• 検索結果がありません。

広告と消費者の誤認に関する一考察(二・完)

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "広告と消費者の誤認に関する一考察(二・完)"

Copied!
26
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

広告と消費者の誤認に関する一考察(二・完)

著者 川和 功子

雑誌名 同志社法學

巻 68

号 4

ページ 1369‑1393

発行年 2016‑09‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000016895

(2)

    同志社法学 六八巻四号一八一一三六九

           

1  はじめに2  EUにおける主な規制3  EUの裁判例

  ㈠ Walter Rau v de Smedt

  ㈡ GB-INNO v CCL

  ㈢ Procureur de la Republique v X

  ㈣ Verein gegen Unwesen in Handel und Gewerbe Kölne eV v Mars GmbH(以上三八四号)  ㈤ Fratelli Graffione Snc v Ditta Fransa(以下本号)   ㈥ Estee Lauder Cosmetics Gmbh & Co. Ohg v Lancaster Group Gmbh   ㈦ Konsumentombudsmannen v Gourmet International Products AB(GIP)

  ㈧ Buet v. Ministère Public

(3)

    同志社法学 六八巻四号一八二一三七〇   ㈨ Gottfried Linhart and Hans Biffl  � Pippig Augenoptik v Hartlauer 

  て4えかにめとま   �  tioOoosur v Koipe-himn Srapoore CoipKr-CSuel iteL v Ohim- Aces ds del Sur SAceite, A

㈤   Fratelli Graffione Snc v Ditta Frans a

((

 

‘C ot on ell e’

という商標が付されたトイレット・ペーパーや使い捨てハンカチといった製品のイタリアへの輸入、販売の禁止が、物品の自由な移動を妨げるか否かが考慮された事例である。

Sc ot t

が有する

‘C ot on ell e’

という商標を付した製品が綿を含んでいると誤認されるため、商標は無効であるとの判断がイタリアの裁判所で下された。フランスとスペインでも同様の訴えがなされたが、フランスとスペインにおいて商標は無効にならなかった。

Sc ot t

はイタリアにおいて商標を付した製品を頒布するのをやめ、イタリアの卸売業者である

F ra te lli G ra ffi on e Sn c

G ra ffi on e

)も、イタリアにおいて

Sc ot t

から製品の供給を受けることができないと顧客に伝えた。その後

G ra ffi on e

は、スーパーマーケットを所有する

D itt a F ra ns a

F ra ns a

)がイタリアにおいて当該製品を販売していることを知り、キアーヴァリ裁判所に対し、商標が無効であるとする裁判所の判決および、

F ra ns a

の販売が競争を歪めているという事実により、

F ra ns a

C ot on ell e

という商標を付した製品の販売を控える様に命じられるべきであるとして仮差止め請求を行った。

G ra ffi on e

の差止めの請求は、イタリア民法典の不公正競争の規定に基づくものであった。

G ra ffi on e

は、

F ra ns a

Sc ot t

の商標が有効であるフランスからイタリアに製品を輸入する行為は、イタリアにおいて

Sc ot t

から直接製品を仕入れることができなくなった

G ra ffi on e

を、競争上不利な立場に置くものであると主張した。これに対し、

F ra ns a

は、販売を禁止す

(4)

    同志社法学 六八巻四号一八三一三七一 る差止めはEC条約第三〇条(TFEU第三四条)に反する輸入量の制限と同等の措置となり、一九八八年商標指令第一二条二項⒝ ₃₂

にも反するものであると主張した。

  先決裁定を求められた欧州司法裁判所は、商標を付した製品について、消費者が、

‘C ot on ell e’

が綿を含んでいるということを誤って信じる可能性があれば、輸入、販売の禁止は許容されるとした。マーケティングが禁止されるかどうかの可能性は、原則的には、他の加盟国で同じ商標が誤認惹起を引き起こさないため、禁止されていないからといって排除されるわけではなく、消費者が誤認するかどうかは、加盟国の社会的・文化的・言語的背景によって異なってくる。禁止は、消費者保護を保証し、かつ、保護の目的の達成に比例したものであり、より制限的でない措置では目的の達成が不可能なものである場合に許容される。国内の裁判所は、どのような状況で製品が販売されたのか、製品の包装に記載された情報、情報が表示される明確さ、広告のプレゼンテーションとその内容、ある消費者グループが誤認するリスクを含む、関連する状況のすべてを検討しなければならないとする。

  欧州司法裁判所は、EC条約第三〇条と第三六条(TFEU第三四条、第三六条)は、事業者が禁止されている商標を付した製品を、製品が合法的に販売されている加盟国から輸入することについて、不正競争からの保護を根拠に禁止するものではないとした。しかしながら、消費者の保護のため、かつその目的の達成に比例したものであり、他により制限的でない措置が可能でない場合に、禁止は可能であるとした。国内の裁判所は、消費者が誤認するリスクが十分に深刻であり、消費者保護または公正な取引といった、物品の自由な移動の原則をくつがえす要件を充足させるものであるか否かについて判断しなければならないとする。

  一九八八年商標指令第一二条二項⒝については、ある加盟国において、消費者の誤認が惹起されるため、使用が禁止されている商標を付した製品を、製品が合法的に販売されている他の加盟国から輸入することについて、禁止すること

(5)

    同志社法学 六八巻四号一八四一三七二

を排除するものではないとした。

  法務官意見は、製品の名称として

‘C ot on ell e’

を使用した場合、英語、フランス語、イタリア語を話す者は、製品が綿を含んでいると信じるかもしれないが、ドイツ語やスペイン語を話す者は、そのように信じないとする ₃₃

。このように、消費者が誤認するかについては、加盟国の社会的・文化的・言語的背景によって異なっているため、消費者保護を保証し、かつ、保護の目的の達成に比例したものであり、より制限的でない方法では目的の達成が不可能である場合に、禁止は許容される。本件において、このような差止めが認められれば、商標が付された商品の他の加盟国からの輸入が妨げられることになり、物品を購入する消費者の選択肢が制限されることになる。本件は、これらの点を踏まえつつ、消費者が誤認するリスクと物品の自由な移動の原則とのバランスについて考慮したものである ₃₄

