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著者 塩尻 恭子

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(1)

Macbethを構成する二つの力

著者 塩尻 恭子

雑誌名 主流

号 27

ページ 1‑22

発行年 1965‑11‑03

権利 同志社英文学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000016696

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Macbeth を構成するごつの力

塩 尻 恭 子

Shakespeare は dualな人生解釈をする。人生は生死,明暗,善悪,秩 序混沌ヲ美醜p 成長衰退等の様に,相反する性質を持つ幾組かの要素から 成り9 それらの要素は観念的に二つのグループに分類される.全て望まし いもの,生・光・善等は lifeの世界に,全て厭わしいもの? 死・閤・悪 等は deathの世界に属するものと言えよう.今仮に lifeの世界を造ろう

とする力を Creative Force, d巴athの世界を支持する力を Destructive Forc己と名付けよう .~Macbetんの劇は Creative Forc巴と Destructive Forceの葛藤そのものである.この小論では, Creative ForceとDestruc‑ tive  Forceのimageryの分析研究を通じて,作品のテーマを探りたく思

う. Cretive Forceは生物の繁殖と成長を促して生物生存の根源的力で ありタ太陽,或いは光全殻,明日の活動に備える眠り,食物 (Macbeth内 では特に milk")等iこ象徴され,幼児や成長盛りの若者の内に生々と感 じられる力である.一方 Destructive Forceは生物の衰退と死を促し,

暗黒,病気,老年,不毛性等に象徴される.この世はこれら二勢力の永遠 の勢力争いの場であり,諸現象は何らかの形で両勢力問の葛藤から成り立 つ.この両勢力は生物全てを支配する.芽が出て若葉が繁り,枯葉となっ て死ぬ.時には成長衰退のこの自然の大法則に邪魔が介入することもある.

木は虫に喰われ大風に吹き倒される.人間も交通事故や病気で自然死以前 に散り去ることがある. だがいかにひどく喰われても,地下深〈しっか りと根を張っている限り,春にはまた新芽が吹き新世代が旧世代に交代す る.そして同じ過程を辿っていく.この永遠に続くかに見える葛藤にもし

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Macbethを構成するこつの力

も終点があるならば,最後は CreativeForceの勝利が待っている.また この世の本来の姿は CreativeForceの支配する状態であり, Destructive  Forceの支配は単なる一時的なものに過ぎない.これが Shakespeareの optimismであるように思われる.

悪の agentとは世界の本来の状態、を維持する紳を絶ち切り, sweet  milk of concord" Civ泊 必 を unrlnlnat凶,な混乱に陥し入れる者でu

ある.ここで注意を要するのは natu1r巴e'という語の意味である. Shake‑

speare自身の,また彼の時代の 'nature'観は現代のものとは異る.少く とも lvlacbethに於ける使用法から推察すると, natural'であることは 人間世界が在るべき望ましい状態にあること,つまり CreativeForceの 支配する健全な姿であることを意味する. Returnto  nature円から現代 までの意味,文明や教育の皆無な獣に近い素裸の人間,文明以前の荒野の 状態にあることではない.適度の抑制と克己を経て秩序の保たれた状態に

あることである.

人間の心中で CreativeForceは humanityの形をとり Destructive Forceは antihumanityとなって対抗する Humanityは真に人間らし い人間であるための必須条件であり,社会の善と秩序とを生む Creative Forceである.精神的人間的成長とは humanityにより満ちることであ

り,堕落とはそれを失い,良心も理性もない動物のレベルにまでなり下る ことである. Shakespear巴は性善説を掲げる.人間の natural'な状態 は humanityに満ちた状態であるが, 彼に内在する弱点を狙って外音防ミ ら誘惑が侵入する. 彼は負けて悪の agentとなり,完全に悪魔の弟子に なりきるかの様に見える. しかし humanityはいかなる迫害にも耐え存 続する.ここに Shakespeareの humanityに対する絶対の信頼が見える.

1¥ゐcbeth内の菖藤には二種類ある.悪の agentとしての Macbeth対 外部の CreativeForce C反 Macbeth派の人々

L

それに Macbeth自身 の内部での humanity対 antihumanity,このこつである.いかにこれら

(4)

Macbethを構成する二つのカ 3' 

の葺藤が進展して行くかを CreativeForceとDestructiveForceのim‑ ageryを通じて次に詳しく検討することにする.

荒野に三人の魔女が登場する.彼等は Macbethが人間の悪を象徴する のに対して超自然、的な不可思議な DestructiveForceの象徴であり,人間 の善と事象の natural"な秩序を乱して喜ぶ悪の権化であるa Blasted heath" (1.  iii.  77)に雷雨と共に現われ,装いは wildで,嶺を生やして 男のような雛くちゃの老婆である Sexlessnessは不毛性に通じる.不毛 性,老年,醜くさ,暗黒,混沌,これら全てが Witchesの属性となって いる. 1幕1場は一種の序幕であり, Macbethの心中での humanity対 里子心の争いと humanityの敗北とを予言する.Macbethは精神的 fog

の中を hover"し,血腫い 企lthyair円(1.i.  12)の中に突入する.

1幕3場は Macbethの運命の今一つの予言に始まる.

1 wi1l drain him dry as hay: 

Sleep shal1 neither night nor day  Hang upon his pnthouselid;  He shall live a man forbid:  Weary se'nnights nine times nine  Shall he dwindle, peak and pine:  Though his bark cannot be lost, 

Yet it  shall be tempest‑tost.  (I. iii.  18‑25)  Macbethは pilot'sthumb円(I.iii.  28)である理性と良心を殆んど失 いかけている.彼は不眠と潟ぎに衰え行くが,彼の humanityは決して 全滅はしない. Hisbark cannot be lost.

