検索が使用できなかった サイトについては、研究者一覧、教員一覧または教員研 究業績ページ、研究所のホームページを検索した。 収集した取り組みについて、件数と主体者を計数した。 取り組み件数は 1 つの取り組みにつき 1 件として計数し た。複数年行われているものは期間内の各年に 1 件ずつ 計数したが、開始年が不明なものについては、1 件とし て計数した。異なるタイプの取り組みが組み合わされて いる場合は、各タイプにつき 1 件として計数した。主体 者は 1 主体者につき 1 団体として計数した。 この結果、919 件の取り組み、392 団体の主体者を確認 できた。取り組み内容を「放流」(42.3%、389 件)、「漁 業管理」(22.4%、206 件)、「情報共有」(14.8%、136 件)、 「調査」(11.8%、108 件)、「生息場環境改善」(7.5%、69 件)、 「経済支援」(0.5%、5 件)、「資源管理」(0.2%、2 件)「流 通」(0.1%、1 件)、「その他」(0.3%、3 件)に分類した(図 5)。「放流」は各都道府県の内水面漁業協同組合が行なっ ている、漁業法で定められた増殖義務の履行を目的とし て行われているもの、その他各地で行われている放流活 動を含む。「漁業管理」は、採捕制限、漁業調整規則の制 定、漁獲自粛、シラスウナギ採捕監視などを含む。「情報 共有」は講演、シンポジウム、研修会、出張講座、ワー クショップ、セミナー、研究報告会、公開講座、模擬授業、 広報メディア(ポスター、新聞、機関紙、Web)での紹介、 博物館などで行われている特別企画展示などを含む。「調 査」はウナギの生態、養殖、資源管理、流通・市場、生 息環境、教育、その他(関連装置の開発、産卵行動解析 手法の検討、体内放射性セシウム測定)に関する調査を 含む。標識放流は「放流」ではなく「調査」に含めた。「生 息場環境改善」は、蛇篭・石倉・魚道、柴漬けの設置・
改良、川床耕耘・淵再生、石投入などを含む。「経済支援」 は、放流への出資、寄付などを含む。「資源管理」は、法 律の制定(池入れ量制限および養鰻業の届出制の導入) を含む。「流通」は、国産異種ウナギの調達見合わせのみ を含む。「その他」は、保護や資源管理を目的とした会の 設立などを含む。 主体者は「漁業協同組合等」(187 組合、47.7%)、「市 民活動団体」(53 団体、13.5%)、「行政機関」(51 団体、 13.0%)、「大学」(41 校、10.5%)、「事業者」(23 社、5.9%)、 「養鰻漁業協同組合」(10 組合、2.6%)、「水族館」(7 館、 1.8%)、「産官民協働組織」(6 団体、1.5%)、「小中高校」(5 校、1.3%)、「研究機関」(5 団体、1.3%)、「その他」(4 団体、1.0%)のいずれかに分類し計数した(図 6)。「漁 業協同組合」は全国および都道府県の内水面漁業協同組 合連合会、または各地の漁業協同組合。「市民活動団体」 は非営利活動をしていると推測される NGO。「行政機関」 は、各都道府県、水産庁、環境省、国土交通省。「大学」は、 文部科学省認定の国公私立四年制大学、短期大学。「事業 者」は、個人事業主、有限会社、株式会社。「水族館」は、 日本動物園水族館協会に登録されている各館。「養鰻漁業 協同組合」は、日本養鰻漁業協同組合連合会、各地の養 鰻漁業協同組合。「小中高校」は、各地の小学校、中学校、 高等学校。「産官民協働組織」は、官民もしくは産官民よ りなる協働組織。「研究機関」は国立研究開発法人水産総 合研究センター(現:国立研究開発法人水産研究・教育 機構)に所属する各施設、国立極地研究所。「その他」は、 農地利用組合、森林組合、博物館などを含む。 今回の調査で最も多く確認できた取り組み内容は「放 流」、「漁業管理」、「情報共有」であり、主体者は「漁業 協同組合等」、「大学」であった。これに対して、生息環 境の保全や回復を目的とした取り組み件数は限られてい た。今回の調査対象は取り組みの件数であり、今後、本 種の保全と持続的利用を目指した議論を進めるためには、 予算額など規模を評価できる調査や、内容の適切性に関 する調査などが行われる必要がある。
今後行うべき取り組みの方向