㈥   Estee Lauder Cosmetics Gmbh & Co. Ohg v Lancaster Group Gmb h

((

 

L an ca st er

‘M on te il F irm in g A ct io n L ift in g E xt re m e C rè m e’

という化粧品を販売していた。

E st ée L au de r

はこの化粧品の名称に含まれる

‘L ift in g’

という用語は、長く続く効果または、外科的な手術によるリフティングに匹敵する結果をもたらすとの印象を与え誤認を招くと主張した。この

‘L ift in g’

という名称の使用を禁止することが、EC条約の第三〇条、第三六条(TFEU第三四条、第三六条)、化粧品のラベル、広告等は、その製品が有していない性質を有していると暗示するものであってはならないとする一九七六年化粧品指令 ₃₆

の第六条三項に違反しないかどうかが争われた。一九八四年誤認惹起広告指令の解釈において、裁判所は、消費者が誤認するかどうかのリスクと物品の自由な移動に関わる要件とを比較するためには、特定の記述、商標、宣伝の記述または声明が誤認を惹起するかどうかについて、合理的に十分な情報提供を受け、合理的に注意深く慎重な者である平均的な消費者の推定される期待を考慮しなければなら

(6)

    同志社法学 六八巻四号一八五一三七三 ないとする。この点につきドイツの裁判所は一〇%から一五%の消費者が誤認するのであれば、製品の販売は禁止することができるとする。

  このテストは、規制は目的の達成に比例したものでなければならないとする比例性の原則に基づき製品の性質についての間違いが公衆衛生を侵害するおそれのない化粧品についても適用される。裁判所は、比例性の原則に基づくテストを適用するためには、いくつか留意しなければならない点があるとする。ドイツの消費者にとって、﹁社会的・文化的および言語的な要素﹂が、いわゆるファーミングクリームといった種類の商品に関連して

‘L ift in g’

という用語が使用されることを正当化するかどうか、つまり、ドイツの消費者にとって、

‘L ift in g’

という用語が、他の加盟国の消費者とは異なった意味を有しているか、または製品の使用説明書がその効果が短期的であり

‘L ift in g’

という言葉から導き出されるかもしれないそれとは矛盾した結果を打ち消すのに十分なものであるかについての判断がなされなければならないとする。合理的に十分な情報提供を受け、合理的に注意深く慎重な平均的消費者であれば、

‘L ift in g’

という用語が含まれたクリームが永続的な効果を生み出すことまでは一見期待しないようではあるものの、そのような立場を採用するかどうかについては各国の裁判所における関連する要素に照らした判断に委ねられることとなる。加盟国の裁判所は、必要に応じて、宣伝の記述または声明が誤認を引き起こすかどうかについて明確にするために、専門家の意見を聴取し、または世論の調査を委託し、加盟国の法律に照らして、記述または声明によって誤認する消費者の割合がその使用の禁止を正当化するほど十分に多いかどうかを決定することができるとする。

  本件においては化粧品に関する広告が問題となった。車などと比較すれば、購入に多くの説明が必要な製品とはいえないものの、さまざまな種類の商品があり、用途ごとに差別化も図られている。公衆衛生に関連する製品ではないとされるが、皮膚に直接つけるものであるため、アレルギーなど健康面における問題を惹き起こす場面も懸念される。販売

(7)

    同志社法学 六八巻四号一八六一三七四

が意図している対象は、成人女性が中心となると考えられるのであれば、特に被害を受けやすい消費者であるとはいえない。しかしながら

‘L ift in g’

に限らず明示的に表示された特定の効果を期待して製品を購入しているのであれば、その特定の効果が達成されると誤認する可能性がある。

  裁判所は、平均的消費者の期待について関連する、社会的・文化的および言語的な要素を考慮することができるとする。さらに、記述または声明によって誤認する消費者の割合がその使用の禁止を正当化するほど十分に多いかどうかを決定するにあたり、加盟国の裁判所が専門家の意見または世論の調査を委託することができるとしている。この点、誤認惹起的取引方法に関する、加盟国独自の判断が許容される余地を認めている ₃₇

。外科的な手術によって得られる効果と誤認されかねない特定の効果について宣伝している化粧品の販売においては、専門家の意見の聴取や世論の調査を委託し、誤認の可能性についてより詳細に判断することは有用ではないかと思われる。

㈦   Konsumentombudsmannen v Gourmet International Products AB ( GIP (

((

 

K on su m en to m bu ds m an ne n v G ou rm et In te rn at io na l P ro du ct s A B

G IP

)、(

Konsumentombudsmannen

)は、加盟国において特定の商品の広告を禁止することが可能か否かについて判断された事例である。具体的には、アルコール飲料の有害な効果から公衆衛生を保護するためにアルコール飲料についての広告を禁止することが可能かどうかについての議論がなされた。

G ou rm et In te rn at io na l P ro du ct s A B

G IP

)は

G ou rm et

という雑誌を発売しており、赤ワインとウイスキーについての広告を掲載する予定であった。このような広告を掲載することについて、

K on su m en to m bu ds m an

(スウェーデンの消費者保護のためのオンブズマン)は、ストックホルムの裁判所に対し、アルコール飲料のマーケティングに関する法律の第二条に反するとして、差止めおよび、遵守されなかった場合の罰金を

(8)