Macbethは生来野心家である.栄誉と高位を熱望はするが不正手段を 伴うことを潔しとしなかった.今までは foulnessとfairn5Sが平衡のと

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Macbethを構成する二つの力

れた力関係で共存して来た. けれど彼の第一戸と Witchesの Fair is  foul, and foul  i8  fair.

" α .  

i.  11)との間の顕著な類似は,この精神のパ

ランスが不安定になっていることを暗示する.Witchesの挨拶に Macbeth は最大の野望の対象を意識し humanity側の CreativeForceと un‑ natural'な野心の味方の Destructive Forceとが表面立って高藤を始め る.本能的に彼は老婆達の魔性を感知するが,彼等は巧みに彼の野心を言 い当て,輝かしい未来像で彼を有頂天にした. だから披は無意識に Ban‑

quoの賢明な忠告を無視し9 予言を自分に好都合な風にのみ曲解する.

Macbethの余りにも信じ易い態度を不自然に見やぬため, 作者は彼と Banquoの性格を対照させて Macbethの輔され易い性向を強調している.

Macbethは早や Glamis,and thane  of  Cawdor! / The greatest  is  behind.,ラ (1. iii. 116‑117)と つ ぶ や し が9 王殺害の恐ろしいイメ{ジは 戦場の殺裁に慣れた将軍を恐怖で満たす.この怖れは humanityのなせる 業である.彼は尻込みして自分を説得し,未来に夢を託そうとする. 1も し偶然が俺を王にするなら,俺が動かなくとも時が王冠を与えてくれるだ ろうJ(1. iii. 143‑144). 

King Duncanは万人の血,生命源の太陽である. その王が Macbeth に将来を約束する.

1 have begun to  plant thee, and will labor 

To make thee full  of growing.  (1. iv. 28‑29)  もし Macbethヵ Banquoの Thereif  1 grow, / The harvest is  your  own." (1. iv. 32‑33)にこもる忠誠を王に捧げるなら,彼は緑葉生茂る巨 木に育ったことであろう.ところが彼はやっと出た若芽を非道な血の中に 萎れさせてしまう.Malcolmが Princeof  Cumberlandの称号を授与さ れると,自然の時の推移に委せようとの決心は何処へやら,王座を強奪し ようと心を変える.余りにも残虐非道なその行為は光の中でするには忍び ない.

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Macbethを構成する二つのカ Stars, hide your nres; 

Let not light see my black and deep desires.  (1. iv. 50‑51)  Creative lightは密かな悪事を露見さす正義と報復の光である.人は罪を 良心の光から,また世間の目から隠すため,彼自身本質的には厭わしく思 う暗黒の中に自分を幽閉しようとする. Macbethは王殺害が親族と主従 関係の秩序を乱し,客への主人の義務を侵す非道の行為であることを十分 承知している Humanityは彼に薦蕗さすが vaulting ambition" (1.  vii.  27)を消滅さずには強過ぎる.彼は正義の神と胃潰行為に対する fear のために意志薄弱に滞る.ここに Lady Macbethが必要とされる.復女 は夫を果しない足踏み状態から実行へと押し出す.彼女によると Macbeth は toofull 0' the milk of human kindness (Lv. 1めである.'To be  kind'とは仁愛深い善人であることであり,同時に thenature'に即し ていることでもある.故に humankindness'  とは人間的な美徳や善で あり9広義では humanity自体である.それは人間を養育する milkであ る. Milkof human kindness"は,一口で言えば naturalで creative なhumanityのことである. Macbethはこの mi1kを十二分に持つから,

milkを自由に活動させると王座獲得は不可能である. Lady Macbethは 自分の役割を心得ている.彼女は夫を支え励ますために強くなければなら ぬ.そこで閣の精共に呼びかけ,女性の milkと性とを取り去り,生物学 的 CreativeForceを奪い去るように頼む.夫と同様彼女も闇中でしか実 行できない.

Come

, 

thick night

, 

And pall thee in the dunnest smoke of hell,  That my keen knifεse notthe wound it  maks, Nor heaven peep through the blanket of the dark, 

To cry 'Hold

, 

hold!'  (1. v. 51‑55)  彼女が fiend‑likeで冷酷な女であるという批評は誤っている.普通の女性

(7)

6  M aφethを構成するこつの力

であるからこそ,夜の帳に身を隠す必要を感じ,極端に強い言葉で自分に 鞭打つのである.彼女は女らしい性情を完全に捨てると勇ましくほらを吹

〈が,いかに悪の agentが試みても naturalなものを根絶することはで きない.

Duncanが Macbethの居城に入る時, Banquoは無邪気にも ironical な言葉を吐く.

Whertheymost breed and haunt, 1 have observed, 

The air  is  delicate.  (1. vi. 9‑10)  岩燕は hispendent bed and procreant cradle" (I. vi.  8)を造ってい る.快い大気の中で雛と共に巣を造る naturalな鳥と,暗黒の中で悪事を 図る二人の子無しのunnaturalな人間との聞の鮮かな対照がここに存在す る.

