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3年生専門実験内容 素案

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Academic year: 2021

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(1)

化学専門実験 量子化学

1.目的

分子軌道法や密度汎関数法等の量子化学計算を使って、分子の全エネルギー、最適な分子構造、 種々の分子物性を計算する。更に、化学反応、化学現象、分子の諸性質を量子化学的に解析する場合 に、適切に計算手順を組み立て、計算結果を有効に利用する力を養う。量子化学計算のソフトウェア として Gaussian09を用い、可視化ソフトである Gaussview でインプットファイルの作成やアウトプ ットファイルの解析を行う。

2.事前準備

大学の無線 LAN に接続して作業を行うため、ログインパスワードについて事前に有効であるか確認を しておくこと。当日午後1時の集合場所は、学生実験室ではなく、別途割り当て表に記載された教室 に集合すること。(ただし教室は変更する可能性がある。その時は掲示等で連絡する)なお、本実験で は白衣の着用は必要ないが、実験ノートは必ず持参すること。演習のための PC は教員側で用意する ため、個人で借りてくる必要はない。また必ずUSBメモリを持ってくること。 また動画を見ながらの個別演習になるため、必ずイヤホンとUSB メモリを持ってくること。 すべての資料は、 http://www.comp.tmu.ac.jp/minoria/3nen_jikken/3nen_jikken.html に掲載してある。当日必要なものは紙でも配布するが、事前に目を通しておくとスムーズである。 また以下の計算方法や基底関数について、あらかじめ調べ実験ノートに記しておくこと。 (方法)ハートリーフォック法(HF 法)、密度反関数法(DFT 法)、時間依存密度反関数法(TDDFT 法)、MP2法、CCSD 法 (基底関数)6-31G, cc-pvqz, sto-3g

3.実習内容

3.1 水分子のさまざまな物性計算

3.1.1 Gaussian09W(windows 版)+Gaussview05を用いた水分子(H2O)の計算

まずはプログラムの操作に慣れるために、水分子(H2O)を対象として以下の項目を計算によって求める。

結果は必要に応じて表や図で示せ。Windows 版の Gaussian においては計算方法に HF/6-31G を用い る。なお、GaussView + Gaussian09の基本的な使い方は別に配るテキスト(上記 URL で公開)に記 載する。 ①水の初期構造を自ら作成し、opt + freq キーワードで以下の計算値を得ること。 【log ファイルの解析】 1.構造最適化プロセスにおける全エネルギーの移り変わり(図)、および最適化後の全エネルギー 2.最適化前後の分子構造:O-H 距離(Å)および H-O-H 結合角(度) 3.基本振動の振動方向(モード)の図示と振動数(cm-1、および赤外スペクトルの図 4.1気圧、298.15K(標準状態)におけるエントロピー(kJ/mol K)、自由エネルギー(kJ/mol) 【chk ファイルの解析】

5.Mulliken 電荷解析による、各原子の atomic charge 6.電気双極子モーメント(Debye)とその向き 7.占有分子軌道と主要な非占有軌道の概略図及び分子軌道エネルギーのダイアグラム ②上記で構造最適化された水分子の構造を用いて、NMR の計算を行う。 8.1H NMR、および17O NMR における核磁気遮蔽定数(ppm) ③H2O+分子を構造最適化(opt)せずに計算し、以下の値を得ること。 9.垂直イオン化エネルギー(クープマンズの定理に基づいて軌道エネルギーから求めたものと、二 つのエネルギー値を比較して得たものを比較すること))(eV) ④テンプレートを用いて H2O 分子を構造最適化し、その構造に対して励起状態計算(TDDFT/B3LYP) を行う。各軌道の既約表現を示し、許容な遷移について、対称性の観点から議論する。UV スペクトル を図示する。

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尚、量子化学計算ではエネルギーの単位がhartree(=原子単位 atomic unit (au))であることが多い。エ ネルギーの単位を変換するために必要に応じて1 hartree (au) = 2625.5 kJ/mol を使え。

