キーワード 実験教室,構造力学,橋梁模型制作
連絡先 〒400-8511 山梨県甲府市武田4-3-11 山梨大学大学院医学工学総合研究部 TEL055-220-8520
中高生にものつくりの楽しさを伝える
― 実験教室「構造物の形と強さ」について ―
山梨大学大学院 正会員 ○岡村 美好
1.はじめに
近年,我が国では科学技術創造立国の実現に向け て,科学技術・学術活動の基盤となる人材を養成・
確保するための様々な施策が講じられている 1).そ の一つとして,女子中高生の科学技術分野に対する 興味・関心を喚起し,理系への進路選択を支援する
「女子中高生理系選択支援事業」がある.
筆者はその事業の一環として数回の実験教室を開 催する機会を得た.実験は,いずれも
2
時間以内で,指定した紙材料と条件の範囲で参加者が好きな形状 の橋梁模型を製作して強度を競うものである.参加 者の感想はおおむね好評で,引率教諭等にも興味を 持ってもらうことができた.
本報告では,平成
19
年度「女子高校生夏の学校~科学・技術者のたまごたちへ~」(主催:文部科学省 他)で実施した実験教室「構造物の形と強さ」の概 要を紹介する.
2.「女子高校生夏の学校」とは
「女子高校生夏の学校」は,女子高校生が科学者・
技術者との対話や交流を通して科学分野に自分の新 しい可能性を見出すことを目的として,文部科学省,
(独)国立女性教育会館,男女共同参画学協会連絡 会,日本学術会議が主催団体,男女共同参画学協会 連絡会に加盟する約
40
の理工系学協会が後援団体と なって成17
年度より実施されている.土木学会は男女共同参画学協会連絡会にオブザー バー加盟していることから,平成
18
年より筆者が運 営スタッフとして参加し,実験教室や土木工学を紹 介するポスター展示,女性土木技術者による講演な どを行っている.平成
19
年度は8
月に2
泊3
日で実施され,理工系 分野に興味を持つ女子高校生約100
名が日本全国よ り集まった.2日目に11
の実験・実習プログラムが 用意され,参加者はその中から午前・午後に各1
つ計
2
つの実験・実習を選んで参加し,「構造物の形と 強さ」には17
名が参加した.3.実験教室の概要
実験内容は,ものをつくる楽しさを知ってもらう こと,構造力学の基礎を体感し日常目にする橋梁に 興味を持ってもらうことをすることを目的として構 成した.所要時間
2
時間で一般的な会議室を会場と することから,短時間で模型が作成でき簡単な載荷 実験ができることを条件に,紙で橋梁模型の製作を 行うこととした.実験指導は,筆者の他にティーチ ングアシスタント(TA)として大学生・大学院生3
名で行った.模型の作成と実験は4
名前後のグルー プで行い,参加者にはそれぞれワークシートを配布 して模型のスケッチや実験結果,感想などを記入し てもらった.実験教室の流れは以下のようである.
1)橋梁の紹介(10
分間):スライドを使っていくつかの形式の橋梁の写真を見せる.
2)実験1(30
分間):いくつかの簡単な断面のはり模型を作って載荷実験を行い,断面の厚さや形状 が橋梁の強度に及ぼす影響を体験する.
3)実験2(80
分):予備実験の結果についての解説と補剛材の説明をした後,強いと思う形状の橋梁 模型を製作して載荷実験を行って強度を競う.
模型の材料は,作業の容易さとある程度の強度が あるものとして工作用紙を用いた.工作用紙は大き
さは
30×40cm
で方眼が描かれているので,定規1
つで模型の要素を直接描くことができる.これをカ ッターとカッティングマットを使って切り出し,両 面テープを使用して接着して組み立てを行った.
3-1 実験1
板厚,幅,断面形状が異なる
6
種類の梁模型(表 -1)を作った.載荷実験前に作成した模型の強度を 各自が予想してから参加者自身が模型にボルト等のCS01-12 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)
-23-
重りを増加させ,重りが不安定になった時の荷重を 模型の強度とした(写真-2).
実験中に,紙の厚さや幅,断面形状と強度の関係,
断面の変形が強度に及ぼす影響等について
TA
が簡 単な解説をした.表-1 実験1で制作する模型
No. 模型寸法
1 2×17cmの長方形1枚 2 2×17cmの長方形2枚を接着 3 2×17cmの長方形3枚を接着 4 4×17cmの長方形1枚
5 4×17cmの長方形を各長辺から1cmの直線に沿
って折り曲げる
6 4×17cmの長方形を長辺に沿って1cm間隔に折
り曲げる
写真-1 実験1の様子
3-2 実験2
模型の条件は以下のとおりとした.
1)模型の大きさが長さ 30cm、幅 10cm
以内であれば,高さや断面の形状は自由でよい.
2)材料は大きさ 30×40cm
の工作用紙1
枚と両面テープだけとする.
また,制作に当たっては次の注意事項を伝えた.
1)模型のスケッチをワークシートに描く
2)工作用紙に橋の部品全ての展開図を描いてから,
カッターで切りだす.
3)両面テープを使って各部品を接着する.
4)工作用紙の厚みも考慮して精度よく仕上げる.
5)折り曲げ線にボールペン等で線をつけると,きれ いで正確に仕上がる.
制作作業では,イメージの具体化や模型のスケッ チから展開図を描くことが難しい場合が多く,これ らに対しては
TA
が相談相手になって支援した.載荷実験は,はりの中央に木片を置いてその上に 本を数冊ずつ載せ,本が不安定になった時の本と木
片の総重量
P
を模型の強度とした(写真-2).重りを 少しずつ増やしていく過程で参加者はかなり興奮す るが,TA
が模型の壊れ方やどうすればもっと強くな るのかなどを解説しながら実験を進めた.また,模型の重量
W
も測定してP/W
を計算し,少 ない材料で強い模型を作るにはどうすればいいのか についても考えてもらった.写真-2 実験2の様子
4.おわりに
実験後に回収したワークシートには,紙でも重い ものを支えられることの驚きや自分たちで考えたも のが形になる楽しさなどが書かれていた.実験終了 後のアンケートで実験内容を
4
段階で評価してもら ったところ,「非常に役に立った」と回答したのは参 加者17
人のうち15
人(88.2%),残りの2
名も「役 に立った」と回答しており,ものつくりの楽しさが 伝わったのではないかと考えている.また,実験を見学していた引率の高校教諭等から も非常に興味深かったこと,同様の実験を理科等の 授業の中で実施したいといったご意見をいただいた.
その一方で,初心者向けの参考書がなく,どうすれ ばいいのかわからないとのご意見も伺った.
本実験ではいくつかの文献 2),3)を参考にしたが,
土木系では初心者が体験として学ぶための参考書が 少ない印象を受けた.今後は,このような図書が充 実されれば,多くの方々が土木に興味を持つきっか けになるのではないだろうか.
参考文献
1)科学技術・学術関係人材の養成・確保について(文部科学 省HP):http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/index.htm 2)田中輝彦:CEレポート 土木の教室,土木学会誌,vol.90,
no.4,pp.38-41,2005年4月
3)日本建築学会:構造入門教材 初めて学ぶちからとかたち,
日本建築学会,2003年10月