実験を振 り返 り、方法を更新できる授業構造
‑第 5学年 「もののとけかた」を通 して‑
三井 寿哉
1
.課題意識( 1 )
仮説 をもっ ことの有用性実験の組み立てを子 どもが主体 となって組み立てることは困難である。 しか し、問題解決 を通 じた理解 は、子 ども自身が目的意識 をもって実験することが重要 と考 える。そのために、問題 をとらえ、予想 したことを検証す るために、 どのような実験 を行 えばよいか とい う視点を与 えることにした。本実践では子 どもたちに仮説 を明 ら かにすることで見通 しをもった実験 を行 えるよう支援 してい く。子 どもは実験の結果か ら、操作方法 を振 り返 り、
改善 してい くことで、 より正確な結果が得 られる思考面 と態度面 を育む。
( 2)
単元設定の理 由ものを水 に溶かす とい うことは、 日常での食事作 りや遊びな どで、子 どもだれ もが経験 してきている。 しか し
「溶かす」 とい うことは 「方法」であ り、溶 けたものが液体の中で どのよ うな変化が起 きているのかについては 様々なイ メージをもっているよ うである。また 「溶 ける
」
「混 じる」 といった現象の違いも混同 している子が多 い。そ こで、本単元では食塩水の溶 けて見 えな くなった食塩 の存在 に焦点を当て、予想 をもとに色々な実験方法 を子 どもが組み立てなが ら、水溶液の性質 について理解 を深める展開 とす る。2.
研究の視点 ・手立て( 1 )
「問題 をもたせ る場面」ものを水 に溶かす とい うことは、 日常での食事作 りや遊びな どで、子 どもだれ もが経験 してきている。 しか し
「溶かす
」
とい うことは 「方法 ・手段」であ り、溶 けた物が液体 の中で どう変化 しているのかについては様々な イメージをもっているようである。また 「溶 ける」
「混 じる」
といった現象の違いや言葉 の使い分 けも混同 して いる子が多い。そ こで、本単元では水溶液の溶 けた物 の状態 について考 えるところか ら学習 を始める。問題 をもつ場面 こそ、
問題解決学習の一連の過程 における要である。子 ども一人一人が問題 を兄いだせるよう、具体物の提示の仕方や 発間の仕方 に工夫 をもつ よう、教師が手立てをもって指導 にあたるよ うにする。
【問題 をもつ場面】‑手立て①
水 と食塩水 を比較 しなが ら観察 し、 自分の経験や知識 を基 に考 え、そ こか ら感 じた個々の疑問を他者 と話 し合 うことで、集団の問題 として捉 えることができる。
( 2 )
「予想 する場面」問題か ら自分の予想 を立てて観察 ・実験 を行な う過程 は定着 しつつある。その予想する (考 える)内容をより 具体化 してい くことが、深 く考える手立てにつながると本校理科部では仮定 している。そのために、予想をもと にした 「仮説」 をもたせ ることで、子 どもの観察 ・実験‑の目的意識 は一層深まることが期待できる。仮説 とは、
自分の予想か ら、検証するための方法 を考 え、その結果の予想までを考 えるもの とする。子 どもが導き出 してほ しい仮説の到達度 を予め教師側で立ててお くことが手立ての一つ と考 えた。
ー7 5 ‑
【仮説 をもたせ る場面】‑ヰ 立て② 考 えて到達 してほしい教師の基準例
⑳水 の中に食塩 があるとす るな らば、
(自分の予想)
◎水 の中に食塩 があるとす るな らば、
(自分 の予想)
ぶ んだけ重 くなってい るだろ う。
◎水 の中に食塩 があるとす るな らば、
(自分 の予想)
3.
