銀 行経 営 と内部管理
銀行経 営論 の新領域 を提 唱す る
橋 本 光 憲
目 次
は じ め に
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金融 の研 究諸領域 の位 置付 け 金融論 と銀行論
銀行経営論 の展開 と問題意識 銀行経営 の今 日的課題
銀行経営 と内部管理
多角的 ・学際的検討へ の筋道
お わ り に
は じ め に
今 日ほ ど 日本 の あ らゆ る シ ス テム が 問 い直 され て い る時 代 は あ る まい。 作
1)
家 の 柳 田 邦 男 氏 は最 近 の 『文 藝 春 秋 』誌 上 に お い て,「 戦 後 シ ス テ ム を 建 て 直 す た め の 四 つ の 提 言 」 を し て い る。
そ の 前 提 と し て,日 本 とい う 国 家 の シ ス テ ム の 隠 れ た 特 質 と は,ど ん な も の な の か,氏 は 以 下 の 四 つ を挙 げ る。 第 一 は 官 僚 が 権 力 をi握る シ ス テ ム に な っ て い る こ と,第 二 は 官 僚 が 審 議 会 とい う隠 れ 蓑 シ ス テ ム を持 っ て い る こ と, 第 三 は 官 僚 と業 界 の"セ ッ ト犯 罪"の シ ス テ ム が 根 を は っ て い る こ と,第 四
29
は失 敗 に ブ タ をす る シ ステ ム が この 国 を歴 史 的 にお お って い る こ と,だ とい う。
これ らの特 質 は,い ま戦 後 国家 を危 機 に直 面 させ て い る住 専 問題,エ イズ 問 題 もん じ ゅ事 故 な どの様 々 な事 件 か ら明 らか だ。"セ ッ ト犯 罪"の 実 態 は,氏 の言 葉 を借 りれ ば,い まに して噴 出 した観 が あ る とい う。
大 和 銀 行 はニ ュー ヨー ク支 店 の不 祥 事 を隠 蔽 し よ う と し,大 蔵 省 は監 督 官 庁 として す みや か な対 応 策 を と らず に,ア メ リカ側 へ の通 報 さ え怠 った。 大 蔵 省 は はや くか ら住 専 各社 の 不 良債 権 と経 営 悪 化 の実 態 を知 りな が ら,抜 本 策 を と らず,最 悪 の事 態 に な って か ら収 拾 策 を国民 の税 金 に転 嫁 す る案 を打 ち 出 した 。
科 学 技術 庁 は もん じ ゅ事 故 の責 任 を動 燃 だ け に押 しつ けて し まい,厚 生 省 は非 加 熱 製 剤 継 続 使 用 の経 緯 にか らむ記 録 文 書 を ひ た隠 しに して,意 思 決 定 に関 す る 自 らの責 任 を回避 して きた 。
以 上 の よ うな 日本 とい うシ ス テム の 隠 れ た 悲 し き特 質 を,ど うす れ ば い い の か,柳 田氏 は四 つ の提 言 をす る。
(1>調 査 とは何 か にっ い て明確 な理 念 と方 法 の裏 づ け を もった 「失 敗 の調 査 シ ス テム 」 を確 立 す る こ と。
② 「素 人 が 前 面 に出 る シ ス テム 」 を あ らゆ る場 面 で つ くる こ と。
(3)情 報 公 開 の 原 則 を確 立 す る こ と。
(4)動 乱 の政 治 家 よ輩 出せ よ。
こ こで これ らの提 言 の 内容 を説 明 し,批 判 す るの は本 論 文 の 目 的で は な い。
本 論 文 は,こ れ らの提 言 の 背景 とな る戦後 の 日本 国 家 の特 質 として指 摘 さ れ て い る諸 問題,そ の 中 で も大 き な部 分 を占 め て い る金 融 関 係 の事 象 にっ い て,銀 行 論 な い しは銀行 経 営 論 の立 場 で,答 えが 有 効 に な され て い るの か ど
うか を検 証 しよ う とす る もの で あ る。
も し,そ れ が な され て い な い とす れ ば,一 体 どの よ うな 欠 陥 に由来 す る も の なの か 。 その 間 隙 を埋 め る もの は何 か。 論 者 は こ こ数 年,銀 行 の 内部 管 理
30国 際経営論集No.111996
の問 題 が 経営 課 題 の 大 きな対 象 とされ るべ き こ とを提 唱 して きた。 それ が 本 当 に答 え にな るの か 。
以 上 の よ うな 問題 意 識 の 下 で,議 論 を進 め て ゆ く。
1金 融 の研 究諸 領 域 の位 置付 け
本 論 に入 る前 に,金 融 論,銀 行 論,銀 行 経 営 論 な ど,金 融 の研 究 諸 領 域 の 相 互 関係 につ い て確 認 して お きた い。
(1)経 済 学 は,社 会 科 学 の 中 で経 済 に関 して研 究 す る学 問(Economics) で あ る。 経済 活 動 に は,財 貨 ・サ ー ビ スの 生産 ・販 売 と,そ の逆 の 流 れ
として の代 金 清 算 ・金 融 の両 側 面 が あ る。 実物 取 引 と金 融 取 引 と言 って もい い。 これが 金 融 と経 済 活 動 との相 互 関係 で あ る。
(2)金 融(Finance)は,経 済 主 体 に よ る資 金 の調 達 ・運 用 を意 味 す る が, 金 融 取 引 の機 能 は債 権 ・債 務 の 形 態 の多 様 化 に伴 って複 雑 の 度 を加 え て
い る。 経 済 学 の 中 で は金 融 論 と位 置 付 け られ る もの で あ る。 資 金 の 需 要 者 と供 給 者 との 金 融 取 引 を媒 介 す る のが 金 融 機 関 で あ り,そ の 主 た る担 い手 が 銀行 で あ っ て,銀 行 が営 む 業務 を銀 行 業(Banking)と 呼 ぶ 。 それ を研 究 す るの が 銀行 論 で あ り,し た が って 銀 行 論 は金 融 論 の一 部 を形 成 して い る と言 え よ う。
(3)銀 行 論 の 中 で も,論 者 個 人 の 関 心 の 分 野 は 銀 行 経 営(BankMan‑
agement),特 に 日本 の 銀 行 経 営 で あ る。それ に は経 営 学 的 視 点 か らの ア プ ロ ー チが 重 要 で あ り,銀 行 論 は いわ ば経 済 学 と経 営 学 の 二 領 域 に また
2)
が る学 際 的 研 究 と位 置 付 け る こ とが 出来 よ う。 後 述 す るが,あ る先 達 は その著 書 を 「特 殊 経 営 学 と して の銀 行 経 営 学 の体 系化 」 と説 明 して い る。
(4)銀 行 経 営 の 研 究 課 題 銀行 経 営 を研 究 す る に当 って の課 題 と して,
① 主 に踏 まえ な けれ ば な らな い分 野 と,② そ れ らに 関連 した研 究 部 門 と に分 けて論 ず る こ とが 出来 よ う。 す なわ ち,
銀行経営と内部管理31
① と して は,日 本 の金 融 制 度,銀 行 業 務,企 業 金 融 銀 行 の経 営 構 造, 金 融 規 制 と制 度 改革,金 融 イ ノベ ー シ ョン,信 用 秩 序 の維 持 な どが あ
り,他 方,
② として は,金 融 仲 介 の 役 割,決 済 シス テ ム,金 融 政 策,諸 外 国 の 金 融 制 度,金 融 機 関 の歴 史 な どが挙 げ られ よ う。
既 に述 べ た よ うに,論 者 は これ らの課 題 の 延 長線 上 に あ る銀行 の 内 部 管 理 の 問題 を重視 してい る の で あ る。
2金 融 論 と銀 行 論
(1)金 融 論 とは何 か
金 融 論 の対 象 と課 題 につ い て先 行 文 献 を調 べ て み る と,ま ず浜 田文 雄 ・鴨
3}
池 治 編 『金 融 論 の基 礎 』 で は次 の よ うに説 明 す る。
「金 融論 の 目的 は,金 融 機 関 や赤 字 主体 が 発 行 す る預 金 ・債 券 ・株 式 な どの 金 融 資 産 が貯 蓄 をす る黒 字 主 体 に よっ て購 入 され,あ るい は種 々 の 投 資 家 の 間 で 売 買 されiそ れ らの価 格 ・利 子 率 が決 定 され る仕組 み を い ろ い ろの 側 面 か ら考 察 ・分 析 す る こ とで あ る。 した が って,家 計 ・企 業 な どの貨 幣 ・ 金 融 資 産 選 択 の行 動,企 業 の 資金 調 達行 動,銀 行 行 動 や それ らの相 互 作 用 の 場 と して の種 々 の金 融 市 場 の メ カニ ズ ムが,も っ とも重 要 な研 究 対 象 と
な る。 経 済 取 引 の決 済 に と もな う現 金 お よび その 代 替 手 段 を含 め た貨 幣 の 機 能 に つ い て の研 究,実 物 経 済 の安 定 的 な成 長 ・発 展 を促 進 す る よ う に金 融 市 場 を う ま く機 能 させ る こ とを 目的 とした政 府 の金 融 政 策 の効 果 の研 究
も,金 融 論 の常 に新 しい課 題 とな っ て い る。」
