日機連20高度化-10
平成20年度
鉄鋼用希少金属原料の未利用資源からの リサイクル技術に関する基盤的調査報告書
平成21年3月
社団法人 日本機械工業連合会 神 鋼 リ サ ー チ 株式会社
この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。
http://ringring-keirin.jp/
序
我 が 国 機 械 工 業 に お け る 技 術 開 発 は 、戦 後 、既 存 技 術 の 改 良 改 善 に 注 力 す る こ と か ら 始 ま り 、や が て 独 自 の 技 術・製 品 開 発 へ と 進 化 し 、近 年 で は 、科 学 分 野 に も 多 大 な 実 績 を あ げ る ま で に な っ て き て お り ま す 。
し か し な が ら 世 界 的 な メ ガ コ ン ペ テ ィ シ ョ ン の 進 展 に 伴 い 、中 国 を 始 め と す る ア ジ ア 近 隣 諸 国 の 工 業 化 の 進 展 と 技 術 レ ベ ル の 向 上 、さ ら に は ロ シ ア 、イ ン ド な ど B R I C s 諸 国 の 追 い 上 げ が め ざ ま し い 中 で 、我 が 国 機 械 工 業 は 生 産 拠 点 の 海 外 移 転 に よ る 空 洞 化 問 題 が 進 み 、技 術・も の づ く り 立 国 を 標 榜 す る 我 が 国 の 産 業 技 術 力 の 弱 体 化 な ど 将 来 に 対 す る 懸 念 が 台 頭 し て き て お り ま す 。 こ れ ら の 国 内 外 の 動 向 に 起 因 す る 諸 課 題 に 加 え 、環 境 問 題 、少 子 高 齢 化 社 会 対 策 等 、 今 後 解 決 を 迫 ら れ る 課 題 も 山 積 し て お り 、 こ の 課 題 の 解 決 に 向 け て 、 従 来 に も 増 し て ま す ま す 技 術 開 発 に 対 す る 期 待 は 高 ま っ て お り 、機 械 業 界 を あ げ て 取 り 組 む 必 要 に 迫 ら れ て お り ま す 。
こ れ か ら の グ ロ ー バ ル な 技 術 開 発 競 争 の 中 で 、我 が 国 が 勝 ち 残 っ て ゆ く た め に は こ の 力 を さ ら に 発 展 さ せ て 、新 し い コ ン セ プ ト の 提 唱 や ブ レ ー ク ス ル ー に つ な が る 独 創 的 な 成 果 を 挙 げ 、世 界 を リ ー ド す る 技 術 大 国 を 目 指 し て ゆ く 必 要 が あ り ま す 。幸 い 機 械 工 業 の 各 企 業 に お け る 研 究 開 発 、技 術 開 発 に か け る 意 気 込 み に か げ り は な く 、方 向 を 見 極 め 、ね ら い を 定 め た 開 発 に よ り 、今 後 大 き な 成 果 に つ な が る も の と 確 信 い た し て お り ま す 。
こ う し た 背 景 に 鑑 み 、弊 会 で は 機 械 工 業 に 係 わ る 技 術 開 発 動 向 調 査 等 の テ ー マ の 一 つ と し て 神 鋼 リ サ ー チ 株 式 会 社 に「 鉄 鋼 用 希 少 金 属 原 料 の 未 利 用 資 源 か ら の リ サ イ ク ル 技 術 に 関 す る 基 盤 的 調 査 」を 調 査 委 託 い た し ま し た 。本 報 告 書 は 、 こ の 研 究 成 果 で あ り 、 関 係 各 位 の ご 参 考 に 寄 与 す れ ば 幸 甚 で す 。
平 成 2 1 年 3 月
社 団 法 人 日 本 機 械 工 業 連 合 会 会 長 金 井 務
はしがき
機械製造に不可欠な素材として、鉄鋼材料分野ではこれまでに種々の用途に対応して高 機能化に向けた材料開発を進めてきた。主原料の鉄鉱石やコークスのほかに、バナジウム、
モリブデンなどの希少金属の添加により、高抗張力鋼、高速度鋼、耐熱鋼、ステンレス鋼 などの鋼種が生産され、自動車、宇宙・航空、原子力、各種プラントなどの機械製造分野 において素材・部材に利用されている。ところが、最近の金属資源を巡る国際的な動きを みると、すなわち経済発展著しい中国等の旺盛な原材料調達等による資源高騰や資源メジ ャーによる資源の囲い込みにより、また我が国が資源供給を大きく依存する資源国が輸出 抑制措置を発動した場合でも、資源安定供給に対する重大な制約を生じる可能性が高い状 況にある。バナジウムについては南ア、中国、ロシアに集中し、モリブデンについては多 くが銅の副産物として生産され、かつ米、中国、チリに集中しているために、必ずしも安 定した供給体制にあるとは言えず、経済成長に必要な資源の安定確保は、喫緊の課題とな っている。
このような中で、未利用資源の利用が注目されている。バナジウム源としては原油高騰 で注目されているオイルコークス、オリノコタール、オイルサンドの燃焼から今後大量に 発生する燃焼灰や重油燃焼灰の有効活用が、またモリブデン源としては銅製錬スラグや各 種潤滑剤などの有効活用が考えられる。これらの未利用資源が利用できれば、鉄鋼製品、
とりわけ特殊鋼の生産に不可欠なバナジウム、モリブデンの新たな資源の確保につながり、
我が国の資源安定供給に貢献するとともに、新たな鉱石を採掘する必要がなくなることか ら、CO2削減にも貢献できる。ところが、これまでバナジウムやモリブデンに関して未利用 資源中の潜在性、また活用を図るための技術的課題等について明らかにされていない。
本調査事業は、バナジウム、モリブデンが含まれている廃棄物等未利用資源を鉄鋼用原 料としてリサイクルするための課題を抽出し評価することによって、機械製造に不可欠な 鉄鋼生産における廃棄物系希少金属資源の有効活用の促進に資するために実施したもので ある。
ここに本報告書を作成するにあたり、ご指導を賜った経済産業省並びに社団法人日本機 械工業連合会に深く感謝の意を表すとともに、調査研究を遂行する上で助言・提言を頂い た調査検討委員会の日野委員長をはじめ委員各位及び関係者に厚く御礼を申し上げるもの である。
