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地域福祉活動計画策定過程における 社会福祉協議会の役割

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Academic year: 2022

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博士論文の要旨および 博士論文審査結果の要旨

氏 名 忠 岡 一 也 学 位 の 種 類 博士(社会学)

学 位 記 番 号 社会博甲第 号 学位授与の日付 年 月 日

学位授与の要件 学位規則第 条第 項該当

博 士 論 文 題 目 地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議 会の役割

―泉大津市を事例として―

Roles of the Council of Social Welfare in Making Process of the Community-based Welfare Activity Plan: A Case Study of Izumiotsu City 論 文 審 査 委 員 主査 宮本 孝二 教授

副査 上田 修 教授 副査 木下 栄二 教授

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.研究テーマと方法

本論文の目的は,地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会(以 下,社協と略記)の役割について考察するとともに,社協が策定する「地域 福祉活動計画」と行政が策定する「地域福祉計画」との関係性と一体的策定 の意義や課題,さらには社協と行政の関係性を再確認することである。

市町村社会福祉協議会(市町村社協)は, 年の社会福祉法の改正以 降,社協組織の基礎単位として位置づけられるとともに,社協の役割が「地 域福祉の推進」にあることが明記され,その社会的位置づけがより強固なも のとなり,より一層,住民参加による福祉のまちづくりが求められるように なった。このようななか社協は,「地域福祉活動計画」や「発展・強化計画」

の策定を通じて新たな市町村社協像を唱えてきたのであるが,活動実態が多 様であるがゆえに専門性が拡散し,社協はその存在意義を問われて久しい。

また,自治体財政の悪化による補助金削減から厳しい運営・経営状況におか れつつあり,「地域福祉の推進」という社協のミッションや役割とは裏腹に,

その活動だけでは認められにくくなってきた。しかし, 年に社会福祉 法の一部が改正され,「我が事・丸ごと」の地域共生社会の実現に向けた地

<博士論文の要旨>

地域福祉活動計画策定過程における 社会福祉協議会の役割

泉大津市を事例として

忠 岡 一 也

2 桃山学院大学社会学論集 第 巻第 号

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域づくりの強化を図るためには,「住民参加,住民主体」の地域福祉の推進 を図るとともに住民の問題解決能力の育成が求められるようになり,改めて 社協のミッションや役割への要請に応えなければならなくなったが,そのた めに重要となる機能が市町村社協の策定する「地域福祉活動計画」であり,

行政が策定する「地域福祉計画」である。

筆者は泉大津市社会福祉協議会(泉大津市社協)に勤務するなか,泉大津 市地域福祉活動計画の策定委員会の事務局として第 次計画から第 次計画 の策定に携わるとともに,行政計画である泉大津市地域福祉計画の第 次計 画から第 次計画の策定においても関わってきた経験をもとに, 年か ら現在まで地域福祉における社協のあり方や課題等について研究を進めてき た。まず,社協の歴史的展開をたどることから,その活動の原則や指針に地 域福祉の推進が謳われていることを明らかにするとともに社協が推進してい くべき地域福祉における社協の課題について明らかにした(忠岡, )。

次に泉大津市社協を事例として地域福祉活動計画策定過程における社協の役 割を考察すべく,泉大津市における社会福祉史の研究(忠岡, )に取り 組み,泉大津市社協の歴史について研究することで,その発足から現在に至 る経緯とともに,泉大津市社協の組織構成の特徴や事業等の課題を確認(忠 岡, )したうえで,泉大津市地域福祉活動計画策定過程における社協の 役割について研究を進め(忠岡, ),また,泉州地域の 市社協へのイ ンタビューを踏まえて,本論文の目的である「地域福祉活動計画策定過程に おける社協の役割」について,「地域福祉活動計画」と「地域福祉計画」と の関係性と一体的策定の意義や課題,さらには社協と行政の関係性を再確認 することから社協が直面しているミッションや役割への要請に応えるための 方向性の究明を目指した。

.本論文の構成

前述したように,本論文は「地域福祉活動計画策定過程における社協の役 地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会の役割 3