Macbethはまだ臨時している. 彼の怖れの対象は犯罪自体ではなく,

犯罪の結果である.この半妥協に彼のモラルの根底はくずれつつある.彼 は罪と罰の大原則を壊したく思う.が,

...  that his virtues 

vVill plead like angels

, 

trumpet‑tongued

, 

against  The deep damnation of his taking‑off; 

And pity

, 

like a naked new‑born babe

, 

Striding the blast

, 

or heaven's cherubim

, 

horsed  Upon the sightless couriers of the air, 

That tears shaU drown the wind.  (I. vii.  18‑25)  Bab巴'は CreativeForceに創造された innocentflower'であり,不 毛性に対抗する豊産と生命の象徴である. Babe'は pity,即ち良心であ

, milk  of  human kindness"である. この pityは更に pitiful day (III.ii.  47)の phraseによって,光@善.naturalなものと連結 する. Babe'はまた theinnocent sleep (II.ii. 36)や天使のイメー

(8)

Macbethを構成する二つの力 ジに関連する.Imaginationに圧倒された Macbethは 1dare  do all  that may become a man; / Who dares do more is  none." (I. vii.  46‑

47)と絶叫する.Lady Macbethは夫の弱気を感じ取り,あの厚顔な言葉 を吐く.

1 have given suck, and know 

How tender 'tis  to  love the babe that milks ...  (1. vii.  54‑55)  彼女は単に頭の中で babe'と milk'を否定するに過ぎない.が彼女の

タイミングの良い気付け薬で Macbethは落ち着き,決意、を固める.

1 am settled, and bend up 

Each corporal agent to  this terrible feat.  (1. vii.  79‑80)  やっとのことで彼は destructive agentになろうと積極的に willする.

がマスクをかけねばならない. Macbeth夫 妻 の マ ス ク は 世 間 を fairest showで欺くためのみでなく,自己欺繭のための仮面でもある.

王殺害の夜,星一つ見えない.天も最初は悪の agentsに対して好意的 な様子を示す. 良心がまだ盛に邪魔をしていて Macbethは実行をしぶ

2) 

っている.G. R. Elliottの述べる如く,以下の passage: Thou marshall'st me the way that 1 was going; 

And such an instrument 1 was to  use.  (11. i.  42‑43)  に於る過去形 was' は Macbethの心中深く執描に根をおろした良心 の存在を表わす意味で微妙な効果を挙げている.血塗りの短剣は殺人へと 駆り立てる野心であり,幻影に過ぎない.Macbethは足元,即ち彼の現 実,を見ずに,否醜い現実を直視できずに,危なつかしげに捕えることの できぬ実質のない影を追うて行く.Humanityが theheat of deed"に too cold  breath"を吐きかけて決心を鈍らせはしないかと, 大急ぎで 運命の寝所へ突進する.この態度はこの劇全般に一貫する彼の姿勢であれ

この血塗りの短剣のシーンに凝縮して象徴されている.Macbeth は彼を地 獄へ送る弔いのベルに導かれて終に王を殺害するのである.

(9)

8  Macbethを構成するこつの力

Macbethは自分の意志で d巳.structiveagentになり, lifeをdeathに 変えようとする.しかし彼自身宇宙的DestructiveForceの犠牲にならざ るを得ない.本来善なる人間が悪の世界に入ると,そこにはただ良心の珂 責と報復への怖れ,今は自分の属さない生の世界への憧慢と嫉妬があるの みで,堅固な心の平安は得られない. 秩序を混沌に変えようとした Mac‑

bethは自分の心の秩序と安定を喪失する. 彼は Duncanの平穏な眠り と家中の安眠を乱した.だから彼が imaginativeinsightで見抜く通り,

明日の生命の原動力を供給する innocent sleepは彼には授けられない.

Witchesの三つの予言は今や不気味な Glamis hath  murder'd  sleep,  and therefore Cawdor / Shall sleep no more; Macbeth shall sleep no  more. (II.ii.  42‑43)に変ってしまう.陰謀が頭を占めて以来, Macbeth  とLadyMacbethは暗闇の世界に閉じ込もり,喜びの太陽の恩恵を受け る万人の権利を自ら放棄してしまう.やがて彼等は,特に Macbethは, 人間同胞から孤立する. これが destructive agentを待つ不可避で pa‑ theticな運命であり,終には彼等を自滅に追いやるのである.

Macbeth shall sleep  no more."の呪いに Macbethは早速良心の珂 責に苛まれる. 1'11go no more (II.ii. 50).  Lady Macbethは …'tis the eye of  childhood / That fears a painted dvil."(II.  ii.  54‑55)と pityに耳を貸さぬよう注意する. Macbethを greenにするのは彼の内 なるbabeである.Lifeの象徴としての babeのイメージは若さに溢れる 緑色のイメージと密接に関係する.

Wi1l all  great Neptune's ocean wash this  blood  Clean from my hand?  No, this  my hand will rather  The multitudinous seas incarnadine, 

Making the green one red.  (II.  ii.  60‑63) 

(10)

lvlacbethを構成するこつの力

Macbethの新鮮な greenの魂は血に浸り不吉な黄色に染るべく運命づけ られてしまった.