本報告書が関係方面に十分活用されて、我が国の産業の発展に寄与することを願う次第 である。
平成21年3月
神鋼リサーチ 株式会社 代表取締役社長 大友 朗紀
「鉄鋼用希少金属原料の未利用資源からのリサイクル技術に関する基盤的調査検討委員会」
委員名簿
<委員会>
委員長 日野光兀 東北大学大学院工学研究科・工学部金属フロンティア工学専攻 教授 委 員 長坂徹也 東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻 教授
委 員 原田幸明 独立行政法人物質・材料研究機構材料ラボ ラボ長
委 員 岡部 徹 東京大学生産技術研究所 循環資源・材料プロセス工学研究室 教授 委 員 三木貴博 東北大学大学院工学研究科・工学部金属フロンティア工学専攻 准教授 委 員 金丸守賀 株式会社神戸製鋼所技術開発本部開発企画部 担当部長
委 員 坂本浩一 株式会社神戸製鋼所技術開発本部材料研究所精錬凝固研究室 室長
<オブザーバー>
永山純弘 経済産業省製造産業局 鉄鋼課製鉄企画室 課長補佐 杉浦孝志 経済産業省製造産業局 鉄鋼課製鉄企画室 技術係長 松本麻子 経済産業省製造産業局 鉄鋼課製鉄企画室 調査係長
<事務局>
北浦伸幸 神鋼リサーチ(株)産業技術情報センター
持続型社会システム研究グループ 主席研究員(GL) 菊地 茂 同 同 上席主任研究員 出口航一 同 同 主任研究員 久保道子 同 同 研究員
<委員会の開催>
第1回 平成20年12月25日 10:00~12:00 鉄鋼会館 706 号室 第2回 平成21年 1月26日 10:00~12:00 鉄鋼会館 804 号室 第3回 平成21年 3月10日 15:00~17:00 鉄鋼会館 705 号室
目次
第1章 本調査研究の狙い
1.1 鉄鋼用希少金属に関する最近の動向··· 1
1.2 政府主導による鉱物資源の安定供給確保··· 1
1.3 本調査研究の狙い··· 2
第2章 リサイクルの現状と課題 2.1 モリブデン··· 4
2.1.1 モリブデンの主な用途··· 4
2.1.2 モリブデンの供給と消費の現状··· 5
2.1.3 リサイクルの現状と課題··· 20
2.2 バナジウム··· 28
2.2.1 バナジウムの主な用途··· 28
2.2.2 バナジウムの供給と消費の現状··· 29
2.2.3 リサイクルの現状と課題··· 38
第3章 未利用資源とその利用における技術課題 3.1 モリブデン··· 45
3.1.1 未利用資源の現状··· 45
3.1.2 未利用資源の利用における技術課題··· 55
3.2 バナジウム··· 57
3.2.1 未利用資源の現状··· 57
3.2.2 未利用資源の利用における技術課題··· 68
第4章 調査検討委員会からの提言 4.1 モリブデン··· 90
4.2 バナジウム··· 91
1
第1章 本調査研究の狙い
1.1 鉄鋼用希少金属に関する最近の動向
モリブデン、バナジウムといった主に鉄鋼用に用いられている希少金属をはじめ、
その他のクロム、ニッケル、コバルト、タングステン、マンガンを含めた、いわゆる レアメタルといわれる金属は、一般に希少性や偏在性が強く、加えて、ベースメタル 等の副産物として産出される場合が多いという特殊性があり、主産物であるベースメ タルの生産動向や、生産国の輸出政策、主要生産施設の状況等の影響を大きく受ける。
○ 近年、多くのレアメタル価格は高騰し、直近では下落傾向にあるものの、引き続 き高水準。
○ レアメタルの供給は少数の資源国に集中。
○ 中国の展開(外資による採掘禁止、輸出税の引き上げ、輸出許可数量の削減等、
国内資源の囲い込み・輸出抑制)など供給国側の政策の影響を受けやすい。
1.2 政府主導による鉱物資源の安定供給確保
我が国においては、鉱物資源の探鉱・開発、リサイクルの推進、代替材料等の開発、
レアメタル備蓄等により、中長期的かつ持続的に鉱物資源の安定供給の確保を図って いる。
<探鉱開発の推進>
激化する資源獲得競争の中で、資源確保に向けた多面的・総合的な対策を実施。
<リサイクルの推進>
技術開発により、国内で収集された使用済製品等に含有する非鉄金属の回収率向 表 1.1-1 資源(鉱石)の上位産出国(2007年)
2 上を促進。
<代替材料等の開発>
希少金属の使用量低減技術及び希少金属の機能を代替する新材料の開発を実施。
<レアメタル備蓄>
官民協調によるレアメタル備蓄について、備蓄物資の機動的な保有・売却を実施。
備蓄対象7鉱種:ニッケル、クロム、モリブデン、マンガン、タングステン、
コバルト、バナジウム
平成18年度
情報収集事業報告書 第15号
1.3 本調査研究の狙い
総合資源エネルギー調査会鉱業分科会レアメタル対策部会において、各種希少金属 の備蓄状況が調査され、2007年7月31日に「今後のレアメタルの安定供給対策につい て」の調査結果が報告された。報告書中の備蓄7鉱種の供給安定性の評価において、
備蓄積み増しの優先度が示されている(表1.1-2参照)。この中で、優先度が高く評価 されたコバルト(Co)、タングステン(W)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)の中で、鉄 鋼の添加合金として業界のニーズが高いものはバナジウム、モリブデンである。
さらに、同報告書において、平成8~11年までの平均消費量に対する、直近分を追加 した平成8~17年の平均消費量の割合を比較すると、モリブデン122.9%、バナジウム
113.1%で、この2元素の増加率が最も大きく、今後の使用量が増加していく傾向にあ
ることが示されている(表1.1-3参照)。
図 1.1-1 希少金属の備蓄
出典)JOGMECホームページ
3
表 1.1-2 備蓄7鉱種の供給安定性の評価
鉱種 供給安定性の状況
コバルト 主用途の電池向けでは、マンガン等代替物の利用が可能。ニッケル・銅の副産物として増産の 可能性あり。我が国企業の権益保有が進む。一方、電池向け等で、消費者は堅調に拡大。引き 続き、備蓄積み増しの優先度は高いものと評価。