本 書 で は,以 上 の ほか に,最 近 に お け る経 済 の急 激 な 国 際化 の進 展状 況 に配 慮 して,国 際 金 融 の 領 域 も金 融 論 の範 囲 に含 め て い る。
4}
次 に,芦 澤 数 雄 「金 融 論 入 門 』 の 「は しが き 」 で の 説 明 を 集 約 す る と,次 の よ う に な る 。
32国 際経営論集No.111996
金融 論 はマ クロ経 済 学,ミ ク ロ経 済 学 で学 ん だ 成 果 を金 融 の面 で 応 用 し た もの で,金 融論 は応 用 経 済 学 で あ る。 ミク ロ経 済 学 で あれ ぼ,消 費 者 選 択 の理 論 や企 業 の利 潤 最 大 化行 動 が そ の基 礎 とな って い る し,マ ク ロ経 済 学 で あれ ば,有 効 需 要 の 原 理 が その 基礎 とな っ て い る。 これ らの 基 礎 が理 解 され て い な い と,金 融論 は非 常 に難 しい内 容 の もの と感 じ られ る だ ろ う。
それ に して も,金 融 論 の テ キ ス トが 「金 融 論 とは何 か 」 に つ い て正 面切 っ た定 義 を与 え て い な い の は何 故 か 。 受講 す る学 生 達 は この 点 で随 分 戸 惑 う こ
とだ ろ う。
で は,銀 行 論 にっ い て は ど うだ ろ うか。
② 銀 行論 とは何 か
限 られ た 見 聞 の 範 囲 で あ るが,最 近10年 位 の 間 の 銀 行 論 に 関 す る著述 で,
「銀行 論 とは何 か」に つ い て明 確 に定 義 した テ キ ス トはや は り見 当 らな い。 以 下 の二 例 で は,そ の代 りに 当該 テ キ ス トの 内容 説 明 を して い る。
らラ
① 鈴 木 芳 徳 編 著 『銀行 論講 義 』
内容 に つ い て説 明 す る と,序 章 で は 「金 融 と銀 行 」 に つ い て の ご く一 般 的 な観 念 を与 えて 導 入部 と し,つ づ く第1章 で は,わ が 国 の 銀 行 を念 頭 にお いて,「 銀行 の業 務 」につ い て概 説 し,銀 行 業 務 を中 心 に金 融 の 仕 組 み を示 して い る。 第2章 は,「 銀行 機 構 の基 礎 概 念 」と して理 論 的 に立 ち入 っ て の説 明 を試 み て い る。 第3章 は,「 景 気 変 動 と銀行 制 度 」にっ い て述 べ,現 代 の経 済 とそ こで の 金 融 政 策 に説 き及 ん で い る。 第4章 は,
「国際 業 務 と多 国籍 銀 行 」につ いて,理 論 的 な分 析 と現 況 の 解 説 をあ わ せ 試 み た もの で あ る。 第5章 は,「 銀 行 界 ・現 下 の課 題 」 と して,今 日わ が
国 の銀 行 界 が 直 面 して い る5つ の 問題 を と りあ げ て分 析 して い る。
s)
② 池尾 和 人 ・金 子 隆 ・鹿 野 嘉 昭 『ゼ ミナ ー ル 現 代 の銀 行 』
本 書 は,現 代 の 銀行 活 動 に関 す る きわ め て基 本 的 な理 解 の 内容 を述 べ た 銀行経営と内部管理33
もの で あ る,と した 上 で,同 書 の構 成 を以 下 の よ うに説 明 す る。
まず 第1章 で,銀 行 とは何 か に つ い て理 論 的説 明 を行 った 上 で,第2 章 で は,よ り実 務 的 に立 ち入 った形 で わ が 国 の 銀行 経 営 の 実 状 に つ い て 解 説 す る。 続 く第3章 か ら第5章 まで は,銀 行 の 基 本 機 能(与 信 機 能, 決 済 機 能,信 用創 造 機 能)の それ ぞれ に関 わ る基 本 事 項 の検 討 にあ て ら
れ る。 す な わ ち,第3章 で は,銀 行 の 与 信 機 能 の本 質 が情 報 生 産 的 な活 動 に あ る こ とが 主 張 され,第4章 で は,情 報 技 術 革 新 の成 果 を受 けて ま す ます 高 度 化 しつ つ あ る決 済 シ ステ ム を め ぐる問題 点 が 指 摘 され る。 第
5章 は,銀 行 が通 貨 供 給 の 主体 で あ る とい う側 面 に関 して分 析 を加 え て い る。 また,第6章 と第7章 は,そ れ ぞ れ,個 別 の 銀 行(ミ ク ロ)の 観 点 か らの リス ク管 理 と信 用 秩 序 維 持 とい う政 策(マ ク ロ)の 観 点 か らの リス ク管理 の 問 題 を論 じて い る。 そ して,最 後 の第8章 で は,現 代 の 銀 行 が 直 面 す る諸 問 題 を概 観 し,本 書 全 体 の 結 び と して い る。
(3)対 象 範 囲 の 比 較
金 融 論 と銀 行 論 とい う二 つ の学 問 領域 は,定 義 が 明 確 で な い ば か りで な く, 現 実 的 に は その対 象範 囲 もか な り重 複 して い る。 そ の点 を上 に引 用 した テ キ
ス トか ら示 そ う。
金 融論
『金 融 論 の基 礎 』 第1章
第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 第7章
34国 際 経 営 論 集
総論
金融機 関 と金融市場 貨 幣 と貨幣市場 経済主体の金融行動 銀行行 動の理論 証券市場
金利裁定 と利子 の期間構造
No.111996
銀行論
『ゼ ミナール 現代 の銀行 』 銀行 の基本機能
日本 の銀行制度 と銀行経営 貸 出市場 の分析
決済 シス テム と技術 銀行行 動 と通貨供給
リスク管理 と銀行行 動 銀行規制 と監督
第8章 マ ク ロ経 済 と金 融 金 融 環 境 の変 化 と銀 行 経 営
第9章 金融 政策
第10章 国 際 金融
(本文285ペ ー ジ)(本 文196ペ ー ジ)
強 い て言 え ば,銀 行 論 は金 融 論 の 主 要 ポ イ ン トを最 初 の 数章 に集 約 し,残 りを よ り具 体 的 な銀 行 業 務 な い し経 営 の 問題 に充 て る とい った構 成 が多 い。
上 記 例 で は,ペ ー ジ数 の関 係 もあ ろ うが,皮 肉 な こ とに金 融 論 の 方 が銀 行 の 問題 に よ り詳 しい とい う感 じが あ る。
(4)領 域区分 のあい まい さと内容面の不満
7)g}
現 代 銀 行 の経 営 課 題 を提 示 して好 評 の津 田和 夫 『現 代 銀行 論 入 門 』 で は,
「銀行 論 」 は何 を対 象 とす べ きか に つ い て,次 の 項 目が 含 まれ る,と して い る。
① 貨 幣 経 済 に お け る幅 広 い金 融 仲 介機 能 の 基礎 と歴 史
② 現代 資 本 主 義 経 済 社 会 に お い て銀 行 が提 供 し,あ るい は銀 行 が社 会 か ら期 待 され て い る業 務 や 営 業 活 動 の概 要 と本 質
③ 銀 行 の行 動 に影響 を及 ぼ し,ま た銀 行 が影 響 を拡 大 して い る多 彩 な周 辺 業 務 の 実 態
④ 国際 経 済,国 際 金 融,内 外 資 本 交 流 な どへ の銀 行 の 関 わ り
⑤ 健 全 な金 融 秩 序 維 持 の た め,世 界 中 の多 くの 関係 者 で議 論 され,各 主 権 国 家 や 国 際 機 関 で採 用 され て い る諸 規制 ・慣 行 ・行 政 な ど金 融政 策 の
変遷 過 程 の 現 状 な らび に そ の 展 望
そ して,銀 行 論 の 対 象 範 囲 は広 く しか も絶 えず 変 化 して い るの で,諸 要 因 に よ って 多 くの 選択 肢 が あ ろ う,ま た,研 究対 象 が 激 変 して い るの で 「銀 行 論 」 と して体 系 的 な もの とす るの に な じまな い,と して い る。
金 融 論 の側 か ら言 え ば,著 者 達 は 「一 般 的 で抽 象 的 な理 論 よ り も,現 代 の や や 身 近 な課 題 」や 「金 融 の グ ロ ーバ リゼ ー シ ョン を考 慮 して国 際 的 な通 貨 ・
銀行経営と内部管理35
金醐 幽 を カバ ー した い とい う希 勤 §あ る.こ れ は,出 版 社 側 の商 業 的 な 要求 に も合 致 して い よ う。
これ らの 要 因 が相 まっ て領域 区分 の あ い ま い さ を生 み,重 複 化 の原 因 に も な っ て い る。 津 田(前 掲書)が 指 摘 す る よ うに,「 金 融環 境 の 変 化 の 下 で の体 系 化 の困 難 さが あ る」 こ と も事 実 で あ ろ う。
一 方,テ キ ス トの 内容 面 に つ いて も不 満 が 特 に実 務 家 の側 か ら表 明 され て
い る。 例 えば,田 丸 務 『現 代 の 銀行 』で は,「 生 きた銀 行 論 」 を 目指 して,同 書 を執 筆 す る に至 った経 緯 を述 べ て い る。