Lady Macbethがあの身の毛立つ pun(' gild'  'guilt うを残して退場 した後,ノックが響く.Hel1  Gateの内部は生命の徴動だに感じられぬ死 の世界であり,外部は活動し回る生の世界である.二人の悪の agentsは たった今自分達の創り上げた混沌と静寂を破るノックの音に仰天する.成 功の頂点に早や彼等の衰退と敗北の前兆が現われる.早やCreativeF orce  は D巴structive Forc巴を威嚇している.このノックが彼等に与える影響 は非常に強く,後に LadyMacbethの夢遊病の場に再現されるが, Mac bethにはこのノックは死んだ Duncanの心臓の鼓動と開える. Wake  Duncan with thy knocking! (II.ii.  74) 

一且道徳律を破ると Macbethは迅速に堕落し,殺人の露見を怖れるが 余り,罪の無い家来を二人も殺す一理性も良心も9 もし働いていたならば,

反対したであろう無意味な行為である.肉体的自己保存の本能は全ての pauser (II.iii.  117)一良心,理性,単なる慣習道徳,何であれーを凌 く¥ Macbethは生の世界に反逆して立った. しかし死の世界も本来性善 である彼を完全には受容してはくれない.彼は 8巴nseof  belongingを与 える場を熱望するが遅過ぎる. もう一度生の世界に帰りたく思うが,そう することは本来のhumanityへの復帰を可能とはするがp せっかく得た王 冠と生命さえも失うことになる.生存欲程強〈真剣なものはない.平凡な 人間である Macbethにとって生命を喪失すること程耐え難いことはない.

そこで彼に残された唯一の途はこのまま厭わしい悪の世界を守り行〈こと である.一旦邪道に逸れた者は,ともかくも生きるためには必然的に anti‑ humanisticな手段に頼る他途がない.Macbethは生命を全うしたいとい

う本能をもっ普通の人間であるが故に避けられぬ選択をすあ.人間である が故の限界に悩み且つ限界に負けて,自らの不幸を招くのが悲劇のもつ一 特徴とも言えよう.そしてこのことが Macbethに対する観客或いは読者

(11)

10  Macbethを構成する二つの力 の同情を惹起す一大要因となっている.

とにもかくにも Macbeth の野望は遂げられた. がすでに Creative'  Forceは盛に活動を開始している.前王の二王子は亡命し,忠臣 Macduff は戴冠式に欠席して Macbethの不安をつのらせ‑0.

Macbethは悪の世界を守ろうとする.しかしその中で心の平安が得ら れなければ無意味である.彼は王の紫衣を纏いはずるが,それは体に合わJ

ず,不恰好に卑小な体から垂れ下っているに過ぎない.

To be thus is  nothing; 

But to be safely thus.  CII

  . r

i.  48‑49)  Lady Macbethも同じ焦燥に駆られている.

Nought's had, all's  spent, 

Where our desire is  got without content.  (III.  ii. 4‑5)  この虚無感, 無意味感は劇の進展に従って顕著となり, 第5幕の dusty‑ death'の passageでピークに達する.Destructive agentには creative な世界は恵まれない. Unnaturalな彼等は実質のない影の世界, unnatu‑

ral な世界に住んでいる.Macbethの城の入口で悪意、のない Banquo に は長閑な岩燕の親子が見え,悪を図る LadyMacbethには不吉な璃の暖 芦しか開えない.

Macbeth夫妻は死人の安息を羨み,毎夜悪夢に捻される.Macbethの1

最も怖れる目の上の癌は Banquoである.単に王冠喪失に対する怖れの みではない Banquoの being"CIII.  i.  55)自体を怖れるのである,

Macbethは内なる babeのため,絶えず creativeな素質に恵まれた彼と 悪に染まり衰える一方の子無しの自分とを比較し,彼の面前では安楽にし ておれない. Macbethの babeは単に scotch"CII

  . r

ii.  13)されたに

滞まり,機会があり次第彼に噛みつく Banquoの下では Macbethの Genius is  rebuked" CIII.  i.  55‑56).  その上 Banquoは生命に溢れた 豊産な未来を約束されている.

(12)

Macbethを構成する二つの力

Upon my head they placed a fruitIess  crown

, 

And put a barren sceptre in  my gripe, 

Thence to  be wrench'd wIth an unlineal hand, 

No son of  mine succeeding.  (III.  i.  61‑64)  11 

王冠の確保と良心の阿責からの解放のために,また嫉妬故の憎しみの故iこ, Macbethは是非 Banquoとその息子を殺さねばならない.

闇の行為を実行に移すにあたり, Macbeth は夜の力を invokeして正 義の光を遮ろうとする.

Come, seeling night, 

Scarf up the tender eye of pitiful  day; 

And with thy bloody and invisible hand  Cancel and tear to  pieces  that great bond 

Which keeps me pale!  (III.  ii. 46‑50)  That great bond"とは Banquoの生命であり, Macbethのhumanity でもある. この就任演説は Lady Macbethの1幕5場に於ける invoca‑ tionと主旨を同じくする.

Stop up the access and passage to  remorse

, 

That no compunctious visitings  of nature  Shake my felI purpose

, 

nor keep peace between 

The eectand it!  (1. v. 45‑48)  Duncan殺害に際しての Macbethは消極的に妻に従ったのであって,

Lady Macbethの決断力と確乎たる意志力がなければ彼の犯罪は成立しな かったであろう.主な agentは彼女であって,それ故 invocationを必要 とするのも彼女であった.今回の Banquo殺害に際して, Macbethは彼 女からバトンを引き継ぎ,主な antagonistとなる.Lady Macbethは疲 れ消耗して引退し,劇の終り近くで弱々しく影の薄い生ける亡霊となって 現われるに過ぎぬ. 彼女は夫の心中を想像だにできず, What's to  be 

(13)

12  Macbethを構成するこつの力

done ?" (III.  ii.  44)と所在無げに聞くばかりである. Macbethには本 来の humanityに戻り王冠と生命を失うか,それともこのまま前進するか,

二つに一つの選択の余地しかない.生存本能は彼に後者をとらず.つまり things  bad begun (IILii.  55)を humanityの犠牲の上に更に多く の悪事でもって強固にしていくことになる. Macbethは full of scor pions"  (III.  ii.  3のであるにも拘らず,つまり罪意識に悶え苦しんでい るにも拘らず,またそれ故一層,本式の一人前の悪党に育とうと決意する.

