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<論説>初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育

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初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 245. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダード としての著作権教育. 白鳥 綱重. <目次>. 第 1 章 はじめに. 第 2 章 新学習指導要領との関係. 1.「ミニマム・スタンダードとしての著作権教育」の見える化の必要性. 2.新学習指導要領における主な著作権関連記述の状況. 3.まとめ(学習指導要領が定める著作権教育). 第 3 章 学習成果との関係. 1.「学習成果」の視点の有用性. 2.「最も印象に残っている著作権教育」に関する大学生アンケート調査. 第 4 章 各学校による著作権教育の実践に向けて. 1.他の「〇〇教育」(テーマ別教育)との関係整理の必要性. 2.「知財創造教育」としての著作権教育. 3.「キャリア教育」としての著作権教育. 4.「ESD」(持続可能な開発のための教育)としての著作権教育. 5.おわりに. 論 説. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 246. 第1章 はじめに. 学校教育における情報通信技術(以下、「ICT」という。)の活用(以下、「ICT. 活用教育」という。)は、教育内容の幅を広げ、また、学習者の個に応じた効. 果的な教育・学習の実現にも資する手段として有用であり、積極的に推進され. ている。. この点、令和に入ってからの動きとしては、令和元(2019)年 6 月 28 日に「学. 校教育の情報化の推進に関する法律」(令和元年法律第 47 号)(以下、「学校教. 育情報化推進法」という。)が公布され、即日施行されるとともに、予算事業. 面では、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(同年 12 月 5 日閣議決定). において、校内通信ネットワークや端末の整備支援等を内容とする「GIGA ス. クール構想の実現(Global and Innovation Gateway for ALL)」1)が位置付けら. れ、小学校、中学校及び高等学校段階(特別支援教育を含む)における「学校. 教育の情報化」の推進が目指されている。さらに、「新型コロナウイルス感染. 症緊急経済対策」(令和 2(2020)年 4 月 20 日閣議決定(同年 4 月 7 日閣議決. 定の変更))では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による甚大な影響. を踏まえ、V字回復フェーズの対策の 1 つとして、「リモート化等によるデジ. タル・トランスフォーメーションの加速」が示された。そこにおいては、「GIGA. スクール構想の加速」とともに、「大学等における遠隔授業の環境構築の加速. による学修機会の確保」が位置付けられ、高等教育段階も含め、ICT 環境の整. 備支援等の積極的な動きがみられるところである。. 他方、ICT 活用教育は、著作物等の利用を多く伴う。そこで、ICT 活用教. 育における著作物等利用の円滑化のため、既に平成 30(2018)年著作権法. 改正(平成 30 年法律第 30 号)により、授業目的公衆送信補償金制度が創設. . 1) 「GIGA スクール構想の実現」については、文部科学省ウエブサイト(https://www.mext. go.jp/a_menu/other/index_00001.htm)を参照(最終閲覧日:2020 年 12 月 23 日)。. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 247. されていた。これは、非営利教育機関において、授業の過程で行う必要な著. 作物等の利用のうち、従来は許諾が必要であった公衆送信による利用につい. て、ワンストップ 2)による補償金の簡便な支払いにより、著作権者等の許諾. を得る必要なく利用することができるとする制度である。同制度は、上記「新. 型コロナウイルス感染症緊急経済対策」3)等を踏まえ、令和 2(2020)年 4. 月 28 日から施行されている(著作権法 35 条及び 104 条の 11 乃至 104 条の. 17)4)5)。. もっとも、ICT 活用教育における著作物等利用の円滑化は、授業目的公衆送. 信補償金制度(「補償金付き権利制限」)の制度化のみによって実現できるもの. ではなく、まず、同制度の適切な運用がなされることが必要である。また、学. 校における著作物等の利用は、当然ながら、同制度が適用される場面に限られ. ない。したがって、ICT を活用しない教育・学習場面も含め、教職員及び子供. . 2) ワンストップ窓口となる団体として、一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会 (SARTRAS)が、文化庁長官により指定されている。. 3) 同閣議決定においては、「(5)オンラインでの学びに対する著作権要件の整理」として、「デ ジタルの資料配布を原則許諾不要・補償金とする著作権法の一部を改正する法律は公布 日(平成 30 年 5 月 25 日)から 3 年以内に施行されるとなっているところ、これを即時 に施行する(後略)」と示されている(第 2 章Ⅳ .3「〇遠隔教育について実施すべき事項」)。. 4) 授業目的公衆送信補償金制度について、早期施行も含めた制度化に至るまでの動きや主 な制度的特徴等については、白鳥綱重「授業目的公衆送信補償金制度-改正著作権法第 35 条の施行を受けて-」横浜法学 29 巻 1 号(2019 年)143-183 頁を参照。. 5) なお、同補償金の額は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響の下、各教育機関におけ る遠隔授業等の緊急的実施の必要性への配慮の観点から、令和 2(2020)年度に限り、特 例措置として無償とされた(白鳥・前掲注 4)154-155 頁参照)。また、令和 3(2020)年 度以降の補償金の額については、原則通り有償として、令和 2(2020)年 12 月 18 日に、 文化庁長官により認可されている(児童生徒等 1 人当たりの年間の補償金額は、小学校 等 120 円、中学校等 180 円、高等学校等 420 円、大学等 720 円となっている(一般社団法 人授業目的公衆送信補償金等管理協会「授業目的公衆送信補償金規程」)(https://sartras. or.jp/wp-content/uploads/hosyokinkitei.pdf)(最終閲覧日:2020 年 12 月 23 日)。. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 248. たちによる著作物等の利用については、広く、教育機関における著作権リテラ. シーの育成が求められる。授業目的公衆送信補償金制度に関する文化審議会著. 作権分科会における議論の過程において、同制度の創設(「権利制限規定の整. 備」)とともに、「教育機関における著作権法に関する研修・普及啓発」の必要. 性が示されていた 6)のは、このような観点からも十分に理解できるものである。. 新型コロナウイルス感染症の影響もあり、各学校において遠隔授業等の実施の. 必要性が高まり、それに応じて著作権に対する関心が高まっている今こそ、著. 作権教育に意識的に取り組む好機であると考えられる。. そこで本稿は、各学校等による著作権教育の検討や実践に資することを目的. として、初等中等教育、とりわけ、学校教育情報化推進法が対象としている、. 小学校、中学校及び高等学校段階(同法 2 条 1 項参照)における教育に焦点を. 当て、学校教育における著作権教育の位置付けや、その在り方について、明確. 化を図ることを目指すものである。. そのために、以下では、まず、次章において、新しい学習指導要領における. 著作権教育の位置付けを確認し、その分析を行った上で、第 3 章において、教. 育効果の視点から、最近の学校教育における著作権教育の在り方について、分. 析・考察を行う。これらを通じ、全ての学校で共通に取り組むべき著作権教育. の内容を確認した上で、最終章では、各学校が、著作権教育について、他の「〇〇. 教育」との整合性を保ちながら実践していく上での視点を提供することを試み. ることとしたい。. . 