    同志社法学 六八巻四号一八七一三七五 課すことを求めた。同法第二条は、アルコール消費の健康リスクに鑑み、アルコール飲料については、特別な節度をもって販売されるべきであるとする。特に、広告または、その他のマーケティングの方法は、不招請アプローチ(

un so lic ite d ap pr oa ch

)を伴ったり、またはアルコール消費を促したりするものであってはならないとする。GIPは、スウェーデンにおけるスピリッツ、ワイン、アルコール度数が高いビールの広告を禁止する法律について、消費者がすでに親しみを持っている国内の製品と比べて、輸入製品に対し、より損害を与えるものであると主張した。そこで、欧州司法裁判所は、このような特定の広告を全面的に禁止する国内法規が、EC条約の第三〇条における数量制限にあたるかどうかについて、もしあたるのであれば、目的において、第三六条に基づいて適法かどうかについて判断した。さらに、第五六条、第五九条(TFEU第五二条、第五六条)に基づき、加盟国間の取引により少ない影響を与える措置が、アルコール飲料の有害な影響から公衆衛生を保護することを保証できるかどうかについて判断した。

  欧州司法裁判所は、加盟国の立場を性格づける法律および事実の状況において、加盟国間の取引に対し、より影響を与えない措置によって、アルコール飲料の有害な効果から公衆衛生を保護することが保証されることが明らかでない限りは、アルコール飲料についての広告を禁止することは排除されないとした。さらに、スウェーデン政府が自国の製品を保護するために、間接的に他の加盟国の製品を差別している証拠はないとした。法務官意見は、年齢のためにアルコール飲料の有害な効果による被害を特に受けやすい子供と若者を広告から保護することは合理的であるとし、米国における研究調査によって示された、広告が子供と若者に対する影響について言及している ₃₉

。米国における研究調査によれば、若者がアルコール飲料についての広告にさらされること、およびアルコール飲料の広告について意識させられることと、若者の飲酒についての意見および行動との間に、小規模であるが、重要な関連性があるとされている。アルコール飲料についての広告を目にしたり、意識させられたりした子供および青年は、飲酒についてより好意的な意見を有し、

(9)

    同志社法学 六八巻四号一八八一三七六

成人として、より頻繁に飲酒することを意図し、他の若者よりも、飲酒者となる確率が高いとされる ₄₀

。アルコール飲料についての広告が、広告がなければ行われていなかったであろう取引上の決定を行わせ、またはそのおそれがあるとすれば、その行動が、アルコール飲料の性質やアルコール飲料がもたらす健康等についての影響に関する誤認に基づくものであることが懸念される。

  アルコール飲料が与える健康リスクのために、広告を制限する法規制は許容される。ただし、規制は、規制の目的である、人間の健康と、生命の保護の達成に比例したものであり、間接的に他の加盟国の製品を差別していないものであることが必要とされる ₄₁

。本件の法務官意見が、アルコール飲料の広告が子供、若者の将来にわたる行動に与える影響について言及していることが注目される。アルコール飲料に限らず、広告が被害を受けやすい子供、青年等の消費者の行動に与える影響について検討する事例の一つとして参考となる。

㈧   Buet v. Ministère Publi c

((

 

B ue t v . M in ist èr e P ub lic

Buet

)においては、訪問販売における学習教材を販売することを禁止する法がEEC条約第三〇条、第三六条(TFEU第三四条、第三六条)に反するかどうかが争われた。

  裁判所は、個人宅への訪問販売に関し、買主の無思慮な購買のリスクについて、通常、買主に対して契約の撤回権を与えることで十分カバーできるはずであるところ、教育講座の受講または教育教材の販売に関しては、そのリスクはさらに大きくなるとする。教育講座の受講者または教育教材の買主は、しばしば教育の面での遅れを取り返そうとしている人々である点が指摘される。これらの買主は、教材を使用すればよりよりよい雇用の見通しが得られると説得を試みる販売員によって、特に被害を受けやすいとされる。さらに、教材が時代遅れのものであるなどの多数の苦情が寄せら

(10)

    同志社法学 六八巻四号一八九一三七七 れた結果、加盟国が訪問販売の禁止についての規制を行ったことは明らかであるとされる。不適切または低品質な教材の無思慮の購買は、日常使用する消費者製品の購買とは異なり、買主に経済的損失を生じさせるだけでなく、消費者のさらなるトレーニングの機会をあきらめさせ、労働市場における消費者の地位を固定してしまうこととなる。そのため、加盟国の立法府は、撤回権の付与だけでなく、個人宅への訪問販売も禁止することができるとされる。一九八五年訪問販売撤回指令の前文も、加盟国が事業所から離れた場所における契約の締結を禁止することは許容されるとしている ₄₃

。この禁止が正当化されるためには、規制が消費者保護および公正取引のために、国内の製品と輸入される製品に対して差別なく適用され、その規制が目的に相当であることが必要になる。

  訪問販売に対する規制と物品の自由移動が問題となった別の事例である

A -P un kt S ch m uc kh an de ls G m bH v C la ud ia Sc hm id t

A-Punkt Schmuckhandels

₄₄

においても、訪問販売により契約の締結に関する規定が、国内の製品と輸入される製品に対して差別なく適用され、その規制をすることによる措置が判例法またはEC条約第三〇条に提示される目的により正当化され、かつその目的の達成に比例するものであるか否かが問題となった。

A-Punkt Schmuckhandels

においては、個人宅において、銀のアクセサリーや薬品等を販売するために注文を受ける行為を規制するオーストリアの取引および商業規則がEC条約第三〇条および第三六条に反するかどうかが争われた。裁判所は、加盟国は事業所以外での契約締結について禁止することができるが、EC条約第三〇条の物品の自由な移動という基本的原則と整合的に行使されなければならないとする。このような国内法規の適用については、国内の物品の市場へのアクセスと比べて、他の加盟国の物品の市場へのアクセスがより妨げられていないことが確認されなければならないとする。もし、この禁止が、他の加盟国からの物品に対してより影響をおよぼすものであれば、その規制をすることによる措置が、判例法またはEC条約第三〇条の目的の一つによって正当化され、かつ禁止が必要で措置が目的の達成に比例するものであるこ

(11)