Banquoは死ぬが Fleanceは逃亡する.誰かがわざと灯火を消して彼 等を救ったのである.この思いがけぬ飛び入りによって Macbethの計画 は初めて半分失敗する.これが Macbethと外部の CreatIve Forceとの 嘉藤の turningointとなり,以後 Macbethは加速度的に勢力を衰えさ せて行く.

There the grown serpent lies;  the worm that's fled  Hath nature that in  time vvi11 venom breed, 

No teeth for the pre:;;ent.  (III.  iii.  29‑30)  Duncan殺害以前の Macbethは前向きの若々しい精神態度を示していた.

今は未来を怖れ現在にしがみつく.後になると今度は老人の様に完全に過 去にのみ執着して回顧的になってしまう.

宴会で Macbethの神経過敏な想像力は Banquoの幽霊を呼び起す.

彼は死が凡てに終止符を打つであろうという至極当然、な仮定の下に殺人を 犯した.しかし Macbethの世界では全てが unnaturalである.Duncan  の心臓は死の直後に鼓動を打ち,死んだ筈の Banquoは生ある者の様に Macbethを脅す.この幽霊は Macbethの悩める良心の産物である.

Thou canst not say 1 did it:  never shake 

Thy gory locks at  me.  (III.  iii.  50‑51)  Macbethは刺客に責任転嫁して弁解するが無駄である. Elliott氏は幽霊 が Macbethのそれに気付く以前に登場するという事実を指摘して,幽霊

(14)

Macbethを構成するこつの力 13  が彼の病的想像力の所産ではなく,彼を罰することによって悔改める機会 を与えようとする天からの聖なる使者であると解釈している.Shalαspeare はキリスト教が一般に受け入れられていた時代に lYfacbethを書いた.だ から彼が敬長な Christianであったにしろなかったにしろ,意識的に幽霊 に ElIiott氏の言う機能を与えたかも知れない.しかし Christianでない 私には LilyB.  Campbel1の非宗教的な解釈の方が受け入れ易く思える.

4) 

Shakeeare's Tragic Heroesの中で彼女は憂欝な fearに悩む Macbeth が想像裡に自分の罪の accuserを描くのであると主張する.その fearが 罪意識から出たものだとすれば9 彼女はまさに私のいいたいことを代弁し てくれている.Macbethを責める humanityはf皮fこ被害妄想を抱かしめる.

Macbeth はもう少しで罪を公けに告白するところであるが,常に側で彼 に力を貸す妻のおかげで幽霊は消える.そして Mcbethは再び ironical な man" (III.  iv. 18)に戻る.諸侯は better health / Attend  his  majesty!" (III.  iv. 120‑121)と挨拶して退場する. Macbethは病気で ある.人間は性善で、あるが故に悪に侵され病気になる.罪人は病気の如く 焦燥してその内部組織を自ら破壊する. Scotlandは Macbethの病気に 感染しており,悪と死のはびこる墓である.自己の罪のaccuserに直面し た Macbethは Bloodwi11 have blood."  (III.  iv. 22)との確信にたち 返答.彼は今までと同様この信念をこけ紙しのマスクで隠そうとし9 不可 能とは知りながら trammelup the consequence" (1. vii.  3)しようと する.彼は自分の犯罪を sureand firmset earth" (II.  i.  56)が見逃す

ζとを願ったが,事実は Stoneshave been known to move and trees  to  speak." (II

  . r

iv. 123)である.石も木も naturalな物は全て the

Scret'st man of  blood (III. iv.  26)を摘発するべく協力する. 実際 naturalな世界のみではなく unnaturalな世界も Macbethに敵対するの である Unnaturalな世界の住人であるためには humanItyを抹殺せね ばならぬと Macbethは結論を下す. My strange  and self‑abuse / Is 

(15)

14  Alacbethを構成するこつの力

thinitiatefear  that wants hard use" (1II. iv. 142‑143).悪事を積み 重ねることによって五感を悪に対して免疫にしようと試みる.これが達成 された時には5幕5場の絶望的最後が来る. もう彼は罪意識の責めに疲れ 切ってしまったのである.

1 am in  blood 

Stepp'd in so far that, should 1 wade no more, 

Returning were as  tedious as go o'er.  (III. iv. 136‑138)  3幕2場での Macbethは少くとも悪の活力に満ちていた.この単調で何 をするエネルギーもない物憂さは精神の死のー症状である.

Banquoの幽霊の出現は Macbethから自分の五感に対する信頼をも奪 ってしまう.彼の実在は不安定であり,それ故彼は導き手を外部に求める.

そして Witchesの助けを願おうと決心する.今や他人に対する配慮の余 裕もなく完全に自己中心的になった彼は,かたわらで愛情深く見守る最愛 のつれあいをさえも忘れている. For mine  own good, / All  causes  shall give way" (III.iv. 135‑136).土俵ぎわに追いつめられた人聞の赤 裸々な告白である.

第3幕はnaturalな勢力が強力になり,早くこの内部分裂し崩壊しかけ ている destructiveagentを打倒するようにとの祈りで結ぼれる.

