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建築物の著作物性に関する一考察 : ドイツBGH判決における積極的傾向

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建築物の著作物性に関する一考察

──ドイツBGH判決における積極的傾向──

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らないこと、外国におけるベルヌ条約の適用に際し問題となりかねない こと等が指摘された。」

「これらの意見や指摘を斟酌し、草案の『産業上の成果物(gewerbliche Erzeugnisse)』という 語 は、『美 術 産 業 の 成 果 物(Erzeugnisse des Kunstgewerbes)』という語に置き換えられることになった。『美術』 (Kunst)という語を加えることによって、『産業上の成果物』が法律 の 保 護 を 受 けるのは、それが 美 術 的 創 作 と 意 思 の 表 現(Ausdruck kuenstlerischen Schaffens und Wollens)である 場 合 に 限 られること が十分に表現されたと受けとめられたからである。その限りでは『美術 上の目的を追求する限りで』という文言を『美術産業の成果物』に付す 必要はなくなったのである。」

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 BGH独身寮事件判決はこのように述べて、独身寮とその「基本計画」の 著作物性を認定したのである。そして、その認定の際には、建築の著作物の 保護を限定する要件とも解し得たKUG 2 条 1 項の「美術上の目的を追求す る限りで」という文言を、詳細な検討と柔軟な解釈力に拠って実質的には取 り除き、建築物の著作物性の認定への積極的な姿勢を示したのである。また、 建築物の著作物性を判断する基準として、 1 )実用目的、美術上の目的とい うような著作物の目的は重要ではないこと〔(ⅲ)〕、 2 )美術の著作物の定 義〔(ⅳ)〕、 3 ) 建築物相互の配置や建築物の周囲の環境への調和的なはめ 込み方も著作物性の判断要素となること〔(ⅴ)〕、 4 )美術の著作物の著作 物性を判断する主体は、専門家ではなく、美術に感受性があり、美術の事柄 を多少とも熟知している平均的な人々であること〔(ⅵ)〕、を提示したので ある。 (12) Bauwerkの語は多義的である。KUG 2 条 1 項のBauwerk(建築の著作物)と現行 著作権法 2 条 2 項 4 号のWerk der Baukunst(建築美術の著作物)は同じ意味である が、現行著作権法59条 1 項 2 文(公共の場における権利制限)におけるBauwerkは建築 物(Gebaeude)を意味するとされる。本稿では、Bauwerkの訳を文脈によって使い分 けている。Vgl. Jestaedt, Die Zulaessigkeit der Aenderung von Werken der Baukunst durch den Inhaber des Nutzungsrechts nach §39 UrhG, S. 25f.

(13) Entwurfはドイツ語で構想、草稿、下図などを意味する。ここでは、建築と応用美 術両方の構想段階にある下図を意味している。「原図」という訳は、日向野上掲(10) に拠った。

(14) Marwitz/Osterrieth/ Marwitz, Das Kunstschutzgesetz, S. 43ff. (15) Marwitz, a. a. O. (14) S. 44f.

(16) RGSt 43,196

(17) Jestaedt, a. a.O. (12) S. 14f.

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(19) RGSt 43,196/199 (20) MDR, 1949, S.563ff. (21) Ulmer, a.a.O. (18) S.147f. (22) 上掲( 9 )参照。本件の翻訳については、日向野上掲(10)82頁以下を参考にした。 (23) 「基本計画(Vorentwurf)」の訳は日向野上掲(10)に拠った。ドイツにおける設 計業務の内容については、同書119頁以下が詳しい。 Ⅲ 建築物の著作物性に関する近時のBGH判決 1  現行ドイツ著作権法のもとでの建築の著作物と設計図  1965年に制定された現行ドイツ著作権法は、著作物の定義を「個人的、精 神的な創作物(persoenliche,geistige Schoepfungen)であること」( 2 条 2 項)と定めている。そして、著作物の例示に、「造形美術の著作物(Werke der bildenden Kuenste)。建築美術及び応用美術の著作物並びにそれらの著 作物の原図(Entwuerfe)を含む。」( 2 条 1 項 4 号)と「線画、設計図、地図、 素 描、図 表 及 び 立 体 的 描 写 のような 学 術 的 又 は 技 術 的 性 質 の 描 写 (Darstellungen)」( 2 条 1 項 7 号)を挙げて、建築の著作物とその設計図 が著作権法の保護の対象であることを明らかにしている。

(1)建築美術の著作物(Werke der Baukunst)

 現行著作権法は、従前の法律であるKUGの規定と同様に、建築の著作物 を造形美術の著作物に帰属させているが、建築の著作物(Bauwerk)の語 については、これを「建築美術の著作物(Werke der Baukunst)」の語に 置 き 換 え、 術 語 的 に「応 用 美 術 の 著 作 物(Werke der angewandten Kunst)」の語に揃えている。そして、KUGが建築の著作物に付していた「美 術上の目的を追求する限りで」という文言については、これを取り除いてい る。上述したように、1957年のBGH独身寮事件判決が、すでに、この文言

