蛍光顕微鏡法による核スペックルと核質における mRNA の動態解析
Dynamics of mRNAs in nuclear speckles and the nucleoplasm as revealed by fluorescence microscopy
2009 年 2 月
早稲田大学大学院 理工学研究科 生命理工学専攻 実験生物物理学研究
石浜 陽
2008年度 博士論文 石浜 陽
【目 次】
第 1 章 序論
1-1) はじめに ・・・・・ 3
1-2) 研究の背景 ・・・・・ 4
1-2-1) 真核生物の遺伝子発現
1-2-2) mRNAプロセシングと核外輸送
1-2-3) mRNAの核内運動
1-3) 本論文の概要 ・・・・・ 7
1-4) 略号の一覧 ・・・・・ 12
第 2 章 iFRAP 法を用いた生細胞の核スペックルにおける未成 熟 mRNA の動態解析
2-1) 序文 ・・・・・20
2-2) 実験手法の概要 ・・・・・25
2-3) 材料と方法 ・・・・・31
2-3-1) Cos7細胞の継代培養の方法
2-3-2) SF2/ASF-GFP遺伝子のトランスフェクション 2-3-3) 細胞培養液の交換
2-3-4) 蛍光標識mRNA及びOligo Nucleotidesの調製
2-3-5) マイクロインジェクションによる生細胞への試料導入
2-3-6) mRNAの局在と核外輸送速度の解析
2-3-7) RT-PCRによるmRNAスプライシングの解析 2-3-8) iFRAP実験
2-3-9) ATP枯渇実験
2-4) 実験結果 ・・・・・43
2-4-1) 生細胞核内に導入したpre-mRNAの局在
2-4-2) 導入pre-mRNAのスプライシング・核外輸送の評価
2-4-3) 核スペックル及び核質における pre-mRNA の解離速度
計測
2-4-4) ATP 枯渇条件下での核スペックルにおける pre-mRNA
の解離速度計測
2-4-5) スプライシング阻害変異体の核外輸送の評価
2-4-6) スプライシング阻害変異体の核スペックルからの解離
速度計測
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2-4-7) pre-mRNAのmulti-iFRAP実験 2-4-8) poly(A)+ RNAの核内局在
2-4-9) 核スペックル及び核質におけるpoly(A)+ RNAの解離速 度計測
2-4-10) poly(A)+ RNAのmulti-iFRAP実験
2-5) 考察 ・・・・・50
第 3 章 半導体量子ドットを用いた生細胞核内における mRNA の 1 分子運動解析
3-1) 序文 ・・・・・69
3-2) 材料と方法 ・・・・・73
3-2-1) QD標識mRNAの調製
3-2-2) H2B-GFP N1遺伝子のトランスフェクション 3-2-3) Oligo (U)22-QDの結合アッセイ
3-2-4) マイクロインジェクションによる生細胞への mRNA-QD の
導入
3-2-5) mRNA-QDの1粒子運動追跡
3-2-6) mRNA-QDとH2B-GFPの共焦点顕微鏡観察 3-2-7) mRNA-QDの1粒子運動解析
3-3) 実験結果と考察 ・・・・・81
3-3-1) mRNA-QDの調製と結合特異性の評価
3-3-2) QD及びmRNA-QDの1粒子運動観察 3-3-3) QD及びmRNA-QDの1粒子運動解析
3-3-4) mRNA-QDの運動領域とクロマチン領域の比較
第 4 章 総括
4-1) 本論文のまとめ ・・・・・96
4-2) 将来の展望 ・・・・・98
参考文献 ・・・・・99
研究業績 ・・・・・106
第 5 章 謝辞
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第 1 章 序論
1-1) はじめに
mRNA の核から細胞質への輸送は、真核生物の遺伝子発現において必要不可欠 な重要な過程である。しかし、この mRNA の核外輸送メカニズムについては未だ に不明な点が多い。高等真核生物では通常mRNA前駆体 (pre-mRNA)が細胞質に 輸送されることはなく、スプライシングを受け成熟mRNA (mature-mRNA)となる ことで初めて核外へ移行できるようになる。一方で、XIST RNAやomega-n RNA のように、細胞質に輸送されず核内に留まるRNA分子種も知られている。これら の事実は、mRNA のスプライシング反応と核外輸送が高度に選択的な過程である こと、そして mRNA のスプライシング反応と核外輸送に密接な関連があることを 示唆している。また、この輸送過程において、mRNA は不均一かつ高度に区画化 された核内構造と相互作用しながら細胞質へと移行している。このような核内構造 を介した遺伝子発現制御機構を解明するためには、生細胞内で直接観察により核内 構造が mRNA 分子動態に及ぼす影響について調べる必要がある。そこで本研究で は、mRNA の核外輸送過程を明らかにすることを目的として、プロセシングが未 完の未成熟mRNA、及び輸送可能な成熟mRNAの核内動態について、蛍光顕微鏡 解析を行った。特に、クロマチンと核スペックルという代表的な核内構造がmRNA の動態に与える影響について調べた。
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1-2) 研究の背景
1-2-1) 真核生物の遺伝子発現
真核生物では、遺伝情報を蓄えているDNAとその遺伝情報を基にタンパク質を 作るリボソームが存在する細胞質が核膜により区画されている。そのため、真核生 物の遺伝子発現では、遺伝情報を核から細胞質へと伝える必要がある。この伝達を 担う物質が mRNA である。核内で転写された mRNA は、キャップ構造やポリ A 配列の付加、及びスプライシング反応などのプロセシングを受けた後、核膜孔から 細胞質へと輸送される (図 1-1)。mRNA はこれらの過程で様々な制御を受けてお り、それらが積み重なって細胞の遺伝子発現が調節されている。そのため、遺伝子 発現の理解には遺伝情報の実体である mRNA 分子動態の理解が必要である。とり わけ、細胞核は転写及びmRNAプロセシングの場としての役割を果たし、mRNA はこの過程で核内微小環境の影響を受けることから、細胞核内における mRNA の 動態を明らかにすることが重要である。
細胞核内は、染色体DNAの分布密度の濃淡によりヘテロクロマチンとユークロ マチンに区別され、核内構造が均一でないことを象徴している。しかし、これらの 染色体DNAは無秩序に混ざり合っているのではなく、それぞれの染色体は大きさ や遺伝子密度といった要因に基づき、一定の領域にまとまって存在している。さら に、その下位構造として、直径200-500 nmの約1 Mb染色体の塊「クロマチン領 域」が存在する(Cremer and Cremer, 2001)。このようなクロマチン階層構造は核 内で機能する分子の動態に影響している。実際、核機能に重要なタンパク質のいく つかは核全体一様に分布しているのではなく、クロマチン領域の間隙「クロマチン 間領域」において点状、網状に集積しており (図 1-2)、クロマチン構造を基盤とす る核内高次構造が、転写やDNA修復・複製といった核機能の発現と密接な関連が
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あると考えられるようになってきた(Lamond and Spector, 2003)。核内は高度に区 画され、特定の反応が個別の場所で行われることに役立っていることが明らかとな りつつある。そこで本研究では、核内構造が mRNA のプロセシングと核内運動に 及ぼす影響を明らかにするため、細胞核内における mRNA 分子の動態を観察した (図1-3)。
1-2-2) mRNAプロセシングと核外輸送
まず、mRNA遺伝子発現過程の中でも、mRNAプロセシングと核外輸送機構に 着目した。真核生物では、遺伝子の多くがイントロンと呼ばれる遺伝情報を持たな い介在配列によって分断されており (図1-4)、スプライシングによるイントロンの 切り出しと両端エキソン配列の連結が遺伝子発現において必須の過程となってい る (図1-5, 6)。また、スプライス部位の選択にはバリエーションが存在し、遺伝子 発現の多様性を生み出す重要なプロセスと考えられている。実際、ヒトゲノム解析 により、全遺伝子のうち 40-60%が複数のスプライシングバリアントをもつと推定 された(Maniatis and Tasic, 2002)。スプライシングにおいては、エキソンとイント ロンが識別される必要があり、その境界は極めて厳密に定義されなければならない。