三人の Witchesが大釜の周囲を踊り回り,グロテスクな essenceや汚 物を投入している.ここでの toneは1幕初めのそれと同質だが,より無 秩序になり奇怪味を増している.呪文は最高潮に達し Macbethの堕落は 急ピッチで進められる.投入物の中の 五nger of  birth‑strangled babe" 

(IV. i.  30)は pilot'sthumb円と Macbethの時ならず萎れた若葉を想 起さす.Macbethは最早1幕での人間Macbethではなし単なる some

thing wicked円(IV.i.  45)に過ぎない.彼は自分が Witchesの魔力を

(16)

lVfacbethを構成するこつの力 15  利用しているのだという幻想を持っているから,彼等に話しかける態度は 粗暴で高圧的である,彼は彼等が thenature's  germens"を tumble all  together"し,それらを Eventill  destruction sicken" CIV i.  59‑

6めする危険な存在であることを知っている,が自分さえ安全ならばいか なる破滅が世界を襲うとも平気なのである.皮肉にも Macbethが忠告を 開〈のは childの亡霊ーその内の一人は手に緑木を持つーである. Babe 

と緑樹は Macbethに敵対する CreativeForceの symbolsである.The  1st  Apparitionは Mcduffを警戒せよと言い, the 2nd Apparitionは 悪事に於て勇敢且確固たる態度をとるように忠告する, for none  of  woman born / Shall harm Macbeth円(IV.i.  80‑81).  The 3rd Appari‑ tionは BirnamWoodが動かぬ限り安全だと言う.第二の予言は肉体的 な危害の怖れから Macbethを解放するが, Banquoに対する以前の怖れ と同様, Macduffの存在それ自体が彼にとっては脅威である.なぜならば,

he is  noble, wise, judicious, and best knows / The五ts0' the  sea‑ son" (IV. ii.  16‑17)であるからである.故に Macdu妊も殺す必要があ

る. 最初の予言の時と同じ< Macbeth は予言の明るい面のみ理解し,

Sweet bodements!  good!"  (IV.  i.  96)と満足する.しかし fairis  foul, and foul is  fair."であり,誰にも sweet"かどうかはわからない.

Macbethは Witchesが人を編す時にはいつも用いる equivocationのわ なに再びかかってしまった.彼等の常套手段は win us  with  honest  trifles, to  betry's/ In  deepest  consequece"(1. iii.  125‑126)である.

これら三つの亡霊でショウが終ったのなら Macbethは安堵して帰途に ついたであろうが, Witches ば EightkingsとBanquoの亡霊を見せて 彼を神経衰弱にする. Now,1 seeタ ヲtistrue" (IV. i.  122).  Banquoの 子孫が後世王位に昇り, Macbethの今までの苦労も犠牲もその足場作り に過ぎないのか! 時がたてば Macbethの治世は終る.未来を怖れても 無駄である. そこへ息急きった使者が Macdu妊 の England亡命の報告

(17)

16  jV!acbethを構成するこつの力

をする. Time,thou anticipatest  my dread exploits"  (IV. i.  144).  うっかり良心に少しでも邪魔されると時は彼を追い越し, pernicious

(IV. i.  133)な予言を実現するだろう. 自然な成り行きを妨げるために Macbethは時に先行せねばならない.

fromthis moment 

The very五rstlingsof my heart sha11 be 

The五rstlingsof my hand.  (IV. i.  146‑148)  Macduffの城を急襲し家族を殺そうと即座に決める Macbethの心中にま だ humanityが働いていることが次の passageの中にうかがわれる:

This deed 1'11  do before this  purpose cool円(IV.i. 154).終始 Mac‑

beth は thepurpose"が cool"しないかと急ぎに急いで極度に緊張 し無理を重ねて来たのである. 4幕2場での無力な罪の無い,また気品の ある Macdu妊母子の描写はその直後の第3の殺人の非道・残酷さを対照 的に引立てている.この段階に来ると暴君に対する同情はーかけらさえ残 っていず,読者観客はひたすら Englandの正義の軍勢の出現を待ち望む.

この願望に答えて次のシ{ンは Malcolmの率いる Englandの寧を呈 示する. Malcolmは王に相応しい美徳、の持主で,この様な指導者の率い る軍勢が Macbethを滅すことは確実である.Rossの悲報に Macdu笠は He has no children.円(IV.iii.  216)とつぶやき, Macbethには子供が ないので親子の情愛がわからず,そんなひどいこともできるのだと嘆く.

この child'は二重の意味をもっ:子供とL寸字義上の意味1::., 'milk of  human‑kindness'という象徴的意味との二つである.

Englandの軍隊は準備完了し,慈愛深い神のイメージをもっ England の王の祝福を受ける. 3幕2場では Goodthings of  day"が droop and drowse" (52)し始め9今は長い夜も終りに近づき,灰色の空は some streaks of  day (III.iii.  5)に照された東雲を迎えようとしている.

Lady Macbethも罪意識に苦しんで来たが,彼女は Macbethの様に想

(18)

]yfacbethを構成すと二つの力 17  像の世界へ逃避しそこで告白して罪の重荷を軽減することができない.専

ら夫の不平の}誇龍となり自分は誰の耳にも屑を捨てることができない.抑 圧された心は日中は堅い意志力に妨害されて発散されないが,夜には夢と なって現われる.不断の緊張と凶事の連続は被女の女性らしい神経をゆ さぶり, 終に彼女は夢遊病を経て発狂までする. 彼女は光を避けたが,

naturalな人間は長くは暗闇に滞っては居られない. She has  light  by  her continual1y" (V. i.  26‑27).自分自身の創り上げた暗闇を怖れて光を 求めている. 2幕2場で A litt1e water clears us of this  deed; / How  easy is  it, then 円! (67‑68)と言った波女は強いて realistic,mterialistic になろうとしていた 今は両手をこすりながら all the  perfumes  of  Arabia wil1 not sweeten this  little  hand" (V. i.  57‑58)とすすり泣し、

ている.彼女は自分には責任のない BanquoとMacdu:庄の家族の殺害の 血痕にも罪意識を感じて来た.Macduffが家族に計画を告げなかったのは 彼等の安全を願う気持からであり Macbethが妻を innocent of  the  knowledge"  (III.  ii.  45)に滞めようとしたのも彼女を保護するためであ

った DestructiveForceは科ある人も無い人も区別なく襲う非合理な力 である.Lady Macbethは医師に見放され回復の望みはなくなる.