6) 平成 29(2017)年 4 月文化審議会著作権分科会報告書は、ICT 活用教育における著作物 利用の円滑化のための課題として、「ア.権利制限規定の整備,イ.教育機関における著 作権法に関する研修・普及啓発,ウ.ライセンシング環境の整備・充実,エ.法解釈に 関するガイドラインの整備」の 4 点を挙げている(同報告書 75-76 頁等)(https://www. bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/pdf/h2904_shingi_hokokusho.pdf)(最終 閲覧日:2020 年 12 月 23 日). 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 249. 第2章 新学習指導要領との関係. 1.「ミニマム・スタンダードとしての著作権教育」の見える化の必要性 学校における著作権教育については、これまでも、著作権教育に理解のある. 教員や教育関係者により、優れた実践が行われてきており、その知見が共有さ. れてきた 7)。これらの実践を行っていただいている関係の方々には敬意を表す. る次第であり、引き続き著作権教育のリーダーとして、是非とも、充実した実. 践を期待したいと考えている。. 他方、著作権教育については、一部の熱心な教員等の取組に頼るばかりでな. く、広く、全ての学校で進めていくためには、全ての学校で共通に取り組むべ. き著作権教育の位置付けや内容について、より一層明確にしていく必要がある. と考えられる。というのも、著作権教育について、一定以上の教育内容・方法. については、各学校の特色等を踏まえ、その創意工夫に委ねられることから、. 多様であり得るとともに、より充実した教育を追求しようとする場合には、際. 限がないと考えられるからである。また、そもそも、各学校が授業に充てるこ. とができる時間数は、無限ではない。. それでは、初等中等教育段階の全ての学校において共通に取り組むべき著作. 権教育、いわば「ミニマム・スタンダードとしての著作権教育」とは、どのよ. うなものであろうか。その手掛かりは、まずは、学習指導要領に求めることが. . 7) 著作権教育の実践例については、例えば、野中陽一編「教育の情報化と著作権教育」(三省堂・ 2010 年)、川瀬真監修「先生のための入門書 著作権教育の第一歩」(三省堂・2013 年)、 日本知財学会知財教育分科会編集委員会編「知財教育の実践と理論-小・中・高・大で の知財教育の展開-」(白桃書房・2013 年)等において紹介されている。なお、文化庁 ウエブサイトでは、「学校における場面対応型指導事例集『著作権教育 5 分間の使い方』」 や、各学校でも活用できる小学生、中学生等の対象者別 Web 教材等が提供されている. (https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/kyozai.html)(最終閲覧日: 2020 年 12 月 23 日). 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 250. できると考える。. 学習指導要領は、学校教育法の委任に基づく学校教育法施行規則(文部科学. 省令)において、「教育課程の基準として文部科学大臣が別に公示する」とさ. れている規定(学校教育法施行規則 52 条、74 条及び 84 条)を根拠とするも. のである。このような学習指導要領は、普通教育においては、(学生が一応教. 授内容を批判する能力を備えていると考えられる大学教育と異なり、)「教育の. 機会均等をはかる上からも全国的に一定の水準を確保すべき強い要請がある」. ことを踏まえ、「教育の内容及び方法について遵守すべき基準」として定めら. れているものである 8)。すなわち、学習指導要領は「法規としての性質を有す. る」9)ものであり、学習者全員に共通に指導すべき内容を示しているという意. 味では、「最低基準」といえるものである 10)。. したがって、小学校、中学校及び高等学校の学習指導要領における著作権教. 育の位置付けを明確にすることにより、各学校教育段階における「最低基準」. としての著作権教育の内容が明らかになる。すなわち、学習指導要領において. 示されている内容は、すべての小学校、中学校及び高等学校において行わなけ. ればならない内容であり、その意味において、「ミニマム・スタンダードとし. ての著作権教育」といえる。. なお、学習指導要領は、小学校及び中学校については平成 29(2017)年 3. 月に、高等学校については平成 30(2018)年 3 月に、学習指導要領が改定され、. これらの新しい学習指導要領は、小学校については令和 2(2020)年度から全. 面実施されているとともに、中学校については令和 3(2021)年度から全面実. 施され、高等学校については、令和 4(2022)年度の入学生から年次進行で実. . 8) 最大判昭和 51 年 5 月 21 日刑集 30 巻 5 号 615 頁〔634 頁及 び 641-642 頁〕〔旭川学力調査 事件〕. 9) 最判平成 2 年 1 月 18 日判時 1337 号 3 頁〔4 頁〕〔伝習館高校事件〕. 10)鈴木勲編著「逐条 学校教育法〈第 8 次改訂版〉」(学陽書房・2016 年)274 頁. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 251. 施されるという段階にある 11)。. そこで、本章では、学習指導要領における主な著作権関連の記述について、. これらの新学習指導要領についての点検を行い、それらを踏まえた「ミニマム・. スタンダードとしての著作権教育」の内容について、確認・分析を行うことと. する。. 2.新学習指導要領における主な著作権関連記述の状況 (1)学習指導要領における著作権関連用語. 以下では、小学校、中学校及び高等学校に係る学習指導要領における主な著. 作権関連記述について確認していくが、予め断っておくと、学習指導要領(文. 部科学省告示)の文言上は、「著作権」という用語が登場する箇所はそれほど. 多くはない。しかし、当然のことながら、このことは、学習指導要領上、「著. 作権」と明記されていないものについては著作権教育を行う必要がない、とい. うことを意味しない。学習指導要領については、大綱的な基準であるところ、. その記述の意味や解釈などの詳細についての各学校の理解を深め、創意工夫. を生かした特色ある教育課程の編成・実施に資するよう、「学習指導要領解説」. (文部科学省作成)が用意されている。したがって、同解説を合わせ参照する. ことにより、学習指導要領における著作権教育の扱いが浮き彫りになる。. そのような観点から、本稿では、学習指導要領における主な著作権関連の記. 述として、以下の事項(関連用語)に着目し、確認・分析作業を行った。. . 11) 平成 29 年文部科学省告示第 63 号(小学校学習指導要領)、平成 29 年文部科学省告示第 64 号(中学校学習指導要領)及び平成 30 年文部科学省告示第 68 号(高等学校学習指導 要領)。この他の学校種についても、幼稚園については、平成 29 年文部科学省告示第 62 号(幼稚園教育要領)が、特別支援学校については、平成 29 年文部科学省告示第 73 号(特 別支援学校幼稚部教育要領)、平成 29 年文部科学省告示第 73 号(特別支援学校小学部・ 中学部学習指導要領)及 び 平成 31 年文部科学省告示第 14 号(特別支援学校高等部学習 指導要領)が、それぞれ定められている。. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 252. 【主な関連用語】 �「情報モラル」、「約束・きまり」、「引用」、「(作者・作品の)創造性 の尊重」、「文化の継承、発展、創造」、「著作権・知的財産(権)」. なお、これら各事項(関連用語)に関する具体的な内容は、以下、各学校種. の学習指導要領における記述内容を見ていく中で、取り上げていくこととする。. また、新学習指導要領には、「総則」及び「教科」のほか、「外国語活動」(小学校)、. 「総合的な学習の時間」(小学校・中学校)、「総合的な探求の時間」(高等学校). 及び「特別活動」も含まれるが、本章では、主に教科教育に焦点を当て、「総則」. 及び「教科」(小学校及び中学校については「特別の教科 道徳」を含む。)に. おける記述状況に着目して、点検を行った。. (2)小学校学習指導要領(平成29年告示)における主な著作権関連記述. 小学校学習指導要領における主な著作権関連記述の状況について、図 1 に整. 理した。この図は、著作権に関する上記の各関連用語に関し、学習指導要領に. 記述のあるものについて「〇」を付したものである(なお、「総則」において、「教. 