VR モーションベースの物理振動がユーザー体験に与える影響
Effects of VR motion base on user experience 1w153039-3 柏 達晶 指導教員 河合 隆史 教授
KASHIWA Tatsuaki Prof. KAWAI Takashi
概要: 仮想空間において移動感覚の呈⽰を⾏う際、モーションベースによって物理的に動きを与えるという
⽅法が注⽬されている。しかし、モーションベースに関する研究は設計・実装が主となっており、ユーザー 体験に与える効果は定かではない。そこで、本研究では VR モーションベースの物理振動がユーザー体験に 与える影響を対象に実験を⾏った。その結果、物理振動はユーザー体験に対して有効であり、臨場感や没⼊
感の演出に寄与する可能性が⽰唆された。
キーワード:仮想現実、モーションベース、物理振動 Keyword: Virtual Reality, Motion base, Vibration
1. はじめに
モーションベースとは、⼈間の体全体を直接動か すことで、移動感覚を呈⽰させる装置であり、VR などアミューズメントにおいても活⽤されている。
しかし、モーションベースに関する研究は設計・実 装が主となっており、ユーザー体験に与える影響に 関する研究は少なく、VR 空間における物理振動の 効果は定かではない。本研究では VR で物理振動を 呈⽰するモーションベースを利⽤し、ユーザー体験 に与える影響を調べることで、モーションベースの 利活⽤に関わる基礎的な知⾒の取得に取り組んだ
2. 実験⽅法 2.1 実験条件
本実験では injoy Motion 社のモーションベース [1]を使⽤し、VR ヘッドセットは HTC 社の HTC Vive [2]を⽤いた。また、モーションベースを⽤い る VR コンテンツとして、ローラーコースターを採
⽤した。実験条件はモーションベースによる物理振 動の有無による 2 種類、加えて Pitch 軸回転と Roll 軸回転のレールによる 2 種類とし、合計 4 条件(そ れぞれ 90 秒程度)を⽐較した。
図 1 実験刺激(Pitch 軸回転コース)
図 2 視覚刺激の⾓度変化
2.2 評価指標
客観指標として体動によるアーティファクトが少 なく、情動変化の定量的評価に適しているとされ る、⽪膚コンダクタンス変化(SCC : skin
conductance change)を測定し、その中でも全体の
持続的な変化ではなく、⼀過性の反応である⽪膚コ ンダクタンス反応(SCR : skin conductance
response)の出現回数を解析した。
主観指標として SAM(Self-Assessment Manikin) [3]を⽤いた。SAM は情動価と覚醒度をそれぞれ 9 段階で評価する質問紙であり、評価項⽬はイラスト で表現されている。
3. 実験結果
VR ローラーコースター体験中の SCR の出現回数 はモーションが有りの場合が、モーション無しの場 合と⽐べて⾼い結果となった(図 3)。分散分析法を
⽤いて検定を⾏ったところ、モーションの有無にお いて Pitch, Roll 共に有意差(p < .01)が⾒られた。
SAM スコア平均値(図 2)について、情動価、覚醒 度共にモーション有りの場合がモーション無しの場 合よりも⾼い結果となった。また、分散分析法を⽤
いて検定を⾏ったところ、モーションの有無におい て情動価、覚醒度共に有意な差(p < .01)が⾒られ た。また、情動価に関しては回転軸⽅向に違いにも 有意な差が⾒られた(p .05)
インタビューでは多くの参加者が「モーションが 有る⽅が楽しく、没⼊感も⾼かった」と回答した⼀
⽅、2 名からは「予測していた動きと違ったため、
モーションが不快に感じた」などの回答もあった。
また、酔いに関しては「モーション無しの際に酔い を感じたが、モーション有りの場合は特に感じなか った」との回答が 9 件あった。
図 2 SAM スコア結果
図 3 SCR 発⽣回数結果 4. 考察
SAM における情動価、覚醒度の有意な上昇はモー ションベースによる物理振動がユーザー体験に与え る効果を⽰唆している。さらに、SCR においてもモ ーションベースによる物理振動はユーザーの情動変 化に有意に影響しており、客観指標からもモーショ ンベースの有効性が⽰されたと⾔える。また、インタ ビューからは物理振動が視覚刺激との間隔不⼀致を 軽減する効果がある可能性や、ユーザーが予測して いない振動を与えた場合、不快感を促進する可能性 が⽰唆された。
5. まとめ
本研究によって、モーションベースによる物理振 動がユーザー体験に与える影響を明らかにした。モ ーションベースによる物理振動は、臨場感や⾼揚感 などの演出に寄与すること加えて、視覚情報との感 覚不⼀致を軽減することが分かった。
参考⽂献 :
[1] http://www.crescentinc.co.jp/product/injoy/p_toku cho/. [アクセス⽇: 2 1 2019].
[2] https://www.vive.com/jp/product/. [アクセス⽇: 10 12 2018].
[3] M. B. Lang, “Measuring emotion: The self- assessment manikin and the semantic differential,”
Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry, Vol.25, No.1, pp.49-59, 1994.