タングステン 希少性、中国依存度が極めて高く、中国政府は国内消費が拡大する中。輸出抑制策を採用。引 き続き、備蓄積み増しの優先度は高いものと評価。
バナジウム 希少性が高く、南アに最も依存する鉱種であるが、中国依存も高い。引き継き備蓄積み増しの 優先度は高いものと評価。
モリブデン H12年の段階ではリスク低下したと評価したが、その後の銅鉱山の減産・焙焼設備不足等で、厳 しい需給ひっ迫を経験。供給リスクが高まっており、備蓄積み増しの優先度は高いものと評価。
ニッケル 我が国企業の権益保有が進み、供給源も多角化したことから供給リスクは、他のベースメタル 同等と評価。ステンレスとしてのリサイクルも可能。備蓄対象としては、優先度は高くないも のと評価。
クロム及び マンガン
南ア依存度が高いが、日本企業の現地投資も進展。クロムについてはステンレスとしてのリサ イクルも可能。マンガンについては、非鉄金属の中で、アルミニウム、銅に次ぐ市場規模を有 し、消費量は安定。備蓄対象としての優先度は高くないものと評価。
表1.1-3 レアメタル備蓄対象物資消費量の推移(単位:トン、%)
H8~11 年
平均(A) H12 年 H13 年 H14 年 H15 年 H16 年 H17 年 H8~17 年
10 年平均(B) (B/A) ニッケル 169,508 157,625 153,150 161,054 165,666 168,096 152,789 163,642 96.5 クロム 824,322 877,813 838,986 841,653 893,580 908,251 922,799 858,037 104.1
タンクステン 5,036 5,404 3,774 3,421 4,078 5,095 5,571 4,749 94.3
コバルト 2,178 2,403 2,146 1,782 3,235 3,006 2,535 2,382 109.4
モリブデン 15,895 20,166 20,840 19,777 20,683 22,300 23,859 18,920 122.9
マンガン 375,283 387,067 403,166 408,696 393,914 396,575 418,977 390,953 104.2
バナジウム 5,573 6,558 6,714 7,252 6,341 6,671 7,182 6,302 113.1
合計 1,397,295 1,457,046 1,428,776 1,443,635 1,487,497 1,509,994 1,533,712 1,444,985 106.4
さらに、先述したように経済発展著しい中国等の旺盛な原材料調達等による資源高 騰や資源メジャーによる資源の囲い込みにより、また我が国が資源供給を大きく依存 する資源国が輸出抑制措置を発動した場合でも、資源安定供給に対する重大な制約を 生じる可能性が高い。そのため、経済成長に必要な資源の確保は、喫緊の課題となっ ている。鉄鋼生産では鉄鉱石、コークスのほかに、鉄鋼用希少金属が、高張力鋼、高 速度鋼、耐熱鋼などの鋼種の生産に不可欠で、自動車、宇宙・航空、原子力、各種プ ラントなどの分野において素材・部材に利用されている。
特に、モリブデンについては多くが銅の副産物として生産され、かつ米、中国、チ リに集中し、バナジウムについては南ア、中国、ロシアに集中しているために、必ず しも安定した供給体制にあるとは言えず、我が国にあっては国家備蓄鉱種に指定され ているように、鉄鋼の安定生産に向けて、より安定した資源の確保が求められている。
2006年のモリブデンの国内需要は26,200トン(モリブデン換算)であり、その内、特 殊鋼用が23,500トン(90%)を占める。
一方、バナジウムの国内需要は約6,000トン(バナジウム換算)であり、うちフェロ バナジウム5,700トン(バナジウム換算)のほぼ全量が製鋼用に使用されている。
従って、本調査研究では、鉄鋼用原料として利用されるモリブデンとバナジウムを 取り上げて、
1)リサイクルの現状と課題
2)未利用資源の調査とリサイクル技術の技術課題
の2点に関して調査を行い、有識者による調査検討委員会で課題を明確化することで、
鉄鋼用希少金属資源の有効活用の促進に資することを狙いとした。
4
第2章 リサイクルの現状と課題 2.1 モリブデン
2.1.1 モリブデンの主な用途
モリブデンは、主として特殊鋼に使われ、次いで触媒(石油精製用、石油化学工業用) に利用されており、その他には金属モリブデンの線、板、棒、箔の形態で使用される 照明器具や電子材料、各種無機薬品等の用途がある。また、潤滑材添加剤としてモリブ デン硫化鉱が使われている。ただし、モリブデン硫化鉱については全量輸入されてい るものの、その数量は明らかになっていない。
①特殊鋼及びスーパーアロイ
Moは、古くより鉄鋼用希少金属として使われている。Moを鋼に添加することによ り、硬さ、強度、粘り、耐熱性等の性質を付与できる。特殊鋼では、構造用合金鋼(Mo: 0.15~0.7%)、ステンレス鋼(Mo:0.5~5.0%)、抗張力鋼(Mo:0.15~0.7%)、合金工具 鋼(Mo:0.2~1.5%)、高速度鋼(Mo:3.5~9.5%)などに添加されている。また鋳物には 0.3~3.5%のMoが含まれ、スーパーアロイでは最大25%を含むものまで種々ある。
②触媒
Mo の S と結合しやすい性質を利用して、石油からS を除くのに使われる。石油精 製用の NiO-CoO-MoO3 系触媒には、水素化脱硫触媒(Mo:4.5%)と水素化分解触媒 (Mo:7.0%)の2種類があり、石油化学工業用にはBi2O3-MoO3系触媒(Mo:12%)が使用 されている。
③線・板・棒・箔
Mo の耐熱性(融点 2600℃以上)の性質を生かして、照明ランプのフィラメントや 半導体子デバイスなどの高耐熱性が求められる材料に使われており、Mo を金属の線、
図 2.1-1 モリブデンの用途
出典:JOGMECホームページ
5
板、棒、箔の形態で使用する用途として、照明器具(マンドレル、反射鏡)、電子管用陰極 及びヒーターグリッド、ガラス炉融炉用電極棒、マグネトロン部品(陰極、端子等)、工業 炉用発熱体等がある。