科等横断的な視点から教育課程の編成を図るもの」と示されているものについ. ては、すべての「教科」に記載があるものと整理して「〇」を付した)。. ① 情報モラル. 「情報モラル」は、「情報活用能力」に含まれ、「情報活用能力」は、「言語能力」. 及び「問題発見・解決能力」とともに、教科等を超えた全ての「学習の基盤と. なる資質・能力」として位置付けられている。「学習の基盤となる資質・能力」. の育成について、各学校は、児童の発達の段階を考慮し、「各教科等の特質を. 生かし,教科等横断的な視点から教育課程の編成を図る」ことが求められてい. るから(以上につき、第 1 章「総則」第 2 の 2(1))、要するに、新しい学習指導要. 領の下において、「情報モラル」は、教科等横断的な視点から教育に取り組む. ことが明示されているものである。. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 253. このような「情報モラル」について、同解説「総則編」は、以下のように説. 明している(解説「総則編」第 3 章第 3 節 1(3))。. 「第 1 章総則第 2 の 2(1)においては、『情報活用能力(情報モラルを含. む。)』として、情報活用能力に情報モラルが含まれることを特に示している。. 携帯電話・スマートフォンや SNS が子供たちにも急速に普及する中で、イ. ンターネット上での誹謗中傷やいじめ、インターネット上の犯罪や違法・有. 害情報の問題の深刻化、インターネット利用の長時間化等を踏まえ、情報モ. 【小学校学習指導要領(平成29年告示)】. 教科 . 項目. 国 語. 社 会. 算 数. 理 科. 生 活. 音 楽. 図 画 工 作. 家 庭. 体 育. 外 国 語. 道 徳. ① 情報モラル ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ② 約束・きまり ○ ○ ③ 引用 ○ ④ 作者・作品の創造性の尊重 ○ ○ ⑤ 文化の創造等 ○ ○ ○. (注 1)「情報モラル」(上記①)は、学習の基盤となる資質・能力の 1 つである「情報活 用能力」に含まれる。各教科等の特質を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の 編成を図ることが必要とされているとともに(第 1 章「総則」第 2 の 2(1))、道徳 科(「特別の教科 道徳」)においても特記されている(第 3 章「特別の教科 道徳」 第 3 の 2(6))。. (注 2)「約束やきまり」(上記②関係)は、道徳科における「C 主として集団や社会との 関わりに関すること」の中で、第 1 学年及び第 2 学年で取り上げられており、第 3 学 年及び第 4 学年では「約束や社会のきまり」が、第 5 学年及び第 6 学年では「法やき まり」が、取り上げられている(第 3 章「特別の教科 道徳」第 2C([規則の尊重]))。. (注 3)「文化の創造等」(継承、発展、創造)(上記⑤)について、音楽科では「音楽文化」、 図画工作科では「美術文化」が取り上げられている(第 2 章第 6 節「音楽」第 3 の 2(1) オ及び第 2 章第 7 節「図画工作」第 3 の 2(11))。. 図1 小学校学習指導要領(教科指導)における著作権に関する主な記述状況. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 254. ラルについて指導することが一層重要となっている。. 情報モラルとは、『情報社会で適正な活動を行うための基になる考え方と. 態度』であり、具体的には、他者への影響を考え、人権,知的財産権など自. 他の権利を尊重し情報社会での行動に責任をもつことや、犯罪被害を含む危. 険の回避など情報を正しく安全に利用できること、コンピュータなどの情報. 機器の使用による健康との関わりを理解することなどである。このため、情. 報発信による他人や社会への影響について考えさせる学習活動、ネットワー. ク上のルールやマナーを守ることの意味について考えさせる学習活動、情報. には自他の権利があることを考えさせる学習活動、情報には誤ったものや危. 険なものがあることを考えさせる学習活動、健康を害するような行動につい. て考えさせる学習活動などを通じて、児童に情報モラルを確実に身に付けさ. せるようにすることが必要である。その際、情報の収集,判断,処理,発信. など情報を活用する各場面での情報モラルについて学習させることが重要. である。(後略)」(下線は筆者が付した。). 著作権は、知的財産権の 1 つである。このことから、上記の下線箇所におけ. る「知的財産権」を「著作権」として読み替えれば、「情報モラル」教育にお. いては、「著作権など自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任を持つ」と. いう考え方と態度を身に付けさせることが、学習指導要領において求められて. いる内容であると理解することができる。また、「自他の権利」としているから、. 「他人」の知的財産権(著作権)のみならず、「自己」の知的財産権(著作権)、. すなわち、児童の作品については、創作した児童自身が著作権者であり得るこ. とについても、意識を向けさせることが求められているといえる。. なお、「情報モラル」については、学習指導要領の「総則」に加え、「特別の. 教科 道徳」(道徳科)においても、特記されている 12)。すなわち、そこでは、「情. . 12) ただし、「情報モラルに関する指導は、道徳科や特別活動のみで実施するものではなく、 各教科等との連携や、さらに生徒指導との連携も図りながら実施することが重要である」. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 255. 報モラルに関する指導を充実すること」が明示されており(第 3 章「特別の教科. 道徳」第 3 の 2(6))、同解説「道徳編」によれば、情報モラルに関する指導に. おいて、道徳科で取り上げるべき内容としては、特に、「情報社会の倫理、法. の理解と遵守といった内容を中心に取り扱うことが考えられる」とし、その具. 体例として、「規則の尊重に関わる指導の際に,インターネット上のルールや. 著作権など法やきまりに触れたりすることが考えられる」と示されている(解. 説「道徳編」第 4 章第 3 節 6(1)ア)13)。. ② 約束・きまり. 著作権は、著作権法に定められている権利であり、著作権法は、著作物等の「文. 化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文. 化の発展に寄与することを目的」として定められている法律である(著作権法 1. 条)。すなわち、著作権法は、著作権という権利の保護を図るとともに、著作物. 等の公正な利用との調整の「ルール」を定めるものである。したがって、学校. 教育において、「約束やきまり」等のルール(規則)の意義を理解し、それらを. 守る態度を育成する教育が行われるならば、必ずしも「著作権」という用語を. 明示的に取り上げないとしても、それは、「著作権教育」を基礎付けるものとして、. その意味において、著作権教育の重要な一部と位置付けることができる。. このような観点から学習指導要領を参照すると、こうした教育を中心的に. 担っているのが、道徳科である。道徳科は、学校の教育活動全体を通じて行う. . とされていることに留意する必要がある(解説「総則編」第 3 章第 3 節 1(3))。. 13) このほか、社会科においても、学習指導要領において、「情報モラル」という用語こそ 登場しないが、関連記述がある。すなわち、第 5 学年において、我が国の産業と情報の 関わりについて学習の問題を追究・解決する活動を通して,「放送,新聞などの産業は、 国民生活に大きな影響を及ぼしていること」を理解させるよう指導する際、「情報を有 効に活用することについて、情報の送り手と受け手の立場から多角的に考え、受け手と して正しく判断することや送り手として責任をもつことが大切であることに気付くよう にすること。」が求められている(第 2 章第 2 節「社会」第 2〔第 5 学年〕3(4)ア)。. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 256. 道徳教育の要として位置付けられ、その内容としては、「A 主として自分自身. に関すること」、「B 主として人との関わりに関すること」、「C 主として集団や. 社会との関わりに関すること」、及び、「D 主として生命や自然,崇高なものと. の関わりに関すること」の 4 つの項目が示されているが、中でも、「C 主とし. て集団や社会との関わりに関すること」では、「規則の尊重」として、児童の. 