エキソンの認識を妨げる変異導入は多くの遺伝病を引き起こし(Cartegni et al., 2002)、一塩基置換が原因となる遺伝病のうち、15%がスプライシング異常を示す との報告もある(Krawczak et al., 1992)。遺伝子発現においては、正確にスプライ シングされた成熟mRNAが細胞質へ輸送される必要がある。これには、mRNA内 の調節配列と補助因子の関与や、転写とスプライシング反応の共役により達成され ると考えられてきた(図1-7、及び第二章序文)。しかし、転写部位を遊離したmRNA のスプライシングについては明らかでなかった。そこで、この過程を明らかにする ため、第二章においてイントロンを含んだ pre-mRNA の核内動態についてスプラ
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イシング因子の局在 (核スペックル)と比較して調べた。
1-2-3) mRNAの核内運動
転写部位を遊離した mRNA が核膜孔へ移動する機構も遺伝子発現に重要な過程 である。当初、転写されたmRNAがどのように核膜孔へと到達するかについては、
遺伝子近傍の核膜孔に直接輸送されるとする説 (gene gating model)が提案され (Blobel, 1985)、実際にin situ hybridizatioinによりmRNAが数μmのトラックと して観察されたことを受け、核フィラメント構造に沿った能動的な輸送プロセスと する考えが支持された。しかし、細胞を化学的に固定するin situ hybridizatioinに 変わり、生きたままの状態で mRNA の動態を解析する方法が開発され、この過程 が拡散運動であると考えられるようになってきた。mRNA の検出方法としては、
mRNAに相補的な蛍光標識核酸を用いる方法(Molenaar et al., 2004; Politz et al., 1998; Politz et al., 1999; Politz et al., 2006; Vargas et al., 2005)、RNA配列特異 的に結合する蛍光性タンパク質を用いる方法(Fusco et al., 2003; Shav-Tal et al., 2004)、直接蛍光標識したin vitro合成mRNAを細胞に導入する方法(Tadakuma et al., 2006; Tokunaga et al., 2006)がある。動態解析の方法としては、蛍光相関分光 法 (FCS)、蛍光退色回復法 (FRAP)、1粒子追跡 (SPT)などが行われた。しかし、
これらの研究により報告された拡散定数には 10-100 倍の違いがあり、核内構造の 影響が考えられた。つまり、観察の時間分解能や観察領域の違いにより、見かけの 拡散定数に違いが生じている可能性があった。この問題を克服し、核内構造 (クロ マチン構造)がmRNA動態に与える影響を直接検証するため、第三章において量子 ドット (QD)を用いた1粒子運動解析法を確立し、mRNAの動態を解析した。
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1-3) 本論文の概要
真核生物では、遺伝情報を蓄えている DNA とその遺伝情報を基にタンパク質を作るリ ボソームが存在する細胞質が核膜により区画されている。そのため、真核生物の遺伝子 発現では、遺伝情報が核から細胞質へと伝えられる必要がある。この伝達を担う物質が mRNAである。核内で転写されたmRNA は、キャップ構造やポリ A配列の付加、及びス プライシング反応などのプロセシングを受けた後、核膜孔を通って細胞質へと輸送される。
mRNA はこれらの過程で様々な制御を受けており、それらが積み重なって、細胞の遺伝 子発現が調節されている。本論文では、細胞の核内構造である核スペックルがスプライシ ング反応の厳密性に寄与する仕組みを明らかにすることを目的として、multi-iFRAP 法 (FRAP; Fluorescence Recovery After Photobleaching)と呼ばれる蛍光顕微鏡技術の開発 を行い、これを用いて核スペックルにおける mRNA の動態解析を行った。その結果、イン トロンを含んだまま転写部位から遊離した未成熟mRNAを正確にスプライシングするため の機構が明らかになった。また、半導体量子ドット (QD)を用いて mRNA を蛍光標識し、
核質における mRNA の運動を1分子解析した。その結果、mRNA がクロマチン間隙を、
制限されたブラウン運動する機構が明らかになった。本論文はこれらの研究成果をまとめ たものであり、全四章から構成されている。以下に各章ごとの概要を記す。
第一章「序論」では、本論文の研究対象である mRNA の核外輸送とプロセシングの分 子機構、及びそれらと細胞核内構造との関連について概説し、本論文の研究意義を述べ た。また、研究背景として細胞内における既存のmRNA分子動態解析法について概説し た。
第二章「iFRAP法を用いた生細胞の核スペックルにおける未成熟mRNAの動態解析」
では、蛍光退色を用いて生細胞内での分子動態を解析する技術、またそれを用いた未成 熟 mRNA の核内動態解析について述べた。真核生物の遺伝子は、介在配列イントロン
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によって分断されており、スプライシング反応によるイントロンの除去とエキソン配列の連結 が遺伝子発現に必須の過程である。スプライシングの多くは転写と共役して起こるが、ス プライシングの完了を待たずに転写部位から未成熟 mRNA が解離する場合もあることが 知られている。解離した未成熟mRNAを細胞質へと輸送させない制御機構が存在するも のと考えられるが、そのような転写後プロセシングと核内抑留の仕組みについては不明な 点が多い。筆者は、転写部位から遊離した未成熟 mRNA の細胞内運命を明らかにする ため、in vitro合成し、蛍光標識した未成熟mRNAをマイクロインジェクションにより生細胞 核内へ導入し、その動態を調べた。核内に導入した未成熟mRNAはスプライシングされ、
細胞質へと輸送 (時定数7分)されることを RT-PCR及び蛍光観察により確認した。また、
スプライシング因子ASF/SF2-GFPと局在を比較することにより、導入したmRNA前駆体は 核スペックルと呼ばれるスプライシング因子が豊富に存在するクロマチン間領域に局在す ることが明らかとなった。核スペックルにおける mRNA の動態を解析するため、iFRAP 法 を用いて mRNA が核スペックルから解離する速度を測定した。この際、細胞内の任意の 領域を退色させるための照明法としてDMD (Digital Micromirror Device)を導入した顕微 鏡システムを構築した。このシステムを用いることにより、局所領域外の全ての蛍光分子を 短時間で不可逆的に退色させ、領域内の非退色分子が領域から流出する過程を観察す ることが可能になった。解析の結果、核スペックルからのmRNA分子の流出には2成分が 検出され、それぞれの時定数は15秒と130秒で両者の分子数の割合はほぼ等しかった。
続いて、それぞれの過程を明らかにするため、azideとdeoxyglucoseによってATPを枯渇 させた条件下で実験を行った。すると、遅い流出のみがさらに遅くなったことから (130 秒
→560秒)、速い流出が拡散運動であること、遅い流出がATPを必要とする解離反応であ ることが明らかとなった。ATP枯渇条件において解離が遅くなったことは、何らかの酵素反 応の関与を示唆している。そこで、2種類のスプライシング反応阻害変異体mRNAを用い て同様の実験を行ったが、解離速度に変化は見られなかった。スプライシング反応と解離
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に関連が見られないことから、局在化した mRNA (或いはその一部)は未成熟なまま解離 したと考えられる。そこで、複数の核スペックルを残してその他の領域を退色させ、退色し た核スペックルと退色しない核スペックルの蛍光強度の変化を観察すると、核スペックル から解離したmRNA が再び別の核スペックルに局在する様子が観察された。以上のこと から、転写部位を解離した未成熟mRNAは核スペックルへと局在化し、核スペックル間を シャトルした後スプライシングを受け細胞質へと輸送されるものと考えられる。このような機 構は、未成熟mRNAを核スペックルに隔離することで転写部位におけるスプライシング反 応の阻害を防ぐ、或いはスプライシング因子濃度が高い核スペックルにおいてスプライシ ング反応を促進するなどの有意性が考えられ、核スペックルに分子シャペロン様の働きが あることを示唆している。細胞内在性の mRNA についても同様の現象がみられることを、