授業の実際( 1 )
第5
学 年 ものの とけ方水 を蒸発 させ る と、食塩が出て くるだろ う。
(検証 の方法) (結果 の予想) 水溶液 の重 さを量 った ら、食塩 の重 さの
(検証 の方法) (結果 の予想)
顕微鏡 で水 を見た ら、水 と違 った物 が見 えるだろ う。
(検証 の方法) (結果 の予想)
( 2)
ね らい○生活経験な どをもとに物 の溶 け方 に興味 ・関心 をもち、予想 して計画的 に調べ、水温 と溶 ける限度 の量 の関係 について進 んで調べ よ うとす る。 (関心 ・意欲 ・態度)
○水溶液 の重 さや溶 け方 の規則性 を比較 を しなが ら兄いだす ことができる。 (科学的な思考)
○上皿 てんびんや メスシ リンダー、 ろ過装置、加熱装置 な どを安全 に正 しく使 うことがで きる。 (観察実験 の技 能 ・表現)
○溶 けていて も重 さが変わ らない こと、物が一定量 の水 に溶 ける量 には限 りがあること、温度 による溶 ける量 の ちがいを理解す ることができる。 (自然現象 についての知識 ・理解)
( 3)
授業 の分析 ・考 察 ‑①子 どもの実態
本学級 の子 どもは理科の学習が好 きである子が多 くみ られ、活動 も意欲的であるる。 これまでに観察実験 の方 法 を子 ども自身が組み立てる学習活動 を行 ってきた。 しか し、文章でま とめる場面や、革 し合いの仕方な ど、未 だ不十分 な点が見 られ、教師の支援が必要 とされ る段階である。
②指導計画
第
1
次 溶 けた物 のゆ くえ・食塩 を水 に溶か してみ よ う
・溶 けて見 えな くなった食塩 は、水 の中にあるのだろ うか
1
時間 (本実践)・ここまでの水 よ う液 の性質 をま とめてみ よ う 第
2
次 水 に溶 ける物 とその量 の関係第
3
次 温度 と物が溶 ける量 の関係③体感 を通 した予想の組み立て
本実践 では、まず、水 に食塩 を溶か して食塩水 をつ くる活動 を行なった。そ こか ら溶 けて見 えな くなった食塩 の行方 について考 えた。まずは体感で感 じた ことか ら予想が立て られ るよ う、具体物 に触れなが ら考 えられ る手 立てを組 んだ。体感か ら個々の考 えを引き出 した。
‑7 6‑
体 感 考 えた予想や疑 問
見 ため ・水 と変 わ らないので、塩 はな くな って しまったので は ?・量 が少 し増 えた よ うに見 えるか ら水 の 中 にあ るのでは ?
・体積 は水 と同 じに した ? におい ・水 と変 わ らない
④仮説 と検証方法 (実験方法)の組み立て
全員 の子 どもたちの予想 は、水の体積が増 えた こと観察か ら 「食塩 は食塩水の中に姿 を変 えて存在 している」
とい う考 えだった。それ を検証す る方法 について考 えた。子 どもたちはこれまでの生活経験で得 たことや既習 を 想起 しなが ら実験方法 を組み立てた。子 どもか らは
3
つの検証 (実験)の方法 を考 え、それぞれの仮説 を立てた。A.
重 さを量 る「ものの とけかた」 は小学校 での理科学習 の中で 「重 さ (質量)
」
について最 も深 く関わ る単元 といえる。重 さ (質量) の違 いか ら物 の存在 を確 かめることは最 も原始的な手段 である。本学年 は本来第3
学年 で学習す る「物 と重 さ」 の単元 を経験 していない。 よって、重 さに対 しての関心 は高い とは言 えない。溶 けた物 と質量 の関 係 については様々な概念 をもつ子がみ られた。
a:
食塩 が溶 けて見 えな くなつて も重 さは存在す る 30名b:
食塩 が溶 けて見 えな くなった ら重 さもな くなる 8名a
について回答 した子 の うち20
名(5
グループ)は、重 さについて調べ る検証方法 を提案 している。「溶 けて見 えな くなった食塩 が食塩水 の中にあるな らば、その食塩 のぶ んの重 さだけ増 えていれ ば、食塩 は存在 す るだろ う」 とい う仮説 を立てた。
B.