④無機薬品
Mo含有無機薬品として、防錆塗料用に塩基性モリブデン酸亜鉛(Mo:25~30%)、着 色顔料のモリブデン酸レッド(Mo:9%)がある。また硫化モリブデンの形態で潤滑剤と して使用されているものもある。
2.1.2 モリブデンの供給と消費の現状 1) 世界のモリブデン需給バランス
世界のモリブデンの需給動向を、表 2.1-1 に示した。供給は米国、チリ、中国に集 中しており、上位3ヶ国で76%を占めている。モリブデンは、世界生産の6割以上が 銅生産の副産物として生産される。そのために、焙焼能力の不足等、供給面で問題を 抱えている。消費量は、鉄鋼部門の需要増を反映して、年々増加している。図 2.1-2 は、2006 年の国別のモリブデン消費割合を示している。世界全体の消費量の値が表
2.1-1 とは異なるが、2006 年における日本の世界に占めるモリブデンの消費割合は
16%である。しかし、将来、中国を中心とした鉄鋼・特殊鋼分野の需要増が予想され ており、かつこの分野の代替性もない状況にあって、需給両面でリスクがある鉱種で ある。
表 2.1-1 世界のモリブデンの需給 (単位:純分千トン)
年 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 供給 アメリカ 56.2 59.8 54.9 44.4 42.0 37.9 31.8 33.1 40.6 53.2 チリ 17.1 23.1 24.6 27.7 32.3 38.1 31.5 37.7 41.8 44.4 中国 8.6 12.7 15.9 15.9 18.6 25.9 32.2 31.3 28.3 23.1 ペルー 4.0 4.3 5.4 5.0 5.0 3.3 4.9 5.4 12.2 13.1 カナダ 8.7 8.6 8.1 5.8 6.4 8.1 9.0 8.9 10.9 8.2 メキシコ 2.7 4.1 5.4 6.6 6.6 5.4 3.6 3.2 3.2 4.1 その他 5.9 5.6 7.2 7.4 7.3 11.2 11.3 11.9 12.7 12.6 合 計 103.2 118.2 121.5 112.8 118.2 129.9 124.3 131.5 149.7 158.7 148.9 需要 欧州 42.2 45.1 46.3 45.4 47.6 49.3 49.9 53.5 56.3 59.4 アメリカ 29.3 29.7 29.9 29.9 30.4 32.7 31.8 32.7 34.4 38.1 日本 19.0 22.5 22.0 19.1 21.8 23.6 23.6 23.6 27.2 28.6 その他 14.0 15.0 15.9 14.5 18.1 22.4 22.7 23.6 24.3 26.1 合 計 104.5 112.3 114.1 108.9 117.9 128.0 128.0 133.4 142.2 152.2 154.1 需給バランス -1.3 5.9 7.4 3.9 0.3 1.9 -3.7 -1.9 7.5 6.5 -5.2
出典:平成17年度特殊金属プロジェクト報告書(特殊金属備蓄協会)
図2.1-2 世界国別モリブデン消費割合
出典:JOGMECホームページ
6 2) モリブデンの埋蔵量
埋 蔵 量 は Mineral Commodity Summaries 2007によると、世界全体で860 万トン、うち、中国が38.4%、米国が31.4%、
チリ12.8%と上位3カ国で82.6%を占めて いる。
3) モリブデンの供給障害と価格の推移
表2.1-2に過去のモリブデンの供給障害事例を示す。銅鉱山でのストライキ・事故等 による減産、ステンレス鋼等の生産増に伴う需要増、中国鉱山の事故・焙焼能力不足 によるものが認められる。
三酸化モリブデンの価格は、図2.1-5に示すように、種々の要因で2003年頃より急上 昇し、2005年から2008年夏頃までは変動があるものの、30~35$/lbで推移してきた。
ただし、昨年後半よりステンレス等の需要減などがあり、急激に値を下げている。
出典:Mineral Commodity Summaries 2007
図 2.1-3 世界のモリブデン埋蔵量
出典:産業新聞社調べ
図2.1-5 モリブデン鉱価格の推移
図2.1-4 世界のモリブデン埋蔵量
出典:資源エネルギー庁
($/lb)
0 5 10 15 20 25 30 35 40
2001年平均 2002年平均 2003年平均 2004年平均 2005年平均 2006年平均 2007年平均 2006年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2007年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 2008年1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
7 4) 日本のモリブデンの需給
2006年の日本のモリブデン需要は、表2.1-3においてはモリブデン純分で26.2千tと 推定される。その内、特殊鋼用の消費は23.5千tと推定され約90%を占めている。
表2.1-3 日本のモリブデン需要量 (単位:t)
歴年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
数量 21,800 24,500 25,400 27,200 26,200
(出典:工業レアメタル2007)
表2.1-4は、レアメタルの鉱種毎に、原料(鉱石、地金、中間原料、中間製品)、レ
アメタル含有製品として部材・部品(生産財として使用される特殊鋼、触媒など)及 び最終製品(主に消費財)に分けて、現実的に調査可能な対象製品に限り、主な用途 の市場を示している。
・部材・部品:ステンレス鋼、特殊鋼、化合物、磁石、触媒
・最終製品 :超硬工具、二次電池、電気電子製品(テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エ アコン、パソコン、各種デジタル家電、携帯電話、HDD、CD-ROM)、