    同志社法学 六八巻四号一九〇一三七八

とが必要となる。

  規制による措置が、消費者保護によって正当化されるとした裁判例として、

R ew e- Z en tr al A G v B un de sm on op olv er w alt un g f ür B ra nn tw ein

F ed er al M on op oly A dm in ist ra tio n fo r S pir its

)(

Cassis de Dijon

₄₅

があげられる。

Cassis de Dijon

は、EC条第約三〇条(TFEU第三六条)に列挙される、輸出入品に対する禁止または制限を正当化する理由を拡充し、輸出入品に対する禁止または制限は、財政上の監督(

fis ca l s up er vis io n

)、公衆衛生の保護、取引方法の公正さと消費者保護によって正当化されるとし、消費者の経済的保護を正当化事由として加えている ₄₆

Cassis de Dijon

においては、アルコール度数が低いという理由で、フランスの酒である

C as sis d e D ijo n

のドイツへの輸入許可が拒絶されたことが問題となった。輸入許可を拒絶する規制は、消費者がアルコール度数について誤認することを防ぐために置かれていた。欧州司法裁判所は、出所とアルコール度数といった情報が製品の包装に表示されていれば、消費者は十分に保護されるとした。消費者保護は、禁止が目的の達成に比例するもので、目的を達成するために必要である範囲を超えない限りにおいて、禁止を正当化する。

 

A-Punkt Schmuckhandels

において、個人宅における銀のアクセサリーの販売については、消費者が情報の欠落によって欺かれ、価格を比較することが不可能で、アクセサリーが本物であることについて保証がなく、プライベートな環境で販売が計画されることで購買の心理的な圧力がかかることに考慮する必要があるとの判断がなされた。

A-Punkt

Schmuckhandels

においても、EC条約第三〇条は、銀製品の販売等を禁止する国内法規につき、その法規が関連するすべての事業者に適用され、国内の物品の販売と、他の加盟国からの物品の販売において、法律上および事実上、両者に同じ効果がもたらされる場合には、事業者の加盟国における訪問販売を禁止する国内法規を排除することはないとされた。

(12)

    同志社法学 六八巻四号一九一一三七九   訪問販売においては、商品や価格についての適切な情報が十分に与えられず、心理的な圧力をかけられた結果、消費者が、望んでいないものを購入してしまう点が問題となる。

Buet

は教育講座または教材の訪問販売という取引により、被害を受けやすい買主の特性について分析し、損害の範囲として、教材の購入時点の経済的損失だけでなく、将来にわたる機会の喪失についても勘案している。この点、特定の取引方法による、特定の商品を求める買主の特性、将来の損害について配慮したところは興味深い。二〇〇五年不公正取引方法指令に照らして考慮するとすれば、ある取引方法が特定の消費者集団に向けられている場合の消費者についての規定の適用が可能な事例である ₄₇

。また、

A-Punkt

Schmuckhandels

において指摘された様に、価格の比較が困難であることも訪問販売の問題点として留意する必要がある。さらに、EC条約第三〇条に照らし、訪問販売についての法的規制が正当化されるためには、国内の物品の販売と、他の加盟国の物品の販売のいずれに対しても、法律上および事実上、同じ効果がもたらされることが重要となる ₄₈

㈨   Gottfried Linhart and Hans Biff l

((

G ot tfr ie d L in ha rt an d H an s B iff l

Gottfried

)においてはEC条約の第三〇条、第三六条(TFEU第三四条、第三六条)、一九七六年化粧品指令 ₅₀

および一九八四年誤認惹起広告指令が、化粧品の販売において、臨床的にテスト済み(

cli nic all y t es te d

)または皮膚科学的にテスト済み(

de rm at olo gic all y t es te d

)といった声明を関連する情報を付さずに使用することを禁じるオーストリアの国内法規を排除するかどうかが争われた。化粧品指令の第六条三項は、加盟国は、化粧品の広告において、テキスト、名前、商標、画像などについて、化粧品が有していない性質を有していると暗示させる様な使用がなされないような措置をとらなければならないとする。

 

C olg at e P alm oli ve G m bH

が販売する抗菌性の石鹸と、

H aa rk os P ar fu m er ie w ar en un d K os m et ik a G m bH

が販売する

(13)

    同志社法学 六八巻四号一九二一三八〇

フケを抑制するコンディショナーについて、皮膚科学的にテスト済みといった声明に暗示的に含まれている、医学専門家の意見の内容または結果に関連する情報が付されずに販売されることを禁止する国内法規が存在した。

  欧州司法裁判所は、もしこのような情報の欠落が、平均的な消費者をして製品の性質と機能について誤認を生じさせる場合には上記の法に抵触することになるとする。このような状況において、合理的に情報を得ており、かつ合理的に観察している注意深い平均的な消費者は、その製品が持っていない性質について誤認しないとした。合理的に情報を得ており、かつ合理的に観察している注意深い平均的な消費者に対してなされる、皮膚科学的にテスト済みという声明は、皮膚への影響についての検査がなされ、これらのテストにおいてその結果は効果的でかつ製品に耐性があり、または最低限でも無害であったために市場に出されたことを暗示する以外のものではないとされた。さらに、このような結果についての信頼性は、国家当局による監視に服するものであるとした。いずれにせよ、そのような性質の誤りについては、公衆衛生に影響することはないとされた。したがって、情報を付して販売することを要求する国内法規は第六条三項によって排除されるとした。

  石鹸やコンディショナーを購入するのは、特に被害を受けやすいタイプの消費者とはいえず、詳細な説明が必要な製品ではないとも思われる。しかしながら抗菌性の石鹸やフケを抑制するコンディショナー等機能や用途が明確にされている衛生、健康に関連する製品については、消費者が皮膚科学的なテストがなされているといった表記があるために安全性が確保されたものであると信頼し、購入する場合もあるのではないだろうか。