発達段階に応じ、以下を扱うこととしている(第 3 章「特別の教科 道徳」第 2 C)。. 〔第 �1学年及び第2学年〕約束やきまりを守り、みんなが使う物を大切にす. ること。. 〔第 �3学年及び第4学年〕約束や社会のきまりの意義を理解し、それらを守. ること。. 〔第 �5学年及び第6学年〕法やきまりの意義を理解した上で進んでそれらを. 守り、自他の権利を大切にし、義務を果たすこと。. また、「法やきまり」については、社会科においても取り上げられている。. 第 6 学年においては、日本国憲法は、国民としての権利及び義務など国家や国. 民生活の基本を定めていることや、現在の我が国の民主政治は日本国憲法の基. 本的な考え方に基づいていることを理解することなどが、指導内容に含まれて. いる(第 2 章第 2 節「社会」第 2〔第 6 学年〕2(1)ア)14)。. ③ 引用. 「引用」は、他人の著作物を、その著作権者の許諾を得ずに利用することが. できる利用(権利制限規定)の 1 つとして、著作権法に規定されている(著作. 権法 32 条 1 項)。普段の学校教育活動でも関わりの深い著作物等の利用方法で. あり、著作権教育の重要な一内容であることについて、疑いはないであろう。. 14) さらに、小学校の中学年においても、第 3 学年では地域の安全を守る働きに関し、また、. 第 4 学年では人々の健康や生活環境を支える事業に関し、社会生活を営む上で大切な法 やきまりについて扱うことが、同解説において求められている(解説「社会編」第 3 章 第 1 節 2(3)及び同第 2 節 2(2))。. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 257. 「引用」は、学習指導要領上、国語科において明示的に取り上げられており、. 第 3 学年以降、児童の発達段階に応じ、以下の内容を扱うことが明記されている。. 〔第 �3学年及び第4学年〕話や文章に含まれている情報の扱い方に関し、. 「比較や分類の仕方、必要な語句などの書き留め方、引用の仕方や出典. の示し方、辞書や事典の使い方を理解し使うこと。」ができるよう指導. すること。また、「読むこと」に関する指導について、例えば、「記録や. 報告などの文章を読み、文章の一部を引用して、分かったことや考えた. ことを説明したり、意見を述べたりする活動」を通して指導すること。(第 2 章第 1 節「国語」第 2〔第 3 学年及び第 4 学年〕2(〔知識及び技能〕(2)イ及び同〔思. 考力、判断力、表現力等〕C(2)ア)). 〔第 �5学年及び第6学年〕「書くこと」に関し、「引用したり、図表やグラフ. などを用いたりして、自分の考えが伝わるように書き表し方を工夫する. こと。」ができるよう指導すること(第 2 章第 1 節「国語」第 2〔第 5 学年及び. 第 6 学年〕2(〔思考力、判断力、表現力等〕B(1)エ))。. なお、同解説「国語編」では、出典の明記や、引用部分を適切な量にするこ. とは、「著作権を尊重し,保護するために必要なことであり,指導に当たって. は十分留意することが求められる」とされている(解説「国語編」第 2 章第 2 節 1(2). イ及び同第 3 節 2 Bエ)。. ④ 作者・作品の創造性の尊重. 著作権法は「著作物」、すなわち「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著. 作権法 2 条 1 項 1 号)を保護の対象としている。このように、創作が、その保. 護の重要な柱であり、また、著作権法は、そのような創作を行った者(著作物. を創作する者)、すなわち「著作者」の権利として、著作権(財産権)とともに、. 著作者人格権(著作権法 18 条乃至 20 条)を定めている。したがって、このよ. うな著作権法の特色を踏まえれば、学習者に対し、それぞれの作品には、それ. を創作した者(著作者)とその創作活動が存在することについて気付かせるこ. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 258. とや、自他の創造性を尊重する意識や態度を養うことは、著作権教育の重要な. 構成要素であるということができる。. この点、学習指導要領では、音楽科及び図画工作科について、取扱いに配慮. が必要な事項として、「第 3 指導計画の作成と内容の取扱い」において、以. 下が示されている。. 【音�楽】「表現したり鑑賞したりする多くの曲について、それらを創作した著. 作者がいることに気付き、学習した曲や自分たちのつくった曲を大切に. する態度を養うようにするとともに、それらの著作者の創造性を尊重す. る意識をもてるようにすること。(後略)」(第 2 章第 6 節「音楽」第 3 の 2(1)オ) 【図�画工作】「創造することの価値に気付き、自分たちの作品や美術作品な. どに表れている創造性を大切にする態度を養うようにすること。(後略)」 (第 2 章第 7 節「図画工作」第 3 の 2(11)). なお、こうしてみると、先に取り上げた「情報モラル」教育においても、「著. 作権など自他の権利を尊重し情報社会での行動に責任を持つ」という考え方や. 態度を身に付けさせるに当たっては、自他の「権利」の背後にある、創作活動. の存在にも意識を向けさせるとともに、「創造性」を尊重する意識を持てるよ. うにすることを合わせて行うことも、望ましいと考えられる。. ⑤ 文化の継承、発展、創造. 上記のような「(作者・作品の)創造性の尊重」の意識を持てるようにする. ための活動について、例えば、音楽については、「学習した曲の作詞者や作曲. 者、編曲者を確認したり、学習した曲や自分たちがつくった作品のよさなどに. ついて共有したり、そのよさを生かして、歌ったり楽器を演奏したり作品をつ. くったりするなどの活動」が考えられ、「このような活動を積み重ねていくこ. とが、中学校以降における知的財産の保護と活用についての学習につながると. ともに、自分たちが暮らす生活や社会において、音楽文化が大切に受け継がれ、. 発展、創造していくことについて理解する素地を育成することにつながる」15). 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 259. といえる。. このような観点から、学習指導要領においては、特に、音楽及び図画工作に. おいては、上記の「(作者・作品の)創造性の尊重」の各記述に続き、「文化の. 継承、発展、創造」について、以下のように示している。. 【音�楽】「…また、このことが、音楽文化の継承、発展、創造を支えているこ. とについて理解する素地となるよう配慮すること。」(2 章第 6 節「音楽」第 3 の 2(1)オ). 【図�画工作】「…また、こうした態度を養うことが、美術文化の継承、発展、. 創造を支えていることについて理解する素地となるよう配慮すること。」 (第 2 章第 7 節「図画工作」第 3 の 2(11)). 著作権法は、前述のとおり、究極的には「文化の発展に寄与することを目的」. として定められている法律であるから、「(作者・作品の)創造性の尊重」と「文. 化の継承、発展、創造」のつながりを意識することは、著作物等の保護と活用. の理解を深める上で、重要なことであると考えられる。小学校の学習指導要領. において、このような教育・学習は、特に、音楽や図画工作において意識的に. . 15) 小学校学習指導要領解説「音楽編」第 4 章 2(1)オ。なお、図画工作については、次の ように示されている(小学校学習指導要領解説「図画工作編」第 4 章 2(11)(創造性を 大切にする態度))。. 「図画工作科の学習は、表現及び鑑賞の活動を通して行われる。この活動を充実させ、 児童にとって意味や価値のある造形的な創造活動となるようにすることが求められる。 そのためには、様々な情報などを主体的に取り入れながらも、自ら考え工夫するような 創造活動の意味や価値が実感できるよう、一人一人の児童が、自分にとって新しいもの やことをつくりだそうとすることを大切にした指導を積み重ねることが重要である。そ して、一人一人の児童の創造性に着目しつつ、それ自体が文化や生活、社会そのものを つくりだす態度の育成につながるという視点を、指導のあらゆる場面で常にもっておく ことが必要である。そのことが、中学校美術科において美術文化の継承、発展、創造を 支えていることについて理解する素地となるとともに、未来を創造していこうとする態 度につながっていく。」. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 260. 行うことが求められているというということができるであろう。. なお、道徳科においては、「C 主として集団や社会との関わりに関すること」. において、「文化の尊重」や「他国の人々や文化に親しむこと」なども取り上. げることとされている(第 3 章「特別の教科 道徳」第 2 C[伝統と文化の尊重、国や. 