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割」について,「地域福祉活動計画」と「地域福祉計画」との関係性と一体 的策定の意義や課題,さらには社協と行政の関係性を再確認することから社 協が直面しているミッションや役割への要請に応えるための方向性の究明を 目指しているのであり,序章,第 章から第 章,そして終章で構成されて いる。

第 章「社会福祉協議会の展開と地域福祉」では,一般論として社協の設 立以来の歴史的展開や,法制化の過程で示された活動指針や現在まで検討が 続けられ精錬されてきた理念を整理することによって,地域福祉における社 協の課題を再確認した。

第 節では,戦後日本での社協設立の経緯を先行研究および地域福祉関連 文献等によって整理し,それを通じて 年代初めに提示されるに至った

「住民主体の原則」を再確認した。第 節では, 年代および 年代の歴 史的展開を経て, 年代に生じた社協の法制化の動きを整理し,そのよう な法律を前提に取りまとめられた社協の活動指針の中に,地域福祉新時代に おける社協の課題を見出した。第 節では,社協が推進していくべき地域福 祉の理念について,先行研究を整理することによって検討した。

第 章「泉大津市の社会福祉行政」では,泉大津市の沿革と歴史について 簡潔に紹介した上で,泉大津市において社会福祉が築かれてきた歴史につい て,社会福祉事務所が社会福祉行政を担っていた時代から始めて, 年 代以降の 次にわたる「総合計画」における社会福祉の構想の要点を整理す ることによって描き出した。「総合計画」は自治体のすべての計画の基本と なり,長期的な展望の下,総合的かつ計画的なまちづくりを進めるための指 針であり,そこに示された社会福祉の構想には,当時の社会福祉の問題点の 総括および解決の方向性が明示されているからである。

第 節では,泉大津市の沿革と歴史について概観した。まず沿革として泉 大津市は,大阪府の中央部からやや西よりに位置し,大阪都心から西南へ約 キロメートルのところにある。北部・東部は高石市と和泉市,南部は大 4 桃山学院大学社会学論集 第 巻第 号

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津川を境として泉北郡忠岡町と隣接している。また,西北部は大阪湾に面し ており,はるかに六甲山系や淡路島を望むことができる。 年 月 日 現在,市面積は . 平方キロメートル(うち約 . 平方キロメートルが 公有水面の埋立地で,東西約 . キロメートル,南北約 . キロメートル)

と狭小ながら全域が平坦地で市街化区域という恵まれた立地条件にある。 次に歴史については,『泉大津市史 第 巻上 本文編Ⅰ』(泉大津市史編さ ん委員会, )及び『泉大津市史 第 巻下 本文編Ⅱ』(泉大津市史編さ ん委員会, )の中から概要を紹介し泉大津市の地域特性を明らかにし た。第 節では, 年 月に発行された『社会福祉の窓』をもとに当時 の社会福祉事務所が担っていた福祉行政の内容を確認した。その中で社協は 各種団体の一つとして「外郭団体に関する事務」で次のように列挙されてい る。①社 会 福 祉 協 議 会,②民 生 児 童 委 員 協 議 会,③保 護 司 会,④BBS会

(ビッグ・ブラザース・アンド・シスターズ・ムーブメント:大兄姉運動),

⑤更生保護婦人会,⑥献血推進協議会,⑦赤十字奉仕団,⑧紺綬会(紺綬褒 章を受けられた人たちの親睦団体),⑨遺族会,⑩靖国の妻の会(遺族会婦 人部会),⑪傷痍軍人会,⑫傷痍軍人妻の会,⑬長寿会(老人クラブの育成 や指導を実施),⑭老人クラブ,⑮母子福祉会,⑯母子後援会(母子家庭の 子どもの保証人),⑰身体障害者福祉会(泉大津市の手帳所持者約 人),

⑱身体障害者クラブ(身体障害者福祉会のクラブ活動団体),⑲精神薄弱者 育成会,以上の各種団体に関する庶務,会計等の一切の事務を社会福祉行政 の向上のために社会福祉事務所が担当していたのである。

第 節では,泉大津市総合計画の第 次から第 次に示された社会福祉行 政の内容を明らかにすることによって,泉大津市の社会福祉史を跡づけた。

)泉大津市ホームページ(市政情報、市の概要)

http://www.city.izumiotsu.lg.jp/shisei/sinogaiyou/index.html/ . .

