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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 大 柏 秀 樹

学 位 論 文 題 名

Experimental replacement of the thoracic inferior vena cava with a high‑porosity     expanded polytetrafluoroethylene graft wrapped in an omental pedicle flap:

       results of a preliminary experiment

(有茎大網被 覆high‑porosity ePTFE人工血管の胸部下大静脈置換に関する実験的検討:初期結果)

学位論文内容の要旨

【目的】

  近年,胸部外科領域にIおいて,肺癌・縦隔腫瘍による静脈閉塞例に対して,静脈血行再建術を施 行する機 会も増加しているが,未だ満足し得る開存成績Iま得られていない,本研究では大静脈再建 術の成績 向上を 目的とし て,胸 部下大静 脈置換モ デルに おぃて,良好な器質化特性を有するhigh‑

porosiLy expanded polyrecraf工uoroethylene(ePTFE)人工血管に倉U傷治癒促進作用を有する有茎大網 を被覆し,その開存成績および修復治癒について検討した,

【 材 料 と 方 法 】

  動 物は7‑20Kgの 雑種成犬12頭を使 用した, すべて の手術は 北海道 大学医学 部「動 物実験に関す る 指針Jに従っ て行った .全身 麻酔下に 実験犬の 胸部下 大静脈を ,テフロンにより螺旋状に外側を 補 強 し た長 さ40mm, 内径10mm, 繊維長60Umのhigh‑porosity ePTFE人工血 管によっ て置換 した‐

血 管吻合は すべて6‑0モノ フィラ メント・ ポリブ ロビレン 糸を用いて連続縫合にて行った,その後 弓fき続 き移植人工血管を有茎大網により全周性に被覆,固定した群(大網被覆群)および大網被覆 を 行わなぃ 群(非 被覆群) の2群を作成 した,両 群とも 各6頭 モデルを作成した.評価方法は移植4 週 後 に 犬を 犠 牲 死さ せ て 人工 血 管 を 摘出 し , 開存の 有無,組 織治癒 を評価し た.肉 眼的観察 , Hemacoxylin・eosin(HE) 染色.Azan染 色・抗a‑accin抗 体染色による組織学的検討,走査電子顕 微 鏡による 観察を 行い,定 量的評 価として人工血管内腔面の光沢のある平滑な仮性内膜が形成され た領域,すなわちthromb us ‑free  areaを測定し検討した,測定値は人工血管内腔面の総面積に対す るthromb usーfree areaの面積の比で表し,各群のmean土、SDを求めた.有意差検定にはWilcox on cescを用い,Pく0.05を有意差ありとした・

  開存 成績, 大網被覆 群の開 存率は100%であ った. 非被覆群の開存率も100%であったが,1例で 変形 短縮を 認めた・

  肉眼 的観察 所見,大 網被覆 群の人工血管内腔面は,ほほ全域におぃて光沢のある平滑な仮性内膜 の形 成が認 められた が,非彼 覆群の人工血管内腔面は中央部に広く赤色血栓線維素膜の形成が認め

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られた,thrombus‑free areaは大網被覆君羊が89.8土13.896,非被覆群が66.0土17.196であり,両群問 に有意差を認めた(p  0.046).

  組織 学的 所見 ,HE染色 標本 にお いて は, 大網被覆群は均一な仮性内膜が人工血管の 全長にわた り形成され,人工血管 壁内に線維芽細胞やマクロファーシの多数の細胞侵入お よび毛細血管新生を 認め,毛細血管は仮性 内腰内にまで伸長していた.非被覆群は人工血管壁内に 細胞侵入および毛細 血管新生を認めたが, 侵入細胞数は少数であった.Azan染色標本においては, 吠網被覆群は吻合側 および中央部の人工血 管側の仮性内膜で線維化が認められたが,非被覆群の仮 性内膜では線維化は ほとんど認められなか った,抗ゼ‑acrln抗体を用いた免疫組織化学においては ,大網被覆群は仮性 内膜.内腔側で平滑筋 細胞の進展が認められたが,非被覆群では平滑筋細胞はほとんど認められなか った,

  走査電子顕微鏡所見 ,大網被覆群では肉眼的に光沢のある平滑な仮性内膜が みられた部位に一致 して,血流方向に配列する楕円形の内皮細胞様細胞を認めた.