Cy3標識したpoly(U) 2’-O-methyl RNAを用いて内在性poly(A)+ RNAを可視化すること で確認した。内在性のpoly(A)+ RNAも核スペックルに局在し、同様の時定数で解離する こと、そして核スペックル間をシャトルすることが観察された。
第三章「半導体量子ドットを用いた生細胞核内におけるmRNA の1分子運動解析」で は、mRNA の蛍光標識法の改良と、その標識技術に基づいた 1 分子運動解析について 述べた。第二章で述べたように、mRNA の核外輸送は高度に選択的な過程であり、真核 生物の遺伝子発現に重要であることから、転写・プロセシング部位から遊離したmRNAが 核膜孔へと移動する機構については多くの研究がなされてきた。蛍光相関分光法、蛍光 退色回復法、1粒子追跡などの測定により、この過程が拡散によることが示されている。と りわけ1粒子追跡は、不均一な核内環境において分子動態を解析するのに有効であるが、
蛍光色素分子や蛍光タンパク質を用いた場合、退色が早いことや蛍光が微弱であるとい う欠点がある。そのため、観察時間が短く、時間・空間分解能に制約を受ける。そこで筆 者は、これらの問題を克服するため、in vitroで合成したmRNAをQDで標識した。mRNA
の 3’末端poly(A)配列を QDで標識するため、粒子表面にアミノ基を導入した QDと、配
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列末端にSH基を導入したpoly(U) 2’-O-methyl RNAをNHS-PEG-maleimideで架橋し た。架橋時に NHS-PEG-methyl を加えることで架橋比を確率的に調節し、未架橋の QD
は poly(A) DNA が結合した磁性ビーズを用いた精製により除去した。架橋した QD が
mRNAと配列特異的に結合することを、ゲルシフトアッセイ、及びpoly(A) DNAを用いた ガラス基板固定により確認した。このようにして調製したQD標識mRNA (mRNA-QD)を生 細胞の核内にマイクロインジェクションにより導入し、運動をリアルタイムで観察した。これ により、蛍光色素分子や蛍光タンパク質を用いた従来法に比べ、長時間の観察と、高い 時間・空間分解能での解析が可能となり、核内構造物とmRNAとの相互作用や、クロマチ ン間隙をmRNAが運動する機構を詳細に解析できるようになった。mRNAの核内動態の 観察に先立ち、QD の標識分子としての有効性を検証するため、QD 単体での核内動態 を評価した。核内にマイクロインジェクションにより導入した QD は、核小体以外の核質領 域に均一に分布した。1粒子観察では、核内構造物への吸着はまれであり (< 1%)、自由 に運動する粒子が観察された。2次元Gaussian fittingにより粒子位置を検出し、運動を解 析したところ、平均二乗変位 (MSD)は時間に比例し、QD の核内運動が自由拡散である ことが示された。見積もられた拡散定数は1.42 μm2/sであり、50% sucrose溶液中での測 定結果 (0.87 μm2/s)と比較すると、核内での拡散は水中の 1/13 程度であることが明らか になった。これは報告されているGFPやdextranでの測定 (~1/5)とやや異なり、QD粒 子 の 大 き さ の 影 響 が 考 え ら れ る。 続 い て 、mRNA-QD の 運 動 解 析 を 行 っ た 。
mRNA-QDの運動はQD単体に比べ非常に遅く、運動粒子のMSDを時間の関数として
プロットすると、直線では fitting されず、異常拡散であることが示された。ホップ様拡散の モデル式でフィッティングを行ったところ、微視的な拡散定数Dmicro = 0.12 μm2/s、巨視的 な拡散定数 DMACRO = 0.025 μm2/s、運動制限領域 L = 0.97 μm と見積もられた。
mRNA-QD の50% sucrose中での拡散定数は0.57 μm2/s と、QD単体とほぼ同じである にも関わらず、mRNA-QD の核内での拡散は Dmicroで水中の 1/100、DMACROでは 1/480
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と、非常に抑制されたものであった。mRNA の異常拡散の原因として、核内で微細構造を 構築しているクロマチンの影響が考えられるため、H2B-GFP の発現によりクロマチン構造 を可視化し、クロマチンと mRNA の運動との関係を詳細に調べた。H2B-GFP を発現して いる細胞をニッポウディスクタイプの共焦点顕微鏡で観察したところ、クロマチン分布の詳 細を捕らえることができた。続いて、mRNA-QD を H2B-GFP 発現細胞の核内に導入し、
運動解析を行った。90 秒間に検出した mRNA の軌跡をすべてトレースし、クロマチン構 造と比較したところ、運動軌跡はクロマチン密度が低い領域と一致しており、mRNA が主 にクロマチン間隙を運動していることが示された。さらに個々の運動粒子について 1 粒子 追跡を行ったところ、実際にクロマチン構造が障壁となり、mRNA の拡散運動の障害とな っていることが示された。
第四章「総括」では、本論文のまとめと今後の展望について述べた。
以上、本論文において筆者は、新たに開発した顕微鏡技術を用いて mRNA の核内動 態を詳細に解析した。その結果、核スペックルは未成熟の mRNA と結合することによりス プライシングが正確に終了する機会を増やしていることが明らかになった。また mRNA は クロマチン構造の間隙を、制限されたブラウン運動していることが明らかになった。
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1-4) 略号の一覧
・FCS : Fluorescence correlation spectroscopy; 蛍光相関分光法。
・FRAP : Fluorescence recovery after photobleaching; 蛍光退色回復法。
・iFRAP : inverse Fluorescence recovery after photobleaching。
・SPT : Single particle tracking; 1粒子追跡法。
・EJC : Exon-exon junction complex。
・PPT : Polypyrimidine tract。
・ftz : fushi tarazu。
・QD : Quantum dot; 量子ドット。
・GFP : Green fluorescent protein; 緑色蛍光タンパク質。
・in vitro : 試験管内などの生体内でない条件。
・in vivo : 生体内条件。
・S.W. : sterilized water; 滅菌水。
・MQ : Mili-Qシステム(日本ミリポア)により精製した超純水。
・PBS : Phosphate buffered saline。
・PEG : Polyethylene glycol。
・MSD : Mean square displacement; 平均二乗変位。
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図 1- 1 真核生物の遺伝子発現過程
真核生物では、遺伝情報を蓄えている DNA とその遺伝情報を基にタンパ ク質を作るリボソームが存在する細胞質が核膜により区画されている。その ため、真核生物の遺伝子発現では、遺伝情報が核から細胞質へ伝えられる必 要がある。この伝達を担う物質が mRNAである。核内で転写されたmRNA は、キャップ構造やポリA配列の付加、及びスプライシング反応などのプロ セシングを受けた後、核膜孔を通って細胞質へと輸送される。mRNAはこれ らの過程で様々な制御を受けており、それらが積み重なって、細胞の遺伝子 発現が調節されている。
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図 1- 2 核内構造 (クロマチン領域と核スペックル)
核内において、DNAはヒストンタンパク質などと複合体を形成することで、
複雑な「クロマチン領域」を形成している。図aはH2B-GFPを発現させた HeLa細胞の核。クロマチンが可視化されている (nuは核小体)。右下は拡大 図で微細なクロマチン構造が観察される(矢頭はほぐれたクロマチン)。クロマ チン構造は、核内で機能する分子動態に影響している。実際、核機能に重要 なタンパク質のいくつかは核全体に一様に分布しているのではなく、クロマ チン領域の間隙「クロマチン間領域」 (図a中のasterisks)において点状、網 状に集積している。図 b はクロマチン間領域に存在する構造体核スペックル をスプライシング因子SC-35の抗体で染色した像。核スペックルには複数の スプライシング因子が豊富に蓄積している。図 c は a と b を重ねた像 (緑; H2B-GFP, 赤; SC-35抗体染色)。T.Cremerand C. Cremer, (2001). Nat Rev Genetより引用。