「私 は,銀 行 の 業 界 団 体 の業 務 に携 わ るか た わ ら,平 成4年 度1年 間 にわ た って 千 葉 商 科 大 学 で 『銀 行 論 』 を講義 す る機 会 にあ ず か った 。講 義 に際 し て,出 版 され て い る本 はす べ て揃 って い る大 きな書 店 を何 軒 か 回 り,『銀行 論 』 の テ キ ス トに な る適 当 な本 が ない か探 した が,あ い に く見 つ け る こ と は で きな か っ た。 あ る本 は信 用創 造 を 中心 に抽 象 論 ばか りが 展 開 さ れ て い た り,金 融 制 度 論 が 中 心 で あ った り,あ るい は明 治 期 の銀 行 史 が 中心 で あ った り し,今 日の 銀行 の現 実 の 姿 に つ い て あ らゆ る面 か ら動 態 的 に捉 ら え た本 は,ほ とん どなか った 。 結 局,私 は,講 義 の都 度5ペ ー ジ程 度 の レ ジ ュ メを ワー プ ロで 作 成 し,そ れ を大 学 で コ ピー し学 生 に配 布 し,そ れ に即 して授 業 を進 め た。」
論 者 も同 様 に,既 往 の金 融 論 な い しは銀 行 論 が,バ ブ ル経 済 の崩 壊,金 融 ・ 証 券 不 祥 事,国 際 的 な リス ク管 理,大 和 銀行 ニ ュ ー ヨー ク事 件 等 に象 徴 さ れ
る経 済 の 国際 化 か らグ ロー バ ル化 へ の 新 た な環 境 変 化 に対 応 す る素 地 が 用 意 され て い るの か ど うか につ いて,疑 念 や 不 満 を懐 い て い る もの の一 人 で あ る。
こ こで は,微 力 なが ら銀行 の 内部 管 理 と経 営 課 題 につ い て指 摘 して来 た立 場 か ら,幾 つ か の 批 判 を試 み た い と思 うの で あ る。
以 下 で は,や や 原 点 に立 ち帰 って議 論 を続 け よ う。
36国 際 経 営 論 集No.111996
3銀 行 経 営 論 の 展 開 と問 題 意 識
(1)前 史
昭 和20年8月 の敗 戦 以 来,占 領 軍 に よ る制 度 改 革 が 金 融 関 係 を含 め た あ ら ゆ る分 野 で 進 め られ た。 戦 後 の イ ンフ レ下 の 資 金 不 足 は昭 和30年 代 の 高 度 成 長 期 へ 引継 が れ て量 的 規 制 が続 き,日 本 銀行 の 金 利 政 策 が 総 て を主 導 した 。 一 方,厳 重 な為替 管 理 下 で資 金 移 動 は制 約 され,第 一 次 石 油 シ ョ ック以 降, 1974年2月 の 変動 相 場 制 ・開 放 経 済 体 制 へ移 行 す る まで の金 融 環 境 は,銀 行 経営 に とって は一 定 の 利 鞘 が 常 に保 証 され,経 営 の 巧 拙 が 問 わ れ な い,い わ
ば 「銀 行 経 営以 前 」 の 時 代 で あ っ た 。
そ の後,第 二 次 石 油 危 機 を経 て,経 済 の停 滞 局 面 に入 り,1985年 の プ ラザ 合 意 以 降 は為 替 相 場 の 安 定 を 目指 した 国 際協 調 の 時代 とな りi金 融 ・為 替 面 の 自由化 と共 に真 の 競 争 の時 代 が 到 来 した。
学 術 的 な産 物 と して も これ らの時 代 的背 景 に影 響 され る一 定 の 限 界 が あ っ
lD
た と思 わ れ る。 高野(前 掲 書,初 版1975年)は,「 初 期 の 銀行 論 に は,銀 行 業 務 論 が そ の 中心 的 内容 を示 して い た」 として,都 銀 の調 査 ス タ ッ フ を中心 と す る銀 行 論 の研 究 と して,紅 林 茂 夫 『現 代 銀 行 論 』(有 斐 閣),阿 達 哲 雄 『現 在 の 銀 行 』(日 本 経 済 新 聞 社),近 沢敏 里 「現 代 ア メ リカ商 業 銀 行 論 』(文 雅 堂)
を挙 げ て い る。
一 方,学 者 の 研 究 著 書 と して,板 倉 董 一 『新 訂 銀 行 論 』(東 洋 経 済 新 報 社),山 下 邦 男 『銀 行 論 』(東 京 大 学 出版 会),沖 中恒 常 『銀 行 経 営 』(銀 行 研 修 社),樋 口午 郎 『銀行 理 論 』(東 洋 経 済 新 報 社)な どが代 表 的 文 献 と して数
え られ る,と して い る。
そ して,「 これ らの諸 文献 は従 来 の 銀 行 論 や 銀 行 業務 論 の 色 彩 が つ よ く,銀 行 経 営 学 の プ ロパ ー の文 献 と して は,経 営 学 者 の手 に よ る著 書 は皆 無 で あ る
とい っ て よ い」 と述 べ て い る。 以 下 同 書 をわ が 国 に お け る最 初 の 銀 行 経 営 論 銀行経営と内部管理37
の著 述 と して内 容 を見 て み よ う。
(2)高 野 太 門 「現 代 の 銀 行 経 営 〔改 訂 〕」 の 問 題 意 識(1919年,初 版1975年) ま ず,章 立 て を示 し て お こ う。
第1章 第2章 第3章 第4章 第5章 第6章 第7章 第8章 第9章 第10章
第11章 第12章
銀行経営学 の研究 銀行経営学 の体 系 銀行 の機能
銀行経営原則 銀行経営戦 略
銀行経営 にお ける収益性 ア メ リカの銀行収益 銀行貸 出お よび貸 出政策 銀行 マーケ テ ィング戦略 ア メ リカの銀行 マーケテ ィ
ング
銀行 の流動性 銀行の 自己資本論
第13章 第14章 第15章 第16章
第17章 第18章 第19章 第20章 第21章 第22章 第23章 第24章
銀行 の安 全性
経 営診 断 と経 営 構 造 銀行 経 営 の 展 望
ア メ リカの リテ イル ・バ ン キ ング
銀 行 経 営 の経 営 理 論 的考 察 ア メ リカ の銀 行 貸 出 と管 理 ベ ネ ッ トの銀 行 支 店 論 西 ドイ ツの銀 行 シス テ ム 西 ドイ ツの銀 行 経 営 学 研 究 西 ドイ ツの銀 行 規 制
西 ドイ ツの銀 行 経 営 学 銀 行 経 営 成 長 論
本 書 は,三 和 銀 行 で 経 営 診 断業 務 等 に従 事 した後,近 畿 大 学 商 経 学 部 教授 とな った 著 者 に よ る 「銀 行 経 営 論 」 で あ る。 銀行 経 営 の基 本 原則 を は じめ, 銀行 マ ー ケ テ ィ ング,経 営 戦 略 等 を と り上 げ,ア メ リカ,西 ドイ ツ等 外 国 の 銀行 経 営 学 の成 果 を紹 介 しなが ら,変 化 す る環境 に対 して 銀行 は いか に対 処 す べ きか を論 じた もの で あ る。
① 〔は じめ に〕で は 「金融 サ ー ビス の提 供 の 過程 にお いて,経 済 の運 営 に 調整 の とれ た節 度 あ る銀 行 行 動 が 展 開 され る必 要 が あ る。」 とし,「 銀 行 経 営 環 境 の激 動 の な か で,常 に経営 の 自己 責任 の 上 に立 って,理 論 的検 討 を加 え た。」 と,執 筆 の立 場 を明 らか に して い る。 そ して 「銀 行 経 営 の研 究 を通 し て,本 書 は特 殊 経 営 学 と して の 銀 行 経 営 学 の 体 系 化 を試 み た次 第 で あ る。 そ
38国 際経営論集No.111996
の意 味 で も本 書 は銀 行 経 営 学 と して は,わ が 国 で は じめ て の体 系 的 な著 書 と もい え よ う。」 と,著 者 な りの 自負 を示 した。
② 〔第1章 銀 行 経 営 学 の 研 究3わ が 国 に お け る銀 行 経 営 学 の研 究 〕 で は,
「戦 後 ア メ リカの 経 営 学 が 導 入 され,そ の一 環 と して,ア メ リカの 銀 行 経 営 の研 究 が 実 施 され は じめ た 。 ア メ リカへ わ が 国 の銀 行 等 の代 表 団 が 派 遣 さ れ,ア メ リカ の銀 行 事 情 の研 究 や個 々 の 都 市 銀 行 の トレー ニ ー 制 度 を通 し て ア メ リカ の銀 行 業 務 の研 究 と導 入 に努 めた 。 よ うや くア メ リカ の銀 行 経 営研 究 が 経 営 学 の一 特 殊 部 門 と して 研 究 対 象 に な り,実 際 に研 究 され は じ め た の は非 常 に新 ら し く,1970年 代 か らで,具 体 的 に は,都 市 銀 行 の実 務 家 を中 心 とす る銀 行 研 修 社 編 『明 日の 銀行 経 営 シ リー ズ 』即 ち経 営 戦 略, マ ー ケ テ ィ ングTイ ノベ ー シ ョ ンほか に よ る もの で あ る。」
と説 明 す る。
っ け加 えれ ば,第1次 オ ン ラ イ ン化 が 開 始 され た 昭和40年 代(1965〜)に は事 務 効 率 化(銀 行 オ ー トメー シ ョ ン)が 銀 行 経 営 の 中心 課 題 と目 され た 時 期 が あ った こ と も指 摘 され よ う。
③ 〔第4章 銀行 経 営 原 則 〕で,安 全 性,流 動 性,収 益 性,公 共 性 とい っ た 一 般 的 原 則 に加 えて,下 記 の よ うに 「分 散 性 の原 則 」 を唱 導 して い る。