自動車及び自動車部品
モリブデンは、ステンレスと特殊鋼を合わせて88%を占めており、次いで触媒の8% となっている。
(バナジウムも特殊鋼に78%、チタン合金用に21%を占め、触媒への利用は2%程度 である。)
表2.1-2 モリブデン供給障害例
8
世界市場 国内市場
部材・部品 最終製品
のみ 含む ステンレス鋼 特殊鋼 化合物 磁石 触媒 超硬工具 二次電池 1 2 3
Ni 市場 1,253,000 204,000 192,500 198,500 140,000 50,000 2,000 500 3,000 3,000 1,500 4,000
比率(%) 100 94 97 68.6 24.5 1.0 0.2 1.5 1.5 0.7 2.0
用途 フェライト磁石 めっき 電池 その他 非鉄合金
Cr 市場 6,176,000 563,000 555,000 555,000 460,000 95,000 4,000 2,000 2,000
比率(%) 100 99 99 81.7 16.9 0.7 0.4 0.4
用途 めっき 耐火物
Mn 市場 5,100,000 880,000 600,000 600,000 600,000 60,000 200,000 20,000
比率(%) 100 68 68 68.2 6.8 22.7 2.3
用途 一次電池 普通鋼 Al合金
Co 市場 50,000 11,200 1,900 9,900 1,000 400 500 200 600 7,200 1,300
比率(%) 100 17 88 8.9 3.6 4.5 1.8 5.4 64.3 11.6
用途 磁石 磁性膜 Liイオン電池 その他
W 市場 60,000 6,600 700 5,700 500 200 5,000 900
比率(%) 100 11 86 7.6 3.0 75.8 13.6
用途 フィラメント、放熱板、他
Mo 市場 180,000 28,400 27,300 27,300 20,000 5,000 2,300 1,100
比率(%) 100 96 96 70.4 17.6 8.1 3.9
用途 電極、電子管、他
V 市場 50,000 5,800 4,600 4,600 4,500 100 1,200
比率(%) 100 79 79 77.6 1.7 20.7
用途 Ti合金製品
Nb 市場 15,000 5,900 5,700 5,700 5,700 100 100
比率(%) 100 97 97 96.6 1.7 1.7
用途 レンズ NMR、超伝導
Ta 市場 3,000 600 0 420 250 90 80 80 100
比率(%) 100 0 70 41.7 15.0 13.3 13.3 16.7
用途 コンデンサ 磁性膜 レンズ ヒーター、他
Sr 市場 500,000 17,200 8,000 8,000 8,000 50 150 9,000
比率(%) 100 47 47 46.5 0.3 0.9 52.3
用途 フェライト磁石 レンズ 火薬 化学薬品
Sb 市場 50,000 9,500 0 100 100 250 8,500 650
比率(%) 100 0 1 1.1 2.6 89.5 6.8
用途 鉛蓄電池 顔料(黄) 難燃材 鋳物、他
Pt 市場 250 53.0 27.0 30.0 27.0 3.0 17.0 3.0 3.0
比率(%) 100 51 57 50.9 5.7 32.1 5.7 5.7
用途 めっき・磁気膜 投資・宝飾ガラス坩堝 その他
Pd 市場 300 62.0 34.0 43.0 34.0 9.0 14.0 5.0
比率(%) 100 55 69 54.8 14.5 22.6 8.1
用途 めっき 歯科 宝飾
Rh 市場 30 9.0 3.0 3.0 3.0 6.0
比率(%) 100 33 33 33.3 66.7
用途 その他
PGM 市場 580.0 124.0 64.0 76.0 64.0 12.0 22.0 14.0 12.0
比率(%) 100.0 52 61.3 51.6 9.7 17.7 11.3 9.7
用途 めっき・磁気膜 投資・宝飾 歯科 その他
対象品目 部材・部品 最終製品 その他部品・部材、最終製品
電気・電子機器
表2.1-4 鉱種別の用途別の市場(1)(2006年) (単位:純分Ton、レアアースはREO Ton)
出典:経済産業省委託事業 「平成19年度鉱物資源供給対策調査報告書」
9
市場規模
部材・部品最終製品を
のみ 含む ステンレス鋼 特殊鋼 化合物 磁石 触媒 超硬工具 二次電池 1 2 3
Ti 市場 90,000 11,570 2,000 2,000 2,000 9,570
(金属) 比率(%) 100 17 17 17.3 82.7
用途 添加材 Ti応用製品
Ti 市場 3,600,000 105,300 0 1,000 1,000 103,300 1,000
(化合物) 比率(%) 0 1 8.6 98.1 0.9
用途 コンデンサ 磁気ヘッド 塗料・顔料 その他
Li 市場 17,000 2,000 50 1,400 50 500 850 100 250 250
比率(%) 100 3 70 2.5 25.0 42.5 5.0 12.5 12.5
用途 触媒 HDD、フィルタ Liイオン電池 一次電池、他 冷凍機,他 グリス・電解質
Ga 市場 200 120 0 115 55 60 5
比率(%) 100 0 96 45.8 50.0 4.2
用途 LED 化合物半導体 その他
In 市場 650 590 0 560 550 10 10 5 15
比率(%) 100 0 95 93.2 1.7 1.7 0.8 2.5
用途 ITO 化合物半導体 低融点合金 電池 その他
RE 市場 65,000 22,600 6,000 6,900 6,000 900 2,000 3,000 6,000 3,700
比率(%) 100 27 31 26.5 4.0 8.8 13.3 26.5 16.4