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図 1- 3 本研究の概要図
核内構造を介した遺伝子発現制御機構を解明するためには、生細胞で直接 観察により核内構造が mRNA 分子動態に及ぼす影響について調べる必要が ある。本研究では、イントロンを含んだ未成熟mRNA (pre-mRNA)を核に保 持する機構と転写後スプライシング機構の解明 (図中1、及び第二章に記述)、 及び輸送可能な成熟 mRNA (mature-mRNA)の核膜孔への輸送過程の解明 (図中 2、及び第三章に記述)をそれぞれ目的として、未成熟 mRNA と成熟 mRNAの核内動態について蛍光顕微鏡解析を行った。
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図 1- 4 Human Genome
遺伝子をコードしている領域は全DNAの1.5%にすぎず、その遺伝子の数
は約22,000と予想されていたものより遥かに少ないことがわかった。遺伝子
の平均サイズは27,000塩基で、タンパク質をコードしている領域は平均145 塩基ずつ8.8個に分断されている。このことから、イントロンを切り出し、
コード配列を連結するmRNAスプライシング反応は、真核生物の遺伝子発現 において必須の過程となっている(Eichinger et al., 2005)。
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図 1- 5 mRNA splicing
スプライシング反応は2段階の反応を経て行なわれる。まず最初の段階で、
イントロンの 5’末端が 3’スプライス部位の上流にあるブランチポイント配列 に存在するアデニン塩基と結合し、イントロンラリアトとよばれる投げ縄状 の中間体を形成する。続く段階で、エキソンは連結され、イントロンが切り 出される。これらの反応自体はATPやタンパク質を必要とせずRNA単独で も起こりえるが、実際に生体内では多くのタンパク質が関与している。また、
この図では隣接する2つのエキソンが順次連結するように描かれているが、
実際には様々なバリエーションが存在しており、左を構成的スプライシング と呼ぶのに対して、右は選択的スプライシングと呼ばれ遺伝子発現に多様性 を与えている。
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図 1- 6 splicing反応経路
スプライシング反応は遺伝子発現に多様性を与える重要なプロセスである とともに、非常に厳密な制御下で行なわれていることが明らかになってきた。
スプライシング反応を起こす複合体の網羅的解析では、約300ものスプライ シング反応関連タンパク質が同定された。スプライシング反応は複雑な多段 階反応によって行なわれている。核抽出液を用いたin vitroスプライシング 反応系では、5段階の複合体形成を経てスプライシング反応が行われること が知られている。
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図 1- 7 スプライシング保存配列と多様なスプライス部位認識機構
上図は脊椎動物のスプライス部位の共通配列。共通配列の保存性は高等生 物になるに従い緩やかとなる。脊椎動物では、厳密に保存されているのは5’
と3’のスプライス部位の2塩基、イントロン内部のブランチポイントのアデ ニン塩基のみと少ない。また、3’スプライス部位の上流にはピリミジン塩基 に富んだピリミジントラクトと呼ばれる領域が存在する。緩やかに保存され た共通配列を補うかのように、正確なスプライス部位を認識するために役立 つ配列がエキソン内部にあることが近年明らかとなってきた (左下)。エキソ ン内部にあるスプライシング反応を促進するエンハンサー配列は、スプライ シング因子のSRタンパク質ファミリーの結合サイトになっている。スプラ イス部位のゆるやかな保存性を補う配列は、これ以外にも多くのものが発見 されており高等生物のスプライシング制御に深く関わっている。また、転写 とスプライシング反応の連携も重要である。右下のモデルではスプライシン グ反応因子はRNAポリメラーゼのC末端ドメイン (CTD)と結合し、ポリメ ラーゼの排出孔から出てくるエキソンと相互作用する。イントロンが巨大で ある場合、5’と3’のスプライシング部位が合成されるまでに何時間もかかる 場合があるが、このような仕組みによってエキソンをスキップすることなく 成熟mRNAを合成することができると考えられている(Maniatis and Reed, 2002; Maniatis and Tasic, 2002)。
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第 2 章 iFRAP 法を用いた生細胞の核スペックルにおける未成 熟 mRNA の動態解析
本章では、蛍光退色法を用いて生細胞内での分子動態を解析する技術、またそれ を用いた未成熟mRNAの核内動態解析について述べる。mRNAの細胞核内におけ る動態についてはこれまで多くの研究がなされてきたが、イントロン配列を含んだ
ままの pre-mRNA の動態については明らかでなかった。一般に、イントロン配列
を含んだままのpre-mRNAは細胞質へ輸送されず、選択的な輸送が行われている。
この制御機構に関わると考えられる「転写後プロセシング」と「核内構造」の関係 を明らかにすることを目的として、pre-mRNAを生細胞核内に導入し、その動態に ついて調べた。
2-1) 序文
真核生物の遺伝子は多くのイントロン配列によって分断されており (図1-4)、こ れらはスプライシング反応により除去される。細胞内において、その多くは転写と 共役して起こる反応であり、転写部位で行われる(Bauren and Wieslander, 1994;
Beyer and Osheim, 1988; Neugebauer and Roth, 1997)。(Custodio et al., 1999) によれば、スプライシング反応が完了するまで pre-mRNA は転写部位から解離せ ず、結果的にイントロンを含んだmRNAは細胞質へ輸送されないとされている (図 2-6)。転写部位におけるスプライシング反応の際には、スプライシングに必要な因子 は、核スペックルと呼ばれる核内ドメインからリン酸化制御のもと転写活性部位へ とリクルートされる(Huang and Spector, 1996; Misteli et al., 1997)。
核スペックルとは、mRNA プロセシング因子が豊富なクロマチン間領域に存在 する核内構造体である(Lamond and Spector, 2003; Misteli, 2000) (図 2-1)。核ス
20
2008年度 博士論文 石浜 陽
ペックルは、抗体染色による蛍光観察では複数の不揃いな斑点状に観察され、電子 顕微鏡下では直径 20-25 nm の顆粒状構造体 (IGCs; interchromatin granule clusters)の集まりとして観察される(Fakan, 1994)。核スペックルはダイナミック な構造体であり、その構成因子であるRNAやタンパク質は、核スペックルから転 写活性部位を含む他の核質領域と入れ替わっていることが観察されている(Huang and Spector, 1996; Misteli et al., 1997)。核内において、転写活性化遺伝子の多く が「核スペックル内」というよりは、「周囲」あるいは「離れて」存在する(Dirks et al., 1997; Wansink et al., 1993)ことから、核スペックルは転写/スプライシングの 主要な場ではないと考えられている。核スペックルは、mRNA プロセシング因子 の貯蔵、或いは会合の場であると考えられてきた。
しかし、in situ hybridizationにより、核スペックルにはプロセシング因子と共 に大量の poly(A)+ RNAが蓄積していることが示されている(Carter et al., 1993;