「銀 行 経 営 の 安 全性 を維 持 す るた め に は,当 然 資 産 へ の運 用 を健 全 に す る必 要 が あ る。 そ の た め に は,常 に危 険 分 散 の思 想 を資産 運 用 に適 用 す る必 要 が あ る。 これ は割 引 や貸 出 面 の み な らず証 券 投 資 の 面 に も適 用 され る。
例 え ば 同一一一貸 出人(企 業)に 対 す る融 資 限 度 の制 限 や 貸 出 額,有 価 証 券 投 資 額 へ の制 限,資 産 の 不 動産 へ の 過 度 の投 資 に伴 う危 険 の発 生 と流 動 性 の 喪 失 に対 す る制 限 な どその 表 わ れ で あ る。 これ らを は じめ過 度 の銀 行 の 行 動 に対 して は常 に大 衆(蔵?)行 政 当局 の監 督 の も とに おか れ て い るの で あ りs銀 行 経 営 に常 に弾 力 的 に して合 理 的 な資 金 の 受 託 機 能 と運 用 機 能 の 発 揮 を求 め る もの で あ る。」
銀行経営と内部管理39
90年 代 のバ ブル 崩壊 ・住 専 問題 等 の反 省 か ら きた 後 知 恵 で な い こ とを勘 案 す れ ば,既 に この 時 代 に この よ うな リス ク管 理 の 思 想 を持 って い た こ とは大 い に評 価 され よ う。
④ 〔第8章 銀 行 貸 出 お よ び貸 出 政 策1貸 出 の た め の 企 業 評 価(1) 優 良企 業 の 条 件 〕 の 中 で,著 者 は安 定 成 長 企 業 の 基 本 的要 件 に加 えて,
「そ の企 業 の経 営理 念,哲 学 の 明確 に樹 立 され た企 業 で あ り,か つ単 に利 潤 分 配 の ル ー ル が 確 立 され て い るの み な らず,利 潤 以 外 の また は金銭 以 外 の 従 業 員 の 能 力 開 発 育 成 とい う非 経 済 的側 面 の利 潤 を も重 視 す る企 業 が望 ま しい。 同 時 に従 業 員 が 積 極 的 に経 営 へ参 画 で きる経 営 組 織 体 で あ り,す ぐ れ た 自主技 術 を もつ こ とは 国際 性 の 面 で の発 展 を考 慮 して必 要 で あ る。
リー ダ ー シ ップ の 確 立 に つ い て も,経 営 者 自身 の 経 営 理 念,哲 学 に徹 (徴?)し て 一 貫 して お り,従 業 員 の行 動 能 力 が 自然 に発 揮 で き る よ うに制 度化 され て い る こ とが 優 良 企 業 の備 え る条 件 で もあ ろ う。(中 略)す な わ ち 戦 略 的諸 条 件 に非 常 に優 れ た点 を有 す る と と もに経 営 管 理 の面 で も業 績 主 義 管 理 を は じめ明 確 な財 務 方針,部 門 間 の バ ラ ンス を と るた め の調 整 策, 業 績 評 価 シ ス テ ムの 採 用 とか モ ラー ル 向上 策 や 意 欲 的 社 内教 育 研 修 体 系 な
どを所 有 して い る。」
「(前略)こ の よ うな マ ネ ジ メ ン トの側 面 か ら も戦 略 的 側 面 か ら と同様 に安 定 成 長 企 業 に は す ぐれ た面 が認 識 され て い る。」
と して い る。 これ 等 の 知 見 は,著 者 の経 営 診 断 の 経験 か らの 産 物 と想 像 され る が,論 者 は こ こ に 示 さ れ て い る 経 営 哲 学,企 業 文 化(corporatecuL ture),人 材 管 理 の 問題 提 示 を,バ ブ ル で泥 まみ れ に な った わ が 国 金 融 機 関 の 今 後 の あ り方 につ いて の 指 針 とな る もの と して評 価 す る。
⑤ 〔第13章 銀 行 の安 全 性 〕で は,「1商 業 銀行 の 安 全 性 」と して,次 の よ うな指 摘 を して い る。
「経 済 の不 況 期,不 安 定 期 に は,銀 行 の 経 営 破 綻 は これ まで に も見 られ た。
1930年 代 の ア メ リカの 銀 行 の破 綻 をは じめ,1974年 の世 界 的景 気停 滞 下 で
40国 際 経 営 論 集No.111996
の ア メ リカ,西 ドイ ツ,イ ギ リス の 銀行 の 一 部 に経 営 破 綻 をみ た こ とは, 銀 行 経 営 の基 本 的 在 り方 に対 して 多 くの警 告 と示 唆 とを与 え る もの で あ る。
銀 行 経 営 の基 本 的 経営 姿 勢 は健 全 経 営 主 義 に一一貫 す る こ とで あ る。」
「(前略)一 時 的 投 機 的 行 為 は 銀行 の経 営 破 綻 の端 緒 とな る例 が 多 い。例 え ば欧 米 の銀行 の 投 機 的 為 替 操 作 に よ る損 失 の 発 生 で あ る。 また不 良貸 付 に よ る資産 の非 流動 化 で あ る。 銀 行 の もつ社 会 性,公 共 性 を十 分 に認 識 して , 銀 行 経 営 者 管 理 者 の意 思 決定 の過 程 に誤 りの な い よ う希 望 した い。 経 営 戦 略,経 営 戦 術 の重 視 の た め に,経 営 モ ラル を欠 落 す る こ とは許 され な い こ
とを再 認 識 す べ きで あ る。」
これ らは,最 近 の 東 京 の 二 信 組 問 題,兵 庫 銀行,コ ス モ ・木 津 信 組 の破 綻 に見 られ る経営 者 不 在 に対 す る時 代 を先 取 りした 警鐘 で あ っ た。
⑥ 〔第17章 銀 行 経 営 の 経 営 理 論 的考 察 〕で は,「6銀 行 経 営 の 動 態 的 経 営 理論(ll)体 質 形 成 に つ い て は」 で は,下 記 を企 業 文 化 につ い て の先 駆 的 見 解 と して 特 に評 価 した い。
「銀行 に は,そ れ ぞ れ固 有 の体 質 が あ る。その体 質 の実 体 に よ って,銀 行 の バ イ タ リテ ィー が生 れ て くる し,バ イ タ リテ ィー の差 異 が 発 生 して くる。
経 営 体 質 は多 様 の要 因 に よ って 形成 され る。 た とえば経 営 者 の体 質 はす な わ ち 経 営 の体 質 を形 成 す る要 因 と もな る し,中 堅 幹 部 や従 業 員 の生 活 態度 に表 わ れ る もの は,そ の 経 営 の理 念,哲 学 か ら生 れ る精 神 的 要 因 が あ る。
また取 引 先 の構 成 内容 に よ っ て,お の ず か ら銀 行 の体 質 は形 成 され て くる し,ま た 経 営 の もつ技 術 力,経 営 特 性 に よっ て も固有 の体 質 は形 成 され る もの で あ る。体 質 は つ ね に革 新 され,時 代 の 要 求 に即 応 した もの に革 新 さ れ ね ば な らな い 。 新体 質 の 形 成 に経 営 者 を は じめ全 従 業 員 が 取 組 まね ば な
らな い し,そ の よ うな姿 勢 の な か に体 質 が表 わ れ るの で あ る。」
⑦ 〔第24章 銀行 経 営 成 長 論2銀 行 合 併 の論 理 と ビヘ イ ビア〕 で は, 次 の指 摘 を して い る。
「まず合 併 に よ る銀 行 成長 で あ るが,ア メ リカの 商 業 銀 行 の発 展 の 一 つ の 大
銀行 経 営 と内 部 管 理41
き な要 因 とな って い る。 わ が 国 にお い て も,都 市 銀 行 は合 併 を く り返 して い る。 そ のた び に都 銀 の ラ ン クの変 動 が み られ る。銀 行 合 併 が経 営 戦 略 的 に銀 行 成 長 の0つ の 妥 当 な要 因 で あ る こ とに疑 問 をさ しは さ ま ない が,銀 行 合 併 に は合 併 の合 理 的論 理 の あ る こ とを忘 れ て はな らな い。 強 者 に よ る
弱 者 の 支 配 とい う強 弱 の一 方 的論 理 は今 日の社 会 で は もはや成 立 しな い。
また 合 併 を少 数 者 の秘 密 主義 の も とで 導 こ う とす る旧 い 考 え方 や対 応 は今 日で は通 用 しな い。 合 併 の論 理 は合 併 その ものが,銀 行 経 営 の 当 事 者 の 立 場 か ら妥 当 な合 理 性 を もっ もので な け れ ば な らな い。 銀 行 が 合 併 を実 行 す る場 合 に は,そ れ に適 合 した理 由が 存 在 し な けれ ば な らな い。 しか もそ の 理 由が そ の銀 行 に とって決 定 的重 要性 を もっ もの で な けれ ば な らな い 。」
著 者 は,こ の他,銀 行 合 併 に お け る経 営 問題 をめ ぐっ て種 々 の 有 益 な指 摘 を して い るが,い ま こ こで それ を紹 介 す る余 裕 はな い。
⑧ 評 価
「本 著 はわ が 国 にお い て は この銀 行 経 営 学 の分 野 で最 初 の 文献 で あ り,そ の
こ う し