郷土を愛する態度][国際理解、国際親善])。. (3)中学校学習指導要領(平成29年告示)における主な著作権関連記述. 中学校学習指導要領における主な著作権関連記述の状況は、図 2 のとおりで. ある。「〇」の付し方等は、小学校学習指導要領における場合(図 1)と同様. であるが、小学校学習指導要領との対比において、特に中学校学習指導要領に. おける主な追加箇所について、太枠を付した。以下では、追加点(相違点)を. 中心に、概説する。. ① 情報モラル. 小学校学習指導要領における扱いと同様に、中学校学習指導要領においても、. 総則において、「情報活用能力(情報モラルを含む。)」が、教科等を越えた全. ての「学習の基盤となる資質・能力」として位置付けられている(第 1 章「総則」. 第 2 の 2(1))。また、「情報モラル」は、小学校学習指導要領と同様に、道徳科. においても、「情報モラルに関する指導を充実すること」が特記されている(第. 3 章「特別の教科 道徳」第 3 の 2(6))。その扱いは、小学校学習指導要領におけ. る扱いとほぼ同様であり、「遵法精神,公徳心に関わる指導の際に,インター. ネット上のルールや著作権など法やきまりに触れたりすること」が、その具体. 例として挙げられている(解説「道徳編」第 4 章第 3 節 6(1)ア)。. さらに、「情報モラル」は、中学校学習指導要領においては、社会科及び技. 術・家庭科においても明示的に言及されている。まず、社会科においては、「情. 報の収集、処理や発表」などに当たっては、学校図書館やコンピュータ等の情. 報手段の積極的な活用により、生徒が主体的に調べ分かろうとして学習に取り. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 261. 組めるようにすることが求められており、その際、「情報モラルの指導にも留. 意すること」が求められている(第 2 章第 2 節「社会」第 3 の 2(2))。また、技術・. 家庭科については、技術分野において「情報の技術」を取り上げる際に、「生. 活や社会を支える情報の技術について調べる活動などを通して…情報モラルの. 必要性について理解すること」ができるよう指導することが求められている(第. 2 章第 8 節「技術・家庭」第 2〔技術分野〕2 D(1)ア)16)。. 【中学校学習指導要領(平成29年告示)】. 教科 . 項目. 国 語. 社 会. 数 学. 理 科. 音 楽. 美 術. 保 健 体 育. 技 術 家 庭. 外 . 国 . 語. 道 徳. ① 情報モラル ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ② 法、きまり ○ ○ ③ 引用 ○ ④ 作者・作品の創造性の尊重 ○ ○ ⑤ 文化の創造等 ○ ○ ○ ○ ⑥ 著作権、知的財産権 ○ ○ ○. (注 1)太枠は、小学校学習指導要領との比較で見た主な追加点。 (注 2)「情報モラル」(上記①)は、小学校学習指導要領と同様に、総則において明記さ. れているとともに(第 1 章「総則」第 2 の 2(1))、道徳科(第 3 章「特別の教科 道徳」 第 3 の 2(6))のほか、社会科(第 2 章第 2 節「社会」第 3 の 2(2))及び技術・家 庭科(第 2 章第第 8 節「技術・家庭」第 2〔技術分野〕2 D(1)ア)においても特記 されている。. (注 3)「著作権」(上記⑥)に関する技術・家庭科における記述は、技術分野におけるも のである(第 2 章第 8 節「技術・家庭」第 2〔技術分野〕3(4)ア及び 3(6)イ)。. 図2 �中学校学習指導要領(教科指導)における著作権に関する主な記述状況. . 16) この他、他教科における「情報モラル」の関連記述としては、例えば、国語においては、 第 3 学年において、話や文章に含まれている情報の扱い方に関し、「情報の信頼性の確. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 262. ② 法・きまり. 法やきまりに関しては、小学校学習指導要領と同様に、道徳科において記述. がみられる。道徳科においては、「C 主として集団や社会との関わりに関する. こと」において、「遵法精神、公徳心」について扱うこととし、その内容とし. ては、「法やきまりの意義を理解し、それらを進んで守るとともに、そのより. よい在り方について考え、自他の権利を大切にし、義務を果たして、規律ある. 安定した社会の実現に努めること。」と定められている(第 3 章「特別の教科 道徳」. 第 2 C)。この点は、上記①「情報モラル」において触れたように、「遵法精神、. 公徳心に関わる指導の際に、インターネット上のルールや著作権など法やきま. りに触れたりすること」が具体例として挙げられ、「著作権」が明示されてい. ることに留意する必要がある。. また、社会科の公民的分野は、「個人の尊厳と人権の尊重の意義、特に自由・. 権利と責任・義務との関係を広い視野から正しく認識し、民主主義、民主政治. の意義、国民の生活の向上と経済活動との関わり、現代の社会生活及び国際関. 係などについて、個人と社会との関わりを中心に理解を深める」こと等を目標. としている(第 2 章第 2 節「社会」第 2〔公民的分野〕1(1))。学習指導要領では、特に、. 「A 私たちと現代社会」において、「現代社会を捉える枠組み」について扱う. こととし、対立と合意、効率と公正などに着目し、課題を追究したり解決した. りする活動を通して、「社会生活における物事の決定の仕方、契約を通した個. . かめ方を理解し使うこと」ができるよう指導することが求められている(第 2 章第 1 節 「国語」第 2〔第 3 学年〕2(〔知識及び技能〕(2)イ))。また、数学においては、第 1 学 年において、データの活用に関し、「目的に応じてデータを収集して分析し、そのデー タの分布の傾向を読み取り、批判的に考察し判断する」力を身に付けることが求められ ている(第 2 章第 3 節「数学」第 2〔第 1 学年〕2D(1)イ)。なお、この点、小学校算 数においても、例えば、第 6 学年では、「目的に応じてデータを収集し、データの特徴 や傾向に着目して適切な手法を選択して分析を行い、それらを用いて問題解決したり、 解決の過程や結果を批判的に考察したりする力などを養う」ことが目標の 1 つとして掲 げられている(小学校学習指導要領第 2 章第 3 節「算数」第 2〔第 6 学年〕1(2))。. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 263. 人と社会との関係、きまりの役割について多面的・多角的に考察し、表現する」. 力を身に付けることが示されている(第 2 章第 2 節「社会」第 2〔公民的分野〕2 A(2)イ)。. ここにおいては、「著作権」を明示的に取り上げることが求められているも. のではないが、著作権は私人の権利であり、ここで示されている力は、著作権. 学習において、重要な基礎を成すものであるといえる。. ③ 引用. 「引用」について、中学校学習指導要領では、生徒の発達段階に応じて以下. のように扱うことが、国語科において定められている。. 〔第 �1学年〕話や文章に含まれている情報の扱い方に関し、「比較や分類、. 関係付けなどの情報の整理の仕方、引用の仕方や出典の示し方について. 理解を深め、それらを使うこと」。また、「書くこと」に関する指導につ. いて、例えば、「本や資料から文章や図表などを引用して説明したり記. 録したりするなど、事実やそれを基に考えたことを書く活動」を通して. 指導すること。(第 2 章第 1 節「国語」第 2〔第 1 学年〕2(〔知識及び技能〕(2) イ及び〔思考力、判断力、表現力等〕B(2)ア)). 〔第 �2学年〕「読むこと」に関して、例えば、「詩歌や小説などを読み、引用. して解説したり、考えたことなどを伝え合ったりする活動」や「本や新聞、. インターネットなどから集めた情報を活用し、出典を明らかにしながら、. 考えたことなどを説明したり提案したりする活動」を通して指導するこ. と。(第 2 章第 1 節「国語」第 2〔第 2 学年〕2(〔思考力、判断力、表現力等〕C(2)イ)). 〔第 �3学年〕「書くこと」に関して、例えば、「表現の仕方を考えたり資料を. 適切に引用したりするなど、自分の考えが分かりやすく伝わる文章にな. るように工夫する」力を身に付けられるように指導すること。(第 2 章第 1 節「国語」第 2〔第 3 学年〕2(〔思考力、判断力、表現力等〕B(1)ウ)). ところで、中学校段階では、全学年を通し,自分の考えが伝わる文章になる. ように工夫することが必要であり、特に、第 1 学年では,「根拠を明確に」す. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 264. ることが求められている(第 2 章第 1 節「国語」第 2〔第 1 学年〕B(1)ウ参照)。こ. のような、「根拠を明確に」する指導に関し、同解説では、「例えば,根拠とな. る複数の事例や専門的な立場からの知見を引用することなどが考えられる」と. して、「引用」の実践が例示されているところである(解説「国語編」第 3 章第 1. 節 2 Bウ)17)。. ④ 作者・作品の創造性の尊重. 作者・作品の創造性の尊重について、中学校学習指導要領においては、音楽. 科や美術科において、配慮が必要な事項として明記されている点は、小学校学. 習指導要領(音楽科及び図画工作科)における扱いと同様といえる。関連の記. 述は、具体的には、以下の通りとなっている。. 【音�楽】「自己や他者の著作物及びそれらの著作者の創造性を尊重する態度の. 形成を図るとともに、必要に応じて、音楽に関する知的財産権について. 触れるようにすること。また、こうした態度の形成が、音楽文化の継承、. 発展、創造を支えていることへの理解につながるよう配慮すること。」(第 2 章第 5 節「音楽」第 3 の 2(1)カ). 【美�術】「創造することの価値を捉え、自己や他者の作品などに表れている創. 造性を尊重する態度の形成を図るとともに、必要に応じて、美術に関す. る知的財産権や肖像権などについて触れるようにすること。また、こう. した態度の形成が、美術文化の継承、発展、創造を支えていることへの. 理解につながるよう配慮すること。」(第 2 章第 6 節「美術」第 3 の 2(7)). . 17) なお、中学校学習指導要領では、「外国語科」(英語)において、「引用符」が指導事項 とされている(第 2 章第 9 節「外国語」第 2(英語)2(〔知識及び技能〕(1)イ))。し かし、これは、引用ルールそのものというよりも、感嘆符,引用符などの「符号」(英 語の特徴やきまりに関する事項の 1 つ)についての知識及び技能を身に付けることに主 眼が置かれているものであることから、図 2 において、外国語科は、学習指導要領にお いて「引用」を取り上げているものとしては、勘案しなかった。. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 265. この点、小学校学習指導要領においては、著作者の存在や創造することの価. 値の「気付き」や、作品に表れている創造性を「大切にする態度を養う」こと. が要配慮事項とされているが、中学校学習指導要領においてはさらに進んで、. 作品等の創造性を「尊重する態度の形成を図る」ことに配慮することが求めら. れているところである。. また、さらに特徴的な点として、(必要に応じて、としつつも、)「知的財産. 権」を、「創造性の尊重」との関連において触れることが明示的に求められて. いることが挙げられる。音楽や美術に関する代表的な知的財産権は、「著作権」. であるから(著作権法 10 条 1 項参照)、このことを踏まえれば、学習指導要領. は、「著作権」と「創造性の尊重」と「文化の継承、発展、創造」を、関連付. けて捉えていることが確認できるであろう。. ⑤ 文化の継承、発展、創造. 上記④のとおり、中学校学習指導要領の音楽科及び美術科について、「文化. の継承、発展、創造」は、それを支えるものとしての「(作者・作品の)創造. 性の尊重」と合わせて、記述されている。また、小学校学習指導要領では、創. 造性を尊重する態度を養うことが、文化の継承,発展,創造を支えていること. について、「理解する素地となるよう配慮」することを求めていたが、中学校. 学習指導要領では、さらに踏み込み、実際に「理解につながるよう配慮」を求. めている点に違いがみられる。. また、「著作権」や「知的財産権」について明示的に記述されているもので. はないが、道徳科においては、「C 主として集団や社会との関わりに関するこ. と」において、「文化の尊重」などを取り上げることとしており、そこにおい. ては、「優れた伝統の継承と新しい文化の創造に貢献する」ことなどが、項目. として掲げられている(第 3 章「特別の教科 道徳」第 2 C)。. さらに、中学校学習指導要領においては、社会科の公民的分野においても、. 「A 私たちと現代社会」において、「私たちが生きる現代社会と文化の特色」. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 266. について扱う中で、「文化の継承と創造の意義について多面的・多角的に考察. し,表現する」力を身に付けることができるよう指導することが、求められて. いる(第 2 章第 2 節「社会」第 2〔公民的分野〕2 A(1)イ)18)。. ⑥ 著作権・知的財産権. 上記④のとおり、中学校学習指導要領では、音楽科及び美術科において、「(作. 者・作品の)創造性の尊重」及び「文化の継承、発展、創造」の文脈において、「知. 的財産権」が明示されている。また、同じ箇所において、「著作権」ではないが、. 「肖像権」について明示的に言及があることについても、特筆すべきであろう。. これらのほか、中学校学習指導要領では、技術・家庭科(技術分野)におい. て、「著作権」や「知的財産権」の文言が登場する。. 具体的には、「D 情報の技術」の項目において、「著作権を含めた知的財産権. …が重要であることについても扱うこと」が明示されている(第 8 節「技術・家庭」. 第 2〔技術分野〕3(4)ア)。これは、具体的には、特に、「(1)イ 技術に込めら. れた問題解決の工夫について考えること」の学習において、「情報のデジタル. 化に関連して、知的財産を権利として保護することで、その活用を推進し新た. な知的財産の創造へとつなげるという、著作権を含めた知的財産権の概要につ. いて、材料と加工、生物育成、エネルギー変換の技術とも関連させて指導する」. . 18) なお、「文化の継承」等について、学習指導要領においては、技術・家庭科(家庭分野) において、「生活文化を継承する大切さに気付く」こと等が取り上げられている(第 8 節「技術・家庭」第 2(家庭分野)3(3)ア)。このほか、社会科(地理的分野)におい ては、世界の諸地域の多様な「生活文化を尊重しようとすることの大切さの自覚などを 深めること」について取り上げられている(第 2 章第 2 節「社会」第 2(地理的分野)1. (3))。もっとも、衣食住に関わる「生活文化」について、「著作権」も全く無関係とは言 い切れないものの、関係性は相対的に低いと考えられるため、著作権教育の観点からは、 主な著作権関連記述としては勘案しなかった(この点は、高等学校学習指導要領に関し ても同様である)。. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 267. ことや、情報に関する技術の利用場面に応じて適正に活動するために必要とな. る事項の1つとして、著作権を含めた知的財産権の重要性についての理解を. 深めることを求めるものである(解説「技術・家庭編」第 2 章第 2 節 3D(1)イ)。. また、さらに、同じ「D 情報の技術」の項目に関し、「知的財産を創造、保. 護及び活用しようとする態度、技術に関わる倫理観、並びに他者と協働して. 粘り強く物事を前に進める態度を養うことを目指すこと」が示されている(第. 8 節「技術・家庭」第 2〔技術分野〕3(6)イ)。この点に関しては、特に、「(2)イ . 問題を見いだして課題を設定し、使用するメディアを複合する方法とその効果. 的な利用方法等を構想して情報処理の手順を具体化するとともに、制作の過程. や結果の評価、改善及び修正について考えること」の学習において、知的財産. を生み出し活用することの価値に気付かせ、その保護・活用が新たな知的財産. の創造につながることに気付かせることに加え、「例えば、映画や楽曲、プロ. グラム等の違法な複製が社会にどのような影響を与えるのかを調べさせること. で、制作者や販売企業の経済的な損害や、制作者の制作意欲の減退などの著作. 権侵害等による悪影響に気付かせたり、制作するコンテンツの中で他者の知的. 財産の適切な活用について考えさせたりすること」が例示されている(解説「技. 術・家庭編」第 2 章第 2 節 3 D(2)イ)。. このように、「著作権」及び「知的財産権」は、中学校においては、音楽科. 及び美術科とともに、特に技術・家庭科(技術分野)において取り上げること. が明示され、そこにおいては、知的財産を創造、保護及び活用しようとする態. 度の育成を図ることが目指されているところである。あわせて、その際には、. 知的財産が適切に保護されない場合の悪影響に気付かせることも、期待されて. いるところである。