博 士 ( 理 学 ) 片 桐 千 華
学 位 論 文 題 名
表皮における外界への防御メカニズムに関する研究 学位論文内容の要旨
皮 膚 は 外 界 に 接 す る 器 官 で あ り 、 大 き く 表 皮 、 真 皮 、 皮 下 組 織 に 分 類 さ れ る が 、 な か で も表 皮 最 上 層 に 位 置 す る 角 層 は 直 接 外 界 に 接 し 、 乾 燥 、 ウ イ ル ス の 進 入 、 機 械 的 刺 激 、 水 分 蒸 散 、UV 等 か ら 生 体 を 防 御 し て い る 。 本 研 究 で は (1) 角 層 に お け る バ リ ア 一 機 能 形 成 の 過 程 、(2)角層 の 乾 燥 防 御 シ ス テ ム 、 お よ び(3)パ リ ア 一 機 能 回 復 を 促 進 す る 薬 剤 の 検 討 、(4)表 皮 のUV防 御 メ カ ニズム について検討を行 った。
(1)角屠のパ リア一機能は角層間脂質(コレステロール、セラミト゛、脂肪酸)に依存している。本研究では バ リ ア ― 形 成 に お ける 脂 質代 謝酵 素 の変 動を 検 証し た。 そ の結 果、de novoのコ レス テ ロ― ル生 合 成 酵 素 で あ るHMG CaA reductaseや ス フ イ ン コ ゛ シ ン 生 合 成 酵 素SPTaseは 懐 胎 過 程 後 期 で 活 性 が 低 下 す る が 、 糖 の 修 飾 に 関 与 す るp‑glucocerebrosidase、 硫 酸 の 修 飾 に 関 与 す るsteroid sulfataseやcholesterol sulfatase等 修 飾 酵 素 は 懐 胎 過 程 後 期 で 活 性 の 亢 進 が 認 め ら れ た 。 ま た 、 修 飾 酵 素 は 気 層 暴 露 や ホ ル モ ン に よ っ て も 活 性 が 亢 進 し 、 懐 胎 期 間 後 期 に こ れ ら の酵 素 活性 の増加が角層のバ リア一機能を形成 することが明らかに なった。
(2) 乾 燥 環 境 や 湿 度 変 動 に よ る 皮 膚 乾 燥 の メ カ ニ ズ ム の 解 明 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 湿 度 の 変 動 が 大 き い 程 、 角 層 水 分 量 や 水 分 保 持 能 が 低 下 し て 皮 膚 状 態 を 悪 化 さ せ た 。 天 然 保 湿 因 子natural moisturizing factors (NMF)は角 層 の水 分保 持 に重 要な 働 きを 担う が 、湿 度変 動 に よ っ てNMFの 主 成 分 で あ る ア ミ ノ 酸 量 の 低 下 や ア ミ ノ 酸 の 前駆 体で あ るフ ィラ グ リン の発 現 低 下 が 顕 著 に 生 じ る こ と が 明 ら か に な り 、 皮 膚 状 態 の 改 善 に は フ ィ ラ グ リ ン 発 現 の 亢 進が 必 要 であることが明ら かになった。
(3)皮 膚 症 状 の 改 善 に は バ リ ア ― 回 復 薬 剤 が 不 可 欠 で あ る が 、 本 研 究 よ り 特 定 の マ グ ネ シ ウ ム イ オ ン や 、 カ ル シ ウ ム ノ マ グ ネ シ ウ ム イ オ ン の モ ル 比 が 重 要 で あ る ニ と が 明 ら か に な った 。 (4)セ ル ピ ンsquarhous cell carcinoma antigen (SCCA)はUVに よ っ て 表 皮 上 層 で 顕 著 に タ ンパ ク お よ び 遺 伝 子 発 現 が 亢 進 し た 。 そ こ で 、SCCAの 過 剰 発 現 系 お よ びSCCAノ ッ ク ダ ウ ン 細 胞 系
′ を 確 立 し(siSCCA/HaCaT)、UVの 影 響 を 解 析 し た 結 果 、SCCAはUV誘 導 ア ポ 卜 ― シ ス に 対 す る 抵 抗 性 を 有 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。SCCAと 相 互 作 用 す る 因 子 をAntibody Array で 探 索 し た と こ ろ 、 活 性 型JNKと の 相 互 作 用 が 示 唆 さ れ た 。JNKは3種 の ア イ ソ ホ ー ム が 知 ら れ て い る が 、 そ の 中 でJNK1の み が ケ ラ チ ノ サ イ 卜 でUV応 答 性 を 有 し て い た 。SCCA1はJNK1 の り ン 酸 化 活 性 を 特 異 的 に 阻 害 し 、JNK2―3、p38aお よ びERKl/2の 活 性 は 阻 害 し な か っ た 。 ま た 、SCCA1はJNK1と 相 互 作 用 し てUV照 射 後 に 核 移 行 す る こ と 、SiSCCA/HaCaTで はJNK の 基 覧で あるc―Junのり ン 酸化 が増 加 して いる こ とを 見出 し た。 さら に 、SCCA卜 ラ ンス ジェ ニツ ‑ 25―
クマウスは
UV照射による棘融解等の皮膚傷害を抑制したことから、SCCA が
JNK1活性の阻 害を介してUV 誘導アポトーシスを抑制し、UV による皮膚傷害を防御する新しいメカニズムが 明らかになった。
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