意 味 で も,銀 行 経 営 学 研 究 の 囑 矢 とす る もの で あ る。 本 書 の意 義 は また こ こ に存 在 す る もの と思 う。」(同 書,4ペ ー ジ)と 著 者 は述 べ て い る。
銀行 経 営 学 を新 た に展 開 す る に当 り,著 者 な りの論 理 構 成 が あ るが,こ こ で は現 時 点 に照 して の著 者 の 問題 意 識 に焦 点 を当 て て 同書 の 今 日的価 値 を み た の で,著 者 に対 して はや や 不公 平 だ っ た か も知 れ な い。
また,著 者 は紙 数 を割 い て,ド イ ツ ・ア メ リカ にお け る銀 行 経 営 学 の足 跡 を紹 介 して い るが,こ こで は そ の殆 どを省 略 した 。
た しか に,本 書 か ら は先 駆 的 な試 み と して の 不 十 分 さ は感 じ られ る もの の, 前 記 で紹 介 した7項 目の 内容 か ら著 者 の 問 題 意 識 の正 鵠 さ を論 者 として は高
く評 価 す る もの で あ る。
何 よ りも優 れ て い るの は,著 者 の視 点 の高 さで あ る。 銀行 経 営 を論 ず る者 は,「 我 れ も し銀 行 経 営 者 な りせ ば」の気 概 が な けれ ば,あ えて筆 を執 る に価
42国 際経営論集No.111996
し な い と,論 者 は 考 え る か らで あ る 。
1970年 代 に つ と に 指 摘 され た 問 題 意 識 が そ の 後 ど の よ う に 今 日 の 学 究 に 引 継 が れ,発 展 さ れ て い る か を,次 の テ ー マ と し て検 討 し よ う。
4銀 行 経 営 の今 日的 課 題
銀 行 経 営 を正 面切 っ て と り上 げた著 書 は,そ の後 も多 くは な い。 そ の 中 で 比 較 的最 近 の 著述 で あ る次 の二 著,鹿 児 嶋 治利 『銀二行 経 営論 』と津 田和 夫 『現 代 銀 行 論 入 門 』 を中心 に,銀 行 経 営 の 今 日的 課 題 は何 な の か を,以 下 に探 っ
て み よ う。
序 早 第1章 第2章 第3章 第4章
(1)鹿 児 嶋 治利 「銀 行経 営 論 」(1992年)の 問 題 提 起
高 野 前 掲 書 と同一 の 出版 社 か ら,類 似 テ ー マ で の13年 を経 ての 発 刊 で あ る こ とか ら,本 書 は前 述 書 を実 質 的 に引 継 ぐ もの と推 測 され る。 「銀 行 経 営 論 」 とは どの よ うな問 題 を対 象 とす るの か,著 者 の 考 え を知 るた め,以 下 に章 立 て を まず紹 介 す る。
D第8章
第5章 第6章 第7章
①
銀行 の経営環境 変化 銀行 の経営戦略 経営組 織の特性
銀行 の経営意思決定 システ
ム
銀 行 の経 営 計 画 と組 織 開 発 リテ ー ル市 場 の特 性
マ ー ケ テ ィ ング戦 略
第9章
第10章
第11章 第12章
リテー ル部 門 組 織 と意 思 決 定 シス テム
銀 行 ホ ー ル セ ー ル 市 場 ・企 業 金 融 の変 化
ホ ール セ ー ル部 門戦 略 ・主 力 銀行 制 度 の変 化
多 国籍 銀行 の 発 展 と戦 略 多 国籍 銀 行 組 織 と意 思 決 定
シス テ ム
〔は しが き〕で,北 海 道 拓 殖 銀 行 出 身,本 書 執 筆 時 松 阪 大 学 教授 で あ っ た著 者 は,「 『銀 行 論 』 は 『金 融 論 』 の一 分 野 を構 成 して い るが,対 象 とす る
銀 行 経 営 と内 部 管 理43
わ が 国 銀 行 が長 年 厳 格 な行 政 規 制 下 に あ った た め,従 来 政 策 手 段 と して 『銀 行 機 能 』活 用 が 中心 課 題 で貨 幣経 済 学 か らの ア プ ロー チ が そ の主 流 で あ った 」
と述 べ る。
さ らに,「 最 近,国 際 化 と自 由化 の進 展 に よって 『銀行 論 』の実 証 的研 究 が 盛 ん に な っ て きた 。 それ は急速 な金融 自由化 の進 展 で,現 実 の 銀行 経 営 の た め の課 題 解 決 が 強 く求 め られ 経 営 内部 の 問題 整 理 を必 要 とす るか らで あ る」
と指 摘 す る。
著 者 は,「 本 書 は,『 金 融 論 』 と 『経 営 組 織 論 』 『情 報 シ ス テ ム論 』 さ らに,
『多 国籍 企 業論 』 の 狭 間 に あ る学 際 的 領 域 か ら,『 特 殊 経 営 学 』 と して の 『銀 行 経 営 論 』を実 証 的情 報 に よ り構 成 を試 み た もの で あ る。」と,自 ら位 置 付 け
て い る。
② さ らに,序 章 で は,
「本 書 の狙 い は,国 際 的 に共 通 して進 行 す る 「金 融 自 由化 』 「国 際化 』 に従 っ て 「銀 行 経 営 』 が 新 しい試 練 に晒 され て い る状 況 か ら 『銀行 』 が 環境 変 化 に対 応 した計 画 的,戦 略 的 経 営 を求 め られ て い る点 を埋 め る もの で あ る。
この た め 『状 況適 応 の 経 営 学 的手 法 』 を銀 行 経 営 に応 用 し銀 行 の経 営 管 理 と組 織 論 の 完 成 を意 図 す る もの で あ る。」 と敷 衛 す る。
③ 〔第2章 銀 行 の 経 営 戦 略2銀 行 事 業 領 域 の決 定 要 因 〕 と して,銀 行 の歴 史,権 力 構 造 と意 思 決 定 者 と共 に,次 の よ うに銀行 の 持 つ 企 業 文 化 を 挙 げ て い る。
「す べ て の企 業 体 は独 自の 内 的 文化 を持 って い る。と くに銀 行 の企 業 文 化 は 伝 統 的 で あ り,銀 行 が 持 つ 歴 史 を背 景 と して それ ぞ れ 固有 の企 業文 化 が存
在 す る。 従 業 員 の タ イ プ,銀 行 の公 式,非 公式 の行 動 を規 制 し,組 織 体 の 規 律 や 慣 習 が 形 成 され て い る。事 例 と して は,住 友 銀 行 は 『商 道 に徹 した ス タ イ ル』 で,三 菱 銀行 は 『堅 実 な経 営 』 を標 榜 す る。 また,日 本 興 業 銀 行 は 『伝 統 を尊 重 した 企 業 との 知 的共 同体 』 として の信 頼 度 の高 い企 業 文 化 を形 成 して い る。」
44国 際経営論集No.111996
④ 〔第3節 リス ク管 理 と経 営組 織1業 務 領 域 別 リス ク〕 で は,
「銀 行 の リス ク負 担 は,銀 行 が社 会 的機 能 の 付 託 を受 け それ に応 え る た め慎 重 な 『リス ク管 理 』が 一般 企 業以 上 に厳 密 な レベ ル で 求 め られ て い る。 腱 全 銀 行 主 義 』 の観 点 か ら一 般 企 業 よ り慎 重 で あ り,危 険 負担 を,よ り極 小
に抑 制 す る伝 統 的 な経 営 思 想 は,銀 行 の一 般 的 な 通 念 で あ る。 この た め 銀 行 の経 営 リス ク は顧 客 の信 用 リス ク を審 査 し,リ ス ク軽 減 を図 る こ とに最 大 の 課 題 が あ った。」
「しか し金融 自由 化 は,経 営 の選 択 肢 を拡 大 し銀 行 の リス ク テ イ クの機 会 を も拡 大 す る。 『信 用 リス ク』の ほ か,規 制 金利 預 金 か ら 自由 金利 市 場 資 金 に 調 達 原 資 を転 換 した こ とは,『 金利 リス ク』 『為替 リス ク』 さ ら に 『価 格 変 動 リス ク』な どを生 じ させ て い る。 また シス テ ムの 巨 大 化 は 『EDPリ ス ク』
や 『シス テ ム リス ク』 を も増 大 させ る。 また 多 通 貨 管 理 が 必 要 な 『国 際 化 』 は 『流 動1生 リス ク』 さ らに 『外 貨 金利 リス ク』 を も拡 大 させ る。」
と論 じて い る。
⑤ 〔第4章 銀行 の 経 営 意 思 決 定 シ ス テ ム1経 営 組 織 と意 思 決定 シ ス テ ム 〕 で は,企 業 文 化 の 変 質 に つ い て指 摘 す る。
「い ま まで銀 行 の企 業 文化 は,商 業 銀 行 は経 営上 の リス クが 低 く,顧 客 に対 応 す る慎 重 な レス ポ ン スが 普 通 で あ っ た。 この た め 銀行 の 風 土 は典 型 的 な
『手 続 き文 化 』 が 支 配 的 な意 思 決 定 の特 質 で あ る と され て きた。」
「(前略)銀 行 固有 の企 業 文 化 を背 景 とす る銀 行 の意 思 決 定 の特 質 も,業 務 領 域 の 多 角化 に よっ て徐 々 にそ の文 化 その もの を変 質 させ て い る。 す なわ
早 い
T ブ イ ー ド バ ツ ク
↓
遅 い
図4‑‑1
男性的文化 よ
高 リス ク的 文 化
高 ←
出 所:海 老 沢 栄 一 編 『経 営 情 報 管 理 』 同 友 館,1988.