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表 複数のコンメンタールが共通に提示する、 建築物の著作物性に関する判断基準 左の判断基準に対応する判断基準を用いているBGH判決 ① 建築物の目的は重要ではないこと BGH独身寮事件判決  1 ) BGH家庭用住居一階平面図事件  2 ) BGH防音壁造形事件判決  2 ) ② 保護は、建築物の室内造形にも及ぶこと BGH教会内部造形事件判決  2 ) ③ 保護は、建築物の部分にも及ぶこと BGH家庭用住居一階平面図事件  1 ) ④ 一般に知られた、共有の造形要素を利用 していても、保護を受け得ること BGH家庭用住居一階平面図事件 3 ) ⑤ 個々の建築物相互の配置や建築物の景観 や環境への適合的なはめ込み方にも、必 要な個性は表現されること BGH独身寮事件判決  3 ) BGH防音壁造形事件判決  3 ) ⑥ 建築物の構造や作成の方法、構築に用い る素材等は重要ではないこと ⑦ 手工業的またはルーティンワークによる 建築物にではなく、多数のありふれた建 築物からは傑出している建築物に、個人 的、精神的創作物に必要な個性が表現さ れていること BGH教会内部造形事件判決  1 ) BGH家庭用住居一階平面図事件  5 ) BGH防音壁造形事件判決  1 ) ⑧ 建築上の給付が技術的、構造的必然性を 越えていること ⑨ 美術の著作物の著作物性を判断する主体 は、専門家ではなく、美術に感受性があ り、美術の事柄を多少とも熟知している 平均的な人々であること BGH独身寮事件判決  4 ) BGH家庭用住居一階平面図事件  4 ) (24) 建築の著作物を造形美術の著作物に帰属させることは、一般的な言葉の用法とは異 なるとされる。Schack, Urheber-und Urhebervertragsrecht, 6Aufl. Rn229

(25) 応用美術の語に揃えたことについては、Ulmer a. a. O. (18) S. 146f. を参照。KUG に「建築美術の著作物」の語が用いられなかった経緯は、本稿Ⅱ⊖ 2 を参照。

(26) Ulmer, a. a. O. (18) S. 147f.

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の「講演(Rede)」に付されていた文言(「修養、教育、娯楽に資する」)と同法 1 条 1 項 3 号の「無言劇の著作物」に付されていた文言(「舞台の進行が文書その他の方法で 固定されている」)も同様の理由から取り除いたと記している。 (28) 建築美術の著作物と認定されると、追求権の適用除外(26条 8 項)、建築の著作物 の模造に関する規定(53条 7 項)、公共の場所における建築の著作物の複製に関する規 定(59条 1 , 2 項)等が適用されることになる。 (29) 設計図は非常に多くの人々の手元を移動するので、実務的にきわめて重要な役割を 担っているとされる。Loewenheim/Schricker/Loewenheim, Urheberrecht, 4. Aufl.§2, Rn. 157, Binder, Urheberrecht fuer Architekten und Ingenieure, S, 37f.

(30) Dreier/Schulze/Schulze,UrhG 4. Aufl. §2 Rn.187, Wandtke/Bullinger / Bullinger, UrhG 4Aufl. §2 Rn. 111

(31) Rehbinder, Urheberrecht 10. Aufl. Rn. 138 (32) 日向野上掲(10) 64頁。 (33) 日 向 野 上 掲(10) 64 頁。Vgl. Loewenheim, a. a. O. (29)§ 2 Rn. 157, 199, Dreier, 2. 2. O. (30)§ 2 Rn. 223 (34) 連邦通常裁判所1981年10月 2 日判決 BGH GRUR, 1982, 107 なおこの判決の翻 訳については日向野上掲(10)140頁以下を参考にした。 (35) 本件は、教会内部の改変または変更について、14条(同一性保持権)と39条(変更 の禁止)の規定の適用について興味深い問題を提起しているが、その検討は別稿に譲る。 (36) 連邦通常裁判所1987年12月10日判決 BGH GRUR, 1988, 533 (37) Binderは、この判決は建築家がよく依頼される仕事(ここでは家庭用住居の原図) であることも、既知の造形要素を用いている事実も著作物性の認定には妨げにならない ことを示唆しており注目されると述べている。Binder a. a. O. (29) S. 48f. (38) 連邦通常裁判所2010年 5 月12日判決 BGH GRUR, 2011, 59

(39) Schack, a. a. O. (24) Rn. 229, Loewenheim, a. a. O. (29) §2, Rn. 151, Bullinger, a. a. O. (30) §2, Rn. 108, v. Gamm a. a. O. (18) §2, Rn. 21, Rehbinder (31) Rn. 137 (40) Schack, a. a. O. (24) Rn. 230, Loewenheim, a. a. O. (29) §2, Rn. 152, Bullinger, a.

a. O. (30) §2, Rn. 111, Dreyer/Kotthoff/Meckel/Dreyer, Urheberrecht 3. Aufl.§2  Rn. 235, Rehbinder (31) Rn. 137

(41) Schack, a. a. O. (24) Rn. 229, Loewenheim, a. a. O. (29) §2, Rn. 153, Rehbinder (31) Rn. 137

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(43) Schack, a. a. O. (24) §2, Rn. 229, Loewenheim, a. a. O. (29) §2, Rn. 154, Bullinger, a. a. O. (30) §2, Rn. 109, Dreier, a. a. O. (30) §2, Rn. 183 Dreyer, a. a. O. (40) §2, Rn. 236, Bullinger, a. a. O. (30) §2, Rn. 109 ただし、v. Gammはこの 判 断基準に反対している。v. Gamm a. a. O. (18) §2, Rn. 21.

(44) Loewenheim, a. a. O. (29) §2, Rn. 151, v. Gamm a. a. O. (18) §2, Rn. 21 (45) Loewenheim, a. a. O. (29) §2, Rn. 154, Axel Nordemann, a. a. O. (42) §2 Rn.

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