資源評価・管理の先行事例とウナギ資源研究への示唆 (黒田啓行) 海の憲法とも呼ばれる国連海洋法条約が 1994 年に発効 して以来、排他的経済水域の内外を問わず、水産資源の 持続的な管理が求められている。管理の手段としては、 大きく分けて、漁船の数や大きさ、漁期、漁場などを規 制する努力量規制と、漁獲できる量の上限(漁獲可能量: TAC)を定める漁獲量規制があるが、それらを組み合わ せて管理を実施するのが一般的になりつつある。どのよ うな管理方策をとるにせよ、適切な管理を行うために、 漁獲が資源に与える影響を評価し、資源が健全な状態に あるかどうかを判断すること、すなわち資源評価が重要 である。 世界のマグロ漁業や日本の沖合漁業など大規模な漁業 では、利用できる漁獲データ(漁獲量、努力量、CPUE など)や資源調査データ(分布量や加入量など)、生活史 の情報などが比較的豊富なため、それらに基づく資源評 価が行われる。資源評価で使われる数理モデルは、資源 量をベースとした簡便なモデルから、漁獲物の体長分布 などの詳細な情報を扱える高度なモデルまで、利用可能 なデータの量や質に応じて使い分けられる(黒田 2014)。 資源評価により、過去から現在にかけて資源量や漁獲死 亡率などが推定され、管理目標となる水準との比較など により、将来の TAC が決められるのが一般的である。管 理目標の一つとして、MSY(最大持続生産量)の実現が 挙げられるが、MSY の推定が難しい場合、それぞれの資 源や漁業の特性に応じて、目標が定められる。日本の主 要な沿岸資源の場合、科学者が実施する資源評価により 生物学的許容漁獲量(ABC)が定められ、さらに社会経 済学的要因を加味したうえで、TAC が水産庁により決め られる。かつては TAC が ABC を上回る事例も多かったが、 現在ではほとんどない。 ウナギの資源評価に関しては、これまでヨーロッパウ 図 5.ニホンウナギの保全と持続的利用を目的とした取り組み 919 件の内訳。ナギやアメリカウナギを対象とした研究があるが(De Leo and Gatto 1995;Fenske et al. 2011)、ニホンウナギで は限られていた。Tanaka(2014)はニホンウナギの先駆 的な解析事例として、1950 年代以降の東アジア各国の親 ウナギとシラスの漁獲量データ及び、日本の主要な湖や 漁業地域における CPUE データに基づき、年齢構成プロ ダクションモデルという比較的な簡便なモデルを用いて、 ニホンウナギの資源評価を行った。基準となる仮定(ベ ースケース)の下では、親ウナギの漁獲死亡率は 1990 年 代以降減少傾向にあり、それに伴い親ウナギの資源量は 近年増加傾向にある一方、シラスの漁獲死亡率は現在で も親ウナギよりかなり高いなどの結果が得られた。この 結果は現在問題視されているニホンウナギの減少と相反 する結果のように思えるが、自然死亡率の上昇や環境収 容力の低下といった人的影響や環境条件の経年的な変化 について、どのような仮定を置くかが鍵となっているよ うだ。Tanaka(2014)のベースケースではこれらの変化 は考慮されていないが、シラスの自然死亡率の上昇を想 定した感度分析では、資源量の大きな減少が推定されて いる。このことは、今後アジア各国での生息環境や漁業 の経年変化を定量的に把握することの重要性を示唆して いる(例えば Chen et al. 2014)。定量的な資源評価は資源 の現状把握だけでなく、減少要因の特定などにも活用で き、今後の管理施策を考えるうえでも重要な情報をもた 図 6.生態系を活用した防災減災の特性。 (a)グライインフラ・生態系インフラ・ハイブリッド(グレイインフラと生態系インフラの中間) の効果と経済性の比較 (b)河川の洪水対策のインフラ比較(効果・経済性・生物多様性や水利 用などへの副次機能)。The Royal Society(2014)を改変。