  石鹸やシャンプー、コンディショナー類の使用が公衆衛生に影響することはないとされたものの ₅₁

、直接肌につける製品であるがために、過敏症、アレルギー反応等の問題が起こらないとはいえない。皮膚科学的にテスト済みといった表記が、皮膚にとってより安全であるといった誤認を引き起こす可能性もないとはいえない。皮膚科学的にテスト済みと

(14)

    同志社法学 六八巻四号一九三一三八一 いった表記がほぼ形骸化しているようにも思われ、このような表記が許容されるのであれば、皮膚にとって安全であると安易に誤認される可能性に鑑み、消費者に対するより詳しい情報が提供されても良いのではないだろうか。

  Pippig Augenoptik v Hartlaue r

((

 

H ar tla ue r

が販売する眼鏡の価格について、

P ip pig

の製品と比較して安いという広告がオーストリア国内でなされた事例について、

P ip pig

が、そのような比較広告は誤認を招くものであると訴えた事例である。一九八四年誤認惹起広告指令の第七条二項は、誤認惹起広告の形式と内容について、国内法規が、指令より厳しい規制を課すことを排除する。裁判所は、比較広告については、一九八四年誤認惹起広告指令第三条a⑴⒠に従い、競争者の名前を表示することもしないことも自由であるとする。しかし、比較広告においては、より良く知られているブランド名を省略することが消費者の誤認を惹起するかどうかについては、国内の裁判所において確認されるべきであるとする。なお、法務官意見は、誤認が惹起されるかどうかの判断は、平均的消費者の推定される期待が覆されるかによるとしている ₅₃

  一九八四年誤認惹起広告指令第三条a⑴⒠は、ヨーロッパ共同体法を遵守する広告であるならば、競争者の名前に言及し、ロゴおよび店舗の前面の写真を複製することも含め、比較広告が許容されるとする。二〇〇六年誤認惹起広告・比較広告指令も第二条⒞に比較広告についての定義をおき、第四条⒜が、比較広告は誤認を惹起するものでない限り許容されると規定する。前文第六段は、比較広告は競争を刺激し、消費者を有利な立場に置くことを可能にするとする。第八条はハーモナイゼーションのレベルについて規定する。指令は最低限の保護をするが、加盟国はそれ以上に厳しい規制を課すことが可能である。ただし、比較広告については、マキシマム・ハーモナイゼーション(完全平準化)が採用されるとする。本件においては、ブランド名を表示しないことが、誤認を惹起する場合があるとされた。このような

(15)

    同志社法学 六八巻四号一九四一三八二

場合、二〇〇五年不公正取引方法指令に照らして考えると、情報を提供しないことが、第七条に規定される不作為による誤認惹起にあたるとされる可能性があることに留意する必要がある ₅₄

 

Koipe Corporation SL v Ohim- Aceites del Sur S A

((

, Aceites del Sur-Coosur v Koipe-Ohi m

((

 

K oip e C or p or at io n S L v O h im - A ce ite s d el S u r S A , A ce ite s d el S u r-C oo su r v K oip e- O h im

K oi p e

)においては、商標に関する誤認が問題となった。

A ce ite s d el Su r S A

が、欧州共同体に商標として、

‘L a E sp añ ola ’

の出願を申請したところ、

‘C ar bo ne ll’

の国内と欧州共同体の登録商標を有する

A ce ite s C ar bo ne ll

(現在の

K oip e C or po ra tio n SL

)が異議申立の申請を行ったという事例において、

O H IM

O ffi ce fo r H ar m on iz at io n in th e I nt er na l M ar ke t

(欧州共同体商標意匠庁))の異議部(

O pp os iti on D iv isi on

)、審判部(

B oa rd o f A pp ea l

)とも、

K oip e C or po ra tio n SL

からなされた

‘L a E sp añ ola ’’

についての異議申立を拒絶した。二つのマークは、全体的視覚的な印象として異なった印象を生み出しているとの判断がなされていた。表象的な要素(

fig ur at iv e ele m en t

)としては、オリーブの並木に座っている人物のイメージは、オリーブオイルに関して、弱い区別的な性質しか有さないため、

‘L a E sp añ ola ’

‘C ar bo ne ll’

という言葉の要素に重要性が与えられるため、二つのマークには類似性はないとされた。

  他方、第一審裁判所は、二つのマークについて、総合的にみて、視覚的に非常に類似した印象を生み出しているとし、

‘L a E sp añ ola ’

のマークは、

‘C ar bo ne

すさのこ。たしとるいてれ成う構で造構の一、ていおによ同にあ総乱混が費消、はとこる者が似象的に合類している印 ペス、はクーマのつジ二、てしとーメイスなー印の刷合ルイタスの字文、配名ドンラブ、色、置的総、りおてっ座で法 い装をして的る女性服、が、な統伝リはらか点観な的オ木ーブ方の定特、でく近の枝のーブリオてしと景背を視並の覚

ll’

。ーび及質本のジセ覚ッメのクーマ、視的たでし断判とるあの印もるす製複を象の

(16)

    同志社法学 六八巻四号一九五一三八三 るおそれを必然的に招くことになるとした。混同のおそれは、

‘L a E sp añ ola ’

‘C ar bo ne ll’

という異なった言葉の存在によって減殺されることはなく、それは、言葉の要素が、物品の地理的出所について言及するものであるため、非常に弱い区別的機能しか有さないからであると説明された。

  控訴審においても、問題となっている物品やサービスについて、混同するおそれがあるかについての全体的な評価において、平均的な消費者のマークについての認識が決定的な役割を果たすとされた。合理的に十分な情報提供を受け、合理的に注意深く慎重な者である、平均的な消費者の注意は、物品、サービスの種類により異なってくるとする。スペインにおいて、オリーブオイルは、スーパーマーケット等で最も一般的に購入される商品であり、消費者は、マークの視覚的なインパクトにより導かれるとする。したがって、マークの表象的な要素が重要であり、二つのマークについて混同のおそれがあるとされた。