組 織 文 化 の 類 型
結 果 の フ ィ 〜 ドバ ッ ク
よ く働 き よ く遊 ぶ 文 化 手 続 き 文 化
リ ス ク 低
7,p.32
銀 行 経 営 と内部 管 理 45
ち,リ ス クが高 く,レ ス ポ ンス が迅 速 で な けれ ば な らな い 「投 資 銀行 分 野 』 へ の進 出 は,図4‑1に 示 され る通 り 『男 性 的 文 化 』 の領 域 を も銀 行 内 に 両 立 させ る こ と とな り,そ の意 思 決 定 方 式 は伝 統 的 な稟 議 制 度 に よ る商 業 銀行 方 式 と異 な る方 式 との 併 存 が 始 ま って い る。 す な わ ち在 来 の銀 行 の 企 業 文 化 を も変 革 させ て い るの で あ る。
この企 業 文 化 の違 和 感 は,銀 行 が マ ー チ ャ ン ト ・バ ン ク業 務 や,イ ンベ ス ト(メ ン ト)・バ ン クな ど証 券 業務 進 出 の際 に異 文 化 との交 流 に よっ て も た ら され て い る。」
と説 明 す る。
⑥ 第5章 か ら第10章 まで は,銀 行 の経 営 計 画,マ ー ケ テ ィン グ戦 略,リ テー ル ・ホー ル セー ル 市 場 な どにつ い て,銀 行 経 営 的 視 点 に立 っ て,組 織 開 発,企 業 金 融,主 力 銀 行 制 度 な どに も触 れ て い るが,本 論 の視 点 とは異 な る
の で,詳 細 は省 略 す る。
⑦ 最 後 の2章 は多 国籍 銀行 の 歴 史 と問題 点 を論 じて い る。〔第12章 多 国 籍 銀 行 組 織2国 際化 と リス ク管 理 〕で は,国 際 化 の推 移 と管 理 リス クの 関 係 を要 約 した 後 で,現 在 の課 題 を次 の よ うに集 約 す る。
「① わ が 国銀 行 の 国 際業 務 は収 益 性 の 高 い 国際 分 野 に傾 斜 す る傾 向 が あ る。
具 体 的 に は,i)投 資 銀 行 業 務(証 券 ・投 資顧 問 ・M&A・ 大 型 プ ロ ジ ェ ク トコ ンサ ル タ ン ト業 務),ii)新 種 業 務 ・商 品 開発(ス ワ ップ取 引 ・オ プ シ ョン取 引 ・金 融 先 物 取 引 〉,iii)為 替 ・資 金 ・証 券 デ ィー リング な ど に区分 され る。 また,進 出 の初 期 段 階 で は為 替 ・資 金 ・証 券 の デ ィー リング か ら の参 入 が 多 く,国 際 経 験 を積 ん だ銀 行 は今 後 の成 長 分 野 で あ る投 資 銀 行 業 務 が 中 心 で あ る。② 一 方 国 際 部 門 の業 務 範 囲 の拡 張 が リス ク拡 大 す る につ
れ て経 営 の健 全 性 維 持 の た め管 理 業 務 の 要 請 が 高 まって い る。」
(2)津 田 和 夫 「現 代 銀 行 論 入 門 」(1995年)の 現 状 把 握
先 に 紹 介 し た 本 書 の 著 者 は,三 井 銀 行 出 身 で,現 在 桃 山 学 院 大 学 経 済 学 部 46国 際経営論集No.111996
教授 で あ る。 本 書 の副 題 は 「金 融 シス テ ム の安 全 性 と活 性 化 」 で あ り,ま ず 章 立 て と一部 の項 目 を見 て著 者 の 最 近 の諸 事 象 に対 す る問題 意 識 を窺 お う。
第1章 銀行 業 務 の 現状 と諸 問 題
変 化 の潮 流,信 用秩 序 の維 持,金 融 資 源 の 適 正 配 分,金 融 制 度 改 革, 銀 行 の リス ク の 多様 化,自 己 資 本 比 率 の 国 際 統 一 基 準(BIS規 制),金 融 デ リバ テ ィブ管 理,銀 行倒 産 処 理 方 法
第2章 銀 行 の 基本 機 能 第3章 銀 行 の戦 後 史 第4章 銀 行 の信 用 供 与
第5章 わ が 国 銀 行 に よ る証 券 業務
証 券 付 随 業務 へ の関 わ り,証 券 基 本 業 務 へ の参 入 推 移,論 点 第6章 銀 行 の将 来 像
銀 行 の課 題 ハ イ リス ク銀 行,ロ ー リス ク銀行,ミ ドル リス ク銀 行, 金 融 持 株 会 社,不 良債 権 回 収 銀 行
① 〔は しが き〕で,著 者 は 自著 の 関 心 の 焦 点 と目的 につ いて,次 の よ うに 説 明 す る。
「本 書 の 関 心 の焦 点 は,わ が 国 の銀 行 とそ れ を と りま く国 内 の金 融 環 境 や 経 済 ・社 会 環 境 で あ るが,同 時 に国 際 金 融 や証 券 業 務 な どの 広 範 囲 な広 が り の なか で 顕 在 化 して い る さ ま ざ まな リス ク へ の対 応 とそれ に よ る金 融 シス テ ム の安 全性 と円滑 な機 能 の維 持 ・育 成 が 重 要 な テ ー マ と して認 識 され な けれ ばな らな い。」
「本 書 は銀行 論,金 融 制 度 論,金 融 シス テ ム論 等,大 学 の 専 門 課 程 や企 業 研 修 にお け る金 融 の コー ス で利 用 され る こ とを想 定 し,現 代 金 融 の 直 面 す る 課 題 を提 供 した もの で あ る。 また,内 容 に つ い て は,金 融 に関 する一 般 的 な基 礎 概 念,実 務 面 で の業 務 知 識,金 融 法務 な ど広 範 囲 の事 柄 につ い て幅 広 く取 り上 げ る よ う努 力 した。」
② 〔第1章 銀 行 業 務 の 現 状 と諸 問 題1変 化 の 潮 流(1)自 由 化 の 推
銀 行 経 営 と内部 管 理47
移 〕 で,
「本 書 の基 本 テ ー マ は 『銀 行 をめ ぐ るわ が 国 の現 代 金 融 を リス クへ の対 応 とい う観 点 で基 本 に忠 実 に,か つ変 化 の過 程 で と らえ る』 こ とに あ り,銀 行 業 務 の 現状 と問 題 点 や銀 行 の役 割 の本 質 を探 る こ とに あ る。
現 代 金 融 の潮 流 の変 化 は 自 由化 ・国 際 化 ・証 券 化 として概 括 され る。 ま た,わ が 国 に お け る制 度 面 で の対 応 は,ま ず規 制 か ら は じ ま る。」
と述 べ て い る。
③ 同 じ く 〔2信 用秩 序 の 維 持(1)預 金 通 貨 〕 で は,次 の よ うに指 摘 す る。
「金 融 自由化 に伴 う環 境 の 急 激 な変 化 や 東 西 冷 戦 構 造 の 崩 壊 に伴 う国 際 的 マ ネー フ ロー の 変 化 を背 景 と して,世 界 的 に銀行 の経 営 不 振,巨 額 の不 良 債 権 発 生,銀 行 の倒 産 とい った 問 題 が 急 浮 上 して い る。 わ が 国 もそ の例 外 で はな い。『預 金 とは何 か 』,「あ る 日突 然 預 金 が 支払 わ れ な くな った ら国 民 生 活 は ど うな るの か 』,『預 金 は どう保 護 す べ きか 』 な ど とい う古 くて新 し
い問 題 が あ らた め て論 議 され て い る。」
④ 同章 〔3金 融 資 源 の 適 正 配 分(4)資 金 配 分 の歪 み〕 で は,銀 行 に よ る土 地 バ ブ ル に至 る過程 を次 の よ うに批 判 す る。
「銀 行 は一 般 的 に コス トを顧 み な い預 金 集 め の習 性 か ら脱 却 で きず,適 切 な 与 信 管 理 手 法 の開 発 が進 展 せ ず,金 利 自由 化 に即 応 す る発 想 転 換 もな され ず,健 全 な企 業 へ の 実需 資 金 の 貸 出 し とい う地 道 な業 務 は 目立 た な くな っ た。 それ と対 照 的 に,土 地 担 保 融 資 とい う安 易 な資 金 供 給 へ一 極 集 中現 象 を引 き起 こ した 。 これ が 資 金 の適 正 配 分 に歪 み を もた ら した こ とは い う ま で もな い。」
⑤ 〔第2章 銀行 の基 本 機 能 〕,〔第3章 銀行 の戦 後 史 〕に も紹 介 した い 優 れ た指 摘 が あ るが,こ こで は省 略 して 〔第4章 銀行 の 信 用 供 与3国 際 金 融(資 本 取 引)(6)国 際 金 融 取 引 に伴 う リス ク〕 につ いて,著 者 の意 見 の み を紹 介 す る。
48国 際経営論集No.111996
「(前略)健 全 な 金 融 シ ス テ ム を維 持 す る に は,そ れ ぞ れ の立 場 で の リス ク 管 理 と自己 責 任 に尽 き る。 特 に個 人 投 資 家 な どを除 き,業 と して金 融 に携 わ っ て い る人 た ち の 自己 責任 追 及 は,ま す ます厳 し くな る傾 向 にあ る。
リス クの 主 な点 を列 記 す れ ば,信 用 リス ク,カ ン トリー リス ク,為 替 リ ス ク,金 利 ・価 格 リス ク,商 品 の属 性 リス ク,契 約 書 の適 性 の 判 断 ,仲 介 金 融 業 者 ・事 務 管 理 機 関 の適 格 性,事 務 処 理 の正 確 性,課 税 の状 況(源 泉 税 の有 無,料 率)等 で あ ろ う。」
⑥ 終 章 で は銀 行 の将 来 像 につ い て シ ナ リオ を描 い て い るが,著 者 が指 摘 す る三 つ の 銀行 の課 題 を以 下 に列 挙 して み よ う。
1.「 貸 渋 り」 と批 判 され る背 景 に あ る銀 行 の 「与 信 管 理能 力 」 2.「 信 用秩 序 維 持 」 の た め の 銀行 経 営 と制 度 的 保 障
3.不 動 産 関 連 融 資 へ の集 中 ・暴 走 の 反 省 に立 っ た 「金 融 資 産 の適 正 配 分 機 能 」 の正 常 化
5銀 行 経 営 と内 部 管理
90年 代 に入 っ てバ ブ ル経 済 の進 行 と崩 壊 の 中 で様 々 な 金融 不 祥 事 が 発 生 し, 内部 管 理 軽 視 の組 織 風 土 が 問題 視 され て い る。 国 際 面 で は,大 和 銀行 ニ ュ ー
ヨー ク事 件 が発 生 し,こ の よ うな組 織 風 土 が経 営 の 根幹 を ゆ るが す もの で あ る こ と を,は しな く も実証 した 。
