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博 士 ( 医 学 ) 村 田 純 一

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 村 田 純 一

学 位 論 文 題 名

  Involvement of a transforming‑growth‑factor‑

B ‑like molecule in tumor‑cell‑derived inhibition of nitric‑oxide synthesis in cerebral endothelial cells

  ( 腫 瘍 細 胞 に よ る 脳 血 管 内 皮 細 胞 のnitric oxide合 成 の 抑 制 に     お け る transformInggroWthfaCtor p様 分 子 の 関 与 )

`    学 位 論 文 内 容 の 要 旨

[ 緒 言 ] 癌 の 転 移 に お い て 、 腫 瘍 細 胞 と 宿 主 細 胞 は 相 互 に そ の 機 能 に 影 響 を 及 ば し あ う と 考 え ら れ る 。 近 年 、Nitric Oxide(NO)は 、 腫 瘍 細胞 や 細 菌な ど に 対し て 宿 主 免疫 細 胞 が産 生 す る 主 要 な 防 御 因 子 の ー っ と 考 え ら れ て い る 。NO合 成 酵 素(NOS)3種 類 の ア イ ソ ザ イ ム か ら な る が 、 細 胞 毒 性 を お こ す 程 多 量 のNOは 、 誘 導 型NOSに よ り 合 成 さ れ る 。 活 性 化 マ ク ロ フ ァ ー ジ が こ の 誘 導 型NOSを 発 現 す る の は 知 ら れ て い る が 、 最 近 、 内 皮 細 胞 もNO 生 に よ り 腫 瘍 細 胞 を 殺 す こ と が 報 告 さ れ て い る 。 内 皮 細 胞 は 、 転 移 の 際 に 腫 瘍 細 胞 が 第 一 に 接 着 す る 場 で あ る こ と か ら 、 内 皮 細 胞 か ら のNO産 生 の 調 節 は 、 転 移 の 初 期 に お い て 重 要 で あ ると 考 え られ る 。

  学 位 申 請 者 は 以 前 に 、 ラ ッ ト 脳 血 管 内 皮 細 胞 株EC219は サ イ ト カ イ ン の 刺 激 に よ り 誘 導 NOSを 介 し て 多 量 のNOを 産 生 す る が 、 こ れ が ラ ッ ト 大 腸 癌 細 胞 株DHDfPRObが 分 泌 す る 何 ら かの 液 性 因子 に よ り有 意 に 抑制 さ れ るこ と を 報告 し た ( 参考 論 文 の一 ) 。 本研究 では、

こ のNO合 成 を 抑制 す る 因子 を 同 定す る こ とを 目 的 とし た 。

[ 方 法 ] ラ ッ ト 脳 微 小 血 管 内 皮 細 胞 を 不 死 化 さ せ た 細 胞 株EC219を 用 い た 。 ラ ッ ト 大 腸 癌 細 胞 株DHD/K12の サ ブ ・ ク ロ ー ン で あ るDHD/PRObは 、 ラ ッ ト に 静 注 さ れ る と 浸 潤 性 の 転 移 巣 を 形 成 す る 。 一 方 、 同 株 の 他 の サ ブ ・ ク ロ ー ンDHD/REGbは 、 転 移 を 形 成 す る が 自 然 退 縮 す る 細 胞 で あ る 。

  DHD細 胞 壇 養 よ 漬 堕 調 整DHD細 胞(PRObお よ びREGb)は 、 血 清 非 含 有 培 地 に て3日 間 培 養 さ れ た 後 、 上 清 を 採 取 し た 。 実 験 に よ っ て は 、 培 養 上 清 はlOkDaカ ッ ト ・ オ フ ・ フ イ ル タ ー に よ り 約5倍 に 濃 縮 し て 使 用 し た 。

  NitriteQ測 定 お よ びNOS活 性 の 測 定NO産 生 量 は 、 そ の 代 謝 産 物 で あ るmtnteを グ リ ー ス 反 応 に て 測 定 し 、 評 価 し た 。 細 胞 抽 出 液 中 のNOS活 性 は 、3H標 識L‐ ア ル ギ ニ ン(NOS 基 質 ) か ら 変 換 さ れ た3H標識L‐ シト ル リ ン(NOの副 産 物 ) の放 射 活 性を 測 定 し、 評 価 した 。   ノ ー ザ ン ・ ブ ロ ツ 齟 慰 斤 RNAを 抽 出 し 、 標 識 し た4.lKbの 誘 導 型NOScDNAお よ び 1.5KbGAPDHcDNAと ハ イ ブ リ ダ イ ズ さ せ た 。