らすため、さらなる解析の進展が望まれる。 TAC を定める別のアプローチとして、近年注目されて いるのが管理方式(MP)の考え方である(黒田ほか 2015)。MP とは、資源量指数や資源調査結果などから予 め定められたアルゴリズムにより、将来の TAC を算定す る(多くの場合、簡便な)漁獲制御ルールのことである。 通常、徹底的なコンピュータシミューレーションにより、 管理方式の不確実性に対する頑健性を事前に検証する作 業が行われ、この検証過程は管理戦略評価(MSE)とも 呼ばれる。これにより、通常の資源評価を行うにはデー タや知見が不足している資源でも、不確実性に頑健な管 理を実施できる可能性が高まる。このアプローチはミナ ミマグロや日本の沿岸資源の管理に活かされつつある(市 野川ほか 2015)。ニホンウナギでも満足な資源評価が得 られるまで、このような MP のアプローチに基づく資源 管理を行うこともできるだろう。 現代の水産資源管理では、生物や漁業の情報の多寡に 応じて、資源評価手法や管理方策のツールは徐々に整い つつある。二ホンウナギの資源管理でも現状に合わせて 適切な評価や管理の手法を選択することが重要である。 淡水生態系の自然再生とウナギの関係 (吉田丈人) ウナギの生息場所として重要な淡水生態系は劣化の著 しい生態系であり、ウナギを含む多くの生物が絶滅危惧 となっている。地球上の主な脊椎動物(魚類を含む)の 個体数トレンドをまとめた Living Planet Index(LPI)の 最新版によると、1970 年を 1 としたときの 2010 年の LPI は、地球全体で 0.48 であり 52%の減少が見られている (WWF 2014)。このうち、淡水生態系では特に減少傾向 が著しく、陸上生態系や海洋生態系がどちらも 39%の減 少(LPI = 0.71)であるのに対して、実に 76%も減少(LPI = 0.34)している。淡水生態系は、陸上生態系や海洋生態 系に比べて、単位面積当たりの生物種数が格段に多い一 方で、絶滅の危機に瀕している生物種数も格段に多い (Strayer and Dudgeon 2010)。生物多様性の危機をもたら している原因は人間活動であり、生息地の改変、乱獲な ど過剰利用、侵略的外来種、過剰な水利用、富栄養化な どの汚染などが主な原因と考えられている(例えば、 Dudgeon et al. 2006; Strayer and Dudgeon 2010)。ウナギも、 個体数を減少させている多くの野生生物のうちの一種で ある。 ニホンウナギは、淡水生態系のなかでも最も栄養段階 が高い魚種の 1 つであり、例えば、福井県三方湖での安 定同位体分析から求められた栄養段階は最上位群に位置 している(富永ほか 未発表)。また、湖沼・河川・沿岸・ 外洋を大規模に回遊し、生育段階に応じて多くの異なる 生息環境を必要とする。そのため、ニホンウナギ個体群 の保全再生には、さまざまな水域環境において、十分な 餌資源が供給される多様で生産性の高い生態系が求めら れることになり、より困難な条件となっていると言える。 一方で、その幅広い生息環境や下位栄養段階の存在は、 ニホンウナギが、水域生態系におけるアンブレラ種 (Wilcox 1984、その種を保全することで、生物群集を構成 する他の多くの生物種の保全が実現するような種)など 指標種としての特徴を備えている可能性を示している(鷲 谷 2008)。また、伝統的な食文化など、人との関わりに 古い歴史があることから、淡水生態系の自然再生にとっ てシンボル的な魚種とも言える。例えば、福井県三方五 湖流域の地域社会では、ニホンウナギは、昔の水辺環境 を特徴づける生物として地域の人々の記憶に強く残って いる(「みんなの三方五湖マップ」、http://www.mikatagoko. jp、2015 年 8 月 9 日確認)。 淡水生態系は、人間活動のさまざまな影響を受ける一 方で、多くの生態系サービス(自然からの恩恵)を提供 しており、社会−生態系として一体のシステムと捉える ことが必要である。進行しつつある淡水生態系の劣化や その生物多様性の減少は、生態系サービスの減少を通し て人間の社会経済にも影響を与えることから、その保全 再生が国内外において重要な社会目標となっている。日 本においても、2010 年の生物多様性総合評価において、 陸水生態系における生物多様性の劣化が指摘されており、 生態系サービスの減少が懸念されている(環境省 2010)。 そのため、生物多様性の保全と持続可能な利用に関する 国の基本的な計画として、生物多様性国家戦略が 1995 年 より策定されている。現在はその第 5 版目となる「生物 多様性国家戦略 2012-2020」が定められ、さまざまな施策 や取組が進んでいる。 一方、日本の人口は、2008 年をピークに減少傾向には いっており、2050 年までには 1 億人を下回り、2080 年頃 にはピーク時人口の半分にまで減少すると予測されてい る(国立社会保障・人口問題研究所 2013)。また、人口 減少と同時に、少子化や高齢化も進行している。この人 口減少や少子高齢化は、里地里山的環境の管理や内水面 漁業に関わる人口の減少に特に顕著に表れており(国土 交通省 2011;水産庁 2014)、淡水生態系を含めた生態系 管理の担い手不足の危機をもたらしていて、今後さらに その危機が強まると予想される。さらには、高度経済成