用途 FeNdB磁石,他 センサ、コンデンサ 蛍光体 Ni水素電池 ガラス・レンズ 研磨剤 その他・不明
出典:Roskill、USGS、鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計、工業レアメタル、鉱物資源マテリアルフロー、他から神鋼リサーチ作成 対象品目カバー範囲:部材・部品のみ=(対象品目(部材・部品)の市場)÷市場規模
:最終製品を含む=(対象品目(部材・部品)+対象製品(最終製品)の市場)÷市場規模
その他部品・部材、最終製品 電気・電子機器
対象範囲 部材・部品 最終製品
表2.1-4 鉱種別の用途別の市場(2)(2006年) (単位:純分Ton、レアアースはREO Ton)
出典:経済産業省委託事業「平成19年度鉱物資源供給対策調査報告書」
10
表2.1-5は、金属添加用モリブデンの生産量を、表2.1-6は粉末製品と加工製品の生産
実績を、表2.1-7は、触媒に使われるモリブデン消費量を示している。
表2.1-5 金属添加用モリブデンの生産量(単位:トン)
歴年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年 2008年 酸化モリブデンブリケット 505 599 744 682 310
フェロモリブデン 2,375 2,691 3,323 4,011 4,229 4,573 4,554 出典:工業レアメタル2007、タングステン・モリブデン工業会、経産省生産統計
表2.1-6 粉末製品と加工製品の生産実績(単位:トン)
歴年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
粉末製品 574 648 936 1,013 1,388
加工製品 376 481 759 960 1,208
出典:工業レアメタル2007、タングステン・モリブデン工業会
表2.1-7 触媒用モリブデンの消費実績(単位:トン)
歴年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 数量 2,019 1,889 2,468 2,497 2,247
出典:工業レアメタル2007、経済産業省化学工業統計
中間生産物に係る我が国の主要生産者並びに生産品目は、表2.1-8のとおりである。
表2.1-8 中間生産物に関する主要生産者及び生産品目
主要生産者 生産品目
太陽鉱工 モリブデン(フェロ、ブリケット)
日本新金属 金属モリブデン、化合物
日本タングステン モリブデン合金
アライドマテリアル モリブデン粉、棒、線、板
東邦金属 モリブデン粉、棒、線、板
妙中鉱業 モリブデン(フェロ、ブリケット)
東芝マテリアル 金属モリブデン
出典:工業レアメタル2007、新金属データブック2002、合金鉄年鑑2007、国内各社ウェブサイト
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一方、供給については、我が国はモリブデン精鉱(焙焼鉱=三酸化モリブデンMoO3) の全量を輸入に依存するとともに、フェロモリブデンの約50%を輸入に依存している。
また、塊・粉やくずも輸入している。
2008年のモリブデン精鉱の輸入量は、表2.1-9に示すように焙焼鉱を3.8万トン輸入 しており、非焙焼鉱は100t前後と少ない。フェロモリブデンの輸入量は、4~5千ト ンであったが、2007年及び2008年には3千トン台に低下している。
モリブデン精鉱の供給国別内訳(2008年)では、チリ50%、米国17%、メキシコ13%、 カナダ9%、中国3%などとなっており、中国については2003年の5,200トンから2008
年には 1,012 トンに低下している。フェロモリブデンについても、中国からの輸入量
は急激に低下しており、2008 年は、前年の 30%程度にまで落ち込んでいる。これは 2005年8月に中国政府により実施された委託加工の禁止が大きく影響したものと思わ れる。
フェロモリブデンは、環境問題、コスト等の観点から海外の供給者確保が難しい状 況となっており、国内生産者(MoO3を輸入し、酸化モリブデン、フェロモリブデン等 に加工)も過去には7社あったものが現在では2社に減少している。中国への依存度 が高いため、国内生産者の存在は不可欠である。
表2.1-9 日本の酸化モリブデンとフェロモリブデンの輸入量 (単位:トン)
歴年 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 モリブデン鉱(焙焼鉱) 30,140 32,727 35,462 40,289 38,543 38,226 37,546 主な輸入先 チリ
メキシコ 米国 カナダ 中国
13,259 4,600 1,088 3,990 3,889
12,509 6,221 1,448 3,792 5,187
19,774 4,951 2,058 3,403 2,159
21,530 5,956 2,343 4,075 2,800
20,557 6,550 3,238 4,478 2,206
21,334 5,848 3,765 3,630 1,405
18,671 4,816 6,201 3,275 1,012
モリブデン鉱(焙焼鉱以外) 50 39 110 117 95 97 96
フェロモリブデン 3,993 5,121 5,066 4,119 4,305 3,234 3,327 主な輸入先 中国
チリ
3,773 220
4,790 260
4,682 308
3,345 520
3,005 740
1,448 1,360
458 2,410
(出典:財務省貿易統計)
図2.1-6 モリブデンの輸入依存相手国比率
(出典:財務省貿易統計)
モリブデン
13,259 12,509
19,774 21,530 20,557
21,334 18,671
4,600 6,221
4,951 5,956 6,550
5,848 4,816
1,088 1,448
2,058 2,343 3,238 3,765 6,201
3,990 3,792
3,403 4,075