創造性を尊重する態度は、これらの不可欠の一部として、. 又は、理解の前提として、重要な役割を果たすものであり、したがって、いわ. ゆる知的創造サイクルに関する技術・家庭科(技術分野)におけるこれらの学. 習は、広く、「創造性の尊重」(④)の文脈の中で捉えることができるものであ. ると考えられる。. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 268. (4)高等学校学習指導要領(平成30年告示)における主な著作権関連記述. 高等学校学習指導要領における主な著作権関連記述の状況は、図 3 のとおり. である。「〇」の付し方等は、中学校学習指導要領における場合(図 2)と基. 本的に同様であり、中学校学習指導要領との対比において、高等学校学習指導. 要領における主な追加箇所について、太枠を付した。ただし、関連用語の記載. について、学習指導要領(文部科学省告示)本体にはなく、学習指導要領「解. 説」にのみ記載があるものについては、「△」を付した。. 以下では、中学校学習指導要領からの追加点(相違点)を中心に、概説する。. ① 情報モラル. 高等学校学習指導要領においても、小学校及び中学校の学習指導要領におけ. る扱いと同様に、教科等を越えた全ての「学習の基盤となる資質・能力」とし. て、「情報活用能力(情報モラルを含む。)」が位置付けられている(第 1 章「総則」. 第 2 款 2(1))。その上で、「情報モラル」に関しては、特に情報科において、「各. 科目の指導においては、情報の信頼性や信憑性を見極めたり確保したりする能. 力の育成を図るとともに、知的財産や個人情報の保護と活用をはじめ、科学的. な理解に基づく情報モラルの育成を図ること」が明示的に求められている(第. 2 章第 10 節「情報」第 3 款 2(1))とともに、共通必履修科目「情報Ⅰ」において、「情. 報社会の問題解決」について取り上げる中で、次の事項を身に付けることが求. められている(第 2 章第 10 節「情報」第 2 款第 1(情報Ⅰ)2(1)ア及びイ)。. 「(イ)情報に関する法規や制度、情報セキュリティの重要性、情報社会にお. ける個人の責任及び情報モラルについて理解すること」(ア:知識及び技術). 及び「(イ)情報に関する法規や制度及びマナーの意義、情報社会において個. 人の果たす役割や責任、情報モラルなどについて、それらの背景を科学的に. 捉え、考察すること」(イ:思考力、判断力、表現力等). このほか、地理歴史科及び公民科においては、中学校社会科における場合と. 同様に、生徒の「情報の収集、処理や発表」などに当たっては、学校図書館や. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 269. 【高等学校学習指導要領(平成30年告示)】. 教科 . 項目. 国 語. 地 理 歴 史. 公 民. 数 学. 理 科. 保 健 体 育. 芸 術. 外 国 語. 家 庭. 情 報. 理 数. 専 門 学 科 教 科. ① 情報モラル ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ② 法、規範 ○ ○ ③ 引用 ○ △ △ ④ 作者・作品の創造性の尊重 ○ ○ ⑤ 文化の創造等 〇 ○ ○ ○ ⑥ 著作権、知的財産権 ○ ○ ○. (注 1)太枠は、中学校学習指導要領との比較で見た主な追加点。なお、「△」は、高等学 校学習指導要領における明記はないが、同「解説」には記述があるものを指す。. (注 2)「情報モラル」(上記①)の位置づけは、小学校及び中学校学習指導要領と同様に、 総則において明記されている(第 1 章「総則」第 2 款 2(1))。また、地理歴史科(第 2 章第 2 節「地理歴史」第 3 款の 2(4))、公民科(第 2 章第 3 節「公民」第 2 款第 1(公 共)3(3)カ 及び第 3 款の 2(4))及び情報科(第 2 章第 10 節「情報」第 3 款 2(1)) 並びに複数の専門学科教科(農業・工業・商業・水産・家庭・看護・情報・福祉)(第 3 章第 1 節乃至第 8 節)においても特記あり。. (注 3)「法、規範」(上記②)に関して、情報科では、特に、「情報に関する法規や制度」 について取り上げている(第 2 章第 10 節「情報」第 2 款第 1(情報Ⅰ)2(1)及び 同第 2(情報Ⅱ)3(1))。. (注 4)専門学科教科(主として専門学科において開設される教科)について、上記④(作 者・作品の創造性の尊重)及び⑤(文化の創造等)は、音楽科及び美術科についての 記述であるが、⑥(著作権、知的財産権)については、これらの教科の他、複数の専 門学科教科(工業、商業、水産、家庭、看護、情報、音楽、美術)において記述がある。 さらに、美術科(美術概論)は、解説(美術編)において、「著作者人格権」の記述 もある(解説「芸術編・音楽編・美術編」第 3 部「美術編」第 2 章第 1 節(美術概論)2)。. 図3 �高等学校学習指導要領(教科指導)における著作権に関する主な記述状況. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 270. コンピュータ等の情報手段の積極的な活用により、生徒が主体的に学習に取り. 組めるようにすることが求められており、その際、「情報モラルの指導にも留. 意すること」が求められている(第 2 章第 2 節「地理歴史」第 3 款 2(4)及び同第 3 節「公. 民」第 3 款 2(4))。また、公民科(科目「公共」)においては、「B 自立した主. 体としてよりよい社会の形成に参画する私たち」の学習に関し、「情報に関す. る責任や、利便性及び安全性を多面的・多角的に考察していくことを通して、. 情報モラルを含む情報の妥当性や信頼性を踏まえた公正な判断力を身に付ける. ことができるよう指導すること」が求められている(第 2 章第 3 節「公民」第 2 款. 第 1(公共)3(3)カ)。. なお、「情報モラル」は、複数の専門学科教科(農業・工業・商業・水産・家庭・. 看護・情報・福祉)においても、配慮が必要な事項として明記されている 19)。. ② 法・規範. 高等学校における道徳教育は、豊かな心や創造性の涵養を目指し、中学校ま. での「特別の教科 道徳」の学習等を通じて深める道徳的諸価値についての理. 解を基にしながら、様々な体験や思索の機会等を通して、人間としての在り方. 生き方についての考えを深めるよう留意することが、求められている。学校の. 教育活動全体を通じて行うことによりその充実を図る必要があるが、その際に. は、特に、公民科の科目である「公共」及び「倫理」並びに特別活動が、人間. としての在り方生き方に関する中核的な指導の場面であることに配慮すること. が求められている(第 1 章「総則」第 1 款 2(2)及び第 7 款 2)。中でも、公民科「公共」. . 19) 高等学校学習指導要領第 3 章第 1 節「農業」第 2 款第 4(農業 と 情報)2(1)ウ、同第 2 節「工業」第 2 款第 5(工業情報数理)2(1)イ及び 3(2)ア、同第 3 節「商業」第 2 款第 16(情報処理)2(1)ウ及び 3(2)ア、同第 4 節「水産」第 2 款第 4(海洋情報技術) 2(1)イ、同第 5 節「家庭」第 2 款第 3(生活産業情報)2(2)ア 及 び 3(2)イ、同第 6 節「看護」第 2 款第 13(看護情報)3(1)ア、同第 7 節「情報」第 3 款 2(2)及び同 第 8 節「福祉」第 2 款第 9(福祉情報)3(2)イ. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 271. においては、「B 自立した主体としてよりよい社会の形成に参画する私たち」. として、「法や規範の意義及び役割、多様な契約及び消費者の権利と責任、司. 法参加の意義などに関わる現実社会の事柄や課題を基に、憲法の下、適正な手. 続きに則り、法や規範に基づいて各人の意見や利害を公平・公正に調整し、個. 人や社会の紛争を調停、解決することなどを通して、権利や自由が保障、実現. され、社会の秩序が形成、維持されていくことについて理解すること」が指導. 内容として求められている(第 3 節「公民」第 2 款第 1(公共)2B ア(81 頁))20)。また、. 公民科「政治・経済」においては、「A 現代日本における政治・経済の諸課題」. として「(1)現代日本の政治・経済」について扱う中で、「(ア)政治と法の意. 義と機能、基本的人権の保障と法の支配、権利と義務との関係、議会制民主主義、. 地方自治について、現実社会の諸事象を通して理解を深めること。」が求めら. れている(第 2 章第 3 節「公民」第 2 款第 3(政治・経済)2A ア)。. さらに、高等学校では、情報科において、「情報に関する法規や制度」等が. 