くすりの歴史と薬剤師
薬剤師の誕生と医療へのかかわり
新潟薬科大学薬学部
杉原多公通
高大連携『医療・薬学』講座
神農/少名彦神・大国主神/ブラフマー イムホテプ/アスクレピオス『医神』
の登場 集団には『長老』(学識経験者)が存在 厳しい生活上のタブー(禁忌)の設定 集団を疫病から守ろうとする『予防』と『治療』の概念 『病気』は... 悪行に対する神からの戒めに対する罰・悪霊の祟り 『医療』は... 神に許しを請う(祈り)・悪霊の退散を願う(呪い)行為『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
医療・くすりの歴史
『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
神農
(中国神話) 古代中国神話に出てくる神 薬の根本を民に教えた 「百草の滋味を嘗め、一日にして 70の毒に遇いながら、人々の 病気治療に役立つ薬物を探し 求めた」 神農伝説のもとに集められた 多くの薬物の中から365品目をまとめたもの 『神農本草経』 紀元前 28世紀頃 紀元前 15世紀頃 ヒンドゥー教における三大最高神の一人 (他はシヴァ神、ヴィシュヌ神) 宇宙の根本原理であるブラフマンを人格神と して神格化したもの 深い眠りのまっただ中のような状態であった 宇宙に出現し、自らのエネルギーを振り絞っ て姿を現し、地・水・火・風・空の5元素となるも のを創りだしたブラフマー
(古代インド:Brahma・梵天)『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
薬師瑠璃光如来・大医王仏 玄奘訳「薬師瑠璃光如来本願功徳経」 義浄訳「薬師瑠璃光七佛本願功徳経」 に説かれている 無明の病を治す法薬を与える医薬の仏
薬師如来
(インド:大乗仏教) 紀元前 ?世紀頃『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
古代エジプト第3王朝 ジェセル王に仕えた宰相 ファラオの侍医 死後 「知恵、医術と魔法の神」 として神格化 史上初のピラミッドの設計家イムホテプ
(古代エジプト:Imhotep) 紀元前 17世紀『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
古代エジプトでは
『宗教』と『医療』が一体化!
アポロンとコロニスの子で 医学に精通したケンタウロスに師事 「死者を生き返らせることができた」 とか
アスクレピオス
(ギリシャ神話:Asklepios) 紀元前 ?世紀頃『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
世界保健機関(WHO)のマーク アスクレピオスの杖 古代ギリシアの医者 「医学の父」「医聖」「疫学の祖」 「自然治癒力を助けるのが 医術・治療の根本」 とし食療法が主体 医師の倫理性と客観性を重んじ、 「ヒポクラテスの誓い」 として現在まで受け継がれている 「人生は短く、技芸は長い 」ヒポクラテス
(ギリシャ哲学者・医師:Hippocrates) 紀元前 460年∼ 紀元前 377年『医療』と『宗教』を分化し、
『科学』として発展させる!
『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
ケリュケイオンの杖『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
医書・薬物書の歴史
エドウィン・スミス・パピルス
(Edwin Smith Papyrus:イムホテプ著(?):古代エジプト) 紀元前 17世紀 外科的医学書 外科的な48症例(外傷・脱臼等) 近代の治療法とほぼ同じ内容 頭蓋骨穿孔の症例もあり
エーベルス・パピルス
(Ebers Papyrus:古代エジプト) 紀元前 16世紀 内科的医学書 処方877例(12例は呪文を唱えると治る) 1世紀『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
マテリア・メディカ
(De Materia Medica:ディオスコリデス著:古代ローマ) 薬の世界のバイブル
薬草鑑定の最後の拠り所 植物の特徴や薬効によって分類
2世紀
『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
ガレノス
(ガレン:Galenos:古代ローマ) 実験医学の創始者 500余の論文を発表 薬を『特殊薬・毒薬・解毒薬』に3分類 使用されていた生薬を病気別に分類 『ガレノス製剤』と呼ばれる製剤を処方 (コールドクリームもその一つ) 薬を調合したり保管したりする場所を 『アポテック(欧では「薬局」の意)』 と命名 16世紀人体の構造に関する七つの書
(De humani corporis fabrica:ヴェザリウス著) 解剖書
死体解剖による人体の直接観察 ガレノスの誤りを200ヶ所訂正
『医療』と『宗教』の線引きが始まった時代
16世紀 解剖書 オランダ語版に訳されたものが 江戸初期に日本に輸入 和蘭流外科に影響
大外科学全集
(パレ著:フランス・ルネッサンス期)『医療』と『宗教』の線引きが始まった時代
中世
16世紀 ルネッサンス期には解剖学が発展 解剖にはメスやハサミが必要 解剖前に ハサミで体毛をカット医者と床屋が同一視!