4,478 3,630 3,275
3,889 5,187
2,800
3,314 3,570
3,117
3,585 1,405
2,206
2,159 1,012
3,571 2,244 1,514
0 5,000 10,000 15,000 20,000 25,000 30,000 35,000 40,000 45,000 2002
2003 2004 2005 2006 2007 2008 年
チリ メキシコ 米国 カナダ 中国 その他 (MT)
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図2.1-7 モリブデンの埋蔵国、生産国、対日輸出国
出典:JOGMECホームページ
13
表2.1-10は、モリブデンとバナジウムの原料(鉱石、地金、中間原料、中間製品)
について、日本とアジア10カ国、米国、EU、及びその他諸国間の輸出入量を示してい る。
モリブデンについては、モリブデン酸塩や、塊・粉あるいは板・くずとして、また 二硫化モリブデンとして輸出もされている。
バナジウムについては、酸化物として韓国などに輸出されていることが示されてい る。
(1) モリブデン原料のフロー(2006 年)
モリブデン原料の輸入は Mo 純分で 29.6 千トン、輸出は 1.2 千トンである。(輸入 量-輸出量)をモリブデン原料の国内市場とすると、2006年の国内市場は純分で28.4 千トンとなる。
モリブデン原料は主にモリブデン鉱石(酸化モリブデン)、フェロモリブデン、及び 塊・粉・板・くずとして輸入されている。モリブデン鉱石(酸化モリブデン)の輸入
量は Mo純分合計 23,183 トンであり、主な輸入相手国はチリ、カナダ、中国である。
フェロモリブデンはMo純分で2,669トンが輸入されており、主な輸入相手国は中国、
チリである。塊・粉・板・くずは主に中国、ドイツ、オーストリア、米国から輸入さ れている。モリブデン原料の輸出は Mo 純分で 1,240 トンであり、輸入に比較して少 ない。
(2) モリブデン含有製品のフロー(2006 年)
モリブデン含有製品(部材・部品及び最終製品)の輸出入に伴うモリブデンの輸出
入を表2.1-11に示す。製品としてモリブデンの輸入量はMo純分で987トン、輸出量
は14,619トンであり、(輸入量-輸出量)はマイナス13,632トンである。この調査(経 済産業省委託事業「平成19年度鉱物資源供給対策調査」)の対象品目に限ると、Mo原料の国内
市場 28,383 トンのうち、約 52%がモリブデン含有製品として加工され、輸出されて
いると見ることができる。
図 2.1-8 は、モリブデン含有製品の輸出に伴うモリブデンの輸出量(国別)を示し
ている。モリブデンは主として特殊鋼、自動車及び自動車部品として、中国、韓国へ 表3-7-1 品目別フロー
純分トン % 純分トン %
超硬工具 0 0 0 0
二次電池 0 0 0 0
電気電子機器 0 0 1 0
自動車・部品 577 4 28 3
触媒 222 2 205 21
磁石 0 0 0 0
特殊鋼 13,471 92 561 57
スクラップ 348 2 193 20
合計 14,619 100 987 100
輸出 輸入
表2.1-11 モリブデン含有製品の輸出入に伴うモリブデンの輸出入量(2006年)
出典:経済産業省委託事業「平成19年度鉱物資源供給対策調査報告書」
14 はスクラップとしての輸出もみられる。
(参考)
表2.1-11は、小型家電に含まれるレアメタル含量を示している。
図3-7-3 モリブデンの輸出(製品)
0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000
韓国 中国 台湾 香港 ベトナム タイ シンガポール マレーシア フィリピン インドネシア 米国 EU その他
純分トン
電気電子機器 自動車・部品 触媒 特殊鋼 スクラップ
図2.1-8 モリブデン含有製品の輸出に伴うモリブデンの輸出量(2006年)
出典:経済産業省委託事業「平成19年度鉱物資源供給対策調査報告書」
15
表2.1-10 レアメタル原料別の輸出入量(純分)(2006年)
出典:経済産業省委託事業「平成19年度鉱物資源供給対策調査報告書」
純分含有 単位 韓国 中国 台湾 香港 ベトナム タイ シンガ マレー フィリ インド 米国 EU その他 世界
率(%) ポール シア ピン ネシア 合計
モリブデン 鉱石 60.0 ㌧ 輸出 23 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 5 0 28
輸入 12 1,324 0 0 0 0 0 0 0 0 2,000 864 18,983 23,183
モリブデン酸塩 7.8 ㌧ 輸出 9 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 3 2 16
輸入 0 48 0 0 0 0 0 0 0 0 30 2 12 93
フェロモリブデン 62.0 ㌧ 輸出 0 2 1 0 0 13 1 2 1 0 0 0 0 21
輸入 99 1,863 0 0 0 0 0 0 0 0 74 174 459 2,669
塊・粉。板・くず 100.0 ㌧ 輸出 335 21 267 1 0 30 12 7 0 0 37 125 1 835
輸入 273 1,041 182 0 0 1 5 0 0 0 532 1,095 1 3,131
二硫化モリブデン 60.0 ㌧ 輸出 55 103 3 29 0 43 11 0 2 21 3 26 44 340
輸入 0 9 0 0 0 0 0 0 0 0 414 48 74 546
バナジウム 塊 100.0 ㌧ 輸出 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 8 0 10
輸入 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 331 92 5 431
フェロバナジウム 80.0 ㌧ 輸出 0 2 0 0 0 13 0 0 1 0 8 80 13 117