大和 銀行 事 件 で は大 蔵 省 等 監 督 官庁 の体 質 まで が 問 わ れ,住 専 問 題 の処 理 の過 程 で は大 蔵 省 の 解 体 論 が 論 じ られ る昨 今 で あ る。 新 聞社 説 等 で 再 三 指 摘 され た が一 向 に改 め られ る と こ ろの な か った 日本 的 土 壌 が,今 や 国 際 的 な逆 風 の 中 で 自 己 改 革 を迫 られ て い る。
前 章 で は銀 行 論 な い し銀 行 経 営 論 の 先 見 的文 献 を紹 介 したが,今 日の課 題 に対 して果 して十 分 で あ ろ うか 。論 者 は,銀 行 の 内部 管 理 の 問題 を経 営 課 題 の 大 き な柱 と して位 置 付 け る必 要 が あ る こ とを指 摘 した い。 それ は,銀 行 経
銀行経営と内部管理49
営 の安 全 性 の原 則 の テ ー マ で あ り,ま た リス ク管 理 の 重 要 項 目で もあ ろ う。
経 営 者 の倫 理感 の 欠 如 が トップ の犯 罪 とな る時 代 で あ る。 経 営 者 も過 つ。
銀行 もその例 外 で は な い。 生 身 の 銀行 経 営 を論 す るの に,ト ップ ・マ ネ ジ メ
iz)
ン トな い しそ の批 判 の視 点 を欠 い て は,学 者 の抽 象論 に堕 す 。 問題 を単 な る 経 営 管 理 論 や 経 営 組 織 論 な どに倭 小 化 して はな らな い。
論 者 は これ まで 銀行 の 内 部管 理 と経 営課 題 につ い て様 々 な 角度 か ら採 り上 げ論 じて きた が,こ こで それ 等 を ま とめて 紹 介 し,さ らに追 求 す べ き問題 点 を探 っ て み よ う。
13)
(1)銀 行 経 営 に お け る内 部監 査 の 意義 一 一 日米 視 点 の比 較 に着 目 しつ つ 本 稿 は,原 点 に立 ち帰 っ て企 業 と監 査 の 問題 を,特 に銀行 界 にお け る経 営 と監 査 の 意 義 に的 を絞 っ て 問 い直 した もの で あ る。
内 部 監 査 の経 営 上 の位 置 付 けで は,「 内部 監査 の 前提 と して ・ トップ ●マ ネ ジ メ ン トが 内部 監 査 を よ く理解 し,利 用 し推 進 して ゆ く こ とは きわ め て重 要 な こ とで あ って,い か に内部 監 査 担 当 者 が 熱 心 で あ って も,ト ップ ・マ ネ ジ メ ン トが これ に対 して十 分 の理 解 を もた な い場 合 に は,内 部 監 査 の 結 果 が 十 分 有効 で あ り得 な い こ とに な る。」 と した 上 で,〔 お わ り〕 で次 の通 り述 べ た。
「これ まで見 て きた よ うに,銀 行 界 にお け る内部 監 査体 制 は,制 度 的 に も人 的 に も既 にそ れ な りに整 って い るの で あ る。 然 る に,最 近 の 一連 の事 件 に 見 る よ う に,な ぜ 監査 が その 実 を挙 げて い な いの か 。 内部 監 査 が 有 効 に機 能 し得 な い原 因 は ど こに あ るの か。 如 何 に制 度 が 整 っ て い て も,こ れ で は
「仏 作 って魂 入 れ ず 』 の状 態 だ と しか 言 い様 が な い。」
「筆 者 は,『 内部 管 理 を軽 視 す る経 営姿 勢 』 に その根 本 原 因 が あ る と考 えて い る。 で はな ぜ そ の よ うな経 営 風 土 が作 られ て い るの か 。 そ して,金 融機 関 内部 にお け る検 査 部 や検 査 の 実 態 は どの よ うな もの か 。 筆 者 は5年 余 の 都 銀 内部 検 査 歴 を基 に,ぜ ひ明 らか に した い,と 考 えて い る。」
50国 際 経 営 論 集No.111996
14)
② 最 近 の 銀 行 不 祥 事件 をめ ぐっ て 内部 管 理 軽 視 の 組 織 風 土 を問 う 執 筆 の 時 期 は前 後 す るが,(1)が 内部 管 理 の 理 論 篇 とす れ ば,② は そ の実 践 篇 に当 る。 以 下,論 点 を要 約 す る。
「制 度 的 に も人 的 に も相 応 の 内 部 監 査 体 制 が 整 って い る銀 行 界 で,な ぜ 経 営 トップ まで か らん だ 不 祥 事 が 頻 発 す るの か。 か か る視 点 に立 っ て,本 稿 は 銀 行 経 営 に論 点 を絞 って,内 部 チ ェ ック制 度 が尊 重 され な い企 業 風 土 と, 内部 監 査(検 査)そ の もの を軽 視 す る経 営 姿 勢 を,最 近 の銀 行 経 営 を め ぐ る諸 問題 とか らめ て,突 っ込 ん で検 討 して 見 た い。」
銀行 が らみ の個 別 の 不 祥 事 件 を論 評 した後 で,「 トップの 専 断 は チ ェ ックで き るか」との 疑 問 に対 して,「 銀 行 内 部 で の意 思 決 定 の仕 組 み を改 め トップ の 専 断 をチ ェ ック で き る よ う にす るな どは単 な る理 想 論 に過 ぎな い。」 と断 じ た 。
結 論 と して,
「内 部 監 査 は経 営 者 に所 属 す る もの で,経 営 者 の命 に よ り経 営 者 の た め に行 う組 織 内 の監 査 で あ る。 内部 監 査 を軽 視 す る経 営 姿 勢 の 下 で は,そ の 実 効 性 は とて も期 し難 い。 組 織 体 の風 土 の 問 題 で あ る。 しか し,組 織 内 の 問題 で あ るか ら,自 ら を改 革 す る意 思 が あ る な らば,制 度 問 題 と異 りi法 改正 等一 切 の 手 続 を要 せ ず,す ぐに も着 手 で き る事柄 で あ る。 最 近 の銀 行 経営 の一 連 の不 祥 事 態 か ら立 ち直 り,社 会 的信 用 を回復 す る た め に は,経 営 の 自己 革 新 が 必 要 で あ る。」
と述 べ た。
らラ
(3)金 融不 祥 事 のii系 譜"と 問 題 点 米 銀 の 対応 を参 照 して
金 融 ・証 券 不 祥 事 に関 す る反 省 として挙 げ られ て い る主 な論 調 は,一 っ は 内 部 管 理 体 制 を一 段 と重視 す べ きで あ る とい う こ と と,二 つ は不 祥 事 対 策 を 一 過 性 に終 らせ て はな らな い とい う こ とで あ る
。 しか しなが ら,果 た して そ うで あ ろ うか 。 筆 者 は,む しろ その 背 景 に内 部 管 理 軽 視 の組 織 風 土 に こそ問
銀 行 経 営 と内部 管 理51
題 が あ る と指 摘 して きた 。 その意 味 で,今 日に至 る さ まざ まな不 祥 事 件 を見 直 す こ とが,ま ず 求 め られ る と思 うの で あ る。
本 稿 で は,金 融 ・証 券 不 祥 事 の 中 で も,金 融,特 に銀 行 界 に重 点 を絞 り, 戦 後 か ら最 近 に至 る事 例 につ い て,い わ ば"系 譜"と も言 うべ き歴 史 的 な姿
を検 証 して み た。
「『企 業 の私 物 化 とモ ラル喪 失 』 の現 象 は,オ ー ナ ー経 営 者 が 自分 の息 子 を 後 継 者 とす る こ と,サ ラ リー マ ン社 長 の会 社 支 配 に よ る ドン化 に典 型 的 に 表 れ る。 株 式 会 社 が 公 開 され た 『社 会 の 公器 』 で あ る こ とをわ き まえ な い 我 が 盤 勝 手 としか 言 い様 が な い。 こう い った 人物 は あ る事 件 を きっか け に 部 下 に反 逆 され,会 社 か ら追 放 され る事 態 に立 ち到 る こ とが,し ば しば あ
る。
最 近 まで の 問題 で は住 友 銀 行 の堀 田,磯 田 の 二代 に亙 る ドンの君 臨 に よ る企 業 文 化 の 変 質 と不 祥 事 の続 発(1990磯 田会 長辞 任)が 特 に 目立 つ 他, バ ブル 崩 壊 に伴 う金 融 ス キ ャ ン ダル(1991)で 露 呈 した社 会 的倫 理 の タ ガ が 外 れ た モ ラル ・ハ ザ ー ド現 象(『 赤 信 号,皆 で渡 れ ば恐 くな い』)や 二 信 組 問題(『 会 社 の た め な ら何 を して も構 わ な い』 とい った考 え方)に 典 型 的
に表 れ て い る。 また,こ の 種 の事 例 は外 国 にお い て も事 欠 か な い 。
これ ら経 営 者 に よ る不 正 は,ま さ に 『系譜 』 とい って い い断 続 的 に現 れ る不 祥 事 で あ る。」
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(4)一 連 の偽 造 預 金 証 書 事件 につ い て 金 融 不祥 事 発 生 の メ カ ニ ズ ム を探 る
金 融 不祥 事 を め ぐ る論 議 で 問題 な の は,不 祥事 発 生 の具 体 的 な メカ ニ ズ ム とな っ て い る,架 空 名 義 定 期 預 金 証 書 の作 成 を許 す 内部 事 務 処 理 の 弱 点 や, 役 席 者 に よ る偽 造 質 権 設 定 承 諾 書 の発 生 を看 過 す る シ ス テム 上 の リス クに つ い て の視 点 が 欠 けて い る こ とで は なか ろ うか 。
本 稿 で は,実 務 的 な視 点 か ら前 記 の 諸 点 に絞 って,具 体 的 に問題 点 を追 求
52国 際 経 営 論 集No.111996
す る。 この 種 の 問題 の検 討 は,資 料 の制 約 か ら私 的 な推 測 が 中 心 に な りが ち で あ るが,本 稿 で は極 力 公 刊 資 料 を活 用 して,事 実 を積 み上 げ て 結論 を求 め る よ う努 力 して み た。
銀 行 経 営 と内部 管 理 の 議論 を深 め る た め に新 た に採 上 げ た い論 点 と して,
① 大 和 銀行 ニ ュー ヨー ク事 件 の 教 訓
② 銀 行 の リス ク管 理 と今 後 の 方 向
の二 つが あ る。 これ を明 らか にす る こ とに よ って,銀 行 の 経 営課 題 と して 内 部 管 理 の 重 要 性 が一 層 ク ロー ズ ア ップ され る だ ろ う。
大 和 銀 行 ニ ュ ー ヨー ク事 件 につ い て,論 者 は先 に以 下 の よ うに短評 を加 え 17)
て い る。