血液は肝臓で作られ 各部位で消費されると 考えられていたが... 解剖によって 体内を循環している ことがわかる!『医療』と『宗教』の線引きが始まった時代
中世
紀元前 3世紀∼ 1世紀
『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
医学のみならず、易学、天候学、星座学、気学、 薬学、運命学と、広範な分野に及ぶ科学書 王冰(唐)によって編纂された改訂版が現存する最古のもの 道教の原典の一つ黄帝内経
(古代中国:前漢) 1世紀∼ 2世紀『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
神農伝説のもとに集められた多くの薬物の中から 365品目をまとめたもの 上薬・中薬・下薬の3つに分類神農本草経
(古代中国)『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
傷寒論
(古代中国:後漢) 3世紀 張仲景(張機)が編纂した伝統中国医学の古典 伝染性の病気に対する治療法が中心 病気を 太陽・陽明・少陽・太陰・少陰・厥陰の6つの時期にわけ、それ ぞれの病期に合った薬を処方することが特徴 再編纂時に一部は『金匱要略方論』として発刊『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
大同類衆方・医心方
(日本:平安時代) 9世紀 宮廷医・丹波康頼の著 大同類衆方は消失 医心方は現存する日本最古の医書 遣唐使の廃止により, 六朝・隋・唐時代の中国や朝鮮の医薬書から引用し、 医学全般にわたって説いた『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
医療関係者の歴史
医師・薬剤師・神官が同じ役を担っていた!
ハンムラビ法典(BC1700年頃)に、医制についても規則があり 紀元前 7世紀頃 ギリシャで医師組合が結成 紀元前 4世紀頃 ヒポクラティスが医学を科学として確立 10世紀∼ 11世紀『医療』と『宗教』の線引きが始まった時代
中世
錬金術が隆盛 不完全な金属を金に変える術 不老長寿薬・万能薬を作る学問 科学者である薬剤師という職業の独立へ発展した 1016年 独立した専門の薬剤師と薬局が誕生(ローマ) 1240年 薬事制度に関する法律制定(フリードリッヒ2世:シシリー) 医薬分業と薬事監視 17世紀 専売薬(パテント・メデシン)が出現(イギリス) 1806年 ジェンナー(Jenner)の種痘法の発見[予防医学] 1880年 パスツール(Pasteur)のワクチン法の発見[予防医学] 1928年 フレミング(Fleming)のペニシリンの発見[抗生物質]『医療』の確立と発展の時代
近世
雑 談
『くすり』
は英語で...
『
medicine』
『
drug』
『
pharmaceutical』
ラテン語のmederi
(治す)が語源となり,medicina
(くすり)から変化dry
に関係 もともとは乾燥物(くすり)を包んだ容器を意味していた ギリシャ語のpharmakon
(くすり)が語源雑 談
『薬剤師』
は英語で...
『
druggist』
『
pharmacist』
そして
『
chemist
』
!?
錬金術は『金』を作り出す『術』. 『賢者の石』ができれば 「万物を『金』に変えたり、『不老不死』が得られる」ことから
錬金術= 『賢者の石』の作成
と考える一派がでてくる. 『賢者の石』の作成にはいろいろな薬品を混ぜ合わせたりし、これらの薬品の中には『くす り』として用いられていたものや『毒』として用いられていたものがあったことか ら、alchemy
の専門家であるalchemist、chemist は「薬品を取扱う人」
という意味を持ち、薬品を取扱う専門家である『薬剤師』という訳があてられた.chemist
は『化学者』.chemistry
(化学)に由来する.chemistry
の語源はalchemy
(錬金術). アラビア語の定冠詞al
と「金属を変容させる」意であるchemy
からなる.雑 談
『
chemist
(
薬剤師
)
』は,様々な元素・分子を発見した!
ダニエル・ラザフォード (Daniel Rutherford) 1772年,窒素を発見 カール・ヴィルヘルム・シェーレ(Karl Wilhelm Scheele) 1771年,酸素を発見
『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
日本における医療の歴史
414年 新羅から金武が来日、天皇の持病を治す[朝鮮医学との出合い] 飛鳥時代 459年 高麗から徳来が来日、帰化して代々難波の薬師に 593年 聖徳太子が難波に四天王寺を建立、境内に施薬院・療病院 718年 養老律令・医疾令 唐の制度の模倣、医療は国営、医師は官職名で代々世襲 奈良時代 753年 唐から鑑真が来日、唐招提寺を開寺、「鑑真秘方」の伝承『医療』と『宗教』が分化されていない時代
古代
808年 『大同類聚方』編纂、日本初の公定薬局方 平安時代 984年 丹波康頼『医心方』編纂、内用850種・外用70種の薬物記載 1302年 梶原性全『頓医抄』編纂、和気・丹波の古典医学・宋医学の融合 鎌倉時代 開業医の誕生 田代三喜(漢方医学の祖)、明で金元医学(李朱医学)を学んで帰国 室町時代 1549年 ザビエル来日、天主教(キリスト教)の布教に病院・診療所を設立 戦国時代『医療』と『宗教』の線引きが始まった時代
中世
近世
1602年 林道春が李時珍(明)の『本草綱目』を家康に献上 江戸時代『医療』の確立と発展の時代
1708年 貝原益軒が『大和本草』編纂 1722年 吉宗が小石川養生所を設立 1689年 薬種問屋「きぐすりや」が大阪と江戸に誕生 1735年 青木昆陽が『蕃薯考』を編纂 1774年 前野良沢,杉田玄白が『解体新書』を編纂 1860年 幕府が官立の種痘所を東京・神田に設置(東大医学部の前身) 1861年 官立種痘所を西洋医学所に改称明治時代