3.1.2 Gaussian09(linux 版)を用いた水分子(H2O)の高精度計算 高精度な計算や大きな分子の計算を行う場合、ノートパソコンでは計算資源(メモリ、CPU)が不十 分になることがある。そこで専用のワークステーションを用いて計算を行う必要がある。本演習では 化学コースで所有している専用計算機 Chem シリーズにログインし、H2O の構造最適化と振動数計算 (opt+freq)を高精度な電子相関法を用いて行う。基底関数には6-31G と cc-pvqz の双方を試し、計算方 法としてはHF, DFT(B3LYP),MP2,CCSD 法を用いる。したがって合計8種類の計算をすることになる。 4CPU を用いた並列化(Nproc=4)を指定し、メモリの指定は6GB として行う。計算機へのログインの仕 方、計算ジョブの流し方は別途補足資料を当日用意する。 計算結果については以下の表を例としてまとめること。計算結果の確認は2,3日目の空いている時間に 行う。 全エネルギー(a.u.) OH 結合長(Å) HOH角(度) 6-31G cc-pvqz 6-31G cc-pvqz 6-31G cc-pvqz HF DFT(B3LYP) MP2 CCSD 実験値 ― 振動数(1 cm-1) 振動数(2 cm-1) 振動数(3 cm-1) 双極子モーメント(Debye) 6-31G cc-pvqz 6-31G cc-pvqz 6-31G cc-pvqz 6-31G cc-pvqz HF DFT(B3LYP) MP2 CCSD 実験値 計算時間 6-31G cc-pvqz HF DFT(B3LYP) MP2 CCSD 3.1における考察事項 1. 実験値が報告されている物性値(O-H 結合距離:0.958 Å、H-O-H 結合角:104.45°、双極子モーメ ント:1.87 Debye、振動周波数:1595, 3657, 3656 cm-1、イオン化エネルギー:12.62 eV)について、 実験値と比較せよ。計算値はどの程度実験値を再現しているかを検討せよ。計算値と実験値の一致 が十分でないとすれば、何が原因であるかを考察せよ。 2. 3.1.2で用いた基底関数や計算方法の精度について概要を調べ、方法論や基底関数の精度の観点か ら、計算結果について議論せよ。また計算時間についても考察せよ。 3.電気双極子モーメント、核磁気遮蔽定数、イオン化エネルギーの意味を説明せよ。また、それらの 計算式もしくは定義式を示せ。

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3.2 有機化学実験の予習を理論計算で行う

[6] Diels-Alder 反応によるノルボルネンジカルボン酸の合成

周辺環状反応(Pericyclic Reaction)は、複数の結合の生成と開裂とを同時に伴う環状遷移状態を経 由する協奏的な反応であり、付加環化反応(Cycloaddition)、電子環状反応(Electrocyclic Reaction)、シ グマトロピー転位(Sigmatropic Rearrangement)などの反応が含まれる。Diels-Alder 反応は、[4+2]付 加環化反応とも呼ばれ、Woodward-Hoffmann 則によると熱により許容な反応である。有機合成にお いても非常に有用な反応であり、六員環形成の際によく用いられている。Diels-Alder 反応では、電子 吸引性の置換基を持ったジエノフィルと電子供与性の置換基を有するジエンとの反応が起こりやすい。 ここではジエンとしてシクロペンタジエンを用い、電子吸引性の置換基を有するジエノフィルである 無水マレイン酸との Diels-Alder 反応を行う。シクロペンタジエンは Diels-Alder 反応を起こしやすい 環状ジエン化合物であり、通常Diels-Alder 反応によって二量化したジシクロペンタジエンとして入手 できる。これを熱分解して逆Diels-Alder 反応によりシクロペンタジエンを生成させて反応に用いる。 シクロペンタジエンと無水マレイン酸の Diels-Alder 反応における立体化学については、endo 付加 体とexo 付加体の生成が考えられるが、速度論的には endo 付加体の方が生成しやすい。これは結合に 直接関与しない位置での軌道相互作用によるためであると説明されている。実際の実験でも速度論的 生成物である、endo 付加体が生成することが確認できる。また、ジシクロペンタジエンの構造も endo 付加体の構造である。 「第3版 続 実験を安全に行うために」化学同人 ろ過;10章(p55-)、乾燥;11章(p63-)、蒸留;12章(p71-)、沸点換算表(p130) 再結晶;13章(p79-)、融点;18章(p105-)

