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新規化合物の初期臨床開発におけるModel Informed Drug Discovery & Developmentの実践に関する研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

新規化合物の初期臨床開発におけるModel Informed Drug Discovery & Developmentの実践に関する研究

馬場, 裕子

http://hdl.handle.net/2324/2236165

出版情報:九州大学, 2018, 博士(創薬科学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式5) 氏 名 :馬場 裕子

論 文 題 名 : 新 規 化 合 物 の 初 期 臨 床 開 発 に お け る Model Informed Drug Discovery &

Developmentの実践に関する研究

区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

医療ニーズが充足されない理由として,コストや時間といった多大なリソースが成果に結びつ かない医薬品開発が挙げられて久しい。Model Informed Drug Discovery & Development(MID3)は これを解決する方法論である。本研究では,動物やin vitroを対象とする非臨床から,ヒトを対象 と す る 臨 床 に 移 行 す る 相 に MID3 を 適 用 し , 非 臨 床 か ら 得 ら れ る 情 報 を Pharmacokinetic/

Pharmacodynamic(PK/PD)モデルとして要約し,定量的な視点から医薬品開発ストラテジーの立 案に貢献することで,MID3における一つの手法を確立することを目的とした。E6011は世界で最 初のヒト化抗フラクタルカイン(FKN)モノクローナル抗体(mAb)である。第1章では,非臨 床データをPK/PDモデルに統合し,E6011のヒト初回投与量としてminimum anticipated biological effect level(MABEL)を推定し,First in Human(FIH)試験を計画立案した。第 2章では,E6011 のFIH試験結果を1章のPK/PDモデルによる推定と比較した。さらに,続く後期臨床試験に向け て有効血中薬物濃度について考察した。

第 1 章の目的は,血清中 E6011及び総 FKN 濃度を用いて,それぞれカニクイザルの PK 及び

PK/PD モデルを構築し,ヒトに外挿して FIH 試験のヒトの PK/PD を推定することで,E6011 の

MABEL及びPK/PD推移を推定することである。

カニクイザルに E6011を単回投与した時の血清中 E6011濃度推移は,α 相,β 相及び γ相の 3 相性のプロファイルを示した。単回静脈内投与終了後,最高血中濃度から急速に減少する初期の 分布相(α相)が存在し,その後,高濃度では緩やかな消失相(β相),低濃度では急峻な最終消 失相(γ相)が観察された。γ相とβ相の境界点は10 μg/mL付近であった。E6011投与後,血清中 総FKN 濃度の上昇が観察され,対応する血清中 E6011濃度推移がβ 相のとき消失は緩徐であり,γ相 では急峻な消失がみられ,濃度推移にE6011との相関がみられた。カニクイザルの血清中E6011及び総 FKN濃度は,それぞれセントラルコンパートメントから線形及びMichaelis-Menten型の非線形の 消失過程を有する2コンパートメントモデル及びquasi-steady-state近似を仮定したtarget-mediated drug dispositionモデルで良好に記述できた。カニクイザルのPK及びPK/PDモデルを,アロメト リックスケーリング等を用いてヒトに外挿し,ヒトのPK及びPK/PDモデルを構築した。ヒトの PK及びPK/PDモデルを用いて,ヒトにE6011を投与した時のE6011と結合していないFKN濃度 を推定し,それを最大10%抑制するE6011の量として MABELを推定し0.007 mg/kgと算出され た。また,ヒトのPK/PD 推移を推定し試験計画立案を行った。非臨床データをPK/PDモデルに 統合し,ヒトに外挿してシミュレーションすることで,MID3 を初回投与量設定や試験デザイン に利用した本検討により,FIH試験に際し解を得るための一つの方法を提供できたと考える。

第2章では,日本人健康成人男性を対象に E6011(0.0006,0.006,0.04,0.2,1,3,6及び 10 mg/kg)を単回投与する単施設,無作為化,二重盲検,プラセボ対照,用量漸増試験を計画・実

(3)

施し,1章で推定したヒトPK/PDプロファイルと,ヒト試験から得られた実際の結果を比較した。

カニクイザルの血清中E6011濃度推移と同様に,ヒトにE6011を単回投与した時の血清中E6011 濃度推移は3相性のプロファイルを示した。γ相とβ相の境界点は10 μg/mL付近であった。E6011 投与後,血清中総 FKN 濃度の上昇が観察され, 血清中E6011 濃度との相関がみられた。ヒトで観測 された血清中E6011濃度推移は,推定値と比較して消失が早かった。ヒトで観測された血清中総 FKN濃度推移は推定値と比較して高かった。非臨床データを用いた推定とヒトの実際のデータで は乖離があり,不確実性が高い臨床初期におけるシミュレーションの精度については一定の限界 が認められた。

本治験実施前において,ヒトのPK/PDモデルにより推定した血清中E6011濃度推移から,血清中 E6011濃度として10 μg/mLがβ相への到達,即ち標的介在性非線形消失過程の飽和に必要と考えられ た。臨床導入されているいくつかのmAbでは,標的介在性非線形消失過程が飽和する用量が臨床用 量であると報告されている。ヒトで観測された血清中E6011濃度推移から,β相とγ相の境界は10 μg/mL付近と考えられた。患者と健康成人でPK及びPDプロファイルが同様であるならば,少なくと も10 μg/mLの血清中E6011濃度を維持するような投与レジメンが患者試験において必要と考えられ た。本検討を元に,臨床有効濃度の仮定をおき,患者試験において,E6011の抗炎症作用とPK/PD プロファイルを確認することが今後の課題である。

参照

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