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1 輸液とは

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Academic year: 2021

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Ⅱ章 背景知識

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輸液の定義

 輸液とは,液体を皮下・血管内・腹腔内などに投与することと定義されるが,一 般的には経静脈的すなわち血管より輸液剤を点滴することである。また,一般に注 入量が 50 mL 未満のものを注射液,注入量が 50 mL 以上のものを輸液として区分し ている。したがって,皮下注射や筋肉内注射と同様に静脈内への注入であっても薬 液が 50 mL 未満の場合には静脈注射と称し,50 mL 以上の薬液を注入する場合を輸 液あるいは輸液療法*1とよぶ。

2

輸液の種類と適応

 輸液療法を効果的に行うには,輸液の適応となる病態を十分把握することが肝要 である。輸液の適応は輸液ルートによっても異なる。以下に輸液の主な適応を記す。

(1)末梢静脈法

 ①水・電解質を中心とした点滴

 ②末梢静脈栄養法(peripheral parenteral nutrition;PPN)

 ③血管確保*2

(2)中心静脈法

 ①中心静脈栄養法(total parenteral nutrition;TPN)*3  ②末梢静脈ルートの確保困難

 ③血管炎を生じやすい薬剤の投与ルート

 高カロリー輸液(10%を超える糖質濃度の維持輸液)に用いられる高濃度の糖質 を含有する輸液剤を除けば,ほとんどの製剤は末梢静脈からの投与が可能である。

実際の臨床の現場では 12.5%の糖質を含有する維持輸液を末梢静脈より投与する場 合もあるが,一般的には糖質濃度 12%の維持輸液が中心静脈より高カロリー輸液開 始液として投与されているので,高カロリー輸液の定義を 10%を超える糖質濃度の 維持輸液とした。

 したがって,簡便かつ安全に実施できる末梢静脈法は広い適応を有する。

 また,一般に栄養療法*4は経口摂取が困難か難しい場合,あるいは経口摂取のみ では十分な栄養補給ができない場合に実施される。この栄養療法には投与経路に よって,経腸栄養法(enteral nutrition)と経静脈栄養法(parenteral nutrition)が ある(図 1)。輸液による栄養管理法は経静脈栄養法と称し,その投与経路によっ て,①末梢静脈栄養法(PPN)と,②中心静脈栄養法(TPN)に大別される。これ らの一般的な選択法も図 2に示すが,その根本的な考え方は,できる限り消化管を 用いた経口・経腸栄養の実施を推奨している。また経静脈栄養法では,できる限り 安全な PPN を推奨しており,TPN は最終的な手段としている(図 2)。一般的な経 静脈栄養法の適応には,表 1に示すように,絶対的適応と相対的適応がある。

*1:輸液療法

体内の内部環境を維持するた めに主として経静脈的に水・

電解質・糖質・脂肪・蛋白(ア ミノ酸)・ビタミン・微量元素 などを投与する治療法であ り,体液の恒常性の保持と栄 養の維持を目的に行われる。

*2:血管確保

緊急時に治療用注射剤などを 直ちに静脈注射できるよう に,あらかじめ血管にカテー テルを挿入して点滴をしてお くこと。同義語:ルート確保,

(ルート)キープ

*3〔注釈〕

輸液の用語として IVH(intra- venous hyper—alimentation)

という言葉が用いられている が,これはいわゆる造語であ り国際的には通用しないため,

本書では,中心静脈栄養をTPN

(total parenteral nutrition)と 記載する。

*4:栄養療法

栄養療法とは,医学的な見地 に立ち,人間の生理機能や代 謝を考慮に入れ,摂取する食 品・栄養素などの組み合わせ と,人類の長い歴史のなかで 経験上得ることができた,食 養生の知識を含めた,数多く の手法を用いて,健康への回 復・維持を目的としたもので ある。これは,ある特定の栄 養補助食品(サプリメント)

や栄養素の摂取だけで,病気 に対処したり,予防を行った りすることを意味するのでは なく,生活習慣を含め,複合 的に対処しなければならない ことを意味している。

1 輸液とは

Ⅱ章 背景知識

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17 1輸液とは

Ⅱ章  背景知識 図 1 栄養療法

PTEG(percutaneous trans esophageal gastrotubing):経皮経食道胃管挿入術 PEG(percutaneous endoscopic gastrostomy):経皮内視鏡的胃瘻造設術 PEJ(percutaneous endoscopic jejunostomy):経皮内視鏡的空腸瘻造設術