)『社会福祉の窓』は、社会福祉事務所から昭和 年 月に発行された小冊子で あり、社会福祉関係各種団体の規約集の発行にあたり、社会福祉事務所所管にか かる事務の内容を紹介したものである。元々は、昭和 年 月より ヶ年にわ たり「市政だより」に登載されていた「社会福祉の窓」を再編集したものである。

地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会の役割 5

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第 章「泉大津市の社会福祉協議会の歴史と課題」では,現存する資料と して「泉大津市社会福祉協議会々則」,「社会福祉法人設立許可申請書」,『社 会福祉の窓』,『泉大津市社会福祉協議会法人格取得 周年記念誌』,「泉大 津市社会福祉大会冊子参考資料( 年開催)」,「 年度泉大津市社会福 祉協議会総会資料」,『 年度, 年度, 年度, 年度,

年度, 年度の泉大津市社会福祉大会冊子』等の資料をもとに泉大津市 社協の歴史について,発足から現在に至る経緯を整理するとともに,泉大津 市社協の組織構成の特徴や事業等の課題を見出した。

第 節では,「泉大津市社会福祉協議会々則」,「社会福祉法人設立許可申 請書」,『社会福祉の窓』,『泉大津市社会福祉協議会法人格取得 周年記念 誌』,「泉大津市社会福祉大会冊子参考資料( 年開催)」,「 年度泉大 津市社会福祉協議会総会資料」等の資料をもとに泉大津市社協の法人化まで の歩みを示した。第 節では,『 年度, 年度, 年度, 年 度, 年度, 年度の泉大津市社会福祉大会冊子』等をもとに泉大津 市社協の法人化とそれ以降の展開について示した。第 節では, 年 月に策定された「泉大津市社会福祉協議会発展・強化計画」をもとに,社協 の事業と課題について確認した。

第 章「泉大津市の地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会の 役割」では,画一化される前の計画として,ともに第 次計画の策定過程を 通じて考察を進め,「地域福祉活動計画」と「市町村地域福祉計画」との関 係性を再確認するとともに地域福祉活動計画策定過程における社協の役割お よび地域福祉の推進を使命とする社協に必要な専門性について再確認した。

第 節では,「地域福祉活動計画」と「市町村地域福祉計画」の関係性につ いて,地域福祉計画の萌芽からその発展過程を確認し両計画の考え方と関係 性を再確認した。第 節では,社会福祉法の改正のなかで「地域福祉活動計 画」や「市町村地域福祉計画」がそれぞれどのように位置づけられてきたの かを確認した。第 節では,泉大津市における地域福祉計画策定過程と社会

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福祉協議会について,法規定される前から計画策定に向けた構想を掲げ,計 画策定のプロセスに沿って丁寧に取り組まれた『第 次地域福祉計画』の策 定過程を紹介するとともに,そこに関わる社協の役割等について考察した。

第 節では,泉大津市地域福祉活動計画策定過程と社会福祉協議会の役割に ついて,泉大津市社協における地域福祉活動計画の策定過程について概観す るとともに,そこに関わる社協の役割について考察した。

次に第 章「地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会の役割

─泉大津市と泉州地域 市(岸和田市・泉佐野市・阪南市)との比較─」で は,泉大津市と同じ泉州地域にある 市(岸和田市・泉佐野市・阪南市)の 社協職員 名への地域福祉活動計画と地域福祉計画の一体的策定過程におけ るインタビュー調査を通して,他市における社協の現状等を確認し,その特 性を泉大津市の場合とも比較,検証しつつ考察を進めるとともに,一体的策 定の意義とそのための留意点,社協と行政の関係性についても検討を深め,

一体的策定過程で社協が抱える課題の明確化を図った。

以上のように,本論文では,地域福祉活動計画策定過程における社会福祉 協議会の役割について泉大津市を事例として,地域福祉活動計画と地域福祉 計画との関係性,一体的策定の意義や課題,さらには社協と行政の関係性に 焦点を合わせて検討を進めてきた。そして,泉大津市と同じ泉州地域の 市