Carter et al., 1991; Huang et al., 1994; Molenaar et al., 2004)。蓄積したpoly(A)+ RNAの素性や役割については不明な点があるが、遺伝子をコードしたmRNAもま た、核スペックルに蓄積する証拠が挙げられている。 Epstein-Barr viral mRNA (Melčák et al., 2000)や紫外線照射により発現誘導した p21 mRNA (Hattinger et al., 2002)は 核 ス ペ ッ ク ル に 局 在 化 す る 。 さ ら に は 、 ス プ ラ イ シ ン グ 未 完 の
pre-mRNAが転写部位を解離して核スペックル内や近傍に蓄積することもある。特
定の内在性遺伝子から転写後、転写部位から遊離した pre-mRNA が核スペックル の周囲、或いは内部に局在化することが観察されている(Johnson et al., 2000;
Shopland et al., 2003; Shopland et al., 2002; Smith et al., 1999)。 これらの観察は、
上述した(Custodio et al., 1999)の結果と矛盾するが、mRNAの大量発現、或いは mRNA が多数のイントロンを含むような係留機構を飽和させる条件では、転写部 位 へ の 係 留 機 構 が 機 能 せ ず ス プ ラ イ シ ン グ の 完 了 を 待 た ず に 転 写 部 位 か ら
21
2008年度 博士論文 石浜 陽
pre-mRNA を放出してしまうこともあると考えられている(Misteli, 2000)。最近、
酵母においてはmRNAスプライシングの90 %以上が転写後スプライシングである との報告がされている(Tardiff et al., 2006)。哺乳類細胞においては、やはり転写と 共役したスプライシング因子のリクルートとスプライシングが報告されているが (Listerman et al., 2006)、この場合も転写反応とスプライシング反応は競合してお り、効率の良いスプライス部位においてもスプライシングは転写部位で完了するわ けではないことが示された。mRNAの核スペックルへの蓄積はmRNAの一般的な 性質かもしれない(Misteli, 2000)。
では、mRNA が核スペックルに蓄積することにどのような生理的な意義がある のだろうか。(Johnson et al., 2000)はスプライシング効率の低いイントロン、或い はスプライシング反応阻害を引き起こす変異導入が起きたイントロンを含む
COL1A1 pre-mRNAが、核スペックルに蓄積することを報告している。この結果は、
核スペックルがプロセシング因子の貯蔵、会合の場であることに加え、スプライシ ング未完の pre-mRNA を核内に抑留することに関与している可能性を示唆してい るが、その抑留機構については不明である。イントロンの除去が核スペックルから のmRNAの解離に影響する可能性が示唆される(Johnson et al., 2000)ことから、
我々はpre-mRNAとpoly(A)+ RNAの核スペックルにおける動態の測定が、その機 能を知るにあたり有効であると考えた。近年、mRNA や mRNA-タンパク質複合体 のイメージング技術が開発され、mRNA の核内動態については研究が進展した (Politz et al., 1998; Politz et al., 1999; Shav-Tal et al., 2004; Vargas et al., 2005) が、mRNA 動態におけるイントロン配列の影響については調べられていない。本 研究では、転写後スプライシング機構のモデルmRNAとして、イントロン1つと 2つのエキソンを含むftz pre-mRNAの部分配列を用いた。in vitroで合成、蛍光
標識したftz pre-mRNAをCos7細胞核内にマイクロインジェクションにより導入
22
2008年度 博士論文 石浜 陽
し、核スペックルへの蓄積と、とりわけ解離速度をinverse fluorescence recovery after photobleaching (iFRAP)により調べた。ATP枯渇実験により、核スペックル
からpre-mRNAが解離するのにATPが必要か調べた。また、2種類のスプライシ
ング反応変異mRNAを用いて、核スペックルへの蓄積と解離に、mRNAのスプラ イシング反応の活性が影響するか調べた。続いて、Cy3 で標識した 2’-O-methyl Oligo(U)22を用いて細胞内在性poly(A)+ RNAを可視化し、核スペックルからの解 離を同様に測定した。
23
2008年度 博士論文 石浜 陽
図 2- 1 核スペックルはスプライシング因子が豊富な核内ドメインである
核スペックルは、スプライシング因子抗体を用いた蛍光顕微鏡観察では、
クロマチン間領域に存在する不規則な斑点状の構造体として観察される (上 図; 緑)。一方、電子顕微鏡下では直径20-25 nmのインタークロマチン顆粒の 集まりとして観察される (下図; 矢頭が核スペックル、Nuは核小体)。転写が 活性化した遺伝子の多くは核スペックルの周囲、或いは離れて存在している ことから、核スペックルはスプライシング複合体の貯蔵/会合の場として機能 していると考えられている。Lamond, A. I. & Spector, D.L. (2003). Nat Rev Mol Cell Biolより引用。
24
2008年度 博士論文 石浜 陽
2-2) 実験手法の概要
細胞内で分子動態を計測する手法としては、蛍光分子の揺らぎを用いた蛍光相関 分光法 (fluorescence correlation spectroscopy; FCS)、蛍光分子の不可逆的な退色 を利用した蛍光退色回復法 (fluorescence recovery after photobleaching; FRAP)、
個々の分子を直接観察する1粒子運動追跡 (single particle tracking; SPT)などが ある。計測する分子運動の速さによって有効な測定手法は異なり、例えば、FCSは 水溶液中における単純拡散のような速い分子運動の計測に適しているが、構造物へ の結合・解離を伴うような遅い分子運動の計測には適していない。本研究対象であ る、核内構造物とmRNAの相互作用のような遅い現象の測定については、inverse FRAP (iFRAP)と呼ばれる FRAP から派生した手法が有効である(Dundr et al., 2002)。FRAPが、局所領域 (直径 1-2 μm 程度)に存在する蛍光分子を不可逆的に 退色させた後に、周辺の非退色分子が退色領域に流入してくる過程を測定するのに
対し、iFRAPでは、局所領域以外の全ての蛍光分子を退色させることにより領域内
の分子が流出する過程を直接観察する (図 2-2)。
本研究では iFRAP を行うのに必要な、細胞内の任意の領域を励起光で照射する 手段として、Digital micromirror device (DMD)を採用した (図 2-3)。用いたDMD
は1024 x 768の約80万個のミラーのアレイからなり、個々のミラーが± 12°に
傾斜することで、反射光の切り替えを可能にしている。この切り替えはミリ秒以下 で行えることから、iFRAPを行うには十分な応答速度である。このミラーデバイス を蛍光顕微鏡に組み込んだ (図2-4)。また、細胞観察を37℃で行う際にはステージ のドリフトが問題であったが、安定性の高いサーモプレート (INUG2-ONI, Tokai Hit Co., Japan)を使用することで改善した。実験により得られる局所領域内からの 非退色分子の流出に伴う蛍光強度減少はexponentialの減衰曲線で表すことができ、
解離過程に複数の成分が存在しても exponential の足し合わせとして記述できる
25
2008年度 博士論文 石浜 陽
(図 2-2)。実際、本研究においても、解離過程には拡散運動成分と結合状態からの
解離成分の2成分が検出されている。
また、本研究ではiFRAP法を拡張し、新規の分子動態解析法であるmulti-iFRAP 法を開発した。Multi-iFRAP法では、退色させずに残す領域を任意の形状で複数個 所にすることで、非退色領域から流出した分子の動態を追跡することを可能にして いる (図 2-5)。例えば、核スペックルから解離した蛍光標識mRNAを追跡する場 合、観察により取得した mRNA の核スペックルへの局在画像を蛍光強度で二値化 した後、座標変換により核内の全ての核スペックルに対応するマスク画像を作成し た。座標変換に用いる値はガラス基板に固定化した蛍光ビーズの画像より予め算出 したものを用いた。最終的に、このマスク画像中心に、直径約8 μmの円形の白抜 き画像を重ね合わせることで、核の直径の約半分に相当する円領域の核質と、円領 域周囲の核スペックルを除く核質を退色させるマスク画像を作成した。この画像を DMD から強い励起光で細胞核へ投影することで、核内の約半数の核スペックルを 退色させずに残すことができた (実験結果を参照)。この手法により、核スペックル から解離した mRNA が他の核スペックルに再結合することが確かめられ、