蒸発 させ る本学級 は第
4
学年時 に、実験用ガスコンロを用 いて、水 を蒸発 させ る実験 を行 っている。 この経験 を想起 しな が ら、16名 (4グループ)が蒸発 させて食塩 を取 り出す検証方法 を考 えた。「溶 けて見 えな くなった食塩 は、食塩水 の中にあるな らば、食塩水 を蒸発 させ ることで、食塩 が出て くるだろ う。」 とい う仮説 を立てた。
C.
顕微鏡 で観察す る顕微鏡 は、動物 の誕生で微生物 を見 る活動 で扱 っている。水溶液 は細か く見ても水 と変化が見 られない ことは、
水溶液 の性質 を知 る上で も子 どもにとって重要な要素 となる。本実践 では4名 (1グループ)が顕微鏡 で観察 す る 検証方法 を考 えた。 「溶 けて見 えな くなった食塩 が、食塩水 の中にあるな らば、顕微鏡 で細か く見た ときに水 と 違いが見 られ るだろ う。」 とい う仮説 を立てた。
‑7 7 ‑
⑤結果か ら実験 を振 り返る
子 ども自身が組 み立てた実験方法 は条件 が統一 されていない点 が見 られ たが、 まず は実験 を行わせ る ことに した。班 によっては実験 中に操作 の暖 味な点 に気づ き、修正や改善 を行 い、実験 を繰 り返 す姿が見 られた。重 さ を量 る実験 では、仮説通 りになった グルー プ と、仮説通 りにな らなかった グループがある。そ こで、情報交換す る場 を設 けた。
A.
重 さを量 るグループ【考 えた仮説 の通 りに結果が現れた グループの考察】
「水
5 0g
に食塩1 0g
を溶 か した。食塩 水 の重 さは60 g
にな った。 よって、食 塩水 の重 さは水5 0g
+食塩1 0g
‑食塩 水60
gと考 え られ るので、食塩 は溶 け て見 えな くな って も、存在 してい る と いえる。」【考 えた仮説 の通 りに結果が現れなかった グループの考察】
「水
1 00g
に食塩1 0g
を溶 か した。食 塩水 の重 さは1 1 8g
だ った。食塩水 の重 さが増 えた ことか ら、食塩 は溶 けて見 えな くな って も存在 してい る と考 え ら れ るが、 ど うして2 g
減少 して しま っ たのかがわか らない。」同 じ実験方法 を行なったグループ どうLで操作 を振 り返 った結果、仮説通 りに結果 が現れなかったグループは 食塩 の重 さを量 るときに薬包紙 の重 さが含 まれていた ことに気付 いた。再度実験 を行 った結果、仮説通 りの結果
を得 ることができた。振 り返 りには、具体物 を見なが ら話す ことで、 より詳細 な実験‑ と改善す ることがで きる。
本実践 では、実験 中に感 じた ことを声 に出す よ う指導 した。そのつぶや きが意見の基盤 とな り、明確 な結果‑ と 導 くことにつながると思われ る。
4.まとめ 川
成果子 どもが問題 に対す る仮説 を立てることで、実験方法 をすすんで組み立てる傾 向がみ られ る。 また、実験 をし なが ら修正 を行い、精度 の高い結果 を求める姿がみ られ る。
実験 中、感 じた ことを声 に出す ことを習慣化 させた ことで、 グループ全体が得 られた現象 をもとに話 し合 うこ とができ、子 どもたちはより詳細 な結果 を求 める気持 ちが芽生 え、 自身で実験方法 の修正 を行 う可能性が広 がる。
( 2)
課題実験 を繰 り返す ことで、子 どもは精度 の高 さに意識 が向きがちである。その結果、問題解決か ら離れた活動 と なって しま う恐れが見 られた。実験 の修正 を話 し合 う場面 において、本時の問題 と向き合いなが ら行 えるよ う細 かな手立てが必要 と考 えられ る。