Macbeth's way of life  / Is  fallen  into  the sear, the yel10w leaf

(V. iii.  22‑23).源泉 (Duncan)が途切れて以来樹液は徐々に減じて葉は 枯れてしまった.地に落ちて dustydeath"を待つばかりである.Mac   bethは成長に必要な日光を吸収する力を失い, 蔭に居なければ幹につい ていることができない.彼は ripefor  shaking円(IV.iii.  138)どころ か shakingの 必 要 す ら な し 放 っ て お い て も 自 ら 落 葉 す る " 呂11that  is  within him does condemn / Itslffor  being there (V.ii.  24‑25)

Eternal  jewel"  (III.  i.  68)を犠牲にした一生涯の努力の結実は単に curse, not loud but deep, mouth‑honour (V.iii.  27)である.生ぎ 先短い老人の様に彼は過去の自分にノスタルジアを感じる.

(19)

18  l¥1acbethを構成する二つのカ

1 have almost forgot the taste  of fears '" 

Direness, familiar to  my sIaughterous thoughts, 

Cannot once start me.  (V. v. 9‑‑15)  懸命な努カの結果彼は怖れの原因の humanityを追放し,この人間感情に 殆んど無感覚の状態を招くことができた.が彼は成功に喜ぶどころか深く 悲しんでいる‑humanityが僅かながら残っている証拠である.妻の死に 彼は完全に孤独になる.強烈な悲しみは感じられず,ただ続発する災難に 対してwearinessを示すのみである.この何もかも失い絶望のどん底に落 ちた瞬間,

t

皮は今までのから威張りの勇気を失い,正亘に現実を眺めやる.

彼の全生涯は futilityであった.以前 swelling act  of  the  imperial  theme" (1. iii. 28‑29)と思えたものは tale/ Told by an idiot, full  of  sound and fury, / Signifying nothing"  (V. v. 26‑28)と化す. 3  幕1場の虚無感と 3幕4場の倦怠感は次のpassageに凝縮されて culmina‑ tionに達する.

To‑morrow, and to'morrow, and to‑morrow,  Creeps in this petty pace from day to  day  To the last  syllable of  recorded time

, 

And all  our yestrdayshave lighted fools 

The way to  dusty death.  (V. v. 19‑23)  Babeには creativeな成長発育をもたらす日々も Macbethには destruc‑ tiveな災難と破滅をもたらす.

この悲しい悟りの直後 Birnam Woodが動き出したという知らせが入 る. Fearには免疫になった筈の Macbethにも自滅に対する怖れだけは 根強く残っており,彼は Witchesの最後の保証にしがみついて武器を取

り上げる.

Englandの軍勢は青年兵士で満ちている.Molcolm自身まだ若い.

. ther isSiward's so立,

(20)

Macbethを構成するこつの力 19  And many unrough youths that even now 

Protest their五I ofmanhood.  (V. ii. 9‑11)  若者達は nakednew‑born babes"であり,象徴的にも若校を手にする.

Creative Forceは迫害にもめげず強大な森にまで成長し, yeIIow leaf> 

にとって代るべく押し寄ぜる.この Macbethを仰天さす出来事は不自然、

な trickによるものではなく, natural mirac1eであり>the 3rd Appari‑

tionの意味を解いてくれる. Macbethはやっと equivocation of  the  fiend" (V. v.  43)に気付き始める.世界を奴隷にしようとして逆に杭

に縛りつけられた Macbethはそれでも完全には humandIgnityを失い 切ってはいず,最後まで 五ghtthe  course円(V.vii.  2) ,する積りで ある それも熊の様に.悪魔の二枚舌と薄々感付きながらも Macbethは Witchesの予言を最後の頼みとして勇気の捻子をぎりぎりの点まで締めあ げる.Y oung Siwardとの一騎打は軽く勝つが,人間としてのプライドを 打ち砕かれる.Englandの軍の勝利は明らかとなり, theLord's anointed  temple>> (II. iii.  73)は Malcolmに明渡される.

Macbethは the Roman fool円(V.viii.  1)の様に自殺などするも のかと勢いこみ,生存欲の支えにのみすがって立っているが,まもなく Macdu妊に殺される.この死は劇的興奮は高めるが,この劇の主要関心事 は他にある.すなわち,肉体の死以前に来た精神の死が中心である. The  2nd  Apparitionの Bloody Child円は帝王切開で血塗れになって生れ た Macdu妊と解釈されるのが通例だが,更に Macbethが迫害し続けた babe,つまり内部の CreativeForceである humanityを指ずとも考えら れる. Humanityは傷つき血を流すが, Macbethの死の直前まで息づい ている.

Of alI  men else  I have avoided thee: 

But get thee back: my soul is  too much charged 

羽Tithblood of thine already.  (V. viii.  4‑6) 

(21)

20  Macbethを構成するこつの力

Macbethは Macdu妊誕生の事情を知らないから自分が勝つと信じている.