(岸和田市・泉佐野市・阪南市)へのインタビュー調査を実施することに よって,各市において地域福祉活動計画と地域福祉計画がどのようにして一 体的に策定されてきたのかについて理解するとともに,それぞれの社協にお ける特性を確認し,抽出した内容を泉大津市の場合と比較,考察することか ら地域福祉活動計画と地域福祉計画の一体的策定過程における課題等を確認 した。

しかし,本論文で十分に探究できなかった点は多く,それらは今後の研究 における課題として残さざるをえなかった。そこで終章「今後の課題」で は,第 節で本論文を総括することによって,その達成点を示した。

地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会の役割 7

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そして第 節で,それらをふまえて今後の社会福祉協議会の運営や活動強 化に向けて検討を進めるために,今後探究すべき主要課題として 点提示し た。

第一に,本論文で抽出した地域福祉活動計画策定過程における社協の役割 の検証である。

本論文で抽出した地域福祉活動計画策定過程における社協の役割について は,前述のとおり泉大津市と同じ泉州地域にある 市(岸和田市・泉佐野 市・阪南市)を対象に実施した地域福祉活動計画と地域福祉計画の一体的策 定過程についてのインタビュー調査の結果に基づき導出したものであること から,それらを検証していくためにはもっと多くの事例が必要となるため,

全国各地の社協における地域福祉活動計画の取り組み状況(事例)につい て,実態把握していく必要があると考える。その方法としては,第 次調査 として,

①地域福祉活動計画と地域福祉計画の一体的策定過程についての質問紙調 査を実施する。

②回収できた全国の取り組み状況を整理したうえで都道府県ごとに分類 し,内容や傾向を分析する。

③②で分析した内容に基づき,地域福祉活動計画策定過程での社協の役割 としてa.「効果があった社協」とb.「そうでない社協」にさらに分類 する。

第 次調査として,第 次調査で分析・分類ができた全国の社協の内,都 道府県ごとにa,bの社協 カ所ずつに対してインタビュー調査を実施し,

質問紙調査だけでは見えてこない様々な社協モデルについて考察し,その結 果に基づき導出された内容と本論文において抽出した内容について比較,検 証・検討を進めていきたい。

さらに,本論文で抽出した地域福祉活動計画策定過程における社協の役割 を泉大津市社協の次期計画(第 次地域福祉活動計画)策定に向けた取り組

8 桃山学院大学社会学論集 第 巻第 号

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みの中で確実に実践していくとともに,その結果を検証していくことが重要 であると考える。そのためには,これまでのように計画策定を担う事務局職 員の経験や力量だけに頼るのではなく,計画策定に関わる職員はもちろんの こと社協組織全体が地域福祉活動計画を策定することの意義や社協の役割を しっかりと認識するための勉強会をはじめ,様々な研修会を計画策定前から 定期的にしっかりと時間をかけて実施していく必要があると考える。そもそ も社協は地域の各種団体や施設等で構成される協議体組織であることから,

社協組織全体が真に地域福祉活動計画を策定することの意義や社協の役割を しっかりと認識してもらうことができれば,その強みを発揮することがで き,住民主体という本来の活動原則のもと,計画策定過程に住民の参加・参 画を働きかけ,住民の多様な気づきや学びを通じて住民の主体形成の実現を 図ることが可能であると考える。

第二に,社協の存在意義の検討である。本論文では,社協の設立以来の歴 史的展開を概観し,法制化の過程で示された活動指針や,現在まで検討が続 けられ精錬されてきた理念を整理することによって,地域福祉における社協 の課題を再確認してきたが,事例にも見たように社協はその地域特性やニー ズを踏まえて活動していることから当然のこととして活動実態は多様である し,それゆえ専門性は拡散するように見えるが協議体組織であり,社協が地 域福祉を推進していく上でそのこと自体は必要であり大切なことではないだ ろうかと考える。しかし,実際にはわかりづらいからと存在意義を問われて しまうというジレンマにあり,今後もこの議論の展開を継続的に考察してい くことも,筆者が研究を進めていく上で重要な課題である。