  親 和 性 ク ロ マ ト グ ラ フ イ 培 養 上 清 を 、 コ ン カ ナ ヴ ァ リ ンA(ConA). セ フ ァ ロ ー ス お よ び へ パ リ ン ・ セ フ ァ ロ ー ス の カ ラ ム に て 分 画 し 、ConA結 合 物 質 は0.5Ma‑D‑メ チ ル グ ル シ

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ド に て 、 ヘ パ リ ン 結 合 物質 は1M NaCIl,こて 溶出し た。 各分 画を サイ トカ イン 刺激 下に EC219細胞に加えて、NO産生に対する影響を見た。

  拭佳史和濃縮した培養上清を、50ロg/ml抗transforming‑growth‑factor‑ロ(TGF‐日)抗体で 前 処 理 し 、 こ れ をEC219細 胞 に 加 え て サ イ ト カ イ ン 刺 激 し 、 NO産 生 を 見 た 。   T壁 〓旦 萱性堕 瀏塵 培養上清中のTG.F.ロ活性は、TGF‐ロ感受性株MvlLuを用いたバイ オアッセイにより、ヒトTく源ーロ1を標準として測定した。

[結果]EC219細胞は、tumor necrosis factor(TNF)‑Qとinterferon(IFN)‑ッ(各々lOOU/ml)の刺 激に よ り 、 有 意 にNO産 生 量 を 増 大 さ せ た 。 し か しPROb上 清を30% 加 え る と、 このNO産 生は 有 意 に 抑 制 された 。一 方、REGb上清 を同 量加 えて も、NO産 生の 抑制 は見ら れな かっ た。 次 に 、 各 上 清 の 熱 処 理 を 試 み た 。3分 間 煮沸 したPROb上清 を加 えて もNO抑 制は 同様 に認め られ た。 また 、3分間 煮沸し たREGb上 清を 加え ると 、NO産生 は有 意に抑制された。

すな わ ち 、PROb上 清 は 熱 に 安 定 なNO抑 制 因 子 を 含 み 、REGb上 清 は 熱 処 理 によ り活 性化 されるNO抑制因子を含んでいると推測された。

  ノ ー ザ ン ・ ブ ロ ツH睦 盤TNF‑QとIFN‑ッ 刺 激 に よ り 、EC219細 胞 の 誘 導 型NOSの m王 ボAが 誘 導 さ れ た 。 し か し 、TNF.a.IFN‐ッ とと もにPROb上清 を加 えると 、誘 導型 NOSのmRNA発現は著明に抑制された。

  麹 和 性 ク ロ マ ト グ ラZエEC219細 胞 のNO産 生 は 、 分 画 さ れ たPROb上 清 の う ち 、ConA 非親 和 性 の 分 画 および へパ リン 非親 和性 の分 画に より 、80%以 上の 抑制 を認め た。ConA ある い は へ パ リ ン 親 和 性 の 分 画 は 、 濃 縮 し て 投 与 し て も 有意 な 抑 制 を 認 めな かっ た。

  以 上 の 結 果 に よ り 、PROb細 胞 由 来 のNO抑 制 因 子 は 、ConA非 親 和 性 で あ るこ とよ ルグ ルコ シ ド な ど の 糖側鎖 を有 さず 、ヘ パリ ン結 合蛋 白で はな く、 熱に 安定 であり 、誘 導型 NOSのn水NAを 抑 制 す る こ と が 示 さ れ た 。NO産 生 を 抑 制 し 、し か も 腫 瘍 細 胞が 産生 しう る 物 質 の 中 で は 、 T( 源 ‐ ロ が 上 記 の 性 質 に 矛 盾 し な い と 考 え ら れ た 。   拭生生麹5倍に濃縮したPROb上清を50皿〆rn亅の抗T(源・ロ抗体で1時間前処理し、TNF‐ a.IFN‐ ッ と と も にEC219に 加 え た と こ ろ 、NO産 生 の 抑 制 は 完 全 に 中 和 さ れ た 。   また、ヒトTGF‐日1を0.5.5nヴrnl加えたところ、TNF.a.IFN‐ッによるNO産生は濃度依 存性に 抑制 され た。 冊晒 .Q.IFN‐ッ 刺激 したEC219細胞のNO産生を刺激後1時間から40時 間まで経時的に測定すると、PROb上清(50%)とTGF.ロ1(O.5n珈1)はきわめて類似した抑制 経過をとった。