multi-iFRAPが、領域から流出した分子動態を追跡するのに有効であることが示さ
れた。この手法は、核スペックルという同種の領域間における分子の行き来だけで なく、異なる細胞内ドメイン間の分子の行き来を計測することもできる。将来的に は、異なる核内構造物への結合順序の解明や、再結合頻度の定量的な解析へと発展 することが期待される。
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2008年度 博士論文 石浜 陽
C e
t
f ( ) =
−koff t+ f ( t ) = Ae
−k1offt+ Be
−k2offt+ C
図 2- 2 iFRAP法の概念図
iFRAPでは、局所領域 (直径2 μm)以外の全ての蛍光分子を退色させ、退色
させずに残した領域内の分子が流出する過程を直接観察する。領域内の分子 の流出に伴う蛍光強度の減少はexponentialの減衰曲線で表すことができ、解 離に複数の成分が存在した場合は、exponentialの足し合わせとして記述する ことができる。
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2008年度 博士論文 石浜 陽
図 2- 3 Digital Micromirror Device (DMD)
Texas Instruments 社が開発したミラーデバイス。1024 x 768ピクセル = 約80万個のミラーがチップ上に配置されており、個々のミラーが±12°傾く ことで反射光のON/OFFを制御することができる (左; DMDミラーの構造)。 ミラーの切り替えはミリ秒以下で行うことができ、小型ビデオプロジェクタ ーなどにも使用される。使用する波長によってDMDウインドウの透過特性が 異 な り 、 今 回 は 可 視 光 用 の も の を 使 用 し た (右; Std Vis)。 図 はTexas Instruments 社のカタログより引用。
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2008年度 博士論文 石浜 陽
図 2- 4 DMDを導入したiFRAP蛍光顕微鏡システム
iFRAPでは、微小領域を除く全ての領域を強い励起光を照射させることで
蛍光退色させ、残った微小領域からの分子の流出速度を、蛍光強度の減少と して測定する。この目的のため、DMD を蛍光顕微鏡に導入した。左下は局 所領域外を照射することで文字を描画した例、及び局所領域のみを照射する ことで文字を描画した例である。
29
2008年度 博士論文 石浜 陽
30
① ② ③
2- 5 Multi-iFRAP法の概念図
核の直径の約半分に相当する円領域の核質と、円領域周囲の核スペックル ペックルのみを退色させず残す)。
ペ 図
①
を除く核質部分を退色 (約半数の核ス
②退色させた核スペックル領域の蛍光強度が回復する様子を観察する。
③解離したmRNAが核スペックルに再結合する場合、①で退色させた核ス ックルの蛍光が回復する。
2008年度 博士論文 石浜 陽
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2-3) 材料と方法
-3-1) Cos7細胞の継代培養の方法
胞の培養を行った。
培
odified Eagle Medium 450 mL
Solution
過 菌後 ℃で保 して
代方法:
エントになったら継代を行う (前回継代後3-4日)。
地、Phosphate buffered saline (PBS)、Trypsinを室温に戻す。
2.
ーターで古い培地を吸う。
吸う。
3.
.5 mg/mL)500 μLを加え、37℃で3 min放置。
2
下記の組成の培地を使用してCos7細 地組成:
Dulbecco’s M
Fetal Bovine Serum 50 mL 200 mM L-Glutamine 5 mL 100 mM MEM Sodium Pyruvate 5 mL 10 mM MEM Non-Essential Amino Acids 5 mL 2-Mercaptoethanol 0.5 mL 上記の組成の培地を濾 滅 、4 存 使用した。細胞培養は37℃、5% CO2
にて行った。
継
ほぼコンフル 1. 準備
1-1. 培
1-2. 腕をまくり、手を石鹸で洗い、70% ethanolで消毒。
PBSで洗う 2-1. アスピレ
2-2. PBS 10 mLを加え、アスピレーターで Trypsin処理
3-1. Trypsin (0
2008年度 博士論文 石浜 陽
32
3-2. 培地 10 mLを加え、細胞をはがす。
3-3. 細胞を遠沈管に移し、遠心 (190xg, 5 min)後、培地交換して撹拌。
4.
m2になるように細胞を新しいdish (培地 10 mL)に加える。
2-3-2) SF2/ASF-GFP遺伝子のトランスフェクション
of Healthより分与して 頂
u
。
e)にFugene6を3 μL加える。
30 min放置。
ド不含培地に交換して実験に使用。
-3-3) 細胞培養液の交換
ルレッドは蛍光での観察時にバックグランドノイズ に
ree DMEM (25 mM HEPES) (Gibco #21063-029) 450 mL 細胞分注
5×103 個/c
EGFP-SF2/ASF は (Tom Misteli, National Institutes
いた) pGFP-SF2/ASFからSF2/ASFをHind IIIとPst Iで切り出し pEGFP-C1 に組み込んだ。トランスフェクションの試薬としてF GENE6 (Roche Molecular Biochemicals, Mannheim, Germany)を使用した。トランスフェクションは継代の
20-24時間後に行った。
1. Fugene6を室温に戻す 2. DMEM 100 μL (serum fre
3. EGFP-SF2/ASF 0.1 μg、pcDNA6A 1.0 μgを加え、室温で 4. 培養培地中に加える。
5. 20 h後、フェノールレッ
2
培養液に含まれるフェノー
なることからトランスフェクションの 20 時間後に培地交換した。培養液の組成 を下に示す。
培地組成:
Phenol red-f
Fetal bovine serum 50 mL
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200 mM L-Glutamine 5 mL
Solution
-3-4) 蛍光標識mRNA及びOligo Nucleotidesの調製
NA を合成するため、
pG
100 mM MEM Sodium Pyruvate 5 mL
10 mM MEM Non-Essential Amino Acids 5 mL
2-Mercaptoethanol 0.5 mL
2
truncated ftz pre-mRNA、及び intron-less mature-mR
EM pre-ftzとpGEM mature-ftz (Mutsuhito Ohno, Kyoto Universityより分与 して頂いた)をPCR で増幅した。プライマーは、forward primer (ftz-PCR forward primer; 5'-CTGGC TTATC GAAAT TAATA CGAC TCA-3')、poly(A)40 を含む reverse primer (ftz-PCR reverse primer; 5'-TTTTT TTTTT TTTTT TTTTT TTTTT TTTTT TTTTT TTTTT AGATC TTGAT CTGCC TTTC-3')をそれぞれ用い た。
PCR反応 製
μL (50 ng)
30 pmol) 反応液の調
反応液組成:
Plasmid DNA 2 10 x PCR buffer 10 μL MgSO4 (25 mM) 4 μL Primer (forward) 3 μL (
Primer (reverse) 3 μL (30 pmol) dNTPs (2 mM each) 10 μL
KOD-plus 2 μL MQ 66 μL
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Total 100 μL
↓94℃ 2min
↓(94℃ 15 sec, 48℃ 30 sec, 68℃ 78 sec) x 29 cycles
PCI (フェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール)抽出
↓PCI抽出
min at R.T.