【考察】

  従 来 , 臨 床 に お い て 静 脈 血 行 再建 に主 に用 いら れる 代用 血管 は, 繊維 長 が30Vmの りン グ付 ePTFE人工 血管 が 主体 であ った .し かし ,こ の30UmのePTFE人工 血管 は抗血栓性は高いものの,

壁交通性が不十分であ り,器質化が不良で晩期閉塞も懸念され,事実,臨床例での上大静脈再建後 の開存率は約70%と報 告されている.

  そこで,本研究では 壁交通性の面から新たに人工血管の繊維長を見直し,良好な器質化特性を持 つ 繊 維長60ロmのhigh‑porosltyePTFE人工 血管 を使 用し ,そ の有 用性 につ い て検 討を 行っ た,

high.porosicyePTFE人工血管は経壁性に毛細血管 侵入がみられ,内皮化と内膜の安定性が良好で あることが動脈系にお ぃて報告されており,静脈系におぃても同様の効果を期待した,そして,さ らに仮性内膜の完成を 早める工夫として,細胞放出作用,血管新生作用,吸収作用,免疫作用など の 多彩 な機 能を 持ち ,良 好な 倉lj傷治 癒促 進 作用 をも つ有 茎大 網を 人工血管周囲に被覆した.

  本実験では大網被覆 群は,移植後4週にて全例開 存しており,内皮化の促進が認められ,吻合部 から違位の人工血管中央部におしゝても良好な線維化の促進が認められた,修復治癒機転としては,

人工血管壁内への経壁 性の線維芽細胞・マクロファージの侵入細胞数の増加と毛細血管新生が関与 しているものと推察さ れた.high‐porosityePTFE人工血管に有茎大網を被覆することにより,人 工血管そのものの良好 な壁交通性と,大網生理機能の相互作用によって,人工血管壁内侵入細胞数 が 増加 し, 線維 化,器質化,内皮化とぃう人 工血管の修復治癒が促進されたものと考えられた.

【結語】

  繊 維長60ロmのhigh‑porosity ePTFE人工血管は有茎大網を被覆すること により,良好な開存成 績および内皮化の促進を示し,胸部大 静脈再建用の人工血管としてきわめて有用である可能性が示 唆された.

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Experimental replacement of the thoracic inferior vena cava with a high‑porosity      expanded polytetrafiuoroethylene graft wrapped in an omental pedicle flap:

       results of a preliminary experiment

(有茎大網被覆high‑porosltyePTFE人工血管の胸部下大静脈置換に関する実験的検討:初期結果)

  近 年 , 胸 部 外 科 領 域 , 特 に 肺 癌 ・ 縦 隔 腫 瘍 に よ る静 脈 閉 塞例 に 対 して , 静 脈血 行 再 建 術 を 施 行 す る 機 会 が 増 加 し て い る が , 未 だ 満 足 し 得 る 開存 成 績 は得 ら れ てい な ぃ 。本 研 究 で は 胸 部 下 大 静 脈 置 換 モ デ ル を 用 い て ,high−porosity ePTFE人 工 血 管 に創 傷 治 癒促 進 作 用 を 有 す る 有 茎 大 網 を 被 覆 し , そ の 開 存 成 績 お よ び 修 復 治 癒 に つ い て 検 討 し た 。   動 物 は7―20Kgの雑 種 成 犬 を使 用 し た。 全 身 麻酔 下 に 実験 犬 の 胸部 下 大 静脈 人 工 血 管に よ っ て 置 換 し た 。 人 工 血 管 は テ フ ロ ン に よ り 螺 旋 状 に 外側 を 補 強し た 長 さ40mm, 内 径10mm, 繊 維 長60 Umのhigh←porosity ePTFEを用 い た 。血 管 吻 合は す ぺ て6―0モ ノフ ィ ラ メン ト ・ ポ リ プ ロ ピ レ ン 糸 を 用 い て 連 続 縫 合 に て 行 っ た 。 そ の後 引 き 続き 移 植 人工 血 管 を有 茎 大 網 に より 全 周 性に 被 覆 ,固 定 した群 (大綱 被覆群) および 大網被覆 を行わな い群( 非被覆群 )の 2群 を 作 成 し た 。 両 群 と も 各6頭 の モ デ ル を 作 成 し た 。 評 価 方 法 は 移 植4週 後 に犬 を 犠 牲 死 さ せ て 人 工 血 管 を 摘 出 し ,開 存 の 有 無, 組 織 治癒 を 評 価し た 。 肉眼 的 観 察,Hematoxylin− eosln(HE) 染色 .Azan染 色・ 抗 ば ーactin抗 体 染 色に よ る 組織 学 的 検討 , 走 査電 子顕 微鏡に よ る 観 察 を 行 い , 定 量 的 評 価 と し て 人 工 血 管 内 腔 面 の光 沢 の ある 平 滑 な仮 性 内 膜が 形 成 さ れ た 領 域 , す な わ ちthrombus―free areaを 測定 し 検 討し た 。 測定 値 は 人 工血 管 内 腔面 の 総 面 積 に 対 す るthrombusーfree areaの 面 積 の 比 で 表 し , 各 群 のmean土SDを 求め た 。 有意 差 検 定に はWilcoxon testを用 い ,pくO.05を 有 意 差あ り と した 。