  オリーブオイルはスーパーで日常的に購買されるものであり、特に被害を受けやすい消費者が購買しているとはいえない。このような場合、消費者は、購買にあまり時間をとらず、商標について直接比較することをしないため、

‘L a E sp añ ola ’

‘C ar bo ne ll’

という言葉ではなく、視覚的印象が購買を決定する際に重要な要素になるとの判断がなされた。オリーブオイルが広く消費されているスペインにおいて、平均的な消費者はオリーブオイルのマークについて注意を払わないという指摘には疑問も呈される ₅₇

。広く日常的に消費されているゆえ、時間をかけずに購入される商品について、視覚的な印象や言葉の要素と誤認の関係について調査、検討することは有用であると思われる。

(17)

    同志社法学 六八巻四号一九六一三八四

4   ま と め に か え て

  広告に限らず商品に関する情報は、消費者に情報を伝達して、商品・サービスを購入する消費者の行動に多くの影響を与えているが、近年、業者の不適切な広告、表示、勧誘行為により、消費者が誤認に基づいて契約を締結してしまうといった問題がより深刻になっている。日本法において、広告について多くの種類の規定が存在するが、相互の関係が体系的に整理されているとはいえない。また、消費者契約法の広告・表示・勧誘行為など契約締結過程に関する規律について、消費者契約法第四条一項、二項における﹁勧誘﹂要件を削除し、広告を含めること、改正法第四条五項における不実告知の対象となる重要事項について、その範囲につき引き続き検討していくことも必要であると考えられる。さらに、特定商取引法施行規則 ₅₈

にみられるような被害を受けやすい消費者を保護する規制を、より一般的な規制として導入していくことも考慮されてもよいと思われる。今後広告についての責任に関し、より一般的な規制の導入を検討するならば、EUにおける包括的な規制や裁判例が参考となり得る。本稿では、広告が惹き起こす消費者の誤認について取り扱ったEUの規制、裁判例について検討した。

  EUにおける、広告、誤認に関連する主要な規制として、まずTFEUの第三四条、第三五条は、加盟国間における輸入・輸出量の制限およびそれと同等の効力を有するすべての措置を禁止する。広告に関連する規制が、輸入・輸出を制限する違法な規制とされる場合がある。第三六条は、輸入・輸出量の制限を正当化する理由として、公衆道徳、公の秩序、公共の安全等をあげている。さらに、

Cassis de Dijon

において、消費者保護も正当化事由として加えられている。広告に関連する規制が、国内の物品の市場へのアクセスと比べて、他の加盟国の物品の市場へのアクセスをより妨げているのであれば、その規制による措置は、判例法または条約の目的の一つによって正当化されるか、または、禁

(18)

    同志社法学 六八巻四号一九七一三八五 止が必要で措置が目的の達成に比例したものであることが必要となるとされる。

  広告に関する一般的、包括的な規定として、事業者の保護を目的とする二〇〇六年誤認惹起広告・比較広告指令第二条⒝は、﹁誤認惹起広告﹂はそれが向けられている者を欺くおそれがあり、その欺罔的な性質という理由から、それらの者の経済的行動に影響をおよぼし、または、そのような理由から、競争者に被害をおよぼし、もしくはおよぼすおそれがある表現を含む広告であるとされる。第三条は、広告が誤認を惹起するかどうかについて判断する際に、入手可能性、性質、動作、構成などの物品またはサービスの性質、価格または、価格が計算される方法、広告者の性質など広告のすべての特徴についても考慮がなされるとする。

  消費者の保護を目的とする二〇〇五年不公正取引方法指令第五条一項は不公正な取引方法は禁止されると規定している。第五条二項は、取引方法は、専門職業上要求される注意を怠る場合、かつ、製品が提供される、もしくは製品が向けられている平均的消費者、またはある取引方法が特定の消費者集団に向けられている場合においては、当該特定集団の平均的構成員の、経済的行動を著しく歪め、もしくは歪めるおそれがある場合に不公正であるとされる。第五条四項は、誤認惹起的取引方法、または攻撃的取引方法について特に不公正であるとして規定する。第五条三項は、精神的もしくは肉体的な疾病、または年齢、信じやすい等の理由から、取引方法または対象製品から特に被害を受けやすい、明確に区別できる、消費者集団の経済的行動が著しく歪められるおそれがあることを、事業者が合理的に予見できる場合には、取引方法については、その集団の平均的構成員の観点から判断されるとする。

  第六条は、取引方法は、製品の存在や性質、製品の入手可能性、利便性、危険性、動作を含む製品の主要な特徴などを含む事項に関して、虚偽の情報が表示された場合、その情報が正確であるか否かに関わらず、平均的消費者が誤認し、または誤認するおそれがあり、当該取引行為がなければ行われていなかったであろう取引上の決定を行わせる場合、ま

(19)

    同志社法学 六八巻四号一九八一三八六

たはそのおそれがある場合、誤認惹起的であるとする。

  平均的消費者という観点からは、裁判例においては、以下のような解釈が示されている。欧州司法裁判所において一九八四年誤認惹起広告指令が適用された

P ro cu re ur d e la R ep ub liq ue v X

は、平均的消費者とは、注意深く価格の比較をし、しばしば細心の注意を払って車の付属品について問い合わせる者であるとする。

P ip pig A ug en op tik v H ar tla ue r

は、比較広告において誤認が惹起されるかどうかは、合理的に情報を得ており、かつ合理的に観察している注意深い平均的消費者の推定される期待が覆されるかどうかで判断されるとする。

 

E st ee L au de r C os m et ic s G m bh & C o. O hg v L an ca st er G ro up G m bh