第三に,「我が事・丸ごと」の地域共生社会の実現と社協の使命である。

「我が事・丸ごと」の地域共生社会の実現に向けた地域づくりの強化を図る ためには,「住民参加,住民主体」の地域福祉の推進を図るとともに住民の 問題解決能力の育成が求められるようになり,改めて社協のミッションや役 割への要請に応えなければならなくなったが,本論文でも検討してきたよう

地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会の役割 9

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にそのために重要となる機能が社協の策定する「地域福祉活動計画」であ り,行政が策定する「地域福祉計画」ではないだろうか。しかし現実として は,予算の削減や合理化意識の蔓延で計画は画一化,合理化されつつあるよ うに思え危機感を覚えずにはいられない。本論文の事例として取り上げた画 一化される以前の第 次の計画策定過程では住民の多様な気づきや学びを通 じて住民の主体形成が図られたとともに,社協職員や行政職員も同様に計画 策定に対する熱意があったように思える。

地域福祉の推進が使命ゆえの社協の課題としては,そもそも地域や行政か ら「社協は何をしているのか?」と問を投げかけられたときに,それは社協 職員を指しているのか,それとも社協組織を指しているのかが曖昧でありな がら,多くの場合は社協職員がその言葉を受け止めずにはいられない。それ は専門職として当たり前のことかも知れないが,社協職員が受け止めて何と かしようとそれを地域に投げかけたとしても目に見えるような変化を期待す ることはできないであろうし,むしろ投げかけ次第では事例でも紹介したよ うに,地域にそっぽを向かれ今後一切協力を得られなくなるような負のスパ イラルに陥る恐れもある。地域福祉という視点で捉えれば,本来は社協職員 のみならず地域住民に向けての問でもあることは揺るぎない。しかし,地域 住民が地域住民(自分自身)に,或いは行政が地域住民に「何をしているの か?」と投げかけることは難しい。だからこそ「社協」をターゲットにする 必要性があるのかも知れない。社協は本来,協議体組織であることが強みで あるはずなのに構成組織が主体意識をもつことができない限りは今後とも社 協の苦悩は続くであろう。今後,筆者も研究を進めることを通して,その課 題解決に向け貢献できるよう努めていきたい。

10 桃山学院大学社会学論集 第 巻第 号

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<博士論文審査結果の要旨>

論 文 提 出 者:忠 岡 一 也

論 文 題 目:地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会の役割 泉大津市を事例として

学位申請の種類:甲(課程博士,社会学)

忠岡一也氏は, 年 月に泉大津市社会福祉協議会に入職して以来,

社協一筋で現在は事務局長の要職にあります。また,それと平行して勉学に も励み, 年 月には佛教大学通信教育部社会学部社会福祉学科を卒業 し, 年 月に桃山学院大学大学院社会学研究科博士前期課程に入学し,

社協論をテーマに修士論文を完成させ, 年 月に修士号を授与されま した。その後,博士後期課程の研究生を経て 年 月に博士後期課程に 入学し,職務の都合上やむをえず休学をはさんでですが,休学中も研鑽を怠 らず 年 月に復学し,本年度に博士学位申請論文を完成させました。

テーマは論文題目に明示されているように,忠岡氏自らの生活の場であり 研究のフィールドでもある泉大津市の地域福祉活動計画策定過程に焦点を合 わせ,そこにおける社会福祉協議会の役割を具体的に詳細に明らかにするこ とです。また,それにとどまらず,そうして究明された役割項目や役割課題 について,さらに近隣の つの自治体で忠岡氏と同様の職務を遂行している 社協の職員にインタビューし,比較検討を遂行しています。それでは以下,

ルーブリックに沿いながら本論文の評価を申し述べます。

まずこの研究テーマの設定についてですが,修士課程において社協論を展 開した成果を踏まえ,本論文では地域福祉活動計画策定過程という政策形成 の具体的な場において,社協の役割を究明しようとしており,現代日本社会 の地域福祉における重要な課題の解決や地域福祉の理解の進化に大いに貢献 すると思われます。また,泉大津市と近隣 自治体との比較研究という方向 地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会の役割 11

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性は,今後さらに多くの自治体との比較研究へと発展することが期待されま す。忠岡氏は本論文の執筆にあたって多くの関連資料を渉猟していますが,

