九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
ヒト歯髄組織幹細胞を応用した歯髄再生療法の開発 を目指した橋渡し研究
園田, 聡一朗
http://hdl.handle.net/2324/1937190
出版情報:九州大学, 2018, 博士(歯学), 課程博士 バージョン:
権利関係:
(様式6-2)
氏 名 園田 聡一朗
論 文 名 ヒト歯髄組織幹細胞を応用した歯髄再生療法の開発を目指した橋渡 し研究
論文調査委員 主 査 九州大学 教授 前田 英史 副 査 九州大学 教授 自見 英治郎 副 査 九州大学 教授 和田 尚久
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
歯髄再生法の開発には、ヒト歯髄組織幹細胞 (DPSCs)の応用が非常に望ましい。しかし、患者自 身の健常歯のDPSCs (健常 DPSCs)を得る機会は限定されており、自家移植治療の有用性は限られ て い る 。 そ の た め 、 不 可 逆 性 歯 髄 炎 を 惹 起 し た 組 織 よ り 単 離 さ れ る DPSCs (irreversible pulpitis-derived dental pulp stem cells (IP-DPSCs))は、安全性の担保に加えて、ドナー不足の解 消ならびに細胞ソースの確保の観点から、自家移植の有用性が高いと考えられる。しかしながら、
IP-DPSCsの細胞特性についての解析は十分に行われていない。
そこで、まず IP-DPSCsのstemnessについて解析した。IP-DPSCsは、コロニー形成能、細胞 増殖能、多分化能、in vivoにおける象牙質再生能、免疫抑制能を示したが、健常DPSCsと比較し てそれら全ての能力が劣っていた。このため、IP-DPSCsのこれらの機能を改善するために、Ex vivo において、interferon gamma (IFN-)処理を行った。その結果、IP-DPSCsのin vivoにおける象牙 質再生能とin vitroにおける免疫抑制能が改善した。一方、tumor necrosis factor alpha (TNF-) 処理では改善効果を認めなかった。以上より、障害されたIP-DPSCsの機能を回復させる有効な因 子として、IFN-にて処理されたIP-DPSCsは、新規の治療基盤となりうる可能性が示唆された。
次に、stemness を維持した大量の幹細胞を得るために、歯髄組織幹細胞の単離過程において使 用するウシ胎児血清 (FBS)の濃度 (5%, 10%, 15%)が、脱落乳歯歯髄組織由来の幹細胞のstemness ならびに単離数に与える影響について解析した。単離方法は、colony forming unit-fibroblasts
(CFU-F)法を用いた。stemnessの解析は、細胞増殖能ならびにフローサイトメトリーによる表面抗
原の発現にて行った。形成したコロニー数、コロニー毎の細胞数、細胞増殖能、免疫学的表現型か ら、10%FBS濃度の培地で単離を行った群は、他の2群よりも高いstemnessを示した。これらの 結果より、10% FBSを用いることで、従来法 (FBS濃度15%)と比べて、より幼若でstemnessに 優れた歯髄組織幹細胞を単離する技術を確立することができた。
従って、本論文は IP-DPSCsの stemnessの改善方法と生体への応用の可能性および DPSCsの 大量培養方法について新知見を加えるもので、博士(歯学)の学位論文に値するものと判断された。