  開 存 成 績 は 大 網 被 覆 群 は 全 例 開 存 し て お り 開 存 率は100%で あ った 。 非 被覆 群 の 開 存率 も 100%で あ っ た が ,1例 で 変 形 短 縮 を 認 め た 。 肉 眼 的 観 察 所 見 で は 大 網 被 覆 群の 人 工 血 管内 腔 面 は , ほ ぼ 全 域 に お い て 光 沢 の あ る 平 滑 な 仮 性 内 膜の 形 成 が認 め ら れた が , 非被 覆 群 の 人 工 血 管 内 腔 面 は 中 央 部 に広 く 血 栓 線維 素 膜 の形 成 が 認め ら れ た。thrombusーfree areaは 大 網 被 覆 群 が89.8士13.8Xと有 意 に 広く 内 皮 化の 促 進 が示 さ れ た。 組 織 学的 所 見 で はHE染 色 標 本 に お い て は , 大 網 被 覆 群 は 均 一 な 仮 性 内 膜 が 形成 さ れ ,人 工 血 管壁 内 に 線維 芽 細 胞 や マ ク ロ フ ア ー ジ の 多 数 の 細 胞 侵 入 お よ び 毛 細 血 管 新生 を 認 め, 毛 細 血管 は 仮 性内 膜 内 に ま で 伸 長 し て い た . 非 被 覆 群 は 人 工 血 管 壁 内 に 細 胞 侵入 お よ び毛 細 血 管新 生 を 認め た が , 侵 入 細 胞 数 は 少 数 で あ っ た 。Azan染 色 標 本 に お いて は , 大網 被 覆 群は 中 央 部の 人 工 血 管側 の 仮 性 内 膜 で 線 維 化 が 認 め ら れ た が , 非 被 覆 群 の 仮 性内 膜 で は線 維 化 はほ と ん ど認 め ら れ な か っ た 。 抗a−actin抗 体 染 色 標 本 に お ぃ て は, 大 綱 被覆 群 は 仮性 内 膜 内腔 側 で 平 滑筋 細

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秀 之

慶 紘

田 藤

安 加

授 授

教 教

査 査

主 副

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胞の 進展が認 められたが ,非被覆 群では平滑筋細胞はほとんど認められなかった。走査電 子顕 徽鏡所見 では大網被 覆群では 肉眼的に光沢のある平滑な仮性内膜がみられた部位に一 致 し て , 血 流 方 向 に 配 列 す る 楕 円 形 の 内 皮 細 胞 様 細 胞 が 確 認 さ れ た 。

  

以上 の結果より,繊維長60 Umのhighーporosity ePTFE人工血管は有茎大綱を被覆するこ とに より,良 好な開存成 績および 内皮化の促進を示し,胸部大静脈再建用の人工血管とし てきわめて有用である可能性が示唆された。

  

口頭 発表にお いて金田清 志教授よ り人工血管移植後の修復治癒過程,細胞侵入の時期,

移植 後早期に おける有茎 大網の効 果,腹腔内と胸腔内における有茎大綱の効果の違い,長 期結 果,人工 血管口径に ついて, 安田慶秀教授より人工血管の素材,繊維長と抗血栓性と の関係,細胞の成熟度,人工血管の長さ,.内皮化の機序,臨床応用について,加藤紘之教 授よ り長期に おける有茎 大綱の状 態について,村下十志文講師より抗凝固療法の有無につ いての質問があったが,申請者はおおむね妥当な回答,をした。

  

胸部 大静脈再 建用人工血 管として 有茎大綱被覆high―porosity ePTFE人工血管の有用性 を明らかにし・た・本研究の意義は大きく,審査員協議の結果,本論文は博士(医学)の学位 授与に値するものと判定する。

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参照

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