長時代に整備された治水施設などのインフラは老朽化し つつあり、厳しい財政状況のもと、インフラの維持管理 や更新が問題となっている(国土交通省 2011)。このよ うな社会経済の情勢変化は、社会−生態系として一体で ある淡水生態系の管理や自然再生に大きく影響すると予 想される。 淡水環境における生態系・生物多様性の劣化と社会経 済の変化に対応した、自然との共生や環境と調和する淡 水生態系の持続的な管理が求められている。このうち、 治水利水と環境の調和は、淡水生態系を重要な生息場所 とするウナギにとっても大きな意義がある。近年、治水 を含む防災減災と持続的な生態系管理を両立させる方法 として、生態系を活用した防災減災(Ecosystem-based Disaster Risk Reduction, Eco-DRR)の役割が期待されてい る(Sudmeier-Rieux and Ash 2009)。生態系や生物多様性 のもつ働きを理解し活用するなかで、防災減災を含む幅 広い生態系サービスを利用しようとするものである。 淡水環境においては、洪水災害や降雨に起因する土砂 災害などの災害リスクが存在する。災害のリスクは、気 象条件などの「ハザード」と、土地利用などに左右され るハザードへの「曝露」と、ハザードに曝露したときの「脆 弱性」(建物の構造など)に依存して決まる(IPCC 2007; UNISDR 2009)。洪水や土砂崩れは、それだけでは生態学 的な撹乱であり災害ではないが、さまざまな人間活動が それらの撹乱に曝露されるところで、災害が発生する。 これまでの治水や治山の災害対策は、高度経済成長時代 の人口増加にともなってハザードへの曝露が増加したた め、それに対する脆弱性の排除を求めてきたとも言える。 一方、先に述べたように人口の減少や財務的な問題が進 むなか、また、気候変動によるハザードの増加が予測さ れるなか、従来と同じ考え方による防災減災では対応で きない状況が起こると予想される。 Eco-DRR は、防災減災の単一目的を特化するのではな く、生態系の多様な機能やサービスを活用することも目 的に入れて、生態系の持続的な管理を目指すものである。 Eco-DRR を実現する具体的な仕組みが、グリーンインフ ラや生態系インフラなどの生態系を活用したインフラス トラクチャーである(日本学術会議 2014;The Royal Society 2014)。Eco-DRR は、狭い意味での工学的なイン フラ(グレイインフラとも言われる)を利用した防災減 災に比較して、防災減災の単一機能では劣ることがある ものの、平時における多様な生態系サービスをもたらす という多機能性では優れていると評価されている(図 6)。 また、維持コストなど長期的なコストまで含めた経済性 についても、Eco-DRR の方が優れているという指摘もさ れている(図 6)。 河川や湖沼など淡水環境での防災減災対策が、従来の ようにウナギの生息環境の劣化をもたらすのではなく、 Eco-DRR が示す方向に転換していくことが、淡水生態系 におけるウナギの保全再生にも貢献することが期待され る。河川環境では、多自然川づくり基本指針(国土交通 省 2006)や中小河川に関する河道計画の技術基準(国土 交通省 2010)が定められ、自然環境の保全再生と治水と の両立の実現が模索されている。Eco-DRR に沿った淡水 環境の管理は、シンボルとしてのウナギの保全再生のみ ならず、淡水生態系の自然再生にとって大きな意義があ ると言える。
謝 辞
この論文は、2015 年 3 月に開催された日本生態学会第 62 回全国大会(鹿児島)におけるシンポジウム「生態学 と水産学の融合:生態学がウナギ資源のためにできること」 (シンポジウム S03)を基礎として作成された。日本生態 学会及び大会の運営にご尽力された方々に深く感謝する。引用文献
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