「さ る9月26日,日 本 経 済 新 聞 夕刊 の一 面 は つ ぎの ニ ュー ス を報 じた。 『大 和 銀,1100億 円 の損 失,米 国債 投 資 に失 敗,NY支 店 責 任 者 が無 断 で 穴 埋 め』
そ の後,こ の 問題 は連 日の よ うに報 道 され て い る。
事 実 関係 の解 明 は,日 米,と くに米 国 司直 の手 に委 ね られ な けれ ば な ら な い が,一 方,こ の事 件 が 国 際 金 融 市 場 に はか り しれ な い影 響 を与 えた こ とが 問題 で あ ろ う。邦 銀 全体 の 信 用 が 揺 ら ぎ,ジ ャパ ン プ レ ミア ム に よ る 資 金 調 達 を強 い られ,ス プ レ ッ ドの縮 小 を余 儀 な くされ て い る。
す で に,日 本 の 銀行 の不 良 債権 問 題 とそ の不 透 明 性 か ら格 付 け機 関 の評 価 を下 げ て い る こ と と相 侯 って,邦 銀 は国 際 金 融 市 場 で 一段 と苦境 に立 た され る に至 った の で あ る。 日本 の 金 融 シス テ ム全 体 に対 す る信 任 を失 う よ うな重 大 事 で あ る。
こ とに,87年 当時 に信 託 子 会 社 で 米 国債 の簿 外 取 引 で140億 円相 当 の 損 失 を出 し なが ら,こ れ を隠 蔽 した事 実 の経 緯 は長 く尾 を引 きそ うで あ る。
い ま,欧 州,米 国 の 銀 行 が 体 制 整 備 にや っ き とな っ て い る とき,日 本 の 銀 行 が さ らに後 退 す る よ うな こ とにな った ら,問 題 は大 きい。
(追 記:渡 米 中 の11月4日,日 本 の 新 聞 の国 際 衛 星 版 は,『 大 和 銀a住 銀 と 銀行経営と内部管理53
合 併 へ 』,『 米,全 業 務 停 止 を 命 令 』 と,一 斉 に報 じ た)」
18)
最近 の新 聞 報 道 で は,前 支 店 長 の津 田被 告 が共 同謀 議 を認 め,米 国検 察 側 と司 法 取 引 の合 意 が 成 立 した こ とを明 らか に して い る。
リス ク管 理 の 問題 は,鹿 児 嶋(前 掲 書),津 田(前 掲 書)も 指 摘 して い る が,論 者 は これ を今 まで論 じて来 た 内部 管 理 の観 点 に重 点 を置 いて,銀 行 の 経 営 課 題 として整 理 ・集 約 を試 み る所 存 で あ る。
6多 角 的 ・学 際 的検 討 への筋 道
論 者 は,銀 行 の 内部 管 理 と経 営 課 題 の テ ー マ を,主 に 内部 管 理 の重 要性 を 唱 導 す る形 で ア プ ロー チ して来 た 。 しか し,経 営 諸 学 か らの よ り多 角 的 な検 討 や 隣 接 科 学 との 学 際 的検 討 を加 え る こ とは,当 然 必 要 で あ ろ う。
それ に よっ て,論 者 の提 唱 が よ り説 得 性 を高 め る こ とが 出来 れ ば,こ れ に 過 ぐる幸 い は な い。 以 下 で は銀 行 経 営 と内部 管 理 の 問題 につ い て,検 討 の た
めの あ ら ま しの筋 道 を考 えて み た い 。
① 経 営 理 念(経 営 信 条,経 営 哲 学)
住 友 家 に は 「浮 利 を追 わ ず 」 とい う家 法 が あ るが,磯 田一 郎 指 揮 下 の 住 友 銀 行 は逆 に,イ トマ ンな どを使 って,飽 くこ とな く不 動 産,株 式 とい う 「浮
19)
利 」を利 用 して利 益 を追 って きた の で あ る。 「向 う傷 を恐 れ るな 」で は哲 学 で も何 で もな い 。
20)
戦 前 に は銀行 界 に も範 とす べ き事 例 が 幾 つか あ っ た。 戦 後 経 営 者 に経 営 理 念 が 乏 しい の は何故 か 。 敗 戦 後 の公 職 追 放 に よ る経 営 者 の若 年 化,経 歴 ・教
養 不 足,長 期 政権 に よ る ワ ンマ ン化 な どが背 景 と して あ ろ う。
② 組 織 風 土 な い し組 織 文 化(企 業 文 化)
政 治 が 貧 弱 で あ れ ば経 済 も貧 弱 で あ る。戦 後 民 主 主義 が定 着 せ ず,戦 前 か らの 日本 的 土 壌 が 色 濃 く残 っ て い る。 国 防 を米 国 に委 ね,経 済 合 理性 の み を 追 求 す る国 に優 れ た企 業 文化 が育 つ筈 もな い。
54国 際経営論集No.111996
21)
「企 業 文 化 は,経 営 理 念 の浸 透 と確 立 に よっ て築 か れ る」とあ る。 企 業 が そ の公 共 性,社 会 性 を 自覚 した 時 に,真 剣 に 自 らの組 織 風 土 を考 え る こ とに な
22)
ろ う。 銀 行 の企 業 文 化 につ い て は,鹿 児 嶋(前 掲 書)の 指 摘(本 論45ペ ー ジ) が あ る。
③ コー ポ レイ ト ・ガ バ ナ ンス(企 業 統 治 論)
戦 後 の長 い資 金 不 足 時代 の 間 接 金 融(銀 行 借 入)優 位 とグ ル ー プ企 業 内 の
23)
株 式 持 ち合 い,個 人 株 主 の 無 力 化 の下 で,最 高権 力 者 の暴 走 を許 した事 例 に は事 欠 か な い。
株 主,金 融 機 関,従 業 員,一 般 顧 客(海 外 を含 む),仕 入 ・納 入 先,地 域 社 会,広 くは市 民,行 政 な どの ス テ ー クホ ー ル ダ ー(利 害 関 係 者)が 力 を増 し て きた の は昨 今 の こ とで あ る。1993年6月 に訴 訟 手 数 料 を一 律8200円 に 引下 げた 株 式 代 表 訴 訟 も経営 陣 に対 す る重 石 とな っ た。
一 連 の 証 券 ・金 融 不 祥 事 も24)
,コ ー ポ レ イ ト ・カバ ナ ン ス の 観 点 か ら読 み 直
25)
す こ とが大 事 だ ろ う。
④ 経 営 倫 理 学
企 業 の社 会 的責 任(corporatesocialresponsibility)は,ド ラ ッカ ー な ど が 早 くか ら唱 えて い た よ うに,企 業 が 社 会 的存 在 で あ る こ とか ら も明 白 で あ る。 しか し,戦 後 の 日本 の 成 長過 程 で は,企 業 と従 業 員 の"運 命 共 同 体 論"
が 幅 を利 かせ,企 業 の効 率 性 ・競 争 性 に合 致 し な い もの は悪 とされ た。
日本 が 一 人 当 り国 民所 得 世 界 一 とな り,公 害 ・環 境 問題 が や か ま しい今 日, 会 社 人 間 が過 労 死 に至 る な ど,日 本 村 の構 造 は なか な か 改 ま らな い。 水 谷 雅 一 教 授 は経 営 倫 理 学 の立 場 か ら経 営 公 共 性(社 会 性 と人 間 性)の 重 視 を唱 導
2fi?
して,経 営 価 値 四原 理 シ ステ ム の導 入 を説 く。
27)
金 融 不 祥 事 の反 省 は,各 業 界 で な され て い る。 しか し,テ レ ビの文 句 で は な いが,「 反 省 す る だ け な らサ ル で もで き る」。 相 変 わ らず 跡 を絶 た な い管 理 階 層 の不 正 に は,経 営倫 理 学 の 立場 か ら組 織 そ の もの をチ ェ ック す る必 要 が あ りそ うだ。
銀行経営と内部管理55
⑤ 内部 統 制
会 計 監 査 の立 場 か らの切 り口 もあ る。 しか し,「監 査 をす る人 間 と して,ま
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さ に 監 査 不 在,監 査 の 無 力 化 を,い や とい う ほ ど知 ら さ れ た 。」とい う 叫 び が
29)
あ る中 で,経 営 者 が進 め る 「内 部 統 制 」 に どれ程 の期 待 が持 て よ うか 。適 正 な財 務 諸 表 作 りを監視 す るの は無 力 な監 査 役(閑 散 役)で,し か も企 業 の 片 隅 に追 い や られ た検 査 員 が 閑 散 役 の助 手 を勤 め るの で あ る。
98年4月 か ら金 融検 査 の 一 環 として公 認 会 計 士 に よ る外 部 監 査 制 度 が 導 入
30)
され よ う として い る。海 外 支 店 もそ の対 象 にな る よ うだ 。組 織 の 自己規 制 が 先 決 とは思 うが,新 制 度 の 展 開 に は注 目す べ きだ ろ う。
31)
⑥ 経 営 者 教 育
今 日 の トッ プ ・マ ネ ジ メ ン トは,自 ら を再 教 育 して い る だ ろ うか 。 何 時 の 間 に か ワ ン マ ン化 し"裸 の 王 様"に な っ て い な い か 。 如 何 に 経 営 哲 学 不 在 の 経 営 者 が 多 い こ とか 。 問 題 経 営 者 の 下 で,業 務 も人 事 も皆,上 の 顔 色 を 窺 う
ば か りで,信 念 が な い 。
企 業 に 教 育 ・訓 練 体 系 は あ っ て も,ト ッ プ ・マ ネ ジ メ ン ト教 育 は な い 。 役 員 研 修 な ど は名 目的 な もの だ 。 考 え られ る対 応 は 業 務 上 の 実 践 ・教 育 と 自 己 啓 発 しか な い 。 しか し,経 営 理 念 や 企 業 倫 理 は ど う して 身 に っ け る か,識 者
に よ る 具 体 的 提 示 が 待 た れ る と こ ろ だ 。
ミ ドル ・マ ネ ジ メ ン ト以 下 に は,企 業 市 民(corporatecitizen),ボ ラ ン テ ィ ア 教 育 が あ っ て も,ト ッ プ に は な い 。 本 当 は,企 業 文 化 を 継 承 ・発 展 させ, 後 継 者 に 引 継 げ るか 否 か に,経 営 者 の 資 質 が 問 わ れ る べ き だ 。 論 者 の 見 る と
こ ろ で は,真 の 経 営 者 は 自 己 規 律 の 産 物 で あ り,そ れ に は 自 己 啓 発 が 最 大 の 尺 度 に な る の だ ろ う。 しか し,今 の 経 営 者 予 備 軍 に そ れ を 期 待 す る の は い さ さ か 無 理 な よ う に 思 え る の は,論 者 の ひ が め で あ ろ う か 。
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