このテーマの先行研究についても網羅的に検討しており,完全に独創的とま では評価できませんが,大阪泉南地域の焦点化および地域福祉活動計画策定 過程の焦点化に,独自性ないしオリジナリティを見いだすことができます。

忠岡氏は本論文の執筆のために 年の歳月を費やしてきました。後期課程 の正規の 年間,休学 年 回をはさみながらの在籍延長 年間,指導教員 とのコミュニケーションは継続され,論文の完成に向けての学術論文の作成 と投稿を継続しつつ,本論文を完成させ提出するまでの段取りを確認し合っ てきました。したがって,指導教員としては研究の進捗状況や,研究活動を 抑制せざるを得ない生活状況などについて明確に把握しており,忠岡氏の研 究活動を管理し監督する可能性を保持し続けてきました。また,研究にかか わる倫理上の問題について,第 に職場の資料を活用すること,第 にイン タビュー内容について論文で公表すること,という二つの問題に直面し,特 に第 の職場の資料の活用については困難な問題もありましたが,幸い職場 の理解を得ることに成功し,インタビュー調査の場合も対象となる他自治体 の福祉担当職員の承諾を得たうえであることが明示されています。なお,本 論文で活用された資料はすべて社協や市役所に保存されています。

以上のように,忠岡氏の論文は,目的が明示され問題設定は明らかであ り,研究目的にふさわしい研究法が選ばれ,本文は学術的な記述法で執筆さ れ,この研究分野の専門学会で一般的に利用されている執筆規定から大きく 外れるものではありません。データや資料の量は十分であり,全体的な章節 の構成も論理的に整序されており,研究成果を示す方法も必要なデータ・資 料は適切に図表化され,結果が解釈されています。

本論文は泉大津市に焦点を合わせた地域福祉計画策定過程における社協の 役割を究明しており,これまで散在していた資料を整理,それらの内容を解 読し体系化し,まとめて提示できています。また,本論文の第 章から第

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章までは,その原案となる論文については,その都度『桃山学院大学社会学 論集』に編集委員の査読を経て掲載してきました。さらに,本論文の要旨と 審査報告書は『桃山学院大学社会学論集』に掲載され,本論文の全文は,学 位授与後,桃山学院大学リポジトリにおいて公開することが決まっていま す。このテーマに多大な関心を持つ行政関係者,研究者,民間団体関係者に よって,今後も継続的に参照され活用されることは確実なことと思われま す。

本論文は,桃山学院大学大学院社会学研究科のディプロマポリシーにも当 然ながら対応しており,忠岡氏が,社会福祉についての豊かな実践経験と学 識を基礎に,多大な時間をかけて研究能力を研磨しつつ,自身が直面した実 践的な課題に学術的な検討を加えており,自ら課題を発見し解決に取り組む ことができる専門的な能力が明示されていると言えましょう。

もちろん,以上のように高く評価されることを前提に,いくつかの問題点 も指摘しておかねばなりません。

第 に,文章表現において不正確な表現が若干見られたことです。

第 に,忠岡氏が実際に経験してきたことであるがゆえに,所属組織への 遠慮と忖度が作用し,記述が不十分になってしまい,説明不足に終わってい る箇所が見られることです。

第 に,泉大津市に焦点を合わせて研究が深められ獲得された知見を基 に,近隣の 自治体の社協担当者へのインタビューが実施されていますが,

時間的制約のためそれを一層拡大し,たとえば大阪府下の自治体を類型的に 分類し,各類型の代表的な自治体を抽出し,それらについてインタビュー等 の調査を実施するところまでは到達できなかったことです。

忠岡氏の博士論文は,以上のようにいくつかの問題点を含んではいます が,現時点で改訂可能な第 の問題となる個所はすべて改稿した上で,また 第 と第 の問題点は今後の研究の展開に期待するということで,審査員一 同は全員一致して,本論文が博士学位請求論文に値することを認定したこと 地域福祉活動計画策定過程における社会福祉協議会の役割 13

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を,ここにご報告申し上げます。

以上

審査委員(主査) 宮 本 孝 二 審査委員(副査) 上 田 修 審査委員(副査) 木 下 栄 二 14 桃山学院大学社会学論集 第 巻第 号

参照

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