は、消費者が誤認するかどうかのリスクと物品の自由な移動に関わる要件とを比較するためには、特定の記述、商標、宣伝の記述または声明が誤認を惹起するかどうかについて、合理的に十分な情報提供を受け、合理的に注意深く慎重な者である平均的な消費者の推定される期待を考慮しなければならないとする。平均的消費者の期待については、関連する、社会的・文化的および言語的な要素を考慮することができるとする。さらに、記述または声明によって誤認する消費者の割合がその使用の禁止を正当化するほど十分に多いかどうかを決定するにあたり、加盟国の裁判所が専門家の意見の聴取または世論の調査を委託することができるとしている。この点、誤認惹起的取引方法に関する、加盟国独自の判断が許容される余地を認めている ₅₉

  学習教材の訪問販売について取り扱った

Buet

は、二〇〇五年不公正取引方法指令に照らして考慮するとすれば、ある取引方法が、教育講座の受講者または教育教材の買主という特定の消費者集団に向けられている場合の規定の適用が可能な事例であった。

  さらに、二〇〇五年不公正取引方法指令第七条は、商品の主要な特徴、支払、配達および履行の手配および苦情処理の方針、撤回又は解約の権利を伴う製品又は取引については、当該権利が存在することなどの情報が提供されなかった

(20)

    同志社法学 六八巻四号一九九一三八七 場合の誤認惹起的不作為についても規定している。平均的消費者がおかれた状況において必要な重要な情報を提供されずに、消費者が取引上の決定を行った場合、またはそのおそれがある場合には、取引方法は誤認惹起的であるとされる。

P ip pig A ug en op tik v H ar tla ue r

においては、比較広告において、ブランド名を表示しないことが、誤認を惹起する場合があるとされた。このような場合、二〇〇五年不公正取引方法指令に照らして考えると、情報を提供しないことが、第七条に規定される不作為による誤認惹起にあたるとされる可能性がある。

  このように、EUにおいては、事業者と消費者を保護する広告に関する一般的かつ包括的な規制が置かれており、基準となる平均的消費者の誤認を惹起するかどうか判断する際に提供されるべき情報についても、多くの事項が含まれている。

  EUにおける商品、サービスの広告と、消費者の誤認に関わる裁判例については、商品、サービスの種類、流通形態、消費者の属性、誤認の態様、誤認の社会的・文化的・言語的背景等と域内市場における物品の自由移動といった点を中心に検討した。比較的高価であり、購入の前に対面で交渉がなされることが多い車、小売店で購買される食料品であるマーガリン、アイスクリームバーとアルコール飲料、小売店で販売され、身体に接触する生活用品である化粧品、石鹸とシャンプー、訪問販売で頒布される教育教材と銀のアクセサリー、さらに、小売店で購買される商標を付した日常品であるトイレット・ペーパーとオリーブオイルなどの広告を取り扱ったものについて、若干の考察を行った。

 

P ro cu re ur d e la R ep ub liq ue v X

においては、比較的高価であって、対面で交渉がなされる車の販売であれば、交渉がなされ、価格も高いので、平均的消費者であれば並行輸入されている製品について理解して購入しているとの判断がなされている。購入するかどうかについて判断するために必要な情報については商品の種類によって異なり、売主からの情報が必ずしも十分に与えられない場合もある。並行輸入の重要性を強調するのであれば、関連する重要な情報が提

(21)

    同志社法学 六八巻四号二〇〇一三八八

供されるような制度が望ましいのではないかと思われる。またより少ない付属品のために価格が低いことについて知られていなかったことで相当数の消費者が購買するとの決定を行った場合において、広告は誤認を惹起するものであるとの判断がなされている。このような場合、相当数の消費者が誤認するかどうかについて確実に知るためには市場調査等が必要となる ₆₀

 

W alt er R au v D e Sm ed t

の消費者は、小売店でマーガリンを購入する消費者であって特に被害を受けやすく誤認しやすい消費者であるとはいえない。ベルギー市場ならではの商品の特性として、商品の形状による誤認の可能性が指摘されるが、マーガリンがキューブ状になっている必要がないとの判断がなされたのは、価格や輸入品の排除が市場に与える効果を考慮したものだと思われる。

  欧州司法裁判所は、

V er ein g eg en U nw es en in H an de l u nd G ew er be K öln e V v A do lf D ar bo A G

₆₁

等において、平均的消費者は食品の成分についてラベルを読んだ上で商品を購入することが期待されるとしている。

M ar s

において判示されたように、マーズのアイスクリームバーを購入するのは、平均的な消費者であるといえるのかどうかについては疑問である。さらに、着色部分が表面積の一〇%を上回っていることが消費者の誤認を生じさせるかについても、より詳細に考慮する必要がある。実際に購入する消費者が、着色部分が表面の面積の一〇%を上回っていることを認識した上で、価格が上昇せずに、量が増えていることを判断することができるのか否かを考慮した場合に、平均的消費者だけではなく、年齢が低い層が誤認するかどうかの検討もなされるべきではないかと思われる。 

 

Konsumentombudsmannen

は、商品の種類によっては、加盟国における広告そのものを禁止することが可能か否かについて判断された事例である。アルコール飲料の有害な効果から公衆衛生を保護するために、アルコール飲料についての広告を禁止する規定を置くことが許容されるが、規制の目的である、人間の健康と、生命の保護の達成に比例し

(22)

    同志社法学 六八巻四号二〇一一三八九 たものであり、間接的に他の加盟国の製品を差別していないことが必要となるとされた。法務官意見は、アルコール飲料についての広告が若者の飲酒に関する現在および将来の認識、行動に影響を与えるとする調査結果に言及している。この事例はアルコール飲料に限らず、広告が被害を受けやすい子供、青年等の消費者に与える影響について検討するものとして参考となる。

  化粧品、石鹸、シャンプーなど小売店で販売され、皮膚に直接塗布されるような商品については、商品の種類、宣伝されている特定の効用、その効用のために商品を購入する消費者の属性と、宣伝されている効用に関する消費者の理解度等に留意する必要があるように思われる。

 