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(1). cis-Norbornene-5,6-endo-dicarboxylic Anhydride

Measure 30 mL of technical dicyclopentadiene (85% pure) into a 50 mL flask and arrange for fractional distillation into an ice-cooled receiver as in Fig. 1. Heat the dimer with an oil bath until it refluxes brisky and at such a rate that the monomeric diene begins to distil in about 5 min and soon reaches a steady boiling point in the range 40-42 °C. Apply heat continuously to promote rapid distillation without exceeding the boiling point of 42 °C. Distillation for 45 min should provide the 12 mL of cyclopentadiene required for two preparations of the adduct; continued distillation for another half hour gives a total of about 20 mL of monomer.

Fig.1 ジシクロペンタジエンの熱分解

While the distillation is in progress, place 6 g of maleic anhydride in a 100 mL Erlenmeyer flask and dissolve the anhydride in 20 mL of ethyl acetate by heating on a hot plate or steam bath. Add 20 mL of ligroin, bp 60-90 °C, cool the solution thoroughly in an ice-water bath, and leave it in the bath (some anhydride may crystallize).

The distilled cyclopentadiene may be slightly cloudy, because of the condensation of moisture in the cooled receiver. (Add about 1 g of calcium chloride to remove the moisture.) Measure 6 mL of dry cyclopentadiene, and add it to the ice-cooled solution of maleic anhydride. Swirl the solution in the ice bath for a few minutes until exothermic reaction is over and the adduct separates as a white solid. Then heat the mixture on a hot plate or steam bath until the solid is all dissolved. If you let the solution stand undisturbed, you will be rewarded with a beautiful display of crystal formation. The anhydride crystallizes in long spars, mp 164-165 °C; yield, 8.2 g.

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実験では合成された分子が本当に予想した通りのものになっているかを、目で見て実際に確かめるこ とはできない。その代わり IR スペクトル(分子振動のスペクトル)や NMR スペクトル(核磁気共鳴 法)をとることで、化学結合の状態を類推して確認可能である。 逆に理論計算からは、分子の形をはっきり定めた場合の、IR や NMR の理論値を見積もることができ る。このことを利用すれば、どのようなIR や NMR スペクトルが得られれば、目的とした分子が合成 できているのかを判断する材料になる。 本課題では、B3LYP 汎関数/6-31G+(d)基底関数を用いて計算せよ。Gaussview でインプットファイル を作成し、その後Linux のマシンに転送して以下の計算を行う。 これらのデータは、後半の有機化学実験における解析に役に立つため、その時まで取っておくことを 推奨する。 ①シクロペンタジエン、無水マレイン酸、および副生成物のノルボルネンジカルボン酸無水物(exo 体)の分子の構造最適化を行え。 最終主生成物であるノルボルネンジカルボン酸無水物(endo 体)に対しては、構造最適化とともに振 動解析(opt+freq)計算を行い、IR スペクトルの図を保存せよ。 スペクトルの図で代表的な分子振動が、分子のどの部分の振動に対応しているか、振動の動きをみて まとめよ。また別途渡す実験で得られたスペクトルの例と見比べながら、計算結果との一致を確認せ よ。 ②主生成物、ノルボルネンジカルボン酸無水物(endo 体)に関しては、1H-NMR 計算を行い、テトラ メチルシラン(TMS)を標準物質としたケミカルシフトのスペクトル図を保存せよ。 (Gaussview を用いた NMR スペクトルの図で、TMS を標準物質にした時のケミカルシフトの図を表 示させる機能があるので、それを用いること。)別途渡す、実験で得られた NMR スペクトルの例と見 比べながら、計算結果とどの程度一致しているか確認せよ。 また、どの水素の寄与かわかるように、分子中に原子番号のラベルを表示させて、分子の図を保存せ よ。(この情報は、有機化学実験の時の NMR の水素の同定の際の答え合わせで重要になる) ③HOMO, LUMO の分子軌道図を4種の分子で保存せよ。 この図からDiels-Alder 反応でよく議論される軌道相互作用について説明せよ。 ④実験テキストにある“速度論的には endo 付加体の方が生成しやすい。これは結合に直接関与しない 位置での軌道相互作用によるためであると説明されている。”の意味を HOMO-LUMO 図から考えよ。 (わからない場合は教官かTA に聞くこと。) ⑤各分子の全エネルギーから endo 体と exo 体が生成する場合の反応熱をそれぞれ求めよ。(単位は kcal/mol で答えよ)熱平衡的にはどちらの生成物が安定か?実際の実験での反応は発熱反応か吸熱反 応か?(前のページの英語の説明から読み取ること)