す
thanol沈殿
PCR反応溶液と等量のPCIを加える
↓vortex for 2 min
↓15,000 rpm for 5
↓supを別の新しいチューブに移
E
0 μL
10 μL (10% vol)
15 min at 4℃
mL加える
る
合成した ftz pre- and mature-DNAs を鋳型として、RiboMAX kit (P2180;
PCI抽出液 10
↓3 M sodium acetate
↓ethanol 250 μL (x 2.5 vol)
↓-20℃ 30 min
↓15,000 rpm for
↓supを捨て、80% ethanolを1
↓15,000 rpm for 5 min at 4℃
↓supを捨て、pelletを乾燥させ
↓MQ or TE 10-20 μLを加える
↓-20℃で保存
2008年度 博士論文 石浜 陽
35
Pr
c
omega)を用いて in vitro 転写反応により mRNA を合成した。転写反応の際、
mRNAの5’末端に apアナログを取り込ませるため m7GpppG (P1812; Promega) を使用書に従って用いた (cap analog:GTP ratio in the reaction mixture, 5:1)。 mRNAのin vitro転写
反応液の調製 反応液組成:
Template DNA (PCR product) 20 μL 3
μL加える
(Tris-SDS buffer)
スプライシング反応阻害変異体 5' ssAC mutated mRNA を作成するため、
Q
ATP, CTP, UTP (25 mM) 15 μL x GTP (25 mM) 1.2 μL m7GpppG Cap Analog (5 mM) 15 μL Enzyme Mix 20 μL 5 x Buffer 40 μL MQ 58.8 μL Total 200 μL
↓37℃ for 2 h-4 h
↓DNase (1 U/μL) 2
↓37℃ for 15 min
↓PCI抽出
↓Nickカラム
↓Ethanol沈殿
↓-20℃で保存
uikChange (Stratagene)を用いてpGEM pre-ftzに部位特異的変異導入した。こ
2008年度 博士論文 石浜 陽
36
の際、プライマーは変異導入部分を含むsense primer (5'-GGAGA CTTTG GCATC AGACA GGCAT CACAC ACGAT TAACA ACC-3')、 及 び antisense primer (5'-GGTTG TTAAT CGTGT GTGAT GCCTG TCTGA TGCCA AAGTC TCC-3')を 用いた。5’スプライス部位への変異導入はDNA sequencer (Genetic Analyzer; ABI PRISM)により確認した。5' ssAC mutated mRNAの鋳型は、変異導入したpGEM pre-ftzを ftz-PCR forward primer、及びftz-PCR reverse primerを用いてPCR で増幅して用いた。
Quik Change 準備:
template DNA (10 ng/μL)
00 ng/μL)
ed Pfu buffer 制
OBO)
rase reactionを行う。
5 μL
pete = 20 ng)
rimer
f. 0.2 mM)
as = 2.5 U)
primer forward&reverse (1
Pfu Turbo DNA Polymerase, 10 x clon 限酵素DpnI
dNTP mix (TOY Day 1:
Polyme 反応溶液:
10 x buffer
ds DNA tem 2 μL ( 100 ng/μL forward p 1.25 μL 100 ng/μL reverse promer 1.25 μL dNTP mix (2 mM each) 5 μL ( S.W. (sterilized water) 34.5 μL Pfu turbo DNA polymer e 1 μL (
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T
55℃ 60 sec, 68℃ 210 sec) x 18 cycles
U/μL)を加え、ピペッティング
ationを行う。
用いる。(XL-1 Blue/ XL-10 Goldなど)
℃ 45 sec
加え、37℃ 30 min
D
ーを複数(2~6個)つつき、LB培地 3 mLで37℃培養O/N。
D
して終了
スプライシング反応阻害変異体 Δ(exon1 & 5' 8nt intron) mutated mRNA は pG
otal 50 μL
↓95℃ 30 sec
↓(95℃ 30 sec,
↓on ice 2 min
↓DpnI 1 μL (10
↓37℃ 1 h
Transform
XL系のコンピテントセルを
反応溶液5 μLをコンピテントセル 50 μLに加える
↓on ice 30 min
↓heat schock 42
↓on ice 2 min
↓SOC 2倍量を
↓LB plateにまく37℃ O/N ay2:
コロニ ay3:
DNAを少量抽出
↓シークエンス確認
EM pre-ftzを鋳型として、T7 promoterと5' cap site guanineを含むforward primer (5'-ATCGA TTAAT ACGAC TCACT ATAGC ACACA CGATT AACAA C-'3)、及び ftz-PCR reverse primerを用いてPCRで増幅した。
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合成したmRNAはULYSIS Alexa Fluor 546 or 647 Nucleic acid Labeling kit (U
ルとなるoligo(A)18
はそれぞれ
2-3-5) マイクロインジェクションによる生細胞への試料導入
はmicroinjection bu
2-3-6) mRNAの局在と核外輸送速度の解析
RCA-ER; Hamamatsu Photonics) 21652 or U21660; Molecular Probes)でグアニンを共有結合により蛍光標識した。
未標識の蛍光分子はゲル濾過 (Chroma SPIN-100 DEPC-H2O; Clontech)により除 いた。蛍光分子及びmRNA の濃度はspectrofluorometer (FP6500; Jasco)を用い て測定した555 nm (for Alexa Fluor 546)、650 nm (for Alexa Fluor 647) 、260 nm の吸収によりそれぞれ算出した。本研究では、蛍光標識の影響を少なくするため、
平均2個以下の蛍光分子で標識したmRNAを実験に用いた。
5’末端をCy3標識した2’O-methyl oligo(U)22、及びコントロー
Sigma Genosysに委託合成したものを用いた。
蛍光標識したmRNA, 2’-O-methy ologo(U) 22或いはoligo(A) 18
ffer (80 mM KCl, 10 mM K2PO4, 4 mM NaCl, pH 7.2)で最終濃度2 μMに希釈 した。mRNA、及びoligo プローブのCos7細胞への導入はmicroneedle (Femtotips II; Eppendorf)を 装 着 し た injector (FemtoJet + Micromanipulator 5171;
Eppendorf)を用いた。蛍光標識mRNAは細胞核、oligo probesは細胞質にそれぞ れ導入した。細胞質に導入したoligo probes は1分以内に核へと移行した。インジ ェクション間隔は0.2 s、インジェクション圧及び定常圧は15 hPaに設定した。イ ンジェクションした細胞は位相差顕微鏡により観察し、傷害の大きい細胞は解析か ら除いた。
インジェクションした細胞は、CCDカメラ (O
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を
2-3-7) RT-PCRによるmRNAスプライシングの解析
回収し、RT-PCR により pr
T T
otal RNAの回収
搭載した倒立顕微鏡 (IX-70; Olympus)により観察した。試料及び対物レンズの 温度は、サーモプレート (INUG2-ONI, Tokai Hit Co., Japan)、及びレンズヒータ ー (MATS-LH, Tokai Hit Co.)を用いて37°Cに維持した。EGFPは青色固体レー ザー (30 mW, 488 nm Sapphire 488-30; Coherent)、Alexa Fluor 546及びCy3は 緑色固体レーザー (100 mW, 532 nm Compass 315M-100; Coherent)、Alexa Fluor 647はHe-Neレーザー (5 mW, 633 nm GLG5360; Showa Optronics Co., Ltd)でそ れぞれ励起した。レーザービームは油浸対物レンズ (PlanApo 60x, NA=1.4;
Olympus)により焦点面において直径約 200 μm にした。励起光強度は焦点面にお
い て 40 mW/mm2 で 観 察 し た 。 得 ら れ た 画 像 は AQUA-Lite (Hamamatsu Photonics)で解析した。この際、細胞外の領域を背景輝度として測定し、解析に用 いた。
インジェクションにより導入した mRNA を細胞から