この自信をもって闘ったなら Macbethが勝ったかも知れない. しかし Macdu妊は spellを破り, Macbethは juggling五ends" (V. viii.  19)  に踊されていたことを十二分に悟る. 自分自身に厭気がさし,生への欲望 さえ捨てようとするその時, Macduffが彼を見せ物用の怪物と罵る.その 言葉に Macbethは 1will not yield."  (V. viii.  27)と叫ぶ.醜く卑屈 な自分の現実を見せつけられて,人間としてのプライドと人間らしさを取 り戻したい欲求とが湧き起り, Macbeth は勝つ見込の皆無な闘いを挑む.

武具を捨て, 全ての惑いの鎖から放たれ, 素手で向って倒される. Mac‑

bethの頭は the1st  Apparitionの ArmedHead"で予言された通L 最後のシーンで晒し物になる.イ本から離されたこの不気味な塊は人間らし い heartから不自然に切断されたMacbethの悪の生涯全体の象徴となっ ている.

かくして若者に掲げられた緑の森は衰弱した Macbethの yellow leaf  に と っ て 代 仇 秩 序 あ る creativeな世界が復活するのである.

以上検討した如く ,Macbeth全巻は Macbeth内の CreativeForce対 Destructive Forceの菖藤,或いは外部の CreativeForce対悪の agent

としての Macbethの葛藤から成っている. Macbethは生を死に変えよ うとして自分の本性に反して影の世界に閉じ寵る.堕落の原因はあくまで 彼の自由意志による選択にある.一旦悪の agentとなると 'gainstnature  still" (11. iv.  27)である antih umanisticな手段による他に生命を守る途 がなしこのことが堕落の加速度的進展の原因である.この世界を混沌に 陥れた Macbethの内面生活もまた秩序が破れ,内音防〉ら崩壊する.この ことを G. Wilson Knightは次の様に述べている,.Absolute disaster  prohibits self‑consistency:  it  helps  to  slay  itself."  Destructiv己なもの

(22)

J11acbethを構成するこつの力 21  は self‑destructi veである Destructiv巴なものは creativeな世界と de‑ structiveな世界の両方から排斥される. そしてやがて自誠して Creative Forceの勝利への道を聞いてやる.Knight民の言葉を借りるならば次の 様に言えよう.

Death gives birth  to life.  Not nature alone, but 'both the worlds'  (III.  ii.  16), natural  and  unnatural, life  and death, com巴against

6) 

お1acbeth.

時は destructiveな面と creativeな面の二面をもっ. 時は死と誕生p 破 壊と建設の連続である Destructiveな時は必ず誠ぴて過去のものとなる.

Knight氏は Macbethを destructivetimeの象徴と見る.Macbethの 後には sovereignflower (V.ii.  30)が咲く.誕生の前には destruc‑ tiveな苦痛がある.隠されていた現実や真実を把握するには,新しい倍り に達するには,それ以前に精神的苦痛が必要である.Macbethは地獄の深 淵のどん底に沈んだ時にあの tragicawarenessに到達する.この realiza‑ tionは彼の場合遅過ぎて,やり直す力を失ってしまっているけれどもーま たそれでこそ 'tragic'なのであるがーその realizatIon自体彼の rebirth

と言えるであろう.

時には終極がないように思える.しかしもし終りがあるならば,最後の 段階は輝かしい rebirthに違いない.時は人聞に不幸と幸福を代る代る与 えて進行するが,常にその進行方向は究極的な善と幸福の状態に向ってい る.時に終りがあるかどうか, Shakespeareがどう考えていたかは江ぬか bethの検討のみからは至極暖昧で矛盾だらけの答しか引出せない. 少く

とも Shakespeareが Creative Forceの力と人間の性善に対して強い信 頼をおいていたことだけは確かな結論として挙げることができょう.

1)  Shakespeare, William. 1¥ゐcbeth,in The  Works 01' TVilln Shakespeare.  Ed. George Clark W. Aldis Wright.  The Globe Edition; London: Mac‑

(23)

22  J.i!facbethを構成する二つの力

millan  Co., Ltd., 1930.  Macbethからの引用の注は G. Wilson Knightの The 1mperial  Theme中の方法を採用する.Text以外の参考書からの引用に のみ注をつけることにする.

2)  Elliott, G. R. Dramatic Providence  in  Macbeth:  A Study  of Shake speare's  Tragic Theme of Humanity and Grace.  Princeton, New Jersey;  Princeton University Press, 1958. p.  83. 

3)  op. cit.  p.  129 footnote. 

4)  Campbell, Lily B. Shakespeare's  Tragic Hef"oes.  University  Paperbacks;  New Y ork: Barnes Noble, 1960. 

5)  Knight, G. Wilson.  The 1m)erialTheme.  London: Menthuen Co.,  Ltd., 1951. p.  153. 

6)  1bid. 

7)  G. Wilson Knightの The 1nψeη:al  Themeの中に私と同じ viewpointを 発見した時には嬉しくもあり失望もした.最後に Knight氏の summaryを本 論の結論として引用したいと思う.

. .

  thwholeplay may be writ  down as  a wrestling  of  destruction  with  creation:  with sickening shock the  phantasmagoria  of  death  and  evil  are  violently loosed on earth, and for a while  the  agony endures, destructive;  there is  a wrenching of  new birth, itseH  disorderly  and unnatural  in  this  disordered world, and then creation's more firm‑set sequent concord replaces  chaos.  The baby‑paceis  crowned.  (op. cit., p.  153.) 

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