E st ee L au de r C os m et ic s G m bh & C o. O hg v L an ca st er G ro up G m bh , Gottfried

においては、化粧品、石鹸、シャンプーなどの販売に関する広告が問題となった。これらの商品は、車などと比較すれば、高額という訳ではなく、購入に多くの説明が必要な製品とはいえない。しかしながら、さまざまな種類の商品があり、用途ごとに差別化も図られていることから、ある程度の情報が購買の選択をするために必要となる。公衆衛生に関連する製品ではないが、皮膚に直接つけるものであるため、アレルギーなど健康面における影響も懸念される。

‘L ift in g’,

「皮膚科学的にテスト済み﹂、といった表記がなされている場合に、消費者側がそれを信頼して購入することも考えられる。化粧品については、石鹸やシャンプーといった商品よりも、

‘L ift in g’

といったより積極的な効能が宣伝される場合も多く、購入者がどの程度信頼して購入するかどうかについて検討することも必要であろう。この点、平均的消費者の期待について関連する社会的・文化的・言語的な要素を考慮することや、記述または声明によって誤認する消費者の割合がその使用の禁止を正当化するほど十分に多いかどうかを決定するにあたり、加盟国の裁判所が専門家の意見を聴取し、または世論の調査を委託することは有用であろう。

(23)

    同志社法学 六八巻四号二〇二一三九〇

  販売の形態という点に鑑みると、

Buet

A-Punkt Schmuckhandels

において示されたように、消費者が断りきれずに、望んでいないものを購入してしまう点が問題となる訪問販売においては、国内の規制が、国内の製品と加盟国の製品に対して同様におよび、規制による措置が判例法、EC条約により提示される目的によって正当化され、かつ目的の達成に比例するものであれば問題ないとされる。

Buet

は教育講座または教材の訪問販売という取引により、被害を受けやすい買主の特性について分析し、損害の範囲として、教材の購入時点の経済的損失だけでなく、将来にわたる機会の喪失についても勘案している。

  特別セールについての広告や比較広告については、消費者に対して情報を与えることが、競争を促進し、消費者保護につながるとの考えが示されている。

 

G B IN N O v C C L

においては、特別セールまたはクリアランスセールのどちらでもない、一時的に下げられた価格による小売販売において、消費者に価格や期間についての情報を与えない法的規制は、消費者を混乱させ、EC条約第三〇条に違反し、物品の自由な移動の違法な障害となるとされている。

 

P ip pig A ug en op tik v . H ar tla ue

は、誤認を惹起するなどの問題がなければ原則的に比較広告が許容されるとする。さらに、法務官意見は、誤認を惹起するかどうかの判断について、平均的消費者の推定される期待が覆されるかといった考慮が必要となるとする。

  小売店で販売される商標が付された物品についても、商品の種類、消費者の属性、加盟国の社会的・文化的・言語的背景に留意する必要がある。

F ra te lli G ra ffi on e Sn c v D itt a F ra ns a

においては、商標について誤認が生じるかどうかは国ごとの言語的、文化的、および社会的な差異に影響されるとした。

Koipe

では、スーパーで日常的に購買されるオリーブオイルについて、消費者は、購買にあまり時間をとらないとする。このような状況において、消費者の購買を決定

(24)

    同志社法学 六八巻四号二〇三一三九一 する上で重要となるのは視覚的印象であるとの判断がなされた。日常的に時間をかけずに購入されるものについては、視覚的な印象および言葉の要素と誤認の関係について調査、検討することは有用であると思われる。

  本稿では、広告が惹き起こす消費者の誤認について取り扱ったEUの規制、裁判例について検討した。二〇〇五年不公正取引方法指令、二〇〇六年誤認惹起広告・比較広告指令における、広告が誤認惹起的なものであるかについての判断は、平均的消費者を基準になされる。平均的な消費者という概念のみでは、さまざまな属性を有する消費者を保護することは困難であることから、年齢、状況によって被害を受けやすい消費者の現在および将来の誤認についてより詳細な検討がなされるべきであろう。また、誤認を招く可能性のある広告一般について規制が課されているとしても、裁判例においては、商品、サービスの種類、流通形態、消費者の属性、誤認の態様、誤認の社会的・文化的・言語的背景等と物品の自由移動とのバランスが図られた判断がなされている。つまり、広告に関する一般的かつ包括的な規定があったとしても、それが直接広告活動の抑制に結びつくとはいえない。また、誤認する消費者の割合がその使用の禁止を正当化するほど十分に多いかどうかを決定するにあたり、加盟国の裁判所が専門の意見を聴取しまたは世論の調査を委託することは有用であると思われる。さらに、並行輸入や比較広告などにより、消費者の商品の選択肢を増やしつつ消費者に十分な情報を与えた上で商品が販売されるのが望ましいことが裁判例において示されている。これらは、消費者の誤認に関わる法制度の設計において重要な課題である。消費者保護と市場における商品等の流通の適正化、公正な競争の確保のバランスもはかりつつ、広告に関する一般的かつ包括的な規制のありかたについて検討していくべきであろう。

︻付  記︼ 本稿は科学研究費補助金(基礎研究(c))の交付を受けた研究成果の一部である。

参照

関連したドキュメント

Zeuner, Wolf-Rainer, Die Höhe des Schadensersatzes bei schuldhafter Nichtverzinsung der vom Mieter gezahlten Kaution, ZMR, 1((0,

[r]

[r]

[r]

ᄑᛵ᝭ȾɕᤛȶȲǾᒲऺ࣊ɁᯚȗǾȗɢəɞαᭅॴȟᯚȗʬʑʵȺȕɞȦȻȟɢ ȞɞǿȦɁျᝲᄑᛵ᝭Ɂᆬᝓͽഈȟާ஧ȾȺȠɞȦȻȟǾÌÅÓ ʬʑʵɁТɟȲཟ ɁˢȷȺɕȕɞǿ

[r]

①正式の執行権限を消費者に付与することの適切性