  NOS活 性EC219細 胞 のNOS活 性 は 、n原 ‐Q.IFN‐ ッ 刺 激 に よ っ て 有 意 に 増 加 し 、 PR0b上 清添 加に より有意に抑制された。この抑制はPROb上清を抗T(源・ロ抗体で前処理す ると失われた。

  璽璽〓旦垂蛙PROb上清には、高濃度(1465p〆rnl)のT(源‐ロ活性を認めた。REGb上清の T(源‐ロ活性は245p〆fnlと低かったが、煮沸したREGb上清には有意に高濃度(1200pg/rn亅)の TGF‐ロ活性を認めた。

[考 察] 誘導 型NOSの発 現の 調節 は、 宿主 の免 疫反 応に とって 重要 である。サイトカイン の 刺 激 に よ る ラッ ト 脳 血 管 内 皮 細 胞EC219のNO産生 は、 ラッ ト大 腸癌 細胞DHD/PRObの産 生 す る 何 らか の因 子に より 抑制 され たが 、こ の因子 は、l)PROb上 清に よるNO産 生お よび NOS活 性の 抑制 は、 抗TGF‑ロ 抗体 によ り中 和さ れた 。2) ヒトTGF‑ロ1添加により、同様の NO抑 制を 認め た。3)NO抑制 の経時 変化 は、PROb上清 とヒ トTGF‑ロ1でほば同様であった。

4)PROb上 清 中 のTGF‑ロ 活 性 が 証 明 さ れ た 、 等 の 結 果 に よ り 、TGF‑ロ と同 一か 、ま たは TGF‑ロと きわ めて 類似 した 分子と 言え よう 。

(3)

  TGF‑ロは通常、45kDaの1atency‑assoaated peptide (LAP)と結合した不活性型として分泌さ れ、 活性 型のTGF‐8は、 加熱 、酸 性化 、蛋 白分 解な どに よっ てLAPから放出される。本研 究 に おい て、 浸潤 型の 腫瘍PRObは、T(汗 ―Bを 産生 し、 これ を活 性化 する 機序 を有 し、

EC219細 胞 のNO産 生 を 抑 制 し た 。 一方 、退 化型 の株RE( 弛は 活性 化の 機序 を持 たず 、NO を抑制しなかった。

  今 後、 その 他の 転移 性腫 瘍細 胞が内 皮細 胞のNO産 生に 及ぼ す影 響、 ある いはNOに よる 細胞 毒性 を広く 研究 する こと によ り、癌転移早期の宿主細胞と腫瘍細胞の相互作用が明ら かになると期待される。

(4)

学位論文審査の要旨

学位論文題名

  Involvement of a transforming‑growth‑factor‑

,8 ‑like molecule in tumor‑cell‑derived inhibition of nitric‑oxide synthesis in cerebral endothelial cells

(腫瘍細胞による脳血管内皮細胞のnitric oxIde合成の抑制に   お け るtranSformlnggrOWthfaCtor‐p様 分 子 の 関 与 )

  Nitric oxide (NO)は細胞毒性を発揮するため、腫瘍細胞や細菌などに対して宿主免疫細 胞が産生する主要な防御因子のーつと考えられている.癌の脳転移の際、脳血管内皮細胞 は、腫瘍細胞が第一に接着する場であることから、内皮細胞からのNO産生の調節は、転 移の初期における癌細胞と宿主細胞の相互作用において重要と考えられる.このため本研 究は、脳血管内皮細胞のNO産生を測定し、腫瘍細胞との混合培養による内皮細胞のNO産 生の変化を解析する事、および、NO産生を変化させる因子を同定する事を目的とした.