図 2 栄養管理法の選択

〔日本静脈経腸栄養学会・NST プロジェクト実行委員会・東口髙志 編,NST プロジェクト・

ガイドライン,医歯薬出版,2001,より一部改変〕

経静脈栄養法(PN)

栄養管理法

経腸栄養法(EN)

経口栄養法

経鼻法

経鼻胃管法

経鼻十二指腸・空腸法 経瘻孔法 食道瘻(PTEG)を含む

経胃空腸瘻(PEJ)を含む 空腸瘻

胃瘻(PEG)を含む 経管栄養法

(Parenteral Nutrition)

(Enteral Nutrition)

末梢静脈栄養法(PPN)

中心静脈栄養法(TPN)

(Peripheral Parenteral Nutrition)

(Total Parenteral Nutrition)

栄養障害患者 消化管は安全に使用できるか?

経腸栄養法(EN)

期間は?

6週未満

経鼻胃管法 胃瘻・腸瘻 末梢静脈栄養法(PPN) 中心静脈栄養法(TPN)

2週未満

6週以上 2週以上

期間は?

経静脈栄養法(PN)

Yes No

(3)

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Ⅱ章 背景知識

3

輸液の禁忌

 輸液の実施が禁忌となる場合は,基本的に注射自体の禁忌と同様であり,経口・

経消化管的に薬剤や栄養剤の投与が可能で,かつ十分な効果が得られる場合や,不 穏状態にて輸液の手技や維持が危険な場合である。詳細な禁忌を以下に記すが,生 命の維持を目的として絶対的に輸液が必要な状態では,禁忌は存在しない。

(1)十分な経口・経消化管的投与が可能

 絶対的な禁忌ではないが,生理学ならびに医療安全管理上では回避すべきことで ある。

(2)輸液経路の確保に伴う出血傾向

 病態として出血傾向があり,輸液ルートの確保によって出血を来す可能性がある 場合。ただし,症例の状態や治療上の優先判断によっては,ときに出血を覚悟して 実施しなければならないこともある。

(3)輸液行為が危険な場合

 小児や高齢者,精神・神経障害を有する症例では,輸液行為が不安をあおり,状 態を悪化させる場合や,患者に損傷を加えてしまう可能性がある場合において,持 続的な投与を避けるか実施を断念せざるをえないこともある。

表 1 経静脈栄養法の適応 絶対的適応

 1)十分な経口・経腸栄養が施行できない場合:

   ①消化管閉塞,②消化管穿孔や縫合不全による腹膜炎,③短腸症候群,④口腔・頸部疾患,

⑤嚥下障害,⑥消化管出血

 2)経口・経腸栄養施行が治療上好ましくない場合:

   ①消化管周術期,②消化管縫合不全,③消化管瘻,④膵液瘻,⑤炎症性腸疾患,⑥急性膵 炎,⑦乳児(難治性)下痢症

相対的適応

   ①術前低栄養症例,②術後栄養状態の回復遅延,③重症熱傷,④悪性腫瘍に対する放射線・

化学療法,⑤臓器障害,⑥消化吸収不良症候群,⑦蛋白漏出性胃腸症,⑧神経性食欲不振 症,⑨摂食障害,⑩不十分な経口・経腸栄養

図 2 栄養管理法の選択 〔日本静脈経腸栄養学会・NST プロジェクト実行委員会・東口髙志 編,NST プロジェクト・ ガイドライン,医歯薬出版,2001,より一部改変〕経静脈栄養法(PN)栄養管理法経腸栄養法(EN)経口栄養法経鼻法経鼻胃管法経鼻十二指腸・空腸法経瘻孔法食道瘻(PTEG)を含む経胃空腸瘻(PEJ)を含む空腸瘻胃瘻(PEG)を含む経管栄養法(Parenteral Nutrition)(Enteral Nutrition)末梢静脈栄養法(PPN)中心静脈栄養法(TPN)(Peripheral 

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