明示的に取り上げられている点が、特徴的である。すなわち、上記①で紹介し. たとおり、情報科「情報Ⅰ」においては、「(1)情報社会の問題解決」を扱う. 中で、「情報モラル」とともに、「情報に関する法規や制度」等についての理解. や、それらの背景を科学的に捉え、考察することが求められている(第 2 章第. 10 節「情報」第 2 款第 1(情報Ⅰ)2(1)ア及びイ)。また、情報科「情報Ⅱ」におい. ても、「(1)情報社会の進展と情報技術」を扱う中で、「情報に関する法規や制. 度についても触れるものとする」とされている(第 2 章第 10 節「情報」第 2 款第 2. (情報Ⅱ)3(1))。ここで、「情報に関する法規や制度」等としては、個人情報の. . 20) さらに、ここにおける「『法や規範の意義及び役割』については,法や道徳などの社会 規範がそれぞれの役割を有していることや、法の役割の限界についても扱うこと。『多 様な契約及び消費者の権利と責任』については、私法に関する基本的な考え方について も扱うこと。」が求められている(第 3 節「公民」第 2 款第 1(公共)3(3)カ)。著作 権は私人の権利であり、これらの内容についての理解は、著作権に関する学習における 通底を成す、重要なポイントであるといえる。. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 272. 保護に関する法律等のほか、知的財産に関する法律が含まれ(解説「情報編」第. 1 章第 3 節 3(1)参照)、また、各科目の指導に当たっては、「科学的な理解に基. づく情報モラルの育成」に向けて、「知的財産や個人情報に関する扱いについ. ては、関係する法律や規則ができた経緯や目的の理解を図るようにし、保護と. 同時に活用にも配慮されていることを理解するようにする」と示されているこ. とも、確認しておく必要がある(解説「情報編」第 1 部第 3 章 2(1))。. ③ 引用. 「引用」は、高等学校学習指導要領においても、国語科で明示的に取り上げ. られている。特に、国語科「現代の国語」においては、話や文章に含まれてい. る「情報の扱い方」に関する「知識及び技能」として、「引用の仕方や出典の. 示し方、それらの必要性について理解を深め使うこと」ができるように指導す. ることが求められている。さらに、「思考力、判断力、表現力等」として、「書. くこと」について、「論理的な文章や実用的な文章を読み、本文や資料を引用. しながら、自分の意見や考えを論述する活動」を取り入れて指導することや、. 「読むこと」について、「論理的な文章や実用的な文章を読み、その内容や形式. について、引用や要約などをしながら論述したり批評したりする活動」を取り. 入れて指導することが例示されている(第 2 章第 1 節「国語」第 2 款第 1(現代の国語). 2(〔知識及び技能〕(2)オ並びに〔思考力、判断力、表現力等〕B(2)ア及び同 C(2)ア))。. 高等学校では、このように、特に「現代の国語」において、引用ルールにつ. いての理解と実践だけでなく、「引用の必要性について理解を深め」ることが. 重視されている点が特徴的であるといえる。この点、同解説において、次のよ. うに記述されている。. 「『現代の国語』では、引用の仕方、出典の示し方を理解するだけでなく、引. 用することによって自らの主張を補強し説得力を高めることができること. など、引用の必要性についても理解を深めることが求められる。また、引用. の仕方や出典の示し方を誤ると、自らの主張の妥当性や信頼性を失う危険が. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 273. あることについて理解を深めておくことも必要となる。」(解説「国語編」第 2 章第 1 節「現代の国語」3(2)オ). 新しい高等学校学習指導要領においては、話や文章に含まれる「情報の扱い. 方」に関する知識及び技能が、国語科において育成すべき重要な資質・能力の. 一つと位置付けられ、その指導の改善・充実を図ることとされている点に特色. があり(解説「国語編」第 1 章第 2 節 1(3)②参照)、「情報の扱い方」に関する資質・. 能力は、「引用」を重要なツールとしながら育成することが狙いとされている. ということができるであろう。. また、同解説においては、「話すこと・聞くこと」に関し、「図表やグラフな. どについても、既成のものを引用するだけでなく、必要に応じて、元の資料と. 照らしてその信頼性を確認したり、情報を整理、分析し、新たに作成したもの. を用いたりすることなどが考えられる。」との記述もみられるところである(解. 説「国語編」第 2 章第 1 節「現代の国語」3〔思考力、判断力、表現力等〕A ウ)。. さらに、高等学校においては、国語科以外にも、外国語科及び理数科におい. て、「引用」に関して具体的に言及がある点も、特徴的である。これは、学習. 指導要領本体に記述があるものでないが、同解説において記述されているもの. である。. 具体的には、外国語科の科目「論理・表現Ⅱ」及び「論理・表現Ⅲ」で特記. されており、「意見や主張、課題の解決策などを適切な理由や根拠とともに詳. しく伝え合うために、重要性が高い根拠をデータ等を引用しながら示す」こと. や、「より説得力のある文章にするために、主張を支える根拠として情報を効. 果的に引用することが大切である。情報の引用に関しては、原文から直接引用. したり、パラフレーズのように原文の言い換えをしたりするなど、自分の文章. の文脈や内容に応じて行う。情報の引用や言い換えに関しては、直接引用する. 場合は出典を明示すること、言い換えを行う場合には、原文の趣旨から逸脱し. ないように気を付けることなどを指導することが必要である」ことが、示され. ている 21)22)。. 横浜法学第 29 巻第 3 号(2021 年 3 月). 274. また、新しい高等学校学習指導要領においては、理数教育の充実が改善事項. の 1 つであり、新教科「理数科」のもとに、探究的科目「理数探究基礎」及び. 「理数探究」が新設されている。これらの科目においては、コンピュータや情. 報通信ネットワークの積極的な活用が求められ、その際には、「情報通信ネッ. トワークを介して得られた情報は適切なものばかりでないことに留意し、情報. の収集・検索を行う場合には,情報源や情報の信頼度について検討を加え、引. 用の際には引用部分を明確にするよう指導することが大切である」ことが、同. 解説において示されている(解説「理数編」第 3 章 2(5))。. ④ 作者・作品の創造性の尊重. 作者・作品の創造性の尊重については、高等学校学習指導要領においても、. 芸術科の科目「音楽 I」「美術 I」「工芸 I」「書道 I」において、中学校学習指導. 要領と同一又は類似の記述がある。すなわち、これらの指導においては、作者・. 作品の「創造性を尊重する態度の形成」が「文化の発展、継承、創造を支えて. いることへの理解につながるよう配慮」することが求められており、また、こ. こにおいては、必要に応じて「知的財産権について触れるようにする」ことが. 求められている。なお、ここにいう「文化」については、科目の特性に応じ、. . 21) 高等学校学習指導要領解説「外国語編」第 1 部第 2 章第 6 節「論理・表現Ⅱ」(「書くこと」) 2(3)①イ及び同第 7 節「論理・表現Ⅲ」(「書くこと」)2(3)①エ. 22) このほか、専門教科「英語」についても、科目「ディベート・ディスカッションⅠ」、「ディ ベート・ディスカッションⅡ」、「エッセイライティングⅠ」及び「エッセイライティン グⅡ」において、学習指導要領解説に記述があり、「直接引用したり引用符を用いて引 用したりする際に,引用する部分が多すぎないか、要約して引用する際には原典と相違 がないかなどについても注意させる」ことなどが示されている(高等学校学習指導要領 解説「外国語編」第 2 部第 2 章第 5 節「ディベート・ディス カッション Ⅰ」1(1)(「話 すこと [ やりとり ]」)並びに同第 6 節「ディベート・ディスカッションⅡ」1(1)(「話 すこと [ やりとり ]」)並びに同第 7 節「エッセイライティングⅠ」1(1)(「書くこと」) 並びに同第 8 節「エッセイライティングⅡ」1(1)(「書くこと」)及び同(3)①イ(「書 くこと」)等)。. 初等中等教育におけるミニマム・スタンダードとしての著作権教育. 275. それぞれ、「音楽文化」、「美術文化」、「工芸の伝統と文化」及び「書の伝統と. 文化」が示されている(第 2 章第 7 節「芸術」第 2 款第 1(音楽Ⅰ)3(11�

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