輸入 430 397 12 0 0 0 0 0 0 0 2 966 2,768 4,575
酸化物 52.0 ㌧ 輸出 184 9 5 2 2 1 0 0 0 4 1 20 5 234
輸入 8 1,079 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 83 1,170
品目
16
表2.1-11 小型家電中のレアメタルの含有率
17
(3) 主要用途としての特殊鋼分野におけるレアメタル消費の現状
昨夏の米国発金融不安に端を発して、世界同時に経済成長が減速し、自動車・家電 などの需要分野の影響を受けて、今年度の日本の粗鋼生産量は、前年度割れの可能性 が出てきた。
しかし、平成19年度には1億2,151万600トンと、対前年比3.2%増となり、平成12 年度から8期連続して1億トン台に乗せ、過去最高であった1973年度の1億2,001万 700トンを抜いた。鉄鋼製品は、自動車、造船、電気・電子製品、産業機械、あるいは 各種インフラ等に欠かせない素材として極めて大きな役割を担っている。
鉄鋼製品の高品質・高機能化に不可欠な素材が、ニッケル、クロム、マンガン、コ バルト、タングステン、モリブデン、バナジウム等のレアメタルであり、日本の誇る 世界トップの鉄鋼製品の品質を支えている。かつ、これらを使用する自動車、船舶、
電気電子製品等の高機能化・省エネ化・小型化を高め、世界トップレベルの製品とし て流通しているのも、レアメタルの存在が極めて大きく、レアメタルがなければ、鉄 鋼産業も鉄鋼を使った各種製品等の産業が成り立たない。
① 特殊鋼の生産
直近5年間の鉄鋼生産(粗鋼)は、1億1,000万トンから1億2,000万トンで推移し、
その内訳は転炉鋼が8,300万~8,900万トン前後(70%強)、電炉鋼で3,000万トン前後
(30%弱)となっている。
高炉メーカーは、特殊鋼の中でも高抗張力鋼と機械構造用炭素鋼が主であり、形状 では鋼帯・鋼板がベースとなっている。一方、電炉メーカーが生産する特殊鋼は、構 造用合金鋼、ばね鋼、快削鋼などの小ないロットの鋼種が主であり、形状も棒鋼や線 材が主体になっている。ステンレス鋼については、高炉メーカーでは鋼帯と管材が多 く、主な鋼種は18Cr系やNi-Cr系である。電炉メーカーでは、鋼帯、鋼板も半分以上 を占めるものの、棒鋼、線材の割合は高炉メーカーより高く、特にNi-Cr-Mo鋼が多く なっている。
② 特殊鋼鋼材の最終用途先
2005年度の特殊鋼鋼材の生産量は、20,378千トンとなっている。最終用途別の使用
量は18,225千トンであり、他に鋼管用や鋼塊、半製品向けが349千トンで、合計で
18,574千トンになる。この量と20,378千トンとの差は、次工程加工中のものや在庫と
考えられている。最終需要部門に分配された数量のうち、73%が国内需要向けで、国 内向け受注量の53%が建設用、産業用、機械用、自動車用等の最終需要部門等に直接 出荷され、36%が線材二次加工やボルトナット、ばね用等の次工程用で、残り11%は 販売業者向けとなっている。鉄鋼メーカーからは27%が直接輸出されている。
以上のように一次分配された特殊鋼鋼材のうち、次工程用と販売業者向けに分配さ れた特殊鋼鋼材は、様々な部品等に加工されて最終需要部門に二次分配されて最終使 途ベースの各需要部門での特殊鋼使用量が推計されている。二次分配の過程で中間製 品として約5%が輸出されているので、直接輸出と合わせると、特殊鋼受注量合計の 32%が輸出されていると推計されている。最終需要部門で最終製品になってから輸出
18
されるものもあることから、国内に留まる分が目減りすることになり、レアメタル7 鉱 種のリサイクル対象量も減ることになる。一次分配で次工程用(36%)と販売業者向 け(11%)に向けられた特殊鋼鋼材が、最終需要部門に再分配された最終使途ベース での受注量は12,546 千トン(国内需要の95%)、この他に中間輸出が5%ある。自動 車用が内需の54%となり、特殊鋼の最大需要部門となっている。次いで産業用の18%、
建設用の11%でベスト3を形成し、この3 部門で特殊鋼鋼材需要の83%を占めている。
次に最終使途ベースの需要部門にどのような特殊鋼鋼種がどれだけ分配されている のか。自動車には特殊鋼の54%、7,138千トンが使われている。中でも機械構造用炭素 鋼が最も多く2,706千トン(38%)、次いで機械構造用合金鋼が1,635千トン(23%)、
高抗張力鋼が783千トン(11%)、快削鋼が680千トン(10%)と続く。ステンレス鋼 は382千トン(5%)で、この5鋼種で使用される特殊鋼の87%を占めている。
次に多い産業用は、特殊鋼の18%、2,442千トンが使用されている。構造用炭素鋼31%、
構造用合金鋼27%、ステンレス鋼13%、高抗張力鋼11%となっている。建設用には、
1,479千トンの特殊鋼が使われている。この建設用で多い鋼種は、高抗張力鋼が30%で
トップ、ピアノ線材が28%、ステンレス鋼が15%となっている。構造用炭素鋼も16% あり、この4鋼種で89%になっている。
③ 特殊鋼鋼材の輸出状況
特殊鋼鋼材の最終使途別受注量は、2005年度で18,225千トン、その内鋼材輸出量は 4,970千トン(27.0%)になっている。この他に次工程処理された後、中間製品として 輸出された量は711千トン(内需合計の5%、総受注量に対しては4%程度)あり、こ れを含めた輸出比率は32%である。鋼種別の輸出比率は、高抗張力鋼55%、ステンレ ス鋼39%、耐熱鋼31%となっている。
(4) モリブデン、バナジウムの消費量
表2.1-12はJOGMECが特殊鋼メーカー各社の主要製品等から推計した鋼種別のレ
アメタルの消費量であり、この表によれば、2005年の特殊鋼粗鋼に含まれるレアメタ ルの総投入量は131万トン、国内での消費量は91万トンとなっている。レアメタルの うち、モリブデンは3.1万トン、バナジウムは665トンと推定されている。
(以上の出典:JOGMEC「レアメタルのリサイクル流通状況調査報告」平成19年6月)