  細胞は,ラット脳血管内皮細胞株EC219と,転移性脳腫瘍を想定してラット大腸癌細胞 株DHD/K12(浸潤型細 胞PRObおよび自 然退縮型細 胞REGb)を用 いた.NO産生量はグリ ース反応にて測定,NO synthase (NOS)活性は標識LIくニitrullineの放射活性を測定,NOS mRNA発現はNo曲emb10t解析にて評 価した.DHD爪12の培養上清は、senlm行eeにて3日 間培養したものを採取した.EC219内皮細胞は、tumornecrosisfactor口NF冫‐a十mte血ron

(IFN).Yの刺激によりNOを産生した.DM)信ROb大腸癌細胞との混合培養により、EC219細 胞のNO産生は有意に抑制された.またNO産生はPR0b細胞の培養上清にてより著明に抑 制された.すなわちEC219細胞のNO産生は、PROb細胞の産生する液性因子により抑制さ れると思われた.TNF・a十IFN‐Y刺激によるNOsynthase活性はカルシウム非依存性であり,

mducibleN0synmaseの活性と思われた.この活性は,PROb上清により有意に抑制された.

またPROb細胞の産生する因子はEC219細胞のmducibleN〇synmaseのmRNA発現を抑制した.

この因子を解析するため、まず熱処理を行った.PR〇b上清を3分問95℃で熱処理しても NO産生抑制効果は変わらず、PROb由来の因子は熱に安定と思われた.一方、REGb細胞 の培養上清では、有意なN〇抑制を認めなかった.ところがREGb上清を3分間熱処理する と、有意な抑制効果の出現を認めた.すなわちREGb細胞は、熱処理により活性化され、

NO産生を抑制する因子を産生すると考えられた.次いでPR0b上清をConAおよびhepa血 親和性chromatographyにて分画し、各分画のNO産生への影響を調ぺた.この結果PROb由

弘 男郎       澄       眞 和 部川 嶋 阿細 長 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(5)

来 のNO抑 制因 子 は 、ConAに もheparinに も 非 親和 性 であっ た.以上 の結果よ り、PROb由 来因子は、inducible NO synthaseのmRNA発現を抑制し、熱に安定であり、糖側鎖を持たず、

heparh1結合 蛋白では ないという 特徴を持 つことが 分かった.文献上、mducibleNOsynmase のinhibitorとして報告されている分子の中で上記の性質に矛盾しないものとして、transfor‐ rnjnggrowmfactor卩GF)―pが考えられた.そこで抗TGF‐p抗体にてPROb上清を前処理したと こ ろ 、N0抑制 効 果 はほ ば消 失した.ま た、humanTGF‐B1は 濃度依存 性にN0産生 を抑制し た .N0抑 制の 経 時 変化 はPROb上清 とhmanTGF―plで同 様であ った.腫 瘍細胞のTGF−D産 生 はTGF‐ 矚 受性 株 を 用いたbioassりにて測定 したが、PR0b上清には 高濃度のTGF‐齬性 を 認 めた .REGb上清 のTGF一齬性 は低値であ ったが、 熱処理に より高濃 度のTGF―齬 性の 出現を認め走.

  InducibleNOsynmaseの発 現の調節 は、宿主の 免疫反応にとって重要である.サイトカイ ンの 刺激によ るラット脳 血管内皮 細胞EC219のNO産 生は、ラット大腸癌細胞D間)侶R〇bの 産 生 する 因 子に よ り 抑 制 され た が 、こ の 因子 は 、1)PROb上清に よるNO産生 およびN0 synmase活性の抑制は、抗TGF‐p抗体により中和された.2)humanTGF―p1により同様の抑制 を認 めた.3) 抑制の経時 変化は、PR0b上清とhumanTGF‐p1でほぽ同様であった.4)PROb 上清 中に高いTGF−p活性が証 明された 等の結果 より、TGF‐Bと同一か、あるいは極めて類 似し た分子と 考えられた .TGF‐Bは通 常、不活 性型として分泌され、活性型のTGF−pは、

加 熱 、酸 性 化、 蛋 白 分解 などにより 遊離され る.本研 究におい て、浸潤 型の腫瘍PR0bは 活性 型TCF.。を 産生し、内 皮細胞のN0産生を抑 制した. ー方、退 縮型の腫 瘍REGbは、不 活 性 型TGF.Bを 産生 す るがこ れを活性化 する機序 を持たず 、NO産生を 抑制しな かった.

  今後 、 その 他 の 転移 性腫 癌細胞が内 皮細胞のNO産生に及 ぽす影響 、あるい はNOによる 細胞 毒性を広 く研究する ことによ り、癌転 移早期の 宿主細胞と腫瘍細胞の相互作用が明ら かになると期待される・

審 査員一同は 、これら の成果を 高く評価 し、また 研究者として誠実かつ熱心であり、申請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た .

参照

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