e-mRNAとmature-mRNAの量比を解析した。2分間かけて約50細胞にmRNA を導入した後、任意の時間37°Cで維持した。細胞をPBSで3度洗い、total RNA をRneasy Mini Kit (QIAGEN)を用いて回収した。導入したmRNAの逆転写反応 はSuperScript III First Strand Synthesis System (Invitrogen)、及びpre-mRNA と mature-mRNA の 3' 末 端 に 相 補 的 な プ ラ イ マ ー (RT primer;
5'-TGGTATAGCGGG G ACGTCTG-3')を用いて行った。逆転写反応によって得ら れ た cDNA は プ ラ イ マ ー (RT primer 及 び PCR primer;
5'-GCAGAAGCTGAAGAATGGCG-3')でPCR増幅した。
T
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40
回収する細胞をPBSで洗浄する (2回)
3.5 μL
↓セルスクレーパーで細胞を集める。
し入れ (20回程度)して撹拌する。
0 μL加える。15k rpm 15 sec。
。
。15k rpm 1 min。
RT-PCR
↓2-Mercaptoethanol
Buffer RLT (RNA精製前の細胞溶解用buffer) 350 μL を予め調製し、細胞に加える。
↓1 mLシリンジと針 (23)で、試料を出
↓1.5 mLチューブに移し、80% ethanol 350 μLを加える。
↓スピンカラムに移す 15k rpm 15 sec。
↓フロースルーを捨て、Buffer RW1を70
↓新しいチューブに換え、Buffer RPE1を500 μL加える。15k rpm 15 sec
↓フロースルーを捨て、Buffer RPE1を500 μL加える。15k rpm 2 min。
↓新しいチューブに換え、15k rpm 1 min。
↓新しいチューブに換え、MQを30 μL加える
の調製
er 1 μL RT反応液
反応液組成:
2 μM RT prim
10 μM dNTPs 1 μL sample 1 μL MQ 7 μL Total 10 μL
↓65℃ for 5 min
↓on ice for 1 min
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下記の溶液を加える
2 μL
Rへ)
調製し、PCRを行う
℃ 30 sec, 68℃ 25 sec) x 29 cycles
-3-8) iFRAP実験
クロミラーデバイス (DMD Discovery; Texas Instruments) を
反応液組成:
10 x RT buffer
25 mM MgCl2 4 μL 0.1 M DTT 2 μL RNase O 1 μL RT enzyme 1 μL Total 10 μL
↓50℃ for 50 min
↓85℃ for 5 min
↓4℃ (2 μLをPC
2-2-4)と同様に反応液を
↓94℃ for 2 min
↓(94℃ 15 sec, 61
2
iFRAP実験にはマイ
導入した顕微鏡を用いた(Fukano et al., 2004)。短時間に強い励起光を照射する ことで、直径2 μmの微小領域を除く、全ての核領域に存在する蛍光を退色させた。
レーザービームは焦点面において直径約 25 μmで照射した。Cos 7細胞核の直径
は10-20 μmであり、細胞全体では50 μmを超えるため、細胞質全体を退色させる
ことはできなかった。励起光強度は観察時に2 W/mm2、退色時は100 W/mm2にし た。退色に要する時間は2 sで蛍光強度は照射時間0.5 sでタイムラプス観察した (2 s間隔で6画像⇒10 s間隔で9画像⇒20 s間隔で10画像を取得)。 蛍光画像は冷
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却CCDカメラ (iXonEM+; Andor)或いは CCDビデオカメラ (MC681SPD; Texas
Instruments)でS-VHS形式のビデオテープに録画し解析に使用した。核スペック
ルと核質の輝度は、それぞれ直径 2 μmの範囲をScion Image (Scion Corporation)、 及び Halcon image processor (MVTec Software GmbH)を用いて計測した。背景輝 度はインジェクションしていない細胞核を計測した。multi iFRAP実験では、核直 径の約半分に対応する円領域と周囲の核スペックルを除く核質領域を退色させた。
その後退色させた円領域内の核スペックルの蛍光が回復する過程を観察した。
iFRAPに用いたマスク画像はphotoshop (Adobe)により作成した。
2-3-9) ATP枯渇実験
おいては、細胞をあらかじめ10% fetal calf serumを含む フ
エネルギー枯渇実験に
ェノールレッド不含Leibovitz’s L15培地で培養し、10 mM sodium azide、及び 6 mM 2-deoxyglucoseを添加し20 min間37°Cで培養して実験に使用した。イン ジェクションは上記溶液条件下で10 min以内に行った。核外輸送はインジェクシ ョンの1、5、15、30 min後に観察した。iFRAP実験はインジェクションの15 min 後に行った。
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2-4) 実験結果
2-4-1) 生細胞核内に導入したpre-mRNAの局在
-導入したpre-mRNAは核スペックルへ局在したが、mature-mRNAは核小体以外 の核質領域に拡散して分布した
m7G cap及び40 ntのpoly(A)配列を付加した ftz pre-mRNA (2つのエキソンと イントロン1つを含む部分配列) (図 2-7)をin vitroで合成しAlexa Fluor 546で蛍 光標識した。約104分子のmRNAをCos7細胞の核内にインジェクションにより導 入した。導入直後、蛍光ftz pre-mRNAは核小体以外の核質全体に分布し、1分以 内に核内で斑点状に局在した (図 2-8 B). この斑点状の領域が核スペックルであ ることを確認するため、その構成因子であるSF2/ASFとGFPの融合タンパク質を 細胞に発現させ、局在を比較した。図 2-9 A に示すように、pre-mRNA と
SF2/ASF-GFPの局在は一致し、pre-mRNAが核スペックルに局在することが示さ
れた。一方、mature-mRNAでは局在が見られなかった。Alexa Fluor 647標識し たftz pre-mRNAとAlexa Fluor 546標識したmature-mRNAをco-injectionした ところ、pre-mRNA のみが核スペックルに局在し、mature-mRNA は核小体以外 の核質に拡散して分布した (図 2-9 B)。mRNAの導入量の影響が懸念されたため、
より低い導入量 (約 103 分子/核)でも実験を行ったが、同様に核スペックルへ局在 した。
2-4-2) 導入pre-mRNAのスプライシング・核外輸送の評価
-導入したpre-mRNAはスプライシングを受け、細胞質へ輸送された
インジェクションにより導入した蛍光標識 pre-mRNA が、細胞内でスプライシ ング反応を受けるか調べた。インジェクションした細胞からtotal RNAを3, 13, 30, 60, 120分後に回収し、RT-PCRによりpre-mRNAとmature-mRNAの量比を解
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析した。結果、pre-mRNAとspliced mRNA (mature-mRNA)に対応する増幅産物 が検出され (図 2-8 A)、約10分で導入したpre-mRNAの半分はスプライシングさ れることが判明した。続いて、導入した pre-mRNA の核外輸送について調べた。
mRNAを導入した細胞を 1, 5, 15, 30分後に観察したところ、核内の蛍光強度が緩 やかに減少していくのに対し、細胞質の輝度は増加していった (図 2-8 B)。核内の 輝度変化を図 2- 8Cに示す。輝度の減少は時定数7分のexponentialでフィッティ ングされ、これはpre-mRNAのスプライシング反応に要する時間と良く一致した。
続いてイントロン配列を含まない mature-mRNA の核外輸送について調べた。
Mature-mRNA は pre-mRNA とほぼ同様の速度で細胞質へと輸送された (図 2-8 C)。これらの結果はスプライシング反応と核外輸送に密接な連携が存在しないこと を示唆している。
2-4-3) 核スペックル及び核質におけるpre-mRNAの解離速度計測 -核スペックルに局在及び核質に拡散したpre-mRNAのiFRAP実験
pre-mRNAの核内動態を調べるため、核スペックルに局在、あるいは核質に拡散
する pre-mRNA の運動速度を iFRAP法により測定した。iFRAP では、微小領域
を除く全ての領域を強い励起光を照射させることで蛍光退色させ、残った微小領域 からの分子の流出速度を、蛍光強度の減少として測定する (図 2-2)。この目的のた め、1,024 x 768のマイクロミラーからなるDMD (Digital Micromirror Device)を 蛍光顕微鏡に導入した (図 2-3, 4)。約104 分子のmRNAをCos7細胞核内に導入 し2分後に実験を行った。退色させる前に、解析対象とする核スペックルを1つ選 び、強いレーザー光の照射によりそれ以外の領域を退色させた。核スペックル、及 びその近傍の核質の蛍光強度変化を図 2-10 A-B に示す。核スペックルにおける mRNA の蛍光強度変化は 2 つの exponential の和でフィッティングされ、時定数
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