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3.3 ビタミン A とその類似化合物の吸収スペクトル

ビタミンA β-カロテン リコペン(リコピン) 上図の3つの分子について、分子構造を Gaussview で作成し、Linux マシンで構造最適化を行え。 (b3lyp/sto-3g)法を用いよ。さらに得られた分子構造を用いて、電子励起状態を TD-B3LYP/STO-3G を用いて行え。ビタミンA やβカロテンの左側は6員環であるが、ベンゼンのテンプレートではなく、 シクロヘキセン椅子型を用いて作成すること。またリコペンは、βカロテンの結合を切るだけではな く、直鎖が広がった構造となっている。お手本を見ながら、リコペンに近い構造にすること。 1. 3番目までの電子励起状態(NState=3)のエネルギー(eV 単位および nm 単位)と振動子強度を 調べよ。振動子強度とは、励起の起こりやすさに対応する指標で、遷移双極子モーメントに依存す る量である。 2. 電子励起状態に関与する分子軌道図を示し図として保存せよ。 3. これらの分子の共役ポリエン鎖部分を一次元の箱と見なし、その箱の中に共役 π 電子が占有してい ると考える。例えばビタミン A なら、この分子を下のようなポリエンで近似し、これをさらに一次 元の箱とみなす。(つまり井戸型ポテンシャルの問題) C-C 平均距離を1.44Åとしたとき、ビタミン A および β-カロテン(またはリコペン)の第一励起エ ネルギーを箱の中の粒子モデルのエネルギー式により nm 単位で求めよ。この近似は、量子化学計 算の結果に比べて、どの程度妥当と言えるか? 4. ビタミン A の摂取にはニンジンやトマトなどが利用されるが、これらの野菜の赤い色はどの化学物 質の色によるものか? 励起エネルギーの計算結果からこれを議論せよ。また実験値とも比較せよ。 実験値:ビタミンA 365 nm, カロテン466 nm, リコペン500 nm (ヒント:例えば590 nm の黄色の可視光が吸収される物質は、その補色である青色に見える) 計算上の補足: 初期構造が悪いと、構造最適化計算に時間がかかるので注意してください。お手本を配りますので、 構造などは参考にしてください。 OH

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○レポートは、以下の要領で書くこと。 ・全体の実験目的 ・テーマ3.1の計算目的、計算方法、計算結果、考察 ・テーマ3.2の計算目的、計算方法、計算結果、考察 オプション:テーマ3.3の計算目的、計算方法、計算結果、考察

4.レポートに関して

○レポートの本文は手書きでもパソコンによる作成でも構わない。パソコンで作成した計算結果の表・ グラフ・分子軌道図などを必要に応じて添付または挿入すること。 ○計算結果と考察は、「計算結果および考察」としてひとつのセクションにまとめて書いても良い。 ○計算方法のセクションでは、計算手法/基底関数を、例えば B3LYP/6-31G のように明記せよ。 ○各テーマの考察事項にある指示・設問は必ず論ずること。 ○Gaussian09では、計算値は基本的に au(原子単位)で表示される。指定された単位に変換すること。

参照

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